(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
直流電圧源の両端子間に直列接続され、両端子間の直流電圧を1/2に分圧し、この分圧点を中性点とする複数のコンデンサと、
前記直流電圧源の両端子間に順次直列接続されたU相とV相の第1〜第4スイッチを有し、前記直流電圧を交流に変換するインバータ回路と、
前記インバータ回路の
U相とV相の第1〜第4スイッチをオンオフ制御するスイッチング信号生成回路と、
を備えた単相NPCインバータの中性点電位制御方法であって、
前記スイッチング信号生成回路は、
出力電圧指令と三角波キャリア信号を比較するPWM処理によってキャリアクロスタイミング情報と遷移後のエリア情報を求め、
キャリアクロスタイミング情報と、遷移後のエリア情報と、上アーム直流電圧検出値
Ea、下アーム直流電圧検出値
Eb、出力電流検出値を用いて、
以下の表4に示すように、中性点電位がバランスする方向の
前記U相とV相の第1〜第4スイッチのスイッチ信号S1u,S2u,S3u,S4u,S1v,S2v,S3v,S4vを生成することを特徴とする単相NPCインバータの中性点電位制御方法。
【表4】
【背景技術】
【0002】
図11は、単相NPCインバータの構成例を示す回路図である。単相NPCインバータは、直流電圧源の両端子間に直列接続され、両端子間の直流電圧を1/2に分圧し、この分圧点を中性点とする複数のコンデンサと、複数のスイッチを有し、前記直流電圧を交流に変換するインバータ回路と、前記インバータ回路のスイッチをオンオフ制御するスイッチング信号生成回路と、備えている。
【0003】
NPC単相インバータは、各アームで3レベルの出力が可能であり、この各アーム出力電圧を制御するための代表的な変調法としてユニポーラ変調法が知られている。ユニポーラ変調法は、
図12に示すように、正の電圧を制御する上側の三角波キャリア信号Carypと、負の電圧を制御する下側の三角波キャリア信号Carynの2つの三角波キャリア信号を有する。この三角波キャリア信号Caryp,Carynを出力電圧指令Vrefと比較して、その大小関係により各スイッチ(
図11のS1u〜S4u,S1v〜S4v)のゲート信号を生成し、各スイッチS1u〜S4u,S1v〜S4vをON/OFFすることで3レベルの電圧を出力することができる。なお、
図11では、スイッチS1u〜S4u,S1v〜S4vとしてIGBTを用いているが、これらは他の自己消弧形スイッチングデバイスに置き換えてもよい。
【0004】
また、単相NPCインバータに係る技術としては、特許文献1が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、 NPCインバータでは、
図11に示す中性点NP電位の制御が必要になる。これは、この中性点電位制御を行わないと、上アームの直流電圧Eaと下アームの直流電圧Ebが不均等になり、出力電圧Voutの電圧歪が増大してしまうからである。
【0007】
単相NPCインバータの場合、特許文献1のように一度出力電圧指令Vrefと三角波キャリア信号Caryp,Carynを比較した後に、スイッチのオンオフ信号を中性点電位に従い操作する方法が提案されている。しかし、このような方法は以下(1)〜(4)の問題点がある。
(1)処理が複雑であり、高速な演算処理能力を有する制御装置が要求される。その結果、制御装置の高コスト化につながる。
(2)出力電圧指令Vrefを決めた後に、スイッチの信号を操作するため、デットタイム補償などのスイッチングタイミングを制御する機能と干渉し、制御動作が不安定となりやすい。
(3)インバータを並列接続するような場合に、インバータ相互のスイッチングタイミングの同期が取れない。スイッチングタイミングの同期が取れなくなることにより、並列接続したインバータの出力間に横流電流が流れやすくなる。
(4)例えば、特許文献2のセル直列多重インバータや
図10のように、インバータを直列接続するような場合、スイッチングタイミングが重ならないように制御できない。
【0008】
(4)の問題点について説明する。例えば、
図10に示すセル直列多重方式の単相インバータユニットにNPCインバータを適用する場合では、セル直列多重方式インバータの出力端子間(例:U端子〜V端子間)のサージ電圧の抑制のため、直列接続している単相インバータユニット同士のスイッチングタイミングが重ならないようにする。特許文献2にその技術が記載されている。
【0009】
しかし、システム全体としてスイッチングが重ならないように一度決定したスイッチタイミングをNPCインバータの中性点電位制御のために変更すると、スイッチングが重なる組み合わせが発生し、出力サージ電圧を大きくする原因になる。出力サージ電圧が大きくなると、インバータ負荷の絶縁劣化などの悪影響をもたらす。
【0010】
また、
図10のような複数のNPCインバータを制御する必要があるシステムにおいては、メインで制御を担当する演算処理装置と、スイッチングを制御する演算処理装置が異なる場合がある。NPCインバータの中性点電位制御が複雑になるとこれらの演算処理装置間の通信データ量が増加し、高速かつ高価な通信モジュールが必要となる。
【0011】
以上示したようなことから、単相NPCインバータにおいて、スイッチングタイミングを変更しない方法で、直流電圧の中性点電位を制御することが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、直流電圧源の両端子間に直列接続され、両端子間の直流電圧を1/2に分圧し、この分圧点を中性点とする複数のコンデンサと、複数のスイッチを有し、前記直流電圧を交流に変換するインバータ回路と、前記インバータ回路のスイッチをオンオフ制御するスイッチング信号生成回路と、備えた単相NPCインバータの中性点電位制御方法であって、前記スイッチング信号生成回路は、三角波キャリア信号を1/2周期毎、かつ、三角波キャリア信号同士が交差するタイミングで区切るキャリアパターンを複数設け、上アーム直流電圧検出値、下アーム直流電圧検出値、出力電流検出値に基づいて、前記複数のキャリアパターンから中性点電位がバランスする方向のキャリアパターンを選択し、選択したキャリアパターンと出力電圧指令を比較するPWM処理を行うことにより各スイッチのオンオフ信号を生成することを特徴とする。
【0013】
また、その一態様として、前記複数のキャリアパターンは、キャリアパターンAとキャリアパターンBとであって、前記キャリアパターンAは、上アームのU相三角波キャリア信号が、1/2周期のうち前半の1/4周期において0.5〜0に下降し、1/2周期のうち後半の1/4周期において0〜0.5に上昇し、上アームのV相三角波キャリア信号が、1/2周期のうち前半の1/4周期において0.5〜1に上昇し、1/2周期のうち後半の1/4周期において1〜0.5に下降し、下アームのU相三角波キャリア信号が、1/2周期のうち前半の1/4周期において−0.5〜−1に下降し、1/2周期のうち後半の1/4周期において−1〜−0.5に上昇し、下アームのV相三角波キャリア信号が、1/2周期のうち前半の1/4周期において−0.5〜0に上昇し、1/2周期のうち後半の1/4周期において0〜−0.5に下降し、前記キャリアパターンBは、
上アームのU相三角波キャリア信号が、1/2周期のうち前半の1/4周期において0.5〜1に上昇し、1/2周期のうち後半の1/4周期において1〜0.5に下降し、上アームのV相三角波キャリア信号が、1/2周期のうち前半の1/4周期において0.5〜0に下降し、1/2周期のうち後半の1/4周期において0〜0.5に上昇し、下アームのU相三角波キャリア信号が、1/2周期のうち前半の1/4周期において−0.5〜0に上昇し、1/2周期のうち後半の1/4周期において0〜−0.5に下降し、下アームのV相三角波キャリア信号が、1/2周期のうち前半の1/4周期において−0.5〜−1に下降し、1/2周期のうち後半の1/4周期において−1〜−0.5に上昇することを特徴とする。
【0014】
また、他の態様として、前記複数のキャリアパターンは、キャリアパターンCとキャリアパターンDとであって、前記キャリアパターンCは、上アームのU相三角波キャリア信号が、1/2周期のうち前半の1/4周期において0.5〜0に下降し、1/2周期のうち後半の1/4周期において0〜0.5に上昇し、上アームのV相三角波キャリア信号が、1/2周期のうち前半の1/4周期において0.5〜1に上昇し、1/2周期のうち前半の1/4周期において1〜0.5に下降し、下アームのU相三角波キャリア信号が、1/2周期のうち前半の1/4周期において−0.5〜0に上昇し、1/2周期のうち後半の1/4周期において0〜−0.5に下降し、下アームのV相三角波キャリア信号が、1/2周期のうち前半の1/4周期において−0.5〜−1に下降し、1/2周期のうち後半の1/4周期において−1〜−0.5に上昇し、前記キャリアパターンDは、上アームのU相三角波キャリア信号が、1/2周期のうち前半の1/4周期において0.5〜1に上昇し、1/2周期のうち後半の1/4周期において1〜0.5に下降し、上アームのV相三角波キャリア信号が、1/2周期のうち前半の1/4周期において0.5〜0に下降し、1/2周期のうち後半の1/4周期において0〜0.5に上昇し、下アームのU相三角波キャリア信号が、1/2周期のうち前半の1/4周期において−0.5〜−1に下降し、1/2周期のうち後半の1/4周期において−1〜−0.5に上昇し、下アームのV相三角波キャリア信号が、1/2周期のうち前半の1/4周期において−0.5〜0に上昇し、1/2周期のうち後半の1/4周期において0〜−0.5に下降することを特徴とする。
【0015】
また、他の態様として、直流電圧源の両端子間に直列接続され、両端子間の直流電圧を1/2に分圧し、この分圧点を中性点とする複数のコンデンサと、複数のスイッチを有し、前記直流電圧を交流に変換するインバータ回路と、前記インバータ回路のスイッチをオンオフ制御するスイッチング信号生成回路と、備えた単相NPCインバータの中性点電位制御方法であって、前記スイッチング信号生成回路は、出力電圧指令と三角波キャリア信号を比較するPWM処理によってキャリアクロスタイミング情報と遷移後のエリア情報を求め、キャリアクロスタイミング情報と、遷移後のエリア情報と、上アーム直流電圧検出値、下アーム直流電圧検出値、出力電流検出値を用いて、中性点電位がバランスする方向の各スイッチのオンオフ信号を生成することを特徴とする。
【0016】
また、その一態様して、複数の単相インバータユニットを備えたセル直列多重インバータの中性点電位制御方法であって、単相インバータユニットは単相NPCインバータを備え、中央制御処理装置と各単相インバータユニット間に通信機能を有し、各単相NPCインバータの中性点電位を請求項1もしくは請求項2もしくは請求項3もしくは請求項4記載の制御方法により制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、単相NPCインバータにおいて、スイッチングタイミングを変更しない方法で、直流電圧の中性点電位を制御することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[基本説明]
図1は、単相NPCインバータのPWMキャリア比較を示すタイムチャートである。ここで、CaryUp(太線)はU相の上アームの三角波キャリア信号,CaryUn(細線)はU相の下アームの三角波キャリア信号,CaryVp(点線)はV相の上アームの三角波キャリア信号,CaryVn(鎖線)はV相の下アームの三角波キャリア信号,Vref(正弦波状の波形)は出力電圧指令,Vout(パルス状の波形)は出力電圧を示す。
【0020】
ここでは、U相とV相の三角波キャリア信号CaryUpとCaryVp,CaryUnとCaryVnを180°位相差とし、出力電圧指令Vrefを1つとしている。このときの出力電圧Voutの波形は相で3レベル、線間で5レベルとなる。
【0021】
出力電圧Voutおよび各相のスイッチング状態と、出力電流による直流電圧Eaおよび直流電圧Ebの充放電状態を表1に示す。ここで、直流電圧Eaや直流電圧Ebは
図11に対応している。また、出力電流IoutをU相から出ていく方向に流れる場合を正とし、電流方向が逆になった場合には、充放電特性も逆になる。
【0023】
また、三角波キャリア信号CaryUp,CaryUnと,CaryVp,CaryVnが作るエリアにおいて出力電圧指令Vrefがそのエリアにある場合の直流電圧Eaと直流電圧Ebの充放電特性は
図2に示すようになる。エリアの名称は表1と対応している。ここで注意する点は、三角波キャリア信号CaryUp,CaryUnと,CaryVp,CaryVnによって決められたエリアにおける充放電特性は、電流の方向によって一意に決まる、ということである。
【0024】
ここで、
図3のような三角波キャリア信号を1/2周期毎に区切った範囲に着目する。各制御期間の両端では、U相用の三角波キャリア信号CaryUpとV相用の三角波キャリア信号CaryVpまたはU相用の三角波キャリア信号CaryUnとV相用の三角波キャリア信号Vnが交差していることを利用し、それぞれの範囲のキャリア波形を切り替えることが可能である。
【0025】
そこで、直流電圧Eaと直流電圧Ebの状態及び電流の方向により、パターン化されたキャリア波形(以後、キャリアパターンと呼称)を切り替えることによって、上アーム直流電圧Eaと下アーム直流電圧Ebのバランスを制御することが可能となる。
【0026】
例えば、
図4において、電圧指令正(上側の三角波キャリア信号CaryUp,CaryVpを使用)の状態で直流電圧Ea>Ebの場合には、直流電圧Eaを放電するか直流電圧Ebを充電する必要がある。よって、パターンA(Eaを放電)を多く採用することで、直流電圧Eaが放電する割合を高めることができ、直流電圧Eaと直流電圧Ebをバランス方向に制御することが可能となる。
【0027】
ここで、本願発明のメリットを整理しておく。
(1)キャリアパターンを選択することで、中性点電位のバランス制御が可能となる。
(2)基本的な電圧スイッチングパターンは変更されない。(スイッチングタイミングは変更されない)
よって、(発明が解決しようとする課題)で挙げた、スイッチングタイミングを制御する機能との干渉や、インバータ並列接続時のタイミングずれ、インバータ直列接続時のスイッチングの重なりなどについて、本制御を適用する前と後では、なんら変わるものではない。よって、従来の制御に対して容易に適用が可能である。
【0028】
以下、本願発明における単相NPCインバータの中性点電位の制御方法の実施形態1〜4を
図4〜
図10に基づいて説明する。
【0029】
[実施形態1]
本実施形態1は、単相NPCインバータにおいて、
図3に示すような従来の三角波キャリア信号から2種類のキャリアパターンを抜出し、中性点電位のバランス状態、及び出力電流の方向、出力電圧指令Vrefの範囲から、使用するキャリアパターンを選択するものである。この選択したキャリアパターンと出力電圧指令Vrefとを比較するPWM処理を行い、スイッチ信号を生成する。
【0030】
図4は、本実施形態1における単相NPCインバータのスイッチング信号生成回路を示すブロック図である。
図4に示すように、減算器1において、直流電圧Eaから直流電圧Ebを減算してその偏差Ea−Ebをスイッチングパターン選択処理部2に出力する。スイッチングパターン選択処理部2では、この直流電圧の偏差Ea−Ebと出力電圧指令Vrefと、出力電流検出値と、に基づいてキャリアパターンA,キャリアパターンBのどちらか一方を選択し、スイッチ3を切り換える。
【0031】
スイッチ3は、スイッチングパターン選択処理部2の切換信号によりキャリアパターンAまたはキャリアパターンBのどちらか一方の三角波キャリア信号をPWM処理部4に出力する。PWM処理部4は出力電圧指令Vrefとスイッチ3から出力された三角波キャリア信号とを比較してスイッチ信号S1u,S2u,S3u,S4u,S1v,S2v,S3v,S4vを生成する。
【0032】
表2は、出力電圧指令Vrefの正負,直流電圧の偏差Ea−Eb,電流の正負、におけるキャリアパターンを示す表2である。表2に示すように、出力電圧指令Vrefの正負,直流電圧の偏差Ea−Ebの正負,電流の正負に基づいてキャリアパターンAまたはキャリアパターンBを選択することができ、直流電圧Ea,Ebの充放電を制御することができる。
【0034】
前記キャリアパターンAは、上アームのU相三角波キャリア信号CaryUpが、1/2周期のうち前半の1/4周期において0.5〜0に下降し、前記1/2周期のうち後半の1/4周期において0〜0.5に上昇する。上アームのV相三角波キャリア信号CaryVpが、1/2周期のうち前半の1/4周期において0.5〜1に上昇し、1/2周期のうち後半の1/4周期において1〜0.5に下降する。下アームのU相三角波キャリア信号CaryUnが1/2周期のうち前半の1/4周期において−0.5〜−1に下降し、1/2周期のうち後半の1/4周期において−1〜−0.5に上昇する。下アームのV相三角波キャリア信号CaryVnが1/2周期のうち前半の1/4周期において−0.5〜0に上昇し、1/2周期のうち後半の1/4周期において0〜−0.5に下降する。
【0035】
前記キャリアパターンBは、上アームのU相三角波キャリア信号CaryUpが、1/2周期のうち前半の1/4周期において0.5〜1に上昇し、1/2周期のうち後半の1/4周期において1〜0.5に下降する。上アームのV相三角波キャリア信号CaryVpが1/2周期のうち前半の1/4周期において0.5〜0に下降し、1/2周期のうち後半の1/4周期において0〜0.5に上昇する。下アームのU相三角波キャリア信号CaryUnが1/2周期のうち前半の1/4周期において−0.5〜0に上昇し、1/2周期のうち後半の1/4周期において0〜−0.5に下降する。下アームのV相三角波キャリア信号CaryVnが1/2周期のうち前半の1/4周期において−0.5〜−1に下降し、1/2周期のうち後半の1/4周期において−1〜−0.5に上昇する。
【0036】
この方式では、出力電圧のスイッチングタイミングを変えることなく、中性点電位制御が可能である。
【0037】
本実施形態1におけるNPC単相インバータの中性点電位制御方法によれば、 NPCインバータにおいて、スイッチングタイミングを変更しない簡易な方法で中性点電位を制御することができる。これは、制御装置の低コスト化・小型化につながる。また、外部からの中性点バランス制御を必要とせず、単相NPCインバータ単体で制御可能である。
【0038】
また、単相NPCインバータを並列接続する場合、並列接続インバータ間のスイッチングタイミングの同期を容易にとることができる。これは、出力の横流電流の低減につながる。
【0039】
NPCインバータを直列接続する場合、直列接続インバータ間のスイッチングタイミングの重なりを容易に回避することができる。これは、セル直列多重インバータの出力サージ電圧の低減につながる。
【0040】
[実施形態2]
三角波キャリア信号のキャリアパターンについて全パターンを考えると、
図5の4パターンを考えることができる。ここで、表2におけるパターンAとパターンBをパターンCとパターンDで置き換えると表3のようになる。
【0042】
前記キャリアパターンCは、上アームのU相三角波キャリア信号CaryUpが、1/2周期のうち前半の1/4周期において0.5〜0に下降し、1/2周期のうち後半の1/4周期において0〜0.5に上昇する。上アームのV相三角波キャリア信号CaryVpが、1/2周期のうち前半の1/4周期において0.5〜1に上昇し、1/2周期のうち後半の1/4周期において1〜0.5に下降する。下アームのU相三角波キャリア信号CaryUnが1/2周期のうち前半の1/4周期において−0.5〜0に上昇し、1/2周期のうち後半の1/4周期において0〜−0.5に下降する。下アームのV相三角波キャリア信号CaryVnが1/2周期のうち前半の1/4周期において−0.5〜−1に下降し、1/2周期のうち後半の1/4周期において−1〜−0.5に上昇する。
【0043】
前記キャリアパターンDは、上アームのU相三角波キャリア信号CaryUpが、1/2周期のうち前半の1/4周期において0.5〜1に上昇し、1/2周期のうち後半の1/4周期において1〜0.5に下降する。上アームのV相三角波キャリア信号CaryVpが1/2周期のうち前半の1/4周期において0.5〜0に下降し、1/2周期のうち後半の1/4周期において0〜0.5に上昇する。下アームのU相三角波キャリア信号CaryUnが1/2周期のうち前半の1/4周期において−0.5〜−1に下降し、1/2周期のうち後半の1/4周期において−1〜−0.5に上昇する。下アームのV相三角波キャリア信号CaryVnが1/2周期のうち前半の1/4周期において−0.5〜0に上昇し、1/2周期のうち後半の1/4周期において0〜−0.5に下降する。
【0044】
本実施形態2は、単相NPCインバータにおいて、
図5に示すキャリアパターンC及びDを用い、中性点電位のバランス状態、及び出力電流Ioutの方向から、使用する三角波キャリア信号のキャリアパターンを選択するものである。この選択した三角波キャリア信号のキャリアパターンと出力電圧指令Vrefを比較してPWM処理を行い、スイッチ信号S1u,S2u,S3u,S4u,S1v,S2v,S3v,S4vを生成する。
【0045】
本実施形態2における単相NPCインバータのスイッチング信号生成回路を
図6に示す。本実施形態2における単相NPCインバータのスイッチング信号は、実施形態1のキャリアパターンAとキャリアパターンBをキャリアパターンCとキャリアパターンDとしたものである。また、スイッチングパターン制御部2に対して、出力電圧指令Vrefの入力は不要である。その他は
図4と同様である。
【0046】
よって、出力電圧指令Vrefの正と負でキャリアパターンが同じとなるため、出力電圧指令Vrefに基づいてキャリアパターンを切り替える必要がなくなる。これが、パターンAとパターンBを用いる実施形態1と比較しての優位点である。
【0047】
この方式では、出力電圧Voutのスイッチングタイミングを変えることなく、中性点電位制御が可能である。
【0048】
本実施形態2における電力変換装置によれば、実施形態1と同様の作用効果を奏する。また、キャリアパターンCとDを用いることで、出力電圧指令Vrefに依存しないパターン構成を取ることができ、制御部の構成が実施形態1よりも簡素化できる。
【0049】
[実施形態3]
実施形態1,2は、出力電圧指令Vrefと三角波キャリア信号との比較を行うPWM処理前にパターンを選択する場合を示している。しかし、システム構成によっては、PWM処理後に充放電特性を切り替えたい場合がある。本実施形態3はこの方法を実現するものである。
【0050】
図8は、本実施形態3における単相NPCインバータのスイッチング信号生成回路を示すブロック図である。本実施形態3では、
図8に示すように、まず、PWM処理部4により、キャリアパターンと出力電圧指令Vrefとを比較し、エリアが遷移するタイミング情報(通常の三角波キャリア信号と出力電圧指令の交差タイミング:キャリアクロスタイミング)と、遷移後のエリア情報(+2E,+E、0,−E、−2Eの5種)を生成する。
【0052】
その後、エリアが遷移するタイミング情報(キャリアクロスタイミング情報)と遷移後のエリア情報、及び出力電流検出値Iout、減算器1から出力された上アーム直流電圧Eaと下アーム直流電圧Ebの偏差Ea−Ebから、スイッチングパターン選択処理部2において表4に示すスイッチングパターンに基づいて各スイッチS1u〜S4u,S1v〜S4vのスイッチ信号を生成する。
【0053】
本実施形態3における単相NPCインバータの中性点電位制御方法によれば、実施形態1,実施形態2と同様に中性点電位を制御することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態3は、出力電流Iout検出センサ,上アーム直流電圧Eaの検出センサ、下アーム直流電圧Ebの検出センサの位置がPWM処理部4の位置から遠く、スイッチングパターン選択処理部2の位置に近い配置の装置に適している。これは、各センサからスイッチングパターン選択処理部2までの配線距離が短くなり、装置の製造容易性や耐ノイズ性向上につながるからである。
【0055】
[実施形態4]
特許文献2に示すようなセル直列多重方式のインバータのように、複数の単相インバータユニットを直列に接続するような場合、
図9に示すように、中央の制御処理装置5の役割と各単相インバータユニット6での制御処理装置の役割を分担する必要がある。例えば、PWM処理、出力電流Ioutの検出は中央制御処理装置5で実施し、直流電圧Ea,Ebの検出を各単相インバータユニット6で実施する場合、定期的に単相インバータユニット6の直流電圧Ea,Ebの検出を中央制御処理装置に送ることは通信量の増加につながり、それに伴いシステムの通信異常が発生しやすくなる。
【0056】
そのため、これらの情報を送り返すことなくシステムを構成すると、
図9のようになる。これは実施形態3を応用させて、中央制御処置装置5に送信処理部7および単相インバータユニット6に受信処理部8を設けた構成である。
【0057】
また、
図10は、
図9の方式をセル直列多重方式のインバータに適用する構成である。
【0058】
図10内の単相インバータユニット6は、三相交流電圧を直流電圧に変換するダイオード整流器9と
図1に示す単相NPCインバータ10と、単相NPCインバータに設けられたスイッチ信号生成回路11より構成されている。なお、ダイオード整流器9は自己消弧形スイッチングデバイスを用いるPWMコンバータに置き換えてもよい。
【0059】
この
図9、
図10の構成では、上アーム直流電圧Eaの検出および下アーム直流電圧Ebの検出は単相インバータユニット6で行うため、これらの情報は中央制御処理装置5と単相インバータユニット6間で通信されない。これは通信量の低減へとつながる。これにより、高速かつ高価な通信モジュールを使う必要がなくなり、低コスト化を図ることが可能となる。
【0060】
なお、セル直列多重方式のインバータでは、
図9の制御構成に限らなくともよい。実施形態1、2の制御構成を、セル直列多重方式のインバータ内の単相インバータユニットに適用してもよい。この場合は、
図4、6において、出力電圧指令および出力電流検出を中央制御処理装置が各単相インバータユニットへ通信し、他の構成(スイッチングパターン選択処理部2など)を単相インバータユニットに設ける構成となる。
【0061】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【0062】
なお、
図10は、1相あたり単相インバータユニット数が6で、相数3の構成を例としている。実施形態4の発明は、当然、他の単相インバータユニット数および他の相数のセル直列多重方式にも適用できる。