(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
石英ガラスからなり、内部に発光ガスが封入された管状の放電容器と、当該放電容器の外表面に配設された外部電極と、当該放電容器の内部に配設され、前記外部電極よりも高電圧が印加される内部電極と、当該内部電極を支持する支持部材とを有する希ガス蛍光ランプにおいて、
前記支持部材が導電性を有し、内部電極に電気的に接続されると共に、前記放電容器の内壁における、前記支持部材と接触する位置、または、前記支持部材と近接する位置に、導電性物質層が形成されていることを特徴とする希ガス蛍光ランプ。
【背景技術】
【0002】
従来、エキシマランプの或る種のものとして、
図7に示すように、誘電体からなり、内部に発光ガスが充填された長尺な発光管51と、発光管51の外表面に配置された網状の外部電極54と、発光管51の内部に配置された内部電極53とを備えてなるものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。このエキシマランプにおいて、発光管51の両端に封止部55,55が各々形成されており、この封止部55,55の各々には、内部電極53の両端の各々が、当該封止部55,55に埋設された金属箔58,58に接続されている。また、封止部55,55の各々には、金属箔58,58を介して内部電極53と接続されると共に端部が外部に突出された外部リード59,59が設けられている。
このようなエキシマランプにおいては、ランプ始動時に内部電極53および外部電極54の間に高電圧を印加することにより、発光管51内によって構成される放電空間Sにエキシマ放電を発生させることによって、例えば真空紫外光が得られる。
【0003】
一般に、放電灯の分野においては、ランプの始動遅れと言われる問題があり、このため、放電灯としては、ランプを始動させるためのイグナイタやトリガー回路を設けることによってランプの始動時にパルス的に高電圧を重畳して絶縁破壊を生じさせる構成を有するものが多い。
放電容器の内部に配置された内部電極と当該放電容器の外表面に配置された外部電極とを有する希ガス蛍光ランプにおいても、同様に、比較的高い電圧を印加しなければ良好に点灯を開始することができない、という問題がある。然るに、最近では、装置の小型化や、ランプの始動時に印加することができる電圧の制限などの事情により、ランプの始動に十分な高電圧を印加することができない場合もある。
【0004】
ランプの始動性を向上させるための方法として、例えば特許文献2には、
図8に示すように、発光管61の外表面に配置された外部電極64と、発光管61の内部に配置された内部電極63とからなるエキシマランプにおいて、外部電極64の端部を発光管61の軸方向の外方に延伸させて封止部65の根元に巻き付けたものが開示されている。このエキシマランプにおいては、発光管61の中央領域(発光部)の端部から封止部65に向かうに従って外径が小さくなるので、外部電極64と内部電極63とが物理的に接近するため、電位的にも接近することになる。従って、内部電極63と外部電極64との間において発光管61(誘電体)を介して放電が生じやすくなるため、ランプの始動性を向上させることができる。なお、
図8において、68は金属箔、69は外部リードである。
【0005】
しかしながら、このようなエキシマランプにおいては、始動開始電圧を低下させることはできるものの、ランプの個々の特性による始動性のバラツキ(点灯動作の開始から始動までの時間のバラツキ)を抑制することはできず、確実な始動性を確保することが困難であった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
図1(a)は、本発明の希ガス蛍光ランプの構成の一例を示す概略図、
図1(b)は、(a)の希ガス蛍光ランプから外部電極を除いて示す概略図である。
この希ガス蛍光ランプ10は、石英ガラスよりなり、円管状の発光部12と、当該発光部12の両端の各々に連設された一対の封止部13,16を有する放電容器11を備えてなる棒状のものである。発光部12の外表面には、排気管残部(チップ管)19が形成されている。
放電容器11の内部には、発光ガスが充填されていると共に、内部電極20が管軸方向に伸びるように配置されている。また、放電容器11の外表面には、管軸方向に伸びるように外部電極30が配置されている。
放電容器11において、一対の封止部13,16は、各々、ピンチシール法によって形成された扁平状の形状を有するものである。一方(
図1における左方)の封止部(以下、「第1封止部」ともいう。)13には、当該第1封止部13の外端部から外方に突出して伸びる、例えばモリブデンからなる外部リード29が設けられている。また、他方(
図1における右方)の封止部(以下、「第2封止部」ともいう。)16には、外部リードが設けられていない。
この図の例において、第1封止部13は、例えばモリブデンからなる金属箔28が気密に埋設されてなる箔シール構造を有している。
【0014】
放電容器11の発光部12の内表面には、蛍光体層(図示せず)が周方向における一部分を除いて形成されており、この蛍光体層が形成されていない一部分により、光取り出し用のアパーチャ部が形成されている。
蛍光体層の材質としては、希土類蛍光体やハロリン酸系の蛍光体などの公知の蛍光性物質を用いることができ、例えば特に赤色の可視光を得るためにはY
2 O
3 :Eu、(YGd)BO
3 :Euなどを、緑色の可視光を得るためにはLaPO
4 :Ce,Tb、Zn
2 SiO
4 Mn、Y
2 SiO
4 :Tbなどを、青色の可視光を得るためには(SrCaBaMg)
5 (PO
4 )
3 Cl:Eu、3(BaMgEu)O・8Al
2 O
3 などを挙げることができる。このような蛍光体層は、放電容器11内に上記の蛍光物質が分散されて含有される懸濁液を吸い上げる方法、スプレーによる吹き付ける方法、あるいは流し込む方法などによって塗布し、焼成することによって形成される。
【0015】
内部電極20は、例えばタングステンなどの耐熱性を有する金属よりなり、金属素線がコイル状に巻回されてなるコイル状部分21と、当該コイル状部分21の両端に設けられた略直線状に伸びるリード部分22A,22Bとを有するコイル状の電極(以下、「コイル状電極」ともいう。)からなるものである。
この内部電極20は、放電容器11の内部において、放電容器11の中心軸(管軸)C上に位置するように配置されている。すなわち、内部電極20は、当該内部電極20を構成するコイル状電極の中心軸が放電容器11の中心軸(管軸)と一致するように、放電容器11の中心軸に沿って伸びるよう配置されている。
この図の例において、内部電極20を構成するコイル状電極のコイル状部分21は、第2封止部16側の端部に、その他の大部分よりもコイルピッチの小さい部分(以下、「ピッチ密部分」ともいう。)を有するものである。
また、内部電極20は、一方のリード部分22Aの一端(
図1における左端)が第1封止部13内に伸びると共に、他方のリード部分22Bの他端(
図1における右端)が第2封止部16内に伸びており、これにより、コイル状部分21が放電容器11の内部空間に位置された状態で支持されている。
第1封止部13内に伸びるリード部分22Aの一端は、当該第1封止部13内に埋設された金属箔28に接続されている。また金属箔28には、その一端(
図1における左端)に外部リード29が接続されている。このようにして、内部電極20は、金属箔28を介して外部リード29と電気的に接続されている。
【0016】
外部電極30は、例えば導電体材料よりなり、筒状の形態を有する網状の外部電極形成部材(以下、「メッシュ状電極部材」ともいう。)からなるものである。
この外部電極30を構成するメッシュ状電極部材は、放電容器11の外表面に密接した状態で発光部12の外周面の全域にわたって管軸方向に伸びるように配設されている。
この図の例において、外部電極30を構成するメッシュ状電極部材は、その一端(
図1における左端)31が発光部12の第1封止部13側の端部に位置されており、その他端(
図1における右端)32が第2封止部16側の端部に位置されている。また、このメッシュ状電極部材によって構成される外部電極30は接地されている。
メッシュ状電極部材は、当該メッシュ状電極部材を放電容器11に確実に固定するために、発光部12に固定されていることが好ましい。メッシュ状電極部材を発光部12に固定するための手法としては、例えばメッシュ状電極部材を構成する導電体材料と同一の材質などの導電体材料素線(以下、「電極固定用素線」ともいう。)を当該メッシュ状電極部材に接続し、その電極固定用素線を、発光部12の外表面に直接的に、あるいはメッシュ状電極部材を介して巻付ける方法が挙げられる。この電極固定用素線は、メッシュ状電極部材と電気的に接続されており、外部電極形成部材の構成部材とされるものである。ここに、電極固定用素線は、メッシュ状電極部材と別個のものであってもよく、またはメッシュ状電極部材の構成素線に連続するもの、すなわちメッシュ状電極部材と一体のものであってもよい。
【0017】
内部電極20は、外部電極30よりも高電圧が印加される高圧側電極とされている。内部電極20に固定的に外部電極30よりも高電圧が印加されることにより、内部電極20に接続された後述する支持部材25の電位が確定するため、放電容器11内のより電位の低いところに放電しやすく、希ガス蛍光ランプ10が始動しやすいものとなる。
【0018】
また、希ガス蛍光ランプ10は、放電容器11内に、例えばタングステンなどの耐熱性を有する金属よりなり、内部電極20に電気的に接続されると共に、放電容器11の内壁に設けられた後述する導電性物質層26に接触するよう設けられた支持部材25を有する。
この支持部材25は、
図2および
図3に示すように、例えば金属素線によって形成され、放電容器11の内表面に沿って周方向に伸びるリング状体25aおよび当該リング状体25aと連続して径方向内方に伸びる線状部25bよりなるものである。この図の例において、支持部材25は、線状部25bが内部電極20を構成するコイル状電極のピッチ密部分に巻回することにより、内部電極20を支持すると共に電気的に接続されている。支持部材25は、リング状体25aの少なくとも一部が導電性物質層26に接触した状態とされていればよい。
放電容器11内において、支持部材25は、発光部12における第2封止部16の近傍に位置している。
【0019】
支持部材25を設けることによれば、内部電極20と外部電極30との間に放電を生じさせるために大きな始動開始電圧が必要とされず、よって希ガス蛍光ランプ10に優れた始動性を得ることができる。
また、支持部材25には、内部電極20に対する位置決め・保持作用も得られることから、内部電極20を放電容器11内における所期の配置位置に所期の状態で保持することができる。
【0020】
そして、希ガス蛍光ランプ10には、放電容器11の内壁における、例えば上記の支持部材25と接触する位置に導電性物質層26が形成されている。
導電性物質層26は、放電容器11の周方向に伸びる帯状のものとすることができる。
導電性物質層26は、導電性ペーストが塗布されて形成されるものであってもよく、金属箔からなるものであってもよい。
導電性ペーストとしては、アルミニウム、銀、ニッケルなどの金属、炭素、酸化インジウムなどを含有する物質、あるいは、これらの混合物を用いることができる。導電性物質層26を形成するための導電性ペーストとしては、カーボンと低融点ガラス(フリットガラス)を混合した、いわゆるカーボンペーストを好適に用いることができる。
導電性物質層26は、例えば放電容器11の内壁の周方向に伸びる帯状のものであり、この例においては、放電容器11の内壁の全周にわたって伸びる形状とされている。
導電性物質層26は、放電容器11の内壁上に形成されていてもよく、蛍光体層上に形成されていてもよい。
【0021】
放電容器11の内部に封入される発光ガスとしては、例えばキセノンガス(Xe)、アルゴンガス(Ar)、ネオンガス(Ne)、クリプトンガス(Kr)などのエキシマ放電によってエキシマ分子を形成する放電媒質としての作用を有する希ガスが用いられる。
また、放電媒質としては、希ガスと共に必要に応じて、フッ素ガス(F)、塩素ガス(Cl)、沃素ガス(I)および臭素ガス(Br)などのハロゲンガスが用いられる。
【0022】
このような構成の希ガス蛍光ランプ10の仕様の一例としては、放電容器11は、全長が146mmであり、また放電容器11における発光部12は、外径がφ16mm、内径がφ14mmおよび管軸方向の長さが100mmである。
また、内部電極20を構成するコイル状電極は、金属素線径が0.3mm、コイル状部分21の外径(コイル外径)が1.4mm、コイルピッチが1.8mmおよびコイル状部分21の長さが95mmである。
支持部材25は、リング状体25aの外径がφ14mmである。
また、放電容器11の内部空間には放電媒質としてキセノンガスとネオンガスとの混合ガスが46.7kPaの圧力で封入される。
【0023】
この希ガス蛍光ランプ10においては、内部電極20がより高電圧となるよう内部電極20と外部電極30との間に高電圧が供給されると、まず、この内部電極20と支持部材25を介して同電位とされた導電性物質層26から、放電容器11に対して放電が始まる。次いで、放電容器11を介して内部電極20と外部電極30との間に放電が生起される。これにより、放電空間内に封入されたガスの発光による光が放電容器11を透過し、外部電極30を構成するメッシュ状電極部材の網目の間隙を介して放射される。
【0024】
以上の希ガス蛍光ランプ10によれば、放電容器11の内部に配設された内部電極20が外部電極30よりも高電圧が印加されるものであると共に、放電容器11の内壁における、内部電極20に電気的に接続された支持部材25と接触または近接する位置に、導電性物質層26が形成されている。これにより、始動に係る電圧が印加された後の放電容器11の分極を容易に生じさせることができ、その結果、始動開始電圧を低く抑制することができる。また、支持部材25の電位が確実に定められるので当該支持部材25から放電容器11内のより電位の低いところに放電が生じ易く、従って、始動性のバラツキが抑制されて確実な始動性を得ることができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、支持部材と導電性物質層とが互いに接触して設けられていることに限定されず、
図4に示されるように、支持部材25Aと導電性物質層26とが互いに接触せず、近接する位置に設けられていてもよい。この例においては、支持部材25Aが導電性物質層26から径方向に離間した位置に設けられている。
支持部材25Aと導電性物質層26との距離は、2mm以下であることが好ましい。具体的には、例えば、放電容器11における発光部12の内径がφ14mmである場合に、支持部材25Aを構成するリング状体の外径がφ13mmとされる。
支持部材25Aは、放電容器11の管軸C上から大きく変位して移動することを規制する状態に内部電極20を支持している。
【0026】
また例えば、支持部材と導電性物質層とが互いに非接触状態に設けられている場合に、
図5に示されるように、支持部材25Bが導電性物質層26から軸方向に離間した位置に設けられていてもよい。なお、
図5は希ガス蛍光ランプから外部電極を除いて要部を拡大して示す説明用概略図である。
【0027】
支持部材25A(25B)と導電性物質層26とが互いに非接触状態に設けられている場合には、電極20,30間に高電圧が供給されると、まず、高電圧に充電された支持部材25A(25B)から、これと近接し、かつ、より低い電位とされた導電性物質層26に対して放電が始まる。
【0028】
さらに例えば、導電性物質層26は、放電容器11の周方向に伸びる帯状のものに限定されず、
図6(a)に示されるように、点状のもの(導電性物質層26A)であってもよい。また、
図6(b)に示されるように、点状のもの(導電性物質層26A)が周方向に複数形成されて導電性物質層が構成されていてもよい。さらに、
図6(c)に示されるように、放電容器11の軸方向に伸びる帯状のもの(導電性物質層26B)であってもよい。
このような導電性物質層26A,26Bを備えた希ガス蛍光ランプによれば、上記の放電容器11の周方向の全周にわたって塗布された希ガス蛍光ランプに比べて、照度の低下を抑制することができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
<実施例1>
図1の構成を有する希ガス蛍光ランプ(以下、「エキシマランプ(1)」ともいう。)を作製した。
作製した希ガス蛍光ランプ(1)において、放電容器11は、発光部12の全長が100mm、外径がφ16mm、内径がφ14mmである。
内部電極20を構成するコイル状電極は、タングステン製である。
外部電極30を構成するメッシュ状電極部材は、モネル製である。
支持部材25は、リング状体25aの外径がφ14mmである。
導電性物質層26はカーボンペーストが幅1.5mmで放電容器11の内壁の全周にわたって塗布されて形成されたものである。
支持部材25は、導電性物質層26に接触している。
また、放電容器11の内部空間には放電媒質としてキセノンガスとネオンガスの混合ガスを46.7kPaの圧力で封入した。
また、内部電極20を外部電極30より高電圧になる状態に接続した。
【0031】
<比較例1>
次いで、希ガス蛍光ランプ(1)において、導電性物質層が設けられていないものを用いたこと以外は当該希ガス蛍光ランプ(1)と同様の構成を有する希ガス蛍光ランプ(以下、「比較用希ガス蛍光ランプ(1)」ともいう。)を作製した。
この比較用希ガス蛍光ランプ(1)において、導電性物質層が設けられていないこと以外は希ガス蛍光ランプ(1)を構成する発光管と同様の構成を有するものである。
【0032】
(1)始動開始電圧
作製した希ガス蛍光ランプ(1)および比較用希ガス蛍光ランプ(1)の各々を、プッシュプル方式のインバータの出力端子に接続し、インバータの出力電圧を徐々に上げ、放電が放電容器の全体に広がったらスイッチを切る。ランプを外し、その状態が維持されているインバータの出力端子に高圧プローブ(3000V)を接続する。その状態でスイッチを入れ、オシロスコープに表示される正弦波から、ピーク電圧(始動開始電圧)を読み取った。結果を表1に示す。
【0033】
(2)始動性
作製した希ガス蛍光ランプ(1)および比較用希ガス蛍光ランプ(1)の各々をインバータに接続した状態で点灯動作を行い、点灯の有無を確認した。
この点灯の有無の確認を、希ガス蛍光ランプ(1)280本について、および、比較用希ガス蛍光ランプ(1)62本について、それぞれ行い、問題なく点灯(始動)したランプの割合を算出した。結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
以上の結果から、希ガス蛍光ランプ(1)は、比較用希ガス蛍光ランプ(1)よりも始動開始電圧が低く、また、良好な始動性が得られることが確認された。