(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記流通制御手段は、前記原水シリカ比率計算部が計算した前記原水のシリカ比率が基準原水シリカ比率以下の場合において、前記負荷状態計算部が計算した前記負荷率が第1負荷率を超えると、前記流通制御手段は前記水処理モードから前記再生モードに切り替えるように前記流通手段を制御し、前記原水シリカ比率計算部が計算した前記原水のシリカ比率が前記基準原水シリカ比率よりも大きい場合において、前記負荷状態計算部が計算した前記負荷率が前記第1負荷率よりも小さい第2負荷率を超えると、前記流通制御手段は、前記水処理モードから前記再生モードに切り替えるように前記流通手段を制御する請求項1に記載の水処理システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、
図1を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態による水処理システム1を示す概略図である。
【0011】
図1に示すように、第1実施形態の水処理システム1は、陽イオン交換塔11A及び陰イオン交換塔11Bを有するイオン交換装置11と、陽イオン交換塔流路切換弁12A及び陰イオン交換塔流路切換弁12Bを有する流通手段12と、陽イオン交換樹脂用再生液タンク13A及び陰イオン交換樹脂用再生液タンク13Bを有する再生液タンク13と、原水シリカ濃度測定部14と、原水電気伝導率測定部15と、原水流量測定部16と、制御装置17と、を備える。本実施形態におけるイオン交換装置11は、いわゆる2床2塔式のイオン交換装置である。
【0012】
水処理システム1は、原水供給ラインL11と、通水ラインL12と、処理水ラインL13と、陽イオン交換樹脂用再生液供給ラインL14と、陽イオン交換樹脂用再生液排出ラインL15と、陰イオン交換樹脂用再生液供給ラインL16と、陰イオン交換樹脂用再生液排出ラインL17と、を備える。なお、「ライン」とは、流路、経路、管路等の総称である。
【0013】
原水供給ラインL11には、水道水や地下水等の原水W11が流通する。原水供給ラインL11の下流側端部は、陽イオン交換塔流路切換弁12Aに接続されている。原水供給ラインL11の上流側端部は、原水供給部(不図示)に接続されている。
【0014】
通水ラインL12には、陽イオン交換塔11Aから陽イオン交換塔流路切換弁12Aを介して排出される陽イオン除去水W12が流通する。通水ラインL12の上流側端部は、陽イオン交換塔流路切換弁12Aに接続され、通水ラインL12の下流側端部は、陰イオン交換塔流路切換弁12Bに接続されている。
【0015】
処理水ラインL13には、陰イオン交換塔11Bから陰イオン交換塔流路切換弁12Bを介して排出される処理水W13(純水、脱塩水)が流通する。処理水ラインL13の上流側端部は、陰イオン交換塔流路切換弁12Bに接続され、処理水ラインL13の下流側端部は、例えば、処理水W13の需要箇所(不図示)に接続される。
【0016】
陽イオン交換樹脂用再生液供給ラインL14には、陽イオン交換樹脂用再生液W14が流通する。陽イオン交換樹脂用再生液供給ラインL14の上流側端部は、陽イオン交換樹脂用再生液タンク13Aに接続され、陽イオン交換樹脂用再生液供給ラインL14の下流側端部は、陽イオン交換塔流路切換弁12Aに接続されている。陽イオン交換樹脂用再生液排出ラインL15には、陽イオン交換樹脂床の再生に使用された後の廃液W15が流通する。陽イオン交換樹脂用再生液排出ラインL15の上流側端部は、陽イオン交換塔流路切換弁12Aに接続されている。陽イオン交換樹脂用再生液排出ラインL15の下流側端部は、再生液排出部(不図示)に接続されている。
【0017】
陰イオン交換樹脂用再生液供給ラインL16には、陰イオン交換樹脂用再生液W16が流通する。陰イオン交換樹脂用再生液供給ラインL16の上流側端部は、陰イオン交換樹脂用再生液タンク13Bに接続され、陰イオン交換樹脂用再生液供給ラインL16の下流側端部は、陰イオン交換塔流路切換弁12Bに接続されている。陰イオン交換樹脂用再生液排出ラインL17には、陰イオン交換樹脂床の再生に使用された後の廃液W17が流通する。陰イオン交換樹脂用再生液排出ラインL17の上流側端部は、陰イオン交換塔流路切換弁12Bに接続されている。陰イオン交換樹脂用再生液排出ラインL17の下流側端部は、再生液排出部(不図示)に接続されている。
【0018】
原水シリカ濃度測定部14は、接続部J1において原水供給ラインL11に接続されている。原水電気伝導率測定部15は、接続部J2において原水供給ラインL11に接続されている。接続部J2は、接続部J1の下流に位置する。原水流量測定部16は、原水供給ラインL11における接続部J1及び接続部J2の下流に設けられている。制御装置17は、陽イオン交換塔流路切換弁12A、陰イオン交換塔流路切換弁12B、原水シリカ濃度測定部14、原水電気伝導率測定部15及び原水流量測定部16に電気的に接続されている。
図1において、電気的な接続の経路は、破線で示されている。
【0019】
陽イオン交換塔11Aは、陽イオン交換樹脂からなるイオン交換樹脂床(不図示)を収容した圧力タンクで構成されている。原水供給ラインL11を介して原水W11が陽イオン交換塔11Aに導入された場合、陽イオン交換塔11Aは、導入された原水W11から陽イオンを除去し、原水W11から陽イオンを除去したものを陽イオン除去水W12として通水ラインL12に流通させる。また、陽イオン交換樹脂用再生液供給ラインL14を介して陽イオン交換樹脂用再生液W14が陽イオン交換塔11Aに導入された場合、陽イオン交換樹脂床は再生される。
【0020】
陰イオン交換塔11Bは、陰イオン交換樹脂からなるイオン交換樹脂床(図示せず)を収容した圧力タンクで構成されている。通水ラインL12を介して陽イオン除去水W12が陰イオン交換塔11Bに導入された場合、陰イオン交換塔11Bは、陽イオン除去水W12から陰イオンを除去し、陽イオン除去水W12から陰イオンを除去したものを処理水W13(純水、脱塩水)として処理水ラインL13に流通させる。また、陰イオン交換樹脂用再生液供給ラインL16を介して陰イオン交換樹脂用再生液W16が陰イオン交換塔11Bに導入された場合、陰イオン交換樹脂床は再生される。
【0021】
陽イオン交換樹脂用再生液タンク13Aには、陽イオン交換塔11Aの陽イオン交換樹脂床の再生液として、例えば塩酸や硫酸等の無機酸が貯留されている。
陰イオン交換樹脂用再生液タンク13Bには、陰イオン交換塔11Bの陰イオン交換樹脂床の再生液として、例えば水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液が貯留されている。
【0022】
陽イオン交換塔流路切換弁12Aは、原水供給ラインL11を介して、陽イオン交換塔11Aに原水W11を導入し、陽イオン除去水W12を通水ラインL12に流通させる流路と、陽イオン交換樹脂用再生液供給ラインL14を介して、陽イオン交換塔11Aに陽イオン交換樹脂用再生液W14を導入し、陽イオン交換塔11Aの陽イオン交換樹脂床を再生させる流路と、を切換え可能な弁である。
陰イオン交換塔流路切換弁12Bは、通水ラインL12を介して、陰イオン交換塔11Bに陽イオン除去水W12を導入し、処理水W13を処理水ラインL13に流通させる流路と、陰イオン交換樹脂用再生液供給ラインL16を介して、陰イオン交換塔11Bに陰イオン交換樹脂用再生液W16を導入し、陰イオン交換塔11Bの陰イオン交換樹脂床を再生させる流路と、を切換え可能な弁である。
【0023】
陽イオン交換塔流路切換弁12A及び陰イオン交換塔流路切換弁12Bは、イオン交換装置11に原水W11を導入することにより処理水W13を製造する水処理モードと、陽イオン交換塔11A及び陰イオン交換塔11Bのそれぞれに陽イオン交換樹脂用再生液W14及び陰イオン交換樹脂用再生液W16を導入することにより陽イオン交換樹脂床及び陰イオン交換樹脂床を再生させる再生モードと、を有する流通手段として機能する。
【0024】
原水シリカ濃度測定部14は、原水供給ラインL11を流通する原水W11のシリカ濃度を測定し、測定したシリカ濃度の値を制御装置17に出力する計測器である。なお、原水シリカ濃度測定部14の具体的な構成については、
図3及び
図4を用いて後述する。
【0025】
原水電気伝導率測定部15は、原水供給ラインL11を流通する原水W11の電気伝導率を測定し、測定した電気伝導率の値を制御装置17に出力する計測器である。
原水流量測定部16は、原水供給ラインL11を流通する原水W11の流量を測定し、測定した流量の値を制御装置17に出力する流量センサである。原水流量測定部16は、瞬間流量及び積算流量を検出可能に構成されており、例えば、接線式流量センサや軸流式流量センサを利用することができる。
【0026】
制御装置17は、流通制御手段としての流通制御部17Aと、原水シリカ比率計算部17Bと、陰イオン量推定部17Cと、負荷状態計算部17Dと、を有している。
【0027】
流通制御部17Aは、原水シリカ比率計算部17Bが計算した原水W11のシリカ比率の値Rs、及び負荷状態計算部17Dが計算した負荷率の値RLに基づいて、水処理モードから再生モードに切り替えるように、陽イオン交換塔流路切換弁12A及び陰イオン交換塔流路切換弁12Bを制御するとともに、所定の移行条件に基づいて再生モードから水処理モードに切り替えるように流通手段12を制御する制御手段である。より具体的には、流通制御部17Aは、原水シリカ比率計算部17Bが計算した原水のシリカ比率の値Rsと、あらかじめ設定・保持しておいた基準原水シリカ比率の値R0とを比較する。流通制御部17Aは、Rs≦R0であると判定した場合において、負荷状態計算部17Dが計算した負荷率の値RLが第1負荷率の値RL1を超えたと判定すると、水処理モードから再生モードに切り替えるように陽イオン交換塔流路切換弁12A及び陰イオン交換塔流路切換弁12Bを制御する。また、流通制御部17Aは、Rs>R0であると判定した場合において、負荷状態計算部17Dが計算した負荷率の値RLが第1負荷率の値RL1よりも小さい第2負荷率の値RL2を超えたと判定すると、水処理モードから再生モードに切り替えるように陽イオン交換塔流路切換弁12A及び陰イオン交換塔流路切換弁12Bを制御する。
【0028】
原水シリカ比率計算部17Bは、原水供給ラインL11を流通する原水W11のシリカ比率を計算し、シリカ比率の値Rsを流通制御部17Aに出力する計算機である。
原水シリカ比率計算部17Bにおいて、原水のシリカ比率は、以下のようにして計算される。
原水シリカ比率=原水シリカ濃度[g/m
3]/(原水シリカ濃度[g/m
3]+原水陰イオン濃度[g/m
3]) (1a)
ここで、原水陰イオン濃度は、原水W11の全イオン濃度の50%に相当する。原水W11に含まれるイオンは、電気的中性の原理により陰イオンの合計と陽イオンの合計が常に等しいからである。
よって、式(1a)は、次の式に変形できる。
原水シリカ比率=原水シリカ濃度[g/m
3]/(原水シリカ濃度[g/m
3]+原水全イオン濃度[g/m
3]/2) (1b)
原水全イオン濃度は、原水W11の総溶解固形分(以下、「TDS」ともいう。)で代用可能である。
原水全イオン濃度[g/m
3]=TDS[g/m
3] (1c)
TDSは、次の式により求めることができる。
TDS[g/m
3]=原水W11の電気伝導率[μS/cm]×換算係数 (1d)
なお、換算係数は、原水W11の水質により0.45〜1の範囲で決められる定数である。換算係数は、原水W11の塩分濃度に依存し、塩分濃度が高いほど高い値となり、例えば、通常の水道水や工業用水においては、0.5(又は、0.4〜0.6)に設定される。
【0029】
式(1b)、式(1c)及び式(1d)から、原水シリカ比率は、以下の式で計算される。
原水シリカ比率=[原水シリカ濃度[g/m
3]/(原水シリカ濃度[g/m
3]+原水電気伝導率[μS/cm])/2×換算係数] (1e)
このように、原水シリカ比率計算部17Bは、原水電気伝導率測定部15が出力した電気伝導率の値と、原水シリカ濃度測定部14が出力したシリカ濃度の値と、式(1e)と、を使用することによって、原水W11のシリカ比率を計算する。
【0030】
陰イオン量推定部17Cは、陰イオン交換塔11Bの陰イオン交換樹脂床が原水W11から除去した陰イオン量を推定し、陰イオン量の値を負荷状態計算部17Dに出力する計算機である。
陰イオン交換樹脂床が原水W11から除去した陰イオン量は、式(2a)のように近似することによって推定される。アルカリ溶液で十分に再生されたOH型の陰イオン交換樹脂床は、原水W11に含まれるほぼすべての陰イオンを除去する。そのため、陰イオン交換樹脂床が原水W11から除去した陰イオン量と、陰イオン交換樹脂床に流入した陰イオン量は、ほぼ等しいと考えてよいからである。
陰イオン交換樹脂床が原水W11から除去した陰イオン量[g]=陰イオン交換樹脂床に流入した陰イオン量[g] (2a)
【0031】
次に、陰イオン交換樹脂床に流入した陰イオン量[g]は、以下の式(2b)で計算される。
陰イオン交換樹脂床に流入した陰イオン量[g]=原水W11の陰イオン濃度[g/m3]×陰イオン交換樹脂床に流入した原水W11の積算流入量[m
3] (2b)
上述したように、原水陰イオン濃度は、原水W11の全イオン濃度の50%に相当するので、式(2b)は、次の式(2c)に変形できる。
イオン交換樹脂床に流入した陰イオンの量[g]=原水全イオン濃度[g/m
3]/2×陰イオン交換樹脂床に流入した原水W11の積算流入量[m3] (2c)
上述したように、原水全イオン濃度は、原水W11のTDSで代用可能であるであるから、式(2c)は、次の式(2d)に変形できる。
イオン交換装置11に流入する陰イオンの量[g]=TDS[g/m
3]/2×原水積算流量 (2c)
上述したように、TDS[g/m
3]=原水W11の電気伝導率[μS/cm]×換算係数であるから、(2c)は、次の式に変形できる。
イオン交換樹脂床に流入した陰イオンの量=原水W11の電気伝導率[μS/cm]/2×換算係数×陰イオン交換樹脂床に流入した原水W11の積算流入量[m
3] (2d)
なお、換算係数は、上述の(1e)で使用される換算係数と同一である。
そして、式(2a)に式(2d)を代入することにより、以下の式(2e)となる。
陰イオン交換樹脂床が原水W11から除去した陰イオン量[g]=原水W11の電気伝導率[μS/cm]/2×換算係数×陰イオン交換樹脂床に流入した原水W11の積算流入量[m
3] (2e)
【0032】
このように、陰イオン量推定部17Cは、原水電気伝導率測定部15が出力した電気伝導率の値と、原水流量測定部16が測定した原水積算流量の値と、式(2e)と、を使用することにより、原水W11から除去した陰イオン量を推定する。
【0033】
なお、原水W11の電気伝導率は、一定でない場合がある。そのため、例えば、陰イオン量推定部17Cは、以下のように陰イオン交換樹脂床が原水W11から除去した陰イオン量を計算する。まず、原水電気伝導率測定部15がリアルタイムで測定した単位周期時間毎の電気伝導率と、原水流量測定部16がリアルタイムで測定した単位周期時間毎の原水W11の積算流入量との積を計算し、単位周期時間毎に流入する陰イオン量を計算する。その後、陰イオン量推定部17Cは、単位周期時間毎に流入する陰イオン量を順次加算していくことにより、イオン交換装置11に流入する陰イオンの量を計算することが可能である。また、単位周期時間は、予想される原水W11の電気伝導率の変動に応じて、適宜変更し得る。
【0034】
負荷状態計算部17Dは、陰イオン量推定部17Cが推定した陰イオンの量と、陰イオン交換樹脂床が原水W11から除去できる最大の陰イオン量と、の比を計算することによって求められる負荷率(陰イオンによる交換能力の消費率:0〜100%)を計算し、負荷率の値RLを流通制御部17Aに出力する計算機である。負荷率が相対的に大きい場合、陰イオン交換樹脂床は、多くの陰イオンを既に除去した状態であり、陰イオンを除去する余力が少ない状態である。負荷率が相対的に小さい場合、陰イオン交換樹脂床は、まだ少しの陰イオンを除去しただけの状態であり、陰イオンを除去する余力が多い状態である。なお、陰イオン交換樹脂床が原水W11から除去できる最大の陰イオン量は、陰イオン交換樹脂ビーズの銘柄毎にメーカーが保証している単位体積あたりの交換容量、陰イオン交換塔11Bへの陰イオン交換樹脂ビーズの充填体積、陰イオン交換樹脂床への通水流速(空間速度SV;線速度LV)等によって決まる値である。
【0035】
次に、一実施形態の水処理システム1の動作について、
図2のフローチャートを参照しながら説明する。
図2は、水処理システム1の動作のフローチャートである。
図2に示すように、ステップST101において、流通制御部17Aは、陽イオン交換塔流路切換弁12A及び陰イオン交換塔流路切換弁12Bを水処理モードで動作させる。原水W11は、原水供給ラインL11及び陽イオン交換塔流路切換弁12Aを介して陽イオン交換塔11Aに導入される。導入された原水W11は、陽イオン交換塔11Aによって陽イオンが除去され、陽イオン除去水W12として通水ラインL12を流通する。陽イオン除去水W12は、通水ラインL12及び陰イオン交換塔流路切換弁12Bを介して陰イオン交換塔11Bに導入される。導入された陽イオン除去水W12は、陰イオン交換塔11Bによって陰イオン及びシリカ(コロイド状シリカ及びイオン状シリカ)が除去され、処理水W13(純水、脱塩水)として処理水ラインL13を流通する。
【0036】
ステップST102において、流通制御部17Aは、原水シリカ比率計算部17Bからシリカ比率の値Rsを取得する。
ステップST103において、流通制御部17Aは、負荷状態計算部17Dから負荷率の値RLを取得する。
【0037】
ステップST104において、流通制御部17Aは、シリカ比率の値Rsと、予め設定・保存しておいた基準原水シリカ比率の値R0とを比較する。流通制御部17Aにより、Rs≦R0であると判定された場合(YES)、処理はステップST105へ移行する。また、流通制御部17Aにより、Rs≦R0でないと判定された場合(NO)、処理はステップST106へ移行する。
【0038】
ステップST105において、流通制御部17Aは、負荷率の値RLと、予め設定・保存しておいた第1負荷率の値RL1とを比較する。流通制御部17Aにより、RL>RL1であると判定された場合(YES)、処理はステップST107へ移行する。流通制御部17Aにより、RL>RL1でないと判定された場合(NO)、処理はステップST102に戻り、水処理モードでの動作を継続する。
【0039】
ステップST106において、流通制御部17Aは、負荷率の値RLと、予め設定・保存しておいた第2負荷率の値RL2とを比較する。なお、第2負荷率の値RL2は、第1負荷率の値RL1よりも小さい値である。流通制御部17Aにより、RL>RL2であると判定された場合(YES)、処理はステップST107へ移行する。流通制御部17Aにより、RL>RL2でないと判定された場合(NO)、処理はステップST102に戻り、水処理モードでの動作を継続する。
【0040】
ステップST107において、流通制御部17Aは、陽イオン交換塔流路切換弁12A及び陰イオン交換塔流路切換弁12Bを再生モードで動作させる。すなわち、ステップST107において、流通制御部17Aは、イオン除去能力が喪失したイオン交換樹脂床を再生させるために、陽イオン交換塔11A及び陰イオン交換塔11Bのそれぞれに再生液を導入させるように陽イオン交換塔流路切換弁12A及び陰イオン交換塔流路切換弁12Bを制御する。
【0041】
ステップST108において、流通制御部17Aは、所定の移行条件を満たすか否か、例えば、再生工程、押出工程及びリンス工程からなる一連の再生動作を完了したか否かを判定する。流通制御部17Aにより、所定の移行条件が満たされていないと判定された場合に、処理はステップST108へ戻り、再生モードでの動作を継続する。陽イオン交換塔11Aの陽イオン交換樹脂床及び陰イオン交換塔11Bの陰イオン交換樹脂床は、所定の移行条件が満たされるまで再生処理され、元のイオン交換能力に戻される。
流通制御部17Aにより、所定の移行条件を満たすと判定された場合に、処理はステップST101へリターンし、再び水処理モードでの動作を開始する。
【0042】
ステップST104において、流通制御部17Aが、シリカ比率の値Rsと、予め設定・保存しておいた基準原水シリカ比率の値R0とを比較する理由は、次の通りである。
陰イオン交換樹脂床の負荷率(陰イオンによる交換能力の消費率)は、流入する原水W11の量が増加するに従って増加していく。原水W11のシリカ比率が相対的に小さい場合(Rs≦R0の場合)、陰イオン交換樹脂床の吸着負荷の大部分は陰イオンによるものである。そのため、原水W11のシリカ比率が相対的に小さい場合(Rs≦R0の場合)は、シリカ吸着に対する交換能力の余裕度が十分にあるので、陰イオン交換樹脂床の負荷率が大きくなったタイミングで陰イオン交換樹脂床を再生しても、再生前にシリカリークを起こすことがないと考えられる。一方、原水W11のシリカ比率が相対的に大きい場合(Rs>R0の場合)、陰イオン交換樹脂床の吸着負荷の多くをシリカが占めるようになる。そのため、原水W11のシリカ比率が相対的に大きい場合(Rs>R0の場合)は、シリカ吸着に対する交換能力の余裕度が余りないので、陰イオン交換樹脂床の負荷率が大きくなったタイミングで陰イオン交換樹脂床を再生すると、再生前にシリカリークを起こす可能性があると考えられる。
【0043】
このように、再生モードへ移行する最適なタイミングは、原水W11のシリカ比率に応じて変動する。シリカリークを起こすことなく再生モードへ移行する最適なタイミングは、原水W11のシリカ比率が相対的に小さい場合(Rs≦R0の場合)、イオン交換樹脂床の負荷率が相対的に大きくなったタイミングで十分間に合うし、原水W11のシリカ比率が相対的に大きい場合(Rs>R0の場合)、イオン交換樹脂床の負荷率が相対的に大きくなる前のタイミングが適切である。よって、ステップST104の処理は、再生モードへ移行する最適なタイミングを判定するために行われる。
【0044】
ステップST105において、負荷率の値RLと、予め設定・保存しておいた第1負荷率の値RL1とを比較し、ステップST106において、負荷率の値RLと、予め設定・保存しておいた第2負荷率の値RL2(RL1よりも小さい)とを比較する理由は、以下の通りである。
ステップST105及びステップST106は、再生モードへ移行するか否かを判定するためのステップである。ここで、ステップST105は、原水W11のシリカ比率が相対的に小さい(Rs≦R0)と判定された場合に行われる処理である。一方、ステップST106は、原水W11のシリカ比率が相対的に大きい(Rs>R0)と判定された場合に行われる処理である。そのため、ステップST105においては、イオン交換樹脂床の負荷率が相対的に大きくなったタイミング(すなわち、RL≧RL1になったタイミング)で再生モードへ移行するようにし、ステップST106においては、イオン交換樹脂床の負荷率が相対的に大きくなる前のタイミング(RL≧RL2になったタイミング)で再生モードへ移行するようにする。
よって、ステップST105は、イオン交換樹脂床の負荷率が相対的に大きくなったタイミング(RL≧RL1になったタイミング)で再生モードへ移行するために行われる。また、ステップST106は、イオン交換樹脂床の負荷率が相対的に大きくなる前のタイミング(RL≧RL2になったタイミング)で再生モードへ移行するために行われる。
【0045】
一実施形態の水処理システム1によれば、原水のシリカ比率、及び陰イオン交換樹脂床の負荷率に基づいて、水処理モードから再生モードに切り替えるタイミングを最適化することができる。より具体的には、一実施形態の水処理システム1は、原水のシリカ比率の値Rsが基準原水シリカ比率の値R0以下の場合においては、陰イオン交換樹脂床の負荷率の値RLが第1負荷率の値RL1を超えると、流通制御部17Aが水処理モードから再生モードに切り替えるようにしている。また、原水のシリカ比率の値Rsが基準原水シリカ比率の値R0よりも大きい場合においては、陰イオン交換樹脂床の負荷率の値RLが第2負荷率の値RL2を超えると、流通制御部17Aが水処理モードから再生モードに切り替えるようにしている。
そのため、水処理システム1においては、シリカリークを起こすことなく、陰イオン交換樹脂床を適切なタイミングで再生することが可能となる。
【0046】
次に、
図3及び
図4を用いて、原水シリカ濃度測定部14(シリカ濃度センサ)の構造について、説明する。原水シリカ濃度測定部14は、モリブデンイエロー法(モリブデン黄吸光光度法)により原水W11のシリカ濃度を測定する装置である。ここでは、説明の便宜上、原水シリカ濃度測定部14により測定する原水W11を検査水W101として説明する。
【0047】
原水シリカ濃度測定部14は、測定波長の切り替えにより、低濃度のシリカ濃度と、高濃度シリカ濃度とを測定することができる。
図3に示すように、原水シリカ濃度測定部14は、測定セル120と、試薬注入部130と、吸光度測定部の一部を構成する光学検出部140と、攪拌部150と、センサ表示部160と、センサ制御部110と、検査水導入ラインL101と、検査水排出ラインL102と、を備える。
【0048】
測定セル120は、シリカ濃度を測定する検査水W101を収容する容器である。測定セル120は、不透明の樹脂材料により形成されている。測定セル120は、その側壁に一対の光透過窓121,122が形成されている。光透過窓121,122には、透明な板材121a,122aが嵌め込まれている。
【0049】
検査水導入ラインL101は、測定セル120への検査水W101の導入を行うラインである。検査水導入ラインL101は、
図3に示すように、測定セル120の光透過窓121,122よりも下方の側壁に接続されている。検査水導入ラインL101は、測定セル120へ検査水W101を導入する流路である。検査水導入ラインL101には、電磁弁123が設けられている。電磁弁123は、検査水W101を採取する際に用いられる弁である。電磁弁123の開閉は、センサ制御部110から出力される駆動信号により制御される。センサ制御部110は、制御装置17により制御される。
【0050】
検査水排出ラインL102は、測定セル120からの検査水W101(試薬W102を含む)の排出を行うラインである。検査水排出ラインL102は、
図3に示すように、測定セル120の光透過窓121,122よりも上方の側壁に接続されている。検査水排出ラインL102は、測定セル120から検査水W101を排出する流路である。
【0051】
試薬注入部130は、測定セル120の内部へ試薬W102を注入する設備である。試薬注入部130は、試薬W102を内部に保持しており、所望の量の試薬W102を測定セル120の内部に吐出して供給する。試薬W102には、検査水W101に含まれるシリカと反応して、発色する呈色物質が配合されている。本実施形態では、モリブデンイエロー法によりシリカ濃度を測定しており、試薬としては、七モリブデン酸六アンモニウムおよび無機酸を含む水溶液を用いる。本実施形態に好適な一液型の試薬水溶液の組成は、本願の出願人による特許第5169809号公報に詳細に開示されているため、当該特許文献を引用して詳細な説明を省略する。
【0052】
試薬注入部130は、試薬カートリッジ131と、ローラポンプ機構132と、を備える。試薬カートリッジ131は、試薬W102(上述した一液型の試薬水溶液)が充填された試薬パック(不図示)と、試薬パックに一端側が接続され且つ他端にノズルを有する弾性チューブとからなる注入体(不図示)とが収納された容器である。
【0053】
ローラポンプ機構132は、
図3に示すように、測定セル120の上方に設けられている。ローラポンプ機構132の上部には、カートリッジ差込口133が設けられている。試薬カートリッジ131は、カートリッジ差込口133に着脱自在に装着される。
【0054】
ローラポンプ機構132は、ローラポンプ134を備える。ローラポンプ134を駆動して、試薬カートリッジ131に収納された注入体の弾性チューブをしごくことにより、試薬パック内の試薬W102をノズルから測定セル120に向けて注入することができる。ローラポンプ134の駆動は、センサ制御部110から出力される駆動信号により制御される。
【0055】
光学検出部140は、試薬W102と共に攪拌された検査水W101の吸光度を測定する設備である。光学検出部140は、
図3に示すように、第1発光素子141と、第2発光素子142と、発光基板143と、第1受光素子144と、第2受光素子145と、受光基板146と、を備える。
【0056】
第1発光素子141及び第2発光素子142は、発光基板143に実装されている。第1発光素子141及び第2発光素子142は、測定セル120の光透過窓121に向けて光を照射する素子である。第1発光素子141及び第2発光素子142は、それぞれ発光波長の異なるLED(発光ダイオード)により構成される。本実施形態においては、第1発光素子141は、低濃度のシリカ濃度を測定するために、375nmの波長(低濃度測定波長)の光を発光可能な発光素子である。第2発光素子142は、高濃度のシリカ濃度を測定するために、450nmの波長(高濃度測定波長)の光を発光可能な発光素子である。
第1発光素子141及び第2発光素子142の点灯/消灯は、センサ制御部110から出力される駆動信号により制御される。
【0057】
第1受光素子144及び第2受光素子145は、受光基板146に実装されている。第1受光素子144及び第2受光素子145は、測定セル120の光透過窓122を通過した透過光を受光する素子である。第1受光素子144及び第2受光素子145は、フォトトランジスタにより構成される。第1受光素子144及び第2受光素子145は、受光した透過光量に対応した検出値信号をセンサ制御部110に出力する。
【0058】
攪拌部150は、測定セル120の内部に収容された検査水W101及び試薬W102を攪拌する設備である。
図3に示すように、攪拌部150は、測定セル120の底部に設けられている。攪拌部150は、攪拌子151と、ステータコイル152と、を備える。攪拌子151は、測定セル120の底部に、回転可能に配置されている。ステータコイル152は、測定セル120の周囲を囲むようにリング状に形成された電磁誘導コイルである。ステータコイル152に駆動電流を供給すると、電磁誘導の作用により、測定セル120の底部に配置された攪拌子151が非接触で回転する。ステータコイル152の動作は、センサ制御部110から供給される駆動電流により制御される。
【0059】
センサ表示部160は、測定した検査水W101のシリカ濃度の測定値や原水シリカ濃度測定部14の動作状況等を表示する装置である。センサ表示部160は、液晶表示パネルにより構成される。
【0060】
センサ制御部110は、シリカ濃度センサの動作を制御する装置である。センサ制御部110は、制御装置17に接続され、制御装置17により制御される。センサ制御部110は、第1発光素子141、第2発光素子142を制御する。センサ制御部110は、第1受光素子144及び第2受光素子145からの出力を受信する。センサ制御部110は、光学検出部140により検出された吸光度に基づいて、検査水W101に含まれるシリカ成分の濃度を測定する。センサ制御部110は、測定した検査水W101のシリカ濃度の測定値をセンサ表示部160に表示させる。センサ制御部110は、後述する検量線を、測定波長毎に内部のメモリに格納している。
【0061】
センサ制御部110は、低濃度のシリカ濃度を測定するために、吸光度測定部の一部を構成する吸光度算出部111と、変化量算出部112と、計時部113と、シリカ濃度検出部114と、を有する。
【0062】
吸光度算出部111は、光学検出部140により検出された透過光量の検出値に基づいて、第1時間t1及び第2時間t2(
図4参照)において、検査水W101の吸光度を算出する。これにより、本実施形態においては、光学検出部140及び吸光度算出部111は、試薬W102が添加された検査水W101における375nmの吸光度を測定する。
【0063】
第1時間t1は、試薬W102が添加された直後の時間である(
図4参照)。第1時間t1は、好ましくは、検査水W101に試薬W102が添加されてから3分以内である。なお、第1時間t1は、規定量の試薬W102の添加を実行可能な範囲で、規定量の試薬W102の添加が完了された直後に近い時間が採用される。本実施形態においては、第1時間t1は、2分程度である(
図4参照)。また、試薬W102の添加操作に要する時間が極く短時間の場合には、第1時間t1は、検査水W101に試薬W102が添加された時間と同時である0分であってもよい。
【0064】
第2時間t2は、検査水W101と試薬W102との反応が終了した試薬反応終了時間である(
図4参照)。第2時間t2は、検査水W101と試薬W102との呈色反応がほぼ完結し、検査水W101の発色が安定する時間であり、予め試験等により求められた時間であって、予めセンサ制御部110のメモリ(不図示)に記憶されている。本実施形態においては、第2時間t2は、試薬W102の添加が開始されてから、20分程度である(
図4参照)。
【0065】
計時部113は、第2時間t2を計時する。計時部113により計時された第2時間t2において、吸光度算出部111は、検査水W101の吸光度を算出する。
【0066】
変化量算出部112は、光学検出部140及び吸光度算出部111により測定される試薬W102が添加された検査水W101の吸光度について、試薬W102が添加されてから第1時間t1経過後の検査水W101の吸光度A1と、試薬W102が添加されてから第1時間t1よりも長い第2時間t2経過後の検査水W101の吸光度A2との変化量、すなわち差分A2−A1を算出する。
【0067】
シリカ濃度検出部114は、変化量算出部112により算出された吸光度の変化量(差分)に基づいて、シリカ濃度を検出する。具体的には、シリカ濃度検出部114は、算出された吸光度の変化量(差分)を検査水W101の吸光度と見做し、この吸光度に対してシリカ濃度と吸光度との検量線を用いて検査水W101中のシリカ濃度を求める。検量線は、予めシリカ標準液を用いてシリカ濃度と吸光度との関係線として作成されており、センサ制御部110のメモリ(不図示)に記憶されている。本実施形態においては、メモリ(不図示)には、検査水W101の吸光度とシリカ濃度との検量線として、検査水W101と試薬W102との呈色反応が完結された状態で作成された検量線が記憶されている。
【0068】
以上のように構成されるシリカ濃度センサは、測定波長を切り替えることより、高濃度のシリカのシリカ濃度(10〜80mgSiO
2/L)を測定可能な高濃度レンジと、低濃度のシリカのシリカ濃度(0.1〜1mgSiO
2/L)を測定可能な低濃度レンジとを、切替可能である。なお、このシリカ濃度センサは、測定範囲を高濃度レンジに設定することにより、原水シリカ濃度測定部14として使用できる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0070】
上記実施形態においては、イオン交換装置11は、2床2塔式のイオン交換装置であったが、陽イオン交換塔11Aと陰イオン交換塔11Bの間に脱炭酸塔を設けた、いわゆる2床3塔式のイオン交換装置であってもよい。また、混床式のイオン交換装置であってもよい。さらに、陽イオン交換樹脂を有さず、陰イオン交換樹脂のみを有するイオン交換装置であってもよい。
【0071】
上記実施形態においては、ステップST104において、基準原水シリカ比率は1つ(R0)であったが、基準原水シリカ比率は2つ以上であってもよい。
例えば、上記実施形態のように、基準原水シリカ比率が1つの場合、表1のような対応関係になる。表1においては、例えば、R0=0.25に対し、RL1=90%,RL2=70%のように設定する。
【0073】
これに対し、基準原水シリカ比率が2つ(R01及びR02、R01<R02)の場合、表2のような対応関係となる。表2においては、例えば、R01=0.25,R02=0.4に対し、RL1´=90%,RL2´=70%,RL3´=50%のように設定する。
【0075】
上記実施形態において、原水シリカ濃度測定部14は、原水供給ラインL11に設けられていたが、通水ラインL12に設けられていてもよい。陽イオン交換塔11Aでは、陽イオン交換樹脂床へのシリカの吸着が起こらないので、原水W11のシリカ濃度と陽イオン除去水W12のシリカ濃度が等しくなるからである。
【0076】
上記実施形態において、原水流量測定部16は、原水供給ラインL11に設けられていたが、通水ラインL12又は処理水ラインL13に設けられていてもよい。陽イオン交換塔11A及び陰イオン交換塔11Bが共に通水モードで作動しているときには、原水W1の流量、陽イオン除去水W12の流量及び処理水W13の流量が同じであるからである。