特許第6304031号(P6304031)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6304031インクジェット用インク及びカラーフィルタとその製造方法及びカラー反射型ディスプレイとその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6304031
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】インクジェット用インク及びカラーフィルタとその製造方法及びカラー反射型ディスプレイとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/36 20140101AFI20180326BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20180326BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20180326BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20180326BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   C09D11/36
   B41M5/00 120
   B41M5/00 110
   G02B5/20 101
   B41J2/01 501
   G02F1/1335 505
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-531503(P2014-531503)
(86)(22)【出願日】2013年8月21日
(86)【国際出願番号】JP2013004935
(87)【国際公開番号】WO2014030345
(87)【国際公開日】20140227
【審査請求日】2016年7月21日
(31)【優先権主張番号】特願2012-183347(P2012-183347)
(32)【優先日】2012年8月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小橋 康裕
【審査官】 仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−111723(JP,A)
【文献】 特開2002−311223(JP,A)
【文献】 特開2011−057834(JP,A)
【文献】 特開2011−164647(JP,A)
【文献】 特開2010−276986(JP,A)
【文献】 特表2008−531766(JP,A)
【文献】 特開2003−261827(JP,A)
【文献】 特開2006−209115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−54
G02F 1/1335
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射型ディスプレイの片面に形成されたウレタン系脂のインク受容層に印刷する為のピエゾ駆動式のインクジェット用インクであって、
前記インク分散樹脂と、着色用顔料を0.5重量%〜10重量%と、前記インク受容層をより溶かしにくい溶媒を30重量%〜75重量%と、前記インク受容層をより溶かしやすいアルコール系溶媒を3重量%〜30重量%とを含み、
前記分散樹脂が、カゼイン、ゼラチン、ポリビニールアルコール、カルボキシメチルアセタール、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラニン樹脂のいずれかであり、
前記着色用顔料が、Pigment Red9、19、38、43、97、122、123、144、149、166、168、177、179、180、192、215、216、208、216、217、220、223、224、226、227、228、240、Pigment Blue15、15:6、16、22、29、60、64、Pigment Green7、36、Pigment Red20、24、86、81、83、93、108、109、110、117、125、137、138、139、147、148、153、154、166、168、185、Pigment Orange36、Pigment Violet23のうちの少なくとも1種類であり、
前記インク受容層をより溶かしにくい溶媒が、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれるカルビトール系溶媒、あるいはこれらセロソルブ類、カルビトール類のアセテート化合物であり、
前記インク受容層をより溶かしやすいアルコール系溶媒が、ベンジルアルコールである事を特徴とするインクジェット用インク。
【請求項2】
フッ素系界面活性剤を0.01重量%〜3.00重量%含む事を特徴とする請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインクジェット用インクを用いて構成されたカラーフィルタ。
【請求項4】
請求項に記載のカラーフィルタを備えているカラー反射型ディスプレイ。
【請求項5】
請求項1または2に記載のインクジェット用インクを用いて、前記反射型ディスプレイの前記インク受容層が設けられた面に対してインクジェット吐出を行うことによりカラーフィルタを形成する、カラーフィルタの製造方法。
【請求項6】
前記インクジェット吐出において、インク液滴着弾部を連続して塗出することにより長穴状のパターンを作製し、前記長穴状のパターンを並べることにより画素着色部を形成する、請求項に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載のインクジェット用インクを用いて、前記反射型ディスプレイの前記インク受容層が設けられた面に対してインクジェット吐出を行うことによりカラーフィルタを形成することによりカラー反射型ディスプレイを製造する、カラー反射型ディスプレイの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インク及びカラーフィルタとその製造方法及び反射型ディスプレイとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子情報ネットワークの普及に伴い、電子書籍に代表される電子出版が行なわれるようになった。この電子出版および電子情報を表示させる装置としては、一般的に自発光型かバックライト型表示装置が用いられている。しかしながら、これらの表示装置は紙に印刷した媒体に比べ、人間工学的理由から長時間使用すると疲労を招きやすい。また、消費電力も大きいため、電池駆動であった場合には表示時間に制限が出てしまう。それらの欠点に対し、電子ペーパーに代表される反射型ディスプレイは、紙に近い感覚で文字を読む事が出来るため、疲労を軽減できる。また、屋外で日やライトが当たるところで表示性能を発揮できる為、屋外看板にも向いている。また、消費電力も小さく長時間駆動が可能である。画面の書き換え以外では電力を消費しない為、電子看板や電子値札といった用途にも盛んに使われており、反射型ディスプレイの開発が盛んに行なわれている。
【0003】
電子ペーパーに代表される反射型ディスプレイにおいて、電子書籍の文字情報だけであれば、白黒表示で充分であるが、書籍の挿絵、広告、看板、アイキャッチ効果を高める表示、画像、カタログ等を表示する為にはカラー化表示は欠かせない技術であり、表示コンテンツのカラー化に伴い、ニーズも高まっている。そこで、反射型ディスプレイのカラー化として、以下の方法が提案されている。
【0004】
反射型ディスプレイとカラーフィルタを組み合わせて、モノクロ表示器に表示されたパターンに合わせて、表示したいカラーエリアのみ白表示とし、非表示したいカラーエリアを黒表示とする事で、カラーパターンの表示が可能となる(特許文献1)。
【0005】
反射型ディスプレイ用カラーフィルタ層として、モノクロ表示器に表示された電極パターンに合わせてカラーフィルタ配列を行なう方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−161964号公報
【特許文献2】特開2003−107234号公報
【特許文献3】特開平1−86116号公報
【特許文献4】特開2000−43405号公報
【特許文献5】特開2008−272972号公報
【特許文献6】特開2000−238408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法において、反射型ディスプレイにカラー機能を付与する際にはカラーフィルタを組み合わせる事で、容易にカラー機能を付与する事が出来た。ところで、反射型ディスプレイ用のカラーフィルタの場合、液晶用カラーフィルタと異なりブラックマトリクスという遮光部を設けると、光の反射による取り出し効率が悪くなる為、ブラックマトリクスを設けない事が必要である。
【0008】
ブラックマトリクスを設けないカラーフィルタを作製する場合、混色しないようにインクを受容させる必要がある。その為にはブラックマトリクスの代わりに透明隔壁を設けるか、インク受容層を基板上に設ける等公知のインク受容技術を用い、基板にインクを受容させる必要がある。
【0009】
透明隔壁を設ける場合では、隔壁部分の面積により、反射率が下がる課題が生じる。また、光透過性のバンクを用いる場合、そのバンクを作製する工程がさらに増える、隔壁作製のアライメント精度が必要、隔壁太さを細く作製する必要がある為、コストが高くなる課題があった。インク受容層を設ける方が、カラーフィルタ作製のコストが安く済むため、インク受容層を設ける事が一般的である。インク受容層にインクジェット法、印刷法等の印刷技術を用い着色画素を印刷する。
【0010】
インクジェット法により、反射型ディスプレイ上に直接カラー印刷を行い、カラーフィルタと反射型ディスプレイを貼り合わせる工程をなくす事でアライメントを不要にする方法が提案された。また、インクジェット法は非接触印刷であり、異物が少なく、無版印刷である為に版を用いた印刷と比較し、コストを安く出来る利点がある。
【0011】
ところで、カラーフィルタ方式によるカラーの反射型ディスプレイにおいて、同じ色再現性を出す場合、画素内着色率が低くなると、インクの濃度や膜厚を上げねばならず、インクの透過率が下がり、反射率が低下してしまうが、画素内着色率を高くする事で、インクの濃度や膜厚を薄くする事が出来、インクの透過率を上げる事が出来る。
【0012】
すなわち、画素内着色率を上げる事で、カラー反射型ディスプレイの課題である反射率と色再現性を最大限発揮出来ることになる。しかし、単に画素サイズを大きくすると画素と画素との重なりによる混色が発生する。よって、画素内着色率を上げる為には、画素形状を四角形に近づける、塗工精度の向上、混色の防止が課題となっている。
【0013】
画素形状を四角形に近づけるには、もちろんインク受容層がインク液滴をしっかり受容しなければならない。すなわち、受容しない基材にインク液滴を印刷すると、インクは表面張力によって円形になろうとするので、画素形状を四角形にする事は出来ない。しかし、インク液滴を全て吸収してしまうインク受容層の場合、液滴と液滴とが重なっている箇所はインク濃度が2倍となり、3箇所重なる場所は3倍となる。この際、一つの画素でインク濃度を画素内で均一にする事は不可能であり、色味調整が不可能となる。また、液滴と液滴との距離を空けると白抜けと呼ばれる画素が欠けた状態となり、カラーフィルタ形成時にムラとして見えてしまう。すなわち、一つの画素において、ある程度はインクを吸収せずに混じり合う事で色むらを抑えることと、インクを受容して画素形状を四角形に近づけるという2つの要素を両立する事が課題であった。
【0014】
本発明の目的は、インクジェット方式における着色画素形成において、インク着色画素内の色が均一で、受容層への吸収率が高いインクを提供し、白反射率と色再現性とが両立出来るカラー反射型ディスプレイの作製を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の発明は、反射型ディスプレイの片面に形成されたウレタン系脂のインク受容層に印刷する為のピエゾ駆動式のインクジェット用インクであって、前記インク分散樹脂と、着色用顔料を0.5重量%〜10重量%と、前記インク受容層をより溶かしにくい溶媒を30重量%〜75重量%と、前記インク受容層をより溶かしやすいアルコール系溶媒を3重量%〜30重量%とを含み、前記分散樹脂が、カゼイン、ゼラチン、ポリビニールアルコール、カルボキシメチルアセタール、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラニン樹脂のいずれかであり、前記着色用顔料が、Pigment Red9、19、38、43、97、122、123、144、149、166、168、177、179、180、192、215、216、208、216、217、220、223、224、226、227、228、240、Pigment Blue15、15:6、16、22、29、60、64、Pigment Green7、36、Pigment Red20、24、86、81、83、93、108、109、110、117、125、137、138、139、147、148、153、154、166、168、185、Pigment Orange36、Pigment Violet23のうちの少なくとも1種類であり、前記インク受容層をより溶かしにくい溶媒が、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれるカルビトール系溶媒、あるいはこれらセロソルブ類、カルビトール類のアセテート化合物であり、前記インク受容層をより溶かしやすいアルコール系溶媒が、ベンジルアルコールである
【0017】
の発明は、第1の発明のインクジェット用インクにおいて、フッ素系界面活性剤を0.01重量%〜3.00重量%含む。
【0018】
の発明は、第1または第2の発明のインクジェット用インクを用いて構成されたカラーフィルタである。
【0019】
の発明は、第の発明のカラーフィルタを備えているカラー反射型ディスプレイである。
【0020】
の発明は、第1または第2の発明のインクジェット用インクを用いて、前記反射型ディスプレイの前記インク受容層が設けられた面に対してインクジェット吐出を行うことによりカラーフィルタを形成する、カラーフィルタの製造方法である。
【0021】
の発明は、第の発明のカラーフィルタの製造方法において、前記インクジェット吐出において、インク液滴着弾部を連続して塗出することにより長穴状のパターンを作製し、前記長穴状のパターンを並べることにより画素着色部を形成する、カラーフィルタの製造方法である。
【0022】
の発明は、第1または第2の発明のインクジェット用インクを用いて、前記反射型ディスプレイの前記インク受容層が設けられた面に対してインクジェット吐出を行うことによりカラーフィルタを形成することによりカラー反射型ディスプレイを製造する、カラー反射型ディスプレイの製造方法である。
【発明の効果】
【0023】
1の発明によれば、インク受容層に対するインクの受容性能と、インク着色画素内のインクの濡れ広がりによる色の均一性能とを両立できるインクジェットインクを提供でき、色味調整可能な任意の画素形状を形成する事が出来る。
【0024】
の発明によれば、インクの表面張力を下げる事で、インク着色画素内の色分布を変化させて、着色画素の形状と色味を調整する事が出来る。
【0025】
の発明によれば、色むらが無く、画素内着色率の高いカラーフィルタを作成する事が出来る。
【0026】
の発明によれば、インク着色画素内の色が均一で、受容層への吸収率が高いインクを提供し、白反射率と色再現性が両立出来るカラー反射型ディスプレイを作製することが出来る。
【0027】
の発明によれば、色むらが無く、画素内着色率の高いカラーフィルタを作成する事が出来る。
【0028】
の発明によれば、画素着色部を四角形に近い形状に形成することが出来る。
【0029】
の発明によれば、インク着色画素内の色が均一で、受容層への吸収率が高いインクを提供し、白反射率と色再現性が両立出来るカラー反射型ディスプレイを作製することが出来る。
【0030】
以上に述べた各構成から分かるように、本発明によれば、インクジェット方式における着色画素形成において、インク着色画素内の色が均一で、受容層への吸収率が高いインクを提供し、白反射率と色再現性とが両立出来るカラー反射型ディスプレイの作製を可能とすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明の実施形態を示すものであり、カラー反射型ディスプレイ構成の説明図である。
図2図2は、本発明の実施形態を示すものであり、インクジェット印刷機の説明図である。
図3図3は、本発明の実施形態を示すものであり、(a)及び(b)は着色画素形成方法の説明図である。
図4図4は、本発明の実施形態を示すものであり、(a)及び(b)は着色画素形状の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の詳細な形態について説明する。
本発明のカラー反射型ディスプレイは、モノクロ反射型ディスプレイとカラーフィルタの組み合わせまたは、従来のモノクロ反射型ディスプレイの作製工程にインクジェット法によるカラー印刷工程を追加したものである。
【0033】
一般に電子ペーパーに代表される反射型ディスプレイにおいて、電子ペーパーの種類の一つである電気泳動表示装置の作製方法として、例えば特許文献3に記載の、少なくとも片面が光透過型である対向電極板間に、電気泳動粒子を含む分散系を封入し、該電極間に印加した表示制御用電圧によって光学的反射特性に変化を与えて所要の表示を行なう電気泳動表示装置が挙げられている。
【0034】
本発明のカラーフィルタは反射型ディスプレイと組み合わせて使用されるものであり、反射型ディスプレイに直接カラーフィルタ層を形成しても構わない。その際は、反射型ディスプレイの電極層上にインク受容層を付与し、インクジェット法によりカラーフィルタ層を形成する。図1に反射型ディスプレイの例としてカラー電子ペーパーの層構成の説明図を示す。当該カラー電子ペーパーは、基材層1の上に、電極層2、電極パターン層3、マイクロカプセル層4、光透過性電極層5、電極シート層6、インク保持層7、カラーフィルタ層8、及び保護膜9が順次積層された構成を備えている。
【0035】
本発明におけるインク受容層すなわちインク保持層7として、例えば、特許文献4に記載のインクジェット記録媒体や、例えば特許文献5に記載のインクジェットプリンタ用記録媒体を使用する事が出来る。特に、透明度が高いものが好ましい。しかし、特許文献6に記載されているような、多孔質構造のインクジェット用受容材料はこの発明のインク受容層として使用する事が出来ない。それは、インク受容層を多孔質構造とした場合、インクを層の中にしみこませる為、濡れ広がりの均一性が損なわれる為である。つまり、インク受容層は膜上保持型である事が要求される。インク受容層の材料として、透明であること、受容したインクの変色や褪色がないこと、諸耐性があることなどの性能が要求され、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセテートなどのビニル樹脂が良好なものとして用いられる。インク受容層の溶媒として、水、IPA等の水系溶媒またはアルコール溶媒を用いて構成させる。
【0036】
該インク受容層材料をたとえば、塗布装置で乾燥後の厚さ4μm〜10μmになるように塗布を行なう。塗布装置としてはダイコーター、スピンコーター、バーコーター等で塗布を行なう。ただし、塗布方法はこれらの方法に限定されない。
インク受容層材料を塗布後、熱、真空、UV照射等の方法により固化させる事でインク受容層を形成する。
【0037】
本発明における着色インクの材料は、着色剤、樹脂、分散剤、溶媒を含む。インクの着色剤は顔料、染料のどちらでもよい。色相は赤色、緑色、青色の3種類を使う事が好ましいが、黄色、水色、紫色を用いてもよい。また、色の組み合わせは限定されず、2種類のみ用いてもよい。
【0038】
着色剤として使用する顔料の具体例としては、Pigment Red9、19、38、43、97、122、123、144、149、166、168、177、179、180、192、215、216、208、216、217、220、223、224、226、227、228、240、Pigment Blue 15、15:6、16、22、29、60、64、Pigment Green7、36、Pigment Red 20、24、86、81、83、93、108、109、110、117、125、137、138、139、147、148、153、154、166、168、185、 Pigment Orange36、 Pigment Violet23などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。さらに、これらは要望の色相を得るために2種類以上を混合して用いても構わない。
【0039】
着色インクの材料の樹脂としては、カゼイン、ゼラチン、ポリビニールアルコール、カルボキシメチルアセタール、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラニン樹脂などが用いられ、色素との関係にて適宜選択されるものである。耐熱性や耐光性が要求される際にはアクリル樹脂が好ましいものである。
【0040】
樹脂への着色剤の分散を向上させるために、分散剤を用いてもよく、分散剤として、非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルなど、また、イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリ脂肪酸塩、脂肪酸塩アルキルリン酸塩、テトラアルキルアンモニウム塩など、その他に、有機顔料誘導体、ポリエステルなどがあげられる。分散剤は一種類を単独で使用してもよく、また、二種類以上を混合して使用してもよい。
【0041】
着色インクに使用する溶剤種としてはインクジェット印刷における適性の表面張力範囲35mN/m以下で、且つ、沸点が130℃以上のものが好ましい。表面張力が35mN/m以上であるとインクジェット吐出時のドット形状の安定性に著しい悪影響を及ぼし、また、沸点が130℃以下であるとノズル近傍での乾燥性が著しく高くなり、その結果、ノズル詰まり等の不良発生を招くので好ましくない。粘度は5cps〜20cpsとなるように調整するのが好ましい。このインクに使用する溶剤種がインク受容層のインク吸収量に大きな影響を与える事を発明者らは見出した。すなわち、インク受容層を溶かしやすい溶剤のインク内比率を上げると、インク受容性能が向上し、インク受容層を溶かしにくいまたは溶かさない溶剤を用いるとインク受容性能が低下し、液滴同士の濡れ性が向上する。具体的には、水系溶媒に溶けるインク受容層を形成した場合、インク内にカルビトール類等受容層をあまり溶かさない溶媒と、アルコール系の受容層を溶かしやすい溶媒を用いる。そして、その比率をコントロールする事でインク受容性と画素内色均一性を両立させることが出来た。カルビトール類とは、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのカルビトール系溶媒、あるいはこれらセロソルブ類、カルビトール類のアセテート化合物を示す。
【0042】
受容層を溶かしやすいアルコール系溶媒としてベンジルアルコールを使用した。また、受容層をあまり溶かさない溶媒としてジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及びブチルジグリコールアセテートを使用した。インク組成としては、分散樹脂20(重量%)、顔料2(重量%)、溶媒ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート58(重量%)、ベンジルアルコール10(重量%)、ブチルジグリコールアセテート10(重量%)とし、作製した。
【0043】
インク組成の受容層をあまり溶かさない溶媒成分の比率を30(重量%)以下にし、受容層を溶かしやすいアルコール系溶媒を30(重量%)以上に多く含ませた場合、インクを受容層に印刷した瞬間受容層に染み込み、白抜けと呼ばれる液滴と液滴との間に隙間が生じてしまう。また、インク組成の受容層をあまり溶かさない溶媒成分の比率を75(重量%)以上にし、受容層を溶かしやすいアルコール系溶媒を3(重量%)以下とした場合、受容性能は落ちてインクの表面張力により円形形状となってしまう。そこで、この発明がより効果を発揮するには、30〜75重量%のカルビトール類の有機溶媒と、3〜30重量%のベンジルアルコールとするインク組成比率の範囲内が好ましい事が分かった。また、当該インクに、0.5重量%〜10重量%の少なくとも1種類の着色用顔料または着色用染料が含まれているのがよい。
【0044】
界面活性剤として、シリコーン系、フッ素系材料をインクに添加した場合、インクの表面張力が下がり、濡れ広がりが大きくなる。この性質を利用して、画素内色均一性を向上させることを見出した。界面活性剤の一例として、主鎖または側鎖に有機シリコーンやアルキルフルオロ基を有し、シロキサン成分を含むシリコーン樹脂やシリコーンゴム、この他にはフッ化ビニリデン、フッ化ビニル、三フッ化エチレン等や、これらの共重合体等のフッ素樹脂などを用いることができる。シリコーン系またはフッ素系化合物を固形分比0.01〜3.00(重量%)付与するものである。添加量が0.01(重量%)よりも少ない場合、濡れ広がり効果が少ない。3.00(重量%)以上添加した場合にはインクの表面張力が下がりすぎる為、インクジェットでの吐出性能が悪化する。その為、界面活性剤を用いてインク受容性と画素内均一性とをコントロールする場合は界面活性剤の添加量を0.01(重量%)〜3.00(重量%)の範囲内で調整を行なう。
【0045】
インクジェット法により、カラーフィルタ作製の為、透明基材にパターン印刷を行なう。または電極配線がパターニングされた電極基板に合わせて、任意のパターンの印刷を行なう。いずれの場合においても片面にあらかじめインク受容層を形成する。
【0046】
次に本発明に用いるインクジェット装置の一実施形態を図面を用いて説明する。
【0047】
図2に本発明のカラー電子ペーパーの製造方法におけるインクジェット塗布装置40の説明図を示す。塗布装置の装置構成として、反射型ディスプレイ20を載せ、1方向に精度良く搬送する搬送ステージ30と、インクタンク70と、インクタンク70から反射型ディスプレイパネルに塗布する為のインクジェットインクが供給されたインクジェットヘッド10と、該インクジェットヘッド10を反射型ディスプレイ20から一定高さを保持し、搬送方向に直交移動することが可能なインクジェットヘッドユニット60と、乾燥部50とが備えられている。
【0048】
インクジェットヘッド10には、ピエゾ駆動型のインクジェットヘッドを用いた。インクを吐出する複数のノズルを備えており、このノズルは、インクジェットヘッド10をカラーフィルタ層の着色画素パターン(以下、単に画素パターンとする)に対して相対的に走査する走査方向に対して所定の等間隔になるように配置されている。さらにインクジェットヘッド10のノズルからインクジェットインクを吐出制御するためのインクジェットヘッド制御基盤11が備えられている。インクジェットヘッド10のノズルから反射型ディスプレイ20までの距離を300μm〜2000μmとすることによって、塗布精度良く塗布可能となる。距離が300μm以下であると、インクジェットヘッド10と反射型ディスプレイ20とが接触する危険性が高まり、2000μm以上であると、吐出飛行曲がり(ミスディレクション)が発生し易い。また、インクジェットヘッド10のノズルの吐出性を回復する為のメンテナンス装置12が備えられている。このメンテナンス装置12はノズル面をウエスやフィルム等でワイピングの実施や液を吐出する為のポット等が備えられており、一般的なインクジェットヘッドメンテナンス機構12が利用可能である。塗布カラー電子ペーパーの画素パターンの位置を決める為に、アライメント用カメラと画像処理ユニットが備えられていると好ましい。透明基材にカラーフィルタパターンを印刷する場合においても、反射型ディスプレイパネルと貼り合わせる為のアライメントマークが基材に必要となる為、アライメント用カメラと画像処理ユニットが備えられていると好ましい。
【0049】
本発明にあっては、図2に示したインクジェット塗布装置40を用い、複数のノズルを備えたインクジェットヘッド10を前記画素パターンに対して相対的に走査し、前記反射型ディスプレイ20のインク受容層が設けられた面に対し、インクジェットインクを吐出して供給し、インク受容層上にインクジェットインク層すなわちカラーフィルタ層が形成される。なお、本発明にあっては、複数のノズルを備えたインクジェットヘッド10を前記画素パターンに対して相対的に走査される。図2に示すように、反射型ディスプレイ20側を走査してもかまわないし、インクジェットヘッド10側を走査してもかまわない。また、反射型ディスプレイ20とインクジェットヘッド10との両方を操作してもかまわない。
【0050】
本発明の画素形状にあっては、四角形状に近づけるため、画素の大きさに応じたインクジェット吐出配列を行なう事が好ましい。すなわち、画素サイズ、液滴と着弾面積との関係からより高精細なパターンを作製する事が好ましい。図3に画素形状と吐出配列パターンとの説明図を示す。図3(a)に示すように、インク液滴着弾部80を連続して塗出し、長穴状の画素を作製する。その際、インク液滴とインク液滴との間隔Fが長い場合、窪んだ形になり、間隔が短い場合には中央部が膨らんだ形になるため、液滴径と間隔Fを調整し、縦に直線になる形状を作製する事が好ましい。図3(b)に示すように、さらにその長穴形状を任意の本数横に並べる形を作り、所定の画素着色部90を形成する。
【0051】
図4に画素の説明図を示す。インク組成として、受容層を溶かしやすい溶媒を多く含んだ場合は図4(a)に示すように画素内に色のムラが出来て画素100の形になり、受像層を溶かしにくい溶媒を多く含んだ場合は図4(b)に示すように画素が楕円形110に近づく。
【0052】
インクをインク受容層に塗布後、乾燥、固化を実施する。乾燥手段および、または固化手段は加熱、送風、減圧、光照射、電子線照射の何れかの方法またはその2種類以上の組み合わせによる。
【0053】
インクを乾燥、固化した後、カラーフィルタ層の保護の為、保護膜を形成しても構わない。カラーフィルタの保護膜を形成するためには、着色パターン表面に、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、アクリル系、シリコーン系等の有機樹脂やSi3 4 ,SiO2 ,SiO,Al2 3 ,Ta2 3 等の無機膜をスピンコート、ロールコート、印刷法の塗布法で、あるいは蒸着法によって、保護膜として設けることができる。カラーフィルタ層面を反射型ディスプレイに貼り付け、カラーフィルタ基材がカラーフィルタ層の保護を兼ねる場合は、もちろん保護膜は形成しなくても構わない。
【0054】
〔実施例1〕
実施例1として、マトリクス状にカラーフィルタが印刷された、反射型ディスプレイの作製方法について述べる。
【0055】
マイクロカプセル型電気泳動方式を使った反射型ディスプレイを作製した。この方式の表示装置は、透明溶媒が満たされたマイクロカプセル中に正、負に帯電した白い粒子と黒い粒子を入れ、外部電圧の印加によってそれぞれの粒子を表示面に引き上げて画像を形成するものである。マイクロカプセルのサイズは径数十μm〜数百μmと小さいので、このマイクロカプセルを透明なバインダに分散させると、インクのようにコーティングすることができる。このインクは、外部から電圧を印加することで画像を描くことができる。
【0056】
透明電極を形成した透明樹脂膜にこの電子インクをコーティングし、アクティブマトリクス駆動用の電極回路を形成した基板に貼り合わせると、アクティブマトリクスディスプレイパネルを得ることができる。通常、透明電極を形成した透明樹脂膜に電子インクをコーティングした部品を「前面板」と呼び、アクティブマトリクス駆動用の電極回路を形成した基板を「背面板」と呼んでいる。
【0057】
前面板側にインク保持層を設けた。インク受容層の材料としては、ウレタン系樹脂、トルエン、水、IPAを混合した物を用い、ダイコーターにて乾燥厚さ7μm〜9μmとなるよう塗布した。
【0058】
インク組成について示す。印刷に用いたインク組成としては、Redインクとして分散樹脂20(重量%)、顔料2(重量%)、溶媒ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート58(重量%)、ベンジルアルコール10(重量%)、ブチルジグリコールアセテート10(重量%)とした。
【0059】
インク保持層にインクジェット装置にて格子状のパターンに印刷を行なった。印刷パターンとしては160μm角の画素サイズに入るよう、3×3液滴塗布を行なった。1つの液滴量は約15plで、液滴と液滴との間隔を40μmとなるように印刷した。これにより、画素と画素との間隔は5μm〜8μmとなり、画素着色率は約90%となった。また、分光器を用いて画素内の色度(x,y,Y)を10μmスポット径で測定した。Red色度は中央でx0.431y0.305Y42.1となり、外周部に近い箇所でx0.422y0.307Y45.8となった。色の差は0.01以下で僅かと言える結果となった。
【0060】
カラーフィルタ層を100度で5分熱乾燥した後、保護膜をラミネートし、カラー反射型ディスプレイを作製した。
【0061】
〔実施例2〕
反射型ディスプレイ及び受容層に関して実施例1と同様のものを用いた。インク組成としては、Redインクとして分散樹脂20(重量%)、顔料2(重量%)、溶媒ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート18(重量%)、ベンジルアルコール50(重量%)、ブチルジグリコールアセテート10(重量%)とした。インク保持層にインクジェット装置にて格子状のパターンに印刷を行なった。印刷パターンとしては160μm角の画素サイズに入るよう、3×3液滴塗布を行なった。1つの液滴量は約15plで、液滴と液滴との間隔を40μmとなるように印刷した。このインクで形成した画素には画素内に白抜けと呼ばれる液滴と液滴との間に隙間が発生した。すなわち、インク組成におけるベンジルアルコールの割合が高すぎると、色が均一な画素が形成できず、効率のよいカラーフィルタ層は形成出来なかった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、電子ペーパー等の反射型ディスプレイに適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 …基材層
2 …電極層
3 …電極パターン層
4 …マイクロカプセル層
5 …光透過性電極層
6 …電極シート層
7 …インク保持層
8 …カラーフィルタ層
9 …保護膜
10…インクジェットヘッド
11…インクジェットヘッド制御基盤
12…インクジェットヘッドメンテナンス機構
20…反射型ディスプレイ
30…搬送ステージ
40…インクジェット塗布装置
50…乾燥部
60…インクジェットヘッドユニット
70…インクタンク
80…インク液滴着弾部
90…画素着色部
100…画素形状(画素割れ)
110…画素形状(楕円形)
図1
図2
図3
図4