特許第6304124号(P6304124)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6304124係合システム及びそれを用いたブレーキシステム及びクラッチシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6304124
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】係合システム及びそれを用いたブレーキシステム及びクラッチシステム
(51)【国際特許分類】
   F16D 27/10 20060101AFI20180326BHJP
   F16D 65/16 20060101ALI20180326BHJP
   F16B 1/02 20060101ALI20180326BHJP
   F16D 27/01 20060101ALI20180326BHJP
   F16D 27/108 20060101ALI20180326BHJP
   F16D 27/118 20060101ALI20180326BHJP
   H01F 7/06 20060101ALI20180326BHJP
   F16D 121/20 20120101ALN20180326BHJP
   F16D 121/22 20120101ALN20180326BHJP
【FI】
   F16D27/10 A
   F16D65/16
   F16B1/02 L
   F16D27/01
   F16D27/108 Z
   F16D27/118
   H01F7/06 P
   F16D121:20
   F16D121:22
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-99429(P2015-99429)
(22)【出願日】2015年5月14日
(65)【公開番号】特開2016-217371(P2016-217371A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2016年9月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 祥宏
(72)【発明者】
【氏名】土屋 英滋
【審査官】 星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−130106(JP,A)
【文献】 実開平01−156332(JP,U)
【文献】 特開2011−196410(JP,A)
【文献】 特公昭47−026547(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 27/00−27/14
F16D 65/00−65/853
F16B 1/02
H01F 7/00−7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1永久磁石と、第2永久磁石と、
中空円盤状の第1部材と、前記第1部材の回転軸と同軸であり前記第1部材の内周面と対向するように外周面が位置するように前記第1部材の中空部に配置され、前記第1部材に対して係合及び開放可能な円盤状の第2部材と、
制御手段と、
を備え、
前記第2永久磁石は、前記第1部材の周方向に沿って、その磁極方向が前記回転軸方向に向くように配置され、
前記第1永久磁石は、前記第1部材の周方向に沿って、その磁極が当該周方向に向くように配置され、
前記制御手段は、前記第2永久磁石の着磁状態を変化させることにより、前記第2部材が前記第1部材に係合された係合状態、又は、前記第2部材が前記第1部材に係合されていない開放状態のいずれか一方の状態に制御することを特徴とする係合システム。
【請求項2】
請求項1に記載の係合システムであって、
前記制御手段は、前記第2永久磁石の磁束密度を変化させることを特徴とする係合システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の係合システムであって、
前記制御手段は、前記第2永久磁石の極性を逆転させることにより、前記第1部材と前記第2部材とを係合状態又は開放状態に制御することを特徴とする係合システム。
【請求項4】
請求項1に記載の係合システムであって、
前記制御手段は、前記第2永久磁石の磁束密度を変化させることにより、前記係合状態における前記第2部材の前記第1部材に対する係合力を制御することが可能であることを特徴とする係合システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の係合システムであって、
前記第2永久磁石の外周に励磁コイルが配置され、
前記制御手段は、前記励磁コイルを制御することにより、前記第2永久磁石の着磁状態を制御することを特徴とする係合システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の係合システムであって、
前記第2永久磁石は、中空筒形状であり、
前記第2永久磁石は、中空部に固定部材を通して前記第1部材に固定されることを特徴とする係合システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の係合システムであって、
前記第1部材の前記第2部材との対向面には、前記第2部材に向けられた第1凸部が設けられ、
前記第2部材の前記第1部材との対向面には、前記第1部材に向けられた第2凸部が設けられ、
前記係合状態において、前記第1凸部と前記第2凸部とが空隙を介して対向した状態で前記第2部材が前記第1部材に係合することを特徴とする係合システム。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の係合システムであって、
前記係合状態において、前記第1部材と前記第2部材とが当接することにより生ずる摩擦力により前記第2部材が前記第1部材に係合することを特徴とする係合システム。
【請求項9】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の係合システムであって、
前記第1部材の前記第2部材との対向面には、前記第2部材に向けられた第1凸部が設けられ、
前記第2部材の前記第1部材との対向面には、前記第1部材に向けられた第2凸部が設けられ、
前記係合状態において、前記第1凸部と前記第2凸部とが機械的に係合した状態で前記第2部材が前記第1部材に係合することを特徴とする係合システム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の係合システムを備えたブレーキシステム。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の係合システムを備えたクラッチシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石の着磁を利用した係合システム及びそれを用いたブレーキシステム及びクラッチシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハウジング内に固定されたリング状コア部材、コア部材の環状溝に収容された励磁コイル、及びコア部材の環状溝に対向して配置され、スプリングによってコア部材と離間するように付勢されたアーマチュア部材を備えた電磁ブレーキが開示されている(特許文献1)。当該構成では、励磁コイルに通電することで発生する磁力によってアーマチュア部材をスプリングの付勢力に対抗してコアに引き寄せ、摩擦力により回転軸にブレーキを掛けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−52902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の電磁ブレーキでは、スプリング等によって付勢された状態からスプリングの力に対抗する磁力を印加してブレーキを係合又は開放させるため、係合時又は開放時のいずれかにおいて励磁コイルに常時通電しておく必要がある。したがって、励磁コイルへの通電による電力の損失が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の1つの態様は、第1永久磁石と、第2永久磁石と、中空円盤状の第1部材と、前記第1部材の回転軸と同軸であり前記第1部材の内周面と対向するように外周面が位置するように前記第1部材の中空部に配置され、前記第1部材に対して係合及び開放可能な円盤状の第2部材と、制御手段と、を備え、前記第2永久磁石は、前記第1部材の周方向に沿って、その磁極方向が前記回転軸方向に向くように配置され、前記第1永久磁石は、前記第1部材の周方向に沿って、その磁極が当該周方向に向くように配置され、前記制御手段は、前記第2永久磁石の着磁状態を変化させることにより、前記第2部材が前記第1部材に係合された係合状態、又は、前記第2部材が前記第1部材に係合されていない開放状態のいずれか一方の状態に制御することを特徴とする係合システムである。
【0006】
ここで、前記制御手段は、前記第2永久磁石の磁束密度を変化させることが好適である。
【0007】
また、前記制御手段は、前記第2永久磁石の極性を逆転させることにより、前記第1部材と前記第2部材とを係合状態又は開放状態に制御することが好適である。
【0008】
また、前記制御手段は、前記第2永久磁石の磁束密度を変化させることにより、前記係合状態における前記第2部材の前記第1部材に対する係合力を制御することが好適である。
【0009】
また、前記第2永久磁石の外周に励磁コイルが配置され、前記制御手段は、前記励磁コイルを制御することにより、前記第2永久磁石の着磁状態を制御することを特徴とすることが好適である。
【0010】
また、前記第2永久磁石は、中空筒形状であり、前記第2永久磁石は、中空部に固定部材を通して前記第1部材に固定されることが好適である。
【0011】
また、前記第1部材の前記第2部材との対向面には、前記第2部材に向けられた第1凸部が設けられ、前記第2部材の前記第1部材との対向面には、前記第1部材に向けられた第2凸部が設けられ、前記係合状態において、前記第1凸部と前記第2凸部とが空隙を介して対向した状態で前記第2部材が前記第1部材に係合することが好適である。
【0012】
また、前記係合状態において、前記第1部材と前記第2部材とが当接することにより生ずる摩擦力により前記第2部材が前記第1部材に係合することが好適である。
【0013】
また、前記第1部材の前記第2部材との対向面には、前記第2部材に向けられた第1凸部が設けられ、前記第2部材の前記第1部材との対向面には、前記第1部材に向けられた第2凸部が設けられ、前記係合状態において、前記第1凸部と前記第2凸部とが機械的に係合した状態で前記第2部材が前記第1部材に係合することが好適である。
【0014】
また、前記第1部材は、前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石に対して固定された部材であり、前記第2部材は、前記第1部材に対して所定方向に相対的に移動する部材であり、前記第2永久磁石は、前記第1永久磁石に対して対向方向及び前記所定方向に直交する位置に配置されることが好適である。この係合システムは、ブレーキシステムに適用することができる。
【0015】
前記第1部材は、前記第1永久磁石及び前記第2永久磁石に対して相対的に移動する部材であり、前記第2部材は、前記第1部材に対して所定方向に相対的に移動する部材であり、前記第2永久磁石は、前記第1永久磁石に対して対向方向及び前記所定方向に直交する位置に配置されることが好適である。この係合システムは、クラッチシステムに適用することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、着磁時のみ電力を消費し、無電力で係合状態及び開放状態を維持することができる係合システム及びそれを用いたブレーキシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態における係合システムの基本構成を示す図である。
図2】永久磁石の着磁特性を示す図である。
図3】本発明の実施の形態における係合システムの作用を説明する図である。
図4】本発明の実施の形態におけるブレーキシステムの構成を示す平面図である。
図5】本発明の実施の形態におけるブレーキシステムの構成を示す断面図である。
図6】本発明の実施の形態におけるブレーキシステムの構成を示す斜視図である。
図7】本発明の実施の形態におけるブレーキシステムの作用を説明する図である。
図8】本発明の実施の形態におけるブレーキシステムの変形例の構成を示す平面図である。
図9】本発明の実施の形態におけるブレーキシステムの変形例を示す斜視図である。
図10】本発明の実施の形態におけるブレーキシステムの変形例の作用を説明する図である。
図11】本発明の実施の形態におけるブレーキシステムの変形例を示す図である。
図12】本発明の実施の形態におけるクラッチシステムを示す斜視図である。
図13】本発明の実施の形態におけるクラッチシステムの変形例を示す斜視図である。
図14】本発明の実施の形態におけるクラッチシステムの変形例の作用を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<係合システムの基本構成>
本発明の実施の形態における係合システム100は、図1の原理図に示すように、第1永久磁石10、第2永久磁石12、励磁コイル14、第1ヨーク部材16及び第2ヨーク部材18を含んで構成される。
【0019】
第1永久磁石10及び第2永久磁石12は、第1ヨーク部材16の一部を切り欠いた部分に配置され、第1永久磁石10、第2永久磁石12及び第1ヨーク部材16によって磁気的な閉回路が構成される。第1ヨーク部材16は、第1永久磁石10のN極と第2永久磁石12のN極又はS極とを繋ぎ、第1永久磁石10のS極と第2永久磁石12のS極又はN極とを繋ぐように配置される。また、第2ヨーク部材18は、当該閉回路の第1永久磁石10に対して対向して間隙をもって配置される。
【0020】
励磁コイル14は、第2永久磁石12を着磁できるように、第2永久磁石12の磁極方向に向けて磁界が生成されるように第2永久磁石12の周囲に配置される。励磁コイル14に対して電流を流すことによって第2永久磁石12を着磁することができる。
【0021】
第1永久磁石10及び第2永久磁石12の動作点は、パーミアンス直線(磁石形状や磁気回路等で決定される直線)と減磁曲線との交点で決定される。例えば、図2に示すようなパーミアンス曲線(破線)をもつ磁石の場合、アルニコ磁石(Alnico5)の動作点は点Aとなり、ネオジム磁石の動作点は点Bとなる。すなわち、アルニコ磁石は、ネオジム磁石よりも着磁が容易であるが、ネオジム磁石の1/3程度の磁束密度しか得られない。一方、ネオジム磁石は、アルニコ磁石より着磁が困難であるが、アルニコ磁石よりも強い磁力が得られる。
【0022】
そこで、第1永久磁石10及び第2永久磁石12としてこれらの特性の異なる磁石をそれぞれ用いて、着磁時のみに電力を消費し、係合時及び開放時において電力を消費しない係合システム100を構成する。本実施の形態では、第2永久磁石12は、励磁コイル14へ電流を供給した際に生ずる磁界によって第1永久磁石10よりも着磁され易い磁石、
すなわち低保持力の磁石とする。例えば、第1永久磁石10としてネオジム磁石を用い、第2永久磁石12としてアルニコ磁石を用いることが好適である。
【0023】
図3(a)は、第1永久磁石10のN極と第2永久磁石12のS極とが第1ヨーク部材16によって接続され、第1永久磁石10のS極と第2永久磁石12のN極とが第1ヨーク部材16によって接続されるように励磁コイル14によって第2永久磁石12を着磁した状態を示す。このような状態では、第1永久磁石10と第2永久磁石12とが第1ヨーク部材16によって直列に接続されており、第1ヨーク部材16内に磁束が閉じ込められ、第2ヨーク部材18に対する吸引力が生じない。すなわち、第2ヨーク部材18は第1ヨーク部材16側に吸引されず、係合システム100は開放状態となる。
【0024】
図3(b)は、第1永久磁石10のN極と第2永久磁石12のN極とが第1ヨーク部材16によって接続され、第1永久磁石10のS極と第2永久磁石12のS極とが第1ヨーク部材16によって接続されるように励磁コイル14によって第2永久磁石12を着磁した状態を示す。すなわち、図3(a)に示したような状態から励磁コイル14によって発生する磁界を用いて第2永久磁石12の極性が逆転するように着磁状態を変化させた状態を示している。このような状態では、第1永久磁石10と第2永久磁石12とが第1ヨーク部材16によって並列に接続されており、第1ヨーク部材16から第2ヨーク部材18へと磁束が通り、第1ヨーク部材16と第2ヨーク部材18との間に吸引力が生じる。すなわち、第2ヨーク部材18は第1ヨーク部材16側に吸引され、係合システム100は非接触の係合状態となる。また、第2永久磁石12の磁束密度を変化させることで、第1ヨーク部材16と第2ヨーク部材18との間に生ずる吸引力を調整することができる。
【0025】
このように、第1永久磁石10と第2永久磁石12との着磁特性の差を利用して、励磁コイル14に電流を流すことによって生ずる外部磁界を用いて第2永久磁石12の極性のみを反転させることで係合システム100の開放状態と係合状態とを切り替えることができる。第2永久磁石12を一旦着磁すればその状態が保持されるので、励磁コイル14には着磁時のみに電力を供給すればよい。すなわち、開放状態と係合状態を保持するために電力を消費しないので省電力の係合システム100を実現することができる。
【0026】
<ブレーキシステムへの応用>
図4図6は、本実施の形態における係合システム100を用いたブレーキシステム200の具体例を示す図である。図4は、ブレーキシステム200の平面図を示し、図5は、図4におけるラインA−Aに沿った断面図を示す。また、図6は、ブレーキシステム200の一部を切り欠いた斜視図を示す。ブレーキシステム200は、固定部材202及び回転部材204を組み合わせて構成される。
【0027】
固定部材202は、第1永久磁石10、第2永久磁石12、励磁コイル14及び固定プレート20a,20bを組み合わせ構成される。固定部材202は、ブレーキシステム200のハウジング(図示しない)等に固定される。固定プレート20aと固定プレート20bは、中空円盤状の磁性体材料からなり、所定の間隙をもって互いに向かい合わせて配置される。
【0028】
固定プレート20aには円周方向に沿って所定間隔で切り欠き部22が設けられる。本実施の形態では、30°の等間隔で切り欠き部22が設けられた例を示している。切り欠き部22内の各々には、周方向に沿って磁極方向が向くように第1永久磁石10が配置される。第1永久磁石10は、周方向に沿って同極同士、すなわちN極とN極又はS極とS極とが向かい合うように配置される。
【0029】
また、固定プレート20aと固定プレート20bの間に、周方向に沿って第2永久磁石12及び励磁コイル14が配置される。第2永久磁石12及び励磁コイル14は、第1永久磁石10の配置間隔に合わせた間隔で設けられる。本実施の形態では、30°間隔で配置された第1永久磁石10に合わせて、第1永久磁石10の両側にそれぞれ第2永久磁石12及び励磁コイル14が配置される。このとき、第2永久磁石12は、第1永久磁石10に対して対向方向及び回転部材204の回転方向に直交する位置に配置される。すなわち、第2永久磁石12は、磁極方向が回転部材204の回転軸方向(アキシャル方向)に向き、励磁コイル14は、第2永久磁石12を当該磁極方向に着磁できるような方向に磁界を生じさせるように配置される。本実施の形態では、中空筒形状の第2永久磁石12の外周を励磁コイル14で巻回するように構成した例を示している。第2永久磁石12及び励磁コイル14は、ボルト及びナット等からなる固定部材24により固定プレート20a及び固定プレート20bに取付けられる。
【0030】
回転部材204は、回転プレート30a及び回転軸30bを含んで構成される。回転プレート30aは、円盤形状であり、中空円盤状の固定プレート20a及び固定プレート20bの中空部に、固定プレート20a及び固定プレート20bの内周面と所定の間隙をもって配置される。回転軸30bは、回転プレート30aと共に固定部材202に対して相対的に回転可能となるように回転プレート30aの中心軸に固定される。回転軸30bは、エンジンやモータ等の回転駆動手段に接続され、回転プレート30aと共に回転させられる。
【0031】
なお、固定部材202と回転部材204との間の磁気的な結合を強めるために、固定プレート20a及び固定プレート20bの内周面及び回転プレート30aの外周面に突極構造を設けてもよい。すなわち、固定プレート20a及び固定プレート20bの回転プレート30aとの係合面に回転プレート30aに向けられた第1凸部20cを設ける。また、回転プレート30aの固定プレート20a及び固定プレート20bとの係合面に固定プレート20a及び固定プレート20bに向けられた第2凸部30cを設ける。これにより、第1凸部20cと第2凸部30cとが向き合った状態において最も磁気的抵抗が小さくなり、固定部材202と回転部材204との間の磁気的吸引力が最も強くなる。したがって、固定部材202と回転部材204は、第1凸部20cと第2凸部30cとが空隙を介して対向した状態において係合状態となる。
【0032】
ブレーキシステム200において、各第1永久磁石10とその両側に配置されている第2永久磁石12の磁極をN極とS極が向かい合うように各第2永久磁石12を着磁すると、図7(a)に示すように、第1永久磁石10及び第2永久磁石12の磁束は固定プレート20a及び固定プレート20b内に閉じ込められる。この場合、回転部材204と固定部材202の間に吸引力は生じず、回転部材204は固定部材202に対して開放された状態となる。一方、各第1永久磁石10とその両側に配置されている第2永久磁石12の磁極をN極とN極及びS極とS極が向かい合うように各第2永久磁石12を着磁すると、図7(b)に示すように、第1永久磁石10及び第2永久磁石12の磁束が固定プレート20a及び固定プレート20bから回転プレート30aを通るように磁路が形成される。この場合、回転部材204と固定部材202の間に吸引力が生じ、回転部材204は固定部材202に対して係合された状態となる。
【0033】
このように、第1永久磁石10と第2永久磁石12との着磁特性の差を利用して、励磁コイル14に電流を流すことによって生ずる外部磁界を用いて第2永久磁石12の極性のみを反転させることでブレーキシステム200の開放状態と係合状態とを切り替えることができる。
【0034】
また、第2永久磁石12を径方向に配置せず、回転軸方向(アキシャル方向)に配置することによってブレーキシステム200のクラッチ径を大きくすることができる。したがって、同一のクラッチ径をもつブレーキシステム200を構成する場合には、第2永久磁石12を径方向に配置した構成に比べてブレーキシステム200を小型化することができる。
【0035】
また、第2永久磁石12を中空筒形状とし、第2永久磁石12の中空部に固定部材24を通して固定することによって、第2永久磁石12を構造部材の一部として活用できるのでブレーキシステム200の機械的強度を高めることができる。また、第2永久磁石12を構造部材として活用しない場合に比べて、機械的強度を高めるための他の構造部材を少なくすることができ、ブレーキシステム200を小型化することができる。
【0036】
また、第2永久磁石12の外周部に励磁コイル14を配置した構成とすることによって、第2永久磁石12を着磁する際の漏れ磁束を低減でき、ブレーキシステム200を省電力化及び小型化することができる。
【0037】
なお、隣り合う第1永久磁石10の間に配置された2つの第2永久磁石12の着磁方向は常に同一であるので、図8に示すように、当該2つの第2永久磁石12を1つの第2永久磁石12としてもよい。これにより、ブレーキシステム200の構造をより簡略化することができる。
【0038】
なお、上記実施の形態では、第1凸部20cと第2凸部30cとが接触することなく、空隙を介して固定部材202と回転部材204とが係合する構成としたが、これに限定されるものではない。すなわち、固定部材202と回転部材204とが摩擦力により係合する摩擦式や機械的に係合する係合システムとしてもよい。
【0039】
図9及び図10は、摩擦式のブレーキシステム300の構成例を示す。図9は、ブレーキシステム300の部分斜視図を示す。図10は、ブレーキシステム300の作用を説明する側面図を示す。ブレーキシステム300では、図9に示すように、固定プレート20aに対して空隙Xを介して配置され、軸方向(図中、A−B方向)に稼働可能な稼働部材40が設けられる。稼働部材40と固定プレート20aとの間には弾性部材42が設けられ、稼働部材40は固定プレート20aに対して軸方向に向けて付勢される。
【0040】
図10(a)に示すように、固定プレート20aと稼働部材40との間に吸引力が発生している状態では、稼働部材40が固定プレート20a側に引き付けられ、稼働部材40と回転プレート30aとが離間して接触しない。したがって、稼働部材40と回転プレート30aとの間に摩擦力は生じず、回転部材204は固定部材202に対して自由に回転する開放状態となる。第2永久磁石12の着磁状態を変化させて固定プレート20aと稼働部材40との間に吸引力が発生していない状態とすると、図10(b)に示すように、弾性部材42によって稼働部材40が回転プレート30a側に押し付けられ、稼働部材40と回転プレート30aとが接触する。したがって、稼働部材40と回転プレート30aとの間に摩擦力が生じ、回転部材204は固定部材202に対して回転が制限された係合状態となる。
【0041】
なお、稼働部材40と回転プレート30aとが機械的に係合する構成としてもよい。例えば、図11の稼働部材40と回転プレート30aの当接箇所の拡大図に示すように、稼働部材40の回転プレート30aに向かい合った面に第1凸部40aを設け、回転プレート30aの稼働部材40に向かい合った面に第2凸部30dを設ける。固定プレート20aと稼働部材40との間に吸引力が発生している状態では、稼働部材40が固定プレート20a側に引き付けられ、稼働部材40の第1凸部40aと回転プレート30aの第2凸部30dとが係合しない。したがって、稼働部材40と回転プレート30aとは機械的に係合せずに開放状態となる。第2永久磁石12の着磁状態を変化させて固定プレート20aと稼働部材40との間に吸引力が発生していない状態とすると、弾性部材42によって稼働部材40が回転プレート30a側に押し付けられ、稼働部材40の第1凸部40aと回転プレート30aの第2凸部30dとが互いに係合する。したがって、稼働部材40と回転プレート30aとが機械的に係合した係合状態となる。
【0042】
また、本発明の係合システムは、クラッチシステムに適用することもできる。例えば、図12の部分斜視図に示すように、励磁コイル14に対する通電方法にスリップリング50を適用したクラッチシステム400とする。スリップリング50を設けることによって、第1永久磁石10及び第2永久磁石12を含めて回転可能となり、クラッチとしても機能する。
【0043】
また、図13の部分斜視図に示すように、回転プレート30aを2つの回転プレート30e,30fに分割することによってクラッチシステム402を構成することができる。ここで、固定プレート20aと回転プレート30eとの間には凸部を設けない非突極構造とし、回転プレート30eと回転プレート30fとの間にはそれぞれ第1凸部30g及び第2凸部30hを設けた突極構造とする。また、図14の断面図に示すように、回転プレート30eを2つに分割して、その間に絶縁層30iを設け、往路と復路の磁束(図中、破線矢印で示す)が短絡しない構造とする。これによって、第2永久磁石12の着磁状態によって吸引力が生じている場合、固定プレート20aと回転プレート30eとの間には係合状態とならず、回転プレート30eと回転プレート30fとの間のみが係合状態となる。なお、クラッチシステム402において回転プレート30eと回転プレート30fとの間の係合方法は、摩擦式や機械式としてもよい。
【0044】
なお、本発明の適用範囲は、回転部材に対するブレーキシステムやクラッチシステムに限定されるものではなく、互いに相対的に並進する部材のブレーキシステムやクラッチシステムに適用してもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 第1永久磁石、12 第2永久磁石、14 励磁コイル、16 第1ヨーク部材、18 第2ヨーク部材、20a,20b 固定プレート、20c,30g 第1凸部、22 切り欠き部、24 固定部材、30a,30e,30f 回転プレート、30b 回転軸、30c,30d,30h 第2凸部、30i 絶縁層、40 稼働部材、40d 第1凸部、100 係合システム、200,300 ブレーキシステム、202 固定部材、204 回転部材、400,402 クラッチシステム。
図1
図2
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図14