(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
ポリエチレンを含みかつ12.0マイクロメートル以下の厚さを有する微多孔膜は、典型的には摂氏145.0度未満のメルトダウン温度を有することが認められている。このポリエチレンをポリプロピレンと合わせると、これらの膜はメルトダウン温度は高くなるがポリマー電解質への親和性が低下することも認められている。本発明は、少なくとも一部は、(膜の重量を基準として)1.0重量%以上のポリエチレンと、4.0重量%〜20.0重量%の、5.0×10
5以上の重量平均分子量(「Mw」)および80.0J/g以上の融解熱(「ΔHm」)を有するポリプロピレン(重量パーセントは膜の重量が基準である)との混合物を膜が含むと、これらの困難を克服することができるという発見に基づいている。これらの膜は、改善されたメルトダウン温度と、リチウムイオンポリマー電池のBSFとして有用であるのに十分な電解質親和性との両方を有する。
【0010】
本明細書および添付の特許請求の範囲において、「ポリマー」という用語は、1種または複数のモノマーに由来する繰返し単位を含む複数の高分子を含んだ組成物を意味する。これらの高分子は、サイズ、分子構造、原子含有量等が異なっていてもよい。「ポリマー」という用語には、コポリマー、ターポリマー等の高分子が含まれる。「ポリエチレン」は、50%以上(個数基準)のエチレン由来の繰返し単位、好ましくは、ポリエチレンホモポリマー、および/または繰返し単位の少なくとも85%(個数基準)がエチレン単位であるポリエチレンコポリマー、を含有するポリオレフィンを意味する。「ポリプロピレン」は、50.0%超(個数基準)のプロピレン由来の繰返し単位、好ましくは、ポリプロピレンホモポリマー、および/または繰返し単位の少なくとも85%(個数基準)がプロピレン単位であるポリプロピレンコポリマーを含有するポリオレフィンを意味する。アイソタクチックポリプロピレンという用語は、(アイソタクチックポリプロピレンの合計モル数を基準として)約50.0モル%以上のmmmmペンタッド、好ましくは96.0モル%以上のmmmmペンタッドのメソペンタッド分率を有するポリプロピレンを意味する。「微多孔膜」は、細孔を有する薄膜であって、膜の細孔量の90.0パーセント以上(体積基準)が0.01マイクロメートル〜10.0マイクロメートルの範囲の平均直径を有する細孔である。押出物から製造される膜に関しては、機械方向(「MD」)は、ダイから押出物が製造される方向と定義される。横方向(「TD」)は、押出物のMDおよび厚さ方向の両方に対して垂直な方向と定義される。MDおよびTDは膜の平面方向と呼んでもよく、この文脈において「平面」という語は、膜が平らな場合におけるほぼ膜の平面にある方向を意味する。
【0011】
微多孔膜の組成
1つまたは複数の実施形態においては、本発明は、微多孔性であり、かつ12.0マイクロメートル以下の厚さを有する、ポリエチレンおよびポリプロピレンを含む膜に関する。ある実施形態においては、微多孔膜は、ポリエチレンの量(A
1)、ならびに5.0×10
5以上のMwおよび80.0J/g以上のΔHmを有するポリプロピレンの量(A
2)を含む。A
1およびA
2は、膜中のポリマーの重量を基準とした重量パーセントで表すことができる。例えば、重量パーセントは、膜中におけるポリエチレンとポリプロピレンとを合わせた重量を基準とすることができ、例えば、A
1+A
2=100重量%である。他の実施形態においては、例えば膜が本質的にポリエチレンおよびポリプロピレンのみからなる(または正にポリエチレンおよびポリプロピレンのみからなる)場合がそうであり得るように、重量パーセントは膜の重量が基準である。
【0012】
例えば、1つまたは複数の実施形態においては、A
1は80.0重量%〜96.0重量%の範囲であり、A
2は4.0重量%〜20.0重量%の範囲であり、A
1およびA
2の重量パーセントは100重量%に等しいA
1とA
2とを合わせた重量が基準である。所望により、A
1は例えば94.75重量%〜95.25重量%の範囲といった84.5重量%〜95.5重量%の範囲である。所望により、A
2は例えば4.75重量%〜5.25重量%の範囲といった4.5重量%〜15.5重量%の範囲である。
【0013】
以下、ポリエチレンおよびポリプロピレンの選択された実施形態についてさらに詳細に説明するが、この説明は本発明のより広い範囲内にある他の実施形態を除外することを意図するものではない。
ポリエチレン
【0014】
特定の実施形態においては、ポリエチレン(「PE」)は、2種以上のポリエチレン(後述する「PE1」、「PE2」、「PE3」等)の混合物等の、ポリエチレンの混合物または反応器ブレンドを含み得る。例えば、PEは(i)第1のPE(PE1)および/または第2のPE(PE2)と(ii)第3のPE(PE3)とのブレンドを含んでもよい。
【0015】
PE1
ある実施形態においては、第1のPE(「PE1」)は、例えば、例えば約1.0×10
5〜約0.90×10
6の範囲といった1.0×10
6未満のMw、例えば約2.0〜約20.0の範囲といった50.0以下のMWD、および炭素原子1.0×10
4個当たり0.20未満の末端不飽和量を有するPEであってもよい。所望により、PE1は約4.0×10
5〜約6.0×10
5の範囲のMwおよび約3.0〜約10.0の分子量分布(「MWD」、Mwを数平均分子量で割ったものと定義される)を有する。所望により、PE1は炭素原子1.0×10
4個当たり0.14以下、または炭素原子1.0×10
4個当たり0.12以下、例えば炭素原子1.0×10
4個当たり0.05〜0.14の範囲(例えば測定の検出限界よりも下)の末端不飽和量を有する。
【0016】
PE2
ある実施形態においては、第2のPE(「PE2」)は、例えば、例えば約2.0×10
5〜約0.9×10
6の範囲といった1.0×10
6未満のMw、例えば約2〜約50の範囲といった50.0以下のMWD、および炭素原子1.0×10
4個当たり0.20超の末端不飽和量を有するPEであってもよい。所望により、PE2は炭素原子1.0×10
4個当たり0.30超、または炭素原子1.0×10
4個当たり0.50超、例えば炭素原子1.0×10
4個当たり0.6〜10.0の範囲の末端不飽和量を有する。PE2の非限定的な例としては、例えば約7.5×10
5といった約3.0×10
5〜約8.0×10
5の範囲のMwおよび約4〜約15のMWDを有するものがある。
【0017】
PE1および/またはPE2は、例えばエチレンホモポリマー、または、α−オレフィン等の1種または複数のコモノマーをモル比で100%のコポリマーを基準として5.0モル%以下で含有するエチレン/α−オレフィンコポリマーであってもよい。所望によりα−オレフィンは、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、またはスチレンの1種または複数である。かかるPEは、摂氏132度以上の融点を有してもよい。PE1は、例えばチーグラー・ナッタ触媒またはシングルサイト重合触媒を用いるプロセスで製造することができるが、これは必須ではない。末端不飽和量は、例えばPCT公開WO97/23554に記載の手順に従って測定することができる。PE2は、例えばクロム含有触媒を用いて製造することができる。
【0018】
PE3
ある実施形態においては、第3のPE(「PE3」)は、例えば、例えば約1.0×10
6〜約5.0×10
6の範囲といった1.0×10
6以上のMwおよび約1.2〜約50.0のMWDを有するPEであってもよい。PE3の非限定的な例としては、例えば約2.0×10
6といった、約1.0×10
6〜約3.0×10
6のMw、および例えば約2.0〜約20.0、好ましくは約4.0〜約15.0といった、20.0以下のMWDを有するものがある。PE3は、例えば、エチレンホモポリマー、またはモル比で100%のコポリマーを基準として5.0モル%以下のα−オレフィン等の1種または複数のコモノマーを含有するエチレン/α−オレフィンコポリマーであってもよい。コモノマーは、例えば、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、またはスチレンの1つまたは複数であってもよい。かかるポリマーまたはコポリマーは、チーグラー・ナッタ触媒またはシングルサイト触媒を用いて製造することができるが、これは必須ではない。かかるPEは摂氏134度以上の融点を有してもよい。PE1〜PE3の融点は、例えばPCT特許公開第WO2008/140835号に開示されている方法により求めることができる。
【0019】
1つまたは複数の実施形態においては、PEは、B
1の量のPE1および/またはPE2とB
2の量のPE3とを含む。ある実施形態においては、B
1は60.0重量%〜96.0重量%の範囲であり、B
2は0.0重量%〜20.0重量%の範囲である(B
1およびB
2の重量パーセントは膜中のポリマーの重量が基準である)。所望により、B
1は、膜中の総ポリマーを基準として例えば80.0重量%〜85.0重量%の範囲といった69.5重量%〜90.5重量%の範囲である。所望により、B
2は、膜中の総ポリマーを基準として例えば9.75重量%〜15.25重量%の範囲といった5.0重量%〜15.0重量%の範囲である。ある実施形態においては、B
1は79.0重量%〜95.0重量%の範囲であり、B
2は0.0重量%〜16.0重量%の範囲である。B
2が約7.5重量%未満の場合、例えば摂氏147度以上といった摂氏145度以上のメルトダウン温度を有する膜を製造するのがより困難となり得るため、一実施形態においては、膜は例えば摂氏147度以上といった摂氏145度以上のメルトダウン温度を有し、かつ例えば10.0重量%以上といった8.0重量%以上のB
2を有する。
【0020】
ポリプロピレン
ある実施形態においては、ポリプロピレン(「PP」)は、例えば、例えば6.0×10
5以上、または7.5×10
5以上、例えば約0.8×10
6〜約3.0×10
6の範囲、例えば0.9×10
6〜2.0×10
6の範囲といった、5.0×10
5以上のMwを有するポリプロピレンであってもよい。所望により、PPは摂氏160.0度以上のTmおよび80.0J/g以上、例えば90.0J/g以上、または100.0J/g以上、例えば110J/g〜120J/gの範囲のΔHmを有する。所望により、PPは例えば約1.5〜約10.0の範囲、例えば約2.0〜約8.5の範囲といった、20.0以下のMWDを有する。所望により、PPはプロピレンと5.0モル%以下のコモノマーとのコポリマー(ランダムまたはブロック)であり、コモノマーは、例えば、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、およびスチレン等の1つまたは複数のα−オレフィン、またはブタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、1,9−デカジエン等の1つまたは複数のジオレフィンである。
【0021】
ある実施形態においては、PPはアイソタクチックポリプロピレンである。ある実施形態においては、PPは、(a)約90.0モル%以上のmmmmペンタッド、所望により96.0モル%以上のmmmmペンタッド、好ましくは96.0モル%以上のmmmmペンタッドのメソペンタッド分率、および(b)例えば炭素原子1.0×10
4個当たり約20以下といった炭素原子1.0×10
4個当たり約50.0以下の立体的欠陥量、または例えば炭素原子1.0×10
4個当たり約5.0以下といった炭素原子1.0×10
4個当たり約10.0以下の立体的欠陥量を有する。所望により、PPは以下の特性の1つまたは複数を有する:(i)摂氏162.0度以上のTm、(ii)摂氏230度の温度および25秒
−1のひずみ速度における、約5.0×10
4Pa秒以上の伸張粘度、(iii)約摂氏230度の温度および25秒
−1のひずみ速度にて測定した場合の約15以上のトルートン比、(iv)約0.1dg/分以下、例えば約0.01dg/分以下(すなわち、値が低く事実上MFRが測定不能)のメルトフローレート(「MFR」;ASTM D−1238−95 条件L、摂氏230度および2.16kgにて)、または(v)PPの重量を基準として、例えば0.2重量%以下、例えば0.1重量%以下といった、0.5重量%以下の抽出可能な種の量(PPと沸騰キシレンとを接触させることにより抽出可能)。
【0022】
ある実施形態においては、PPは、約0.9×10
6〜約2.0×10
6の範囲のMw、例えば2.0〜8.5の範囲、例えば2.5〜6.0の範囲といった、8.5以下のMWD、および90.0J/g以上のΔHmを有するアイソタクチックPPである。通常は、かかるPPは、94.0モル%以上のmmmmペンタッドのメソペンタッド分率、炭素原子1.0×10
4個当たり約5.0以下の立体的欠陥量、および摂氏162.0度以上のTmを有する。ある実施形態においては、PPは6.0×10
5以上のMw、8.5以下のMWD、および90.0J/g以上のΔHmを有する90.0重量%以上のアイソタクチックポリプロピレン(重量パーセントはPPの重量が基準である)を含む。
【0023】
PPの非限定的な例、ならびにPPのTm、メソペンタッド分率、立体規則性、固有粘度、トルートン比、立体的欠陥、および抽出可能な種の量の決定方法は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT特許公開第WO2008/140835号に記載されている。
【0024】
PPのΔHmは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT特許公開第WO2007/132942号に開示されている方法で決定する。Tmは、パーキンエルマーインスツルメント社製、model Pyris 1 DSCによって得た示差走査熱量測定(DSC)デ−タから決定することができる。約5.5〜6.5mgの重量の試料をアルミニウム製の試料パンに封入する。DSCデータを、まず初めに、第一融解(デ−タは記録せず)と呼ぶ、試料を摂氏10度/分の速度で摂氏230度に加熱することにより記録する。冷却加熱サイクルを適用する前に、試料を10分間摂氏230度に保持する。次いで、試料を摂氏10度/分の速度で約摂氏230度から約摂氏25度に冷却(「結晶化」と呼ぶ)した後、10分間摂氏25度に保持し、次いで摂氏10度/分の速度で摂氏230度に加熱(「第二融解」と呼ぶ)する。結晶化と第二融解の両方における熱事象を記録する。融解温度(Tm)は第2の融解曲線のピーク温度であり、結晶化温度(Tc)は結晶化ピークのピーク温度である。
【0025】
他の種
所望により、無機種(例えばシリカおよび/またはアルミナといった、ケイ素および/またはアルミニウム原子を含有する種等)、ならびに/またはPCT公開WO2007/132942および同WO2008/016174(ともにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載のポリマー等の耐熱性ポリマーは、膜中に存在してもよい。ある実施形態においては、膜は、膜の重量を基準として1.0重量%以下のかかる材料を含有する。
【0026】
例えば加工助剤としての少量の希釈剤または他の種もまた、膜の重量を基準として通常は1.0重量%未満の量で膜中に存在してもよい。
【0027】
微多孔膜が押出しによって製造される場合、最終微多孔膜は、通常は、押出物の製造に用いるポリマーを含む。処理中に導入する少量の希釈剤または他の種もまた、通常は、膜の重量を基準として1.0重量%未満の量で存在してもよい。処理中にポリマーの分子量が少量低下することがあるが、これは許容可能なものである。ある形態においては、処理中に分子量の低下があったとしても、膜中のポリマーのMWDの値と膜の製造に用いるポリマーのMWD(例えば押出し前)との違いは、例えば、わずか約10%、わずか約1%、またはわずか約0.1%にしかならない。
【0028】
MwおよびMWDの決定
ポリマーのMwおよびMWDは、示差屈折計(DRI)を備えた高温サイズ排除クロマトグラフ、すなわち「SEC」(GPC PL 220、ポリマーラボラトリーズ社製)を用いて決定することができる。測定は、"Macromolecules, Vol. 34, No.19, pp. 6812-6820 (2001)"に開示されている手順に従って行う。MwおよびMWDの決定には、3本のPLgel Mixed−Bカラム(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いる。PEに関しては、公称流量は0.5cm
3/分であり、公称注入量は300マイクロLであり、トランスファーライン、カラム、およびDRI検出器が、摂氏145度に維持されたオーブン内に含まれている。PPに関しては、公称流量は1.0cm
3/分であり、公称注入量は300マイクロLであり、トランスファーライン、カラム、およびDRI検出器が、摂氏160度に維持されたオーブン内に含まれている。
【0029】
使用するGPC溶媒は、約1000ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有する、濾過済みの、アルドリッチ社製の、試薬グレードの1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)である。TCBを、SECに導入する前にオンライン脱気装置で脱気する。SEC溶離液として同じ溶媒を用いる。乾燥ポリマーをガラス容器に入れ、所望の量のTCB溶媒を加え、次いでこの混合物を摂氏160度で継続的に撹拌しながら約2時間加熱することにより、ポリマー溶液を調製する。ポリマー溶液の濃度は0.25〜0.75mg/mlである。試料溶液は、GPCに注入する前に、モデルSP260 Sample Prep Station(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いて2マイクロメートルフィルターでオフラインろ過する。
【0030】
Mp(「Mp」はMwにおけるピークと定義される)が約580〜約10,000,000の範囲の17種のそれぞれのポリスチレン標準を用いて作成した検量線でカラムセットの分離効率を較正する。ポリスチレン標準はポリマーラボラトリーズ社(マサチューセッツ州アマースト)より入手する。各PS標準についてDRI信号のピークにおける保持容量を記録し、このデータセットを二次多項式に当てはめることによって、検量線(logMp対保持容量)を作成する。ウェーブメトリクス社(Wave Metrics, Inc.)製IGOR Proを用いて試料を分析する。
膜
【0031】
本発明を以下の実施形態でさらに説明する。この説明は本発明のより広い範囲内にある他の実施形態を除外することを意図するものではない。
【0032】
一実施形態においては、本発明は、79.0重量%〜86.0重量%のPE1、9.0重量%〜16.0重量%のPE3、および4.0重量%〜6.0重量%のPPを含む膜に関し、ここで(i)PE1は、約4.0×10
5〜約6.0×10
5の範囲のMw、約3.0〜約10.0のMWD、炭素原子1.0×10
4個当たり0.14以下の末端不飽和量、および摂氏132度以上の融点を有し、(ii)PE3は、約1.0×10
6〜約3.0×10
6の範囲のMw、約4.0〜約15.0の範囲のMWD、および摂氏134度以上の融点を有し、(iii)PPは、約0.9×10
6〜約2.0×10
6の範囲のMw、例えば2.0〜8.5の範囲、例えば2.5〜6.0の範囲といった、8.5以下のMWD、および例えば100.0J/g以上といった、90.0J/g以上のΔHmを有するアイソタクチックPPであり(重量パーセントは膜の重量が基準である)、(iv)膜は微多孔性であり、かつ(v)膜は、例えば8.0マイクロメートル以下といった12.0マイクロメートル以下の厚さを有する。所望により膜は単層膜である。所望により、膜は膜の重量を基準として1.0重量%以下のPE2を含有する。かかる膜は、例えば、例えば摂氏148.0度以上、例えば摂氏150.0度以上といった、摂氏145.0度以上のメルトダウン温度;例えば0.20秒/マイクロメートル以下、例えば0.18秒/マイクロメートル以下といった、0.24秒/マイクロメートル以下の規格化電解質親和性;および例えば2.90×10
2mN/マイクロメートル以上といった、2.85×10
2mN/マイクロメートル以上の規格化突刺強度を有する。ある実施形態においては、膜は、9.0マイクロメートル以下の厚さ、2.85×10
2mN/マイクロメートル以上の規格化突刺強度、0.18秒/マイクロメートル以下のNEA、および35.0%以上の空孔率を有する。所望により、PE1、PE2、およびPPを合わせた重量は、膜の重量の、例えば98.0重量%以上、例えば99.0重量%以上といった、95.0重量%以上である。
【0033】
別の実施形態においては、本発明は、79.0重量%〜86.0重量%のPE2、9.0重量%〜16.0重量%のPE3、および4.0重量%〜6.0重量%のPPを含む膜に関し、ここで(i)PE2は、約3.0×10
5〜約8.0×10
5の範囲のMw、約4〜約15の範囲のMWD、炭素原子1.0×10
4個当たり0.20以上の末端不飽和量、および摂氏132度以上の融点を有し、(ii)PE3は、約1.0×10
6〜約3.0×10
6の範囲のMw、約4.0〜約15.0の範囲のMWD、および摂氏134度以上の融点を有し、(iii)PPは、約0.9×10
6〜約2.0×10
6の範囲のMw、例えば2.0〜8.5の範囲、例えば2.5〜6.0の範囲といった、8.5以下のMWD、および例えば100.0J/g以上といった、90.0J/g以上のΔHmを有するアイソタクチックPPであり、(iv)膜は微多孔性であり、かつ(v)膜は、例えば8.0マイクロメートルといった12.0マイクロメートル以下の厚さを有する。重量パーセントは膜の重量が基準である。所望により、膜は膜の重量を基準として1.0重量%以下のPE1を含有する。かかる膜は、例えば摂氏150.0度以上といった摂氏145.0度以上のメルトダウン温度、例えば0.14秒/マイクロメートル以下といった0.16秒/マイクロメートル以下の規格化電解質親和性、および2.90×10
2mN/マイクロメートル未満の規格化突刺強度を有する。所望により膜は単層膜である。所望により、PE1、PE2、およびPPを合わせた重量は、膜の重量の、例えば98.0重量%以上、例えば99.0重量%以上といった、95.0重量%以上である。
【0034】
これに限定されるものではないが、本発明は、リチウムイオンポリマー電池、特に二次リチウムイオンポリマー電池におけるバッテリーセパレーターフィルムとしての、前述のいずれかの実施形態の膜の使用を包含している。いかなる理論またはモデルにも拘束されることを望まないが、膜中におけるPPとPE3の相対量はほぼ一定に保ちつつPE1の代わりにPE2を用いると、ポリマー電解質に対する膜の親和性は上昇するが膜の強度は低下することになると考えられている。
【0035】
以下、微多孔膜の製造方法についてさらに詳細に説明する。押出しによって製造される単層膜について本発明を説明するが、本発明はそれに限定されるものではなく、またこの説明は本発明のより広い範囲内にある他の実施形態を除外することを意図するものではない。
【0036】
膜の製造方法
1つまたは複数の実施形態においては、微多孔膜は、第1のポリマー(すなわちPE)および第2のポリマー(すなわちPP)を、(例えば乾式混合または溶融混合により)希釈剤、および無機充填剤等の任意である構成成分と混合して混合物を形成し、次いで混合物を押し出して押出物を形成することにより製造することができる。希釈剤の少なくとも一部を押出物から除去して微多孔膜を形成する。例えば、PE1および/またはPE2とPE3およびPPとのブレンドを流動パラフィン等の希釈剤と合わせて混合物を形成してもよく、その混合物を押し出しおよび加工して12.0マイクロメートル以下の厚さを有する単層膜を形成する。所望であれば、追加の層を押出物に施して、例えばシャットダウン機能の低い最終膜としてもよい。言い換えれば、単層押出物または単層微多孔膜を積層または共押出しして多層膜を形成してもよい。
【0037】
1つまたは複数の実施形態においては、膜の製造プロセスは、希釈剤除去の前に押出物を少なくとも1つの方向に延伸する工程を含む。これらの、または他の実施形態においては、プロセスは、希釈剤除去の後に膜を少なくとも1つの方向に延伸する工程を含む。膜の製造プロセスは、例えば、残留したいずれかの揮発性種の少なくとも一部を希釈剤除去後のいずれかの時点において膜から除去する工程、希釈剤除去の前または後に膜を熱処理(熱セットまたはアニーリング等)にかける工程を、所望によりさらに含む。PCT公開WO2008/016174に記載されている、溶媒処理、熱セット、電離放射線による架橋、および親水性処理等の任意である工程を所望であれば行ってもよい。これらの任意である工程の数も順序も重要ではない。
【0038】
ポリマー−希釈剤混合物の製造
1つまたは複数の実施形態においては、第1および第2のポリマー(上記の通り、例えば、第1のポリマーとしてのPE1(および/またはPE2)およびPE3、ならびに第2のポリマーとしてのPP)を1種または複数の希釈剤とともに導入、混合し、ポリマー−希釈剤混合物を形成する。例えば、第1と第2のポリマーとを合わせてポリマーブレンドを形成してもよく、このブレンドを希釈剤(希釈剤の混合物、例えば溶媒混合物であってもよい)と合わせてポリマー−希釈剤混合物を製造する。混合は、例えば反応押出機等の押出機内にて行ってもよい。これらの押出機としては、限定するものではないが、二軸スクリュー押出機、リング押出機、および遊星型多軸スクリュー押出機が挙げられる。本発明の実施は使用する押出機のタイプに制限されるものではない。充填剤、酸化防止剤、安定剤、および/または耐熱性ポリマー等の任意である種がポリマー−希釈剤混合物に含まれてもよい。これらの任意である種の種類および量は、PCT公開第WO2007/132942号、同第WO2008/016174号、および同第WO2008/140835号に記載のものと同じであってもよく、それらの全ては全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0039】
希釈剤は、通常は、押出物の製造に用いるポリマーと相溶する。例えば希釈剤は、押出温度にて樹脂と合わさって単相を形成することが可能ないずれの種または種の組合せであってもよい。希釈剤の例としては、ノナン、デカン、デカリン等の脂肪族または環状炭化水素、およびパラフィン油、ならびにフタル酸ジブチルおよびフタル酸ジオクチル等のフタル酸エステルの1つまたは複数が挙げられる。例えば、摂氏40度で20〜200cStの動粘度を有するパラフィン油を用いてもよい。希釈剤は、ともにその全体が参照により組み込まれる、米国特許公開第2008/0057388号および同第2008/0057389号に記載のものと同じであってもよい。
【0040】
ある実施形態においては、ポリマー−希釈剤混合物中のポリマーブレンドは、A
1の量の第1のポリマー(例えばPE1およびPE3)およびA
2の量の第2のポリマー(例えばPP)を含む。ある実施形態においては、A
1は、例えば80.0重量%〜96.0重量%の範囲といった1.0重量%以上であり、A
2は4.0重量%〜20.0重量%の範囲である(A
1およびA
2の重量パーセントは混合物中のポリマーの重量が基準である)。所望により、A
1は、例えば94.75重量%〜95.25重量%の範囲といった84.5重量%〜95.5重量%の範囲である。所望により、A
2は、混合物中のポリマーの全重量を基準として、例えば4.75〜5.25重量%の範囲といった4.5重量%〜15.5の範囲である。所望により、ポリマー−希釈剤混合物は、混合物の重量を基準として45.0重量%以下のポリマーを含み、例えば混合物中のポリマーの全重量を基準として30.0重量%〜40.0重量%の範囲である。混合物の残りの部分は希釈剤であってもよい。
【0041】
1つまたは複数の実施形態においては、ポリマー−希釈剤混合物中のA
1の量のPEは、B
1の量のPE1および/またはPE2とB
2の量のPE3とを含んでもよい。ある実施形態においては、B
1は60.0重量%〜96.0重量%の範囲であり、B
2は0.0重量%〜20.0重量%の範囲である(B
1およびB
2の重量パーセントは混合物中のポリマーの重量が基準である)。所望により、B
1は、混合物中の全ポリマーを基準として例えば80.0重量%〜85.0重量%の範囲といった、69.5重量%〜90.5重量%の範囲である。所望により、B
2は、混合物中の全ポリマーを基準として例えば9.75重量%〜15.25重量%の範囲といった、5.0重量%〜15.0の範囲である。
【0042】
ある実施形態においては、押出しの際のポリマー−希釈剤混合物は、例えば摂氏210度〜摂氏230度といった摂氏140度〜摂氏250度の範囲の温度にさらされる。
【0043】
押出物の製造
ある実施形態においては、ポリマー−希釈剤混合物をダイを通して押出機から導き押出物を製造する。押出物は、加工工程後に望ましい厚さ(通常12.0マイクロメートル以下)を有する最終膜を製造するのに適切な厚さを有しているべきである。例えば押出物は、約1.0マイクロメートル〜約10.0マイクロメートル、または約3.0マイクロメートル〜約8.0マイクロメートルの範囲の厚さを有してもよい。1つまたは複数の実施形態においては、最終膜は、例えば10.0マイクロメートル以下といった、12.0マイクロメートル以下の最終膜厚(加工後)を有する。
【0044】
押出しは、通常は、溶融状態のポリマー−希釈剤混合物を用いて行う。シート形成ダイを使用する場合、ダイリップを、通常は、例えば摂氏180度〜摂氏240度の範囲の高温に加熱する。押出しを実行するための好適な処理条件は、PCT公開WO2007/132942および同WO2008/016174に開示されている。
【0045】
所望であれば、押出物を約摂氏10度〜約摂氏45度の範囲の温度にさらして冷却押出物を形成することができる。冷却速度は特に重要ではない。例えば押出物は、押出物の温度(冷却した温度)が押出物のゲル化温度とほぼ同じ(またはそれ以下)になるまで、最低でも約摂氏30度/分の冷却速度で冷却してもよい。冷却の処理条件は、例えばPCT公開第WO2007/132942号、同第WO2008/016174号、および同第WO2008/140835号に開示されているものと同じであってもよい。
【0046】
押出物の延伸(上流延伸)
押出物または冷却押出物は、少なくとも一つの方向、例えばMDまたはTD等の平面方向に延伸してもよい(「上流延伸」または「湿式延伸」と呼ぶ)。このような延伸により、押出物中のポリマーが少なくともいくつかの方向に延伸することになると考えられる。この延伸は「上流」延伸と呼ばれる。押出物は、例えばPCT公開第WO2008/016174号に記載されている、例えばテンター法、ロール法、インフレーション法、またはそれらの組合せにより延伸することができる。延伸は一軸に、または二軸に行ってもよく、ある特定の実施形態においては押出物を二軸に延伸する。二軸延伸の場合、同時二軸延伸、逐次延伸、または多段階延伸(例えば同時二軸延伸と逐次延伸の組合せ)のいずれを用いてもよく、ある特定の実施形態においては押出物を同時に二軸に延伸する。二軸延伸を用いる場合、倍率の大きさは各延伸方向で同じである必要はない。
【0047】
延伸倍率は一軸延伸の場合例えば2倍以上、例えば3〜30倍であってもよい。二軸延伸の場合延伸倍率は例えばいずれの方向にも3倍以上であってもよく、すなわち面積倍率が例えば16倍以上、例えば25倍以上といった、9倍以上であってもよい。この延伸工程の例としては面積倍率が約9倍〜約49倍の延伸が挙げられる。各方向への延伸の量はやはり同じである必要はない。倍率はフィルムの大きさに乗法的に影響する。例えば、TDに4倍の倍率に延伸される最初の幅(TD)が2.0cmであるフィルムは、最終幅が8.0cmとなる。
【0048】
延伸は、押出物をおよそTcd温度からTmの範囲の温度(上流延伸温度)にさらしながら行ってもよいが、TcdおよびTmは、結晶分散温度、および押出物の製造に用いるポリエチレンの中で最も融点の低いPE(通常はPE1またはPE3等のPE)の融点と定義する。結晶分散温度は、ASTM D 4065に従って動的粘弾性の温度特性を測定することにより決定する。Tcdが約摂氏90度〜約摂氏100度の範囲である実施形態においては、延伸温度は、例えば摂氏108.0度〜摂氏116.0度、例えば摂氏110.0度〜摂氏114.0度といった、摂氏90.0度〜摂氏122.0度であってもよい。
【0049】
試料(例えば押出物、乾燥押出物、膜等)を高温にさらす場合、こうした暴露は、空気を熱し、次いでこの加熱空気を試料の近くに運ぶことにより行うことができる。加熱空気の温度は、通常は所望の温度と等しい設定値に制御され、次いでプレナム等を通して試料に向けて導かれる。試料を加熱面にさらす方法、オーブンでの赤外線加熱等の従来の方法を含む、試料を高温にさらすその他の方法を、加熱空気とともに、または加熱空気の代わりに用いてもよい。
【0050】
希釈剤の除去
ある実施形態においては、希釈剤の少なくとも一部を延伸押出物から除去(または置換)して乾燥膜を形成する。例えばPCT開第WO2008/016174号に記載のように、置換(または「洗浄」)溶媒を用いて希釈剤を除去(洗浄、または置換)してもよい。
【0051】
ある実施形態においては、残留したいずれかの揮発性種(例えば洗浄溶媒)の少なくとも一部を、希釈剤除去後に乾燥膜から除去する。加熱乾燥、風乾(空気を動かすこと)等の従来の方法を含む、洗浄溶媒を除去することが可能ないずれの方法を用いてもよい。洗浄溶媒等の揮発性種を除去するための処理条件は、例えばPCT公開第WO2008/016174号に開示されているものと同じであってもよい。
【0052】
任意である膜の延伸(下流延伸)
乾燥膜は、少なくとも1つの方向、例えばMDおよび/またはTDに延伸してもよい(希釈剤の少なくとも一部が除去または移動されるため、「下流延伸」または「乾燥延伸」と呼ぶ)。このような延伸により、膜中のポリマーが少なくともいくつかの方向に延伸することになると考えられる。この延伸は下流延伸と呼ばれる。下流延伸の前には、乾燥膜はMDの最初の大きさ(第1の乾燥長さ)およびTDの最初の大きさ(第1の乾燥幅)を有する。本明細書で用いる用語「第1の乾燥幅」は、乾燥延伸開始前における乾燥膜のTDへの大きさを指す。用語「第1の乾燥長さ」は、乾燥延伸開始前における乾燥膜のMDへの大きさを指す。例えば、WO2008/016174に記載の種類のテンター延伸装置を用いることができる。
【0053】
乾燥膜は、第1の乾燥長さから、例えば約1.1〜1.5の範囲といった約1.0〜約1.6の範囲の倍率(「MD乾燥延伸倍率」)で第1の乾燥長さより長い第2の乾燥長さへ、MDに延伸してもよい。TD乾燥延伸を用いる場合、乾燥膜は、第1の乾燥幅から、ある倍率(「TD乾燥延伸倍率」)で第1の乾燥幅より広い第2の乾燥幅へ、TDに延伸してもよい。所望により、TD乾燥延伸倍率はMD乾燥延伸倍率以上である。TD乾燥延伸倍率は、例えば約1.1〜1.5といった約1.1〜約1.6の範囲であってもよい。乾燥延伸は、MDおよびTDに逐次的または同時的であってもよい。二軸乾燥延伸を用いる場合、乾燥延伸はMDおよびTDに同時的、または逐次的であってもよい。乾燥延伸が逐次的の場合、通常はMD延伸を最初に行い続いてTD延伸を行う。
【0054】
ある特定の実施形態においては、特に本発明に従って製造されるある特定の膜の厚さを考慮すると、本発明の実施形態を実施する際には乾燥延伸は避けるかまたは最小限に行う。例えば、望ましい厚さを有する膜フィルムが製造される加工工程にはいかなる乾燥延伸の工程も含まれない。他の実施形態においては、加工工程には1.1以下の倍率への乾燥延伸が含まれ、他の実施形態では1.08以下、他の実施形態では1.05以下、また他の実施形態では1.03以下である。
【0055】
乾燥延伸は、乾燥膜を例えばおよそTcd−摂氏20度〜Tmの範囲といったTm以下の温度(下流延伸温度)にさらしながら行ってもよい。ある実施形態においては、延伸温度は例えば約摂氏110.0度〜約摂氏132.0度、例えば約摂氏120.0度〜約摂氏130.0度といった、約摂氏70.0度〜約摂氏135.0度の範囲の温度にさらした膜で行う。
【0056】
ある実施形態においては、MD乾燥延伸倍率は約1.0であり、TD乾燥延伸倍率は例えば約1.05〜約1.5、例えば約1.1〜1.5の範囲といった1.6以下であり、乾燥延伸は膜を約摂氏120.0度〜約摂氏130.0度の範囲の温度にさらしながら行われる。
【0057】
乾燥延伸速度は重要ではない。ある実施形態においては、乾燥延伸速度は延伸方向(MDまたはTD)に1%/秒以上であり、また速度はMDおよびTD延伸について独立して選択することができる。所望により、延伸速度は、例えば3%/秒以上、例えば10%/秒以上といった、2%/秒以上である。一実施形態においては、延伸速度は2%/秒〜25%/秒の範囲である。特に重要ではないが、延伸速度の上限は膜の破裂を防止するために50%/秒であってもよい。
【0058】
制御された膜幅の縮小
乾燥延伸に続き、所望により乾燥膜に、第2の乾燥幅から、第1の乾燥幅の0.9倍から第1の乾燥幅の約1.5倍の範囲である第3の乾燥幅への制御された幅の縮小を施してもよい。所望により、第2の乾燥幅は第1の乾燥幅の1.25〜1.35の範囲であり、第3の乾燥幅は第1の乾燥幅の0.95〜1.05の範囲である。通常は幅の縮小は、例えば、例えば約摂氏110.0度〜約摂氏132.0度、例えば約摂氏120.0度〜約摂氏130.0度といった、約摂氏70.0度〜約摂氏135.0度の範囲の温度にさらした膜で、膜をTcd−摂氏30度以上であるがTm以下である温度にさらしながら行う。
【0059】
制御された幅の縮小の際の温度は下流延伸温度と同じであってもよいがこれは必須ではなく、一実施形態においては、制御された幅の縮小の際に膜がさらされる温度は、下流延伸温度の1.01倍以上、例えば1.05倍〜1.1倍の範囲である。ある形態においては、膜の幅の減少は、膜を摂氏130.0度以下の温度にさらしながら行い、第3の乾燥幅は第1の乾燥幅の0.95〜1.05の範囲である。
【0060】
熱セット
所望により、例えば乾燥延伸の後、制御された幅の縮小の後、またはその両方の後に、希釈剤の除去に続いて少なくとも1度膜を熱処理(熱セット)する。熱セットにより結晶が安定化して膜中に均一な薄層が形成されると考えられる。ある形態においては、熱セットは、例えば約摂氏70.0度〜約摂氏135.0度の範囲、例えば約摂氏110.0度〜約摂氏132.0度、例えば約摂氏120.0度〜約摂氏130.0度といった、TcdからTmの範囲の温度に膜をさらしながら行われる。
【0061】
熱セット温度は下流延伸温度と同じであってもよいが、これは必須ではない。一実施形態においては、熱セットの際に膜がさらされる温度は、下流延伸温度の1.01倍以上、例えば1.05倍〜1.1倍の範囲である。通常は、熱セットは、例えば1000秒以下、例えば1〜600秒の範囲の時間といった、膜中に薄層を形成するのに十分な時間行う。ある実施形態においては、熱セットは一般的な熱セット「熱固定」条件下で実施する。用語「熱固定」は、例えば熱セット中に膜の外周をテンタークリップで保持すること等によって膜の長さおよび幅を実質的に一定に維持しながら行う熱セットを指す。
【0062】
所望により、熱セット工程の後にアニーリング処理を行ってもよい。アニーリングは、膜には荷重をかけない加熱処理であり、例えばベルトコンベアを備えた加熱室またはエアフローティング型(air-floating-type)加熱室等を用いて行ってもよい。アニーリングは、熱セットの後にテンターを緩めた状態で連続的に行ってもよい。アニーリング中、膜を、例えば約摂氏60度〜およそTm−摂氏5度の範囲といった、Tmまたはそれ以下の範囲の温度にさらしてもよい。アニーリングによって微多孔膜の透気度および強度が向上すると考えられる。
【0063】
任意である、熱ローラー処理、熱溶媒処理、架橋処理、親水性処理、およびコーティング処理を、例えばPCT公開第WO2008/016174号に記載されているように、所望であれば行ってもよい。
【0064】
膜特性
1つまたは複数の実施形態においては、膜は、常圧で液体(水性および非水性)を透過させる微多孔膜である。したがって膜は、バッテリーセパレーター、濾過膜等として使用することができる。膜は、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、ニッケル亜鉛電池、銀亜鉛電池、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池等の二次電池用のBSFとして特に有用である。ある実施形態においては、本発明は、膜を含むBSFを含有するリチウムイオン二次電池に関する。かかる電池は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT特許公開WO2008/016174号に記載されている。
【0065】
1つまたは複数の実施形態においては、微多孔膜はリチウムイオンポリマー電池等のポリマー電池用のBSFとして有用な単層である。本明細書で用いる「ポリマー電解質」という用語は通常の意味で用いられており、ポリマー電池内の電解質を指す。当業者であれば理解するように、ポリマー電池はリチウムイオン等の、ポリマー媒体に分散、懸濁、または溶解する電解質を含んでいる。したがって電解質親和性または透気度とは、ポリマー媒体および/またはリチウムイオン等の電解質の、膜を透過する能力を指す。
【0066】
膜は以下の特性の1つまたは複数を有してもよい。
【0067】
厚さ
ある実施形態においては、最終膜の厚さは、例えば10.0マイクロメートル以下、例えば約1.0マイクロメートル〜約10.0マイクロメートルの範囲といった、12.0マイクロメートル以下である。例えば、単層膜は約4.5マイクロメートル〜約9.5マイクロメートルの範囲の厚さを有してもよい。膜の厚さは、例えば、縦方向に1cm間隔で10cmの幅にわたって接触式厚さ計により測定することができ、次いで平均値を出して膜厚さを得ることができる。〒416−0946静岡県富士市五貫島746−3、明産株式会社製モデルRC−1ロータリーキャリパー、または株式会社ミツトヨ製「ライトマチック」等の厚さ計が好適である。例えば光学的厚さ測定法等の非接触式厚さ測定方法もまた好適である。
【0068】
空孔率
膜の空孔率は、膜の実重量と、100%ポリマーの同等の非多孔性膜(同じポリマー組成、長さ、幅、および厚さを有するという意味において同等)の重量とを比較することにより従来法で測定する。次に、以下の式を用いて空孔率を求める:空孔率(パーセントで表す)=99%×(w1/w2)。式中、「w1」は膜の実重量であり、「w2」は同じ大きさおよび厚さを有する(同じポリマーの)同等の非多孔性膜の重量である。ある実施形態においては、膜の空孔率は例えば31.0%以上、例えば35.0%以上といった、20.0%以上である。例えば、膜の空孔率は例えば36.0%〜40.0%といった20.0%〜80.0%の範囲であってもよい。
【0069】
規格化透気度
ある実施形態においては、膜は、例えば約10.0秒/100cm
3/マイクロメートル〜約45.0秒/100cm
3/マイクロメートル、例えば約15.0秒/100cm
3/マイクロメートル〜約40.0秒/100cm
3/マイクロメートルの範囲といった、50.0秒/100cm
3/マイクロメートル以下の規格化透気度を有する。透気度値は、1.0マイクロメートルのフィルム厚さを有する同等の膜の値に規格化するため、膜の透気度値は、「秒/100cm
3/マイクロメートル」の単位で表す。規格化透気度は、JIS P8117に従って測定し、その結果を、A=1.0マイクロメートル×(X)/T
1の式を用いて、1.0マイクロメートルの厚さを有する同等の膜の透気度値に規格化する。式中、Xは実厚さT
1を有する膜の透気度の実測値であり、Aは1.0マイクロメートルの厚さを有する同等の膜の規格化透気度である。
【0070】
規格化突刺強度
膜の突刺強度は、1.0マイクロメートルの厚さおよび30%の空孔率を有する同等の膜の突刺強度として表され、[mN/マイクロメートル]の単位を有する。突刺強度は、厚さT
1を有する膜を末端が球面(曲率半径R:0.5mm)である直径1mmの針で2mm/秒の速度で突き刺した時に周囲温度で測定した最大荷重、と定義される。この突刺強度(「S」)を、S
2=[30%*1.0マイクロメートル*(S
1)]/[T
1*(100%−P)](式中、S
1は突刺強度の実測値であり、S
2は規格化突刺強度であり、Pは膜の空孔率の実測値であり、T
1は膜の平均厚さである)の式を用いて、1.0マイクロメートルの厚さおよび30%の空孔率を有する同等の膜の突刺強度値に規格化する。ある実施形態においては、膜の規格化突刺強度は、例えば2.90×10
2mN/マイクロメートル以上といった、2.50×10
2mN/マイクロメートル以上である。所望により、膜の規格化突刺強度は、例えば3.05×10
2mN/マイクロメートル〜4.5×10
2mN/マイクロメートルの範囲といった、3.0×10
2mN/マイクロメートル以上である。
【0071】
シャットダウン温度
微多孔膜のシャットダウン温度は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、PCT公開第WO2007/052663号に開示されている方法によって測定する。この方法に従い、摂氏25度で開始して上昇していく温度(摂氏5度/分)に微多孔膜をさらし、その間に膜の透気度を測定する。微多孔膜のシャットダウン温度は、微多孔膜の透気度(ガーレー値)が最初に1.0×10
5秒/100cm
3を超える時の温度と定義される。微多孔膜の透気度は、透気度計(旭精工株式会社製、EGO−1T)を用いてJIS P 8117に従って測定する。ある実施形態においては、シャットダウン温度は、例えば摂氏132.5度〜摂氏134.5度の範囲といった、摂氏136度以下である。
【0072】
メルトダウン温度
微多孔膜のシャットダウン温度は、シャットダウン温度の測定と同様の手順を用いて測定する。この方法に従い、摂氏25度で開始して膜のシャットダウン温度を超える温度に上昇していく温度(摂氏5度/分)に微多孔膜をさらし、その間に膜の透気度を測定する。膜加熱を続け、微多孔膜の透気度(ガーレー値)が最初に1.0×10
5秒/100cm
3の値に低下した時の温度を微多孔膜のメルトダウン温度と定義する。微多孔膜の透気度は、透気度計(旭精工株式会社製、EGO−1T)を用いてJIS P 8117に従って測定する。ある実施形態においては、本発明の膜のメルトダウン温度は、例えば摂氏150.0度以上、例えば摂氏160.0度以上といった、摂氏145.0度以上である。ある実施形態においては、メルトダウン温度は、例えば摂氏150.0度〜摂氏165度の範囲といった摂氏146.0度〜摂氏170.0度の範囲である。
【0073】
摂氏105度熱収縮
ある実施形態においては、膜は、例えば10.0%以下、6.0%以上、例えば1.0%〜5.0%の範囲の、少なくとも1つの平面方向(例えばMDまたはTD)への摂氏105度における熱収縮を有する。MDおよびTDへの摂氏105.0度における膜の収縮は次のようにして測定する:(i)周囲温度における微多孔膜の試験片の大きさをMDおよびTDの両方について測定し、(ii)微多孔膜の試験片を、荷重をかけずに8時間摂氏105度の温度にて平衡化させ、次いで(iii)膜の大きさをMDおよびTDの両方について測定する。MDおよびTDへの熱(すなわち「熱による」)収縮は、測定結果(i)を測定結果で割り、(ii)得られた商を百分率で表すことによって得ることができる。
【0074】
引張強度
ある実施形態においては、膜は、例えば1.5×10
5kPa〜2.0×10
5kPaの範囲といった、各1.4×10
5kPa以上のMDおよびTD引張強度を有する。引張強度は、ASTM D−882Aに従ってMDおよびTDについて測定する。
【0075】
規格化電解質親和性
50mm×50mm(厚さは12.0マイクロメートル以下)の膜試料を調製し、このフィルムよりも面積の大きいガラス基板上に平らに置く。可視光線を用いて上方からフィルムに照射するが、測定開始時にはフィルムは不透明である。プロピレンカーボネート(純度は99体積%以上)の液滴500.0マイクロLを、摂氏25度+/−摂氏3度の膜を用いてフィルムの表面に施す。膜の電解質親和性(「EA」)は、液滴が最初にフィルムと接触してからフィルムが透明になるまでの平均経過時間と定義される。測定を5回繰り返して平均値を得る。
【0076】
規格化電解質親和性(「NEA」)は、EA/(平均膜厚、単位:マイクロメートル)と定義される。NEAは[秒/マイクロメートル]を単位とする。ある実施形態においては、膜は、例えば2.5秒/マイクロメートル以下、例えば0.1秒/マイクロメートル〜0.9秒/マイクロメートルの範囲といった、5.0秒/マイクロメートル以下のNEAを有する。
【実施例】
【0077】
本発明を、本発明の範囲を制限することを意図することなく、下記実施例を参照してより詳細に説明する。
【0078】
参考例1
(1)ポリマー−希釈剤混合物の調製
ポリマー−希釈剤混合物を、2種類のポリエチレン、PE1およびPE3とPPとのポリマーブレンドと希釈剤とを合わせることにより次のようにして調製する。ポリマーブレンドは、(a)5.6×10
5のMw、4.0のMWD、炭素原子1.0×10
4個当たり0.14以下の末端不飽和量、および摂氏136.0度のTmを有する90.0重量%のPE(PE1)、(b)1.9×10
6のMw、5.1のMWD、および摂氏136.0度のTmを有する5.0重量%のPE(PE3)、ならびに(c)5.3×10
5のMwおよび約80J/gのΔHmを有する5.0重量%のアイソタクチックPP(PP1)(重量パーセントは合わせたポリマーの重量が基準である)を含む。
【0079】
次に、35.0重量%のポリマーブレンドを、58mmの内径および42のL/Dを有する強混合型二軸スクリュー押出機内に充填し、65.0重量%の流動パラフィン(摂氏40度で50cst)を、サイドフィーダーを介して二軸スクリュー押出機に供給する。摂氏220度および320rpmにて混合を行ってポリマー−希釈剤混合物を製造する(重量パーセントはポリマー−希釈剤混合物の重量が基準である)。
【0080】
(2)膜の製造
ポリマー−希釈剤混合物を押出機からシート形成ダイへと導いて(シートの形態の)押出物を形成する。ダイの温度は約摂氏210度(表1に具体的に示す通り)である。押出物を、摂氏20度に制御された冷却ローラーとの接触により冷却する。冷却押出物を、テンター延伸機で、MDおよびTDの両方に5倍の倍率に、約摂氏112.5度(表に具体的に示す通り)にて同時二軸延伸(上流延伸)する。次いで、延伸した三層ゲル状シートを、摂氏25度に制御された塩化メチレン浴に浸漬して流動パラフィンを除去して、ポリマー−希釈剤混合物中の流動パラフィンの重量を基準として1.0重量%以下の量にする。次いで膜を室温の気流で乾燥させる。次いで膜の大きさをほぼ一定に保ちながら、膜を10分間摂氏128.8度(表に記載の通り)で熱セットして最終微多孔膜を製造する。選択した出発物質、処理条件、および膜特性を表1に示す。
【0081】
実施例
1〜2、参考例
2〜3および比較例1
表1に記載したことを除き
参考例1を繰り返す。出発物質および処理条件は、表に記載したことを除き
参考例1で使用したものと同じである。例えば、参考例
2〜
3においては、PP2を1.1×10
6のMwおよび114J/gのΔHmを有するポリプロピレン(PP1)に代え、比較例1においては、PE1を7.46×10
5のMw、摂氏134.0度のTm、および炭素原子1.0×10
4個当たり0.20以上の末端不飽和量を有するPE(PE2)に代えるとともにポリプロピレンを用いなかった。参考例
2および
3の膜は、熱セットの前に、それぞれ摂氏130.2度(参考例
2)および摂氏130.0度(参考例
3)の温度にさらしながら、希釈剤除去の下流で1.4のTD倍率に延伸する(下流延伸)。
【0082】
【表1】
【0083】
考察
実施例1〜
2および参考例1〜
3から、有用なメルトダウン温度(例えば摂氏145.0度以上)を有する比較的薄い微多孔膜は、PEと膜の重量を基準として4.0重量%以上のPPとから製造できることがわかる。かかる膜は、薄いBSFを利用するリチウムイオンポリマー電池等のリチウムイオン電池のBSFとして有用である。参考例
3が示す通り、PPの濃度を上げるとNEAが有意に増大する。20.0重量%超のPPを含有する膜については、NEA値が大きいほどポリマー電池用のBSFとして膜を使用することがより困難となる。言い換えれば、限界量のPPは有用なメルトダウン温度を達成するためには必要である一方、PP量を増やすとNEAに対して望ましくない影響があることがデータからわかる。比較例1はPPを含有しないBSFを示している。かかる膜は有用なNEAを有するが、比較的低いメルトダウン温度、比較的低い空孔率、および比較的低い規格化突刺強度もまた有する。
【0084】
優先権書類を含む、本明細書で引用した全ての特許、試験手順、およびその他の文献は、参照により、かかる開示が本発明に矛盾しない範囲で完全に組み込まれ、またかかる組込みが許容される全ての権限について、完全に組み込まれる。
【0085】
本明細書中に開示した例示的形態は特定のものについて記載しているが、種々の他の変形態様が、当業者にとっては明らかであり、かつ、当業者によって本開示の精神および範囲から逸脱することなく容易に行われ得ることが理解されるであろう。したがって、本明細書に添付した特許請求の範囲の範囲は本明細書中に示した実施例および説明に限定されるものではなく、特許請求の範囲は、本開示が属する分野の当業者によってその等価物として扱われる全ての特徴を含む、本明細書に備わる特許可能な新規性のある特徴の全てを包含するものとして解釈されることが意図されている。
【0086】
数値の下限および数値の上限が本明細書中に列挙されている場合、あらゆる下限からあらゆる上限までの範囲が想定されている。