【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一方で、市場のニーズも変わってきており、近年においては、搬送装置を小型化して、半導体パッケージ等の多品種少量生産がしやすいように、かつ変量生産ができるようにすることはもとより、作業の効率を向上させるため、作業ユニット間の基材等の受け渡しを円滑に、かつ確実に行うことが重要視されている。
【0007】
特に、リードフレーム等に電子部品を樹脂封止した成形品については、インローダーやアンローダーによる作業ユニット間での受け渡しの際に、変形が原因で受け渡しに失敗してしまうことがある。例えば、
図14(a)に示すように、下ディゲーター101における成形品103の受け渡し後、上ディゲーター102が成形品103の不要な部分を取り除くディゲートを行っている。
【0008】
そして、
図14(b)に示すように、ディゲート完了後の成形品103aをアンローダー104で回収するときは、成形品103aは成形からやや時間が経過していることにより放熱して、温度が低下している。このため、成形品103aは樹脂面(上面)の方向へ反ってしまい、例えばアンローダー104が、成形品103をディゲートユニットへ受け取りに行くときに、保持爪105を引っ掛けてしまう等、正常な受け渡しが困難になる。
【0009】
したがって、アンローダー104により、ディゲート完了後の成形品103aを円滑に、かつ確実に受け取って回収できるように、ディゲートユニットにおいて、成形品103aが温度変化等により変形しないようにするか、あるいは所定の変形量を超えないように変形をできるだけ小さくすることが望まれている。
【0010】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、電子部品を樹脂封止したリードフレーム等のシート状の基材が、例えば半導体パッケージの製造工程において、温度変化等により変形したとき、所定の変形量を超えることがないように抑制する、基材の変形止め機構及び基材の変形止め方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記の目的を達成するために、本発明の基材の変形止め機構は、シート状の基材が所定の変形量を超えないようにする基材の変形止め機構であって、前記基材を所定位置に定置する基材定置部、及び定置状態の前記基材の変形を止める基材止め位置と基材止め解除位置との間で移動可能なシャッターを有する基材ホルダーと、該基材ホルダーを含む作業経路に沿って移動可能であり、前記基材を着脱可能に保持する基材保持部、及び前記シャッターを基材止め位置と基材止め解除位置との間で移動させるシャッター駆動部を有する基材キャリアとを備える。
【0012】
ここで、基材の変形止め機構の基材ホルダーは、基材に対し所定の作業を行うために基材を保持する。基材ホルダーは、例えば樹脂封止成形装置でいえば、成形後に成形品の不要部分を取り除くディゲーターに設けられるが、プレヒーターや成形金型等、他の作業ユニットに設けられる場合もある。また、基材ホルダーにおける基材の保持、すなわち基材の所定位置への定置は、基材定置部において行われる。
【0013】
また、シャッターは、定置された基材が変形する際に、変形を邪魔して止めることにより、所定の変形量を超えないようにする。この場合の所定の変形量とは、許容できる変形量のことで、基材キャリアの移動を妨げない限度の変形量である。この変形量は、特に限定されるものではなく、例えば基材の厚さや形状、大きさ等の構造の特性、あるいは作業条件の特性に応じて、適宜設定される。変形量を適正に設定しておくことで、基材が多少変形した状態であっても、基材キャリアの正常な移動が可能となり、実質的に問題は生じない。
【0014】
更に、シャッターは、基材の変形を止める基材止め位置と、この位置から外れる基材止め解除位置との間で移動可能である。シャッターは、例えば基材の変形止め位置を閉位置とし、変形止め位置から外れる位置を開位置とする設定が可能である。
【0015】
また、シャッターと基材定置部の距離、すなわち基材止め位置にあるシャッターと、例えば当初の高い温度が維持されている変形する前の基材との間隔は、特に限定されず、適宜設定が可能である。つまり、許容できる変形量が大きければ、その間隔を大きくし、許容できる変形量が小さければ、その間隔を小さくすることで調節できる。
【0016】
また、基材キャリアは、基材を基材保持部で保持し、基材ホルダーを含む作業経路に沿って移動することにより、例えば基材を作業ユニット間で搬送することができる。また、搬送した基材を基材ホルダーで定置後、シャッター駆動部によりシャッターを基材止め位置と基材止め解除位置との間で移動させて、基材の変形を所定の変形量を超えないように止める作業と、それを解除する作業を行うことができる。
【0017】
また、基材の変形止め機構は、基材キャリアにより、変形する前の基材を、例えば材料供給を行う作業ユニットから受け取る。次に、基材キャリアが基材を次工程の作業ユニットへ搬送し、作業ユニットの基材ホルダーに受け渡される。
【0018】
また、基材が基材ホルダーの基材定置部に定置されると、シャッター駆動部によって、シャッターが基材止め解除位置から基材止め位置に移動する。シャッターは、変形する前の基材に対し、許容できる変形量を限度とする間隔を以て位置する。
【0019】
なお、基材が、例えば温度の変化等により変形を始めると、シャッターとの間隔が狭まり、許容できる変形量に到達したときに接触して、それ以上の変形は止められる。更にこの状態、すなわち変形しようとする状態が続くと、基材には更に変形しようとする応力が、ある程度は残る。
【0020】
しかし、基材は強制的に変形が止められており、変形しようとする部分の組織もそのままほぼ固まっていく。このため、シャッターが基材止め解除位置に移動してシャッターによる変形止めが解除された後も、基材がすぐに変形を始めることはなく、ある程度時間が経過しても変形はほとんど進まない。
【0021】
その作業ユニットにおける所定の作業が行われ、作業が終了すると、シャッター駆動部によって、シャッターが基材止め解除位置へ移動する。
【0022】
そして、基材キャリアが基材を受け取り、次の作業ユニットへ搬送する。このとき、基材の変形は所定の変形量、すなわち許容できる変形量に収まっており、シャッターも邪魔にならない位置にあるので、基材の受け取りを支障なく行うことができる。
【0023】
(2)本発明に係る基材の変形止め機構は、前記シート状の基材が、電子部品を樹脂封止した基材である構成としてもよい。
【0024】
この場合は、シート状の基材が、電子部品を樹脂封止した基材であるので、基材の変形は、樹脂封止後の放熱により成形済樹脂が収縮することによって起こる。また、基材の変形止め機構は、半導体パッケージを製造する樹脂封止装置に適合したものとなり、樹脂封止装置に採用することが可能になる。
【0025】
(3)本発明に係る基材の変形止め機構は、前記シャッター駆動部が、前記シャッターを動かす係止部を有し、該係止部と、前記基材保持部が有する保持爪とが、該保持爪が保持の解除方向へ動いたときに、前記シャッターが基材止め位置に動くように、かつ前記保持爪が前記基材を保持する方向へ動いたときに、前記シャッターが基材止め解除位置に動くように連動する構成としてもよい。
【0026】
この場合は、基材が基材ホルダーに定置されると、シャッター駆動部の係止部が動いて、係止部と保持爪は連動し、保持爪が基材の保持の解除方向へ動いたときに、シャッターが基材止め位置に動くようになる。これにより、基材の変形が大きくならないうちに、シャッターが基材の変形を止める位置に移動してくるので、シャッターの移動が円滑に行われると共に、基材の変形止めもタイミングを外さずできるようになる。
【0027】
また、基材キャリアが、基材を基材ホルダーから受け取るときには、保持爪が基材を保持する方向へ動いたときに、シャッターが基材止め解除位置に動くようになる。これにより、基材が基材定置部から離れるときに、シャッターが邪魔にならないので、基材キャリアは、基材を円滑に受け取ることができる。
【0028】
(4)本発明に係る基材の変形止め機構は、前記係止部が、前記シャッターを有する可動体に設けられた係止孔に挿脱可能な駆動ピンであり、前記可動体の位置を前記シャッターの基材止め位置でロックすると共にロック解除が可能なロック部を有し、該ロック部では、前記係止孔に前記駆動ピンが入ることで前記可動体のロックが解除され、前記係止孔から前記駆動ピンが抜けることで前記可動体がロックされる構成としてもよい。
【0029】
この場合は、係止部が、シャッターを有する可動体に設けられた係止孔に挿脱可能な駆動ピンである。これにより、駆動ピンの係止孔に対する位置決めの動きと挿脱方向の動きだけで、ロック部による可動体のロック、すなわちシャッターを基材止め位置に固定するための可動体のロック、及びロックの解除を行うことができる。
【0030】
つまり、駆動ピンを係止孔に挿入してロック部のロックを解除し、可動体を動かしてシャッターを基材止め位置へ移動させ、駆動ピンを係止孔から抜くことで可動体をその位置にロックしてシャッターを固定することができる。
【0031】
(5)本発明に係る基材の変形止め機構は、前記ロック部が、前記可動体の位置を前記シャッターの基材止め解除位置でロックすることが可能な構成としてもよい。
【0032】
この場合は、駆動ピンの係止孔に対する位置決めの動きと挿脱方向の動きだけで、シャッターを基材止め位置に固定するための可動体のロック、及びシャッターを基材止め解除位置に固定するための可動体のロック、更にはこれらのロックの解除を行うことができる。
【0033】
つまり、駆動ピンを係止孔に挿入してロック部のロックを解除し、可動体を動かしてシャッターを基材止め解除位置へ移動させ、駆動ピンを係止孔から抜くことで可動体をその位置にロックしてシャッターを固定することができる。
【0034】
(6)上記の目的を達成するために、本発明の基材の変形止め方法は、シート状の基材が所定の変形量を超えないようにする基材の変形止め方法であって、前記基材を基材キャリアで搬送して基材ホルダーの所定位置に定置する工程と、前記基材を定置する際の前記基材の保持を解除した後、または保持の解除に合わせて、前記シャッターを、前記基材の変形を止める基材止め位置に移動して、前記基材の温度の変化による変形を止める工程とを備える。
【0035】
ここで、基材の変形止め方法は、基材を基材キャリアで搬送して基材ホルダーの所定位置に定置することにより、基材の位置が定まる。そして、基材を定置する際の基材の保持を解除した後、または保持の解除に合わせて、シャッターが基材の変形を止める基材止め位置に移動する。
【0036】
これにより、基材が所定の変形量、すなわち基材キャリアの移動を妨げない限度の変形量を超えないようにすることができる。また、基材の定置後、すぐに基材の温度の変化による変形が始まっても、シャッターの移動の支障とはなりにくい。
【0037】
(7)本発明に係る基材の変形止め方法は、前記シート状の基材が、電子部品を樹脂封止した基材である構成としてもよい。
【0038】
この場合は、シート状の基材が、電子部品を樹脂封止した基材であるので、基材の変形は、樹脂封止後の放熱により成形済樹脂が収縮することによって起こる。また、基材の変形止め機構は、半導体パッケージを製造する樹脂封止装置に適合したものとなり、樹脂封止装置に採用することが可能になる。
【0039】
(8)本発明に係る基材の変形止め方法は、基材止め位置に移動した前記シャッターをその位置において固定する構成としてもよい。
【0040】
この場合は、基材止め位置に移動したシャッターをその位置において固定するので、その間はシャッターによる基材の変形を止める機能を維持することができる。また、シャッターの固定を解除することにより、基材止め位置から基材を止めない位置、すなわち基材止め解除位置へ移動させることも可能になる。
【0041】
(9)本発明に係る基材の変形止め方法は、前記基材が長方形状であり、前記シャッターにより前記基材の四つの角部の変形を止める構成としてもよい。
【0042】
この場合は、シャッターにより、長方形状の基材の四つの角部の変形を止めるので、変形量が一番大きいことが想定される部分の変形を止めることになり、最も効果的な変形止めを行うことができる。また、基材の四つの角部以外の部分の変形量は、角部の変形量より小さくなることは自明であるので、シャッターにより基材の変形を止める際の失敗が起こりにくい。