特許第6304439号(P6304439)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6304439顔料、顔料水性分散体、その用途及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6304439
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】顔料、顔料水性分散体、その用途及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09C 3/10 20060101AFI20180326BHJP
   G03G 9/09 20060101ALI20180326BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20180326BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20180326BHJP
   C09C 1/00 20060101ALI20180326BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20180326BHJP
   C09D 11/037 20140101ALI20180326BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20180326BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20180326BHJP
   C09B 67/08 20060101ALI20180326BHJP
   C09B 67/46 20060101ALI20180326BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   C09C3/10
   G03G9/08 361
   B41M5/00 120
   C09D17/00
   C09C1/00
   C09D11/322
   C09D11/037
   C09D7/12
   C09D201/00
   C09B67/08 C
   C09B67/46 Z
   C09B67/20 L
【請求項の数】14
【全頁数】55
(21)【出願番号】特願2017-163071(P2017-163071)
(22)【出願日】2017年8月28日
【審査請求日】2017年9月15日
(31)【優先権主張番号】特願2017-58324(P2017-58324)
(32)【優先日】2017年3月24日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2017-76025(P2017-76025)
(32)【優先日】2017年4月6日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鶴谷 進典
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−043704(JP,A)
【文献】 特開2004−091519(JP,A)
【文献】 特開2004−091520(JP,A)
【文献】 特開2007−191556(JP,A)
【文献】 特開2009−001617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00−201/10
C09B 67/00− 67/54
C09C 3/00− 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が樹脂により被覆されてなる顔料(A)であって、前記樹脂が、α-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物であって、
α-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物が、無水マレイン酸と炭素数5〜50のα−オレフィンとの共重合物のマレイン酸モノアルキルエステルグラフト重合体であり、
顔料(A)の前記樹脂吸着量が、被覆されていない顔料(B)に対し10質量%以上50質量%以下であることを特徴とする顔料(A)。
【請求項2】
α-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物の数平均分子量が、1,000〜10,000である請求項記載の顔料(A)。
【請求項3】
α-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物の酸価が、50〜300mgKOH/gである請求項1又は2記載の顔料(A)。
【請求項4】
α-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物の融点が、100℃以下である請求項1〜いずれか記載の顔料(A)。
【請求項5】
樹脂が、さらに、スチレン(メタ)アクリル樹脂、スチレン(無水)マレイン酸樹脂、(メタ)アクリル樹脂からなる群から選ばれるいずれか1つ以上を含む請求項1〜いずれか記載の顔料(A)。
【請求項6】
請求項1〜いずれか記載の顔料(A)と、水と、塩基性物質とからなる顔料水性分散体。
【請求項7】
さらに架橋剤を含む請求項記載の顔料水性分散体。
【請求項8】
架橋剤が、イソシアネート基、アジリジン基、カルボジイミド基、オキセタン基、オキサゾリン基及びエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基を含む、請求項記載の顔料水性分散体。
【請求項9】
請求項1〜いずれか記載の顔料(A)又は請求項いずれか記載の顔料水性分散体を用いてなるインクジェット印刷用インキ。
【請求項10】
請求項1〜いずれか記載の顔料(A)又は請求項いずれか記載の顔料水性分散体を用いてなるフレキソ印刷用インキ。
【請求項11】
請求項1〜いずれか記載の顔料(A)又は請求項いずれか記載の顔料水性分散体を用いてなるトナー。
【請求項12】
請求項1〜いずれか記載の顔料(A)又は請求項いずれか記載の顔料水性分散体を用いてなる塗料。
【請求項13】
水溶性有機溶剤、水溶性無機塩、被覆されていない顔料(B)及びα-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物を混練機で混合後、水溶性無機塩及び水溶性有機溶剤を除去することを特徴とする請求項1〜いずれか記載の顔料(A)の製造方法。
【請求項14】
被覆されていない顔料(B)、無水マレイン酸とα-オレフィンの共重合物のマレイン酸グラフト重合体、水溶性無機塩及び水溶性有機溶剤を含有する混合物を混練して微細化する工程と、水溶性無機塩及び水溶性有機溶剤を除去する工程と、塩基性化合物を添加して無水マレイン酸とα-オレフィンの共重合物のマレイン酸グラフト重合体を中和する工程と、架橋剤を添加して無水マレイン酸とα-オレフィンの共重合物のマレイン酸グラフト重合体と架橋剤を反応させる工程とが、順次行われることを特徴とする請求項記載の顔料水性分散体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂が被覆された顔料、その用途及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料および色材として有機顔料を使用した顔料組成物は、屋内外を問わず自動車や建材等の塗料分野、オフセットインキ、グラビアインキ、フレキソインキ、シルクスクリーンインキ、トナー等の印刷インキ分野、インクジェット記録用インキ分野やカラーフィルター用カラーレジスト、塗料、文具など様々な用途で使用されている。特に意匠性を必要とする塗料分野、インクジェット記録分野、カラーフィルター用カラーレジスト分野、トナー分野など高機能性を要求される分野では、汎用顔料に比べ微細な顔料が求められており、さらに微細な顔料を分散した後の分散液には未分散物等の粗粒が極めてすくないことが必須となる。
【0003】
微細な有機顔料を得る方法として、例えばソルトミリングがあげられる。ソルトミリングは顔料を水不溶性の合成樹脂、食塩等の水溶性無機塩、及び水溶性有機溶剤とニーダー等で機械的に混練する工程であり、この後、水洗により水溶性無機塩と水溶性有機溶剤を除去する方法がある(例えば、特許文献1〜3)。この方法では、顔料の一次粒子の粉砕と結晶成長が並行して起こるため、最終的に極めて小さい平均粒径の有機顔料が得られる。
【0004】
前記方法は微細な有機顔料を得られるすぐれた方法である。しかしながら、目的の顔料が微細なために顔料同士の凝集が極めて強く、その後の顔料分散液を得る工程において顔料を1次粒子まで分散することが困難であり、極めて多大なエネルギーを投入する分散工程が必要となる。そのため、顔料の一次粒子への粉砕と同時に水不溶性の合成樹脂によって顔料を被覆することで顔料同士の凝集を抑制する。この被覆は一般に顔料分散に用いられるビーズミル等による分散工程と異なり、均一で脱着しがたい強固なものとなる。しかしながら、使用する水不溶性の合成樹脂の量、種類が適性ではない場合、顔料の被覆が不十分、顔料へ処理された樹脂同士の凝集などによって、かえって粗大粒子を低減することができない。特にTgの高い樹脂、例えばアクリル系樹脂や芳香族を含む樹脂を単独で用いた場合にその傾向は顕著である。そのため、粗大粒子を分散するための過度な分散工程によって顔料の1次粒子が破砕され、高粘度化、保存安定性不良等の課題を引き起こす。
【0005】
また、粗大粒子を除去するために、微細な目開きのろ過フィルターを使用する場合、多大な負荷のかかるろ過工程を必須とする。これらの粗大粒子はインクジェット記録用インク用途の場合、インクジェットヘッドのノズル目詰まりを引き起こすことが知られており致命的な問題となる。特に近年のインクジェットプリンターはオフセット印刷等の既存印刷技術の画質をターゲットとして高解像度化が急速に進んでいる。これに伴いインクジェットヘッドのノズルの高密度化及び液滴の微細化が進み、インクを吐出するノズル径の微細化、高集積化が進んでいる(例えば特許文献4)。ノズル径の微細化に伴い許容できる異物の大きさが小さくなるため、粗大粒子を多く含むインキではノズルの目詰まりが発生してしまう。そのため、これまで以上の粗大粒子を除去したインキを提供しなければ、高解像度のインクジェットプリンターに適用することができないという問題がある。
【0006】
また、一般的に、水性インクジェットインクの乾燥機構は、インクが基材へ着弾後、基材への浸透と蒸発に分類されるが、浸透の寄与が非常に大きく、コート紙、アート紙や塩化ビニルシート、フィルムなどの疎水性が高い基材はインクの浸透が遅いため、多色印刷の場合はインクが混色してきれいな画像を形成するための適切なドット形成が困難である、印刷速度を上げられない等の問題があった。このため、インク中に水溶性溶剤を添加することにより、基材に対する濡れ性、乾燥性、浸透性を制御する必要がある。しかしながら、インク中への浸透性溶剤の添加は、顔料分散状態を安定化させている分散樹脂の溶解状態を変化させ、顔料分散状態の保存安定性を著しく低下させ、顔料凝集、粘度上昇をひき起こす場合があった。また、近年、水溶性溶剤の中でも比較的疎水性の強い溶剤を添加する傾向があり、より顔料分散性及び保存安定性を確保することが困難であった。即ち、浸透性の高い溶剤が存在しても顔料分散性を低下させない顔料分散体の提供が望まれていた。
【0007】
またトナーにおいて、粉砕法では顔料を結着樹脂中へ微細かつ均一に分散することが求められる。重合法では製造方法として懸濁重合法、乳化重合法、エステル伸長法等が挙げられ、この中でも乳化重合法は顔料を水中へ分散する工程が必須となる。粉砕法、重合法によらず顔料の粒子径、分散状態は、トナーの本質的な機能である発色、濃度に対し多大な影響を与えるため、顔料分散工程において、微細かつ粗粒の少ない分散体が簡便に得られることが非常に重要である。
【0008】
上記課題に対し、ソルトミリングにおいて合成樹脂の添加タイミングを特定する方法があげられている(例えば、特許文献5)。しかしながらこの方法では、Tgの高いアクリル系樹脂が処理されている。
【0009】
また、特許文献6,7にはα-オレフィンを含む共重合物を用いたインクジェットインキが開示されている。いずれも顔料とα-オレフィンを含む共重合物を混合しているのみであり樹脂吸着量は十分ではない。
【0010】
粉砕法トナーにおいても、顔料の均一な分散は困難なものであり、有機顔料と樹脂とでマスターバッチ、コンク等を作製した上で、さらに離型剤、荷電制御剤等のその他の成分とマスターバッチ、コンクを添加し製造して顔料の分散を行っている。(例えば、特許文献8)しかしながら、顔料の凝集が十分にはほぐれなかったり、発色性がよくなかったり課題があるのが現状である。
【0011】
トナーの場合、顔料ごとに極性、帯電量、表面抵抗値が違っていることもあり、プロセスカラー各色のトナーを設計する場合、トナーの処方を変えることになったり、また特定の顔料由来のトナーの画像濃度が出にくいなどの問題もあり処方設計が困難であるのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平05−043704号公報
【特許文献2】特開平7−13016号公報
【特許文献3】特開2009−144126号公報
【特許文献4】特開2013−993号公報
【特許文献5】特開2016−169285号公報
【特許文献6】特開2004−91520号公報
【特許文献7】特開2007−191556号公報
【特許文献8】特開2010−210963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、粗大粒子が低減された容易に分散可能な微細な顔料を提供することにある。
【0014】
本発明の課題は、静電荷像現像用トナー(以下トナー)において、トナー中に顔料が一次粒子に近い微細な状態で、均一に分散され、プロセスカラー各色(イエロー、マゼンタ、シアン)において、トナー中の顔料の帯電量、表面抵抗値のレベルの差が見られず安定し、現像特性に優れたトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
すなわち本発明は、表面が樹脂により被覆されてなる顔料(A)であって、前記樹脂が、α-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物であって、顔料(A)の前記樹脂吸着量が、被覆されていない顔料(B)に対し10質量%以上50質量%以下であることを特徴とする顔料(A)に関する。
【0016】
また本発明は、α-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物が、無水マレイン酸とα-オレフィンの共重合物のマレイン酸グラフト重合体である上記顔料(A)に関する。
【0017】
また本発明は、α-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物が、無水マレイン酸とα−オレフィンの共重合物のマレイン酸モノアルキルエステルグラフト重合体である上記顔料(A)に関する。
【0018】
また本発明は、α-オレフィンの炭素数が、5〜50である上記顔料(A)に関する。
【0019】
また本発明は、すなわち本発明は、α-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物の数平均分子量が、1,000〜10,000である上記の顔料(A)に関する。
【0020】
また本発明は、α-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物の酸価が、50〜300mgKOH/gである上記顔料(A)に関する。
【0021】
また本発明は、α-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物の融点が、100℃以下である上記顔料(A)に関する。
【0022】
また本発明は、樹脂が、さらに、スチレン(メタ)アクリル樹脂、スチレン(無水)マレイン酸樹脂、(メタ)アクリル樹脂からなる群から選ばれるいずれか1つ以上を含む上記顔料(A)に関する。
【0023】
また本発明は、上記顔料(A)と、水と、塩基性物質とからなる顔料水性分散体に関する。
【0024】
また本発明は、さらに架橋剤を含む上記顔料水性分散体に関する。
【0025】
また本発明は、架橋剤が、イソシアネート基、アジリジン基、カルボジイミド基、オキセタン基、オキサゾリン基及びエポキシ基からなる群から選ばれる少なくとも一種の基を含む、上記顔料水性分散体に関する。
【0026】
また本発明は、上記顔料(A)又は上記顔料水性分散体を用いてなるインクジェット印刷用インキに関する。
【0027】
また本発明は、上記の顔料(A)又は上記顔料水性分散体を用いてなるフレキソ印刷用インキに関する。
【0028】
また本発明は、上記顔料(A)又は上記顔料水性分散体を用いてなるトナーに関する。
【0029】
また本発明は、上記顔料(A)又は上記顔料水性分散体を用いてなる塗料に関する。
【0030】
また本発明は、水溶性有機溶剤、水溶性無機塩、被覆されていない顔料(B)及びα-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物を混練機で混合後、水溶性無機塩及び水溶性有機溶剤を除去することを特徴とする上記顔料(A)の製造方法に関する。
【0031】
さらに本発明は、被覆されていない顔料(B)、樹脂として少なくとも無水マレイン酸とα-オレフィンの共重合物のマレイン酸グラフト重合体、水溶性無機塩及び水溶性有機溶剤を含有する混合物を混練して微細化する工程と、水溶性無機塩及び水溶性有機溶剤を除去する工程と、塩基性化合物を添加して無水マレイン酸とα-オレフィンの共重合物のマレイン酸グラフト重合体を中和する工程と、架橋剤を添加して無水マレイン酸とα-オレフィンの共重合物のマレイン酸グラフト重合体と架橋剤を反応させる工程とが、順次行われることを特徴とする上記顔料水性分散体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、粗大粒子が低減され、水性媒体中で容易に微細に分散可能な顔料、及び、微細分散され保存安定性に優れた顔料水性分散体を提供することができる。また本発明により、顔料が均一に分散され透明性、意匠性、色再現性、演色性に優れたトナー、インクジェットインキ、印刷インキを得られることができる。本発明の顔料水性分散体は、インクジェットインキ、トナー、フレキソインキ、塗料、グラビアインキ、オフセットインキ、シルクスクリーンインキ、文具等の各用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<顔料(A)>
本発明の顔料(A)は、表面が樹脂により被覆されてなるものであり、当該樹脂は、α-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物であり、顔料(A)の前記樹脂吸着量が、被覆されていない顔料(B)に対し10質量%以上50質量%以下であることを特徴とする。
上記により、粗大粒子が低減された容易に分散可能な微細な顔料を提供することができる。さらに 該顔料が分散された水性分散体において、水溶性有機溶剤、その他の添加剤等と共存する状態においても、顔料分散状態が安定に得られる水性顔料分散体を提供することにある。
【0034】
<α-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物>
本発明で使用するα-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物は、α-オレフィンとそれ以外のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物との共重合物であり、一般的な重合方法で得られるものを使用することができる。例えば特開2007−58125記載の方法が挙げられる。また、市販の樹脂を使用することも可能である。例えば、ダイヤカルナM30(三菱ケミカル社製)、セラマーシリーズ(ベーカーペトロライト社製)などが挙げられる。さらにこれらを任意に変性して使用することも可能である。
【0035】
エチレン性不飽和二重結合を有する化合物は、少なくとも1種以上を用いればよく、複数を組み合わせることも可能である。さらに、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物の1種以上は水溶液中で水溶性置換基を有することが好ましく、具体的には、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基等が挙げられる。これらの水溶性置換基はエチレン性不飽和二重結合に結合した置換基だけではなく、水溶性の置換基とエチレン性不飽和二重結合との間に別の連結基で結合したものであってもよい。また、エチレン性不飽和二重結合としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基、マレイン酸基などが挙げられる。
【0036】
(エチレン性不飽和二重結合を有する化合物)
エチレン性不飽和二重結合を有する化合物として具体的には以下のようなものが挙げられるがこれに限るものではない。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)、ターシャリブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びイソステアリル(メタ)アクリレート等の直鎖又は分岐アルキル(メタ)アクリレート類; シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ターシャリブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレート等の環状アルキル(メタ)アクリレート類;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、及び3−メチル−3−オキセタニル(メタ)アクリレート等の複素環を有する(メタ)アクリレート類;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の芳香族環を有する(メタ)アクリレート類;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、及びテトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフルオロアルキル(メタ)アクリレート類;
(メタ)アクリロキシ変性ポリジメチルシロキサン(シリコーンマクロマー)類;
2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル(メタ)アクリレート、及びポリエチレングリコールモノステアリルエーテル(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、及びアクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類;
(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類;
スチレン、及びα−メチルスチレン等のスチレン類;
エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、及びイソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;酢酸ビニル、及びプロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類;
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタレート、エチレンオキサイド変性コハク酸(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、及びω-カルボキシポリカプロラクトン(メタ)アクリレート、ベタイ
ン構造を有するエチレン性不飽和二重結合を有する化合物等のカルボキシル基含有類;
水酸基を有する(メタ)アクリレート系単量体、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2(又は3)−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2(又は3又は4)−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及びシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、あるいは水酸基を有する(メタ)アクリルアミド系単量体、例えば、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミドなどのN−(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、あるいは、水酸基を有するビニルエーテル系単量体、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−(又は3−)ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−(又は3−又は4−)ヒドロキシブチルビニルエーテルなどのヒドロキシアルキルビニルエーテル、あるいは水酸基を有するアリルエーテル系単量体、例えば、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、2−(又は3−)ヒドロキシプロピルアリルエーテル、2−(又は3−又は4−)ヒドロキシブチルアリルエーテルなどのヒドロキシアルキルアリルエーテル、さらに、上記のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、N−(ヒドロキシアルキル)(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキルビニルエーテルあるいはヒドロキシアルキルアリルエーテルにアルキレンオキサイド及び/又はラクトンを付加して得られるエチレン性不飽和単量体等のヒドロキシル基含有類;
ビニルスルホン酸、アクリロニトリルt-ブチルスルホン酸、ベタイン構造を有するエチレン性不飽和二重結合を有する化合物等のスルホン酸含有類;
N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等の三級アミノ基を有する(メタ)アクリレート類;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、及びN,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の三級アミノ基を有する(メタ)アクリルアミド類;等が挙げられる。
【0037】
これらの中で、カルボキシル基含有類が好適に用いられ、好ましくはマレイン酸、無水マレイン酸、無水マレイン酸のハーフエステル、フマル酸、テトラヒドロフタル酸等のジカルボン酸が挙げられる。さらに好ましくは特に無水マレイン酸が挙げられる。無水マレイン酸であればα-オレフィンとの高い重合性、水溶液中での親水性保持及びグラフト化の両立を得やすいという特徴がある。さらに、無水マレイン酸はグラフト重合体を使用することが可能である。グラフト重合体を形成する化合物は、ヒドロキシル基を有する化合物、アミノ基を有する化合物が挙げられる。これら化合物は単独で使用することも可能であるか2つ以上を併用することも可能である。グラフト重合体はあらかじめ無水マレイン酸に目的の化合物をグラフト化し、これをα-オレフィンと重合する方法、無水マレイン酸とα-オレフィンを重合した後に目的の化合物をグラフト化する方法、2つの方法を組み合わせた方法のいずれでも得ることが可能である。
【0038】
(ヒドロキシル基を有する化合物)
ヒドロキシル基を有する化合物としては、炭素数3〜8のアルコール、アルキレングリコール又はアルキレングリコールの縮合物及びそれらのアルキルエーテル、アルキルエステル等が挙げられる。具体的には、炭素数3〜8のアルコールはn-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール等があげられる。これらのアルコールは単独で用いることができるが、異なる2つ以上を個々にグラフトした化合物を併用することも可能である。これらの中で好ましくは炭素数3のアルコールである。より好ましくはイソプロピルアルコールである。これであれば共重合体の親水性を大きく損なわない範囲で粗粒を分散する顔料分散性を良好に付与することができる。
【0039】
アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等が挙げられる。好ましくはエチレングリコール、プロパンジオールである。これらのアルキレングリコールは単独で用いることができるが、異なるものを2つ以上を個々にグラフトした化合物を併用することも可能である。これらであれば共重合体の親水性を大きく損なわずかつ粗粒の分散が良好である。
【0040】
アルキレングリコールの縮合物としては、エチレングリコール縮合物、プロピレングリコール縮合物、ブタンジオール縮合物、ペンタンジオール縮合物、ヘキサンジオール縮合物、エチレングリコールとプロパンジオールの縮合物等が挙げられる。これらのアルキレングリコールの縮合物は単独で用いることができるが、異なるものを2つ以上を個々にグラフトした化合物を併用することも可能である。好ましくはエチレングリコール縮合物、プロピレングリコール縮合物、エチレングリコールとプロパンジオールの縮合物、があげられる。これらであれば共重合体の親水性を大きく損なわずかつ粗粒の分散が良好である。アルキレングリコールの縮合物のアルキルエーテルとしては、上記の縮合物の片末端がアルキルエーテルであるものがあげられる。アルキル鎖の炭素数はC1〜C12の種々のアルコールを使用することができる。これらのアルキレングリコールの縮合物のアルキルエーテルは単独で用いることができるが、異なるものを2つ以上を個々にグラフトした化合物を併用することも可能である。アルキレングリコールの縮合物のアルキルエステルとしては、上記の縮合物の片末端がアルキル鎖の炭素数はC1〜C12の種々のカルボン酸を使用することができる。これらのアルキレングリコールの縮合物のアルキルエステルは単独で用いることができるが、異なるものを2つ以上を個々にグラフトした化合物を併用することも可能である。これらのグラフト重合体を形成するヒドロキシル基を有する化合物は、マレイン酸、無水マレイン酸へのエステル化、エポキシ化等の方法で得ることが可能である。
【0041】
(アミノ基を有する化合物)
アミノ基を有する化合物としては、種々の1〜3級のアミンを使用することができる。
具体的には、C2〜6のアルカノールモノ(ジ)アミン、メトキシポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)-2-プロピルアミン等が挙げられる。 好ましくはメトキシポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)-2-プロピルアミンがあげられる。これらであれば樹脂全体の親水性を大きく損なわずかつ粗粒の分散が良好である。これらのα-オレフィンと無水マレイン酸の共重合物のマレイン酸グラフト重合体の中でも無水マレイン酸とα−オレフィンの共重合物のマレイン酸モノアルキルエステルグラフト重合体が好ましい。アルキルエステルであれば共重合体全体の親水性が上がり過ぎず、表面が疎水性である顔料への吸着が低下しない。
【0042】
(α-オレフィン)
α-オレフィンとしては、平均炭素数として炭素数5〜50のものが好ましい。さらに好ましくは炭素数が10〜30のものが好ましい。炭素数が5以下だと、顔料へ樹脂を被覆する際に顔料への吸着が弱く、50以上だと共重合体の親水性が損なわれ粗粒の分散が十分にできなくなる場合がある。また、α-オレフィンの炭素数が異なる2種以上のα-オレフィンを併用することもできる。
【0043】
α-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物の数平均分子量は1000〜10000
のものが好ましい。さらに好ましくは2000〜5000であり、より好ましくは2000〜3000である。数平均分子量が1000以下では粗粒の分散性が不十分である場合がある。10000以上であると得られる水性分散体の粘度が高くなりインクジェットインキとして十分な吐出性を得ることができなくなる場合がある。
【0044】
α-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物の酸価は50〜300(mgKOH/g)が好ましい。より好ましくは100〜200(mgKOH/g)である。酸価が50以下
であると水への溶解度が著しく低下し粗粒の分散性が不十分となる場合がある。酸価が300以上であると粗粒の分散性は良好であるが、インクジェットインキとして使用した場合に記録物の耐水性が低下する場合がある。
【0045】
α-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物の融点は100℃以下であることが好ましい。さらに好ましくは90℃以下である。より好ましくは80℃以下である。100℃以上であると水媒体中で分散する際に水の蒸発が激しく分散体を作製することが困難となる場合がある。
【0046】
本発明で使用されるスチレン(メタ)アクリル樹脂、スチレン(無水)マレイン酸樹脂、(メタ)アクリル樹脂は一般に合成される方法でえられるものであればいかなるものも使用可能である。具体的には、スチレン(メタ)アクリル樹脂であればJoncryl690、67等に代表されるJoncyrlシリーズ(BASF社製)、X−1(星光PMC社製)、スチレン(無水)マレイン酸樹脂であればSMA1440、SMA2625、SMA3840等に代表されるSMAレジンシリーズ(CrayValley社製)、(メタ)アクリル樹脂であればVS−1057、X−310、TS−1316(星光PMC社製)等が挙げられるがこれに限るものではない。
【0047】
本発明の表面が樹脂により被覆されてなる顔料(以降顔料(A))は、被覆されていない顔料(B)が樹脂で被覆されていることを特徴とし、樹脂によって顔料(B)表面の一部あるいは全部が被覆されることで本発明の効果を奏するものであり、粗粒を十分に低減するためには、顔料(A)が樹脂によって一定量以上被覆されている必要がある。ビーズミル等の一般的な分散処理による解砕処理では一部に吸着・被覆した状態となり、未被覆の顔料同士の強固な再凝集により粗粒を十分に低減することができない。この被覆状態を示す樹脂吸着量は以下に示す方法により測定し確認することができる。
【0048】
<被覆されていない顔料(B)>
本発明で使用される共重合物に被覆される顔料(B)は本発明の趣旨に逸脱しない範囲であれば特に限定されず、従来公知の種々の無機顔料又は有機顔料を適宜選択して用いることができる。
【0049】
前記無機顔料としては、金属酸化物、金属錯塩等で示される金属化合物を挙げることができ、具体的には、鉄、コバルト、アルミニウム、カドミウム、鉛、銅、チタン、マグネシウム、クロム、亜鉛、アンチモン等の金属酸化物、及び前記金属の複合酸化物を挙げることができる。
【0050】
顔料(B)は、通常、未処理の顔料が用いられるが、何らかの処理工程を経た顔料を用いてもよい。特に未処理で有れば、樹脂の被覆が容易に進み目的の顔料(A)を得やすい。また、顔料(B)は、単独又は複数を併用することができる。
【0051】
前記有機顔料としては、例えば、
C.I.Pigment Red 1、2、3、4、5、6、7、9、10、14、17、22、23、31、32、38、41、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、52:1、52:2、53:1、57:1、60:1、63:1、66、67、81:1、81:2、81:3、83、88、90、105、112、119、122、123、144、146、147、148、149、150、155、166、168、169、170、171、172、175、176、177、178、179、184、185、187、188、190、200、202、206、207、208、209、210、216、220、224、226、242、246、254、255、264、266、269、270、272、279、
C.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、11、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、213、214、C.I. Pigment Orange 2、5、13、16、17:1、31、34、36、38、43、46、48、49、51、52、55、59、60、61、62、64、71、73、
C.I. Pigment Green 7、10、36、37、58、62、63、
C.I.Pigment Blue 1、2、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、66、79、79、80
C.I.Pigment Violet 1、19、23、27、32、37、42
C.I.Pigment Brown 25、28
C.I.Pigment Black 1、7等を挙げることができる。
【0052】
これらの中で好ましく用いることができる顔料として、以下のものを挙げることができる。これらの顔料であれば、インクジェット印刷用インキ、フレキソ印刷用インキ、トナー、シルクスクリーン印刷用インキ、塗料、グラビア印刷用インキ、オフセット印刷用インキとして十分な色再現性及び(又は)耐光性を保持することができる。但し、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
C.I.Pigment Red 48:1、48:2、48:3、48:4、57:1、122,146、147、148、150、170、176、177、184、185、242、254、255、264、266、269、
C.I.Pigment Yellow 12、13、14、17、74、83、108、109、120、150、151、154、155、180、185、213
C.I.Pigment Orange 36,38、43、64
C.I.Pigment Green 7、36、37、58、62、63
C.I.Pigment Blue 15:1、15:3、15:6、16、22、60、66、
C.I.Pigment Violet 19、23、32、
C.I.Pigment Brown 25、
C.I.Pigment Black 1、7
【0053】
中でも本発明の顔料(A)をトナーに用いる場合は、色再現性、発色性に優れる良好なフルカラー画像を得る目的において、マゼンタトナーの顔料として、C.I.Pigment Red 122,146を含むもの、イエロートナーの顔料として、C.I.Pigment Yellow 12、13、14、17、180、185を含むもの、シアントナーの顔料として、C.I.Pigment Blue 15:3を含むもの、を組み合わせて用いることが好ましい。
【0054】
<樹脂吸着量>
イオン交換水100gに顔料(A)に処理されている樹脂の酸価に対し当量の水酸化カリウムを添加し溶解させ、これに顔料(A)を顔料(B)の濃度が15質量%となるように顔料(A)を添加した後、液温を70℃とし2時間撹拌し顔料分散液を得る。この分散液を次に、遠心分離機により70,000rpmで20時間かけて顔料を沈降させ、上澄み液部分をくまなく回収しさらに遠心分離機で70,000rpmで20時間かけて顔料を沈降させ、上澄み液部分をくまなく回収し固形分を乾燥法から求め、顔料(A)から遊離している樹脂の質量を求め、顔料(A)を製造するときに添加した樹脂の質量から顔料へ吸着している樹脂量を算出し顔料(A)全体に対する樹脂吸着量を算出する。これを顔料の被覆状態として評価した。スチレン(メタ)アクリル樹脂、スチレン(無水)マレイン酸樹脂、(メタ)アクリル樹脂から選ばれる1つ以上の樹脂を単独、又は共重合物と併用する場合も上記と同様の方法によって評価した。本発明における樹脂の吸着量は、顔料(B)に対して10質量%以上50質量%以下である。10質量%を下回ると顔料が樹脂によって十分に被覆されないため凝集を生じ粗粒を分散することが困難となる。また50質量%を超える場合、顔料が過度に親水化されインクジェット印刷後の印刷物の耐水性を確保することができない。
【0055】
<顔料(A)の製造方法>
本発明の顔料(A)の製造方法は、顔料(B)に少なくとも水溶性無機塩、水溶性有機溶剤及び樹脂を加えて摩砕混練により顔料に樹脂を被覆する方法が好ましい。摩砕混練による顔料の被覆方法は、特に限定されず任意の方法を適用できるが、いわゆるソルトミリング処理による混練工程等が好適である。具体的には、
(工程1)水溶性有機溶剤、無機塩、α-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物で被覆されていない顔料(B)及びα-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物を混練機で混合する工程、
(工程2)混合工程の後、無機塩及び水溶性有機溶剤を除去する工程、
を経て製造することが好ましい。
【0056】
(工程1)
混練方法は、顔料(B)と水溶性無機塩と水溶性有機溶剤と樹脂を少なくとも含む混合物を、ニーダー、トリミックス、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、アトライター、横型サンドミル、縦型サンドミル又は/及びアニューラ型ビーズミル等の混練機を用いて行うことができる。これらの中でもニーダー、又はトリミックスが好ましい。これらであれば顔料(B)と水溶性無機塩、水溶性有機溶剤と樹脂の混合物を高粘度で混練することが可能であり、顔料の被覆、粗粒の分散が効果的に進行する。処理条件は、顔料の種類や、求められている被覆の程度等に応じて、処理条件等を適宜調整すればよい。機械的に混練する際に加熱を行うことが好ましい。加熱の上限温度は樹脂が熱分解を生じない範囲であれば任意に設定可能である。さらに、使用する樹脂の融点よりも高ければ樹脂の処理効率が効果的に得られる。水溶性無機塩は、凝集した顔料を分散することに加え摩砕する機能として働く効果も存在する。ソルトミリング時に水溶性無機塩の硬度の高さを利用して顔料が破砕される。ソルトミリング処理する際の条件を最適化することにより、一次粒子径が非常に微細であり、また、分布の幅が狭く、シャープな粒度分布をもつ顔料を得ることができる。
【0057】
(工程2)
工程(1)を行った後は例えば以下のような処理により顔料(A)を得ることが可能である。摩砕混練機から顔料(A)を含む混合物を取り出し、イオン交換水を投入して撹拌を行い、懸濁液を得る。加える水の分量は、懸濁液を得るのに充分な量であればよく、特に限定されない。必要に応じて加温してもよい。例えば、工程(1)の重量の10〜10,000倍の重量の水を加えて混合撹拌する。このときの混合撹拌条件は特に限定されないが、温度25〜90℃で行うことが好ましい。ついで、ろ過等の操作によりろ液を除去することで、摩砕混練機で用いた水溶性有機溶剤、水溶性無機塩を除去することができ、顔料(B)が未中和のα-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物で被覆された顔料(A)を得ることができる。
【0058】
上記、顔料(A)はイオン交換水を含むので、さらに水を除去する工程を行ってもよい。水を除去する方法であれば限定されないが、好適な方法としては、乾燥処理を行う方法を挙げることができる。乾燥条件としては、例えば、常圧下、80〜120℃の範囲で12〜48時間程度の乾燥を行う方法、減圧下、25〜80℃ の範囲で12〜60時間程度の乾燥を行う方法などが例示できる。乾燥処理は特に限定されないが、スプレードライ装置を利用する方法も例示できる。乾燥処理と同時もしくは乾燥処理後に粉砕処理を行ってもよい。これにより顔料(A)はイオン交換水を含むもの、イオン交換水が極めて除去された乾燥状態のものを目的に応じて得ることができる。顔料(A)に含まれるイオン交換水量は任意に設定可能である。
【0059】
(水溶性有機溶剤)
水溶性有機溶剤としては、水に溶解、混和すればいかなる溶剤でも使用可能である。具体的には、グリセリン、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジール、ペンタンジール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ペリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、モノアセチン)、ジアセチン、トリアセチン、トリプロピオニン、トリブチリン及び2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールが挙げられるがこれに限るものではない。またこれらの溶剤は単独又は複数を併用することが可能である。水溶性有機溶剤を加える量は特に限定されないが、顔料100質量部に対し5〜1,000質量部用いることが好ましく、50〜500質量部用いることがより好ましい。
【0060】
(水溶性無機塩)
水溶性無機塩は、その名称の如く水溶性を示す無機塩であればよく本発明の趣旨を逸脱しない範囲で限定されない。好ましい例として、塩化ナトリウム、塩化バリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等が挙げられる。価格の点から塩化ナトリウム(食塩)を用いることが好ましい。水溶性無機塩は、処理効率と生産効率の両面から、顔料100質量部に対し、50〜2,000質量部用いることが好ましく、300〜1,000質量部用いることがより好ましい。
【0061】
<顔料水性分散体>
本発明の顔料水性分散体は、顔料(A)と水と塩基性物質から得ることができる。
【0062】
(水、塩基性物質)
水は水道水等の一般的な水を使用することが可能であるが、イオン交換水又は蒸留水等を用いることが好ましい。塩基性物質は無機塩基、有機塩基のいずれをも用いることが可能である。具体的には、無機塩基としては、水に可溶であればいかなるものを用いることが可能である。例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられるがこれに限るものではない。有機塩基としては、水に可溶であればいかなるものを用いることが可能である。例えば、1級〜3級のアミンを用いることができる。例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン。アミノエタノール、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン。メトキシポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)-2-プロピルアミン等のノニオン性基を有するアミン等が挙げ有られるがこれに限るものではない。
【0063】
さらに、必要に応じて、架橋剤、水溶性有機溶剤、防腐剤、レベリング剤、表面張力調整剤、消泡剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤、水溶性樹脂、エマルジョン等を任意に加えることができる。
【0064】
(架橋剤)
特に、架橋剤はインクジェットインキ、重合トナーの製造工程での顔料分散状態、フレキソインキ、塗料、グラビアインキ、オフセットインキ、文具等の保存安定性を向上させる上で非常に重要である。ただし、十分な架橋剤の効果を得るには、顔料に架橋剤と反応しうる反応性官能基を有する化合物が顔料(B)に十分に吸着している必要がある。架橋に適切な樹脂吸着量は前記の方法で測定可能であり、顔料(B)に対して10質量%以上である。10質量%以上であれば顔料が樹脂によって十分に被覆されるため十分な架橋の効果を得ることができる。
【0065】
本発明において架橋剤としては、α-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物を適度に架橋するため、分子中に2つ以上のカルボキシル基と反応しうる反応性官能基を有する化合物が好ましく用いられる。具体的な反応性官能基としては、イソシアネート、アジリジン、カルボジイミド、オキセタン、オキサゾリン、及びエポキシ基からなる群から選ばれる1以上が好ましく挙げられる。架橋剤の分子量は、反応のし易さ、及び得られる架橋着色剤粒子の保存安定性の観点から、100〜2000が好ましく、120〜1500が更に好ましく、150〜1000が特に好ましい。架橋剤に含まれる反応性官能基の数は、分子量を制御して保存安定性を向上する観点から、2〜6が好ましい。
【0066】
本発明に用いられる架橋剤の具体例としては、下記が挙げられる。
分子中に2以上のイソシアネート基を有する化合物:例えば、有機ポリイソシアネート又はイソシアネート基末端プレポリマー、
有機ポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;トリレン−2,4−ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート; 脂環式ジイソシアネート;芳香族トリイソシアネート;それらのウレタン変性体等の変性体が挙げられる。イソシアネート基末端プレポリマーは、有機ポリイソシアネート又はその変性体と低分子量ポリオール等とを反応させることにより得ることができる。
【0067】
分子中に2つ以上のアジリジン基を有する化合物:例えば、N,N'−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、N,N'−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N'−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、2,2'−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン、4,4'−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0068】
分子中に2つ以上のカルボジイミド基を有する化合物:例えば、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネート化合物を脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドが挙げられる。このような高分子量ポリカルボジイミドとしては、日清紡績株式会社のカルボジライトシリーズが挙げられる。
【0069】
分子中に2つ以上のオキセタン基を有する化合物:例えば、4,4'−(3−エチルオキセタン−3−イルメチルオキシメチル)ビフェニル(OXBP)、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(EHO)、1,4−ビス[{(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ}メチル]ベンゼン(XDO)、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル(DOX)、ジ[1−エチル(3−オキセタニル)]メチルエーテル(DOE)、1,6−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]ヘキサン(HDB)、9,9−ビス[2−メチル−4−{2−(3−オキセタニル)}ブトキシフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−[2−{2−(3−オキセタニル)}ブトキシ]エトキシフェニル]フルオレン等が挙げられる。
【0070】
分子中に2以上のオキサゾリン基を有する化合物: 例えば、脂肪族基又は芳香族基に2個以上、好ましくは2〜3個のオキサゾリン基が結合した化合物、より具体的には2, 2’−ビス(2−オキサゾリン)、1,3−フェニレンビスオキサゾリン、1,3−ベンゾビスオキサゾリン等のビスオキサゾリン化合物、該化合物と多塩基性カルボン酸とを反応させて得られる末端オキサゾリン基を有する化合物。
【0071】
分子中に2つ以上のエポキシ基を有する化合物: 例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA 型ジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル。
【0072】
これらの中では、分子中に2以上のエポキシ基を有する化合物が好ましく、特にエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルが好ましい。架橋剤は、効率よくポリマーを表面架橋する観点から、適度に水溶性があることが好ましく、例えば架橋剤を25℃の水100gに溶解させたときに、その溶解量が0.1〜50gが好ましく、0.2〜40gがさらに好ましく、更に好ましくは0.5〜30gが最も好ましい。
【0073】
<顔料分散体の製造>
顔料分散体の作製方法としては、イオン交換水に、顔料(A)を作製する際に処理した樹脂の酸価に対し適量の水酸化カリウム等の塩基性物質を添加し溶解させ、これに顔料(A)を添加、加温しながら撹拌して得ることができる。水酸化カリウム等の塩基性物質の添加量は顔料(A)を作製する際に処理した樹脂の酸価に対120%以下で添加することが望ましい。さらに好ましくは100%以下である。この範囲であれば顔料分散体のpHが高すぎず、インキ化後にインクジェットヘッドの材料を破壊することのないインキを設計しやすい。撹拌する方法は均一な混合が可能であればいかなる方法、装置を用いてもよい。例えば、装置としては具体的には以下のものがあげられる。ハイスピードミキサー、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、トリミックス、ニーダー、エクストルーダー、横型サンドミル、縦型サンドミル又は/及びアニューラ型ビーズミル、ペイントシェイカー、ボールミル等、超音波発振子を具備する分散機、2本ロールミル、3本ロールミル等が挙げられるがこれに限るものではない
【0074】
さらに顔料分散体に架橋剤を用い顔料(A)に被覆した樹脂を架橋した架橋顔料分散体を作製することができる。架橋反応は樹脂のカルボキシル基と架橋剤が反応することで進行する。したがって、架橋顔料分散体とする場合は、樹脂がカルボキシル基を有していることが必要である。このような樹脂として好ましくは、無水マレイン酸とα-オレフィンの共重合物、または無水マレイン酸とα-オレフィンの共重合物のマレイン酸グラフト重合体が挙げられる。無水マレイン酸のような酸無水物の場合、酸無水物が加水分解していることが望ましい。加水分解してから架橋顔料分散体を作製すれば、反応速度、反応率が十分に得られ、生産時間を短くすることができ十分な性能が得られる。
【0075】
架橋顔料分散体を作製するときに使用する顔料分散体は、顔料分散体を作製する際に用いられる塩基性物質が無機塩基、または無機塩基と前述の有機塩基の併用であることが望ましい。無機塩基は具体的には前述のものが使用することができる。無機塩基を用いた方が架橋剤の反応が進行しやすい。
【0076】
架橋顔料分散体の作製方法としては、顔料分散体に架橋剤を添加し撹拌することで作製することができる。撹拌は前述の顔料分散体を作製する際に使用可能な撹拌をすることができる装置であればいかなるものを用いることも可能である。さらに反応を促進させる目的で必要に応じて加熱してもよい。反応終了後にpHの調整が必要であれば任意の酸で目的のpHに調整することができる。具体的には、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、クエン酸等の有機酸が挙げられる。また、遠心分離処理やろ過処理を加えることも可能である。架橋剤の添加量は、α-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物のカルボキシル基を1〜100%反応させる量であることが好ましい。中でも1〜50%反応させる量を添加することがより好ましい。
【0077】
顔料分散体に架橋剤を添加し顔料を被覆した樹脂を架橋することで、インクジェットインキ、塗料、フレキソインキ等で添加されるインキを構成する成分及び重合トナーの製造過程で添加されるトナー粒子を構成する成分によって、顔料が分散された分散媒(水、その他の添加剤等で形成された成分)の変化による顔料凝集に対する安定性(粘度や粒度分布が分散媒の変化直後及び長期の保存後に変化しないこと)が極めて高くなる。いくつかの仮説があげられるが、1つに顔料を被覆した樹脂同士が架橋されることで顔料表面でネットワーク状で分子量の大きな状態となると推察される。これにより、顔料が分散された分散媒の変化に伴う顔料に吸着した樹脂の吸着平衡が変化したとしても、樹脂が顔料から脱着しにくくなり安定性を保持できるものと考えられる。もう1つに、架橋基剤が顔料に吸着した樹脂へ立体障害部位を導入する効果を与えているものと推察される。この立体障害部位により安定性が付与されているものと推察される。
【0078】
本発明の架橋顔料分散体の製造方法として例えば以下のようなものが挙げられる。被覆されていない顔料(B)、無水マレイン酸とα-オレフィンの共重合物のマレイン酸グラフト重合体、水溶性無機塩及び水溶性有機溶剤を含有する混合物を混練して微細化する工程と、水溶性無機塩及び水溶性有機溶剤を除去する工程と、塩基性化合物を添加して無水マレイン酸とα-オレフィンの共重合物のマレイン酸グラフト重合体を中和する工程と、架橋剤を添加して無水マレイン酸とα-オレフィンの共重合物のマレイン酸グラフト重合体と架橋剤を反応させる工程とが、順次行われる製造方法である。
【0079】
本発明の顔料分散体及び架橋顔料分散体の体積平均粒子径(D50)は、200nm以下であることが印刷物の鮮明性、着色力、色再現性の観点から好ましい。好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは90nm以下がよい。体積平均粒子径が小さいほど印刷物の鮮明性、着色力、色再現性が良好となる。また、良好な印刷物の鮮明性、着色力、色再現性を得る上では、顔料分散体の粒子の上限値では、体積平均粒子径(D99)は、500nm以下に抑えることが好ましい。さらに、トナー粒子中に好ましい配合状態が得られる観点からは、体積平均粒子径の最小値は小さいことが好ましいが、ハンドリングの観点から、顔料分散体の体積平均粒子径(D50)は、30〜200nmが好ましく、より好ましくは30〜150nm、さらに好ましくは30〜100nmの範囲が好ましい。
【0080】
本発明の顔料(A)は着色剤などとして各種用途に好適に用いられるが、特に、以下に説明するインクジェットインク、静電荷像現像用トナー、塗料、フレキソインキの着色剤として好適に用いられる。
【0081】
<インクジェットインク>
本発明の顔料(A)を用いたインクジェットインクは、少なくとも顔料(A)を有していればよく、好ましくは、顔料(A)に対して、塩基性物質、水、水溶性溶剤を含有する。さらに必要に応じてアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤、水溶性樹脂、エマルジョン等、pH調整剤等及びその他の成分を添加してもよい。
【0082】
本発明の顔料(A)を用いたインクジェットインキの体積平均粒子径(D50)は、150nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましい。さらに好ましくは50nm以下である。体積平均粒子径(D50)が100nm以下であれば、吐出安定性が向上し、更に画像の彩度及び画像濃度(OD値)も向上する。前記顔料(A)の前記インクジェットインクにおける含有量は、顔料(B)の固形分で1〜15質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましい。前記含有量が1質量%未満であると、インクの発色性及び画像濃度が極めて低くなってしまうことがあり、15質量%を超えると、インクが増粘して、吐出性が悪くなってしまうことがあり、更に経済的にも好ましくない。
【0083】
(塩基性物質)
前記塩基性物質は無機塩基、有機塩基のいずれをも用いることが可能である。具体的には、無機塩基としては、水に可溶であればいかなるものを用いることが可能である。例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム等が挙げられるがこれに限るものではない。有機塩基としては、水に可溶であればいかなるものを用いることが可能である。例えば、1級〜3級のアミンを用いることができる。例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン。アミノエタノール、メチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、エチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン。メトキシポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)-2-プロピルアミン等のノニオン性基を有するアミン等が挙げ有られるがこれに限るものではない。
【0084】
(水)
水は水道水等の任意の水を用いることが可能であるが、イオン交換水、蒸留水、精製水を用いることが望ましい。
【0085】
(水溶性溶剤)
本発明のインクジェットインクは、水を液媒体として使用するものであるが、インクの乾燥を防止するため、また分散安定性を向上するため、印刷後の基材への浸透性、濡れ広がり性等の目的で、下記の水溶性溶剤が使用される。乾燥性を防止、分散安定性が向上する目的とする前記水溶性溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、その他の水溶性溶剤、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0086】
前記多価アルコール類としては、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどが挙げられる。これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−へプタンジオールが特に好ましい。これらの溶剤は前記水溶性溶剤と任意に複数を混合して使用することができる
【0087】
前記多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。
前記多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテルなどが挙げられる。
【0088】
前記含窒素複素環化合物としては、例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミイダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン、などが挙げられる。
前記アミド類としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、などが挙げられる。
前記アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、などが挙げられる。
前記含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール、などが挙げられる。
【0089】
前記その他の水溶性溶剤としては、糖を含有してなるのが好ましい。該糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類、四糖類を含む)、多糖類、などが挙げられる。具体的には、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース、などが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール〔一般式:HOCH2(CHOH)CH2OH(ただし、n=2〜5の整数を表す)で表される〕、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。これらの中でも、糖アルコールが好ましく、具体例としてはマルチトール、ソルビットなどが挙げられる。
【0090】
前記顔料と前記水溶性溶剤との質量比は、ヘッドからのインク吐出安定性に非常に影響がある。顔料固形分が高いのに湿潤剤の配合量が少ないとノズルのインクメニスカス付近の水分蒸発が進み吐出不良をもたらすことがある。
【0091】
(界面活性剤)
前記界面活性剤はアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などの活性剤を単独、又は2つ以上を混合して使用することができる。
【0092】
(アニオン性界面活性剤)
前記アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩(例えばNH4、Na、Ca等)、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩(例えばNH4、Na、Ca等)、ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物及びその塩、ジアルキルサクシネートスルホン酸Na塩、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩(例えばNH4、Na等)、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェート塩、オレイン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルリン酸エステルの塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩、などが挙げられる。これらフッ素系界面活性剤の塩における対イオンとしては、例えば、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)などが挙げられる等が例示できる。
【0093】
(カチオン性界面活性剤)
カチオン性界面活性剤としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩等が例示できる。
【0094】
(ノニオン性界面活性剤)
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、アセチレングリコール、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系、シリコン系等のノニオン性活性剤が例示できる。特にアセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。該アセチレングリコール系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、該市販品として、例えば、エアープロダクツ社(米国)のサーフィノール104、82、465、485、TGなどが挙げられる。
【0095】
また、以下に示されるフッ素系の界面活性剤を使用することも可能である。例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145(いずれも旭硝子社製)、フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431(いずれも住友スリーエム社製)、メガファックF−470、F1405、F−474(いずれも大日本インキ化学工業社製)、ZonylTBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、UR(いずれもDuPont社製)、FT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW(いずれも株式会社ネオス社製)、PF−151N(オムノバ社製)などが例示できる。
【0096】
(両イオン性界面活性剤)
両イオン性界面活性剤としては、アルキルベタイン、アルキルアミンオキサイド、ホスファジルコリン等が例示できる。例えば、ラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、ステアリルジメチルアミンオキシド、ジヒドロキシエチルラウリルアミンオキシド、ポリオキシエチレンヤシ油アルキルジメチルアミンオキシド、ジメチルアルキル(ヤシ)ベタイン、ジメチルラウリルベタインなどが挙げられる。
【0097】
(水溶性樹脂/エマルジョン)
前記水分散性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、縮合系合成樹脂、付加系合成樹脂、天然高分子化合物、などが挙げられる。前記縮合系合成樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、珪素樹脂などが挙げられる。前記付加系合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルエステル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、不飽和カルボン酸系樹脂などが挙げられる。前記天然高分子化合物としては、例えば、セルロース類、ロジン類、天然ゴムなどが挙げられる。前記水分散性樹脂は、ホモポリマーとして使用されてもよく、また、コポリマーとして使用して複合系樹脂として用いてもよく、単相構造型、コアシェル型、及びパワーフィード型エマルジョンのいずれのものも使用できる。
【0098】
前記水分散性樹脂としては、樹脂自身が親水基を持ち自己分散性を持つもの、樹脂自身は分散性を持たず界面活性剤や親水基を持つ樹脂にて分散性を付与したものが使用できる。これらの中でも、ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂のアイオノマーや不飽和単量体の乳化及び懸濁重合によって得られた樹脂粒子のエマルジョンが好適である。不飽和単量体の乳化重合の場合には、不飽和単量体、重合開始剤、及び界面活性剤、連鎖移動剤、キレート剤、pH調整剤などを添加した水にて反応を行い樹脂エマルジョンを得るため、容易に水分散性樹脂を得ることができ、樹脂構成を容易に替えやすいため目的の性質を作りやすい。
【0099】
前記不飽和単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、(メタ)アクリル酸エステル単量体類、(メタ)アクリル酸アミド単量体類、芳香族ビニル単量体類、ビニルシアノ化合物単量体類、ビニル単量体類、アリル化合物単量体類、オレフィン単量体類、ジエン単量体類、不飽和炭素を持つオリゴマー類などを単独及び複数組み合わせて用いることができる。これらの単量体を組み合わせることで柔軟に性質を改質することが可能であり、オリゴマー型重合開始剤を用いて重合反応、グラフト反応を行うことで樹脂の特性を改質することもできる。
【0100】
前記不飽和カルボン酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられる。
前記単官能の(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、オクタデシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウム塩、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n−へキシルアクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、オクチルアクリレート、デシルアクリレート、ドデシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、シクロへキシルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、グリシジルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロキシエチルトリメチルアンモニウム塩、などが挙げられる。
【0101】
前記多官能の(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリブチレングリコールジメタクリレート、2,2'−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)
プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2'−ビス(4−アクリロキシプロピロキシフェニル)プロパン、2,2'−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパントリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ジトリメチロールテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、などが挙げられる。
【0102】
前記(メタ)アクリル酸アミド単量体類としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
前記芳香族ビニル単量体類としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、4−t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0103】
前記ビニルシアノ化合物単量体類としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
前記アリル化合物単量体類としては、例えば、アリルスルホン酸又はその塩、アリルアミン、アリルクロライド、ジアリルアミン、ジアリルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
前記オレフィン単量体類としては、例えば、エチレン、プロピレン等が挙げられる。
前記ジエン単量体類としては、例えば、ブタジエン、クロロプレン等が挙げられる。
前記ビニル単量体類としては、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニリデン、塩化ビニル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルピロリドン、ビニルスルホン酸又はその塩、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0104】
前記不飽和炭素を持つオリゴマー類としては、例えば、メタクリロイル基を持つスチレンオリゴマー、メタクリロイル基を持つスチレン−アクリロニトリルオリゴマー、メタクリロイル基を持つメチルメタクリレートオリゴマー、メタクリロイル基を持つジメチルシロキサンオリゴマー、アクリロイル基を持つポリエステルオリゴマー等が挙げられる。
【0105】
前記水分散性樹脂は、強アルカリ性、強酸性下では分散破壊や加水分解などの分子鎖の断裂が引き起こされるため、pHは4〜12が好ましく、水分散着色剤との混和性の点からpHは6〜11がより好ましく、7〜10が更に好ましい。前記水分散性樹脂の平均粒径(D50)は、分散液の粘度と関係しており、組成が同じものでは粒径が小さくなるほど同一固形分での粘度が大きくなる。インク化した時に過剰な高粘度にならないためにも水分散性樹脂の平均粒子径(D50)は50nm以上が好ましい。また、粒径が数十μになるとインクジェットヘッドのノズル口より大きくなるため使用できない。ノズル口より小さくとも粒子径の大きな粒子がインク中に存在すると吐出性を悪化させる。そこで、インク吐出性を阻害させないために平均粒子径(D50)は200nm以下がより好ましく、150nm以下が更に好ましい。
【0106】
(pH調整剤)
前記pH調整剤としては、調合されるインクジェットインクに悪影響を及ぼさずにpHを7〜11に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルコールアミン類、アルカリ金属水酸化物、アンモニウム水酸化物、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、などが挙げられる。前記pHが7〜11を超えるとインクジェットのヘッドやインク供給ユニットを溶かし出す量が大きく、インクの変質や漏洩、吐出不良などの不具合が生じることがある。
【0107】
前記アルコールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3プロパンジオールなどが挙げられる。
前記アルカリ金属元素の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
前記アンモニウムの水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物などが挙げられる。
前記アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。
【0108】
(その他)
前記その他の成分としては、特に制限はなく、必要に応じて適宜選択することができ、例えば、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤、などが挙げられる。
【0109】
(防腐防黴剤)
前記防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、等が挙げられる。
【0110】
(キレート試薬)
前記キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等がある。
【0111】
(防錆剤)
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト、ベンゾトリアゾール、などが挙げられる。
【0112】
(酸化防止剤)
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、りん系酸化防止剤、などが挙げられる。
前記フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)としては、例えば、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10−テトライキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、などが挙げられる。
【0113】
前記アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチル−フェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ジヒドロキフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、等が挙げられる。
【0114】
前記硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルβ,β’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイド等が挙げられる。
前記リン系酸化防止剤としては、トリフェニルフォスファイト、オクタデシルフォスファイト、トリイソデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、トリノニルフェニルフォスファイト、等が挙げられる。
【0115】
(紫外線吸収剤)
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、等が挙げられる。
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−4'−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、等が挙げられる。
前記サリチレート系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリチレート、p−tert−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレート、等が挙げられる。
前記シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、エチル−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート、ブチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート、等が挙げられる。
前記ニッケル錯塩系紫外線吸収剤としては、例えば、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)−n−ブチルアミンニッケル(II)、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)−2−エチルヘキシルアミンニッケル(II)、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)トリエタノールアミンニッケル(II)、等が挙げられる。
【0116】
(インクジェットインキの調整)
本発明によって得られる表面が樹脂により被覆された顔料(顔料(A))を用いてインクジェットインキを作製する方法を示す。インクジェットインキは次の2つの製造方法が挙げられる。ただし、インクジェットインキを構成する成分をいかなる順番、方法でも添加することも可能であり以下にあげられる2つの製造方法に限られるものではない。
【0117】
1つ目の方法は顔料(A)を分散させた顔料分散体、架橋顔料分散体のいずれかまたは両方を作製しこれとインクジェトインキを構成する成分を混合しインクジェトインキを得る方法、2つ目の方法は顔料(A)とインクジェットインキを構成する成分および必要に応じて架橋剤を直接混合しインクジェットインキを得る方法である。顔料(A)とインクジェットインキを構成する成分を混合する方法は均一な混合が可能であればいかなる方法、装置を用いてもよい。装置としては具体的には以下のものがあげられる。ハイスピードミキサー、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、トリミックス、ニーダー、エクストルーダー、横型サンドミル、縦型サンドミル又は/及びアニューラ型ビーズミル、ペイントシェイカー、ボールミル等、超音波発振子を具備する分散機、2本ロールミル、3本ロールミル等が挙げられるがこれに限るものではない。
【0118】
<静電荷像現像用トナー>
本発明のトナーの構成成分としては、上記本発明の顔料(A)以外に、トナーを構成する公知の材料である、結着樹脂が用いられる。本発明のトナーには、更に必要に応じ離型剤、荷電制御剤が用いられ、また外添剤として、滑剤、流動性改良剤、研磨剤、導電性付与剤、画像剥離防止剤等が用いられる。
【0119】
(結着樹脂)
本発明のトナーに用いられる結着樹脂としては、各色の顔料(A)の色相を阻害しないために無色、透明あるいは白色、淡色を呈するものが好ましい。
【0120】
使用することのできる結着樹脂としては、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体などのスチレン系共重合体また架橋されたスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂などがあげられる。中でもポリエステル樹脂、スチレン系共重合体が好ましく用いられる。
【0121】
本発明のトナーにおいては、ポリエステル樹脂が最も好ましい結着樹脂である。ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノール誘導体等のジオール類、グリセロール、ジグリセロール、ソルビット、ソルビタン、ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、等の多価アルコール類が挙げられ、これらは単独で或いは2種以上の組み合わせで使用される。
【0122】
酸成分としては、二価のカルボン酸として、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などのベンゼンジカルボン酸類又はその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類又はその無水物;またさらに炭素数16〜18のアルキル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸などの不飽和ジカルボン酸又はその無水物;シクロヘキサンジカルボン酸;ナフタレンジカルボン酸;ジフェノキシエタン−2,6−ジカルボン酸等が挙げられ、架橋成分としてはたらく三価以上のカルボン酸としてはトリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ブタントリカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、オクタンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等が挙げられ、これらは単独で或いは2種以上の組み合わせで使用される。
【0123】
好ましいアルコール成分は、ジエチレングリコール、ビスフェノール誘導体であり、好ましい酸成分はフタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸又はその無水物、コハク酸、n−ドデセニルコハク酸又はその無水物、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のジカルボン酸類、トリメリット酸又はその無水物等のトリカルボン酸類である。
【0124】
なお、本発明において、結着樹脂の酸価の測定はJIS K−0070の方法に準じて行うことができる。酸価はトナー1gを中和するために必要な水酸化カリウムのmg数で表す。
【0125】
またスチレン系重合体に包含されるスチレン系共重合体において、スチレンモノマーに対するコモノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどの二重結合を有するモノカルボン酸もしくはその置換体;例えば、マレイン酸、マレイン酸メチル、マレイン酸ブチル、マレイン酸ジメチルなどの二重結合を有するジカルボン酸及びその置換体;例えば塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニルエステル類;例えばエチレン、プロピレン、ブチレンなどのエチレン系オレフィン類;例えばビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトンなどのビニルケトン類;例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類;等のビニル単量体があげられる。これらは、単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。
【0126】
架橋されたスチレン系共重合体を製造する際に用いられる架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ジビニル化合物;例えばエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレートなどの二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンなどのジビニル化合物;及び3個以上のビニル基を有する化合物が単独でもしくは混合物として用いられる。スチレン系重合体としては、GPCにより測定される分子量分布で3×103 〜5×104 の領域に少なくともひとつのピークを有し、105 以上の領域に少なくとも他の一つのピークあるいはショルダーを有するスチレン系共重合体が定着性の点から好ましい。
【0127】
なお、ビニル重合体の製造に当たっては重合開始剤が用いられる。重合開始剤としては、従来公知のものの何れをも用いることができる。重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエ−ト、ジターシャリーブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、アゾイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリルなどが従来好ましく用いられている。重合開始剤のビニルモノマーに対する使用割合は、0.2〜5質量%が一般的である。重合温度は、使用するモノマー及び開始剤の種類に応じ適宜選定される。
【0128】
また、本発明においては、ビニル系重合体を幹重合体、ポリエステルユニットを枝重合体としたグラフト共重合体のようなビニル系重合体ユニットとポリエステルユニットが化学的に結合されたハイブリッド樹脂も用いることができる。ビニル系樹脂としては、カルボキシル基あるいは水酸基を有するモノマーが重合単位として含まれることが好ましい。他の重合単位としては、上記ビニル系重合体において例示されたモノマーが適宜用いられる。さらにポリエステルユニットを形成する単量体成分としては、ポリエステル樹脂を製造するために用いられる上記アルコール成分、酸成分などが用いられる。
【0129】
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は50〜70℃の範囲であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)は、本発明においては示差走査熱量計(島津製作所社製 DSC−60)を用いて、昇温速度10℃/minで測定した時のTg以下のベースラインの延長線と、Tg近傍の吸熱カーブの接線との交点の値を求め測定した。
【0130】
本発明のトナーの結着樹脂がポリエステル樹脂である場合は、ホモポリエステル或いはコポリエステルの単独でも、或いはこれらの2種以上からなるブレンド物であってもよい。またポリエステル樹脂は、耐オフセット性及び低温定着性の点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される分子量において、重量平均分子量(Mw)が5,000以上のものが好ましく、10,000〜1,000,000のものがより好ましい。ポリエステル樹脂の重量平均分子量が小さくなると、トナーの耐オフセット性が低下する傾向にあり、また、重量平均分子量が大きくなると定着性が低下する傾向を示す。また、用いられるポリエステル樹脂は、特定の低分子量の縮重合体成分と特定の高分子量の縮重合体成分とからなる2山の分子量分布曲線を有するタイプ、或いは1山の単分子量分布曲線を有するタイプのいずれのものであってもよい。
【0131】
また、結着樹脂としてスチレン系樹脂を用いる場合は、GPCにより測定される分子量分布で3×103〜5×104の領域に少なくともひとつのピークを有し、105以上の領域に少なくとも一つのピークあるいはショルダーを有するものが定着性の点から好ましい。このような分子量分布を有する結着樹脂は、平均分子量が異なる二種以上の樹脂を混合することによって製造することができるし、架橋剤を用いて架橋樹脂とすることにより製造することもできる。なお、上記GPCによる分子量分布は、例えば次の条件で測定される。
【0132】
40℃のヒートチャンバ中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mlの流速で流し、THFに溶解した試料溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。
【0133】
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、東ソー社製あるいは昭和電工社製の分子量が102〜107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。検出器にはRI(屈折率)検出器を用いる。なお、カラムとしては市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良い。例えば、昭和電工社製のshodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807、800Pの組み合わせや、東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKguardcolumnの組み合わせをあげることができる。
【0134】
また測定用サンプルは以下のようにして作成する。すなわち、試料をTHF中に入れ、数時間放置した後、充分に振とうし、試料の合一体がなくなるまでTHFと良く混合し、さらに12時間以上静置する。この時、THF中への放置時間が24時間以上となるようにする。その後、サンプル処理フィルタ(ポアサイズ0.45〜0.5μm、例えばマイショリディスクH−25−5 東ソー社製、エキクロディスク25CR ゲルマン サイエンス ジャパン社製等が利用できる)を通過させたものをGPC測定用サンプルとする。また、サンプル濃度は、樹脂成分が0.5〜5mg/mlとなるように調整する。
【0135】
本発明のトナーに用いる結着樹脂は、フローテスターによる軟化温度Tsが60〜90℃であることが好ましい。これは着色剤との相溶性を高めるために有効な数値である。軟化温度Tsが60℃よりも低いと混練時に結着樹脂が軟化し過ぎてしまい、着色剤の分散が悪くなってしまう。一方で、軟化温度Tsが90℃よりも高いと混練時に結着樹脂が十分に溶融せず、着色剤の分散が困難になってしまう。
【0136】
本発明においては、軟化温度Tsの測定は、島津製作所製フローテスターCFT−500Dを用いて、開始温度40℃、昇温速度6.0℃/min.、試験荷重20kg、予熱時間300秒、ダイ穴径0.5mm、ダイ長さ1.0mmの条件にて行った。
【0137】
また本発明のトナーには、実質的な悪影響を与えない限りにおいて、従来トナーを製造する際に用いられている離型剤(ワックス)などの添加剤を加えることができる。離型剤としては、例えば熱ロール定着時の離型性(オフセット防止性)を向上させる、脂肪族炭化水素、脂肪酸金属塩類、高級脂肪酸類、脂肪酸エステル類もしくはその部分ケン化物、シリコーンオイル、各種ワックスが挙げられる。これらの中では、重量平均分子量Mwが500〜8000程度のエチレンホモポリマー、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、サゾールワックス、パラフィンワックス等のワックス類が好ましい。これらはトナー母粒子100質量部に対して通常0.5〜10質量%程度の割合で添加される。
【0138】
本発明のトナーには、必要に応じて色相に支障を来たさない範囲で無色あるいは淡色の荷電制御剤が含有されてもよい。荷電制御剤は、現像されるべき静電潜像担持体上の静電荷像の極性に応じて、正荷電制御剤又は負荷電制御剤が用いられる。
【0139】
正荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩化合物(例えば、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸塩、テトラブチルベンジルアンモニウムテトラフルオロボレート)、4級アンモニウム塩有機錫オキサイド(例えば、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド)、ジオルガノスズボレート(ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート)、アミノ基を有するポリマー等の電子供与性物質等を単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0140】
一方、負荷電制御剤としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸の亜鉛塩、カルシウム塩、クロム塩等、サリチル酸あるいはサリチル酸誘導体などのアリールオキシカルボン酸の二価又は三価の金属塩や金属キレート(錯体)、脂肪酸石鹸、ナフテン酸金属塩等が挙げられる。これらの荷電制御剤は、通常結着樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜8質量部の割合で使用される。
【0141】
本発明のトナーに用いられる外添剤としては流動化剤、研磨剤、導電性付与剤、滑剤などのものを、使用することができる。本発明において使用される流動化剤の基材としては、例えばシリカ、アルミナ、チタニア、マグネシア、非晶質珪素−アルミニウム共酸化物、非晶質珪素−チタニウム共酸化物などの微粉末を用いることができる。また外添剤としての流動化剤はトナーに流動性を付与する目的のみならず、トナーの帯電性付与及び制御の役割をも担っている。つまり外添剤はトナーの最表部に付着することによって、トナーの帯電性に大きな影響を及ぼす。
【0142】
流動化剤に用いられる粒子については、表面処理を行わずそのまま用いることも可能ではあるが、吸湿性により環境安定性が損なわれてしまうことと、流動化剤が感光体ドラム表面に付着して、フィルミングを起こしてしまい画像欠陥を引き起こしてしまう問題が生じる場合がある。吸湿性による環境安定性が損なわれる問題については、高湿環境下では流動化剤が水分の影響を受けてしまい、トナーの帯電減衰を引き起こし、画像上のカブリの発生、トナーの機内飛散の原因となってしまう。そこで流動化剤に用いる粒子の表面処理を行い、疎水性持たせることが好ましい。またこの表面処理に用いる処理剤の選択により、正極性及び負極性の所望の極性を持たせトナーの帯電性を調整、制御し安定させることができる。使用する表面処理剤の選択を行う必要がある。
【0143】
本発明のトナーにおいて用いられる流動化剤の表面処理剤としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のオルガノアルコキシシラン類、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、t−ブチルジメチルクロロシラン等のオルガノクロロシラン類、ヘキサメチルジシラザン等のシラザン類、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン等のオルガノアミノシラン類及びシリコーンオイル系の化合物を使用することができる。
【0144】
シリコーンオイル系の化合物としてはジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルなどのストレートシリコーンオイル、又は変性シリコーンオイルが使用できる。変性シリコーンオイルに用いられる変性基としては、メチルスチレン基、長鎖アルキル基、ポリエーテル基、カルビノール基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、高級脂肪酸基、メルカプト基、メタクリル基等があげられる。シリコーンオイルは優れた離型性、滑り性を持っていることにより、トナー成分の感光体ドラム表面への付着、フィルミングを防ぐ効果を有している。
【0145】
本発明のトナーに使用される流動化剤以外の外添剤は滑剤、研磨剤、導電性付与剤等について以下の公知のものを使用することができる。滑剤としては、例えばポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛などが、研磨剤としては例えばチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、炭化ケイ素、炭化タングステン、窒化ケイ素などの微粉体が挙げられる。これらの研磨剤は感光体ドラム表面へのトナー成分の付着物、フィルミング物を研磨し削ることにより、除去する効果があり、前記のシリコーンオイルで表面処理を行った流動化剤と併せて用いることにより大きな効果を見出すことができる。導電性付与剤としては酸化スズの如き金属酸化物等を加えることもできる。しかし、これらの例は単なる例示に過ぎないものであり、本発明のトナーに添加混合されるものが上記具体的に例示されたものに限定されるものではない。
【0146】
本発明のトナーにおいては、本発明の顔料(A)に加えて、補色に用いる目的で、従来トナーの製造において用いられることが知られた顔料、染料が使用可能である。これら着色剤の例としては、ナフトール系、キナクリドン系、キサンテン系、モノアゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系などの染顔料があげられる。これらは単独で或いは2種以上を混合して使用することができる。
【0147】
本発明のトナーは二成分系現像剤としてキャリアとともに用いることもできる。キャリアとしては、従来二成分系乾式現像剤において用いられるキャリアのいずれもが使用できる。このようなキャリアとしては、例えば鉄粉等の強磁性金属あるいは強磁性金属の合金粉、酸化鉄などの金属酸化物、ニッケル、銅、亜鉛、マグネシウム、バリウム等の元素から構成されるフェライト粉、マグネタイト粉などの磁性粉からなる磁性粉キャリア、これら磁性粉を樹脂で被覆した磁性粉樹脂コートキャリア、磁性粉とバインダー樹脂からなるバインダーキャリヤ、樹脂被覆されたあるいは樹脂被覆されていないガラスビーズなどが挙げられる。これらのキャリアは、通常15〜100μm、好ましくは20〜80μm程度の粒径のものが用いられる。
【0148】
なお、磁性粉樹脂コートキャリアの被覆樹脂としては、例えば、ポリエチレン、シリコーン樹脂などのシリコン含有樹脂、フッ素含有樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、セルロース誘導体、マレイン酸樹脂、エポキシ樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ臭化ビニル、ポリ臭化ビニリデン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリプロピレン、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール、フマル酸エステル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルエーテル、クロロプレンゴム、アセタール樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、アイオノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂などが使用できる。これらのなかでは、スペントトナーの形成が少ないためフッ素含有樹脂、シリコン含有樹脂が特に好ましい。この磁性粉樹脂コートキャリアには、導電性微粒子(カーボンブラック、導電性金属酸化物、金属粉体)、無機充填材(シリカ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、炭化ホウ素、酸化チタン、クレイ、タルク、ガラス繊維)、前記例示の荷電制御剤などを、必要に応じ含有させてもよい。キャリア芯材に対する樹脂被覆膜厚は、0.1〜5μm程度が好ましい。
【0149】
またキャリアはトナー容器中にトナーとともに充填しておき、トナーの供給と同時に新しいキャリアを現像器へ供給するトリクル現像方式として用いることも可能である。これにより現像機内の現像剤(トナーとキャリア)の一部を回収することで、現像剤の劣化が起こらず現像剤の交換を不要とすることができる。
【0150】
本発明に係るトナーは、従来から公知のトナーの製造方法を用いて製造することができる。トナーの製造方法は、混練、粉砕工程を経て得られる粉砕法、ケミカル的に重合して得られる重合法の2種類に大別される。粉砕法の場合、例えば上述したようなトナー構成材料を、ボールミル、ヘンシェルミキサーなどの混合機により充分混合したのち、熱ロールニーダー、一軸あるいは二軸のエクストルーダーなどの熱混練機を用いて良く混練し、冷却固化後、ハンマーミルなどの粉砕機を用いて機械的に粗粉砕し、次いでジェットミル、機械式粉砕機などにより微粉砕した後、分級する方法により製造する方法が挙げられる。
【0151】
また着色剤成分を結着樹脂中に均一に分散、配合する目的で、あらかじめ着色剤と結着樹脂とを混合し、着色剤成分が結着樹脂中に分散した着色剤分散体(コンク)を製造し、その後残りのトナーを構成する材料を添加し溶融、混練工程を経ることが好ましい。着色剤分散体(コンク)は少なくとも本発明のマゼンタ着色剤と結着樹脂とからなるものである。着色剤分散体(コンク)中の着色剤は重量の割合で10〜70%含まれていることが好ましい。
【0152】
また重合法により得られるトナーの場合、顔料成分を架橋顔料分散体の態様で用いることでさらに、凝集工程時の顔料の分散性の向上が見られ、帯電量が安定し、カブリの少ない良好な画像を得ることができる。
【0153】
一方、重合法の場合、結着樹脂溶液中に他のトナー構成材料を分散した後、噴霧乾燥する、所謂マイクロカプセル法によりトナーを製造する方法、結着樹脂を形成する単量体に所定材料を混合し、乳化あるいは懸濁重合を行い、トナーを得る方法などが挙げられる。乳化重合法では、サブミクロンの粒径の樹脂微粒子を凝集工程であらかじめ水中で分散させた顔料成分、ワックス等の内添剤とともに会合させ、所望のトナーサイズの粒径を得るものである。また懸濁重合法は、重合開始剤、顔料成分、離型剤(ワックス)、荷電制御剤等の必要な材料をモノマー中に分散、加熱させ重合を行うものである。なお、あらかじめ水中で分散させた顔料成分は前記の顔料分散体の作製方法と同様の方法で作製することが可能である。
【0154】
このように得られたトナー母粒子に外添剤をヘンシェルミキサー等の混合機を用いて十分に混合して用いることが好ましい。
【0155】
本発明で用いられるトナーとしては、重量平均粒径が3〜15μmであることが好ましく、5〜10μmが更に好ましい。また5μm以下の粒径を有するトナー粒子が12〜60個数%含有され、8〜12.7μmの粒径を有するトナー粒子が1〜33個数%含有され、16μm以上の粒径を有するトナー粒子が2.0質量%以下含有され、トナーの重量平均粒径が4〜12μmであるものが、現像特性の上からはより好ましい。トナーの粒度分布測定は、例えばコールターカウンター(マルチサイザー3)を用いて測定することができる。
【0156】
<塗料組成物>
本発明の塗料組成物は、少なくとも本発明の顔料(A)を含んでいればよく、好ましくは、顔料(A)とバインダー樹脂とを含む水性塗料である。顔料(A)とバインダー樹脂との比率は、求められる用途によって異なり、特に限定されるものではない。顔料濃度が非常に低い用途においても使用可能である。塗料組成物は、塗工後の意匠性が高く求められ、顔料から起因される粗粒が意匠性に及ぼす影響が大きい。例えば、深み感、光沢、発色性、ヘイズ値、フリップフロップ性などが挙げられる。さらに、塗料組成物は微細に分散された顔料分散体に、後述するに種々の塗料用特性を満たすための材料を添加し完成する。これらの材料は顔料分散体の分散系に影響を及ぼすことが多く顔料分散系を変化させ、凝集、増粘などを引き起こし、塗料として塗工適性を劣化させる上に、前述の意匠性を深み感、光沢、発色性、ヘイズ値、フリップフロップ性なども劣化させる。実用的な塗料組成物を供給するためには、塗料特性を満たす材料を添加しても安定な顔料分散体を提供することが重要である。
【0157】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、通常、塗料のバインダー樹脂として用いられるものであれば特に限定されず、例えば、架橋性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコン含有樹脂や、前記基体樹脂の官能基と反応しうる架橋剤としての役割を持つメラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネ−ト化合物、エポキシ化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂等を用いることができる。架橋性官能基を含有する樹脂と架橋剤としての役割を持つ樹脂は併用することが望ましく、中でも、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂及び尿素樹脂から選ばれる1種を用いることが好ましく、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂及びメラミン樹脂から選ばれる1種を用いることがより好ましく、アクリル樹脂とメラミン樹脂とを併用することがより好ましい。
【0158】
メラミン樹脂は、熱硬化性を有し硬化剤として作用することから、特に好ましく用いられる。アクリル樹脂は、当業者によってよく知られた重合性不飽和二重結合を有するモノマーを常法によって重合することにより得られるものが好ましい。上記重合性不飽和二重結合を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸及びフマル酸等のカルボン酸基含有モノマー、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性アクリルモノマー等の水酸基含有モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、スチレン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー等を挙げることができる。また、重合には、当業者によってよく知られたラジカル重合開始剤等を用いることが好ましい。
【0159】
本発明の水性塗料組成物には、さらに必要に応じて、水あるいは有機溶媒、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、架橋剤等の各種添加剤、体質顔料などを適宜配合することができる。特に、架橋剤は塗料組成物の凝集抑制、保存安定性を向上させる上で非常に重要である。架橋剤は具体的には前記の架橋剤が挙げられる。ただし、十分な架橋剤の効果を得るには、顔料に架橋剤と反応しうるは反応性官能基を有する化合物が顔料(B)に十分に吸着している必要がある。架橋に適切な樹脂吸着量は前記の方法で測定可能であり、顔料(B)に対して10質量%以上である。10質量%以上であれば顔料が樹脂によって十分に被覆されるため十分な架橋の効果を得ることができる。
【0160】
本発明の水性塗料組成物は、前述の成分を混合分散せしめることによって調製することができる。また、顔料(A)を用いた顔料分散体を予め作成し、これに上記の成分を混合せしめることによって調整することができる。
【0161】
本発明の塗膜組成物は、特に限定されず様々な基材に塗工できる、例えば、鉄、ステンレス、アルミニウム等及びその表面処理物等の金属基材;セメント類、石灰類、石膏類等のセメント系基材;ポリ塩化ビニル類、ポリエステル類、ポリカーボネート類、アクリル類等のプラスチック系基材等を挙げることができる。また、これらの各種基材からなる、建材、建築物、構造物等の建築・建材分野の各種被塗物等を挙げることができる。
【0162】
塗料組成物の塗布方法としては、特に限定されず、例えば、刷毛塗り、ローラー塗装、スプレー塗装等を挙げることができる。塗装後、通常、常温乾燥又は加熱乾燥させることにより塗膜を得ることができる。なお、塗布量;下塗り、中塗り、上塗り等の塗装順;塗装膜厚;乾燥時間等は、塗料組成物の種類や適用する基材に応じて任意に設定することができる。
【0163】
<フレキソ印刷用インキ>
本発明のフレキソ印刷用インキは、本発明の顔料(A)、アクリル樹脂またはポリウレタン樹脂、添加剤、溶剤を含有するのが好ましい。さらに必要に応じて前記架橋剤を含有することが好ましい。
【0164】
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂としては、種々アクリル単量体重合体である樹脂の他、アクリル酸−スチレン共重合樹脂、アクリル酸−マレイン酸樹脂、アクリル酸−スチレン-マレイン酸樹脂等を使用することができる。
【0165】
アクリル樹脂の酸価は40〜180mgKOH/gである事が好ましく、更に好ましくは40〜100mgKOH/gの範囲である。酸価が40mgKOH/g未満になると、印刷における再溶解性が悪くなり、フレキソ印刷用インキ積層体としての画像再現性が劣る。さらにアクリル樹脂とウレタン樹脂もしくはウレタンアクリル樹脂との相溶性も低下するため、造膜不良となり、積層体の基材密着性、耐水摩擦性、耐ブロッキング性も悪化する。一方で、酸価が180mgKOH/gを超えると、樹脂の耐水性が低下するため、積層体の基材密着性、耐水摩擦性、耐水ブロッキング性、耐ブロッキング性が著しく悪化してしまう。ここで言う酸価とは、樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数の事をさす。
【0166】
アクリル樹脂の重量平均分子量は200,000〜800,000の範囲にある場合が好ましい。重量平均分子量が200,000未満であると、樹脂皮膜の強度が低下して、積層体の基材密着性、耐水摩擦性、耐スクラッチ性、耐ブロッキング性が低下する場合がある。一方で800,000を超えると、分子鎖の運動性が低下するため、低温乾燥条件では、インキ皮膜層間の融着が不十分となり、積層体の基材密着性、耐水摩擦性が低下する恐れがある。また、再溶解性も低下しやすい。
【0167】
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−30℃〜30℃の範囲である事が好ましい。アクリル樹脂(A)のTgが−30℃未満であると、樹脂の塗膜強度が低下し、積層体の耐水摩擦性、耐ブロッキング性が悪化する場合がある。一方で30℃を超えた場合、分子鎖の運動性が低下して、ウレタン樹脂との相溶も悪化するため、積層体の基材密着性、耐水摩擦性が低下する場合がある。
【0168】
(ポリウレタン樹脂)
本発明において、ポリウレタン樹脂には、ポリウレタン樹脂、ポリウレタン−ウレア樹脂を使用することができる。ポリウレタン樹脂は造膜性の観点から、酸価を有することが望ましく、酸価は10〜50mgKOH/gの範囲であることが好ましい。酸価が10mgKOH/g未満では、印刷における再溶解性が悪くなり、フレキソ印刷用インキ積層体としての画像再現性が劣る場合がある。一方酸価が50mgKOH/gを超えると、樹脂の耐水性が低下するため、積層体の基材密着性、耐水摩擦性、耐水ブロッキング性が低下する恐れがある。 ポリウレタン樹脂の詳細な説明は後述する。
【0169】
フレキソ印刷用インキに含まれる樹脂の量は、固形分で10〜40質量%であることが望ましい。10質量%未満になると、インキ塗膜の強度がもろくなり、基材密着性および耐水摩擦性の著しい低下を招く。40質量%を超えると、必要十分な着色力が得られなくなる。
【0170】
さらに、フレキソ印刷用インキは必要に応じて添加剤を含有することもできる。添加剤としては、レベリング剤、濡れ剤、撥水剤、消泡剤、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化エチレンなどのワックス、架橋剤等を使用することができる。特に、架橋剤はフレキソ印刷用インキの凝集抑制、保存安定性を向上させる上で非常に重要である。具体的には前述の架橋剤を使用することが可能である。ただし、十分な架橋剤の効果を得るには、顔料に架橋剤と反応しうるは反応性官能基を有する化合物が顔料(B)に十分に吸着している必要がある。架橋に適切な樹脂吸着量は前記の方法で測定可能であり、顔料(B)に対して10質量%以上である。10質量%以上であれば顔料が樹脂によって十分に被覆されるため十分な架橋の効果を得ることができる。
【0171】
フレキソ印刷用インキに含まれる溶剤としては、水、アルコール類、グリコール類などが挙げられる。本発明に使用する溶剤アルコール類は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、デカノールなどが挙げられる。またグリコール類は、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノオクチエルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジピロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジピロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、グリセリンなどがあげられる。これらは、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよい。
【0172】
フレキソ印刷用インキは、前述の成分を混合分散せしめることによって調製することができる。また、顔料(A)を用いた顔料分散体を予め作成し、これに上記の成分を混合せしめることによって調整することができる。混合に際しては均一に混合できればいずれの装置を用いることもできる。例えばハイスピードミキサー、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、トリミックス、ニーダー、エクストルーダー、横型サンドミル、縦型サンドミルまたは/およびアニューラ型ビーズミル、ペイントシェイカー、ボールミル等、超音波発振子を具備する分散機、2本ロールミル、3本ロールミル等が挙げられるがこれに限るものではない。
【0173】
本発明で使用される顔料(A)は、フレキソ印刷用インキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちフレキソ印刷用インキの総重量に対して顔料(B)として1〜50質量%の割合で含まれることが好ましい。また、これらの着色剤は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。フレキソ印刷用インキ組成物中に気泡や粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させる。フレキソ印刷用インキ組成物の粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。なお、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
【実施例】
【0174】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、実施例に特に限定されるものではない。なお、実施例中、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を表す。
【0175】
本発明におけるα-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物は下記表1に示すようなものを使用した。なお、表中、グラフト重合体の構成比はモル比を示す。なお、各樹脂の物性は以下のような方法で測定した。
【0176】
(融点)
Thermo plus TG8120(Rigaku Corporaion社製)を使用した。サンプル約5mgを開始温度25℃、10℃/分で温度上昇、500℃に到達するまで加温した。得られた吸熱ピークを読み取り融点を得た。
【0177】
(酸価)
三角フラスコ中に試料、約1gを精密に量り採り、蒸留水/ジオキサン(重量比:蒸留水/ジオキサン=1/9)混合液50mlを加えて溶解する。上記試料溶液に対して、電位差測定装置(京都電子工業株式会社製、装置名「電位差自動滴定装置 AT−710M」)を用いて、0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液(力価a)で滴定を行い、滴定終点までに必要な水酸化カリウム・エタノール溶液の量(b(mL))を測定した。乾燥状態の樹脂の値として、酸価(mgKOH/g)を次式により求めた。
酸価(mgKOH/g)={(5.611×a×F)/S}/(不揮発分濃度/100)
ただし、
S:試料の採取量(g)
a:0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液の消費量(ml)
F:0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液の力価
【0178】
(数平均分子量(Mn))
RI検出器を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。装置としてHLC−8220GPC(東ソー株式会社製)を用い、分離カラムを2本直列に繋ぎ、両方の充填剤には「TSK−GEL SUPER HZM−N」を2連でつなげて使用し、オーブン温度40℃、溶離液としてTHF溶液を用い、流速0.35ml/minで測定した。サンプルは1wt%の上記溶離液からなる溶剤に溶解し、20マイクロリットル注入した。分子量はいずれもポリスチレン換算値である。
【0179】
【表1】
【0180】
≪インクジェットインキ≫
<顔料(A)(Wet)の製造方法>
[実施例1]
顔料としてPR122(クラリアント社製「トナーマゼンタE」)250部、水溶性無機塩として塩化ナトリウム1250部、樹脂として重合体A87.5部及び水溶性有機溶剤としてジエチレングリコール250部をステンレス製3Lニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で6時間混練した。この混合物を水7,500部に投入後24時間放置し、ハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及び水溶性有機溶剤を除去し、表面が樹脂により被覆された顔料(被覆顔料)(1)を得た。(固形分濃度30.2%)
【0181】
[実施例2〜44、比較例1〜4、6]
表2に示される組成に変更した以外は実施例1と同様の方法で被覆顔料(2)〜(48)及び(50)を得た。なお、被覆顔料(42)〜(44)については重合体A87.5部を、以下に示す樹脂に変更した。
被覆顔料(42): 重合体A 60部 及び Joncyrl690 27.5部
被覆顔料(43): 重合体A 60部 及び X−1 27.5部
被覆顔料(44): 重合体A 60部 及び SMA1440 27.5部
【0182】
[比較例5]
顔料としてPR122(クラリアント社製「トナーマゼンタE」)250部、水溶性無機塩として塩化ナトリウム1250部、水溶性有機溶剤としてジエチレングリコール250部をステンレス製3Lニーダー(井上製作所社製)に仕込み、80℃で6時間混練した。この混合物を水7、500部に投入後24時間放置し、ハイスピードミキサーで約1時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウム及び水溶性有機溶剤を除去し被覆顔料(49)(実際は被覆されていない顔料)を得た。(固形分濃度34.2%)
【0183】
【表2】
【0184】
表2中の略称について、以下に示す。
Joncryl690:スチレン(メタ)アクリル樹脂(BASF社製)
X−1:スチレン(メタ)アクリル樹脂(星光PMC社製)
SMA1440:スチレン(無水)マレイン酸樹脂(CrayValley社製)
DEG:ジエチレングリコール
NaCl:塩化ナトリウム
【0185】
<顔料分散体の製造方法>
[実施例45]
顔料分散体(1)100部のうちの、被覆されていない顔料(顔料(B))が15部となるように、被覆顔料(1)とイオン交換水と被覆顔料を作製する際に処理した樹脂の量と酸価から計算して当量となるジメチルアミノエタノールをはかり取り、液温70℃でハイスピードミキサーで1時間撹拌し、揮発した水分をイオン交換水により調整し顔料分散体(1)100部を得た。得られた顔料分散体の粒度分布を被覆顔料(1)の粒度分布として評価した。粒度分布はNanotrac Wave(マイクロトラック・ベル社製)を使用しイオン交換水で希釈して測定した。顔料分散体(1)の粒度分布は、d1=25nm、d50=53nm、d99=160nm(体積平均粒子径)であった。
【0186】
[実施例46〜88、比較例7〜10、12]
表3に示される組成に変更した以外は実施例45と同様の方法で顔料分散体(2)〜(48)及び(50)を得た。得られた顔料分散体について、実施例45と同様にして粒度分布を測定した。
【0187】
[比較例11]
イオン交換水49.6部、ジメチルアミノエタノール1.3部、重合体A5.3部をはかり取り、70℃に加温しながらハイスピードミキサーで1時間撹拌混合し、揮発した水分をイオン交換水により調整し重合体Aの水性分散体を得た。被覆顔料(49)(実際は被覆されていない顔料)43.9部と重合体Aの水性分散体56.1部をはかり取り、液温70℃でハイスピードミキサーで1時間撹拌し揮発した水分をイオン交換水により調整し顔料分散体(49)100部を得た。
【0188】
<顔料分散体の評価>
得られた顔料分散体について次の項目を評価した。評価結果を表3に示す。
(1)粗粒量試験
顔料分散体中の粗粒量の評価を、定量の顔料分散体の25mmφのガラスファイバー製フィルター(GF/B GEヘルスケアライフサイエンス社製)への通過時間で評価した。粗粒が多い場合はフィルターが目詰まりをおこし通過時間が長く観測される。またさらに粗粒が多い場合はフィルターが閉塞し顔料分散体を全量ろ過することができない。一般にインクジェットヘッドへインキを供給する経路に使用されるフィルターは1μmより大きく、またインクジェットインキの顔料濃度は顔料分散体に比べ低いものが一般的であり、本試験方法によりろ過を通過すれば十分といえる。具体的な評価条件を以下に示す。コックを経由して減圧ポンプを付属したサクションベッセルに15mlの目盛のついたファンネルと25mmφのガラスファイバー製フィルター(GF/B GEヘルスケアライフサイエンス社製)をのせた直径25mmフィルターホルダー(ADVANTEC社製)をのせる。サクションベッセル内が減圧されないようにコックを使用して減圧ポンプを稼働する。顔料分散体15gをファンネルにはかり取る。ポンプとサクションベッセルの開圧をスタートとし顔料分散体全量がフィルターを通過する時間を計測する。この時のサクションベッセル内の圧力は0.05MPa〜0.07Mpaである。60秒以内にろ過フィルターが閉塞し顔料分散体が通過しない場合はファンネル内に残留した顔料分散体量を計測した。
【0189】
【表3】
【0190】
表3において実施例45〜88の分散体は、比較例7〜11が粗粒量試験で閉塞したのに対し、良好な粗粒量試験結果であり、被覆顔料(1)〜(44)は粗粒の分散性が優れていた。
【0191】
表3中の略称について、以下に示す。
ジメチルアミノエタノール:アミノアルコール2Mabs(日本乳化剤社製)
N−エチルジエタノールアミン:アミノアルコールMED(日本乳化剤社製)
【0192】
<インクジェットインキの製造方法(1)>
[実施例89]
顔料分散体(1)26.7部と下記希釈液A73.3部をハイスピードミキサーで500rpmで撹拌して混合しインクジェットインキ(1)を得た。
【0193】
(希釈液A)
グリセリン 10.0部
1,3−プロパンジオール 15.0部
サーフィノールDF110D(エアープロダクツジャパン社製消泡剤)0.5部
プロキセルGXL(LONZA社製防腐剤) 0.2部
イオン交換水 47.6部
【0194】
[実施例90〜176、比較例13〜18]
表4に示される組成に変更した以外は実施例89と同様の方法でインクジェットインキ(2)〜(94)を得た。
【0195】
<インクジェットインキの評価(1)>
得られたインクジェットインキについて下記を評価した。結果を表4に示す。
(1)吐出性
インクジェットインキを25℃の環境下でピエゾ素子を有するインクジェットヘッドを搭載したインクジェットプリンターに充填し、コピー用紙(Xerox社4024)に30枚連続印刷しドット抜けを観察した。ドット抜けしたノズルの数が全ノズルに対して何%あるかについて、0%の場合は〇、0より多く5%以下の場合は△、5%より多い場合は×とした。
【0196】
(2)耐水性
インクジェットインキを25℃の環境下でピエゾ素子を有するインクジェットヘッドを搭載したインクジェットプリンターに充填し、コピー用紙(Xerox社4024)にシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、オレンジ、グリーン、バイオレットのインキ用いて記録し、記録物を気温25℃、湿度50%条件下、記録物を水道水に浸漬させて、記録物のにじみを観察した。記録した直後に浸漬させても1時間経ても記録物がにじまない場合は〇、記録した直後に浸漬させ1時間以内でにじんだものは△、記録した直後に浸漬させてすぐに記録物がにじむものは×とした。△以上であれば使用可能であるが〇が望ましい。
【0197】
【表4】
【0198】
表4において、実施例89〜176のインクジェットインキは、比較例13〜17に比べ吐出性が優れていた。特に比較例17はインクジェットプリンターで吐出することができなかった。比較例17はピエゾ素子を有するインクジェットヘッドを搭載したインクジェットプリンターで吐出することができず記録物を作製することができなかったため耐水性評価は未実施である。さらに、実施例89〜176のインクジェットインキを用いて印刷した印刷物は、比較例18に比べ耐水性に優れていた。
【0199】
表4中の希釈液について、以下に示す。
(希釈液A)
グリセリン 10.0部
1,3−プロパンジオール 15.0部
サーフィノールDF110D(エアープロダクツジャパン社製消泡剤)0.5部
プロキセルGXL(LONZA社製防腐剤) 0.2部
イオン交換水 47.6部
【0200】
(希釈液B)
ボンコート4001(DIC社製) 6.0部
グリセリン 10.0部
トリエチレングリコール 25.0部
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 4.0部
ポリフォックスPF−151N(OMNOVA社製) 2.0部
Proxel LV(LONZA社製防腐剤) 0.2部
トリエタノールアミン 0.1部
イオン交換水 26.0部
【0201】
(希釈液C)
ハイドランHW−940(DIC社製) 7.0部
グリセリン 6.0部
3−メチル−1,3-ブタンジオール 19.0部
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 2.0部
Zonyl FS−300(Dupont社製) 2.5部
Proxel LV(LONZA社製防腐剤) 0.2部
2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール 0.1部
イオン交換水 36.5部
【0202】
(希釈液D)
アクリットWEM−321U(大成化工社製) 7.9部
グリセリン 7.5部
1,3-ブタンジオール 22.5部
2−エチル−1,3−ヘキサンジオール 4.0部
ポリフォックスPF−156A(OMNOVA社製) 3.3部
Proxel LV(LONZA社製防腐剤) 0.2部
2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール 0.1部
イオン交換水 27.8部
【0203】
(希釈液E)
ボンコート4001(DIC社製) 7.0部
グリセリン 7.5部
ジエチレングリコール 22.5部
2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール 4.0部
ポリフォックスPF−151N(OMNOVA社製) 2.0部
Proxel LV(LONZA社製防腐剤) 0.2部
2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール 0.1部
イオン交換水 30.0部
【0204】
<架橋分散体の製造方法>
[実施例5−1]
顔料分散体(1’)100部のうちの、被覆されていない顔料(顔料(B))が20部となるように、被覆顔料(1)とイオン交換水と被覆顔料を作製する際に処理した樹脂の量と酸価から計算して当量となる水酸化カリウムをはかり取り、液温70℃でハイスピードミキサーで1時間撹拌し、揮発した水分をイオン交換水により調整し顔料分散体(1’)100部を得た。顔料分散体(1’)100部に架橋剤としてデナコールEX321(エポキシ架橋剤、ナガセケミテックス製、不揮発分100%、エポキシ当量140g/eq)を2.45部加え、70℃で約2時間撹拌し、揮発した水分をイオン交換水により調整し架橋顔料分散体(1)を得た。さらに、架橋顔料分散体(1)100部のうちの、被覆されていない顔料(顔料(B))が15部となるように架橋顔料分散体(1)をイオン交換水を用いて調整し架橋顔料分散体(1)100部を得た。
【0205】
[実施例5−2〜5−44、比較例5−2〜5−8]
表5に示される組成に変更した以外は実施例5−1と同様の方法で架橋顔料分散体(2)〜(44)、(46)〜(52)を得た。
【0206】
[比較例5−1]
ジメチルアミノエタノールを水酸化カリウムに変更した以外は実施例45と同様の方法で顔料分散体を作製し架橋顔料分散体(44)(但し、実際は架橋されてない)を得た。
【0207】
【表5】
【0208】
表5中の略称について下記に示す。
デナコールEX321:ナガセケムテックス製、エポキシ架橋剤、不揮発分100%、エポキシ当量140g/eq
ケミタイトDZ22E:日本触媒製、アジリジン架橋剤、不揮発分30%、アジリジン当量168g/eq
カルボジライトV02:日清紡製、カルボジイミド架橋剤、不揮発分40%、カルボジイミド当量590g/eq
【0209】
<インクジェットインキ[2]の製造方法>
[実施例6−1]
インクジェットインキ100部を得るにあたり、インクジェットインキ中の顔料(B)が4部となるように架橋顔料分散体(1)と1,2−ヘキサンジオール16.0部、1,2−ブタンジオール16.0部、サーフィノールDF110D(エアープロダクツジャパン社製消泡剤)0.5部、プロキセルGXL(LONZA社製防腐剤) 0.2部、イオン交換水をハイスピードミキサーで500rpmで撹拌して混合し、インクジェットインキ(6−1)を得た。
【0210】
[実施例6−2〜6−44、比較例6−1〜6−8]
表6に示される架橋顔料分散体(ただし架橋顔料分散体(45)は架橋されていない)に変更した以外は実施例6−1と同様の方法でインクジェットインキ(6−2)〜(6−52)を得た。
【0211】
<インクジェットインキ[2]の評価>
得られたインクジェットインキ[2]について下記を評価した。結果を表6に示す。
【0212】
(粒度分布安定性)
粒度分布を前記のNanotrac Wave(マイクロトラック・ベル社製)を使用しイオン交換水で希釈して測定した(体積平均粒子径)。さらにインクジェットインキを70℃の恒温機に1週間保存、経時促進させた後、同様にして粒度分布を測定し、変化率を求めた。評価基準は以下のとおりである。
○:70℃1週間保存前後の粒度分布(D50)変化率が±10%未満(良好)
△:70℃1週間保存前後の粒度分布(D50)変化率が±10%以上±20%未満(実用上問題なし)
×:70℃1週間保存前後の粒度分布(D50)変化率が±20%以上(不良)
【0213】
(粘度安定性)
粘度をE型粘度計(東機産業社製「ELD型粘度計」)を用いて、25℃ において回転数20rpmという条件で測定した。さらにインクジェットインキを70℃の恒温機に1週間保存、経時促進させた後、同様にして粘度を測定し、変化率を求めた。評価基準は以下のとおりである。
○:70℃1週間保存前後の粘度変化率が±10%未満(良好)
△:70℃1週間保存前後の粘度変化率が±10%以上±20%未満(実用上問題なし)
×:70℃1週間保存前後の粘度変化率が±20%以上(不良)
【0214】
【表6】
【0215】
さらに、表6において、実施例6−1〜6−44は架橋剤を使用することでインクジェットインキにしたのちの粘度、粒度分布の安定性に優れていた。これに対し、比較例6−1は架橋剤を使用していないため粒度分布、粘度の経時促進後の保存安定性を十分に得ることができなかった。また比較例6−2〜6−8は顔料が樹脂によって十分に被覆されていないため十分な架橋の効果を得ることができず、粒度分布、粘度の経時促進後の保存安定性を十分に得ることができなかった。
【0216】
≪トナー≫
以下トナーとしての実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。また顔料(A)に相当する、被覆された顔料(被覆顔料)はトナーの製造のため、乾燥し、粉末の態様とした。
【0217】
<顔料(A)(dry)の製造方法>
[実施例7−1〜7−4、比較例7−1]
(Dry顔料(1−1)〜(49−1)の製造)
表7に示す被覆顔料(1)〜(49)を、各々、40℃減圧下(−0.9MPa)に24時間保管し、Dry顔料(1−1)〜(49−1)を得た。得られたDry顔料について、走査型電子顕微鏡で観察した。
【0218】
【表7】
【0219】
<トナーの製造方法>
[実施例8−1]
(マゼンタトナー1の製造)
(1)マゼンタコンク1の調整
下記材料(合計3kg)を加圧ニーダー中で設定温度150℃、10分の条件にて混合、混練を行い取り出した。更にロール温度95℃の3本ロールにて混練を行い、冷却後10mm以下に粗砕し、マゼンタ着色剤分散体であるマゼンタコンク1を得た。
トナー結着樹脂1 60.0 部
顔料(被覆顔料)(1−1) 40.0 部
*トナー結着樹脂1:テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA、エチレングリコールから構成される熱可塑性ポリエステル樹脂。
酸価:10mgKOH/g OH価:43mgKOH/g Tg 58℃ 軟化温度Ts 65℃ 真密度1.32g/cc 分子量 Mw:28200 Mn:2500
(2)マゼンタトナー母粒子1の調整
次に、下記材料(合計5kg)を20Lの容積を有するヘンシェルミキサーで混合(3000rpm,3分)した後、二軸混練押出機(PCM30)で供給量6kg/hr,吐出温度145℃にて溶融混練を行い、冷却固化した後ハンマーミルで粗粉砕し、次いでI式ジェットミル(IDS−2型)で微粉砕し、分級(DS−2型)して重量平均粒径約8.5μmの分級品(マゼンタトナー母粒子1)を得た。
トナー結着樹脂1 77.0 部
マゼンタコンク1 20.0 部
荷電制御剤(3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸の亜鉛塩化合物)
1.0 部
離型剤(サゾールワックス H1N4 融点110℃)
2.0 部
(3)マゼンタトナー1の調整
次いで、上記で得られた分級品100部と疎水性シリカ(日本アエロジル社製NY−50)1.0部及び疎水性シリカ(日本アエロジル社製R−974)0.5部を10Lのヘンシェルミキサーで混合(3000rpm,3分)、篩工程(150メッシュ)を経た後マゼンタトナー1を得た。
【0220】
[実施例8−2]
(シアントナー1の製造)
実施例8−1の顔料(被覆顔料)(1−1)に代えて、顔料(被覆顔料)(16−1)を用いた他は実施例8−1と同様にして、シアン着色剤分散体であるシアンコンク1、重量平均粒径約8.4μmの分級品であるシアントナー母粒子1、シアントナー1を得た。
【0221】
[実施例8−3]
(イエロートナー1の製造)
実施例8−1の顔料(被覆顔料)(1−1)に代えて、顔料(被覆顔料)(34−1)を用いた他は実施例8−1と同様にして、イエロー着色剤分散体であるイエローコンク1、重量平均粒径約8.5μmの分級品であるイエロートナー母粒子1、イエロートナー1を得た。
【0222】
[実施例8−4]
(ブラックトナー1の製造)
実施例8−1の顔料(被覆顔料)(1−1)に代えて、顔料(被覆顔料)(40−1)を用いた他は実施例8−1と同様にして、ブラック着色剤(カーボンブラック)分散体であるブラックコンク1、重量平均粒径約8.3μmの分級品であるブラックトナー母粒子1、ブラックトナー1を得た。
【0223】
[実施例8−5]
(マゼンタトナー2の製造)
顔料分散体(1)を用い、下記の方法によりマゼンタトナー2を得た。
(1)分散液の調製
顔料分散体(1)97部にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ネオペレックスG−15、花王社製)3部を添加しハイスピートミキサーで500rpmで1時間撹拌しマゼンタ顔料の分散液を得た。
(2)ポリマー乳化液の調製
反応器に、エステルワックスエマルジョンを固形分として320部(SELOSOLR−586、中京油脂社製)、イオン交換水14000部を入れ、90℃に昇温し、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部、スチレン2500部、n−ブチルアクリレート650部、メタクリル酸170部、8%過酸化水素水溶液330部、8%アスコルビン酸水溶液330部を添加した。90℃で7時間反応を継続してポリマー乳化液を得た。
(3)マゼンタトナー母粒子2の製造
上記ポリマー乳化液150部に、上記マゼンタ顔料の分散液16.5部を注入し混合撹拌した。この中に、0.5%の硫酸アルミニウム溶液40部を撹拌しながら注入した。60℃に昇温し、2時間撹拌を継続し、ろ過、洗浄、乾燥し、本発明のマゼンタトナー母粒子2を得た。
(4)マゼンタトナー2の調整
次いで、上記で得られたマゼンタトナー母粒子2を100質量部と疎水性シリカ(日本アエロジル社製NY−50)1.0質量部及び疎水性シリカ(日本アエロジル社製R−974)0.5質量部を10Lのヘンシェルミキサーで混合(3000rpm,3分)、篩工程(150メッシュ)を経た後マゼンタトナー2を得た。
【0224】
[実施例8−6]
(マゼンタトナー4の製造)
架橋顔料分散体(1)を用い、下記の方法によりマゼンタトナー4を得た。
(1)分散液の調製
架橋顔料分散体(1)97部にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ネオペレックスG−15、花王社製)3部を添加しハイスピートミキサーで500rpmで1時間撹拌しマゼンタ顔料の分散液を得た。
(2)ポリマー乳化液の調製
反応器に、エステルワックスエマルジョンを固形分として320部(SELOSOLR−586、中京油脂社製)、イオン交換水14000部を入れ、90℃に昇温し、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部、スチレン2500部、n−ブチルアクリレート650部、メタクリル酸170部、8%過酸化水素水溶液330部、8%アスコルビン酸水溶液330部を添加した。90℃で7時間反応を継続してポリマー乳化液を得た。
(3)マゼンタトナー母粒子4の製造
上記ポリマー乳化液150部に、上記マゼンタ顔料の分散液16.5部を注入し混合撹拌した。この中に、0.5%の硫酸アルミニウム溶液40部を撹拌しながら注入した。60℃に昇温し、2時間撹拌を継続し、ろ過、洗浄、乾燥し、本発明のマゼンタトナー母粒子4を得た。
(4)マゼンタトナー4の調整
次いで、上記で得られたマゼンタトナー母粒子4を100質量部と疎水性シリカ(日本アエロジル社製NY−50)1.0質量部および疎水性シリカ(日本アエロジル社製R−974)0.5質量部を10Lのヘンシェルミキサーで混合(3000rpm,3分)、篩工程(150メッシュ:目開き0.1mm)を経た後マゼンタトナー4を得た。
【0225】
[比較例8−1]
(マゼンタトナー3)の製造
実施例8−1の顔料(被覆顔料)(1−1)に代えて、顔料(被覆顔料)(49−1)を用いた他は実施例8−1と同様にして、マゼンタ着色剤分散体であるマゼンタコンク3、重量平均粒径約8.5μmの分級品であるマゼンタトナー母粒子3、マゼンタトナー3を得た。
【0226】
<トナーの評価>
得られたトナーについて、下記方法で評価を実施した。結果を表8に示す。
(画像濃度)
カラープリンタ(カシオ計算機社製N6100改造機)を用い、23℃/50%RHの環境条件下で実写試験を行った。このとき画像作製条件は評価トナー単色で出力を行なった。得られた画像について、初期及び3,000枚複写時の画像濃度をマクベス光度計を用いて測定した。初期及び3,000枚複写時共に、1.3以上(イエロートナーの場合は1.2以上)の濃度であればよい。
【0227】
(カブリ評価)
画像濃度評価と同様にして、初期及び3,000枚複写時のカブリをフォトボルトにて、反射率を測定することで測定した。1.0%以下が良好な値である。
【0228】
(外観評価)
画像濃度評価と同様にして、3,000枚複写した後に、トナー粒子の機内飛散と、得られた画像の汚れを目視で判断した。トナーの機内飛散は、現像器及び感光体ドラム周りに飛散トナーが存在するか否かを確認することにより行った。トナー飛散がみられる場合、これに伴う画像汚れが発生する。
【0229】
(帯電量)
分級品及びトナーの帯電量は次のように測定を行った。パウダーテック社製鉄粉キャリア(商品名MF−70)を19.0g、乾燥後の分級品あるいはトナー1.0gを50ccポリ瓶に秤量し、5回振った後、ボールミル(新栄工機産業社製 PLASTIC PLANT SKS型)にて、回転数を実測値で230回転(ポリ瓶本体は120回転)の条件で30分間混合を行った。混合後の得られた試料を東芝ケミカル社製ブローオフ帯電量測定装置により帯電量測定を行った。この時ブロー圧は1kgf/cm2、測定時間20秒で最大の数値を読み取り、メッシュは400メッシュを用いて行った。また測定環境は23℃/50%RHの条件で行った。
【0230】
【表8】
【0231】
表8について、実施例8−1〜8−6では、初期から3000枚の画像試験においても、画像濃度が高く、安定しており、また白地部分のカブリが少なかく、機内飛散も見られなかった。また顔料を変更した場合でも分級品(トナー母粒子)とトナーの両方で色違いによる帯電量の変動がなく、プロセスカラーを設計する上で帯電レベルが調整しやすいことがわかる。
【0232】
≪塗料≫
<塗料組成物の製造方法>
[実施例9−1]
(塗料組成物(1))
顔料分散体(1)及びバインダー樹脂を固形分量で、下記組成になるように配合し塗料組成物(1)を得た。
顔料分散体(1) : 4.1部
ウォーターゾールS−751 :60.0部
(DIC社製 焼き付け塗料用アクリル樹脂)
サイメル303 :45.0部
(三井サイテック社製 メラミン樹脂)
【0233】
[実施例9−2〜実施例9−88、比較例9−1〜9−6]
顔料分散体又は架橋顔料分散体に変更した以外は実施例9−1と同様にして、塗料組成物(2)〜(92)を得た。
【0234】
<塗料組成物の評価>
得られた塗料組成物について、コロナ放電処理PETフィルム又はBT−144処理鋼板上に膜厚が37±2μmになるようにアプリケータで塗工し、30分セッティング後、60℃にて20分乾燥させた後、140℃にて20分間焼き付けを行って、各塗料組成物の試験片を作製した。試験片について以下の評価を行った。その結果を表9に示した。
【0235】
(深み感)
PETフィルムに塗工した試験片を、白色光の元で塗膜を低角度で目視にて観察することにより判定した。下記基準にて評価を行った。
○:色の深み感に優れている
×:色の深み感がない
【0236】
(光沢)
「BT−144処理鋼板」に塗工したものを、60°鏡面光沢で測定した。下記基準にて評価を行った。
○:[光沢値]>50(良好)
×:[光沢値]≦50(不良)
【0237】
(発色性)
PETフィルムに塗工した試験片を目視で判定した。下記基準にて評価を行った。
○:色の濃度、隠蔽性が高い
△:色の濃度、隠蔽性がやや劣る
×:色の濃度、隠蔽性がかなり劣り、鮮鋭性も低い
【0238】
(ヘイズ値)
PETフィルムに塗工した試験片の塗工面のヘイズをヘイズメーター(日本電色工業社製)で測定した。下記基準にて評価を行った。
○:[ヘイズ値]<60(良好)
△:60≦[ヘイズ値]<80(実施可能)
×:[ヘイズ値]≧80(不良)
【0239】
(フリップフロップ性)
PETフィルムに塗工した試験片を目視で判定した。下記基準にて評価を行った。
○:塗面を見る角度によって、色調・光輝性の変化がある
×:塗面を見る角度を変えても、色調・光輝性の変化が小さい
【0240】
(粒度分布安定性)
粒度分布を前記のNanotrac Wave(マイクロトラック・ベル社製)を使用しイオン交換水で希釈して測定した。(体積平均粒子径)。さらに塗料組成物を40℃の恒温機に1週間保存、経時促進させた後、同様にして粒度分布を測定し、変化率を求めた。評価基準は以下のとおりである。
○:40℃1週間保存前後の粒度分布(D50)変化率が±10%未満(良好)
△:40℃1週間保存前後の粒度分布(D50)変化率が±10%以上±20%未満(実用上問題なし)
×:40℃1週間保存前後の粒度分布(D50)変化率が±20%以上(不良)
【0241】
【表9】
【0242】
表9について、実施例9−1〜9−44の塗料組成物は比較例9−1〜9−2に比べ、深み感、光沢、発色性、ヘイズ値、フリップフロップ性に優れた。さらに、実施例9−45〜9−88では、顔料分散体にさらに架橋剤を用いた架橋顔料分散体を用いた塗料組成物は、比較例9−3〜9−6に比べ促進経時後の粒度分布、粘度の安定性に優れていた。
【0243】
≪フレキソインキ≫
フレキソインキの製造に先立ちポリウレタン樹脂の製造を実施した。
(ポリウレタン樹脂(1)の製造)
温度計、攪拌器、還流器、及び窒素ガス導入管を備えた反応容器中で窒素ガスを導入 しながら、PTG-3000SN(保土谷化学製ポリテトラメチレングリコール 官能基数2 水酸基価37 数平均分子量3000)121.8部、PEG#2000(日油製 ポリエチレングリコール 官能基数2 水酸基価56 数平均分子量2000)24.4 部、2,2−ジメチロールプロピオン酸32.7部及びイソホロンジイソシアネート6 6.9部を仕込み、90℃、3時間反応させた。冷却後、得られた水溶性樹脂に25%ア ンモニア水16.6部とイオン交換水73.0部の混合溶液を徐々に滴下して中和することにより水溶化し、ポリウレタン樹脂(1)の水溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂(1)の酸価は55mgKOH/g、重量平均分子量(Mw)は36000であった 。
【0244】
(酸価の測定)
樹脂1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのミリグラム数。乾燥させたポリウレタン樹脂(1)について、JIS K2501に記載の方法に 従い、水酸化カリウム・エタノール溶液で電位差滴定をおこない算出した。
【0245】
(重量平均分子量(Mw)の測定)
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定によるポリスチレン換算の値。乾燥させたポリウレタン樹脂(1)をテトラヒドロフランに溶解させ、0.1%の溶液を調製し、東ソー製HLC−8320−GPC(カラム番号M −0053分子量測定範囲約2千〜約400万)により重量平均分子量を測定した。
【0246】
<フレキソインキの製造>
[実施例10−1]
被覆されていない顔料(B)が15部となるように被覆顔料(1)、被覆顔料(1)を作製する際に処理した樹脂量と酸価から計算して当量となる水酸化カリウム、ポリウレタン樹脂(1)35.0部、ノニオン系界面活性剤(サーフィノール104PA、エアープロダクツ社製)0.1部、n−プロパノール2.0部、ポリエチレンワックス(アクアペトロ DP2502B、東洋アドレ社製)2.0部、消泡剤(テゴフォーメックス1488、エ ボニック社製)0.2部、顔料(B)が15部となるようにイオン交換水を添加し、70℃に加温しハイスピードミキサーで撹拌した。揮発した分量のイオン交換水を添加しフレキソインキ(1)100部を得た。
【0247】
[実施例10−2〜10−44、比較例10−1〜10−2]
被覆顔料を表10に示す被覆顔料に変更した以外は実施例10−1と同様の方法でフレキソインキ(2)〜(46)を得た。
【0248】
[実施例10−45]
被覆されていない顔料(B)が15部となるように被覆顔料(1)、被覆顔料(1)を作製する際に処理した樹脂量と酸価から計算して当量となるに水酸化カリウム、ポリウレタン樹脂(1)35.0部、架橋剤としてデナコールEX321(エポキシ架橋剤、ナガセケミテックス製、不揮発分100%、エポキシ当量140g/eq)2.45部、n−プロパノール2.0部、ポリエチレンワックス(アクアペトロ DP2502B、東洋アドレ社製)2.0部、顔料(B)が15部となるようにイオン交換水を添加し、70℃に加温しハイスピードミキサーで2時間撹拌した。揮発した分量のイオン交換水、ノニオン系界面活性剤(サーフィノール104PA、エアープロダクツ社製)0.1部、消泡剤(テゴフォーメックス1488、エ ボニック社製)0.2部を添加しフレキソインキ(47)100部を得た。
【0249】
[実施例10−46〜10−88、比較例10−3〜10−4]
被覆顔料、架橋剤を表10に示すものに変更した以外は実施例10−45と同様の方法でフレキソインキ(47)〜(92)を得た。
【0250】
<フレキソインキの評価>
上述のフレキソインキについて、粒度分布、粘度の経時保存安定性を評価した。さらにフレキソインキの粗粒評価を実施した。結果を表10に示す。
【0251】
(粗粒評価)
グラインドゲージ (JIS K5600−2−5に準ずる)を用いて、フレキソインキの粗大粒子の有無を確認した。評価基準は以下の通りである。
○:60μm未満 (良好)
△:60以上90μm未満 (実用上問題なし)
×:90μm以上 (不良)
【0252】
(粒度分布安定性)
粒度分布を前記のNanotrac Wave(マイクロトラック・ベル社製)を使用しイオン交換水で希釈して測定した(体積平均粒子径)。さらにフレキソインキを40℃の恒温機に1週間保存、経時促進させた後、同様にして粒度分布を測定し、変化率を求めた。評価基準は以下のとおりである。
○:40℃1週間保存前後の粒度分布(D50)変化率が±10%未満(良好)
△:40℃1週間保存前後の粒度分布(D50)変化率が±10%以上±20%未満(実用上問題なし)
×:40℃1週間保存前後の粒度分布(D50)変化率が±20%以上(不良)
【0253】
(粘度安定性)
25℃における粘度をザーンカップ(No.4)を使用して測定した。さらに40℃の恒温機に1週間保存、経時促進させた後、経時前後での粘度の変化率を求めた。評価基準は以下のとおりである。
○:40℃1週間保存前後の粘度変化率が±10%未満(良好)
△:40℃1週間保存前後の粘度変化率が±10%以上±15%未満(実用上問題なし)
×:40℃1週間保存前後の粘度変化率が±15%以上(不良)
【0254】
【表10】
【0255】
表10中の略称について下記に示す。
デナコールEX321:ナガセケムテックス製、エポキシ架橋剤、不揮発分100%、エポキシ当量140g/eq
ケミタイトDZ22E:日本触媒製、アジリジン架橋剤、不揮発分30%、アジリジン当量168g/eq
カルボジライトV02:日清紡製、カルボジイミド架橋剤、不揮発分40%、カルボジイミド当量590g/eq
【0256】
実施例10−1〜10−44から本発明の顔料(A)を用いたフレキソインキは粗粒の分散性に優れていた。さらに、実施例10−45〜10−88から、顔料(A)を用いたフレキソインキにさらに架橋剤を処理したフレキソインキは、粒度分布、粘度の促進経時における安定性に優れていた。
【要約】
【課題】
本発明の課題は、粗大粒子が低減された容易に分散可能な微細な顔料を提供することにある。さらに 該顔料が分散された水性分散体において、水溶性有機溶剤、その他の添加剤等と共存する状態においても、顔料分散状態が安定に得られる水性顔料分散体を提供することにある。
【解決手段】
上記課題は、表面が樹脂により被覆されてなる顔料(A)であって、前記樹脂が、α-オレフィンユニットを直鎖に含む共重合物であって、顔料(A)の前記樹脂吸着量が、被覆されていない顔料(B)に対し10質量%以上50質量%以下であることを特徴とする顔料(A)、及び該顔料(A)を用いた顔料水性分散体によって解決される。
【選択図】なし