(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0014】
本明細書中において、「コンデンサ」なる表現については、「コンデンサ」、「コンデンサ素子」、及び「フィルムコンデンサ」という概念を含む。
【0015】
<1.コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルム>
以下、本発明の一実施形態に係るコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムについて説明する。なお、以下では、コンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムについて説明するが、本発明に係る二軸延伸ポリプロピレンフィルムはコンデンサ用に限定されない。
本実施形態に係るコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、下記(a)及び(b):
(a)105℃で200時間処理後の、広角X線回折法により測定したα晶(040)面反射ピークの半価幅からScherrerの式により求めた結晶子サイズS
aが、12.9nm以下であること、及び
(b)105℃で200時間処理後の、光学的複屈折測定により求めた厚さ方向に対する複屈折値ΔNyz及びΔNxzの値から算出される面配向係数ΔP
a(ただし、ΔP
a=(ΔNyz+ΔNxz)/2)が、0.013以上であること
を満たす、ポリプロピレン樹脂を含むコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムである。以下、これについて詳細に説明する。
【0016】
なお、本実施形態のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムは微孔性フィルムではないので、多数の空孔を有していない。
【0017】
<1−1.結晶子サイズ>
本明細書において、ポリプロピレンフィルムの「結晶子サイズ」とは、広角X線回折法(XRD法)を用いて測定される、ポリプロピレンフィルムのα晶(040)面の回折反射ピークを使用して、後述するScherrerの式を用いて求められる結晶子サイズをいう。結晶子サイズが、小さいほど、漏れ電流が小さくなり、ジュール発熱による構造破壊が発生し難くなるため、耐熱性、耐電圧性及び長期間にわたる耐熱性及び耐電圧性が好ましく向上する。しかし、機械的強度等の観点及び高分子鎖のラメラ(折り畳み結晶)厚さを考慮すると、結晶子サイズの下限値は、通常、10nm前後、好ましくは11nmと考えられる。
【0018】
本実施形態に係るポリプロピレンフィルムの「結晶子サイズ」は、具体的には、以下のようにして求める。まず、二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよびその金属化フィルムの広角X線回折測定を行い、得られたα晶(040)面の回折反射ピークの半価幅を求める。次に、下記数式(1)に示すScherrerの式を用いて、結晶子サイズを計算する。
【0019】
数式(1): D=K×λ/(β×Cosθ)
[ここで、Dは結晶子サイズ(nm)、Kは定数(形状因子)、λは使用X線の波長(nm)、βはα晶(040)面の回折反射ピークの半価幅、θはα晶(040)面の回折ブラッグ角である。]
【0020】
本実施形態では、α晶(040)面の回折反射ピークを測定するために、具体的には、リガク社製のディストップX線回折装置MiniFlex300(商品名)を使用する。出力30kV、10mAで発生させたX線を用いる。受光モノクローメーターで単色化したCuKα線(波長0.15418nm)をスリットで平行化し、測定フィルムに照射する。回折強度は、シンチュレーションカウンターを用い、ゴニオメーターを用いて2θ/θ連動走査して測定する。装置に標準で付属されている統合粉末X線解析ソフトウェアPDXLを用いて、得られたデータを利用して、α晶(040)面の回折反射ピークの半価幅を求める。
【0021】
上述の測定によって、得られた回折反射ピークのθ及び半価幅を利用し、(1)式のScherrerの式を用いて、結晶子サイズを求めることができる。本実施形態では、形状因子定数K=0.94を用い、λ=0.15418nmである。
【0022】
一般に、結晶子サイズは、キャスト原反を得る際の冷却条件及び延伸条件等によって制御することが出来る。キャスト温度が低いほど、結晶子サイズは小さくなる傾向にあり、延伸倍率が高いほど、結晶子サイズは小さくなる。
【0023】
本実施形態のポリプロピレンフィルムは、105℃で200時間処理後(より具体的には、105℃で200時間静置し、次に、室温(0〜30℃)にて1時間静置後)の結晶子サイズ(本明細書において、「結晶子サイズS
a」又は「S
a」と示すこともある。)が12.9nm以下であることを満たす。この条件と、後述の面配向係数ΔP
aの両方を充足することによって、高温且つ高電圧下であっても、特に高温高電圧下で長期間使用されても、絶縁破壊をより低減することができる。105℃で200時間処理後の結晶子サイズS
aが上記の範囲の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用すると、高温下においても、電流は結晶内を通過することがないので、その形態学的効果によって漏れ電流が小さくなる。その結果、後述の面配向係数ΔP
aによる効果と相まって、ジュール発熱による構造破壊の発生が抑制されるため、高温且つ高電圧下であっても、特に高温高電圧下で長期間使用されても、絶縁破壊をより低減することができる。
【0024】
本実施形態のポリプロピレンフィルムの、上記結晶子サイズS
aを求めるための熱処理(105℃で200時間処理)の前に測定された結晶子サイズ(本明細書において、「結晶子サイズS
b」又は「S
b」と示すこともある。)は、限定的ではないが、高温且つ高電圧下における絶縁破壊をより低減できるという観点から、好ましくは11nm以上12.5nm以下であり、より好ましくは11.3nm以上12nm以下である。なお、本明細書において、結晶子サイズS
a及びS
bは、室温(0〜30℃)下で測定した値である。
【0025】
本実施形態のポリプロピレンフィルムの上記結晶子サイズS
aは、高温且つ高電圧下における絶縁破壊をより低減できるという観点から、好ましくは11.5nm以上、より好ましくは12nm以上、さらに好ましくは12.4nm以上である。
【0026】
本実施形態のポリプロピレンフィルムは、高温且つ高電圧下における絶縁破壊をより低減できるという観点から、105℃で200時間処理前の結晶子サイズS
bに対する、結晶子サイズS
aの比率(S
a/S
b)が、1以上1.125以下であることを満たすことが好ましい。この結晶子サイズS
aと結晶子サイズS
bの比率は、より具体的には、結晶子サイズS
aを、該結晶子サイズS
aを求めるための熱処理(105℃で200時間処理)の前に測定(より具体的には、室温(0〜30℃)下で測定)された結晶子サイズS
bで除して得られる値である。この結晶子サイズS
aと結晶子サイズS
bの比率(S
a/S
b)は、高温且つ高電圧下における絶縁破壊をより低減できるという観点から、例えばより好ましくは1.05以上1.12以下であり、さらに好ましくは1.07以上1.115以下である。S
a/S
bは結晶子サイズの温度依存性を示し、上記各好ましい範囲(例:1以上1.125以下等)は温度依存性が低いことを意味する。つまり、温度依存性が低い場合、高温高電圧の環境下でコンデンサとして長期間使用された際に熱的要因で引き起こされる結晶子サイズの増大が抑制されるので、漏れ電流が小さくジュール発熱による構造破壊がさらに抑制される。
【0027】
<1−2.面配向係数ΔP>
本明細書において、「面配向係数ΔP」とは、光学的複屈折測定により求めたポリプロピレンフィルムの厚さ方向に対する複屈折値ΔNyz及びΔNxzの値から算出される面配向係数ΔP(ただし、ΔP=(ΔNyz+ΔNxz)/2)をいう。
【0028】
本明細書において、ポリプロピレンフィルムの厚さ方向に対する「複屈折値ΔNyz」とは、光学的複屈折測定により求められる厚さ方向に対する複屈折値ΔNyzをいう。より具体的には、フィルムの面内方向の主軸をx軸及びy軸、また、フィルムの厚さ方向(面内方向に対する法線方向)をz軸とし、面内方向のうち、屈折率のより高い方向の遅相軸をx軸とすると、y軸方向の三次元屈折率からz軸方向の三次元屈折率を差し引いた値が、複屈折値ΔNyzとなる。
【0029】
また、本明細書において、ポリプロピレンフィルムの厚さ方向に対する「複屈折値ΔNxz」とは、光学的複屈折測定により求められる厚さ方向に対する複屈折値ΔNxzをいい、より具体的には、x軸(遅相軸)方向の三次元屈折率からz軸方向の三次元屈折率を差し引いた値が、複屈折値ΔNxzとなる。
【0030】
フィルムの配向の強度の指標として、複屈折値ΔNyz及び/又はΔNxzの値を用いることができる。フィルムの配向強度が強い場合、面内屈折率である、y軸方向の三次元屈折率及び/又はx軸方向の三次元屈折率が高くなり、厚さ方向の屈折率であるz軸方向の三次元屈折率が低くなるので、複屈折値ΔNyz及び/又はΔNxzの値が大きくなる。
【0031】
本実施形態では、ポリプロピレンフィルムの厚さ方向に対する「複屈折値ΔNyz」を測定するために、具体的には、大塚電子株式会社製、位相差測定装置 RE−100を用いる。レタデーション(位相差)の測定を傾斜法を用いて行う。より具体的には、フィルムの面内方向の主軸をx軸及びy軸、また、フィルムの厚さ方向(面内方向に対する法線方向)をz軸とし、面内方向のうち、屈折率のより高い方向の遅相軸をx軸とする。x軸を傾斜軸として、0°〜50°の範囲でz軸に対して10°づつ傾斜させたときの各レタデーション値を求める。得られたレタデーション値から、非特許文献「粟屋裕、高分子素材の偏光顕微鏡入門,105〜120頁 、2001年」に記載の方法を用いて、厚さ方向(z軸方向)に対するy軸方向の複屈折ΔNyzを計算する。まず、各傾斜角φに対し、測定されたレタデーション値Rを、傾斜補正が施された厚さdで割ったR/dを求める。φ=10°、20°、30°、40°、50°のそれぞれのR/dについて、φ=0°のR/dとの差を求め、それらをさらにsin2r(r:屈折角)で割ったものを、それぞれのφにおける複屈折ΔNzyとし、正負の符号を逆にして複屈折値ΔNyzとする。φ=20°、30°、40°、50°におけるΔNyzの平均値として、複屈折値ΔNyzを算出する。なお、例えば、逐次延伸法において、MD方向(流れ方向)の延伸倍率よりも、TD方向(幅方向)の延伸倍率が高い場合、TD方向が遅相軸(x軸)となり、MD方向がy軸となる。また、ポリプロピレンについての、各傾斜角における屈折角rの値は、前記文献の109頁に記載されているものを用いる。
【0032】
また、本実施形態では、ポリプロピレンフィルムの厚さ方向に対する「複屈折値ΔNxz」は、傾斜角φ=0°で測定された上記レタデーション値Rを、厚さdで割った値より、前述で求めたΔNzyを除算し、複屈折値ΔNxzを算出する。
【0033】
ポリプロピレンフィルムの面方向(x軸方向及び/又はy軸方向)に配向を与えると、厚さ方向の屈折率Nzが変化して、複屈折値ΔNyz及び/又はΔNxzが大きくなり、耐電圧性が向上する(絶縁破壊電圧が高くなる)。これは、以下の理由によると考えられる。ポリプロピレンの分子鎖が面方向に配向すると、厚さ方向の屈折率Nzは低くなる。フィルム厚さ方向の電気伝導性は分子鎖間での伝達となるので低くなる。従って、ポリプロピレン分子鎖が面方向に配向した(複屈折値ΔNyz及び/又はΔNxzが大きい)場合、フィルム厚さ方向の電気伝導性は分子鎖間での伝達となりえるので、ポリプロピレンの分子鎖が面方向に配向していない(複屈折値ΔNyz及び/又はΔNxzが小さい)場合と比較して、耐電圧性が向上すると考えられる。
【0034】
一般的に、製膜条件(延伸倍率調整など)を変えることで、ポリプロピレン分子鎖の配向を変更して、「複屈折値ΔNyz」及び/又は「複屈折値ΔNxz」を制御することができる。また、ポリプロピレン樹脂の特性(分子量、重合度、分子量分布等)を変えることで、「複屈折値ΔNyz」及び/又は「複屈折値ΔNxz」を制御することもできる。
【0035】
「面配向係数ΔP」は、複屈折値ΔNyz及びΔNxzを、式:ΔP=(ΔNyz+ΔNxz)/2に代入して求める。本発明では、複屈折値ΔNyzで表されるy軸方向の配向強度のみならず、複屈折値ΔNxzで表されるx軸方向の配向強度をも考慮に入れて算出される「面配向係数ΔP」に着目した点に、1つの特徴を有する。面配向係数ΔPは、例えば複屈折値ΔNyzが非常に大きくとも、複屈折値ΔNxzが極端に小さければ、比較的小さな値となる。ポリプロピレン分枝鎖のある部位の断面の長軸と短軸の長さの差が大きい場合を想定すると、複屈折値の一方が極端に小さいことにより該長軸方向がフィルム厚み方向に近づく(或いは一致する)こととなり得、この場合はフィルム厚み方向の電気伝導性が高まり、耐電圧性が低下すると考えられる。よって、複屈折値ΔNyzと複屈折値ΔNxzが両方とも極端に低い値ではなく、それにより面配向係数ΔPが一定以上であることにより、耐電圧性は高くなると考えられる。
【0036】
本実施形態のポリプロピレンフィルムは、105℃で200時間処理後(より具体的には、105℃で200時間静置し、次に、室温(0〜30℃)にて1時間静置後)の面配向係数(本明細書において、「面配向係数ΔP
a」又は「ΔP
a」と示すこともある。)が0.013以上であることを満たす。この条件と、前述の結晶子サイズS
aの両方を充足することによって、高温且つ高電圧下であっても、特に高温高電圧下で長期間使用されても、絶縁破壊をより低減することができる。105℃で200時間処理後の面配向係数ΔP
aが上記の範囲の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを使用すると、高温下においても、電流は、面内方向へ配向した樹脂分子鎖に沿って主に流れ、フィルムの厚さ方向(面内方向に対する法線方向)へは流れ難くなるので、結果として漏れ電流が小さくなる。その結果、前述の結晶子サイズS
aによる効果と相まって、ジュール発熱による構造破壊の発生が抑制されるため、高温且つ高電圧下であっても、特に高温高電圧下で長期間使用されても、絶縁破壊をより低減することができる。
【0037】
本実施形態のポリプロピレンフィルムの、上記面配向係数ΔP
aを求めるための熱処理(105℃で200時間処理)の前に測定された面配向係数(本明細書において、「面配向係数ΔP
b」又は「ΔP
b」と示すこともある。)は、限定的ではないが、高温且つ高電圧下における絶縁破壊をより低減できるという観点から、好ましくは0.011以上0.014以下、より好ましくは0.0113以上0.0138以下であり、さらに好ましくは0.0115以上0.013以下である。なお、本明細書において、面配向係数ΔP
a及びΔP
bは、室温(0〜30℃)下で測定した値である。
【0038】
本実施形態のポリプロピレンフィルムの、上記面配向係数ΔP
aを求めるための熱処理(105℃で200時間処理)の前に測定された複屈折値ΔNyzは、限定的ではないが、高温且つ高電圧下における絶縁破壊をより低減できるという観点から、好ましくは0.0025〜0.011である。なお、本明細書において、複屈折値ΔNyzは、室温(0〜30℃)下で測定した値である。
【0039】
本実施形態のポリプロピレンフィルムの、上記面配向係数ΔP
aを求めるための熱処理(105℃で200時間処理)の前に測定された複屈折値ΔNxzは、限定的ではないが、高温且つ高電圧下における絶縁破壊をより低減できるという観点から、好ましくは0.0135〜0.022である。なお、本明細書において、複屈折値ΔNxzは、室温(0〜30℃)下で測定した値である。
【0040】
本実施形態のポリプロピレンフィルムの上記面配向係数ΔP
aは、高温且つ高電圧下における絶縁破壊をより低減できるという観点から、好ましくは0.013以上0.016以下、より好ましくは0.013以上0.0155以下、さらに好ましくは0.0131以上0.015以下、さらに一層好ましくは0.0132以上0.0145以下であり、特に好ましくは0.0133以上0.014以下である。
【0041】
本実施形態のポリプロピレンフィルムの、105℃で200時間処理後(より具体的には、105℃で200時間静置し、次に、室温(0〜30℃)にて1時間静置後)の複屈折値ΔNyzは、限定的ではないが、高温且つ高電圧下における絶縁破壊をより低減できるという観点から、好ましくは0.0046〜0.015である。
【0042】
本実施形態のポリプロピレンフィルムの、105℃で200時間処理後(より具体的には、105℃で200時間静置し、次に、室温(0〜30℃)にて1時間静置後)の複屈折値ΔNxzは、限定的ではないが、高温且つ高電圧下における絶縁破壊をより低減できるという観点から、好ましくは0.0156〜0.033である。
【0043】
本実施形態のポリプロピレンフィルムは、高温且つ高電圧下における絶縁破壊をより低減できるという観点から、105℃で200時間処理前の面配向係数ΔP
bに対する、面配向係数ΔP
aの比率(ΔP
a/ΔP
b)が、1.085以上であることを満たすことが好ましい。この面配向係数ΔP
aと面配向係数ΔP
bの比率は、より具体的には、面配向係数ΔP
aを、該面配向係数ΔP
aを求めるための熱処理(105℃で200時間処理)の前に測定(より具体的には、室温(0〜30℃)下で測定)された面配向係数ΔP
bで除して得られる値である。この面配向係数ΔP
aと面配向係数ΔP
bの比率(ΔP
a/ΔP
b)は、高温且つ高電圧下における絶縁破壊をより低減できるという観点から、例えばより好ましくは1.085以上1.5以下であり、さらに好ましくは1.09以上1.2以下であり、特に好ましくは1.1以上1.16以下であり、特段好ましくは1.105以上1.14以下である。ΔP
a/ΔP
bは面配向係数の温度依存性を示し、上記各好ましい範囲(例:1.085以上、1.085以上1.5以下等)は温度依存性が低いことを意味する。つまり、温度依存性が低い場合、高温高電圧の環境下でコンデンサとして長期間使用された際に、フィルム内の樹脂分子鎖の配向が変化することによる漏れ電流やジュール発熱による構造破壊がさらに抑制されるので好ましい。
【0044】
<1−3.その他のフィルム物性>
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さは、下限に関して、1μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましく、1.8μm以上がさらに好ましく、2μm以上が特に好ましい。また、本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さは、上限に関して、6μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましく、3.5μm以下がさらに好ましく、3μm未満がさらに一層好ましく、2.9μm以下が特に好ましい。本実施形態のコンデンサ用二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さは、マイクロメーター(JIS−B7502)を用いて、JIS−C2330に準拠して測定される値をいう。二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚さが6μm以下であると、当該二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いて得られるコンデンサの小型化かつ軽量化が容易となる。
【0045】
本実施形態のポリプロピレンフィルムの引張り強さは、MD方向の引張り強さ(T
MD)とTD方向の引張り強さ(T
TD)の合計(T
MD+T
TD)の下限に関して、500MPa以上であることが好ましく、510MPa以上がより好ましい。ここで、本実施形態のポリプロピレンフィルムの引張り強さは、実施例記載の測定方法により得られる値である。本実施形態のポリプロピレンフィルムの引張り強さの上記合計(T
MD+T
TD)の上限については限定的ではないが、例えは700MPa以下である。測定時温度である23℃(JIS−C2151にて記載)でのポリプロピレンフィルムのMD方向の引張り強さとTD方向の引張り強さとの合計が500MPa以上であると、高温下における引張り強さも比較的大きくなる。従って、高温下で長期間使用したとしても、亀裂等が生じることを抑制できる。その結果、高温下における長期耐電圧性を好適に向上させることができる。
本実施形態のポリプロピレンフィルムの引張り強さの、TD方向の引張り強さとMD方向の引張り強さの比率(T
TD/T
MD)は、1.80以下が好ましく、1.70以下がより好ましく、1.65以下がさらに好ましい。T
TD/T
MDが上記各好ましい範囲であると、直交二方向に適度な引張り強さを有することによりコンデンサ素子作製時の成形不良が抑制されるため、フィルム層間の空隙が維持しやすい。その結果、高温下における長期耐電圧性を好適に向上させることができる。T
TD/T
MDは、下限に関しては、1.00以上が好ましく、1.05以上がより好ましく、1.10以上がさらに好ましい。
【0046】
なお、本実施形態のポリプロピレンフィルムは、実施例からも分かるように、延伸不良占有率、及び、厚み均一性についても良好なものとすることができる。
【0047】
<1−4.樹脂>
本実施形態のポリプロピレンフィルムは樹脂としてポリプロピレン樹脂を含む。好ましくは、本実施形態のポリプロピレンフィルムの主成分がポリプロピレン樹脂であり、より好ましくはフィルムを構成する樹脂成分がポリプロピレン樹脂である。なお、上記「主成分」とは、ポリプロピレンフィルム中に固形分換算で50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、よりさらに好ましくは99質量%以上含むことをいう。
【0048】
ポリプロピレン樹脂は、特に制限されず、該フィルムを形成するために用いられ得るものを広く使用することができる。ポリプロピレン樹脂としては、例えば、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン等のプロピレンホモポリマー; プロピレンとエチレンとのコポリマー; 長鎖分岐ポリプロピレン; 超高分子量ポリプロピレン等が挙げられ、好ましくはプロピレンホモポリマーが挙げられ、中でも耐熱性の観点からより好ましくはアイソタクチックポリプロピレン挙げられ、さらに好ましくはオレフィン重合用触媒の存在下でポリプロピレンを単独重合して得られるアイソタクチックポリプロピレンが挙げられる。ポリプロピレン樹脂は、1種単独であってもよいし、また、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0049】
ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、25万以上45万以下であることが好ましい。このようなポリプロピレン樹脂を用いると、二軸延伸時に適度な樹脂流動性が得られ、キャスト原反シートの厚みの制御が容易となる。例えば小型かつ高容量型のコンデンサ用に適した、極薄化された二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることが容易となるため好ましい。また、キャスト原反シート及び二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚みのムラが発生し難くなるため好ましい。ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの厚みの均一性、力学特性、熱−機械特性等の観点から、27万以上であることがより好ましく、29万以上であることがさらに好ましい。ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ポリプロピレン樹脂の流動性及び極薄化された二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得る際の延伸性の観点から、40万以下であることがより好ましい。
【0050】
ポリプロピレン樹脂の、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比として算出される分子量分布(Mw/Mn)は、7以上12以下であることが好ましい。また分子量分布(Mw/Mn)は、7.1以上であることがより好ましく、7.5以上であることがより好ましく、8以上であることがさらに好ましい。さらに分子量分布(Mw/Mn)は、11以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。このようなポリプロピレン樹脂を用いると、二軸延伸時に適度な樹脂流動性が得られ、厚みムラのない極薄化された二軸延伸プロピレンフィルムを得ることが容易となるため好ましい。また、このようなポリプロピレン樹脂は、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの耐電圧性の観点からも好ましい。さらに、このようなポリプロピレン樹脂を用いることにより、本実施形態の所望の物性(結晶子サイズS
aが12.9nm以下であり、且つ面配向係数ΔP
aが0.013以上である)をより容易に得ることができる。
【0051】
ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、Z平均分子量及び分子量分布(Mw/Mn及びMz/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)装置を用いて測定することができる。より具体的には、例えば、東ソー株式会社製、示差屈折系(RI)内蔵型高温GPC測定機のHLC−8121GPC−HT(商品名)を使用して測定することができる。GPCカラムとして、東ソー株式会社製の3本のTSKgel GMHHR‐H(20)HTを連結して使用する。カラム温度を140℃に設定して、溶離液としてトリクロロベンゼンを1.0ml/10分の流速で流して、MwとMnの測定値を得た。東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用いてその分子量Mに関する検量線を作成して、測定値をポリスチレン値に換算して、Mw、Mn及びMzを得る。更に、標準ポリスチレンの分子量Mの底10の対数を、対数分子量(「Log(M)」)という。
【0052】
ポリプロピレン樹脂は、分子量微分分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値から、Log(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差(D
M)が、Log(M)=6.0のときの微分分布値を100%(基準)とすると、好ましくは−1%以上18%以下、より好ましくは0%以上17%以下、さらに好ましくは2%以上17%以下、特に好ましくは3%以上16%以下である。
【0053】
「対数分子量」とは、分子量(M)の対数(Log(M))であり、「対数分子量が4.5のときの微分分布値から対数分子量が6のときの微分分布値を引いた差(D
M)」とは、低分子量側の分子量1万から10万の成分(以下、「低分子量成分」ともいう)の代表的な分布値として、対数分子量Log(M)=4.5の成分の量が、高分子量側の分子量100万前後の成分(以下、「高分子量成分」ともいう)の代表的な分布値として、Log(M)=6.0前後の成分の量よりもどれだけ多いかの指標となる値である。差(D
M)の値が「正」であることは、低分子量成分の量が高分子量成分の量よりも多いことを意味する。
【0054】
このような微分分布値は、GPCを用いて、次のようにして得ることができる。GPCの示差屈折(RI)検出計によって得られる、時間に対する強度を示す曲線(一般には、「溶出曲線」ともいう)を使用する。標準ポリスチレンを用いて得た検量線を使用して、時間軸を対数分子量(Log(M))に変換することで、溶出曲線をLog(M)に対する強度を示す曲線に変換する。RI検出強度は、成分濃度と比例関係にあるので、強度を示す曲線の全面積を100%とすると、対数分子量Log(M)に対する積分分布曲線を得ることが出来る。微分分布曲線は、この積分分布曲線をLog(M)で、微分することによって得る。したがって、「微分分布」とは、濃度分率の分子量に対する微分分布を意味する。この曲線から、特定のLog(M)のときの微分分布値を読み、本発明に係る関係を得ることが出来る。
【0055】
ポリプロピレン樹脂の、230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)は、特に限定されないが、得られるフィルムの延伸性等の観点から7g/10分以下であることが好ましく、6g/10分以下であることがより好ましい。また、本実施形態のポリプロピレンフィルムの厚みの精度を高める観点から0.3g/10分以上であることが好ましく、0.5g/10分以上であることがより好ましい。なお、前記MFRは、JIS K 7210−1999に準拠して測定することができる。
【0056】
ポリプロピレン樹脂のメソペンタッド分率([mmmm])は、下限に関して、94%以上が好ましく、95%以上がより好ましく、96%を超えることがさらに好ましい。また、ポリプロピレン樹脂の上記メソペンタッド分率は、上限に関して、98.5%以下が好ましく、98.4%以下がより好ましく、98%以下がさらに好ましい。ポリプロピレン樹脂の上記メソペンタッド分率の上限及び下限について、94%以上99%以下であることが好ましく、95%以上98.5%以下であることがより好ましい。このようなポリプロピレン樹脂を用いることで、適度に高い立体規則性によって樹脂の結晶性が適度に向上し、初期耐電圧性及び長期間に渡る耐電圧性が向上する。一方で、キャスト原反シートを成形する際の適度な固化(結晶化)速度によって所望の延伸性を得ることができる。
【0057】
メソペンタッド分率([mmmm])は、高温核磁気共鳴(NMR)測定によって得ることができる立体規則性の指標である。具体的には、例えば、日本電子株式会社製、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT−NMR)、JNM−ECP500を利用して測定することができる。観測核は、
13C(125MHz)であり、測定温度は、135℃、ポリプロピレン樹脂を溶解する溶媒にはオルト−ジクロロベンゼン(ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(混合比=4/1)を用いることができる。高温NMRによる測定方法は、例えば、「日本分析化学・高分子分析研究懇談会編、新版 高分子分析ハンドブック、紀伊国屋書店、1995年、第610頁」に記載の方法を参照して行うことができる。
【0058】
測定モードは、シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅は、9.1μsec(45°パルス)、パルス間隔5.5sec、積算回数4500回、シフト基準は、CH
3(mmmm)=21.7ppmとすることができる。
【0059】
立体規則性度を表すペンタッド分率は、同方向並びの連子「メソ(m)」と異方向の並びの連子「ラセモ(r)」の5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmm及びmrrm等)に由来する各シグナルの強度の積分値に基づいて百分率で計算される。mmmm及びmrrm等に由来する各シグナルは、例えば、「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」等を参照して帰属することができる。
【0060】
ポリピロピレン樹脂は、ポリプロピレン樹脂Aを含むことが好ましい。ポリプロピレン樹脂Aの重量平均分子量は、25万以上45万以下であり、25万以上40万以下であることが好ましく、25万以上34万以下であることがさらに好ましい。
【0061】
ポリプロピレン樹脂Aの重量平均分子量が25万以上45万以下であるので、樹脂流動性が適度であり、キャスト原反シートの厚さの制御が容易であり、薄い延伸フィルムを作製することが容易になり得る。更に、シートおよびフィルムの厚みにムラを発生し難くなり、シートが適度な延伸性を有し得るので、好ましい。
【0062】
ポリプロピレン樹脂Aは、7以上12以下の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn))を有することが好ましい。ポリプロピレン樹脂AのMw/Mnは、7.1以上が好ましく、7.5以上がより好ましく、8以上がさらに好ましく、8.5以上がさらに一層好ましく、8.8以上が特に好ましい。また、ポリプロピレン樹脂AのMw/Mnは、11.5以下が好ましく、11以下がより好ましく、10.5以下がさらに好ましく、10以下が特に好ましい。また、ポリプロピレン樹脂AのMw/Mnの上限及び下限の組み合わせについては、7.1以上12以下の(Mw/Mn)を有することが好ましく、7.5以上11以下の(Mw/Mn)を有することがより好ましく、8以上10.5以下の(Mw/Mn)を有することがさらに好ましく、8.5以上10以下の(Mw/Mn)を有することが特に好ましい。
【0063】
さらに、ポリプロピレン樹脂Aは、20以上70以下の分子量分布(Z平均分子量/数平均分子量(Mz/Mn))を有し、25以上60以下の分子量分布(Mz/Mn)を有することが好ましく、25以上50以下の分子量分布(Mz/Mn)を有することがより好ましい。
【0064】
ポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレン樹脂全体を100質量%とすると、ポリプロピレン樹脂Aを、55質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましい。また、同様に、ポリプロピレン樹脂Aを、90質量%以下含むことが好ましく、85質量%以下含むことがより好ましく、80質量%以下含むことがさらに好ましい。また、同様に、ポリプロピレン樹脂Aの含有量の上限及び下限の組み合わせについては、55質量%以上、90質量%以下含むことが好ましく、60質量%以上、85質量%以下含むことがより好ましく、60質量%以上80質量%以下含むことが特に好ましい。
【0065】
上述のポリプロピレン樹脂Aは、分子量微分分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値から、Log(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差(D
M)が、Log(M)=6.0のときの微分分布値を100%(基準)とすると、8%以上が好ましく、9%以上がより好ましく、10%以上がさらに好ましい。また、ポリプロピレン樹脂Aの前記差D
Mは、18%以下が好ましく、17%以下がより好ましく、16%以下がさらに好ましい。また、ポリプロピレン樹脂Aの前記差D
Mの上限及び下限の組み合わせについては、8%以上18%以下が好ましく、10%以上17%以下であることがより好ましく、く、12%以上16%以下であることがさらに好ましい。
【0066】
ポリプロピレン樹脂Aの有するMwの値(25万〜45万)より、低分子量側の分子量1万から10万の成分(以下、「低分子量成分」ともいう)の代表的な分布値として、対数分子量Log(M)=4.5の成分を、高分子量側の分子量100万前後の成分(以下、「高分子量成分」ともいう)の代表的な分布値として、Log(M)=6.0前後の成分と比較すると、低分子量成分の方が8%以上18%以下の割合で多いことが理解される。
【0067】
つまり、分子量分布Mw/Mnが7以上12以下であるといっても単に分子量分布幅の広さを表しているに過ぎず、その中の高分子量成分、低分子量成分の量的な関係までは分からない。そこで、本実施形態に係るポリプロピレン樹脂Aは、広い分子量分布を有すると同時に、分子量1万から10万の成分を、分子量100万の成分と比較して、8%以上18%以下の割合で多く含むことが好ましい。
【0068】
ポリプロピレン樹脂Aは、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値から、Log(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差(D
M)が、Log(M)=6.0のときの微分分布値を100%(基準)とすると、8%以上18%以下であるので、低分子量成分を、高分子量成分と比較すると、8%以上18%以下の割合で多く含むこととなるので、結晶子サイズがより小さくなり、所望の配向性及び粗化された表面を得やすくなり、好ましい。
【0069】
ポリプロピレン樹脂Aは、メソペンタッド分率([mmmm])が、94%以上98%未満であり、94%以上97%以下であることが好ましく、94%以上96%以下であることがさらに好ましく、95%以上96%以下が特に好ましい。
【0070】
メソペンタッド分率[mmmm]が、94%以上98%未満である場合、適度に高い立体規則性により、樹脂の結晶性が適度に向上し、初期耐電圧性及び長期間に渡る耐電圧性が適度に向上する傾向にある。一方、キャスト原反シート成形の際の固化(結晶化)の速度が適当で有り、適度の延伸性を有し得る。
【0071】
ポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレン樹脂Aの他に、ポリプロピレン樹脂Bを含むことができる。
【0072】
ポリプロピレン樹脂Bは、Mwが30万以上40万以下;Mw/Mnが7以上9以下;及び分子量分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値からLog(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差(D
M)が、Log(M)=6.0のときの微分分布値を100%(基準)とすると、−1%以上8%未満が好ましい。
【0073】
ポリプロピレン樹脂BのMwは、30万以上40万以下であり、33万以上38万以下であることがより好ましく、34万超え38万以下であることがさらに好ましい。
【0074】
ポリプロピレン樹脂BのMw/Mnは、7以上が好ましく、7.1以上がより好ましく、7.5以上がさらに好ましい。また、ポリプロピレン樹脂BのMw/Mnは、8.8未満が好ましく、8.7以下がより好ましく、8.5未満がさらに好ましく、8.4以下が特に好ましい。また、ポリプロピレン樹脂BのMw/Mnの上限及び下限の組み合わせについては、7以上9以下が好ましく、7.1以上9以下がより好ましく、7.1以上8.5未満であることがさらに好ましく、7.1以上8.4以下がさらに一層好ましく、7.5以上8.4以下が特に好ましい。
【0075】
ポリプロピレン樹脂Bは、分子量微分分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値から、Log(M)=6のときの微分分布値を引いた差(D
M)が、Log(M)=6のときの微分分布値を100%(基準)とすると、−1%以上が好ましく、0%以上がより好ましく、1%以上がさらに好ましく、3%以上が特に好ましい。また、ポリプロピレン樹脂Bの前記差D
Mに関して、9%以下が好ましく、8.5%以下がより好ましく、8%未満がさらに好ましく、7.5%以下が特に好ましい。また、ポリプロピレン樹脂Bの前記差D
Mの上限及び下限の組み合わせについては、1%以上9%以下が好ましく、3%以上9%以下であることがより好ましく、5%以上8.5%以下であることがさらに好ましい。
【0076】
ポリプロピレン樹脂Bは、20以上70以下の分子量分布(Z平均分子量/数平均分子量(Mz/Mn))を有することが好ましく、25以上60以下の分子量分布(Mz/Mn)を有することがより好ましく、25以上50以下の分子量分布(Mz/Mn)を有することが特に好ましい。
【0077】
ポリプロピレン樹脂Bは、メソペンタッド分率([mmmm])が、94%以上98%以下であることが好ましく、95%以上98%以下あることがより好ましく、96%超え98%未満であることがさらに好ましく、96.5%以上97%以下が特に好ましい。
【0078】
ポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレン樹脂を100質量%とすると、ポリプロピレン樹脂Bを、10質量%以上45質量%以下含むことが好ましく、15質量%以上40質量%以下含むことがより好ましく、20質量%以上40質量%以下含むことが特に好ましい。
【0079】
ポリプロピレン樹脂が、ポリプロピレン樹脂A及びBを含む場合、ポリプロピレン樹脂の合計を基準(100質量%)として、55質量%以上90質量%以下のポリプロピレン樹脂Aと、10質量%以上45質量%以下のポリプロピレン樹脂Bを含むことが好ましく、60質量%以上85質量%以下のポリプロピレン樹脂Aと、15質量%以上40質量%以下のポリプロピレン樹脂Bを含むことがより好ましく、60質量%以上80質量%以下のポリプロピレン樹脂Aと、20質量%以上40質量%以下のポリプロピレン樹脂Bを含むことが特に好ましい。
【0080】
ポリプロピレン樹脂が、ポリプロピレン樹脂A及びBを含む場合、ポリプロピレンAとBの重量平均分子量及びMw/Mnと微分分布値の差(D
M)が異なる、つまり、分子量分布の構成に相違があることによって、混合し成形して得られたポリプロピレンフィルムは、高分子量成分と低分子量成分の量的な関係が微妙に異なるため、ある種の微細混合(相分離)状態をとり、結晶サイズが微細化しやすく好ましいと考えられる。さらには、同じ延伸倍率であっても高配向化し易い傾向に有り、表面も微細な粗化を得られやすく好ましいと考えられる。ポリプロピレン樹脂が、ポリプロピン樹脂Aとポリプロピレン樹脂Bを両方含む場合、上述のような理由で本発明は優れた効果を奏すると考えられるが、このような理由によって、本発明は何ら制限されることはない。
【0081】
本実施形態に係るポリプロピレン樹脂は、表面平滑化や耐熱性を向上させることなどを目的として、長鎖分岐ポリプロピレン(分岐型ポリプロピレン、以下「ポリプロピレン樹脂Cともいう」)を含むことができ、含むことが好ましい。
【0082】
本明細書において、ポリプロピレン樹脂Cとは、一般に「長鎖分岐ポリプロピレン」とよばれているポリプロピレンであって、長鎖の枝分かれを有し、本実施形態のポリプロピレンフィルムを得ることができる限り特に制限されることはない。そのようなポリプロピレン樹脂Cとして、具体的には、例えば、Basell社製のProfax PF-814、PF-611、PF-633及びBorealis社製のDaploy HMS-PP(WB130HMS、WB135HMS、及びWB140HMS等)などが、例示できる。
【0083】
ポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレン樹脂Cを、5質量%以下含むことができ、含むことが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下含むことがより好ましく、1質量%以上4質量%以下含むことが更に好ましく、1.5質量%以上2.5質量%以下含むことが特に好ましい。ポリプロピレン樹脂Cを含むことで、得られるフィルムの表面が適度に平滑化され、また、フィルムの融点が数℃向上し得るので、耐熱性も向上し得、好ましい。
【0084】
ポリプロピレン樹脂が、ポリプロピレン樹脂A〜Cを含む場合、ポリプロピレン樹脂の合計を基準(100質量%)として、55質量%以上90質量%以下のポリプロピレン樹脂A、10質量%以上45質量%以下のポリプロピレン樹脂B、5質量%以下のポリプロピレン樹脂Cを含むことが好ましく、55質量%以上89.5質量%以下のポリプロピレン樹脂A、10質量%以上44.5質量%以下のポリプロピレン樹脂B、0.5質量%以上5質量%以下のポリプロピレン樹脂Cを含むことがより好ましく、60質量%以上84質量%以下のポリプロピレン樹脂A、15質量%以上39質量%以下のポリプロピレン樹脂B、1質量%以上4質量%以下のポリプロピレン樹脂Cを含むことが特に好ましく、60質量%以上78.5質量%以下のポリプロピレン樹脂A、20質量%以上38.5質量%以下のポリプロピレン樹脂B、1.5質量%以上2.5質量%以下のポリプロピレン樹脂Cを含むことが特に好ましくい。
【0085】
本実施形態に係るポリプロピレン樹脂は、上記以外のポリプロピレン樹脂(以下「他のポリプロピレン樹脂」ともいう)を含むことができる。「他のポリプロピレン樹脂」とは、一般的にポリプロピレン樹脂とされる樹脂であって、本発明が目的とするポリプロピレンフィルムを得ることができる限り特に制限されることはない。本実施形態に係るポリプロピレン樹脂は、そのような他のポリプロピレン樹脂を、本発明のポリプロピレンフィルムに悪影響を与えない量で、含むことができる。
【0086】
本実施形態のポリプロピレンフィルムは、分子量分布(Mw/Mn)及び/又は差(D
M)が異なる2種類のポリプロピレン樹脂(ポリプロピレン樹脂X及びポリプロピレン樹脂Y)を含むことが好ましい。さらには、本実施形態のポリプロピレンフィルムを構成する樹脂が、前記分子量分布及び/又は差(D
M)が互いに異なる2種類又は3種類以上であることがさらに好ましい。特に、本実施形態のポリプロピレンフィルムを構成する樹脂が、前記分子量分布及び/又は差(D
M)が互いに異なる2種類であることが好ましい。ポリプロピレン樹脂Xは、上述のポリプロピレン樹脂Aであってもよいし、またポリプロピレン樹脂Yは、上述のポリプロピレン樹脂Bであってもよい。
これにより、本発明の所望の物性(結晶子サイズS
aが12.9nm以下であり、且つ面配向係数ΔP
aが0.013以上である)をより容易に得ることができる。
【0087】
ポリプロピレン樹脂Xの分子量分布(Mw/Mn)は、例えば8以上12以下、好ましくは8以上11以下、より好ましくは8以上10以下、さらに好ましくは8以上9.5以下である。
【0088】
ポリプロピレン樹脂Yの分子量分布(Mw/Mn)は、例えば7以上8以下、好ましくは7.5以上8以下である。
【0089】
ポリプロピレン樹脂Yの差(D
M)は、例えば6%以上9%未満、好ましくは7%以上8.5%以下である。
【0090】
ポリプロピレン樹脂Xの差(D
M)とポリプロピレン樹脂Yの差(D
M)との差分は、例えば2%以上6%以下、好ましくは2.5%以上5%以下、より好ましくは3%以上4.5%以下である。この観点から、ポリプロピレン樹脂Xの差(D
M)は、一例として2%以上6%未満、好ましくは2.5%以上5%以下、より好ましくは3%以上4%以下である。ポリプロピレン樹脂Xの差(D
M)の別の例は9%以上15%以下、好ましくは10%以上13%以下、より好ましくは10.5%以上12%以下である。
【0091】
本実施形態のポリプロピレンフィルムがポリプロピレン樹脂X及びポリプロピレン樹脂Yを含む場合、ポリプロピレン樹脂Xの含有量は、ポリプロピレン樹脂X及びポリプロピレン樹脂Yの合計100質量%に対して、例えば50質量%以上90質量%以下、好ましくは55質量%以上80質量%以下、より好ましくは60質量%以上70質量%以下であり、ポリプロピレン樹脂Yの含有量は、ポリプロピレン樹脂X及びポリプロピレン樹脂Yの合計100質量%に対して、例えば10質量%以上50質量%以下、好ましくは20質量%以上45質量%以下、より好ましくは30質量%以上40質量%以下である。
【0092】
本実施形態のポリプロピレンフィルムがポリプロピレン樹脂X及びポリプロピレン樹脂Yを含む場合、ポリプロピレン樹脂X及びポリプロピレン樹脂Yの合計含有量は、ポリプロピレン樹脂100質量%に対して、例えば70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0093】
本実施形態に係るポリプロピレン樹脂は、更にポリプロピレン樹脂以外の他の樹脂(以下「他の樹脂」ともいう)を含むことができる。「他の樹脂」とは、一般的に、樹脂とされるポリプロピレン樹脂以外の樹脂であって、本発明のポリプロピレンフィルムを得ることができる限り特に制限されることはない。他の樹脂には、例えば、ポリエチレン、ポリ(1−ブテン)、ポリイソブテン、ポリ(1−ペンテン)、ポリ(1−メチルペンテン)などのポリプロピレン以外の他のポリオレフィン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−ブテン共重合体などの、α−オレフィン同士の共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体などのビニル単量体−ジエン単量体ランダム共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン ブロック共重合体などのビニル単量体−ジエン単量体−ビニル単量体ランダム共重合体等が含まれる。本実施形態に係るポリプロピレン樹脂は、そのような他の樹脂を、本発明のポリプロピレンフィルムに悪影響を与えない量で、含むことができる。ポリプロピレン樹脂は、一般的には、ポリプロピレン樹脂100重量部に対して、他の樹脂を、好ましくは10重量部以下含んでよく、より好ましくは5重量部以下含んでよい。
【0094】
<1−5.添加剤>
本実施形態にポリプロピレンフィルムは、更に、添加剤を含むことができる。「添加剤」とは、一般的に、ポリプロピレン樹脂に使用される添加剤であって、本発明のポリプロピレンフィルムを得ることができる限り特に制限されることはない。添加剤には、例えば、酸化防止剤、塩素吸収剤や紫外線吸収剤等の必要な安定剤、滑剤、可塑剤、難燃化剤、帯電防止剤、着色剤等が含まれる。本実施形態に係るポリプロピレン樹脂は、そのような添加剤を、本実施形態のポリプロピレンフィルムに悪影響を与えない量で、含むことができる。
【0095】
「酸化防止剤」とは、一般に酸化防止剤と呼ばれ、ポリプロピレンに使用され、本発明のポリプロピレンフィルムを得ることができる限り、特に制限されることはない。酸化防止剤は、一般的に2種類の目的で使用される。一つの目的は、押出機内での熱劣化及び酸化劣化を抑制することであり、他の目的は、コンデンサフィルムとしての長期使用における劣化抑制及びコンデンサ性能向上に寄与することである。押出機内での熱劣化及び酸化劣化を抑制する酸化防止剤を「1次剤」ともいい、コンデンサ性能向上に寄与する酸化防止剤を、「2次剤」ともいう。
【0096】
これらの2つの目的に、2種類の酸化防止剤を用いてもよいし、2つの目的に1種類の酸化防止剤を使用してもよい。
【0097】
2種類の酸化防止剤を用いる場合、ポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレン樹脂を基準(100重量部)として、1次剤として、例えば、2,6−ジ−ターシャリー−ブチル−パラ−クレゾール(一般名称:BHT)を、1000ppm〜4000ppm程度含むことができる。この目的の酸化防止剤は、押出機内での成形工程にてほとんどが消費され、製膜成形後のフィルム中には、ほとんど残存しない(一般的には、残存量100ppmより少ない)。
【0098】
2次剤として、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を使用することができる。
【0099】
「カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤」とは、通常、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤とされ、本発明のポリプロピレンフィルムを得ることができる限り特に制限されることはない。
【0100】
カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−ターシャリー−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス245)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス259)、ペンタエリスルチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1010)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](商品名:イルガノックス1035)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名:イルガノックス1076)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−ターシャリー−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(商品名:イルガノックス1098)などが挙げられるが、高分子量であり、ポリプロピレンとの相溶性に富み、低揮発性かつ耐熱性に優れたペンタエリスルチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が、最も好ましい。
【0101】
ポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレン樹脂を基準(100重量部)として、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を、5000ppm(質量基準)以上7000ppm(質量基準)以下含むことが好ましく、5500ppm(質量基準)以上7000ppm(質量基準)以下含むことがより好ましい。
【0102】
押出機内で少なからず、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤も消費されるためである。
【0103】
ポリプロピレン樹脂が、1次剤を含まない場合、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤をより多く使用することができる。押出機内で、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤の消費量が増えるので、ポリプロピレン樹脂は、ポリプロピレン樹脂を基準(100重量部)として、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を、6000ppm(質量基準)以上8000ppm(質量基準)以下含むことが好ましい。
【0104】
本実施形態のポリプロピレンフィルムは、長期使用時における時間と共に進行する劣化を抑制する目的で、カルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤(2次剤)を1種類以上含有し、フィルム中の含有量は、ポリプロピレン樹脂を基準(100重量部)として、4000ppm(質量基準)以上6000ppm(質量基準)以下であることが好ましく、4500ppm(質量基準)以上6000ppm(質量基準)以下であることが好ましい。フィルム中の含有量は、4000ppm(質量基準)以上6000ppm(質量基準)以下であることが、適切な効果発現の観点から好ましい。
【0105】
ポリプロピレンと分子レベルで相溶性が良好であるカルボニル基を有するヒンダードフェノール系酸化防止剤を、最適な特定範囲の量を含有させたコンデンサフィルムは、前出の内部構造(結晶子サイズ、面配向係数)によって得られる高い耐電圧性能を維持したまま、110℃以上という非常に高温の寿命(ライフ)促進試験においても、100時間を越える長期に渡って、静電容量を低下させず(劣化が進行せず)、長期耐用性が向上するので好ましい。
【0106】
尚、フィルムの成形工程中(特に、押出機内)においては、ポリプロピレン樹脂は、少なからず熱劣化(酸化劣化)やせん断劣化を受ける。このような劣化の進行度合い、即ち分子量分布や立体規則性の変化は、押出器内の窒素パージ(酸化の抑制)、押出機内のスクリュー形状(せん断力)キャスト時のTダイの内部形状(せん断力)、酸化防止剤の添加量(酸化の抑制)、キャスト時の巻き取り速度(伸長力)などにより抑制することが可能である。
【0107】
「塩素吸収剤」とは、一般に塩素吸収剤と呼ばれ、ポリプロピレンに使用され、本発明のポリプロピレンフィルムを得ることができる限り、特に制限されることはない。塩素吸収剤として、例えば、ステアリン酸カルシウムなどの金属石鹸等を例示できる。
【0108】
「紫外線吸収剤」は、ポリプロピレンに対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。紫外線吸収剤として、例えば、ベンゾトリアゾール(BASF製Tinuvin328等)、ベンゾフェノン(Cytec製Cysorb UV−531等)、ハイドロキシベンゾエート(Ferro製UV−CHEK−AM−340等)等を例示できる。
【0109】
「滑剤」は、ポリプロピレンに対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。滑剤として、例えば、第一級アミド(ステアリン酸アミド等)、第二級アミド(N−ステアリルステアリン酸アミド等)、エチレンビスアミド(N,N’−エチレンビスステアリン酸アミド等)等を例示できる。
【0110】
「可塑剤」は、ポリプロピレンに対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。可塑剤として、例えば、ポリプロピレンランダム共重合体等を例示できる。
【0111】
「難燃化剤」は、ポリプロピレンに対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。難燃化剤として、例えば、ハロゲン化合物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、リン酸塩、ボレート、アンチモン酸化物等を例示できる。
【0112】
「帯電防止剤」は、ポリプロピレンに対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。帯電防止剤として、例えば、グリセリンモノエステル(グリセリンモノステアレート等)、エトキシル化された第二級アミン等を例示できる。
【0113】
「着色剤」は、ポリプロピレンに対して通常使用されるものである限り、特に制限されない。着色剤として、例えば、カドミウム、クロム含有無機化合物からアゾ、キナクリドン有機顔料の範囲まで例示できる。
【0114】
<1−6.製造方法>
<1−6−1.ポリプロピレン樹脂の製造方法>
本実施形態に係るポリプロピレン樹脂(ポリプロピレン樹脂A、ポリプロピレン樹脂B及びポリプロピレン樹脂Cを含む)は、一般的に公知の重合方法を用いて製造することができる。本発明に係るポリプロピレン樹脂を製造することができる限り、特に制限されることはない。そのような重合方法として、例えば、気相重合法、塊状重合法及びスラリー重合法を例示できる。
【0115】
重合は、1つの重合反応機を用いる単段(一段)重合であってよく、少なくとも2つ以上の重合反応器を用いた多段重合であっても良い。更に、反応器中に水素又はコモノマーを分子量調整剤として添加して行っても良い。
【0116】
触媒は、一般的に公知のチーグラー・ナッタ触媒を使用することができ、本発明に係るポリプロピレン樹脂を得ることができる限り特に限定されることはない。また、触媒は、助触媒成分やドナーを含むことができる。触媒や重合条件を調整することによって、分子量、分子量分布、及び立体規則性等を制御することができる。
【0117】
「微分分布値の差(D
M)」は、例えば、重合条件を調節して、分子量分布を調整することで、分解剤を使用することで、高分子量成分を選択的に分解処理することで、異なる分子量の樹脂を混合することで、所望の値に調節することができる。
【0118】
重合条件によって、分子量分布の構成を調整する場合には、後述する重合触媒を用いることにより、分子量分布や分子量の構成を容易に調整することが可能となり好ましい。この場合自在に含有させることが可能となり好ましい。多段重合反応により得る方法としては、例えば、次のような方法が例示できる。
【0119】
触媒の存在下、高分子量重合反応器と低分子量または中分子量反応器の複数の反応器により高温で重合する。生成樹脂の高分子量成分及び低分子量成分は、反応器における順番を問わず調整される。まず、第1重合工程において、プロピレン及び触媒が第1重合反応器に供給される。これらの成分とともに、分子量調整剤としての水素を、要求されるポリマーの分子量に到達するために必要な量で混合する。反応温度は、例えばスラリー重合の場合、70〜100℃程度、滞留時間は20分〜100分程度である。複数の反応器は、例えば直列に使用することができ、その場合、第1の工程の重合生成物は、追加のプロピレン、触媒、分子量調整剤とともに連続的に次の反応器に送られ、続いて、第1重合工程より低分子量あるいは高分子量に分子量を調整した第2の重合が行われる。第1及び第2の反応器の収量(生産量)を調整することによって、高分子量成分及び低分子量成分の組成(構成)を調整することが可能となる。
【0120】
使用される触媒としては、一般的なチーグラー・ナッタ触媒が良い。また、助触媒成分やドナーを含んでも構わない。触媒や重合条件を適宜調整することによって、分子量分布をコントロールすることが可能となる。
【0121】
過酸化分解によって、ポリプロピレン原料樹脂の分子量分布の構成を調整する場合には、過酸化水素や有機化酸化物などの分解剤による過酸化処理による方法が好ましい。
【0122】
ポリプロピレンのような崩壊型ポリマーに過酸化物を添加すると、ポリマーからの水素引抜き反応が起こり、生じたポリマーラジカルは一部再結合し架橋反応も起こすが、殆どのラジカルは二次分解(β開裂)を起こし、より分子量の小さな二つのポリマーに分かれることが知られている。したがって、高分子量成分から高い確立で分解が進行し、よって、低分子量成分が増大し、分子量分布の構成を調整することが出来る。低分子量成分を適度に含有している樹脂を過酸化分解により得る方法としては、例えば、次のような方法が例示できる。
【0123】
重合して得たポリプロピレン樹脂の重合粉あるいはペレットと、有機過酸化物として、例えば、1,3−ビス−(ターシャリー−ブチルパーオキサイドイソプロピル)−ベンゼンなどを0.001質量%〜0.5質量%程度、目標とする高分子量成分及び低分子量成分の組成(構成)を考慮しながら調整添加して、溶融混練器機にて、180℃〜300℃程度の溶融混練することによって行うことが出来る。
【0124】
ブレンド(樹脂混合)により低分子量成分の含有量を調整する場合には、異なる分子量の樹脂を、少なくとも2種類以上の樹脂を、ドライあるいは、溶融混合するのが良い。
【0125】
一般的には、主樹脂に、それより平均分子量が高いか、あるいは低い添加樹脂を1〜40質量%程度混合する2種のポリプロピレン混合系が、低分子量成分量の調整が行い易いため、好ましく利用される。
【0126】
また、この混合調整の場合、平均分子量の目安として、メルトフローレート(MFR)を用いても構わない。この場合、主樹脂と添加樹脂のMFRの差は、1〜30g/10分程度としておくのが、調整の際の利便性の観点から良い。
【0127】
本実施形態に係る複数のポリプロピレン原料樹脂(主要ポリプロピレン樹脂Aおよび添加ポリプロピレン樹脂Bなど)を混合する方法としては、特に制限はないが、重合粉あるいはペレットを、ミキサー等を用いてドライブレンドする方法や、主要樹脂ポリプロピレン樹脂Aと添加ポリプロピレン樹脂Bなどの重合粉あるいはペレットを、混練機に供給し、溶融混練してブレンド樹脂を得る方法などがあるが、いずれでも構わない。
【0128】
ミキサーや混練機にも特に制限は無く、また、混練機も、1軸スクリュータイプ、2軸スクリュータイプあるいは、それ以上の多軸スクリュータイプの何れでも良く、さらに、2軸以上のスクリュータイプの場合、同方向回転、異方向回転のどちらの混練タイプでも構わない。
【0129】
溶融混練によるブレンドの場合は、良好な混練さえ得られれば、混練温度にも特に制限はないが、一般的には、200℃から300℃の範囲であり、230℃から270℃が好ましい。あまり高い混練温度は、樹脂の劣化を招くので好ましくない。樹脂の混練混合の際の劣化を抑制するため、混練機に窒素などの不活性ガスをパージしても構わない。溶融混練された樹脂は、一般的に公知の造粒機を用いて、適当な大きさにペレタイズすることによって、混合ポリプロピレン原料樹脂ペレットを得ることが出来る。
【0130】
本態様のポリプロピレン原料樹脂中に含まれる重合触媒残渣等に起因する総灰分は、電気特性を向上させるために可能な限り少ないことが好ましい。総灰分は、ポリプロピレン樹脂を基準(100重量部)として、50ppm以下であることが好ましく、40ppm以下であることがより好ましく、30ppm以下であることが特に好ましい。
【0131】
<1−6−2.キャスト原反シートの製造方法>
本実施形態の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造するための「延伸前のキャスト原反シート」は、公知の方法を使用して成形することができる。例えば、ポリプロピレン樹脂ペレット、ドライ混合されたポリプロピレン樹脂ペレット(及び/又は重合粉)あるいは、予め溶融混練して作製した混合ポリプロピレン樹脂ペレット類を押出機に供給して、加熱溶融し、ろ過フィルターを通した後、170℃〜320℃、好ましくは、200℃〜300℃に加熱溶融してTダイから溶融押し出し、80℃〜140℃に保持された少なくとも1個以上の金属ドラムで、冷却、固化させることで、未延伸のキャスト原反シートを成形することができる。
【0132】
未延伸のキャスト原反シートを成形する際、金属ドラム群の温度を、80℃〜140℃、好ましくは、90℃〜120℃、より好ましくは、90℃〜105℃に保持することによって、得られるキャスト原反シートのβ晶分率は、X線法で1%以上50%以下、好ましくは、5%以上30%以下、より好ましくは、5%以上20%以下程度となる。なお、この値は、β晶核剤を含まない時の値である。
【0133】
前述のβ晶分率の範囲では、コンデンサ特性と素子巻き加工性の両物性を満足させることができ好ましい。
【0134】
β晶分率は、X線回折強度測定によって得られ、「A.Turner−Jones et al.,Makromol.Chem.,75巻,134頁 (1964)」に記載されている方法によって算出することができ、K値と呼ばれる。即ち、α晶由来の3本の回折ピークの高さの和とβ晶由来の1本の回折ピークの比によってβ晶の比率が表現される。
【0135】
上記キャスト原反シートの厚さは、本実施形態のポリプロピレンフィルムを得ることができる限り、特に制限されることはないが、通常、0.05mm〜2mmであることが好ましく、0.1mm〜1mmであることがより好ましい。
【0136】
<1−6−3.ポリプロピレンフィルムの製造方法>
本実施形態のポリプロピレンフィルムは、前記ポリプロピレンキャスト原反シートに延伸処理を行って製造することができる。延伸は、縦及び横に二軸に配向させる二軸延伸が行われ、延伸方法としては同時又は逐次の二軸延伸方法が挙げられるが、逐次二軸延伸方法が好ましい。
【0137】
逐次二軸延伸方法としては、例えば、まずキャスト原反シートを100〜160℃(縦延伸温度)程度の温度に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向に3〜7倍(縦延伸倍率)に延伸し、直ちに室温に冷却する。引き続き、当該延伸フィルムをテンターに導いて、5〜17°(横延伸角度)の延伸角度で、150℃以上(横延伸温度)の温度で幅方向に3〜11倍(横延伸倍率)程度に延伸した後、緩和、熱固定を施して、巻き取る。巻き取られたフィルムは、20〜45℃程度の雰囲気中でエージング処理を施された後、所望の製品幅に断裁することができる。
【0138】
なお、横延伸角度とは、横延伸工程の開始時点における延伸フィルムの幅方向の一方の端縁P
xと、横延伸工程の終了時点における延伸フィルムの幅方向の(P
xと同じ側の)一方の端縁P
yと結ぶ直線L
xと、P
xを始点とし且つ押出方向に平行な直線L
yがなす角度をいう。
【0139】
上記製造工程において、縦延伸温度、縦延伸倍率、横延伸角度、横延伸温度、横延伸倍率、ポリプロピレン樹脂の一種又は二種以上の選択及びその物性(特に分子量分布)、溶融時の樹脂温度、キャストフィルムのMFR、横延伸後の幅方向の緩和率、緩和温度等は、本発明の所望の物性(結晶子サイズS
aが12.9nm以下であり、且つ面配向係数ΔP
aが0.013以上である)に影響を与えるパラメータであり、これらを適宜調節することにより、本実施形態のポリプロピレンをより容易に得ることができる。これらのパラメータの中でも縦延伸温度及び横延伸角度は、本発明の所望の物性に特に影響を与えるパラメータである。これらの一部について、その調節範囲の一例を以下に示す:
<縦延伸温度>本発明の所望の物性を備えさせ易いという観点から、好ましくは120〜150℃、より好ましくは125〜142℃、さらに好ましくは128〜140℃、である。縦延伸温度の下限については、120℃以上、125℃以上、128℃以上がそれぞれ好ましい。縦延伸温度の上限については、150℃以下、148℃以下、145℃以下、142℃、140℃がそれぞれ好ましい。
<縦延伸倍率>本発明の所望の物性を備えさせ易いという観点から、好ましくは3〜5倍である。
<横延伸角度>本発明の所望の物性を備えさせ易いという観点から、下限に関して、好ましくは8.5°以上、より好ましくは9°以上、さらに好ましくは10°以上、特に好ましくは10.5°以上である。また、本発明の所望の物性を備えさせ易いという観点から、上限に関して、好ましくは15°以下、より好ましくは14°以下、さらに好ましくは13°以下、特に好ましくは12°以下である。
<横延伸温度>本発明の所望の物性を備えさせ易いという観点から、下限に関して、好ましくは150℃以上であり、より好ましくは153℃以上であり、さらに好ましくは155℃以上である。また、本発明の所望の物性を備えさせ易いという観点から、上限に関して、好ましくは180℃以下、より好ましくは165℃以下、さらに好ましくは160℃以下、さらに一層好ましくは159℃以下、特に好ましくは158℃以下である。また、本発明の所望の物性を備えさせ易いという観点から、上限及び下限に関して、好ましくは150〜180℃、より好ましくは155〜165℃である。
<横延伸倍率>本発明の所望の物性を備えさせ易いという観点から、好ましくは5〜11倍、より好ましくは7〜11倍、さらに好ましくは9〜11倍である。
【0140】
このような延伸工程によって、機械的強度、剛性に優れたフィルムとなり、また、表面の凹凸もより明確化され、微細に粗面化された延伸フィルムとなる。本実施形態のポリプロピレンフィルムの表面には、巻き適性を向上させつつ、コンデンサ特性をも良好とする適度な表面粗さを付与することが好ましい。
【0141】
本実施形態のポリプロピレンフィルムは、少なくとも片方の表面において、その表面粗さが、中心線平均粗さ(Ra)で0.03μm以上0.08μm以下であることが好ましく、かつ、最大高さ(Rz、旧JIS定義でのRmax)で0.3μm以上0.8μm以下に微細粗面化されていることが好ましい。Ra及びRzが、上述の好ましい範囲にある場合、表面は、微細に粗化された表面になり得、コンデンサ加工の際には、素子巻き加工において巻きシワが発生し難く、好ましく巻上げることができる。更に、フィルム同士の間も均一な接触が可能となりえるので、耐電圧性及び長期間に渡る耐電圧性も向上し得る。
【0142】
本明細書において、「Ra」及び「Rz」(旧JIS定義のRmax)とは、例えばJIS−B0601:2001等に定められている方法によって、一般的に広く使用されている触針式表面粗さ計(例えば、ダイヤモンド針等による触針式表面粗さ計)を用いて測定された値をいう。「Ra」及び「Rz」は、より具体的には、例えば、東京精密社製、三次元表面粗さ計サーフコム1400D−3DF−12型を用い、JIS−B0601:2001に定められている方法に準拠して求めることができる。
【0143】
フィルム表面に微細な凹凸を与える方法としては、エンボス法、エッチング法等、公知の各種粗面化方法を採用することができるが、その中でも、不純物の混入等の必要がないβ晶を用いた粗面化法が好ましい。β晶の生成割合は、一般的には、キャスト温度及びキャストスピードを変更することによって制御することができる。また、縦延伸工程のロール温度によってβ晶の融解/転移割合を制御することができ、これらのβ晶生成とその融解/転移の二つのパラメーターについて最適な製造条件を選択することによって微細な粗表面性を得ることができる。
【0144】
本実施形態のポリプロピレンフィルムは、初期耐電圧性が高く、長期的な耐電圧性に優れる。更に、表面が微細に粗面化されているので、素子巻き適性に優れる。更に、非常に薄くすることも可能なので高い静電容量を発現し易い。従って、小型、かつ、5μF以上、好ましくは10μF以上、さらに好ましくは20μF以上の高容量のコンデンサに極めて好適に使用することができる。
【0145】
本実施形態のポリプロピレンフィルムには、金属蒸着加工工程等の後工程における接着特性を高める目的で、延伸及び熱固定工程終了後に、オンラインもしくはオフラインにてコロナ放電処理を行うことができる。コロナ放電処理は、公知の方法を用いて行うことができる。雰囲気ガスとしては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、及びこれらの混合ガスを用いることが好ましい。
【0146】
<2.コンデンサ用金属化フィルム>
次に、本発明の一実施形態に係るコンデンサ用金属化フィルムについて説明する。
本実施形態に係るコンデンサ用金属化フィルムは、本実施形態に係るポリプロピレンフィルムの片面又は両面に金属膜を有する、コンデンサ用金属化フィルムである。以下、これについて詳細に説明する。
【0147】
本実施形態のポリプロピレンフィルムは、コンデンサとして加工するために片面又は両面に電極を付けることができる。そのような電極は、本発明が目的とするコンデンサを得ることができる限り特に限定されることはく、通常コンデンサを製造するために使用される電極を用いることができる。電極として、例えば、金属箔、少なくとも片面を金属化した紙及びプラスチックフィルム等を例示することができる。
【0148】
コンデンサには、小型及び軽量化が一層要求されるので、本実施形態のフィルムの片面もしくは両面を直接金属化して電極を形成することが好ましい。用いられる金属は、例えば、亜鉛、鉛、銀、クロム、アルミニウム、銅、及びニッケルなどの金属単体、それらの複数種の混合物、及びそれらの合金などを使用することができるが、環境、経済性及びコンデンサ性能などを考慮すると、亜鉛及びアルミニウムが、好ましい。
【0149】
本実施形態のポリプロピレンフィルムの表面を直接金属化する方法として、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法を例示することが出来、本発明が目的とするコンデンサを得ることができる限り特に限定されることはない。生産性及び経済性などの観点から、真空蒸着法が好ましい。真空蒸着法として、一般的にるつぼ法式やワイヤー方式などを例示することができるが、本発明が目的とするコンデンサを得ることができる限り特に限定されることはなく、適宜最適なものを選択することができる。
【0150】
金属蒸着膜の膜抵抗は、コンデンサの電気特性の点から、1〜100Ω/□程度が好ましい。この範囲内でも高めであることがセルフヒーリング(自己修復)特性の点から望ましく、膜抵抗は5Ω/□以上であることがより好ましく、10Ω/□以上であることが更に好ましい。また、コンデンサとしての安全性の点から、膜抵抗は50Ω/□以下であることがより好ましく、30Ω/□以下であることが更に好ましい。金属蒸着膜の膜抵抗は、例えば当業者に既知の四端子法によって金属蒸着中に測定することができる。金属蒸着膜の膜抵抗は、例えば蒸発源の出力を調整して蒸発量を調整することによって調節することができる。
【0151】
フィルムの片面に金属蒸着膜を形成する際、フィルムを巻回した際にコンデンサとなるよう、フィルムの片方の端部から一定幅は蒸着せずに絶縁マージンが形成される。さらに、金属化ポリプロピレンフィルムとメタリコン電極との接合を強固にするため、絶縁マージンと逆の端部に、ヘビーエッジ構造を形成することが好ましく、ヘビーエッジの膜抵抗は通常1〜8Ω/□程度であり、1〜5Ω/□程度であることが好ましい。金属膜の厚さは特に限定されないが、1〜200nmが好ましい。
【0152】
形成する金属蒸着膜のマージンパターンには特に制限はないが、コンデンサの保安性等の特性を向上させる点からは、フィッシュネットパターン、Tマージンパターン等のいわゆる特殊マージンを含むパターンとすることが好ましい。特殊マージンを含むパターンで金属蒸着膜を本実施形態のポリプロピレンフィルムの片面に形成すると、得られるコンデンサの保安性が向上し、コンデンサの破壊、ショートの抑制等の点からも効果的であり、好ましい。
【0153】
マージンを形成する方法としては、蒸着時にテープによりマスキングを施すテープ法、オイルの塗布によりマスキングを施すオイル法等、公知の方法を何ら制限なく使用することができる。
【0154】
本実施形態の金属化フィルムは、フィルムの長尺方向に沿って巻き付ける巻き付け加工を経て、後述の本実施形態のコンデンサに加工され得る。すなわち、本実施形態の金属化フィルムを2枚1対として、金属蒸着膜とポリプロピレンフィルムとが交互に積層されるように重ね合わせて巻回する。その後、両端面に金属溶射によって一対のメタリコン電極を形成してフィルムコンデンサを作製する工程によりコンデンサが得られる。
【0155】
<3.コンデンサ>
次に、本発明の一実施形態に係るコンデンサについて説明する。
本実施形態に係るコンデンサは、本実施形態の金属化フィルムを含む、コンデンサである。以下、これについて詳細に説明する。
【0156】
コンデンサを作製する工程では、フィルムの巻き付け加工が行われる。例えば、本実施形態の金属フィルムにおけるの金属膜と本実施形態のポリプロピレンフィルムとが交互に積層されるように、更には、絶縁マージン部が逆サイドとなるように、2枚1対の本実施形態の金属化フィルムを重ね合わせて巻回する。この際、2枚1対の本実施形態の金属化フィルムを1〜2mmずらして積層することが好ましい。用いる巻回機は特に制限されず、例えば、株式会社皆藤製作所製の自動巻取機3KAW−N2型等を利用することができる。
【0157】
扁平型コンデンサを作製する場合、巻回後、通常、得られた巻回物に対してプレスが施される。プレスによってコンデンサの巻締まり・素子成形を促す。層間ギャップの制御・安定化を施す点から、与える圧力は、本実施形態のポリプロピレンフィルムの厚み等によってその最適値は変わるが、2〜20kg/cm
2である。
【0158】
続いて、巻回物の両端面に金属を溶射してメタリコン電極を設けることによって、コンデンサを作製する。
【0159】
コンデンサに対して、更に所定の熱処理が施される。すなわち、本実施形態では、コンデンサに対し、80〜125℃の温度で1時間以上の真空下にて熱処理を施す工程(以下、「熱エージング」と称することがある)を含む。
【0160】
コンデンサに対して熱処理を施す上記工程において、熱処理の温度は、通常80℃以上であって、90℃以上とすることが好ましい。一方、熱処理の温度は、通常130℃以下であって、125℃以下とすることが好ましい。上記の温度で熱処理を施すことによって熱エージングの効果が得られる。具体的には、本実施形態の金属化フィルムに基づくコンデンサを構成するフィルム間の空隙が減少し、コロナ放電が抑制され、しかも本実施形態の金属化フィルムの内部構造が変化して結晶化が進む。その結果、耐電圧性が向上するものと考えられる。熱処理の温度が所定温度より低い場合には、熱エージングによる上記効果が十分に得られない。一方、熱処理の温度が所定温度より高い場合には、ポリプロピレンフィルムに熱分解や酸化劣化等が生じることがある。
【0161】
コンデンサに対して熱処理を施す方法としては、例えば、真空雰囲気下で、恒温槽を用いる方法や高周波誘導加熱を用いる方法等を含む公知の方法から適宜選択してもよい。具体的には、恒温槽を用いる方法を採用することが好ましい。
【0162】
熱処理を施す時間は、機械的及び熱的な安定を得る点で、1時間以上とすることが好ましく、10時間以上とすることがより好ましいが、熱シワや型付等の成形不良を防止する点で、20時間以下とすることがより好ましい。
【0163】
熱エージングを施したコンデンサのメタリコン電極には、通常、リード線が溶接される。また、耐候性を付与し、とりわけ湿度劣化を防止するため、コンデンサをケースに封入してエポキシ樹脂でポッティングすることが好ましい。
【0164】
本実施形態のコンデンサは、本実施形態の金属化フィルムに基づく小型かつ大容量型のコンデンサであって、高温下での高い耐電圧性及び高温下での長期耐用性を有するものである。
【実施例】
【0165】
次に、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、これらの例は本発明を説明するためのものであり、本発明を何ら限定するものではない。また、特に断らない限り、例中の「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【0166】
(1)物性値の測定方法及び算出方法
各物性値である、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、差(D
M)、(「差(D
M)」とは、分子量の微分分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値からLog(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差の、省略表現ある)メソペンタッド分率([mmmm])、厚み、静電容量の変化率ΔC、結晶子サイズ、レタデーション値、複屈折値、並びに面配向係数ΔPは、以下の方法により測定及び算出した。
【0167】
<ポリプロピレン樹脂の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、分子量分布(Mz/Mn)および微分分布値の測定>
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて、以下の条件で測定し、算出した。
測定器:東ソー株式会社製、示差屈折計(RI)内蔵高温GPC HLC−8121GPC/HT型
カラム:東ソー株式会社製、TSKgel GMHhr−H(20)HTを3本連結
カラム温度:145℃
溶離液:トリクロロベンゼン
流速:1.0ml/min
検量線を、東ソー株式会社製の標準ポリスチレンを用いて作製し、測定された分子量の値をポリスチレンの値に換算して、Z平均分子量(Mz)、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を得た。このMzとMnの値を用いて分子量分布(Mz/Mn)を、また、MwとMnの値を用いて分子量分布(Mw/Mn)を得た。
【0168】
微分分布値は、次のような方法で得た。まず、RI検出計を用いて検出される強度分布の時間曲線(溶出曲線)を、上記標準ポリスチレンを用いて作製した検量線を用いて標準ポリスチレンの分子量M(Log(M))に対する分布曲線に変換した。次に、分布曲線の全面積を100%とした場合のLog(M)に対する積分分布曲線を得た後、この積分分布曲線をLog(M)で、微分することによってLog(M)に対する微分分布曲線を得ることが出来た。この微分分布曲線から、Log(M)=4.5およびLog(M)=6.0のときの微分分布値を読んだ。なお、微分分布曲線を得るまでの一連の操作は、使用したGPC測定装置に内蔵されている解析ソフトウェアを用いて行った。
【0169】
<メソペンタッド分率>
ポリプロピレン樹脂を溶媒に溶解し、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT−NMR)を用いて、以下の条件で測定した。
高温型核磁気共鳴(NMR)装置:日本電子株式会社製、高温型フーリエ変換核磁気共鳴装置(高温FT−NMR)、JNM−ECP500
観測核:
13C(125MHz)
測定温度:135℃
溶媒:オルト−ジクロロベンゼン(ODCB:ODCBと重水素化ODCBの混合溶媒(混合比=4/1))
測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング
パルス幅:9.1μsec(45°パルス)
パルス間隔:5.5sec
積算回数:4,500回
シフト基準:CH
3(mmmm)=21.7ppm
立体規則性度を表すペンタッド分率は、同方向並びの連子「メソ(m)」と異方向の並びの連子「ラセモ(r)」の5連子(ペンタッド)の組み合わせ(mmmmやmrrm等)に由来する各シグナルの強度積分値より、百分率(%)で算出した。mmmmやmrrm等に由来する各シグナルの帰属に関し、例えば、「T.Hayashi et al.,Polymer,29巻,138頁(1988)」等のスペクトルの記載を参考とした。
【0170】
<フィルムの厚さ>
マイクロメーター(JIS−B7502)を用いて、JIS−C2330に準拠して測定した。
【0171】
<引張強さ>
ポリプロピレンフィルムの引張強さは、JIS−C2151に準拠して測定した。なお、測定方向は、MD(流れ方向)、およびTD(幅方向)とした。
【0172】
<静電容量の変化率ΔC>
コンデンサの静電容量を、日置電機株式会社製LCRハイテスター3522−50を用いて試験前の初期静電容量(C
0ともいう)を評価した。次に、105℃の高温槽中にて、コンデンサに直流700Vの電圧を1000時間負荷し続けた。1000時間経過後の素子の容量(C
1000ともいう)をLCRテスターで測定し、電圧負荷前後の容量変化率を算出した。ここで、当該容量変化率とは、(C
1000―C
0)/C
0である。1000時間経過後の容量変化率を、コンデンサ2個の平均値により評価した。1000時間経過後の容量変化率は、−5%〜0%(−5%以上0%以下)であることが好ましい。
【0173】
<延伸不良占有率>
巻き取ったフィルム(加熱処理前)における延伸不良(延伸ムラ及び未延伸など)が生じている部分の幅方向長さを測定し、幅長に対する延伸不良が生じている部分の幅方向の長さの割合を算出し、延伸不良占有率とした。得られた延伸不良占有率が2%未満(<2%)だと非常に良好であり、2%以上7%未満だと良好である。
【0174】
<厚み均一性>
巻き取ったフィルム(加熱処理前)から長手方向10cmおよび幅方向10cmの正方形状の試験片を合計100枚切り出した。上記試験片は、前記フィルムの長手方向10列および幅方向10列の10掛ける10となるようにして切り出された。長手方向の各列の間隔はそれぞれ一定とし、また、幅方向の各列の間隔はそれぞれ一定とした。次いで、幅方向の各列ごとに前記試験片を10枚重ねることにより、10部の試験片束を得た。次いで、得られた10部の試験片束に対して、それぞれマイクロメーター(JIS-B7502)を用いてJIS-C2330に準拠して、各試験片束の厚さ(フィルム厚さ10枚分)を測定した。得られたデータの平均値をXとし、また最小値と最大値の差をRとし、(R/X)×100(%)で計算した値をフィルムの厚み均一性の指標とした。得られた指標が2.5%未満(<2.5%)だと非常に良好であり、2.5%以上3.0%未満だと良好である。
【0175】
<結晶子サイズ>
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの結晶子サイズの評価は、XRD(広角X線回折)装置を用い、以下の通り、測定した。
測定機:リガク社製のディストップX線回折装置 MiniFlex300
X線発生出力:30KV、10mA
照射X線:モノクローメーター単色化CuKα線(波長0.15418 nm)
検出器:シンチュレーションカウンター
ゴニオメーター走査:2θ/θ連動走査
得られたデータから、解析コンピューターを用い、装置標準付属の統合粉末X線解析ソフトウェアPDXLを用い、α晶(040)面の回折反射ピークの半価幅を算出した。得られたα晶(040)面の回折反射ピークの半価幅から、Scherrerの式(D=K×λ/(β×Cosθ))を用いて、結晶子サイズを求めた。なお、Scherrerの式中、Dは、結晶子サイズ(nm)、Kは定数(形状因子:本実施例では0.94を採用)、λは使用X線波長(nm)、βは求めた半価幅、θは回折ブラッグ角である。
【0176】
<レタデーション値>
二軸延伸ポリプロピレンフィルムのレタデーション(位相差)値を、下記の通り、傾斜法により測定した。
測定機:大塚電子社製レタデーション測定装置 RE−100
光源:波長550nmのLED光源
測定方法:次のような傾斜法により、レタデーション値の角度依存性を測定した。フィルムの面内方向の主軸をx軸及びy軸、また、フィルムの厚さ方向(面内方向に対する法線方向)をz軸とし、面内方向のうち、屈折率のより高い方向の遅相軸をx軸としたとき、x軸を傾斜軸として、0°〜50°の範囲でz軸に対して10°づつ傾斜させたときの各レタデーション値を求めた。例えば、逐次延伸法において、MD方向(流れ方向)の延伸倍率よりも、TD方向(幅方向)の延伸倍率が高い場合、TD方向が遅相軸(x軸)、MD方向がy軸となる。
【0177】
<複屈折値及び面配向係数ΔP>
レタデーション値から、非特許文献「粟屋裕、高分子素材の偏光顕微鏡入門、105〜120頁、2001年」に記載の通り、次のようにして面配向係数ΔPを算出した。
まず、各傾斜角φに対し、測定されたレタデーション値Rを、傾斜補正が施された厚さdで割ったR/dを求めた。φ=10°、20°、30°、40°、50°のそれぞれのR/dについて、φ=0°のR/dとの差を求め、それらをさらにsin2r(r:屈折角)で割ったものを、それぞれのφにおける複屈折ΔNzyとし、正負の符号を逆にして複屈折値ΔNyzとした。φ=20°、30°、40°、50°におけるΔNyzの平均値として、複屈折値ΔNyzを算出した。
次に、傾斜角φ=0°で測定されたレタデーション値Rを、厚さdで割った値より、前述で求めたΔNzyを除算し、複屈折値ΔNxzを算出した。
最後に、複屈折値のΔNyzとΔNxzを、式:ΔP=(ΔNyz+ΔNxz)/2に代入しΔPを求めた。なお、ポリプロピレンについての、各傾斜角φにおける屈折角rの値は、前記非特許文献の109頁に記載されているものを用いた。
【0178】
(2)二軸延伸ポリプロピレンフィルムの作製、物性値の測定及び算出
<実施例1>
[実施例1−1.キャスト原反シートの作製]
PP樹脂A1〔Mw=32万、Mw/Mn=9.3、差(D
M)=11.2(「差(D
M)」とは、分子量の微分分布曲線において、対数分子量Log(M)=4.5のときの微分分布値からLog(M)=6.0のときの微分分布値を引いた差の、省略表現ある)、メソペンタッド分率[mmmm]=95%、プライムポリマー製〕と、PP樹脂B1〔Mw=35万、Mw/Mn=7.7、差(D
M)=7.2、メソペンタッド分率[mmmm]=96.5%、大韓油化製〕とを、65:35の比で押出機へ供給し、樹脂温度250℃で溶融した後、Tダイを用いて押出し、表面温度を95℃に保持した金属ドラムに巻きつけて固化させてキャスト原反シートを作製した。
【0179】
[実施例1−2.二軸延伸ポリプロピレンフィルムの作製]
得られた未延伸キャスト原反シートを130℃の温度に保ち、速度差を設けたロール間に通して流れ方向に4倍に延伸し、直ちに室温に冷却した。引き続き、当該延伸フィルムをテンターに導いて、11°の延伸角度で、160℃の温度で幅方向に10倍に延伸した後、緩和、熱固定を施して巻き取り、30℃程度の雰囲気中でエージング処理を施して厚み2.5μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0180】
[実施例1−3.熱処理前の物性測定]
得られたポリプロピレンフィルムを20℃の室温環境下で、α晶(040)の結晶子サイズS
bと面配向係数ΔP
bを測定した。
【0181】
[実施例1−4.熱処理後の物性測定]
得られたポリプロピレンフィルムを、20℃の室温環境下から105℃の高温槽に入れ、入れた時点から200時間静置し、次に、20℃の室温にて1時間静置後に、同様の方法でα晶(040)の結晶子サイズS
aと面配向係数ΔP
aを測定した。
【0182】
[実施例1−5.コンデンサの作製と長期耐電圧性 容量変化率ΔC]
次いで得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いて、以下の通りコンデンサを作製した。二軸延伸ポリプロピレンフィルムに、Tマージン蒸着パターンを蒸着抵抗15Ω/□にてアルミニウム蒸着を施すことにより、上記フィルムの片面に金属膜を含む金属化フィルムを得た。60mm幅にスリットした後に、2枚の金属化フィルムを相合わせて、株式会社皆藤製作所製、自動巻取機3KAW−N2型を用い、巻き取り張力250gにて、1076ターン巻回を行った。素子巻きした素子は、プレスしながら120℃にて15時間熱処理を施した後、素子端面に亜鉛金属を溶射し、扁平型コンデンサを得た。扁平型コンデンサの端面にリード線をはんだ付けし、その後エポキシ樹脂で封止した。出来上がったコンデンサの静電容量は、75μF(±5μF)であった。
【0183】
得られたコンデンサについて、試験環境温度105℃で700Vの電圧にて1000時間、直流電流を印加した後、静電容量を測定し、静電容量の変化率ΔCを求めた。
【0184】
[実施例1−6.延伸不良占有率の算出]
得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルム(実施例1−2.で得られた、巻き取り後の二軸延伸ポリプロピレンフィルム)について、延伸不良占有率を算出した。
【0185】
[実施例1−7.厚み均一性の指標の算出]
得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルム(実施例1−2.で得られた、巻き取り後の二軸延伸ポリプロピレンフィルム)について、厚み均一性の指標[(R/X)×100(%)]を算出した。
【0186】
<実施例2>
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの作製において未延伸キャスト原反シートを140℃の温度に保ちながら流れ方向に延伸を行ったこと以外は実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚み2.5μm)およびコンデンサを作製し、評価を行った。
【0187】
<実施例3>
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの作製において未延伸キャスト原反シートを145℃の温度に保ちながら流れ方向に延伸を行ったこと以外は実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚み2.5μm)およびコンデンサを作製し、評価を行った。
【0188】
<実施例4>
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの作製においてテンターに導いて、9°の延伸角度で延伸を行ったこと以外は実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚み2.5μm)およびコンデンサを作製し、評価を行った。
【0189】
<実施例5>
キャスト原反シートの作製の作製において、PP樹脂A1に代えてPP樹脂A2〔Mw=33万、Mw/Mn=8.3、差(D
M)=3.6(分子量分布曲線において、対数分子量が4.5のときの微分分布値から対数分子量が6のときの微分分布値を引いた差)、メソペンタッド分率[mmmm]=95%、プライムポリマー製〕を用いたこと以外は実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚み2.5μm)およびコンデンサを作製し、評価を行った。
【0190】
<実施例6>
キャスト原反シートの作製の作製において、PP樹脂B1に代えてPP樹脂B2〔Mw=38万、Mw/Mn=8.3、差(DM)=0.6、メソペンタッド分率[mmmm]=96.7%、大韓油化製〕を用いたこと以外は実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよびコンデンサを作製し、評価を行った。
【0191】
<実施例7>
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの作製において、158℃の温度で幅方向に10倍に延伸したこと以外は実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよびコンデンサを作製し、評価を行った。
【0192】
<実施例8>
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの作製において、未延伸キャスト原反シートを140℃の温度に保ちながら流れ方向に延伸を行い、且つ、158℃の温度で幅方向に10倍に延伸したこと以外は実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよびコンデンサを作製し、評価を行った。
【0193】
<実施例9>
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの作製において、未延伸キャスト原反シートを145℃の温度に保ちながら流れ方向に延伸を行い、且つ、158℃の温度で幅方向に10倍に延伸したこと以外は実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよびコンデンサを作製し、評価を行った。
【0194】
<実施例10>
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの作製において、162℃の温度で幅方向に10倍に延伸したこと以外は実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよびコンデンサを作製し、評価を行った。
【0195】
<比較例1>
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの作製において未延伸キャスト原反シートを125℃の温度に保ちながら流れ方向に延伸を行ったこと以外は実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚み2.5μm)およびコンデンサを作製し、評価を行った。
【0196】
<比較例2>
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの作製において未延伸キャスト原反シートを120℃の温度に保ちながら流れ方向に延伸を行ったこと以外は実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚み2.5μm)およびコンデンサを作製し、評価を行った。
【0197】
<比較例3>
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの作製においてテンターに導いて、12°の延伸角度で延伸を行ったこと以外は実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚み2.5μm)およびコンデンサを作製し、評価を行った。
【0198】
<比較例4>
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの作製においてテンターに導いて、14°の延伸角度で延伸を行ったこと以外は実施例1と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚み2.5μm)およびコンデンサを作製し、評価を行った。
【0199】
<比較例5>
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの作製において未延伸キャスト原反シートを125℃の温度に保ちながら流れ方向に延伸を行ったこと以外は実施例5と同様にして、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(厚み2.5μm)およびコンデンサを作製し、評価を行った。
【0200】
(3)物性値の評価
実施例1〜10及び比較例1〜5の製造条件を表1に示し、各物性値を表2に示す。なお、表2中、「<1」は1未満を示し、「<−10」は−10未満を示す。
【0201】
【表1】
【0202】
【表2】
【0203】
表2に示されるように、熱処理(105℃で200時間処理)後の結晶子サイズS
aが12.9nm以下であり且つ面配向係数ΔP
aが0.013以上の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いて作られたコンデンサ(実施例1〜10)については、高温且つ高電圧下で長時間処理後であっても静電容量の低下が極めて僅かなものであった(−2%<静電容量の変化率ΔC<0)。
さらに、表2に示されるように、実施例1〜10に係る熱処理前の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、延伸不良占有率、及び、厚み均一性についても良好であった。
一方、上記熱処理後の結晶子サイズS
a及び面配向係数ΔP
aの両方又はいずれか一方が上記基準を満たさない二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いて作られたコンデンサ(比較例1〜5)については、高温且つ高電圧下で長時間処理後の静電容量の低下が顕著であった(静電容量の変化率ΔC≦−8.0%)。以上から、上記熱処理後の結晶子サイズS
a及び面配向係数ΔP
aが基準値以上(又は以下)であることが、高温且つ高電圧下で長時間処理後の静電容量の低下を抑えるためのパラメータであることが見出された。
が、12.9nm以下であること、及び、(b)105℃で200時間処理後の、光学的複屈折測定により求めた厚さ方向に対する複屈折値ΔNyz及びΔNxzの値から算出される面配向係数ΔP