特許第6304471号(P6304471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6304471
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】軸受装置、及び回転機械
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/03 20060101AFI20180326BHJP
   F01D 25/16 20060101ALI20180326BHJP
   F02C 7/06 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   F16C17/03
   F01D25/16 A
   F02C7/06 Z
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-166248(P2012-166248)
(22)【出願日】2012年7月26日
(65)【公開番号】特開2014-25533(P2014-25533A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年6月17日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(72)【発明者】
【氏名】横山 真平
(72)【発明者】
【氏名】上原 秀和
(72)【発明者】
【氏名】杼谷 直人
(72)【発明者】
【氏名】角 侑樹
(72)【発明者】
【氏名】小澤 豊
【審査官】 星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−113834(JP,A)
【文献】 特開2006−112499(JP,A)
【文献】 特開昭56−076724(JP,A)
【文献】 特開2009−063015(JP,A)
【文献】 実開昭53−047443(JP,U)
【文献】 実開昭58−177621(JP,U)
【文献】 国際公開第2012/114445(WO,A1)
【文献】 実開昭58−063423(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/03
F01D 25/16
F02C 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸の周方向に間隔をあけて配設されて該回転軸を支持するとともに、前記周方向の一方側から他方側に向かって内部を貫通する流路が形成された二つの軸受パッドと、
前記二つの軸受パッド間にわたって設けられて、これら二つの軸受パッドの前記流路同士を連通する接続部と、
前記二つの軸受パッドのうちの前記回転軸の回転方向前方側の軸受パッドのみの前記流路に対して、前記一方側に向かって開口する開口部を介して油を供給する一つの第一給油部と、
各前記軸受パッドに対応して設けられて、前記二つの軸受パッドのうちの各前記軸受パッドと前記回転軸との間に対して、それぞれ前記一方側に向かって開口する開口部を介して油を供給する計二つの第二給油部と、を備えることを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
粘性ポンプ作用によって前記油を供給する粘性ポンプ部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の軸受装置を備えることを特徴とする回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械に設けられる軸受装置の冷却構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、蒸気タービン、ガスタービン、原子力タービン等の大型の回転機械に適用される軸受装置としては、パッド軸受が知られている。また、このようなパッド軸受としては、回転軸の周方向に沿って間隔を空けて複数の軸受パッドが配置されるとともに、軸受パッドと回転軸との隙間、及び軸受パッドの内部の流路に油を供給して、軸受パッドを冷却する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、このような従来の軸受装置201が例えばラジアル軸受である場合、図10に示すように軸受装置201の下半部(図10の紙面下側)に設けられた二つの軸受パッド202A、202Bによって回転軸200が支持されているとともに、油入口部206から導入された油W1が、軸受装置201の上半部で軸受ケーシング203の内周面203aに開口する給油口204よりこの軸受ケーシング203と回転軸200との間の隙間に供給される構造となっている。そして、回転軸200の回転方向前方側の軸受パッド202Aと給油口204との間の周方向位置で軸受ケーシング203の内周面203aに形成された溝部205と、回転軸200の回転とによる粘性ポンプ作用によって、給油口204から供給された油W1は、軸受パッド202Aに向かって流通する。その後、油W1は回転軸200と軸受パッド202Aとの間の隙間である軸受パッド202Aの表面と、軸受パッド202Aの内部に形成された流路FCとへ分岐されて回転方向後方側に向かって流通する。さらに軸受パッド202Aの表面と流路FCとを流通した後の油W1は合流し、再度回転方向後方側の軸受パッド202Bの表面と内部の流路FCとへ分岐して流通する。このようにして二つの軸受パッド202A、202Bの冷却を行った油W1の一部は油出口部207から排出され、残りがキャリーオーバーされて、再度、回転方向前方側の軸受パッド202Aを流通することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6485182号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年の回転機械の大型化・高速化にともなって回転軸の荷重は増大しており、上述のように熱回収して昇温された油の一部がキャリーオーバーされる構造では、充分な冷却効果を得ることができない。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、給油量の低減を図りながら、軸受パッドの冷却効果の向上が可能な軸受装置及び回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は以下の手段を採用している。
即ち、本発明に係る軸受装置は、回転軸と、前記回転軸の周方向に間隔をあけて配設されて該回転軸を支持するとともに、前記周方向の一方側から他方側に向かって内部を貫通する流路が形成された二つの軸受パッドと、前記二つの軸受パッド間にわたって設けられて、これら二つの軸受パッドの前記流路同士を連通する接続部と、前記二つの軸受パッドのうちの前記回転軸の回転方向前方側の軸受パッドのみの前記流路に対して、前記一方側に向かって開口する開口部を介して油を供給する一つの第一給油部と、各前記軸受パッドに対応して設けられて、前記二つの軸受パッドのうちの各前記軸受パッドと前記回転軸との間に対して、それぞれ前記一方側に向かって開口する開口部を介して油を供給する計二つの第二給油部と、を備える。
【0008】
このような軸受装置によると、第一給油部によって軸受パッド内部の流路に油が供給されることで、軸受パッド内部には常に供給時温度の油が流通することとなる。従って、油の供給量を低減させたとしても、軸受パッドを充分に冷却することができ、温度上昇による軸受パッドの焼付き防止等を図ることが可能となる。
また、第二給油部によって、軸受パッドの表面にも、常に供給時温度の油が流通することとなる。従って、軸受パッドの冷却効果のさらなる向上を図ることができる。
さらに、一の軸受パッドの流路を流通して冷却を行った油を、引き続き隣接する軸受パッドの流路に供給することができる。従って、このように油を複数の軸受パッドで共用することで、さらなる給油量の低減が可能となる。
【0013】
また、本発明に係る軸受装置は、粘性ポンプ作用によって前記油を供給する粘性ポンプ部をさらに備えていてもよい。
【0014】
さらに、本発明に係る回転機械は、上記の軸受装置を備えることを特徴とする。
【0015】
このような回転機械においては、軸受装置への油の供給量を低減させたとしても、軸受パッドを充分に冷却することができる。従って、温度上昇による軸受パッドの焼付き防止等を図って、軸受パッドの冷却効果向上によって性能向上が可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の軸受装置及び回転機械によると、第一給油部によって直接軸受パッドの流路へ給油することで、給油量の低減を図りながら、軸受パッドの冷却効果の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第一実施形態に係る軸受装置を軸心方向から見た全体概略図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る軸受装置の軸心受パッドの斜視図である。
図3】本発明の第二実施形態に係る軸受装置を軸心方向から見た全体概略図である。
図4】本発明の第三実施形態に係る軸受装置を軸心方向から見た全体概略図である。
図5】本発明の第四実施形態に係る軸受装置を軸心方向から見た全体概略図である。
図6】本発明の第四実施形態に係る軸受装置の軸受パッドの斜視図である。
図7】本発明の第四実施形態に係る軸受装置の軸受パッドの断面図であって、図5のA−A断面を示すものである。
図8】本発明の第五実施形態に係る軸受装置の軸受パッドの断面図であって、図7と同じ断面を示すものである。
図9】本発明の第五実施形態に係る軸受装置の軸受パッドの上面図であって、図8を上方から見たものである。
図10】従来の軸受装置の全体概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第一実施形態に係る軸受装置1について説明する。
この軸受装置1は、蒸気タービン、ガスタービン、原子力タービン等の回転機械において径方向(ラジアル方向)から、又は軸心P方向(スラスト方向)から回転軸100を回転可能に支持する。
【0019】
図1に示すように、軸受装置1は、軸心Pの径方向外側から回転軸100を支持するラジアル軸受であって、回転軸100と、回転軸100の軸心Pを通る水平ラインLよりも下半部(図1の紙面下側)に配設された二つの軸受パッド2と、これら軸受パッド2を径方向外側から支持する軸受ケーシング9とを備えている。また、軸受ケーシング9に設けられて軸受パッド2に冷却用の油Wを外部から導入する油入口部12と、外部に油Wを排出する油出口部13と、軸受パッド2に油Wを供給する第一給油部15及び第二給油部16とを備えている。
【0020】
ここで、回転軸100の回転方向前方側に設置された軸受パッド2を軸受パッド2Aと称し、回転方向後方側に設置されたものを軸受パッド2Bと称する。
【0021】
軸受パッド2A、2Bは、互いに軸心Pの周方向に間隔をあけて設けられている。
また各々の軸受パッド2A、2Bは、軸心Pの径方向内側に設けられて回転軸100の外周面に対向する表層部5と、表層部5の軸心Pの径方向外側に設けられた裏金部6と、裏金部6の軸心Pの径方向外側に設けられた支持部7とを有している。
【0022】
表層部5は、耐摩耗性、耐疲労性を有し、軟質材料であるホワイトメタルが用いられ、裏金部6に溶着されることで、回転軸100の外周面に沿う形状に形成されている。
【0023】
裏金部6は、例えば銅等よりなり、さらに図2に示すようにこの裏金部6には、支持部7と接合された径方向外側の背面から軸心Pの径方向内側に向かって凹むとともに、軸心Pの周方向の一方側の端面から他方側の端面に向かって延びる溝状の流路FC1が形成されている。即ち、この流路FC1は裏金部6と支持部7との間に形成されていることで、軸受パッド2A、2Bの内部を貫通して軸受パッド2A、2Bにおける回転軸100の回転方向前方側と後方側とを連通するように形成されている。そして本実施形態ではこの流路FC1は、軸心P方向に間隔をあけて複数が設けられている。
【0024】
支持部7は、例えば銅等よりなり、裏金部6に結合されてこの裏金部6を支持するとともに、支持部7の径方向外側にはピボット8が設けられており、このピボット8が軸受ケーシング9の内周面9aに接触して、軸受ケーシング9の内周側で支持部7を軸心Pの径方向に揺動可能としている。
【0025】
軸受ケーシング9は、水平ラインLより下半部となる位置では二つの軸受パッド2A、2Bを回転軸100との間に収容可能となるように、また水平ラインLよりも上半部となる位置では、回転軸100と直接対向するように内周面9aが形成された環状をなしている。即ちこの軸受ケーシング9は下半部で径方向の厚さ寸法が薄く、上半部では厚く形成されている。
【0026】
またこの軸受ケーシング9の下半部における内部には、油入口部12と第一給油部15及び第二給油部16とを連通するように油導入流路FC2が形成され、外部から取り込まれた油Wがこの油導入流路FC2を流通可能となっている。
【0027】
油入口部12は、軸受ケーシング9に設けられて径方向外側に向かって開口しているとともに油導入流路FC2に連通し、外部から軸受パッド2A、2Bの冷却用の油Wを油導入流路FC2に導入可能としている。なお、本実施形態では、油入口部12は、軸受パッド2Aと同じ周方向位置で軸受ケーシング9に径方向外側から嵌め込まれて設置されている。油導入流路FC2はこの油入口部12から各々の軸受パッド2A、2Bの回転方向前方側に向かって延びていることとなる。
【0028】
第一給油部15は、油導入流路FC2に連通して、軸受パッド2A、2Bの回転方向の前方側において、各々の軸受パッド2A、2Bの流路FC1に向かって開口する開口部を有する管状部材である。このようにして油入口部12、油導入流路FC2を介して油Wが流路FC1へ直接供給可能とされている。
【0029】
第二給油部16は、第一給油部15から分岐して設けられて各々の軸受パッド2A、2Bと回転軸100との間、即ち軸受パッド2A、2Bの表層部5の表面に向かって開口する開口部を有する管状部材である。このようにして油入口部12、油導入流路FC2を介して油Wが表層部5の表面へ直接供給可能とされている。
【0030】
油出口部13は、軸受パッド2Bの回転方向後方側で軸受ケーシング9に設けられて、径方向内側に向かって開口するとともに径方向外側に開口して、軸受ケーシング9の内外を貫通している。このようにして軸受パッド2Bを流通した後の油Wを外部へ排出可能としている。
【0031】
このような軸受装置1においては、第一給油部15によって軸受パッド2A、2Bの流路FC1に油Wが供給されることで、この流路FC1には常に供給口から供給された時点の供給時温度で油Wを流通させながら、裏金部6を背面から冷却することができる。
【0032】
従って、油Wの供給量を全体として低減させたとしても、軸受パッド2A、2Bを充分に冷却することができ、温度上昇による軸受パッド2A、2Bの表層部5の溶融、焼付き防止を図ることが可能となる。
【0033】
また、第二給油部16によって、軸受パッド2A、2Bの表層部5の表面にも、常に油入口部12からの供給時温度の油Wが流通することとなり、軸受パッド2A、2Bの冷却効果のさらなる向上を図ることができる。
【0034】
本実施形態の軸受装置1によると、第一給油部15及び第二給油部16によって直接軸受パッド2A、2Bの流路FC1及び表層部5表面へ給油することで、給油量の低減を図りながらも、軸受パッド2A、2Bの冷却効果の向上が可能となる。
【0035】
さらに、給油量低減によって軸受装置1全体の作動ロスを少なくすることができ、軸受装置1の性能向上につながる。
【0036】
なお、本実施形態では、第一給油部15及び第二給油部16が管状部材よりなっているが、軸受パッド2A、2Bの表層部5の表面、及び流路FC1へ向かって開口する開口部を有する例えばチャンバ等であってもよい。
【0037】
また本実施形態では、第一給油部15及び第二給油部16は二つの軸受パッド2A、2Bに油Wを流通可能とするように、各々の軸受パッド2A、2Bに設置されているが、軸受パッド2A、2Bのいずれか一方のみに設けられていてもよい。
【0038】
さらに、これら軸受パッド2A、2Bは、本実施形態のように二つのみが下半部に設けられている場合に限定されず、例えば上半部にも設けられていてもよく、数量、設置位置は限定されない。
【0039】
次に、本発明の第二実施形態に係る軸受装置21について、図3を参照して説明する。
なお、第一実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態の軸受装置21は、第一実施形態の軸受装置1を基本構成として、第一実施形態の軸受パッド2Aの回転方向前方側に設けられた第二給油部16に代えて、粘性ポンプ部22を備えている。
【0040】
そして、軸受ケーシング29は第一実施形態の軸受ケーシング9と略同一の部材であるが、軸受パッド2Aの回転方向前方側で、油導入流路FC2に連通して軸受ケーシング29の上半部に延びるように軸受ケーシング29の内部に粘性ポンプ流路FC3が形成されている。この粘性ポンプ流路FC3は、上半部で軸受ケーシング29の内周面29aに開口することで給油口23が形成されており、このようにして油導入流路FC2からの油Wを、回転軸100と軸受ケーシング29との間に油Wを供給可能としている。
【0041】
粘性ポンプ部22は、給油口23の回転方向後方側で上半部の軸受ケーシング29の内周面29aから径方向外側に向かって凹んで形成された溝部となっている。
【0042】
このような軸受装置21においては、油入口部12からの油Wが粘性ポンプ流路FC3を通じて、給油口23から回転軸100と軸受ケーシング29との間に流入する。流入した油Wは粘性ポンプ部22を流通することで、回転軸100の回転力による粘性ポンプ作用によって昇圧されて、二つの軸受パッド2A、2Bの表層部5を流通する。
【0043】
そして、軸受パッド2Bの回転方向前方側であって、軸受パッド2Aの回転方向後方側の第二給油部16からは、新しく油Wが導入され、軸受パッド2Aを流通した油Wと混合され、軸受パッド2Bを流通することとなる。
【0044】
さらに、回転方向後方側の軸受パッド2Bを流通して熱を回収した後に、油Wの一部が油出口部13から外部に排出され、また残りがキャリーオーバーされて、給油口23からの新しい油Wと混合されて、再度、回転方向前方側の軸受パッド2Aの表層部5に供給されることとなる。なお、軸受パッド2Bを流通して熱を回収した後の油Wの全てがキャリーオーバーされないように、油出口部13の回転方向後方側であって水平ラインL近傍の位置では、一部回転軸100と軸受ケーシング29との間が狭く形成されたスクレーパ部25となっている。
【0045】
本実施形態の軸受装置21によると、第一給油部15と粘性ポンプ部22とを併設したことで、軸受パッド2A、2Bを内部から直接冷却するとともに、循環冷却によって軸受パッド2A、2Bの表層部5の表面を冷却でき、給油量を低減しながらの冷却が可能となるため、冷却効果の向上が可能となる。
【0046】
なお、回転方向後方側の軸受パッド2Bの表層部5の表面へ油Wを供給する第二給油部16は必ずしも設けなくともよい。この場合、軸受パッド2A、2Bを内部から直接冷却しながら軸受装置21の構造をシンプル化でき、コスト低減につながる。
【0047】
次に、本発明の第三実施形態に係る軸受装置31について、図4を参照して説明する。
なお、第一実施形態及び第二実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
本実施形態の軸受装置31は、第二実施形態の軸受装置21を基本構成として、軸受パッド2Bの回転方向前方側であって、軸受パッド2Aの回転方向後方側に設けられた第一給油部15に代えて、接続部32を備えている。
【0048】
接続部32は、二つの軸受パッド2A、2B同士の間にわたってこれらを接続するように設置されて、その内部は周方向に向かって形成された接続流路FC4となっている例えば管状部材等である。そして、この接続流路FC4が軸受パッド2A、2B各々に形成された流路FC1同士を連通している。
【0049】
本実施形態の軸受装置31によると、回転方向前方側の軸受パッド2Aの流路FC1を流通して冷却を行った油Wを、接続流路FC4を通じて引き続き回転方向後方側の軸受パッド2Bの流路FC1に供給することができる。
【0050】
ここで、油Wが軸受パッド2Aの流路FC1を流通して、この軸受パッド2Aを内部から冷却した後には、この油Wにはそれ程大きな温度上昇は生じない。従ってこの油Wを再利用することでさらに軸受装置31全体の給油量の低減が可能となり、冷却向上が可能となる。
【0051】
次に、本発明の第四実施形態に係る軸受装置41について説明する。
なお、第一実施形態から第三実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態の軸受装置41は、軸心P方向から回転軸100を支持するスラスト軸受である。
【0052】
そしてこの軸受装置41は、回転軸100と、周方向に間隔をあけて設けられて回転軸100に軸心P方向から対向する複数の軸受パッド42と、これら軸受パッド42同士の間に設けられた給油部51と、軸受パッド42を軸心P方向の一方側から支持するケーシング43(図7参照)とを備えている。
【0053】
これら軸受パッド42は、回転軸100に設けられた不図示のスラストカラーに軸心P方向から対向するように設けられており、図6に示すように、各々の軸受パッド42は、軸心P方向から見て扇形状に形成されている。そして、各々の軸受パッド42は、図6及び図7に示すように、上記スラストカラーに対向する表層部45と、表層部45の軸心P方向の一方側に設けられた裏金部46と、裏金部46の軸心P方向の一方側に設けられた支持部47とを有している。
を有している。
【0054】
表層部45は、裏金部46にホワイトメタル等が溶着されて形成されている。
【0055】
裏金部46は、例えば銅等よりなり、さらに支持部47と接合された軸心P方向の一方側の背面からは、軸心P方向の他方側に向かって凹むとともに、軸心Pの周方向の一方側の端面から他方側の端面に向かって延びる流路FC5が形成されている。
【0056】
即ち、この流路FC5は裏金部46と支持部47との間に形成されていることで、軸受パッド42の内部を貫通するように軸受パッド42における回転方向前方側と後方側とを連通するように形成されている。そして本実施形態ではこの流路FC5は、径方向に間隔をあけて複数が設けられている。
【0057】
支持部47は、例えば銅等よりなり、裏金部46に結合されてこの裏金部46を支持するとともに、軸心P方向の一方側にはピボット48(図8参照)が設けられており、このピボット48がケーシング43の軸心P方向の他方側に接触して、支持部47を軸心P方向に揺動可能としている。
【0058】
図6及び図7に示すように、給油部51は、ブロック状をなし、各々の軸受パッド42の回転方向前方側で、軸受パッド42の径方向全域にわたって設けられている。またこの給油部51は、外部から軸受パッド42冷却用の油Wを導入する油導入部54と、油導入流路FC6に接続されて油Wを流路FC5へ直接供給する第一給油部55と、第一給油部55に接続されて油Wを表層部45に供給する第二給油部56とを有している。そしてこれらは、油導入部54、第一給油部55、第二給油部56は一体となって給油部51を構成している。
【0059】
油導入部54は、給油部51における軸心P方向の一方側に位置する部分であり、この油導入部54には、軸心P方向の一方側に向かって開口するとともに軸心P方向の他方側に向かって延びる油導入流路FC6が形成されている。このようにして、外部から軸受パッド42の冷却用の油Wを導入可能としている。
【0060】
第一給油部55は、給油部51における軸受パッド42側に位置する部分であり、この第一給油部55には、油導入流路FC6に連通するとともに軸受パッド42の流路FC5に連通する孔部55aが形成されている。このようにして第一給油部55は、軸受装置41の外部から、油導入流路FC6を経由して導入された冷却用の油Wを軸受パッド42の流路FC5に直接供給可能としている。
【0061】
第二給油部56は、給油部51における軸心P方向の他方側、即ち表層部45側に位置する部分であり、この第二給油部56には、軸心P方向の他方側に開口するとともに径方向の全域にわたってチャンバ56aが形成されている。このようにして第二給油部56は、軸受パッド42の表層部45の表面に冷却用の油Wを直接供給可能としている。ここで、本実施形態では、第一給油部55の孔部55aが第二給油部56のチャンバ56aに連通しており、即ち孔部55aがこのチャンバ56aを介して油導入流路FC6に連通している。
【0062】
本実施形態の軸受装置41によると、第一給油部55及び第二給油部56によって直接軸受パッド42の流路FC5及び表層部45の表面へ給油が可能となる。従って、給油量の低減を図りながらも、軸受パッド42の冷却効果の向上が可能となる。
さらに、給油量低減によって軸受装置41全体の作動ロスを少なくすることができ、性能向上につながる。
【0063】
なお、本実施形態では、この第一給油部55及び第二給油部56は二つの軸受パッド42に油Wを流通可能に、各々の軸受パッド42に設置されているが、例えばいずれか一つの軸受パッド42にのみ設けられていてもよく、設置数量は限定されない。
【0064】
次に、本発明の第五実施形態に係る軸受装置61について説明する。
なお、第一実施形態から第四実施形態と共通の構成要素には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
図8及び図9に示すように、本実施形態の軸受装置61は、第四実施形態の軸受装置41を基本構成として、さらに接続部62を備えている。
【0065】
接続部62は、隣接する二つの軸受パッド42間にわたってこれらを接続するように、軸受パッド42の径方向全域に設置されてブロック状をなし、その内部にはこれら軸受パッド42各々に形成された流路FC5同士を連通するように接続流路FC7が形成されている。本実施形態では、接続部62は一部の隣接する軸受パッド42同士の間にのみ設けられている。
【0066】
ここで、第二給油部66は第四実施形態の第二給油部56と略同一の部材となっているが、チャンバ56aと接続流路FC7とを連通するように、第二給油部56を貫通する連通孔66aがさらに形成されている。本実施形態では、この接続流路部62は全ての隣接する二つの軸受パッド42間に設置されず、一部のみの設置となっている。
【0067】
本実施形態の軸受装置61によると、一つの軸受パッド42の流路FC5を流通して冷却を行った油Wを、接続流路FC7、連通孔66a、チャンバ56aを介して、引き続き回転方向後方側に隣接する軸受パッド42の流路FC5に供給することができる。
【0068】
なお、例えば接続部62は、全ての隣接する二つの軸受パッド42間に設置されてもよく、この場合さらなる給油量の低減を図ることが可能となる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について詳細を説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において、多少の設計変更も可能である。
例えば、第一給油部15、55及び第二給油部16、56、66は必ずしも軸受パッド2、42の回転方向前方側に設けられる必要は無く、回転方向後方側に設けられて、回転方向とは逆方向に油Wを流通させてもよい。また、第一給油部15、55及び第二給油部16、56、66が回転方向前方側に設けられた軸受パッド2、42と、回転方向後方側に設けられた軸受パッド2、42とが混在していてもよい。
【0070】
ここで、第二実施形態及び第三実施形態で説明した粘性ポンプ部22によっては、油Wは回転方向前方側から導入されるため、回転方向後方側に位置する軸受パッド2に油Wが到達した時点で、油Wの温度は外部から供給時の温度と比較して高温となっている。従って、例えば、粘性ポンプ部22に加えて、回転方向後方側に第一給油部15及び第二給油部16が設けられていれば、回転方向後方側の軸受パッド2を先に冷却することが可能となり、冷却効果をさらに向上できる。
【0071】
また、上述の実施形態は適宜組み合わせてよい。例えば第一実施形態の第一給油部15及び第二給油部16と、第二実施形態の粘性ポンプ部22と、第三実施形態の接続流路部FC4とを併設してもよい。これによってさらなる冷却効果向上が可能となる。
【符号の説明】
【0072】
1…軸受装置 2…軸受パッド 5…表層部 6…裏金部 7…支持部 8…ピボット 9…軸受ケーシング 12…油入口部 13…油出口部 15…第一給油部 16…第二給油部 FC1…流路 FC2…油導入流路 P…軸心 W…油 21…軸受装置 22…粘性ポンプ部 25…スクレーパ部 FC3…粘性ポンプ流路 23…給油口 29…軸受ケーシング 31…軸受装置 32…接続部 FC4…接続流路 41…軸受装置 42…軸受パッド 43…ケーシング 45…表層部 46…裏金部 47…支持部 48…ピボット 51…給油部 54…油導入部 55…第一給油部 55a…孔部 56…第二給油部 56a…チャンバ FC5…流路 FC6…油導入流路 61…軸受装置 62…接続部 FC7…接続流路 100…回転軸 200…回転軸 201…軸受装置 202A、202B…軸受パッド 203…軸受ケーシング 204…給油口 205…溝部 206…油入口部 207…油出口部 FC…流路 W1…油
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