(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第一の金型と第二の金型の型合わせにおいて、前記第一の金型の前記第二の金型に対向した面に置かれた基板にマトリックス状に配列された複数の半導体素子の表面の一部を、前記第二の金型の前記第一の金型に対向した面に形成されたキャビティ凹部の底面から突出している押圧部の先端面で、伸展性を有する離型フィルムを介在させて押圧しながら、前記第一の金型と前記離型フィルムの間に封止樹脂を充填する樹脂封止方法であって、
前記押圧部を前記キャビティ凹部の底面から突出した形態とする際に、前記キャビティ凹部の底面と前記押圧部の先端面が同一面上に位置する状態で、前記キャビティ凹部の底面と前記押圧部の先端面とに亘るように前記離型フィルムを吸着させ、この吸着状態を維持しながら、同キャビティ凹部が作動して、同キャビティ凹部の底面に対して前記押圧部を相対的に出入りさせて、前記キャビティ凹部の底面と前記押圧部の先端面の間に段差を形成する
樹脂封止方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで、特許文献1に記載された装置では、押圧部の先端に形成された段差部の側面に対して、離型フィルムを伸ばして沿わせることが難しく、押圧部の側面と、この側面に隣接したキャビティ凹部の底面の一部から離型フィルムが浮いた状態となる現象が生じていた。この離型フィルムの浮いた領域が、型締めの際に、対向する基板に設けられたボンディングワイヤである金線と接触することで、金線が破損したり、離型フィルムが破れたりして、樹脂成形時の成形不良に繋がる問題があった。離型フィルムと金線との接触は、半導体素子の表面の一部に設けられる露出部の端部と金線との間の距離が近い場合や、半導体素子の厚みが薄い場合には、より顕著に発生してしまう。
【0010】
また、その他の従来装置では、金型に設けられた押圧部と、キャビティ凹部の底面との間に形成される段差部において、特許文献1に記載された装置と同様に、押圧部の側面と、この側面に隣接したキャビティ凹部の底面の一部から離型フィルムが浮いた状態となり、離型フィルムの一部が金線と接触することで、金線や離型フィルムの破損に繋がってしまう。
【0011】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、半導体素子の表面に露出部分を形成した樹脂封止パッケージの製造において、離型フィルムを押圧部やキャビティ凹部の底面に吸着させる際に、キャビティ凹部の底面から突出した押圧部の側面と、これに隣接したキャビティ凹部の底面の一部の形状に対して、離型フィルムが沿わない部分が生じないように、離型フィルムをキャビティ凹部の底面形状に沿わせて吸着させることができる樹脂封止方法及び樹脂封止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために本発明の樹脂封止用金型は、第一の金型と第二の金型の型合わせにおいて、前記第一の金型の前記第二の金型に対向した面に置かれた基板にマトリックス状に配列された複数の半導体素子の表面の一部を、前記第二の金型の前記第一の金型に対向した面に形成されたキャビティ凹部の底面から突出している押圧部の先端面で、伸展性を有する離型フィルムを介在させて押圧しながら、前記第一の金型と前記離型フィルムの間に封止樹脂を充填する樹脂封止方法であって、前記押圧部を前記キャビティ凹部の底面から突出した形態とする際に、前記キャビティ凹部の底面と前記押圧部の先端面が同一面上に位置する状態で、前記キャビティ凹部の底面と前記押圧部の先端面とに亘るように前記離型フィルムを吸着させ、この吸着状態を維持しながら、前記キャビティ凹部の底面に対して前記押圧部を相対的に出入りさせて、前記キャビティ凹部の底面と前記押圧部の先端面の間に段差を形成するものである。
【0013】
ここで、第一の金型と第二の金型の型合わせにおいて、第一の金型の第二の金型に対向した面に置かれた基板に配列された半導体素子の表面の一部を、第二の金型の第一の金型に対向した面に形成されたキャビティ凹部の底面から突出している押圧部の先端面で、離型フィルムを介在させて押圧することによって、半導体素子の表面の一部を押圧部の先端面でマスキングすることができる。即ち、樹脂成形品の半導体素子の表面の一部に、封止樹脂が付着していない露出部を形成可能となる。また、離型フィルムを介在させることによって、押圧部が半導体素子の表面に与える圧力が低減され、半導体素子が破損することを抑止可能となる。また、離型フィルムを介在させることによって、型開き時に、樹脂成形品が第二の金型から離型しやすくなる。なお、ここでいうキャビティ凹部とは、第二の金型に形成され、型締め時に樹脂が充填されるキャビティを形成するための凹んだ部分を意味しているが、第一の金型にも別途のキャビティ凹部を形成して、第一の金型と第二の金型を型合わせした際に、両方の金型の間に形成される空間をキャビティとして封止樹脂が充填される構成であってもよい。
【0014】
また、第一の金型と第二の金型の型合わせにおいて、第一の金型の第二の金型に対向した面に置かれた基板にマトリックス状に配列された複数の半導体素子の表面の一部を、第二の金型の第一の金型に対向した面に形成されたキャビティ凹部の底面から突出している押圧部の先端面で押圧することによって、複数の半導体素子の表面に対して、同時にマスキングすることが可能となる。
【0015】
また、キャビティ凹部の底面と押圧部の先端面が同一面上に位置する状態で、キャビティ凹部の底面と押圧部の先端面とに亘るように離型フィルムを吸着させることによって、キャビティ凹部の底面と押圧部の先端面が段差のない同一面上に位置するため、この同一面に対して離型フィルムを沿わせて吸着させることができる。
【0016】
また、キャビティ凹部の底面と押圧部の先端面が同一面上に位置する状態で、キャビティ凹部の底面と押圧部の先端面とに亘るように離型フィルムを吸着させ、この吸着状態を維持しながら、キャビティ凹部の底面に対して押圧部を相対的に出入りさせることによって、キャビティ凹部の底面と押圧部の先端面に亘って吸着させた離型フィルムのうち、押圧部に当接する部分とその近傍を引き伸ばすことができる。
【0017】
また、キャビティ凹部の底面に対して押圧部を相対的に出入りさせて、キャビティ凹部の底面と押圧部の先端面の間に段差を形成することによって、キャビティ凹部の底面に対して押圧部の先端面を突出させ、この押圧部の先端面で半導体素子の表面の一部を押圧しながら、マスキングすることができる。
【0018】
また、押圧部をキャビティ凹部の底面から突出した形態とする際に、キャビティ凹部の底面と押圧部の先端面が同一面上に位置する状態で、キャビティ凹部の底面と押圧部の先端面とに亘るように離型フィルムを吸着させ、この吸着状態を維持しながら、キャビティ凹部の底面に対して押圧部を相対的に出入りさせて、キャビティ凹部の底面と押圧部の先端面の間に段差を形成することによって、離型フィルムのうち、押圧部に当接する部分とその近傍を引き伸ばしながら、キャビティ凹部の底面に対して押圧部の先端面を突出させることができる。引き伸ばされた離型フィルムは、キャビティ凹部の底面に対して突出した押圧部の側面と、これに隣接するキャビティ凹部の底面の一部に沿った状態となる。即ち、キャビティ凹部の底面形状に沿わせて離型フィルムを吸着させることができる。
【0019】
また、押圧部の先端面が略平坦な形状を有し、その面積が、対向する半導体素子の表面の面積より小さく形成された場合には、半導体素子の表面の一部が押圧部の先端面でマスキングされるものとなる。
【0020】
また、押圧部が作動して段差を形成する場合には、キャビティ凹部の底面と押圧部の先端面が同一面上に位置する状態から、押圧部を作動させて、押圧部をキャビティ凹部の底面から突出した形態とすることができる。
【0021】
また、キャビティ凹部が作動して段差を形成する場合には、キャビティ凹部の底面と押圧部の先端面が同一面上に位置する状態から、キャビティ凹部を作動させて、押圧部をキャビティ凹部の底面から突出した形態とすることができる。
【0022】
また、押圧部が、押圧する半導体素子からの反力に応じて、それぞれが独立して変位可能に構成されている場合には、半導体素子から押圧部が受ける反力の大きさが異なっていても、押圧部が変位することで反力を吸収可能となる。複数の半導体素子の間で、基板に実装する際の接着剤の量や乾燥具合等に起因して、基板と半導体素子を併せた厚みや、基板上での半導体素子の傾き具合が変わり、この結果として、押圧部が半導体素子の表面の一部を押圧した際に、半導体素子から受ける反力が異なるものとなる。押圧部が独立して変位することで、複数の半導体素子の間に生じた反力のばらつきに対応することができる。
【0023】
上記の目的を達成するために本発明の樹脂封止装置は、マトリックス状に配列された複数の半導体素子が搭載された基板が置かれる第一の金型と、該第一の金型との型合わせにおいて、同第一の金型に対向した面に形成され、前記半導体素子を封止樹脂で封止した樹脂部を模るキャビティ凹部と、該キャビティ凹部の底面に対して相対的に出入りして、その先端面で、伸展性を有する離型フィルムを介在させて、前記半導体素子の表面の一部を押圧する押圧部が形成された第二の金型と、前記キャビティ凹部を被覆した前記離型フィルムを吸引して、同キャビティ凹部の底面と前記押圧部の先端面とに亘るように離型フィルムを吸着させるフィルム吸着手段と、前記フィルム吸着手段による前記離型フィルムの吸着を維持しながら、前記押圧部を前記キャビティ凹部の底面に対して相対的に出入りさせ、同キャビティ凹部の底面と同押圧部の先端面が同一面上に位置する状態から、同押圧部の先端面が突出した段差を形成する段差形成手段を備える。
【0024】
ここで、マトリックス状に配列された複数の半導体素子が搭載された基板が置かれる第一の金型と、第一の金型との型合わせにおいて、第一の金型に対向した面に形成され、半導体素子を封止樹脂で封止した樹脂部を模るキャビティ凹部が形成された第二の金型と、キャビティ凹部を被覆した離型フィルムを吸引して、キャビティ凹部の底面と押圧部の先端面とに亘るように離型フィルムを吸着させるフィルム吸着手段によれば、第一の金型と第二の金型の間に複数の半導体素子が搭載された基板を配置して、第一の金型と離型フィルムとの間に封止樹脂を充填することで、樹脂成形品を成型することができる。また、離型フィルムによって、押圧部のマスキングにより半導体素子の表面に与える圧力が低減され、半導体素子が破損することを抑止可能となる。更に、離型フィルムによって、型開き時に、樹脂成形品が第二の金型から離型しやすくなる。
【0025】
また、マトリックス状に配列された複数の半導体素子が搭載された基板が置かれる第一の金型と、第一の金型との型合わせにおいて、第一の金型に対向した面に形成され、半導体素子を封止樹脂で封止した樹脂部を模るキャビティ凹部と、キャビティ凹部の底面に対して相対的に出入りして、その先端面で、伸展性を有する離型フィルムを介在させて、半導体素子の表面の一部を押圧する押圧部が形成された第二の金型と、キャビティ凹部を被覆した離型フィルムを吸引して、キャビティ凹部の底面と押圧部の先端面とに亘るように離型フィルムを吸着させるフィルム吸着手段と、押圧部をキャビティ凹部の底面に対して相対的に出入りさせ、押圧部の先端面が突出した段差を形成する段差形成手段によれば、半導体素子の表面の一部を押圧部の先端面でマスキングすることができる。即ち、樹脂成形品の半導体素子の表面の一部に露出部を形成可能となる。また、1つの基板上にマトリックス状に配列された複数の半導体素子の表面に対して、同時にマスキングすることが可能となる。
【0026】
また、キャビティ凹部の底面に対して相対的に出入りして、その先端面で、伸展性を有する離型フィルムを介在させて、半導体素子の表面の一部を押圧する押圧部と、キャビティ凹部を被覆した離型フィルムを吸引して、キャビティ凹部の底面と押圧部の先端面とに亘るように離型フィルムを吸着させるフィルム吸着手段によって、キャビティ凹部の底面と押圧部の先端面との間で段差のない同一面を構成して、この同一面に対して離型フィルムを沿わせて吸着させることができる。
【0027】
また、キャビティ凹部を被覆した離型フィルムを吸引して、キャビティ凹部の底面と押圧部の先端面とに亘るように離型フィルムを吸着させるフィルム吸着手段と、フィルム吸着手段による離型フィルムの吸着を維持しながら、押圧部をキャビティ凹部の底面に対して相対的に出入りさせ、キャビティ凹部の底面と押圧部の先端面が同一面上に位置する状態から、押圧部の先端面が突出した段差を形成する段差形成手段によって、キャビティ凹部の底面と押圧部の先端面に亘って吸着させた離型フィルムのうち、押圧部に当接する部分とその近傍を引き伸ばすことができる。
【0028】
また、押圧部をキャビティ凹部の底面に対して相対的に出入りさせ、キャビティ凹部の底面から押圧部の先端面が突出した段差を形成する段差形成手段によって、キャビティ凹部の底面に対して押圧部の先端面を突出させ、この押圧部の先端面で半導体素子の表面の一部を押圧しながら、マスキングすることができる。
【0029】
また、キャビティ凹部の底面に対して相対的に出入りして、その先端面で、伸展性を有する離型フィルムを介在させて、半導体素子の表面の一部を押圧する押圧部と、キャビティ凹部を被覆した離型フィルムを吸引して、キャビティ凹部の底面と押圧部の先端面とに亘るように離型フィルムを吸着させるフィルム吸着手段と、フィルム吸着手段による離型フィルムの吸着を維持しながら、押圧部をキャビティ凹部の底面に対して相対的に出入りさせ、キャビティ凹部の底面と押圧部の先端面が同一面上に位置する状態から、押圧部の先端面が突出した段差を形成する段差形成手段によれば、キャビティ凹部の底面と押圧部の先端面に吸着された離型フィルムのうち、押圧部に当接する部分とその近傍を引き伸ばしながら、キャビティ凹部の底面に対して押圧部の先端面を突出させることができる。引き伸ばされた離型フィルムは、キャビティ凹部の底面に対して突出した押圧部の側面と、これに隣接するキャビティ凹部の底面の一部に沿った状態となる。即ち、キャビティ凹部の底面形状に沿わせて離型フィルムを吸着させることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る樹脂封止方法及び樹脂封止装置は、半導体素子の表面に露出部分を形成した樹脂封止パッケージの製造において、離型フィルムを押圧部やキャビティ凹部の底面に吸着させる際に、キャビティ凹部の底面から突出した押圧部の側面と、これに隣接したキャビティ凹部の底面の一部の形状に対して、離型フィルムが沿わない部分が生じないように、離型フィルムをキャビティ凹部の底面形状に沿わせて吸着させることができるものとなっている。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0033】
図1に示すように、樹脂封止装置Aは、下型ダイセット11及び下型チェスブロック12で構成された第一の金型1(下金型1)と、上型ダイセット21及び上型チェスブロック22で構成された第二の金型2(上金型2)から成る金型Bと、トランスファーユニット3と、金型を上下に駆動し、金型を開閉させる型締装置4と、で構成されている。また、樹脂封止装置Aは、基板及び樹脂成形品を搬送する基板搬送装置や、樹脂封止後の成形品を搬送する製品搬送装置(何れも図示省略)を有している。樹脂封止装置Aは、本発明に係る樹脂封止装置の一例である。
【0034】
なお、本実施の形態においては、上型ダイセット21に対する下型ダイセット11の位置を「下」または「下方」とし、下型ダイセット11に対する上型ダイセット21の位置を「上」または「上方」とする。また、以下の説明においては、便宜上、第一の金型1を「下金型1」と呼び、第二の金型2を「上金型2」と呼ぶこととするが、本発明を適用した樹脂封止装置においては、装置構成によって、後述する押圧ブロック28が設けられた金型を「下金型」と呼び、この下金型と対になる型を「上金型」と呼ぶ金型を利用する態様も含まれるものである。
【0035】
金型Bは、複数の半導体素子5がマトリックス状に搭載された基板6(
図2の上図参照)を、樹脂で封止する金型である。金型Bにより基板6を樹脂封止して、基板6上に樹脂成形部61と、複数の半導体素子5の表面の一部が外部に露出した露出部51が形成された樹脂成型品62(
図2の下図参照)が成形される。対象となる半導体素子は、例えば、赤外線センサやイメージセンサといった光学系センサのセンサ素子である。
【0036】
なお、以下の
図3乃至
図10では、図が煩雑にならないようにする便宜上、1つの半導体素子5a(
図6a参照)を搭載した略正方形の基板6aを図示している。
また、同様に、実際の装置構成では、上金型2には複数の押圧ブロックが形成されるものとなるが、
図4乃至
図10では、便宜上、1つの押圧ブロック28(
図6a参照)を図示している。
更に、実際の装置構成では、後述するポットブロック14には複数のポットが形成されるものとなるが、
図3乃至
図5では、便宜上、1つのポット15(
図4参照)を図示している。
【0037】
ここで、金型Bが樹脂封止の対象とする基板は、1つの基板上に複数の半導体素子が搭載されたものであり、基板の形状は特に限定されるものではない。そのため、
図2に示すような略長方形の基板6のみならず、例えば略正方形の基板であってもよい。
【0038】
下型ダイセット11は下型チェスブロック12を、上型ダイセット21は上型チェスブロック22を、それぞれ支持する部材である(
図1参照)。下型チェスブロック12及び上型チェスブロック22は、基板が載置される下型キャビティブロック13、樹脂材料が充填される上型キャビティブロック23(
図4乃び
図5参照)をそれぞれ有し、協働して樹脂成形品を製造する。下型チェスブロック12及び上型チェスブロック22は、樹脂成形品の種類に応じて交換可能であり、その詳細な構造は後述する。また、上型ダイセット21及び下型ダイセット11は原則、樹脂成形品の種類を問わず同一のものが使用可能である。
【0039】
トランスファーユニット3は、金型Bを型締めした状態で、ポット15(
図5参照)で加熱された熱硬化性の樹脂を溶融させながら、カル部25及び樹脂通路27を経由してキャビティ凹部26(
図5参照)に押し出す移載装置である。
【0040】
型締装置4は、
図1及び
図3に示すように、鉛直方向に設けられた複数の互いに略平行なタイバー41を有している。各タイバー41の上端部は、固定プラテン42でつながれている。さらに、各タイバー41の下端部は、図示しないベースプラテンに繋がれている。
【0041】
また、各タイバー41には、それぞれに亘るようにして、可動プラテン43が昇降可能に嵌装されている(
図1及び
図3参照)。可動プラテン43は、油圧シリンダー又は、モーター駆動によりボールねじを介したトグルリンク装置などのアクチュエータを備えた昇降駆動部(図示省略)により、所要のストロークで昇降することができると共に、高圧での型締め行う部材である。
【0042】
固定プラテン42の下面には、上型ダイセット21が固定されている。上型ダイセット21の下側には、上型チェスブロック22が固定されている。可動プラテン43の上面には、下型ダイセット11が固定されている。下型ダイセット11の上側には、下型チェスブロック12が固定されている(
図1参照)。
【0043】
下型チェスブロック12は、下型キャビティブロック13及びポットブロック14を一体化して厚板状に形成されている(
図4参照)。下型キャビティブロック13の上面に基板6が載置される。ポットブロック14には熱硬化性の樹脂を加熱するポット15が形成されている。
【0044】
上型チェスブロック22は、上型キャビティブロック23及びカルブロック24を一体化して厚板状に形成されている(
図5参照)。カルブロック24には、型締め時にポットブロック14と連通するカル部25が形成されている。また、上型キャビティブロック23には、キャビティ凹部26が形成され、カル部25及びキャビティ凹部26が樹脂通路27によりつながれている(
図5参照)。
【0045】
キャビティ凹部26は、上型チェスブロック22と下型チェスブロック12を型締めした際に、基板6が載置された領域と対向する位置に形成されており、それらの間の空間が、熱硬化性の樹脂が充填される領域となる。キャビティ凹部26の形状に合わせて、半導体素子5(
図2参照)が搭載された基板6の上面に樹脂成形部61が成形される(
図4及び
図5参照)。
【0046】
ここで、必ずしも、上型キャビティブロック23にのみ、熱硬化性の樹脂が充填されるキャビティ凹部26が設けられる必要はない。例えば、半導体素子の表面の一部に露出部が形成される構造であれば、上型キャビティブロック23のキャビティ凹部26に加えて、下型キャビティブロック23にキャビティ凹部が設けられた構造とすることもできる。
【0047】
上型チェスブロック22には、上型キャビティブロック23に、キャビティ凹部26の底面に対して出入り可能に構成された押圧ブロック28(本願請求項の押圧部に相当)が設けられている(
図4及び
図5参照)。押圧ブロック28の先端面が、金型Bの型締め時に、半導体素子5の表面の一部を、離型フィルムを介して押圧する部分となる。
【0048】
押圧ブロック28は、上型チェスブロック22において、金型Bの型締め時に、半導体素子5aと対向する位置に設けられている(
図6a乃至
図6c参照)。上述したように上金型2には、基板6に搭載された複数の半導体素子5と対応する数の押圧ブロック28が設けられている。
【0049】
また、複数の押圧ブロック28は、接続部材を介して1つの駆動ブロックに接続され、この駆動ブロックがモーター等のアクチュエータを備えた駆動源に繋がっている(図示省略)。駆動源から力が伝達されることで、駆動ブロックが作動して、これに接続された複数の押圧ブロック28が所要のストロークで、キャビティ凹部26の底面26bに対して出入り可能に構成されている(
図6a乃至
図6c参照)。
【0050】
駆動源を介して、押圧ブロック28を下方に作動させると、押圧ブロック28の先端面28aが、キャビティ凹部26bの底面と同一面上に位置した状態から、キャビティ凹部26の底面26bに対して突出する(
図6a及び
図6b参照)。また、押圧ブロック28を上方に作動させると、押圧ブロック28の先端面28aが、キャビティ凹部26の底面26bと同一面を構成する位置まで戻るように、押圧ブロック28のストロークが設定されている(
図6a参照)。
【0051】
また、押圧ブロック28の上端には弾性力を有するばね部材29が取り付けられている(
図6a乃至
図6c参照)。このばね部材29は、1つの基板6に搭載された複数の半導体素子5aの厚みや傾きのばらつきを吸収する部材である。ここでいう、複数の半導体素子5aの厚みや傾きのばらつきとは、半導体素子5aを基板6に実装する際に使用する接着剤の量や、その乾き具合に起因して生じるものである。
【0052】
ばね部材29は、押圧ブロック28と駆動ブロックを接続する接続部材の一部を担っており、例えば、駆動ブロックと押圧ブロック28との間に隙間を設けて、この隙間の部分にばね部材29を配置して、両部材を接続する。押圧ブロック28の先端面28aが半導体素子5aの表面の一部を押圧した際に、半導体素子5aの厚みや傾きに対応してばね部材29が縮んで、半導体素子5aの厚みや傾きを吸収する。
【0053】
ここで、必ずしも、押圧ブロック28の上端にばね部材29が取り付けられる必要はなく、複数の半導体素子5aの厚みや傾きを吸収できるような構造となっていれば充分である。例えば、ばね部材29に代えて、弾性力を有する樹脂系材料や、ウレタンゴム等のゴム系材料で形成された部材を採用することも可能である。
【0054】
上型チェスブロック22と、半導体素子5aが搭載された基板6aとの間には、伸展性を有する離型フィルム7が張設されている(
図6a乃至
図6c参照)。離型フィルム7は、
図6aに示すように、型締め時に押圧ブロック28の先端面28aと側面28b及びキャビティ凹部26の底面26bを被覆する。また、離型フィルム7は、型締め時に、押圧ブロック28の先端面28aで半導体素子5aの表面の一部を押圧してマスキングする際に、基板6a及び半導体素子5aにかかる押圧力を低減する緩衝材でもある。離型フィルム7は、既知のロールtoロール機構等の装置を用いて配置可能である。
【0055】
型締め前に、離型フィルム7は、キャビティ凹部26を覆う位置に張設された状態から、フィルム吸着機構を介して、同一面上に位置した押圧ブロック28の先端面28aとキャビティ凹部の底面26bに亘って吸着される(
図6a参照)。フィルム吸着機構は、上型キャビティブロック22に複数設けられた吸引溝23aと、この吸引溝23aに接続された真空ポンプ等の吸引装置(図示省略)で構成され、押圧ブロック28の先端面28aとキャビティ凹部26の底面26bに亘って離型フィルム7を吸着させる。
【0056】
押圧ブロック28の動きと離型フィルム7の吸着について詳しく説明する。
押圧ブロック28の先端面28aとキャビティ凹部26の底面が同一面上に位置した状態で、フィルム吸着機構により、押圧ブロック28の先端面28aとキャビティ凹部26の底面に亘って離型フィルム7を吸着させる(
図6a参照)。押圧ブロック28の先端面28aとキャビティ凹部26の底面26bが段差のない同一面を構成しているため、離型フィルム7は、この同一面上に空気溜まりを生じることなく吸着される。
【0057】
駆動源を介して、押圧ブロック28を下方に作動させると、押圧ブロック28の先端面28aが、キャビティ凹部26の底面26bよりも下方に移動して、押圧ブロック28の先端面28aが、キャビティ凹部26の底面から突出する(
図6b参照)。この際、フィルム吸着機構で離型フィルムを吸着させながら押圧ブロック28を下方に作動させることで、離型フィルム7のうち、押圧部28の先端面28aとその近傍に当接した領域が引き伸ばされる。吸着状態が維持されたままで離型フィルム7が引き伸ばされることで、押圧ブロック28の先端面28aが、キャビティ凹部26の底面26bから突出した形態となっても、離型フィルム7が、押圧ブロック28の側面28bと、この側面28bに隣接したキャビティ凹部26の底面26bの一部に沿ったものとなる。即ち、半導体素子5aの表面の一部を押圧する押圧ブロックの先端面28aがキャビティ凹部26の底面26bから突出した形態において、キャビティ凹部26の底面形状に沿わせて離型フィルム7を吸着させることができる。なお、ここでいうキャビティ凹部の底面形状とは、押圧ブロック28の先端面28aと側面28bを含めた部分を意味するものである。
【0058】
型締めの際には、押圧ブロック28の先端面28aで、半導体素子5aの表面の一部を押圧した状態でも、離型フィルム7が押圧ブロック28の側面28bや、この側面28bに隣接したキャビティ凹部26の底面26bの一部に離型フィルム7が沿って吸着されており、離型フィルム7が、基板6aの金線6bに接触しないものとすることができる(
図6c参照)。
【0059】
以上で説明した樹脂封止装置Aを用いて行う、本発明を適用した樹脂封止方法の一実施の形態について説明する。
【0060】
図7及び
図8は、樹脂封止方法の一連の工程を示している。下金型1及び上金型2を型開きした状態で、既知のロールtoロール機構等の装置により、離型フィルム7が張設される(
図7(a)参照)。張設された離型フィルム7を上型キャビティブロック23の基板を挟み込む面23bに当接させる(
図7(b)参照)。
【0061】
次に、フィルム吸着機構により離型フィルム7を押圧ブロック28の先端面28aとキャビティ凹部26の底面26bに沿って吸着させる(
図7(c)参照)。離型フィルム7の吸着状態を維持したままで、駆動源(図示省略)により押圧ブロック28を下方に作動させ、押圧ブロック28の先端面28aをキャビティ凹部26の底面26bから突出させる(
図7(d)参照)。離型フィルム7のうち、押圧部28の先端面28aとその近傍に当接した領域が引き伸ばされ、キャビティ凹部26の底面形状に沿って、離型フィルム7の吸着状態が維持される。
【0062】
次に、基板搬送装置(図示省略)により基板6aが搬送され、下金型1の下型キャビティブロック13の上面に基板6aが載置される(
図7(e)参照)。基板6aには、半導体素子5aが搭載され、基板6aと半導体素子5aを繋ぐ金線6bが設けられている。
【0063】
続いて、上述した可動プラテン43(
図1及び
図2参照)が上昇して、この動きに伴い、可動プラテン43及び下型ダイセット11に固定された下型チェスブロック12が上昇して、下金型1と上金型2が型合わせされた状態となる(
図8(f)参照)。
【0064】
この際、押圧ブロック28の先端面28aが、離型フィルム7を介在させた状態で半導体素子5aの表面の一部と当接して、下金型1と上金型2の間に、封止樹脂が充填されるキャビティ26aが形成される。この状態においても、フィルム吸着機構により、離型フィルム7の吸着が維持されている。
【0065】
下金型1と上金型2を型締めした状態で、上述したポット10(
図2乃至
図4参照)で加熱された封止樹脂を溶融させながら、トランスファーユニット3により熱硬化性の樹脂材料を押し出す(
図1及び
図2参照)。樹脂材料は、ポット10からカル部14及び樹脂通路16を流れ、キャビティ26aに充填される(
図8(g)参照)。型締めの際には、押圧ブロック28の先端面28aが、離型フィルム7を介して半導体素子5aの表面の一部を押圧する。この押圧により、半導体素子5aの表面の一部がマスキングされ、後述する樹脂成形品62aでは、半導体素子5aの表面の一部に外部に露出した露出部51aが形成される。なお、樹脂成形品62aは、基板6aの樹脂成形物である。また、露出部51aは、樹脂成形品62aにおける露出部であり、樹脂成形部61aは、樹脂成形品62aにおける樹脂成形部である。
【0066】
下金型1と上型金2を型締めした状態で、溶融している熱硬化性樹脂を保圧して硬化させることにより、基板6aを封止して樹脂成形品62aが形成される(
図8(h)及び
図8(i)参照)。樹脂封止後、可動プラテン43が下降し、下金型1と上金型2が型開きされた状態となる(
図8(h)参照)。離型フィルム7によって、樹脂成形品62aは上型キャビティブロック23から容易に離型させることができる。
【0067】
樹脂成形品62aは、カルがつながった状態で、下型チェスブロック12の下型キャビティブロック13から製品搬送装置(図示省略)によって搬送される(
図8(i)参照)。樹脂成形品62aは、基板6a、金線6b及び半導体素子5aの一部に亘って、樹脂材料が硬化した樹脂成形部61aが形成されている。また、上述したとおり、半導体素子の表面の一部に外部に露出した露出部51aが形成されている。以上の流れにより、下金型1と上金型2による樹脂封止が完了し、樹脂成形品62aが成形される。
【0068】
ここで、必ずしも、押圧ブロック28を下方に作動させ、押圧ブロック28の先端面28aをキャビティ凹部26の底面26bから突出させた後に、型合わせを行う必要はない。押圧ブロック28を下方に作動させる工程は、型締め後の封止樹脂を充填する直前までに完了していれば充分である。例えば、押圧ブロック28を下方に作動させる前に型合わせを行い、型締めした状態で、かつ、封止樹脂を充填する直前に、押圧ブロック28を下方に作動させ、押圧ブロック28の先端面28aをキャビティ凹部26の底面26bから突出させる工程も採用しうる。但し、型合わせの前に押圧ブロック28を下方に作動させることで、離型フィルム7の吸着状態、例えば、フィルムの破損の有無等が確認でき、成形不良を未然に防ぐことも可能となるため、押圧ブロック28を下方に作動させた後に、型合わせを行うことが好ましい。
【0069】
続いて、
図9及び
図10を参照して、本発明を適用した樹脂封止装置及び樹脂封止方法の他の実施の形態について説明する。
以下に示す樹脂封止装置B及びこれを用いた樹脂封止方法では、装置の基本的な構造は、上述した樹脂封止装置Aと共通しており、押圧ブロックの先端面をキャビティ凹部の底面に対して突出させる機構が異なっている。従って、上述した樹脂封止装置Aと異なる部分にのみ新たな符号を付して、以下説明を行う。
【0070】
本樹脂封止装置では、上型本体(図示省略)に対して、上型キャビティブロック93がばね部材(図示省略)を介して、上下方向に進退動作が可能に取り付けられている(
図9(a)参照)。上型キャビティブロック93は、その下端の一部が下金型8に押し上げられ、キャビティブロック93の全体が上方に持ち上げられるように構成されている。即ち、上型キャビティブロック93の一部が下金型8に押されることでばね部材が縮み、上型キャビティブロック93が上方に移動する。
【0071】
また、上型本体(図示省略)に対して、接続部材を介して押圧ブロック98が取り付けられている。押圧ブロック98は、その先端面98aが上型キャビティブロック93に形成されたキャビティ凹部96の底面と同一面上に位置するように取り付けられている。より詳細には、上型キャビティブロック93の一部が下金型8に押されて上方に移動する前の段階では、押圧ブロック98の先端面98aとキャビティ凹部96の底面が同一面を構成している。
【0072】
また、押圧ブロック98の上端には弾性力を有するばね部材99が取り付けられている(
図9乃至
図10参照)。このばね部材99は、1つの基板6に搭載された複数の半導体素子5aの厚みや傾きのばらつきを吸収する部材である。ばね部材99は、押圧ブロック98を上型本体に接続する接続部材の一部を担っている。押圧ブロック98の先端面98aが半導体素子5aの表面の一部を押圧した際に、半導体素子5aの厚みや傾きに対応してばね部材99が縮んで、半導体素子5aの厚みや傾きを吸収する。
【0073】
ここで、必ずしも、押圧ブロック98の上端にばね部材99が取り付けられる必要はなく、複数の半導体素子5aの厚みや傾きを吸収できるような構造となっていれば充分である。例えば、ばね部材99に変えて、弾性力を有する樹脂系材料や、ウレタンゴム等のゴム系材料で形成された部材を採用することも可能である。
【0074】
上述した可動プラテン43(
図1及び
図2参照)によって、下型チェスブロック(図示省略)が上昇して、下金型8と上金型9が近付いていく過程で、上型キャビティブロック93が下金型8に押されて上方に移動する。この結果、押圧ブロック98の先端面98aがキャビティ凹部96の底面に対して突出する構造となっている。また、樹脂封止後に、型開きされ、下金型8に押されなくなることで上型キャビティブロック98が下方に移動して、押圧ブロック98の先端面98aとキャビティ凹部96の底面が同一面上に位置するように、上型キャビティブロック98の位置が戻るものとなる。このように、本発明の他の実施の形態では、下金型8と上金型9の型締めを利用して、押圧ブロック98の先端面98aをキャビティ凹部96の底面から突出させる構成となっている。
【0075】
また、上型キャビティブロック93には、上述した上型キャビティブロック23と同様のフィルム吸着機構が設けられ、離型フィルム7を吸着することができる。離形フィルム7は、押圧ブロック98の先端面98aとキャビティ凹部96の底面が同一面上に位置する状態で、フィルム吸着機構を介して、押圧ブロック98の先端面98aとキャビティ凹部96の底面に亘って吸着される(
図9(c)参照)。押圧ブロック98の先端面98aとキャビティ凹部96の底面が同一面上に位置する状態で離型フィルム7を吸着させ、その吸着状態を維持しながら、下金型8で上型キャビティブロック98を押し上げることで、押圧ブロック98の先端面98aが、キャビティ凹部96の底面に対して突出して、離型フィルム7を引き伸ばしながら、キャビティ凹部96の底面形状に沿って離型フィルム7を吸着させることができる。
【0076】
以上で説明した樹脂封止装置Bを用いて行う、本発明を適用した樹脂封止方法の他の実施の形態について説明する。
【0077】
図9及び
図10は、樹脂封止方法の一連の工程を示している。下金型8及び上金型9を型開きした状態で、離型フィルム7が張設される(
図9(a)参照)。張設された離型フィルム7を上型キャビティブロック93の基板を挟み込む面93bに当接させる(
図9(b)参照)。
【0078】
次に、フィルム吸着機構により離型フィルム7を押圧ブロック98の先端面98aとキャビティ凹部96の底面96bに沿って吸着させる(
図9(c)参照)。次に、基板搬送装置(図示省略)により基板6aが搬送され、下金型8の下型キャビティブロック83の上面に基板6aが載置される(
図9(d)参照)。基板6aには、半導体素子5aが搭載され、基板6aと半導体素子5aを繋ぐ金線6bが設けられている。
【0079】
フィルム吸着機構により、離型フィルム7の吸着状態を維持したままで、可動プラテン43(
図1及び
図2参照)によって、下型チェスブロック(図示省略)を上昇させる。これにより、上型キャビティブロック93が下金型8に押されて上方に移動して、押圧ブロック98の先端面98aがキャビティ凹部96の底面96bに対して突出する。離型フィルム7のうち、押圧部98の先端面98aとその近傍に当接した領域が引き伸ばされ、キャビティ凹部96の底面形状に沿って、離型フィルム7の吸着状態が維持される。下金型8と上金型9の型合わせが完了する前に、押圧ブロック98の先端面98aがキャビティ凹部96の底面96bに対して突出する。より厳密には、下金型8と上金型9の型合わせが完了して、基板6aに搭載された半導体素子5aが所定の位置に配置される前に、上型キャビティブロック93が上方に移動し、離型フィルム7が金線6bに接触しないようになっている。
【0080】
下金型8と上金型9の型合わせが完了すると、キャビティ凹部96の底面96bに対して突出した押圧ブロック98の先端面98が、離型フィルム7を介在させた状態で半導体素子5aの表面の一部と当接して、下金型8と上金型9の間に、封止樹脂が充填されるキャビティ96aが形成される(
図10(e)参照)。この状態においても、フィルム吸着機構により、離型フィルム7の吸着が維持されている。
【0081】
下金型8と上金型9を型締めした状態で、上述したポット10(
図2乃至
図4参照)で加熱された封止樹脂を溶融させながら、トランスファーユニット3により熱硬化性の樹脂材料を押し出す(
図1及び
図2参照)。樹脂材料は、ポット10からカル部14及び樹脂通路16を流れ、キャビティ96aに充填される(
図10(f)参照)。型締めの際には、押圧ブロック98の先端面98aが、離型フィルム7を介して半導体素子5aの表面の一部を押圧する。この押圧により、半導体素子5aの表面の一部がマスキングされ、樹脂成形品62aでは、半導体素子5aの表面の一部に外部に露出した露出部51aが形成される。
【0082】
下金型8と上金型9を型締めした状態で、溶融している熱硬化性樹脂を保圧して硬化させることにより、基板6aを封止して樹脂成形品62aが形成される(
図10(g)及び
図10(h)参照)。樹脂封止後、可動プラテン43が下降し、下金型8と上金型9が型開きされると、下金型8に押されなくなった上型キャビティブロック93が下方に移動して、再び、押圧ブロック98の先端面98aとキャビティ凹部96の底面96bが同一面上に位置するようになる(
図10(g)参照)。
【0083】
樹脂成形品62aは、カルがつながった状態で、下型キャビティブロック83から製品搬送装置(図示省略)によって搬送される(
図10(h)参照)。樹脂成形品62aは、基板6a、金線6b及び半導体素子5aの一部に亘って、樹脂材料が硬化した樹脂成形部61aが形成されている。また、上述したとおり、半導体素子の表面の一部に外部に露出した露出部51aが形成されている。以上の流れにより、下金型8と上金型9による樹脂封止が完了し、樹脂成形品62aが成形される。
【0084】
上述した樹脂封止方法の工程では、下金型8と上金型9の型締めの動きを利用して、押圧ブロック98の先端面98aとキャビティ凹部96の底面96bが同一面上に位置した状態から、先端面98aをキャビティ凹部96の底面96bから突出させることができる。この工程において、押圧ブロック98の先端面98aとキャビティ凹部96の底面96bが同一面上に位置した状態で、フィルム吸着機構を介して、離型フィルム7を吸着させるので、先端面98aをキャビティ凹部96の底面96bから突出させた際に、離型フィルム7を引き伸ばして、キャビティ凹部96の底面形状に沿って離型フィルム7を吸着させることができる。
【0085】
以上のように、本発明に係る樹脂封止方法は、半導体素子の表面に露出部分を形成した樹脂封止パッケージの製造において、離型フィルムを押圧部やキャビティ凹部の底面に吸着させる際に、キャビティ凹部の底面から突出した押圧部の側面と、これに隣接したキャビティ凹部の底面の一部の形状に対して、離型フィルムが沿わない部分が生じないように、離型フィルムをキャビティ凹部の底面形状に沿わせて吸着させることができるものとなっている。
また、本発明に係る樹脂封止装置は、半導体素子の表面に露出部分を形成した樹脂封止パッケージの製造において、離型フィルムを押圧部やキャビティ凹部の底面に吸着させる際に、キャビティ凹部の底面から突出した押圧部の側面と、これに隣接したキャビティ凹部の底面の一部の形状に対して、離型フィルムが沿わない部分が生じないように、離型フィルムをキャビティ凹部の底面形状に沿わせて吸着させることができるものとなっている。
【課題】半導体素子の表面に露出部分を形成した樹脂封止パッケージの製造において、離型フィルムを押圧部やキャビティ凹部の底面に吸着させる際に、キャビティ凹部の底面から突出した押圧部の側面と、これに隣接したキャビティ凹部の底面の一部の形状に対して、離型フィルムが沿わない部分が生じないように、離型フィルムをキャビティ凹部の底面形状に沿わせて吸着させることができる樹脂封止方法及び樹脂封止装置を提供する。
【解決手段】上型キャビティブロック23に設けられた押圧ブロック28は、接続部材を介して1つの駆動ブロックに接続され、この駆動ブロックがモーター等のアクチュエータを備えた駆動源に繋がっている。駆動源から力が伝達されることで、駆動ブロックが作動して、これに接続された複数の押圧ブロック28が所要のストロークで、キャビティ凹部26の底面26bに対して出入り可能に構成されている。