(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記粘着剤から形成された粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率が0.5〜1MPaであり、かつ下記式(1)で表される弾性維持率が60〜100%であることを特徴とする請求項1記載の粘着剤。
弾性維持率(%)=G’(80℃)/G’(25℃)×100 ・・・式(1)
(ただし、式(1)中、G’(80℃)は80℃での貯蔵弾性率、G’(25℃)は25℃での貯蔵弾性率をそれぞれ表す。)
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書での用語を説明する。(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを意味する。酸性基含有モノマー単位とは、カルボキシル基含有モノマー、スルホ基含有モノマー、リン酸基含有モノマーである。被着体とは、粘着シートを貼り合わせる相手方をいう。
【0024】
本発明は、導電部材に光学フィルムを貼着固定するためのアクリル系共重合体(A)と架橋剤(B)を含む粘着剤であって、アクリル系共重合体(A)と架橋剤(B)を含んでなり、前記アクリル系共重合体(A)を構成するモノマー単位として、炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a−1)単位を15〜45重量%、炭素数4〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(a−2)単位を54.4〜84.8重量%、および炭素数2〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル(a−3)単位を0.2〜0.6重量%含有し、酸性基含有モノマー単位およびアミド基含有モノマー単位を含有せず、前記アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)が120万〜160万かつ、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比である分散度(Mw/Mn)が1.5〜2.5である。
【0025】
<アクリル系共重合体(A)>
本明細書におけるアクリル系共重合体(A)は、構成するモノマー単位として、酸性基含有モノマー単位を含有しないことを特徴とする。酸性基含有モノマー単位を含有しないため、導電部材に貼付された際、金属腐食を防止する効果が得られ電極抵抗値の上昇や外観不良を防止できる。
【0026】
アクリル系共重合体(A)は、共重合体を構成するモノマー単位として、炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a−1)単位、炭素数4〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(a−2)単位および炭素数2〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル(a−3)単位を含有する。
アクリル系共重合体(A)は、炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a−1)、炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a−2)および炭素数2〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル(a−3)を含有するモノマー混合物を共重合して合成する。
【0027】
炭素数1〜3のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル(a−1)は、分子内に炭素数1〜3のアルキル基を有するモノマーである(以下、モノマー(a−1)と略記することがある)。モノマー(a−1)を使用することで、粘着剤の凝集力が向上し強靭な粘着剤層が得られるため、高温雰囲気下または高温高湿雰囲気下に曝された場合、浮きおよび剥がれを抑制できる。
【0028】
モノマー(a−1)は、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピルが挙げられる。
【0029】
これらモノマー(a−1)のうち、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチルが凝集力および高温雰囲気下における耐久性の観点でより好ましい。
【0030】
モノマー(a−1)は、前記モノマー混合物100重量%中、15〜45重量%を含むことが好ましく、20〜40重量%がより好ましい。含有量が15重量部以上になると凝集力がより向上する。また、含有量が45重量%以下になること凝集力と応力緩和性を高いレベルで両立できる。
【0031】
炭素数4〜8のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(a−2)は、分子内に炭素数4〜8のアルキル基を有するモノマーである(以下、モノマー(a−2)と略記することがある)。モノマー(a−2)を使用すると粘着剤の柔軟性が向上し、粘着剤層の基材に対する密着性(以下、基材密着性という)がより向上し、高温雰囲気下または高温高湿雰囲気下に曝された場合、浮きおよび剥がれがより抑制できる。
【0032】
モノマー(a−2)は、例えば、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0033】
これらモノマー(a−2)のうち、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが基材密着性、高温雰囲気下および高温高湿雰囲気下における耐久性の観点より好ましい。
【0034】
モノマー(a−2)は、前記モノマー混合物100重量%中、54.4〜84.8重量%を含むことが好ましく、58〜80重量%がより好ましい。含有量が54.4重量%以上になると基材密着性がより向上する。また、含有量が84.8重量%以下になると凝集力と応力緩和性を高いレベルで両立できる。
【0035】
炭素数2〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル(a−3)は、分子内に炭素数2〜4のアルキル基および水酸基を有するモノマーである(以下、モノマー(a−3)と略記することがある)。モノマー(a−3)を使用すると凝集力が良好な粘着剤層が得られる上、浮きおよび剥がれを抑制し、光漏れも抑制できる。
【0036】
モノマー(a−3)は、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルなどが挙げられる。
【0037】
これらモノマー(a−3)のうち、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸4−ヒドロキシブチルは、基材密着性、高温雰囲気下および高温高湿雰囲気下における耐久性の面でより好ましい。
【0038】
モノマー(a−3)は、前記モノマー混合物100重量%中、0.2〜0.6重量%を含むことが好ましく、0.2〜0.4重量%がより好ましい。含有量が0.2重量%以上になると凝集力がより向上する。また、含有量が0.6重量%以下になると凝集力と応力緩和性を高いレベルで両立できる。
【0039】
アクリル系共重合体(A)を構成するモノマー単位として、上記以外に使用できるその他ビニルモノマーは、例えば、エポキシ基を含有するモノマー、アミノ基を含有するモノマー、アルキレンオキサイド単位を有するモノマー、酢酸ビニル、クロトン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルが好ましい。
【0040】
エポキシ基を含有するモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチルが挙げられる。
【0041】
アミノ基を含有するモノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステルが挙げられる。
【0042】
アルキレンオキサイド単位を有するモノマーは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の単位を有するモノマーである。アルキレンオキサイド単位を有するモノマーは。例えば、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル、2−フェノキシエチル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、エトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0043】
その他ビニルモノマーは、単独または2種以上を併用できる。
【0044】
その他ビニルモノマーは、前記モノマー混合物100重量%中、0.1〜10重量%を含むことが好ましく、0.2〜5%重量%がより好ましい。含有量が0.1重量%以上になると凝集力がより向上する。また、含有量が10重量%以下になると凝集力と応力緩和性を高いレベルで両立できる。
【0045】
アクリル系共重合体(A)は、構成するモノマー単位として、アミド基含有モノマー単位を含有しない。本発明の粘着剤は、アミド基含有モノマー単位を含有しないため、粘着シートを被着体に貼付後、高温高湿雰囲気下に曝した場合、粘着剤層が吸湿し難くなるため浮きおよび剥がれを抑制できる。なお、アミド基含有モノマー単位とは、(メタ)アクリルアミドおよびこれらの誘導体を指す。
【0046】
アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は、120万〜160万が好ましく、130万〜160万がより好ましい。120万〜160万の範囲にあることで凝集力がより向上するため、浮きおよび剥がれがより抑制でき、応力緩和性もより向上する。また、アクリル系重合体(A)の分子量分布(重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比率を表す分子量分布(Mw/Mn))は、1.5〜2.5の範囲が好ましく、1.8〜2.3の範囲がより好ましい。前記範囲にあることで、高温環境下や高温高湿環境下に曝された後に浮きおよび剥がれが生じにくく、粘着力がより向上する。なお、上記重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。GPCの測定法の詳細は、実施例に記載する。
【0047】
アクリル系共重合体(A)は、モノマー混合物を共重合して合成する。共重合は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合など公知の重合方法が可能であるところ、溶液重合が好ましい。溶液重合で使用する溶媒は、例えば、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アニソール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンが好ましい。重合温度は、60〜120℃の沸点反応が好ましい。重合時間は5〜12時間程度が好ましい。
【0048】
重合開始剤は、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤は、重合温度でラジカルを発生できる化合物であれば特に制限はなく、過酸化物、アゾ化合物が一般的である。
過酸化物は、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド;
t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル;
シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;
2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレート、などのパーオキシケタール;
クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルシクロヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;
ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;
ビス(t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;が挙げられる。
【0049】
アゾ化合物は、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(略称:AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などの2,2’−アゾビスブチロニトリル;
2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などの2,2’−アゾビスバレロニトリル;
2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などの2,2’−アゾビスプロピオニトリル;
1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)などの1,1’−アゾビス−1−アルカンニトリル;が挙げられる。
【0050】
重合開始剤は、単独または2種以上を併用できる。
【0051】
重合開始剤は、前記モノマー混合物100重量部に対して、0.01〜10重量部を使用することが好ましく、0.1〜2重量部がより好ましい。
【0052】
<架橋剤(B)>
本発明の粘着剤は、架橋剤(B)を含むため、粘着シートに加工した際、アクリル系共重合体(A)の架橋性官能基(例えば、水酸基、酸性基)との架橋反応により粘着剤層の凝集力が向上し、高温雰囲気下または高温高湿雰囲気下に曝された場合、高い透明性を維持しつつ、浮きおよび剥がれを抑制できる。
【0053】
架橋剤(B)は、例えばイソシアネート系化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、酸無水物基含有化合物、カルボジイミド化合物、N−メチロール基含有化合物および、金属キレート化合物等が好ましい。
【0054】
イソシアネート系化合物は、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートモノマーである。イソシアネート系化合物は、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等のイソシアネートモノマー、ならびにこれらのビュレット体、ヌレート体、及びアダクト体が好ましい。
【0055】
芳香族ポリイソシアネートは、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネートが挙げられる。
【0056】
脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0057】
芳香脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0058】
脂環族ポリイソシアネートは、例えば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI、イソホロンジイソシアネート)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
【0059】
イソシアネートモノマーのビュレット体は、イソシアネートモノマーが自己縮合したビュレット結合を有する自己縮合物である。イソシアネートモノマーのビュレット体は、例えばヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体などが挙げられる。
【0060】
イソシアネートモノマーのヌレート体は、イソシアネートモノマーが自己縮合したヌレート結合を有する自己縮合物である。イソシアネートモノマーの3量体のヌレート体は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体のヌレート体、イソホロンジイソシアネートの3量体のヌレート体、トリレンジイソシアネートの3量体のヌレート体などが挙げられる。
【0061】
イソシアネートモノマーのアダクト体は、イソシアネートモノマーと2官能以上の低分子活性水素含有化合物が反応した2官能以上のイソシアネート化合物である。イソシアネートモノマーのアダクト体は、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物(トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、1,6−ヘキサンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物が挙げられる。
【0062】
イソシアネート系化合物は、3官能のイソシアネート化合物が好ましく、イソシアネートモノマーと3官能の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体がより好ましい。イソシアネート系硬化剤は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体が好ましく、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンのアダクト体、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体等の芳香脂肪族系ポリイソシアネート化合物がより好ましい。
【0063】
エポキシ化合物は、例えばビスフェノールA−エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1、3−ビス(N、N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。
【0064】
アジリジン化合物は、例えばN,N’−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、2,2’−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ−β−アジリジニルプロピオネート、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン、4,4’−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0065】
カルボジイミド化合物は、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネート化合物を脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドが好ましい。
カルボジイミド化合物の市販品は、例えば、日清紡績社製のカルボジライトシリーズが挙げられる。その中でもカルボジライトV−01、03、05、07、09は有機溶剤との相溶性に優れているため好ましい。
【0066】
酸無水物基含有化合物は、カルボン酸無水物基を2つ以上有する化合物である。酸無水物基含有化合物は、例えば、テトラカルボン酸二無水物、ヘキサカルボン酸三無水物、ヘキサカルボン酸二無水物、無水マレイン酸共重合樹脂が好ましい。なお、反応中に脱水反応を経由して無水物と成りうるポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハーフエステルなどは、本発明の「酸無水物基含有化合物」に含まれる。
【0067】
テトラカルボン酸二無水物は、例えば、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0068】
金属キレート化合物は、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物である。金属キレート化合物は、例えば、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレートが挙げられる。
【0069】
架橋剤(B)は、イソシアネート系化合物が、基材密着性と再剥離性とを高いレベルで両立できる面でより好ましい。
【0070】
架橋剤(B)は、単独または2種以上を併用できる。
【0071】
架橋剤(B)は、アクリル系共重合体(a)100重量部に対して、0.05重量部〜20重量部を使用することが好ましく、0.1重量部〜15重量部がより好ましい。含有量が0.05重量部以上になると凝集力がより向上する。また、含有量が20重量部以下になると凝集力と応力緩和性を高いレベルで両立できる。
【0072】
<有機シラン化合物(C)>
本発明の粘着剤は、さらにエポキシ基またはエポキシシクロヘキシル基を有する有機シラン化合物(C)(以下、化合物(C)と略記することがある)含むことができる。有機シラン化合物(C)は、基材の表面に存在する官能基との間に共有結合や水素結合を形成することで浮きおよび剥がれをより抑制し、光漏れをより抑制できる。
【0073】
有機シラン化合物(C)は、有機シランモノマーおよび有機シランオリゴマーが好ましい。
【0074】
有機シランモノマーは、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメチルエトキシシランが挙げられる。これらの中でも3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランがより好ましい。
【0075】
有機シランオリゴマーとしては、下記式[I]または式[II]で表される化合物が好ましい。
【0077】
式中、p、q、r、s、tは、繰り返し単位を表す整数であり、0≦p≦50、5≦q≦50、5≦r≦50、0≦s≦50、5≦t≦50、5≦p+q≦100、10≦r+s+t≦150、である。X
1〜X
3およびX
5、X
6は、それぞれ独立に、アルキル基を表し、X
4は、炭素数1〜10の2価の有機残基を表し、Yはアルコキシル基を表し、Zはエ
ポキシ基またはエポキシシクロヘキシル基を表わす。
【0078】
上記式[I]および[II]において、Yはアルコキシ基であり、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンタオキシ基等が挙げられる。この内、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
【0079】
X
1〜X
3およびX
5、X
6は、それぞれ独立に、アルキル基またはアリール基を表し、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。この内、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基が好ましく、メチル基、フェニル基がより好ましい。
【0080】
X
4は、炭素数1〜10の2価の有機残基であり、メチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,7−ヘプチレン基、1,8−オクチレン基、1,9―ノニレン基、1,10−デカニレン基等の直鎖アルキレン基、1,1−エチレン基、1,2−プロピレン基、1,1−プロピレン基、1−メチル−1,3−ブチレン基、2−メチル−1,3−ブチレン基、1,2−ジメチル−1,2−ブチレン基、1,1−ブチレン基、エチル−1,2−エチレン基等の分岐状アルキレン基等が挙げられる。これらアルキレン基のなかでも、直鎖アルキレン基が好ましく、メチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基がより好ましい。
【0081】
Zは、エポキシ基またはエポキシシクロヘキシル基を表す。
また、エポキシシクロヘキシル基とは、下記式[III]で表される基である。
【0083】
pは、0≦p≦50の範囲内の整数であり、5≦p≦40の範囲内の整数が好ましく、10≦p≦30の範囲内の整数がより好ましい。
【0084】
qは、5≦q≦50の範囲内の整数であり、10≦q≦50の範囲内の整数が好ましく、10≦q≦40の範囲内の整数がより好ましい。
【0085】
rは、5≦r≦50の範囲内の整数であり、10≦r≦50の範囲内の整数が好ましく、10≦r≦40の範囲内の整数がより好ましい。
【0086】
sは、0≦s≦50の範囲内の整数であり、10≦s≦50範囲内の整数が好ましく、10≦s≦40の範囲内の整数がより好ましい。
【0087】
tは、5≦s≦50の範囲内の整数であり、10≦s≦50範囲内の整数が好ましく、10≦s≦40の範囲内の整数がより好ましい。
【0088】
p+qは、5≦p+q≦100の範囲内の整数であり、10≦p+q≦80の範囲内の整数が好ましく、20≦p+q≦60の範囲内の整数がより好ましい。
【0089】
r+s+tは、10≦q+r+s≦150の範囲内の整数であり、20≦q+r+s≦130の範囲内の整数が好ましく、30≦q+r+s≦100の範囲内の整数がより好ましい。
【0090】
有機シラン化合物(C)の内、上記式[I]であらわされる化合物は、市販品を挙げると、例えば、X−22−343、KF−101、KF−1001、X−22−2000、X−22−4741、KF−1002、X−22−2046、KF−102、KF−1005(いずれも信越シリコーン社製)が挙げられる。
【0091】
有機シラン化合物(C)の内、上記式[II]であらわされる化合物は、市販品を挙げると、例えば、X−41−1053、X−41−1059A、KR−516、X−24−9589、X−24−9590、X−41−1056(いずれも信越シリコーン社製)などが挙げられる。
【0092】
有機シラン化合物(C)は、単独または2種以上を併用できる。
【0093】
有機シラン化合物(C)は、アクリル系共重合体(A)100重量部に対して、0.01〜2重量部を使用することが好ましく、0.05〜1重量部がより好ましい。
【0094】
本発明の粘着剤から形成される粘着剤層の25℃における貯蔵弾性率(G’)は、0.5〜1MPaであることが好ましく、0.6〜0.9MPaがより好ましい。25℃における貯蔵弾性率(G’)が0.5MPa以上であることで高温雰囲気での浮きおよび剥がれをより抑制できる。また、25℃における貯蔵弾性率(G’)が1MPa以下であることで高温高湿雰囲気での浮きおよび剥がれをより抑制できる。
【0095】
本発明の粘着剤から形成される粘着剤層は下記式(1)で表される弾性維持率が60〜100%であることが好ましく、60〜90%であることがより好ましい。弾性維持率が60〜100%であることで、高温雰囲気および高温高湿雰囲気での浮きおよび剥がれをより抑制できる。
弾性維持率(%)=G’(80℃)/G’(25℃)×100 ・・・式(1)
上記式中G’(80℃)は80℃での貯蔵弾性率を表し、G’(25℃)は25℃での貯蔵弾性率を表す。なお、貯蔵弾性率(G’)の測定法の詳細は、実施例に記載する。
【0096】
本発明の粘着剤は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、任意成分として各種樹脂、オイル、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤及び帯電防止剤等を配合できる。
【0097】
本発明の粘着剤は、導電部材への光学フィルム貼着固定用粘着剤として好適であるほか、有機ELディスプレイを構成する粘着剤層、各種プラスチックシート、一般ラベル・シール、塗料、弾性壁材、塗膜防水材、床材、粘着性付与剤、粘着剤、積層構造体用粘着剤、シーリング剤、成形材料、表面改質用コーティング剤、バインダー(磁気記録媒体、インキバインダー、鋳物バインダー、焼成レンガバインダー、グラフト材、マイクロカプセル、グラスファイバーサイジング等)、ウレタンフォーム(硬質、半硬質、軟質)、ウレタンRIM、UV・EB硬化樹脂、ハイソリッド塗料、熱硬化型エラストマー、マイクロセルラー、繊維加工剤、可塑剤、吸音材料、制振材料、界面活性剤、ゲルコート剤、人工大理石用樹脂、人工大理石用耐衝撃性付与剤、インキ用樹脂、フィルム(ラミネート粘着剤、保護フィルム等)、合わせガラス用樹脂、反応性希釈剤、各種成形材料、弾性繊維、人工皮革、合成皮革等の原料として、又、各種樹脂添加剤およびその原料等としても非常に有用に使用できる。
【0098】
本発明の粘着剤は、基材と、粘着剤から形成した粘着剤層とを備えた、粘着シートとして使用することが好ましい。粘着剤層は、粘着剤を塗工することで形成できる。粘着剤層の基材と接していない面は、通常、粘着シートを使用する直前まで剥離性シートを貼り付けて異物の付着を防止する。
【0099】
粘着剤は、塗工の際、適当な溶媒を使用して粘度を調整することができる。また粘着剤を加熱して粘度を調整することもできる。
溶媒は、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、メトキシトルエン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;が挙げられる。
【0100】
粘着剤層は、粘着剤を公知の方法で塗工し、乾燥して形成する。塗工方法は、例えば、マイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ−ター、スピンコーターが挙げられる。乾燥方法は、例えば、熱風乾燥、赤外線や減圧法が挙げられる。乾燥温度は、通常60〜160℃程度である。
【0101】
粘着剤層の厚さは、0.1〜300μmが好ましく、1〜100μmがより好ましい。0.1〜300μmに調整することで適度な粘着力が得られる。
【0102】
剥離性シートは、通常、フィルムまたは紙基材に、シリコーン系化合物等から形成された公知の剥離層が形成されている。
剥離性シートの厚さは、通常10〜200μm程度である。
【0103】
基材は、例えば、プラスチック、紙、金属箔等が挙げられる。基材の形状はシート、フィルム、発泡体等が挙げられる。
【0104】
基材の厚みは、5〜200μm程度である。
【0105】
<光学用粘着シート>
本発明の光学粘着シートは、光学フィルムと、本発明の粘着剤から形成した粘着剤層を備えている。
【0106】
基材は、光学フィルムを使用する。基材は、複数の光学フィルムを積層した積層体も使用できる。
【0107】
光学フィルムは、例えば、ポリビニルアルコールやトリアセチルセルロース、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレートなどのポリアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリノルボルネン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、エポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0108】
基材は、上記光学フィルムのうち、低極性光学フィルム使用することがより好ましい。ここで低極性光学フィルムとは、水との接触角(水接触角)が70°以上の光学フィルムである。低極性光学フィルムは、例えば、ポリシクロオレフィン樹脂(水接触角90°)、ポリカーボネート樹脂(水接触角80°)、ポリノルボルネン樹脂(水接触角89°)、ポリメチルメタクリレート樹脂(水接触角80°)が挙げられる。
【0109】
水接触角の測定方法は、各種光学フィルムを23℃、50%RHで24時間放置した後、協和界面科学社製の自動接触角計( モデルCA−V型)を用いて、液滴法により、23℃、50%RHの雰囲気下で、2.0μLの蒸留水をフィルムの上に滴下して、液滴の滴下から1秒後のフィルムと液滴端部の接線とからなる角度を測定する。
【0110】
本発明の光学用粘着シートは、光学部材の貼合わせに好適に用いることができる。すなわち基材に光学部材を使用することが好ましい。光学部材は、例えば、偏光板、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、輝度向上フィルム等、ガラス等を挙げることができる。
【0111】
<偏光板用粘着シート>
本発明の偏光板粘着シートは、偏光板と、粘着剤から形成された粘着剤層とを備えている。
偏光板粘着シートは、上記光学用粘着シートが備える光学フィルムに代えて偏光板を使用した粘着シートである。偏光板粘着シートは、本発明の粘着剤から形成した粘着剤を備えるため、被着体に貼付後、高温雰囲気及び高温高湿雰囲気に放置されたとき、粘着剤層は応力緩和性が良好であるため偏光板の反りに起因する光漏れを抑制できる。
【0112】
偏光板は、例えばポリビニルアルコールフィルムを偏光子として、前記偏光子の両面を、接着剤を使用して、ポリシクロオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリノルボルネンフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルムから選択されたフィルムを貼り合わせて構成した公知の部材である。
【0113】
偏光板の厚さは、50〜300μm程度である。
【0114】
<液晶セル部材>
本発明の液晶セル部材は、導電部材と、粘着剤から形成された粘着剤層とを備えている。
導電部材は、液晶セルを構成する部材のひとつであり、基材上に形成したITOなどの透明導電膜、金属回路等の導電層を備えている。導電層は、スパッタ、蒸着等で形成されるため、厚さ100〜5000Å程度である。
基材は、例えばガラス板が挙げられる。基材の厚さは、25〜500mm程度である。
【0115】
液晶セル部材は、本発明の粘着剤から形成した粘着剤層を備えているため、導電層が腐食し難い。
【0116】
本発明の粘着シートは、例えば、LCD、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、タッチスクリーンパネル、電極周辺部材等各種エレクトロニクス関連の部材やプロテクトフィルム用途にも適応できる。
【実施例】
【0117】
次に本発明の実施例を示して更に詳細を説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。例中、特に断りのない限り、「部」とは「重量部」、「%」とは「重量%」をそれぞれ表す。
【0118】
<合成例1:アクリル系共重合体>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)にアクリル酸メチル(MA)15部、アクリル酸ブチル(BA)84.7部、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)0.3部、アセトン100部、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNという)0.01部を仕込み、この反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、65℃まで加熱し反応を開始した。その後、反応溶液を還流温度で4時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈して不揮発分30%、粘度6000mPa・sの共重合体溶液を得た。また、GPCを用いてアクリル共重合体の重量平均分子(Mw)を測定したところ、重量平均分子量は150万、分散度(Mw/Mn)は2であった。得られた共重合体をアクリル系共重合体(A−1)とする。
【0119】
<合成例2〜27>
表1および表2の重量比率に従って各種原料に変更した以外は、合成例1と同様の方法でアクリル共重合体を合成した。得られたアクリル共重合体の重量平均分子量(Mw)、分散度(Mw/Mn)を表1および表2に示す。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
【0120】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
重量平均分子量(Mw)の測定は、島津製作所社製GPC「LC−GPCシステム」を用いた。重量平均分子量(Mw)の決定は、分子量既知のポリスチレンを標準物質とした換算で行った。
装置名:島津製作所社製、LC−GPCシステム「Prominence」
カラム:東ソー社製GMHXL 4本、東ソー社製HXL-H 1本を直列に連結した。
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0ml/分
カラム温度:40℃
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
(実施例1)
アクリル系共重合体(A)として合成例1で得られた共重合体溶液(溶液中のアクリル系共重合体(A−1)が100部となる量)と、架橋剤(B)としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンのアダクト体0.5部、有機シラン化合物として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越シリコーン社製)0.1部を配合し、更に、不揮発分が20%となる量の酢酸エチルを配合して粘着剤を得た。
【0124】
<光学粘着シートおよび偏光板粘着シートの作成>
上記粘着剤を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート製剥離性シート(セラピールMF:東レフィルム加工社製)上に、乾燥後の厚さが25μmになるように塗工し、100℃で2分間乾燥することで粘着剤層を形成した。次いで、この粘着剤層に、シクロオレフィンフィルム(ゼオノア:日本ゼオン社製、厚さ100μm)の片面を貼り合せ、「剥離フィルム/粘着剤層/シクロオレフィンフィルム」という構成からなる光学粘着シートを得た。次いで、得られた光学粘着シートを温度25℃相対湿度55%の条件で1週間熟成させて、積層体を得た(以下、積層体Aとする)。
また、シクロオレフィンフィルムの代わりに偏光板(層構成:トリアセチルセルロースフィルム/ポリビニルアルコールフィルム/ ポリメチルメタクリレートフィルム)を用いて、前記粘着剤層と偏光板のポリメチルメタクリレートフィルム面とが接するように貼り合わせ、「剥離フィルム/粘着剤層/偏光板」という構成からなる偏光板粘着シートを得た。次いで、得られた偏光板粘着シートを温度25℃相対湿度55%の条件で1週間熟成させて、積層体を得た(以下、積層体Bとする)。
【0125】
(実施例2〜35、比較例1〜12)
実施例1で使用した材料の替わりに、表3および表4に示した材料および配合量にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして粘着剤をそれぞれ得た。更に、実施例1と同様にして、光学粘着シートおよび積層体をそれぞれ得た。
実施例および比較例で使用した架橋剤(B)を表5に示す。また、実施例および比較例で使用した有機シラン化合物(C)を表5に示す。
【0126】
(比較例13〜18)
比較例として下記特許文献の実施例に記載の粘着剤を用い、本明細書の実施例1と同様の光学粘着シートおよび偏光板粘着シート作成方法と同様にして、光学粘着シートおよび積層体をそれぞれ得た。
比較例13:特開2005−053976号公報に記載されている実施例2の粘着剤
比較例14:特開2005−053976号公報に記載されている実施例6の粘着剤
比較例15:特開2012−201877号公報に記載されている実施例2の粘着剤
比較例16:特開2012−201877号公報に記載されている実施例3の粘着剤
比較例17:特開2013−10838号公報に記載されている実施例1の粘着剤
比較例18:特開2013−10838号公報に記載されている実施例3の粘着剤
比較例19:特開2015−205974号公報に記載されている実施例3の粘着剤
比較例20:特開2015−205974号公報に記載されている実施例5の粘着剤
【0127】
【表3】
【0128】
【表4】
【0129】
【表5】
【0130】
得られた積層体Aを、以下の方法によって評価した。
(1)耐熱性および耐湿熱性評価1
上記で得られた積層体Aを、幅930mm、縦523mm(42インチ相当)の大きさに切り出した。次いで、切り出した積層体Aから剥離性シートを剥がしてITOスパッタガラス板(品種80Ω:日本板硝子社製)に、ラミネータを用いて貼着した。続いて、この積層体Aが貼り付けられたガラス板を50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分間保持して各部材を密着させることで測定試料を得た。この測定試料を、高温雰囲気での耐性評価として耐熱性を評価した。すなわち測定試料を105℃で1000時間放置した後に、発泡、浮き、剥がれの有無を目視で観察した。
また、測定試料を、高温高湿雰囲気での耐性評価として耐湿熱性を評価した。すなわち測定試料を85℃、相対湿度85%で500時間放置した後に発泡、浮き、剥がれの有無を目視で観察した。耐熱性および耐湿熱性は、いずれも以下の基準に基づいて評価した。◎:発泡、浮き、剥がれが全く認められず、良好である。
○:1mm以下の発泡、浮き、剥がれのいずれかが認められるが、実用上問題がない。
×:全面的に発泡、浮き、剥がれがあり、使用できない。
【0131】
(2)耐腐食性の評価方法
腐食性の評価として、膜厚5μmのITO透明導電膜を有するPETフィルム(IPF−05H125:グンゼ社製)幅40mm、長さ160mmのITO透明導電膜上に、幅40mm、長さ100mmに裁断した、上記積層体Aを剥離フィルムを剥離して貼着した。続いて、この積層体を50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分間保持して各部材を密着させることでシクロオレフィンフィルム/粘着剤層/ITOフィルムの総構造を有する測定試料を得た。
この測定試料の両端に電極をつなぎ、初期の電気抵抗値を測定した。更に測定試料を85℃ 相対湿度85%で1000時間放置した後、前記同様に経時後の電気抵抗値を測定した。耐腐食性の評価はいずれも以下の基準に基づいて評価した。なお、電気抵抗値の測定は、Laresta−GP MCP−T600(三菱化学社製)を使用した。
電気抵抗変化率=(経時後の電気抵抗値/初期の電気抵抗値)
4:電気抵抗変化が全く認められず、とりわけ良好である。
3:電気抵抗変化率が2.0未満であり良好である。
2:電気抵抗変化率が2.0以上3.0未満であるが実用上問題がない。
1:電気抵抗変化率が3.0以上であり、使用できない。
【0132】
(3)耐熱性および耐湿熱性評価2
上記で得られた積層体Bを、幅930mm、縦523mm(42インチ相当)の大きさに切り出した。次いで、切り出した積層体Bから剥離性シートを剥がしてITOスパッタガラス板(品種80Ω:日本板硝子社製)に、ラミネータを用いて貼着した。続いて、この積層体Bが貼り付けられたガラス板を50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分間保持して各部材を密着させることで測定試料を得た。この測定試料を、高温雰囲気での耐性評価として耐熱性を評価した。すなわち測定試料を105℃で1000時間放置した後に、発泡、浮き、剥がれの有無を目視で観察した。
また、測定試料を、高温高湿雰囲気での耐性評価として耐湿熱性を評価した。すなわち測定試料を85℃、相対湿度95%で1000時間放置した後に発泡、浮き、剥がれの有無を目視で観察した。耐熱性および耐湿熱性は、いずれも以下の基準に基づいて評価した。
◎:発泡、浮き、剥がれが全く認められず、良好である。
○:0.5mm以下の発泡、浮き、剥がれのいずれかが認められるが実用上問題がない。
×:全面的に発泡、浮き、剥がれがあり、使用できない。
【0133】
(4)光漏れ評価
上記で得られた積層体Bを、幅930mm、縦523mm(42インチ相当)の大きさに切り出した。次いで、切り出した積層体Bから剥離性シートを剥がしてITOスパッタガラス板(品種80Ω:日本板硝子社製)の両面に、各々2枚の積層体Bをその偏光板の吸収軸が直交するようにラミネータを用いて貼着して圧着物を得た。続いて、圧着物を、50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分間保持させて各部材を密着させることで測定試料を得た。この測定試料を、105℃で1000時間放置した後、偏光板に光を透過させたときの光漏れを目視で観察した。光漏れ性は、以下の基準に基づいて評価した。
◎:白抜けが無く、良好である。
○:ごく一部に白抜けが認められるが、全面的な白抜けは認められず、実用上問題がない。×:全面的に白抜けがあり、使用できない。
【0134】
(5)再剥離性評価
上記で得られた積層体Bを、幅100mm、縦100mmの大きさに切り出した。次いで、切り出した積層体Bから剥離性シートを剥がしてITOスパッタガラス板(品種80Ω:日本板硝子社製)にラミネータを用いて貼り付けた。続いて、50℃、5気圧の条件のオートクレーブ内に20分間保持させて各部材を密着させることで測定試料を得た。この測定試料を、105℃で7日放置した後に、23℃、相対湿度50%の環境下で、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、180°方向に300mm/分の速度で引っ張る、剥離試験を行った。次いで、剥離後のガラス表面の曇りを目視で観察し、以下の基準に基づいて評価した。
○:糊残り、曇りが認められず、良好である。
×:糊残り、曇りが認められ、実用不可である。
【0135】
(6)貯蔵弾性率(G’)および弾性維持率
得られた粘着剤を乾燥後の厚さが30μmになるように剥離性シートに塗工し、乾燥することで粘着剤層を形成した。得られた粘着剤層を厚みが約30mmになるように複数枚積層した後、オートクレーブで気泡を除去した後、直径8mmに打ち抜いて円柱状の試験片を得た。前記試験片の貯蔵弾性率(G’)を下記の条件で測定した。
測定装置:ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製動的粘弾性測定装置「DYNAMIC ANALYZER RDA III」
周波数:1Hz
温度 :25℃、80℃
更に、測定によって得られた貯蔵弾性率より、下記式(1)に基づいて弾性維持率を算出した。
弾性維持率(%)=G’(80℃)/G’(25℃)×100 ・・・式(1)
(ただし、式(1)中、G’(80℃)は80℃での貯蔵弾性率、G’(25℃)は25℃での貯蔵弾性率をそれぞれ表す。)
【0136】
【表6】
【0137】
【表7】
【0138】
表6および表7の結果から実施例1〜35に示すように本発明の粘着剤は、高温雰囲気および高温高湿雰囲気での耐久性、光漏れ性、ならびに再剥離性が優れている。一方、比較例1〜20は、前記特性を全て満たすことはできなかった。