【実施例】
【0043】
本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明における特性の測定方法並びに効果の評価方法は、次の通りである。
【0044】
(1)樹脂の密度
JIS K 7112(1980)に規定された密度勾配管法に従い密度を測定した。
【0045】
(2)フィルム厚さ
ダイヤルゲージ式厚さ計(JIS B 7509(1992)、測定子5mmφ平型)を用いて、フィルムの長手方向及び幅方向に10cm間隔で10点測定して、その平均値とした。
【0046】
(3)各層の厚さ
フィルムの断面をミクロトームにて切り出し、その断面についてデジタルマイクロスコープVHX−100形(株式会社キーエンス製)を用いて1000倍に拡大観察して撮影した断面写真を用いて、各層の厚さ方向の距離を計測し、拡大倍率から逆算して各層の厚さを求めた。尚、各層の厚さを求めるに当たっては、互いに異なる測定視野から任意に選んだ計5箇所の断面写真計5枚を使用し、それらの平均値として算出した。
【0047】
(4)メルトフローレート(MFR)
JIS K 7210に準拠して、ポリエチレン系樹脂は190℃、ポリプロピレン系樹脂は230℃で測定した。
【0048】
(5)シール用複合フィルムの作成方法
易開封性多層フィルムの基材層(A層)側に厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、P60(東レ株式会社製“ルミラー”)をポリウレタン接着剤で塗布量2g/m
2でドライラミネートし、40℃、72時間エージングしたサンプルをシール用複合フィルムとした。
【0049】
(6)評価用ポリプロピレンシート
押出機からホモポリプロピレン(後述のPP−3)樹脂を温度220〜230℃で溶融し、ダイよりフィルム状に押し出し、25〜50℃の冷却ロールでキャスト冷却固化し、厚さ300μmの評価用ポリプロピレンシートを作成した。
【0050】
(7)ヒートシール強度
(5)で作成したシール用複合フィルムを100mm×15mmに切り出し、シール層(C層)と(6)で作成した300μmの評価用ポリプロピレンシートに重ねて、テスター産業株式会社製の平板ヒートシールテスター(TP−701B)を使用し、シール温度160〜180℃、シール圧力2kg/cm
2、シール時間1秒の条件でヒートシールしたサンプルを、株式会社オリエンテック製のテンシロン(RTC−1210A)を使用して300mm/分の引張速度で、180°剥離したときのヒートシール強度を測定した。そのとき、1試料についてn数10の測定値の平均値をとり、10〜20N/15mmであるものを○とし、該範囲を外れたものを×とした。
【0051】
(8)開封力
(5)で作成したシール用複合フィルムを100mm×100mmにサンプルを切り出し、シール層(C層)とポリプロピレン製容器(95φ×61.9H、東缶工業株式会社製)に重ねて、エーシンパック工業株式会社製のハンドシーラーを使用し、ヒートシール温度170℃、シール圧力0.2MPa、シール時間1秒の条件でヒートシールしたサンプルを作成した。次いで株式会社オリエンテック製のテンシロン(RTC−1210A)を使用して、開封口をチャックに固定し、一方、容器を手に持ち、もう一方のチャックに手を添え300mm/分の引張速度で、シール用複合フィルムとポリプロピレン製容器が90°になるように開封したときの開封力を測定した。そのとき、1試料についてn数10の測定値の平均を取った。
ヒートシール温度170℃時に、開封力が10N以上/個であるものを○とし、該範囲を外れ、密封性、内容物保護性、易開封性を両立できないものを×とした。
【0052】
(9)打ち抜き特性
(5)で作成したサンプルを50mm×50mmにサンプリングし、直径20mmの穴が開いたサンプルホルダーにセットし、株式会社オリエンテック製テンシロン(RTC−1210A)を使用し、針(直径1.0mm、先端形状0.5mm)を毎分50±5mmの速度で突き刺し、突き刺す際にフィルムが伸びるかどうかを目視で評価し判定を行った。
【0053】
(10)落下衝撃性
(8)で用いたポリプロピレン製容器に内容物として水とサラダ油を50/50にブレンドした液を180ml充填封入してから、ヒートシール温度180℃、シール圧力0.2MPa、シール時間1秒の条件でヒートシールしたサンプルを常温雰囲気下において50cmの高さからコンクリート面へ蓋を下にして垂直落下させる。そのときに、1試料についてn数10のテストを行い、シール部の開封した個数で下記の通り判定した。
○:開封が、3個未満
×:開封が、3個以上
(11)剥離外観
(7)で作成したサンプルを手で剥離したときに、糸引き、膜残りを目視で評価し、下記の通り判定した。
○:糸引き、膜残りが見られない。
×:1mm以上の長い糸引き、膜残りが残る。
【0054】
(12)ノッキング剥離評価
(7)で作成したサンプルを手で剥離したときに、ノッキング剥離(パルス剥離音)の有無を官能で評価し、下記通り判定した。
○:ノッキング剥離がなくスムーズに剥離する。
×:ノッキング剥離が発生する。
【0055】
(13)製膜性
前記易開封性フィルムを製膜し巻き取る際、巻き取り張力調整が難しくシワが酷く発生するものを×、巻き取り張力調整が容易でシワが入らないものを○とした。
【0056】
本実施例で使用した原料は次の通りである。
(1)高密度ポリエチレン(HD−1)
日本ポリエチレン製 “ノバテック” HF562、MFR=7.5g/10分、密度=0.961g/cm
3
(2)高密度ポリエチレン(HD−2)
京葉ポリエチレン製 KEIYOポリエチ G1900、MFR=16.0g/10分、密度=0.955g/cm
3
(3)低密度ポリエチレン(LD−1)
住友化学製 “スミカセン” L705、MFR=7.0g/10分、密度=0.919g/cm
3
(4)直鎖状低密度ポリエチレン(LL−1)
住友化学製 “スミカセン−L” GA801、MFR=20.0g/10分、密度=0.920g/cm
3
(5)直鎖状低密度ポリエチレン(LL−2)
住友化学製 “スミカセン−L” GA804、MFR=50.0g/10分、密度=0.930g/cm
3
(6)直鎖状低密度ポリエチレン(LL−3)
住友化学製 “スミカセン−L” GA401、MFR=3.0g/10分、密度=0.935g/cm
3
(7)エチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマー(E−1)
三井化学製 “タフマー” A4085S、MFR=3.6g/10分、密度=0.885g/cm
3
(8)シングルサイト触媒を用いて合成されたエチレンプロピレンコポリマー(PP−1)
日本ポリプロ製 “ウィンテック” WMX03、MFR=25.0g/10分、密度=0.900g/cm
3
(9)マルチサイト触媒を用いて合成されたエチレンプロピレンコポリマー(PP−2)
住友化学製 住友“ノーブレン” FL6412、MFR=6.0g/10分、密度=0.900g/cm
3
(10)ホモポリプロピレン(PP−3)
プライムポリマー製 “プライムポリプロ” F107DJ、MFR=8.0g/10分、密度=0.900g/cm3
(11)エチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマー(E−2)
三井化学製 “タフマー” P0280、MFR=2.9g/10分、密度=0.870g/cm
3。
【0057】
実施例1
基材層(A)の樹脂として、高密度ポリエチレン(HD−1)50重量%と低密度ポリエチレン(LD−1)50重量%混合した樹脂組成物を用い、中間層(B)として、直鎖状低密度ポリエチレン(LL−1)60重量%と直鎖状低密度ポリエチレン(LL−2)20重量%とエチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマー(E−1)10重量%と高密度ポリエチレン(HD−2)10重量%混合した樹脂組成物を用い、シール層(C)として、シングルサイト触媒系エチレンプロピレンコポリマー(PP−1)30重量%とマルチサイト触媒系エチレンプロピレンコポリマー(PP−2)60重量%と直鎖状低密度ポリエチレン(LL−2)10重量%を、3種3層無延伸フィルム成形機の押出機3台に各々投入し、180〜230℃の押出温度で230℃のTダイより押し出し、40℃のキャスティングロールで急冷し易開封性フィルムを成形し、基材層(A)にコロナ処理を施した。得られた易開封性共押出多層フィルムの総厚さは50μmでシール層(C)の厚さが5μmであった。
【0058】
実施例2
シール層(C)をシングルサイト触媒系エチレンプロピレンコポリマー(PP−1)30重量%とマルチサイト触媒系エチレンプロピレンコポリマー(PP−2)30重量%と直鎖状低密度ポリエチレン(LL−2)40重量%混合した樹脂組成物とする意外は実施例1と同様に行った。
【0059】
実施例3
シール層(C)をシングルサイト触媒系エチレンプロピレンコポリマー(PP−1)60重量%とマルチサイト触媒系エチレンプロピレンコポリマー(PP−2)30重量%と直鎖状低密度ポリエチレン(LL−2)10重量%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に行った。
【0060】
実施例4
基材層(A)として、高密度ポリエチレン(HD−1)20重量%と低密度ポリエチレン(LD−1)80重量%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に行った。
【0061】
実施例5
基材層(A)として、高密度ポリエチレン(HD−1)80重量%と低密度ポリエチレン(LD−1)20重量%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に行った。
【0062】
実施例6
得られた易開封性共押出多層フィルムのシール層(C)の厚さを10μmと中間層(B)の厚さを35μmとする以外は、実施例1と同様に行った。
【0063】
実施例7
中間層(B)として、直鎖状低密度ポリエチレン(LL−1)60重量%と直鎖状低密度ポリエチレン(LL−2)20重量%とエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(E−2)10重量%と高密度ポリエチレン(HD−2)10重量%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に行った。
【0064】
実施例8
中間層(B)として、直鎖状低密度ポリエチレン(LL−1)90重量%とエチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマー(E−1)5重量%と高密度ポリエチレン(HD−2)5重量%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に行った。
【0065】
実施例9
シール層(C)をシングルサイト触媒系エチレンプロピレンコポリマー(PP−1)90重量%と直鎖状低密度ポリエチレン(LL−2)10重量%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に行った。
【0066】
比較例1
シール層(C)をシングルサイト触媒系エチレンプロピレンコポリマー(PP−1)30重量%とマルチサイト触媒系エチレンプロピレンコポリマー(PP−2)60重量%と直鎖状低密度ポリエチレン(LL−3)10重量%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に行った。
【0067】
比較例2
中間層(B)を直鎖状低密度ポリエチレン(LL−1)80重量%と直鎖状ポリエチレン(LL−2)20重量%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に行った。
【0068】
比較例3
基材層(A)として、高密度ポリエチレン(HD−1)とする以外は実施例1と同様に行った。
【0069】
比較例4
基材層(A)として、低密度ポリエチレン(LD−1)とする以外は実施例1と同様に行った。
【0070】
比較例5
シール層(C)をシングルサイト触媒系エチレンプロピレンコポリマー(PP−1)10重量%とマルチサイト触媒系エチレンプロピレンコポリマー(PP−2)80重量%と直鎖状低密度ポリエチレン(LL−2)10重量%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に行った。
【0071】
比較例6
シール層(C)をシングルサイト触媒系エチレンプロピレンコポリマー(PP−1)40重量%とマルチサイト触媒系エチレンプロピレンコポリマー(PP−2)60重量%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に行った。
【0072】
比較例7
シール層(C)をシングルサイト触媒系エチレンプロピレンコポリマー(PP−1)98重量%と直鎖状低密度ポリエチレン(LL−2)2重量%とする以外は実施例1と同様に行った。
【0073】
比較例8
中間層(B)として、直鎖状低密度ポリエチレン(LL−1)60重量%と直鎖状低密度ポリエチレン(LL−2)20重量%とエチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマー(E−1))20重量%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に行った。
【0074】
比較例9
中間層(B)として、直鎖状低密度ポリエチレン(LL−1)60重量%と直鎖状低密度ポリエチレン(LL−2)20重量%と高密度ポリエチレン(HD−1)20重量%混合した樹脂組成物とする以外は実施例1と同様に行った。
【0075】
比較例10
得られた易開封性共押出多層フィルムのシール層(C)の厚さを22μmと中間層(B)の厚さを23μmとする以外は、実施例1と同様に行った。
【0076】
比較例11
シール層(C)をシングルサイト触媒系エチレンプロピレンコポリマー(PP−1)20重量%とマルチサイト触媒系エチレンプロピレンコポリマー(PP−2)10重量%と直鎖状低密度ポリエチレン(LL−2)70重量%とする以外は実施例1と同様に行った。
【0077】
上記より得られた易開封性共押出多層フィルムの評価を行った。結果を表1から表2に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
【表2】
【0080】
比較例1は、シール層(C)に用いたポリエチレン系樹脂(c2)のメルトフローレートが小さく、落下衝撃性が良好だが、ノッキング剥離することが確認された。
【0081】
比較例2は、中間層(B)が直鎖状低密度ポリエチレン(b1)のみのため、ヒートシール強度は良好だが、落下衝撃性と剥離外観が悪いことが確認された。
【0082】
比較例3または比較例4は、ヒートシール強度、落下衝撃性は良好だが、フィルムの取り扱いが悪くなり製膜性や打ち抜き特性が悪いことが確認された。
【0083】
比較例5は、シール層(C)のポリプロピレン系樹脂(c1)中のシングルサイト触媒を用いて合成されたポリプロピレン系樹脂の割合が低いため、剥離外観は良好だが開封力が悪いことが確認された。
【0084】
比較例6は、ヒートシール強度、開封力、落下衝撃性は良好だがノッキング剥離することが確認された。
【0085】
比較例7は、開封力、落下衝撃性は良好だがヒートシール強度が悪く、ノッキング剥離することが確認された。
【0086】
比較例8または比較例9は、ヒートシール強度は良好だが、落下衝撃性、剥離外観が悪いことが確認された。
【0087】
比較例10は、開封力、落下衝撃性は良好だがヒートシール強度、剥離外観が悪いことが確認された。
【0088】
比較例11は、打ち抜き特性、剥離外観は良好だがヒートシール強度、開封力、落下衝撃性が悪くノッキング剥離することが確認された。