特許第6304559号(P6304559)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6304559
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】反力出力装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 26/02 20060101AFI20180326BHJP
   G05G 5/03 20080401ALI20180326BHJP
【FI】
   B60K26/02
   G05G5/03 Z
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-42297(P2015-42297)
(22)【出願日】2015年3月4日
(65)【公開番号】特開2016-159836(P2016-159836A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2017年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155067
【氏名又は名称】株式会社ホンダロック
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】高妻 宏行
【審査官】 岩本 薫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−041252(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/136744(WO,A1)
【文献】 特開2007−137152(JP,A)
【文献】 特開2010−111379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 26/02
G05G 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの駆動力をギア機構を介して駆動部材に伝達し、前記駆動部材を駆動することで、運転者により操作される操作子に対し、前記操作子の操作方向とは逆方向の力を出力する駆動部と、
外部から供給された入力値に基づいて前記駆動部に与える制御量を決定する制御部であって、前記入力値に従って前記制御量を増加させる場合に、前記制御量を次第に増加させて一定値に維持した後、前記制御量をステップ状に高くする制御部と
を備える反力出力装置。
【請求項2】
前記制御部は、単位時間当たり入力値の増加量が所定値を超えた場合に、前記制御量を次第に増加させて一定値に維持した後、前記制御量をステップ状に高くする、
請求項1に記載の反力出力装置。

【請求項3】
前記制御部は、前記操作子の操作速度が高いほど、前記制御量を前記ステップ状に高くする期間を短くし、前記制御量の傾きを大きくする
請求項1に記載の反力出力装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反力出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の発進時や走行時の意図しない急激な加速などを抑制するために、例えば、アクセルペダルを踏み込む力(踏力)とは逆方向の力(反力)をアクセルペダルに出力するアクセルペダル装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のアクセルペダル装置は、ペダルアームの基端を回動可能に軸支するハウジングに、ペダルアームを初期位置に戻すためのリターンスプリングと、反力を作り出すためのモータと、そのモータの回転をペダルアームに伝達するためのレバーとが内蔵されている。このアクセルペダル装置では、モータが制御装置によってアクセルペダルの踏込状態に応じた出力に制御され、その出力が伝達レバーを通してペダルアームに付与されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−111379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の反力出力装置では、モータ、モータに接続されたギヤ機構、およびギア機構に接続されたペダル(操作子)機構を有しているため、操作子に出力される反力が小さく感じられる場合があり、所望の高い反力を与えることができない場合あった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、操作子を介してより高い反力を感じさせることができる反力出力装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の反力出力装置は以下の構成を採用した。
(1)モータの駆動力をギア機構を介して駆動部材に伝達し、前記駆動部材を駆動することで、運転者により操作される操作子に対し、前記操作子の操作方向とは逆方向の力を出力する駆動部と、入力値に基づいて前記駆動部に与える制御量を決定する制御部であって、前記入力値に従って前記制御量を増加させる場合に、前記制御量を次第に増加させて一定値に維持した後、前記制御量をステップ状に高くする制御部と、を備えるようにした。
係る構成によれば、反力出力装置は、操作子を動作させて運転者に通知をする場合に、制御量を増加させた後に、一旦制御値を一定値に維持し、その後に制御量をステップ状に高くするので、より高い反力を運転者に感じさせることができる。
【0008】
(2)前記制御部は、単位時間当たり入力値の増加量が所定値を超えた場合に、前記制御量を次第に増加させて一定値に維持した後、前記制御量をステップ状に高くしてもよい。
係る構成によれば、反力出力装置は、単位時間当たり入力値の増加量が所定値を超えた場合に前記制御量を次第に増加させて一定値に維持した後、前記制御量をステップ状に高くするので、喩え操作子が必要以上に踏み込まれた状況に、より高い反力を運転者に感じさせることができる。
【0009】
(3)前記制御部は、前記操作子の操作速度が高いほど、前記制御量を前記ステップ状に高くする期間を短くし、前記制御量の傾きを大きくしてもよい。
係る構成によれば、操作子の操作速度が高いほど、短い期間において操作子の荷重を大きく増加させることができ、より高い反力を運転者に感じさせることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、操作子を介してより高い反力を感じさせることができる反力出力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る反力出力装置10を備えアクセルペダル装置1の外観構成の一例を示す図である。
図2】一実施形態に係る反力出力装置10の内部構造の一例を示す図である。
図3】一実施形態に係る反力出力装置10の制御回路を中心とした機能構成の一例を示す図である。
図4】一実施形態に係る反力出力装置10において反力設定値P(電流指令値I)の時間変化を示す図である。
図5】一実施形態に係るペダルアーム4を備えた反力出力装置10の動作を示すタイミングチャートであり、ペダルアーム4の速度が0.1rpmであるときの三相電流(a)、ペダルアーム4のストローク((b)のA)、ペダル荷重((b)のB)、および平均値電流((b)のC)を示す。
図6】一実施形態に係る反力出力装置10からペダルアーム4を除外した構成の動作を示すタイミングチャートであり、ペダルアーム4の速度が0.1rpmであるときの三相電流(a)、試験用モータの平均値((b)のA)、ATRトルク((b)のB)、および平均値電流((b)のC)を示す。
図7】一実施形態に係るペダルアーム4を備えた反力出力装置10の動作を示すタイミングチャートであり、ペダルアーム4の速度が0.5rpmであるときの三相電流(a)、ペダルアーム4のストローク((b)のA)、ペダル荷重((b)のB)、および平均値電流((b)のC)を示す。
図8】一実施形態に係る反力出力装置10からペダルアーム4を除外した構成の動作を示すタイミングチャートであり、ペダルアーム4の速度が0.5rpmであるときの三相電流(a)、試験用モータの平均値((b)のA)、ATRトルク((b)のB)、および平均値電流((b)のC)を示す。
図9】一実施形態に係るペダルアーム4を備えた反力出力装置10の動作を示すタイミングチャートであり、ペダルアーム4の速度が1.0rpmであるときの三相電流(a)、ペダルアーム4のストローク((b)のA)、ペダル荷重((b)のB)、および平均値電流((b)のC)を示す。
図10】一実施形態に係る反力出力装置10からペダルアーム4を除外した構成の動作を示すタイミングチャートであり、ペダルアーム4の速度が1.0rpmであるときの三相電流(a)、試験用モータの平均値((b)のA)、ATRトルク((b)のB)、および平均値電流((b)のC)を示す。
図11】一実施形態に係る反力出力装置10における反力設定値P(電流指令値I)の変化を示す他の図である。
図12】一実施形態に係る反力出力装置10の他の動作を示すタイミングチャートであり、ペダルアーム4の速度が0.1rpmであるときの三相電流(a)、ペダルアーム4のストローク((b)のA)、ペダル荷重((b)のB)、および平均値電流((b)のC)を示す。
図13】一実施形態に係る反力出力装置10の他の動作を示すタイミングチャートであり、ペダルアーム4の速度が0.5rpmであるときの三相電流(a)、ペダルアーム4のストローク((b)のA)、ペダル荷重((b)のB)、および平均値電流((b)のC)を示す。
図14】一実施形態に係る反力出力装置10の他の動作を示すタイミングチャートであり、ペダルアーム4の速度が1.0rpmであるときの三相電流(a)、ペダルアーム4のストローク((b)のA)、ペダル荷重((b)のB)、および平均値電流((b)のC)を示す。
図15】一実施形態に係る反力出力装置10において、モータ20の無通電状態におけるペダルアーム4のストロークとペダル荷重との関係を、ペダル操作速度ごとに示す図である。
図16】一実施形態に係る反力出力装置10のペダルアーム4を固定しているときにおける、反力設定値P(電流指令値I)をAからBに変化させたときの三相電流(a)、試験用モータの平均値((b)のA)、ATRトルク((b)のB)、および平均値電流((b)のC)を示すタイミングチャートである。
図17】一実施形態に係る反力出力装置10のペダルアーム4を固定しているときにおいて、反力設定値P(電流指令値I)をAからB#(>B)に変化させたときの三相電流(a)、試験用モータの平均値((b)のA)、ATRトルク((b)のB)、および平均値電流((b)のC)を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態として示す反力出力装置を、図面を参照して説明する。一実施形態における反力出力装置は、例えば、車両の加速を指示するために設けられたアクセルペダル等の操作子に対し、踏み込む力(踏力)とは逆向きの力(反力)を出力する装置である。反力出力装置を使用することにより、アクセルフィーリングを向上させたり、燃費を節約したアクセルワークを促すよう伝達したり、種々の安全制御を行ったりすることができる。安全制御としては、カーブの手前や市街地、スクールゾーン等において、過剰な加速を抑制するために、比較的大きい反力を出力する制御が挙げられる。また、単に基準を超えた急なアクセルペダルの操作がなされた場合には、誤操作と判断して大きい反力を出力する制御が行われてもよい。また、本実施形態における反力の出力対象である操作子は、アクセルペダルに限定されず、ブレーキペダル、ステアリングホイール、或いはゲーム機の操作デバイス等であってもよい。
【0013】
図1は、一実施形態に係る反力出力装置10を備えるアクセルペダル装置1の外観構成の一例を示す図である。
アクセルペダル装置1は、運転席の足元前方に設置されるペダル本体ユニット2と、ペダル本体ユニット2の上方に設置される反力出力装置10と、を備えている。
【0014】
ペダル本体ユニット2は、車体に取り付けられる保持ベース2aと、保持ベース2aに設けられた支軸2bに基端が回動可能に支持されるペダルアーム4と、ペダルアーム4の先端部に設けられ、運転者によって踏力を付与されるペダル本体部6とを備え、保持ベース2aには、ペダルアーム4を初期位置に常時付勢する図示しないリターンスプリングが設けられている。
【0015】
ペダルアーム4には、ペダルアーム4の操作量(回動角度)に応じて内燃機関(エンジン)の図示しないスロットルバルブの開度を操作するための図示しないケーブルが接続されている。ただし、内燃機関が電子制御スロットルを採用する場合には、ペダル本体ユニット2にペダルアーム4の回動角度を検出するための回転センサを設け、その回転センサの検出信号を基にしてスロットルバルブの開度を制御するようにしてもよい。また、ペダルアーム4の基端の近傍部には、ペダルアーム4の延出方向とほぼ相反する方向に延出する反力伝達レバー8が一体に連結されている。
【0016】
また、反力出力装置10の駆動部材である出力レバー12の先端部と反力伝達レバー8の先端部とは、当接可能となっている。反力出力装置10の駆動部材である出力レバー12の回動力は、反力伝達レバー8を介してペダルアーム4に出力される。このように反力出力装置10は、踏力の方向とは逆方向の反力を操作子に出力する。
【0017】
図2は、一実施形態に係る反力出力装置10の内部構造の一例を示す図である。図2では、ハウジング部材14の上面のカバーを取り去り、ハウジング部材14(反力出力装置10)の内部状態を示している。本実施形態における反力出力装置10は、反力を作り出すための駆動源であるモータ20と、ハウジング部材14に回動可能に軸支される反力出力軸16と、ギア減速機構30と、回路基板50とを備えている。
【0018】
ギア減速機構30は、モータ20の回転子の回転を減速しモータ20側から出力するトルクTを増大させ、モータの回転軸22方向から反力出力軸16方向へと偏向して増大させたトルクTを出力レバー12に伝達する。反力出力軸方向の一端部は、ハウジング部材14の側面から外側に突出し、その突出した端部に出力レバー12が一体に連結されている。
【0019】
モータ20の回転子の回転は、回路基板50に実装された制御回路によって制御される。回路基板50には、後述する上位ECU(Electronic Control Unit)と制御回路とで信号を送受信するための図示しないCAN(Controller Area Network)ケーブルが接続されている。また、回路基板50とモータ20とは図示しないケーブルを介して接続されており、回路基板50から送られる制御信号に基づいて、モータ20の回転子の回転が制御される。また、モータ20の回転子を覆う筐体には小孔やスリット等が設けられ、小孔やスリット等にはホールIC(Integrated Circuit)が嵌込設置されている。ホールICは、小孔やスリット等を透過する磁束強度を検出し、検出した磁束強度に応じたパルス状の電圧を出力する。ホールICによって検出される磁束強度は、モータ20内の回転子の回転に応じて変化する。このため、反力出力装置10は、ホールICの出力電圧に基づいて回転子の回転量(例えば回転数n[rpm])を検出することができる。
【0020】
図3は、一実施形態に係る反力出力装置10の制御回路を中心とした機能構成の一例を示す図である。図3において、反力出力装置10は、モータ20と、上位ECU70との間でCAN通信を行うCAN制御回路54と、マイクロコントローラ(マイコン)56と、モータドライバIC58と、パワーFET(Field Effect Transistor)60と、ホールIC64U、64V、64Wと、ホールIC64と、電流検出センサ66とを備える。なお、以下において、ホールIC64U、64V、64Wを特に区別しない場合、総称してホールIC64と記載する。
【0021】
上位ECU70は、例えば、ペダルアーム4の操作量に応じてスロットルバルブの開度等を制御することで、エンジン72の駆動制御を行う。エンジン72は、出力軸であるクランクシャフトが車軸に連結され、車両の走行駆動力を出力する。なお、走行駆動部としては、エンジン72に走行用モータを加えた構成であってもよいし、エンジン72を備えず走行用モータのみにより走行駆動力を出力する構成であってもよい。
【0022】
マイコン56は、CAN制御回路54を介して上位ECU70とCAN通信を行う。マイコン56は、反力出力装置10が作り出す反力の大きさの基準となる反力設定値Pを、上位ECU70から受信する。反力設定値Pとは、「入力値」の一例である。反力設定値Pは、例えば、反力出力装置10が搭載される車両の車速に応じて大きくなるように決定されてもよいし、燃費を向上させるために急なアクセル操作を抑制するために決定されてもよい。また、反力設定値Pは、反力出力装置10が搭載される車両と先行車両との車間距離が短くなる程大きくなるように決定されてもよい。車間距離は、例えば、車両のフロント部に設置されたミリ波レーダや音波センサ、フロントガラス上部等に設置されたステレオカメラ装置等によって取得される。本発明の適用上、反力設定値Pの決定手法について特段の制限は存在しない。
【0023】
マイコン56は、反力設定値Pに基づいて、モータドライバIC58に与える制御量として電流指令値Iを決定する。この際、マイコン56は、例えば、電流指令値Iと反力設定値Pとの関係を示した関係式に基づき、電流指令値Iを決定する。モータドライバIC58は、電流指令値Iに基づいてPWM制御時のパルス幅やデューティ比等を決定し、パワーFET60へ通電させる電流を制御し、モータ20を回転させる。
【0024】
パワーFET60は、U相、V相、W相のそれぞれのパワーFET60U、60V、60Wを備え、各パワーFETは、モータ20の対応する相のコイルにそれぞれ接続されている。モータドライバIC58は、各相のパワーFETを循環的にオン/オフすることで各相のコイルに磁界を発生させ、モータ20の回転子を回転させる。
【0025】
マイコン56には、モータ20へ通電される電流を検出するための電流検出センサ66と、モータドライバIC58とが接続されている。マイコン56は、電流検出センサ66により検出された電流を示す信号を受信する。モータドライバIC58の入力端には、マイコン56に加え、3つのホールIC64U、64V、64Wが接続されており、モータドライバIC58は、ホールIC64U、64V、64W各々が出力する電圧の変化を受け付ける。モータドライバIC58は、ホールIC64U、64V、64Wからの入力に基づいて、モータ20の回転数nを示す信号をマイコン56に出力する。これによって、マイコン56は、モータ20の回転数nを検出する。マイコン56は、検出したモータ20の回転数nに基づき、モータドライバIC58に与える電流指令値Iを決定する。
【0026】
なお、上位ECU70およびマイコン56の一部または全部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサが、メモリに記憶されたプログラムを実行することにより機能するソフトウェア機能部である。また、これらの機能部のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア機能部であってもよい。
【0027】
次に、上述したように構成された反力出力装置10において、操作子としてのペダルアーム4を介してより高い反力を感じさせる制御について説明する。なお、以下の説明において、上位ECU70により反力設定値Pを変化させてより高い反力を感じさせる制御を実施してもよく、マイコン56により反力設定値Pに対する電流指令値Iを変化させてより高い反力を感じさせる制御を実施してもよい。以下の説明は、反力設定値Pに対応させて電流指令値Iを変化させてより高い反力を感じさせる制御を説明する。
【0028】
図4は、反力出力装置10における反力設定値Pの変化を示す図である。反力出力装置10は、上位ECU70から供給された反力設定値Pが増加された場合に、反力設定値Pに対応させて電流指令値Iを次第に増加させ、電流指令値Iを一定値(A)に維持した後、電流指令値IをAからCまでステップ状に高くする。以下、この制御量の変化に従ってモータ20を制御したときの反力出力装置10の動作について説明する。反力出力装置10は、予め図4に示すような反力設定値Pに対応した電流指令値Iの変化パターンを記憶しておき、マイコン56により反力設定値Pの変化パターンを判定し、変化パターンに基づいて電流指令値Iを決定して、モータ20を駆動させる。
【0029】
ここで、ペダルアーム4に与える反力(E)は、以下の式により示される。
=(1/2)Iω+F−(1/2)mv
上記式において、はペダルアーム4に与える反力、Iは電流指令値、ωはモータ20の回転角速度である。(1/2)Iωは、モータ20から反力を発生させるためのモータ20のトルクである。Fは逆転効率による負荷エネルギーである。(1/2)mvは、運転者からペダルアーム4に与えられる操作力(E)であり、mは運転者からペダルアーム4に与えられる質量、vは運転者からペダルアーム4に与えられるペダルアーム4の操作速度である。
マイコン56は、電流指令値Iを制御することにより、反力を制御して、ペダルアーム4の反力を運転者に通知する。
【0030】
図5は、ペダルアーム4を備えた反力出力装置10の動作を示すタイミングチャートであり、ペダルアーム4の速度が0.1rpmであるときの三相電流(図5(a))、ペダルアーム4のストローク(図5(b)のA)、ペダル荷重(図5(b)のB)、および平均値電流(図5(b)のC)を示す。図6は、上述した反力出力装置10からペダルアーム4を除外した構成の動作を示すタイミングチャートであり、ペダルアーム4の速度が0.1rpmであるときの三相電流(図6(a))、試験用モータの平均値(図6(b)のA)、ATRトルク(図6(b)のB)、および平均値電流(図6(b)のC)を示す。
なお、ATRトルクは、出力レバー12のトルクをトルク測定機により測定された値である。
【0031】
ペダル操作速度:0.1rpmでペダルアーム4の操作量が上昇しているときに(図5(b)のA)、反力出力装置10は、反力設定値PをCからAに次第に増加させ、その後に反力設定値Pを一定値のAに維持している。これにより、図5中のt1の以前では、ペダル荷重(図5(b)のB)、および平均値電流(図5(b)のC)は一定値である。
t1が到来すると、反力出力装置10は、反力設定値PをAからBに変化させると(図4)、三相交流電流(図5(a))がモータ20に供給され、これにより、モータ20には、平均値電流(図5(b)のC)が供給される。この結果、ペダルアーム4のペダル荷重を、時刻t1からt2の期間(988ms)に亘って上昇させることができる(図5(b)のB)。
t2以降においては、反力出力装置10は、反力設定値PをBの一定値で維持しているために、ペダル荷重(図5(b)のB)および平均値電流(図5(b)のC)は略一定値である。その後、反力出力装置10は、反力設定値PをBからAにステップ状に低下させる(図4)と、ペダル荷重(図5(b)のB)および平均値電流(図5(b)のC)は急峻に低下する。
一方、図6によれば、反力設定値PをAからBにステップ状に増加させると(図4)、時刻t1からt2の期間(784ms)に亘ってペダル荷重を上昇させることができる(図6(b)のB)。
図5および図6によれば、反力出力装置10にペダルアーム4を接続させていないときのATRトルクの立ち上がり時間(784ms)が、ペダル荷重の立ち上がり時間(988ms)よりも短い。
なお、以下の説明においても、t1以前の動作およびt2以降の動作は同様である。
【0032】
図7は、ペダルアーム4を備えた反力出力装置10の動作を示すタイミングチャートであり、ペダルアーム4の速度が0.5rpmであるときの三相電流(図7(a))、ペダルアーム4のストローク(図7(b)のA)、ペダル荷重(図7(b)のB)、および平均値電流(図7(b)のC)を示す。図8は、上述した反力出力装置10からペダルアーム4を除外した構成の動作を示すタイミングチャートであり、ペダルアーム4の速度が0.5rpmであるときの三相電流(図8(a))、試験用モータの平均値(図8(b)のA)、ATRトルク(図8(b)のB)、および平均値電流(図8(b)のC)を示す。
【0033】
ペダル操作速度:0.5rpmでペダルアーム4の操作量が上昇しているときに(図7(b)のA)、反力設定値PをAからBにステップ状に増加させると(図4)、ペダルアーム4のペダル荷重を時刻t1からt2の期間(193ms)に亘って上昇させることができる(図7(b)のB)。
一方、図8によれば、反力設定値PをAからBにステップ状に増加させると(図4)、時刻t1からt2の期間(183ms)に亘ってペダル荷重を上昇させることができる(図8(b)のB)。
図7および図8によれば、反力出力装置10にペダルアーム4を接続させていないときのATRトルクの立ち上がり時間(183ms)が、ペダル荷重の立ち上がり時間(193ms)よりも短い。
【0034】
図9は、ペダルアーム4を備えた反力出力装置10の動作を示すタイミングチャートであり、ペダルアーム4の速度が1.0rpmであるときの三相電流(図9(a))、ペダルアーム4のストローク(図9(b)のA)、ペダル荷重(図9(b)のB)、および平均値電流(図9(b)のC)を示す。図10は、上述した反力出力装置10からペダルアーム4を除外した構成の動作を示すタイミングチャートであり、ペダルアーム4の速度が1.0rpmであるときの三相電流(図10(a))、試験用モータの平均値(図10(b)のA)、ATRトルク(図10(b)のB)、および平均値電流(図10(b)のC)を示す。
【0035】
ペダル操作速度:1.0rpmでペダルアーム4の操作量が上昇しているときに(図9(b)のA)、反力設定値PをAからBにステップ状に変化させると(図4)、ペダルアーム4のペダル荷重を時刻t1からt2の期間(127ms)に亘って上昇させることができる(図9(b)のB)。
一方、図10によれば、反力設定値PをAからBにステップ状に変化させると(図4)、時刻t1からt2の期間(113ms)に亘ってペダル荷重を上昇させることができる(図10(b)のB)。
図9および図10によれば、ペダルアーム4を備えない反力出力装置10のATRトルクの立ち上がり時間(113ms)が、ペダル荷重の立ち上がり時間(127ms)よりも短い。
【0036】
以上のように、反力出力装置10によれば、反力設定値PをCからAに次第に増加させた後に、t1〜t2に亘り反力設定値PをAからBにステップ状に増加させることにより、t1〜t2においてペダル荷重を増加させることができる。これにより、反力出力装置10は、ペダル荷重の増加によって、より高い反力を運転者に感じさせることができる。
【0037】
ペダルアーム4を備える反力出力装置10のペダル荷重の立ち上がり期間は、ペダルアーム4を備えない反力出力装置10のATRトルクよりも長くなる。この結果より、ペダルアーム4の剛性が、ペダル荷重の立ち上がりを鈍くする要因の一つであることがわかる。すなわち、ペダルアーム4を備える反力出力装置10は、ステップ状に反力設定値Pを変化させても、実際のペダル荷重の傾きは、ペダルアーム4を備えない反力出力装置のATRトルクの傾きよりも緩やかである。
このことから、反力出力装置10によれば、ペダルアーム4が接続されていることに寄るペダル荷重の立ち上がり鈍化を考慮して、反力設定値Pをステップ状に変化させることにより、より高い反力を運転者に感じさせることができる。
【0038】
図11は、反力出力装置10における反力設定値Pの変化を示す他の図である。図11によれば、反力出力装置10は、反力設定値Pを、AからB#までステップ状に上昇させる。B#は、図4に示したBよりも高く、実施形態において、例えばAの2倍の大きさである。
【0039】
図12は、ペダルアーム4を備えた反力出力装置10の動作を示すタイミングチャートであり、ペダルアーム4の速度が0.1rpmであるときの三相電流(図12(a))、ペダルアーム4のストローク(図12(b)のA)、ペダル荷重(図12(b)のB)、および平均値電流(図12(b)のC)を示す。図13は、ペダルアーム4を備えた反力出力装置10の動作を示すタイミングチャートであり、ペダルアーム4の速度が0.5rpmであるときの三相電流(図13(a))、ペダルアーム4のストローク(図13(b)のA)、ペダル荷重(図13(b)のB)、および平均値電流(図13(b)のC)を示す。図14は、ペダルアーム4を備えた反力出力装置10の動作を示すタイミングチャートであり、ペダルアーム4の速度が1.0rpmであるときの三相電流(図14(a))、ペダルアーム4のストローク(図14(b)のA)、ペダル荷重(図14(b)のB)、および平均値電流(図14(b)のC)を示す。
【0040】
ペダル操作速度:0.1rpmでペダルアーム4の操作量が上昇しているときに(図12(b)のA)、反力設定値PをAからB#にステップ状に増加させると(図11)、ペダルアーム4のペダル荷重を時刻t1からt2の期間(1240ms)に亘って上昇させることができる(図12(b)のB)。
ペダル操作速度:0.5rpmでペダルアーム4の操作量が上昇しているときに(図13(b)のA)、反力設定値PをAからB#にステップ状に増加させると(図11)、ペダルアーム4のペダル荷重を、時刻t1からt2の期間(356ms)に亘って上昇させることができる(図13(b)のB)。
ペダル操作速度:1.0rpmでペダルアーム4の操作量が上昇しているときに(図14(b)のA)、反力設定値PをAからB#にステップ状に増加させると(図11)、ペダルアーム4のペダル荷重を時刻t1からt2の期間(290ms)に亘って上昇させることができる(図14(b)のB)。
図12乃至図14によれば、ペダル操作速度が高くなるほどペダル荷重の立ち上がり期間が短くなる。したがって、反力出力装置10によれば、ペダル操作速度が高いほどペダルアーム4を介してより高い反力を感じさせることができる。また、ペダル操作速度が高くなるほどペダル荷重の立ち上がり幅が大きくなる。
【0041】
図15は、モータ20の無通電状態におけるペダルアーム4のストロークとペダル荷重との関係を示す図である。図15において、ペダル荷重は、ペダル操作速度が0.1rpm、0.5rpm、1.0rpmごとに示されている。
図15によれば、ペダル操作速度によるモータ20の無通電状態におけるペダル荷重には大差がないことがわかる。したがって、反力出力装置10は、ペダル荷重に対する機械的なイナーシャの影響が少ないことがわかる。この結果、反力出力装置10は、反力出力装置10におけるイナーシャの有無にかかわらず、ペダル荷重を立ち上げてより高い反力を感じさせることができる。
【0042】
上述した実施形態の反力出力装置10において、ペダルアーム4が固定されているときにおいて高い反力を感じさせる制御について説明する。
図16は、ペダルアーム4を固定しているときにおいて、図4に示すように反力設定値PをAからBにステップ状に増加させたときの三相電流(図16(a))、試験用モータの平均値(図16(b)のA)、ATRトルク(図16(b)のB)、および平均値電流(図16(b)のC)を示すタイミングチャートである。
図17は、ペダルアーム4を固定しているときにおいて、図11に示すように反力設定値PをAからB#(>B)にステップ状に増加させたときの三相電流(図17(a))、試験用モータの平均値(図17(b)のA)、ATRトルク(図17(b)のB)、および平均値電流(図17(b)のC)を示すタイミングチャートである。
【0043】
図16および図17によれば、ペダルアーム4が操作されていない状態であっても、図4または図11のように反力設定値Pを変化させることにより、30ms前後の立ち上がり期間においてATRトルクを立ち上げることができる。これにより、反力出力装置10によれば、ユーザがペダルアーム4に触れている状態であってペダルアーム4を一定位置に固定させているときにも、より高い反力を感じさせることができる。
【0044】
以上説明した本発明を適用した実施形態に係る反力出力装置10によれば、反力設定値Pを次第に増加させて一定値に維持した後、反力設定値Pをステップ状に高くするので、操作子を介してより高い反力を感じさせることができる。すなわち、反力出力装置10によれば、外部から供給された反力設定値Pに対応させて電流指令値Iを次第に増加させて一定値に維持した後、反力設定値Pに対応させて電流指令値Iをステップ状に高くするので、ペダルアーム4を介してより高い反力を感じさせることができる。
例えば、車両の発進時や走行時において必要以上にペダルアーム4が踏み込まれることがある。この場合、運転者の操作によって急峻に反力設定値Pが増加されているので、単にステップ状に反力設定値Pに対応した電流指令値Iを増加させても運転者に反力を感じさせにくい。これに対し、反力出力装置10によれば、操作に基づいて反力設定値Pに従って次第に電流指令値Iをさせると共に、一旦一定値に電流指令値Iを維持した後、電流指令値Iをステップ状に高くして、より高い反力を感じさせることできる。
【0045】
さらに、この反力出力装置10は、単位時間当たりの反力設定値Pの増加量が所定値を超えた場合に、反力設定値Pに対応させて電流指令値Iを次第に増加させて一定値に維持した後、反力設定値Pに対応させて電流指令値Iをステップ状に高くするので、必要以上にペダルアーム4が踏み込まれた場合に、電流指令値Iを次第に増加させて一定値に維持した後、電流指令値Iをステップ状に高くする制御を実施して、より高い反力を感じさせることができる。
ここで、反力設定値Pの増加量が所定値は、予め設定されたペダルアーム4が急に踏み込まれた値を実験結果等に基づいて設定されていればよい。また、反力出力装置10は、反力設定値Pの増加量の所定値に代えて、反力設定値Pに対応した電流指令値Iに所定値を設定し、反力設定値Pに対応した電流指令値Iが所定値を超えた場合に、次第に電流指令値Iを増加させて一定値に維持した後、電流指令値Iをステップ状に高く制御してもよい。
【0046】
さらに、反力出力装置10によれば、ペダルアーム4のペダル操作速度が高いほど、反力設定値Pまたは電流指令値Iをステップ状に高くする期間を短くし、反力設定値Pまたは電流指令値Iの傾きを大きくするので、短い期間においてペダル荷重を増加させることができ、より高い反力を運転者に感じさせることができる。
【0047】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0048】
1‥アクセルペダル装置、2…ペダル本体ユニット、4…ペダルアーム、6…ペダル本体部、10…反力出力装置、12…出力レバー、20…モータ、30…ギア減速機構、50…回路基板、56…マイコン、70…上位ECU、72…エンジン
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