(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記薄板鋼をロール状に巻回しつつ前記ロールの1周分ごとにピッチを広げて前記ティースの断面形状を形成し、前記ロールを所定の内周角で分割して前記固定子曲線部を作成することを特徴とする請求項8記載のリニアモータの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0012】
<1:リニアモータの概略構成>
図1は、本実施形態のリニアモータの外観図を表しており、
図1(a)は上方から見た平面図、
図1(b)は側方から見た側面図を表している。この
図1において、本実施形態のリニアモータ1は動作原理がリラクタンス型のものであり、固定子2と、ガイドレール3と、可動子4を有している。
【0013】
固定子2は、床面(特に図示せず)に固定的に設置される帯状の略板状部材であり、その上面にはそれぞれ上方に突出するよう形成された複数のティース21が当該固定子2の長手方向(図中のおよそ左右方向)に並列に配置されている。なお、ここでの「並列」とは長手方向に沿って並ぶだけの配置関係を意味し、必ずしもティース21どうしが平行な関係にあるとは限らない(以下同様)。ただし、固定子2は、長手方向が直線状となっている固定子直線部22と、長手方向が円弧状となっている固定子曲線部23を有しており、固定子直線部22においてはいずれのティース21どうしも平行な関係で配置されている。なお、図示する例では、固定子2の各部がそれぞれティース21も含めて電磁鋼で一体に構成されている。
【0014】
ガイドレール3(誘導部)は、上記固定子2の長手方向と直交する幅方向(図中のおよそ上下方向)の両側で、それぞれ当該固定子2と略平行に固定配置された2本のレールである。なお、
図1(b)中では図示の煩雑を避けるために、当該ガイドレール3の図示を省略している。
【0015】
可動子4は、上記固定子2の上面に対向配置されて当該固定子2の長手方向に走行可能な移動体であり、図示する例では略直方体形状の筐体41と、その筐体41内部に設けられた電機子42と、筐体41の側部に設けられた4つのガイド部43を有している。電機子42は、特に図示しないケーブル等を介して外部から3相電力を給電されることで、固定子2の長手方向に沿って断続的に配置された磁極列を経時的に長手方向に移動させる移動磁界を発生する(詳細な構成については公知のものと同等であるため図示、説明を省略)。ガイド部43は、筐体41の幅方向の両側面で前後2つずつ設けられ、それぞれ対応する側のガイドレール3上に懸架する。なお、
図1(b)中では図示の煩雑を避けるために、ガイド部43の図示を省略している。
【0016】
以上の構成のリニアモータ1において、可動子4はガイドレール3上に支持されて固定子2上の各ティース21と一定の隙間を介した非接触状態を維持しつつ、ガイドレール3に案内されて 固定子2の長手方向に沿った移動が可能となっている。そして、可動子4の電機子42が固定子2の各ティース21に向けて移動磁界を発生させることで、それら移動磁界と各ティース21との間の吸引力により可動子4に推力を与えて移動させることができる。このように可動子4側に電機子42を備え固定子2側に電磁鋼のティース21を備えたリラクタンス型のリニアモータ1とすることで、ストロークの長い固定子2に永久磁石や電機子コイルを多数備えることなく低コストで制御の容易なリニアモータ1を実現できる。
【0017】
<2:本実施形態の特徴>
以上の構成のリニアモータ1において、可動子4の移動経路である固定子2のレイアウトとして、その長手方向が直線状となる固定子直線部22だけでなく略円弧状の固定子曲線部23も用意されている。しかし、それら固定子直線部22と固定子曲線部23のいずれにおいてもティース21を同等に機能させ、できるだけ製造手法を共通化させて全体の製造コストを低減させることが要望されている。
【0018】
これに対し本実施形態では、固定子曲線部23において、隣接した所定数N(1≦Nの整数)のティース21を有するティース群どうしの間で内周側ピッチのよりも外周側ピッチが広くなるよう配置する。このように構成した固定子曲線部23のティース21は、固定子直線部22の場合と同等に機能でき、また製造手法の多くの部分で固定子直線部22と共通化させて全体の製造コストを低減できる。以下においては、上述した機能を実現可能な複数の固定子2(及びガイドレール3)の実施形態について、順に説明する。
【0019】
<3.1:第1実施形態の固定子>
図2〜
図4は、第1の実施形態の固定子2Aの構成を表している。
図2は固定子直線部22及び固定子曲線部23Aを含む固定子2A全体を上方から見た平面図を示し、
図3は固定子曲線部23Aを構成する固定子分割直線部24Aの平面図を示し、
図4は固定子分割直線部24Aを構成する各薄板鋼25Aの側面図を示している。まず
図2に示すように、第1実施形態の固定子2Aが備える固定子曲線部23Aは、それぞれの長手方向が略直線状となっている複数の固定子分割直線部24Aを、当該固定子曲線部23Aの周方向に連結して全体の長手方向が略円弧状に構成されている。
【0020】
それぞれの固定子分割直線部24Aは、
図3に示すように、全体の形状が台形形状に形成されており、その台形形状の長手方向、つまり長辺及び短辺と平行な方向(図中の左右方向)に対してティース21が並列配置されている。そして本実施形態においては、固定子分割直線部24Aが、長手方向に直交する幅方向で複数の薄板鋼25A(後述の
図4参照)を積層して構成されている。また、固定子直線部22においても同様に幅方向で複数の薄板鋼を積層して構成されている。つまり、固定子直線部22と固定子分割直線部24Aは、それぞれ長手方向に沿った直線状の薄板鋼25を幅方向に同じ枚数で積層して同じ幅寸法Wtにするという共通した形成手法で全体が作成される。
【0021】
本実施形態の固定子分割直線部24Aでは、隣り合うティース21どうしの間のピッチλが、長手方向と幅方向の両方で変化している。ここで、ピッチλとは、隣合う2つのティース21上の対応する2点間の距離(つまり波形周期)に相当する。このピッチλは、それぞれ同一に設定される各ティース21自体の長手方向の幅tと、隣合うティース21どうしの間の離間距離dの合計に相当する。このため固定子直線部22では、どのような組み合わせの隣接ティース対においても、またどの幅方向位置においてもピッチλtは一定となる(
図2参照)。
【0022】
図4は、固定子分割直線部24Aを構成する複数の薄板鋼25Aのうち最も長辺側に位置する薄板鋼25Aoを上方に示し、幅方向の中央に位置する薄板鋼25Acを中央に示し、最も短辺側に位置する薄板鋼25Aiを下方に示している(各薄板鋼25Aの位置は
図3参照)。この
図4に示すように、同一の隣接ティース対の間でも、長辺側(つまり固定子曲線部23の外周側)に位置する薄板鋼25Aほど、各ティース21の断面形状の間のピッチλが大きく設定されている。つまり、各ティース21自体の幅tはいすれも同一であるため、離間距離dだけが広くなる。また、短辺側(つまり固定子曲線部23Aの内周側)に位置する薄板鋼25Aほど、各ティース21の断面形状の間のピッチλ(離間距離d)が小さくなる。
【0023】
さらに、本実施形態の例では、固定子分割直線部24A全体の長手方向の中央位置を基準位置として、この基準位置に近いほど隣合うティース21間のピッチλ(離間距離d)が小さく、基準位置から離間するほど隣合うティース21間のピッチλ(離間距離d)が大きく設定されている。そして固定子分割直線部24Aの全体が、基準位置に対応する基準線CLに関して長手方向に対称となるよう形成されており、その長手方向の両端部にはいずれもティースの半体21aが形成されている。
【0024】
以上のようなピッチ設定を適切に行うことにより、固定子分割直線部24Aが備える各ティース21は、当該固定子分割直線部24Aを複数連結した固定子曲線部23A全体の曲率中心Pに対して略放射状に配置される(上記
図2参照)。つまり、当該固定子曲線部23A上に位置するいずれの組み合わせの隣接ティース対においても、曲率中心Pに対するピッチ角θ
λを同一にできる。なおこの場合、固定子曲線部23A上に配置される個々のティース21の1つ(=所定数N)が単独で、上記の隣接したティース群を構成する。また、上記
図2中に示す例では、固定子直線部22の端部に対し、長手方向中央位置(=基準位置)で半分に分割した固定子分割直線部24A′を連結している。そして各固定子分割直線部24Aの短辺どうしを内周側で隣接するよう連結することにより、固定子曲線部23Aの全体が曲率半径Rの円弧状に近い形状で構成できる。
【0025】
<3.2:第1実施形態の効果>
以上説明したように、第1実施形態の固定子2Aを備えたリニアモータ1によれば、長手方向が円弧状となっている固定子曲線部23Aにおいて、隣接した所定数N(本実施形態ではN=1)のティース21からなるティース群どうしの間で内周側ピッチよりも外周側ピッチが広くなるよう配置されている。このように構成した固定子曲線部23Aのティース21は、固定子直線部22の場合と同等に機能でき、また製造手法の多くの部分で共通化させて全体の製造コストを低減できる。この結果、低コスト化と制御性能を向上させることができる。
【0026】
また、本実施形態では特に、固定子曲線部23Aにおいて、ティース群は、当該固定子曲線部23Aの曲率中心Pから放射状に配置されている。これにより、ティース群の間における推力のばらつきを低減でき、固定子曲線部23Aにおける可動子4の旋回性能を向上できる。
【0027】
また、本実施形態では特に、固定子2は、長手方向に直交する幅方向に複数の薄板鋼25を積層して構成されている。これにより、固定子2の電磁鋼の複雑な立体形状を容易かつ正確に形成できる。
【0028】
また、本実施形態では特に、固定子曲線部23Aは、それぞれの長手方向が直線状となっている複数の固定子分割直線部24Aを当該固定子曲線部23Aの周方向に連結して全体の長手方向が円弧状に構成されている。これにより、固定子直線部22と同様に直線状の薄板鋼25を積層して作成可能な固定子分割直線部24Aを用いて、固定子曲線部23Aを構成できる。つまり、直線状の薄板鋼25を積層する製造手法において固定子直線部22と固定子曲線部23Aを共通化でき、低コスト化を向上できる。
【0029】
また、本実施形態では特に、固定子分割直線部24Aの各薄板鋼25において、長手方向の基準位置(この例の中央位置)から離間するほどティース21の断面形状部のピッチλが広く設定されている。これにより、固定子分割直線部24Aにおいて各ティース21をより放射状に配置できるため、当該固定子曲線部23Aにおける推力のばらつきを低減し可動子4の旋回性能を向上できる。
【0030】
<4.1:第2実施形態の固定子>
図5〜
図8は、第2の実施形態の固定子2Bの構成を表している。
図5は固定子曲線部23B全体を上方から見た平面図を示し、
図6は固定子曲線部23Bを構成する各薄板鋼25Bの側面図を示し、
図7は薄板鋼25Bの作成工程を示し、
図8は薄板鋼25Bを積層して固定子曲線部23Bを作成する手法を示している。まず
図5に示すように、第2実施形態の固定子2Bが備える固定子曲線部23Bは、一定の曲率で円弧状に湾曲した薄板鋼25Bを複数枚積層して、その全体の長手方向が円弧状に構成されている。
【0031】
図6は、本実施形態の固定子曲線部23Bを構成する複数の薄板鋼25Bのうち最も外周側に位置する薄板鋼25Boを上方に示し、幅方向の中央に位置する薄板鋼25Bcを中央に示し、最も内周側に位置する薄板鋼25Biを下方に示している(各薄板鋼25Bの位置は
図5参照)。この
図6において、各位置の薄板鋼25Bはそれぞれ同一幅tのティース断面形状部21を同じ数(図示する例では19個、両端では半体ずつ)だけ有しているが、曲率中心Pからの径方向位置の差だけ円弧上の円周長さ、つまり各薄板鋼25Bの長手方向の全長が異なる。このため、幅方向中央に位置する薄板鋼25Bcでティース21の断面形状のピッチλcは固定子直線部22でのピッチλtと同一であるが、このピッチλcを基準としてそれより外周側に位置する薄板鋼25Bほどピッチλ(離間距離d)が広く、内周側に位置する薄板鋼25Bほどピッチλ(離間距離d)が狭くなる。
【0032】
以上のような薄板鋼25Bは、例えば
図7に示すようにプレス型51を用いた打ち抜きによって作成することができる。図示する例では、幅寸法が十分な薄板鋼帯52を長手方向に送りつつ、ティース21の断面形状1つ分を形成可能なプレス型51を用いて薄板鋼帯52を打ち抜くことで薄板鋼25Bを形成する。このときの薄板鋼帯52の送り速度に対するプレス型51の打ち抜き周期を変えることでティース21のピッチλ(離間距離d)を変更でき、つまり固定子直線部22を構成する各薄板鋼や、上記
図6に示したいずれの径方向位置の薄板鋼25Bも、プレス型51を用いた同一装置で共通して作成できる。
【0033】
また本実施形態の例では、プレス型51が薄板鋼25Bを打ち抜いてティース21を形成する際には当該ティース21の下方部においてかしめ用のエンボス53も押圧形成する。このエンボス53は、積層する薄板鋼25Bどうしの長手方向の位置合わせを容易し、また薄板鋼25Bどうしの固着を向上する。
【0034】
また上記プレス型51での打ち抜きによりティース21の断面形状を形成した薄板鋼25Bは、
図8(a)に示すようにロール状に巻回しつつ、そのロール54の1周分ごとに打ち抜きのピッチλを広げる。そして、所定の周回数で薄板鋼25Bを積層したロール54を、
図8(b)に示すように所定の内周角で周方向に分割することで、全体の長手方向が円弧状となる固定子曲線部23Bを容易に作成できる。
【0035】
以上のように作成した固定子曲線部23Bでは、各ティース21が固定子曲線部23B全体の曲率中心Pに対して放射状に配置される(上記
図5参照)。つまり、当該固定子曲線部23B上に位置するいずれの組み合わせの隣接ティース対においても、曲率中心Pに対するピッチ角θ
λを同一にできる。なおこの場合、固定子曲線部23B上に配置される個々のティース21の1つ(=所定数N)が単独で、上記の隣接したティース群を構成する。
【0036】
<4.2:第2実施形態の効果>
以上説明したように、第2実施形態の固定子2Bを備えたリニアモータ1によれば、固定子曲線部23Bにおいて、幅方向の略中央に位置する薄板鋼25Bcでのティース21の断面形状部のピッチλ(固定子直線部22と同ピッチ)を基準とし、外周側に位置する薄板鋼25Bほどピッチが広く、内周側に位置する薄板鋼25Bほどピッチが狭くなるよう設定されている。これにより、固定子曲線部23Bにおける各ティース21をより放射状に近い配置で設けることができる。
【0037】
また、本実施形態では特に、固定子曲線部23Bは、各薄板鋼25Bを円弧状に湾曲させて積層している。これにより、固定子曲線部23Bの全体を円弧状に形成して各ティース21をより放射状に配置できるため、当該固定子曲線部23Bにおける推力のばらつきを低減し可動子4の旋回性能を向上できる。
【0038】
また、本実施形態では特に、薄板鋼25Bをロール状に巻回しつつロール54の1周分ごとにピッチを広げてティース21の断面形状を形成し、ロール54を所定の内周角で分割して固定子曲線部23Bを作成する。これにより、容易かつ正確な曲率で固定子曲線部23B全体を円弧状に形成できる。
【0039】
また、本実施形態では特に、ティース21の断面形状1つ分を形成可能なプレス型51を用いて薄板鋼帯52を打ち抜いて薄板鋼25Bを形成する。これにより、同じプレス型51を用いた打ち抜きにより固定子直線部22及び固定子曲線部23Bのいずれの薄板鋼25に対してもティース21の断面形状を形成できる。すなわち、同じプレス装置で固定子直線部22と固定子曲線部23Bのいずれも作成できるといった製造手法の共通化と簡略化を向上し、固定子2B全体の低コスト化を図ることができる。なお、上記第1実施形態の固定子曲線部23Aを構成する薄板鋼25Aも、同じプレス型51を用いたプレス装置で作成できる。
【0040】
また、本実施形態では特に、プレス型51は、薄板鋼25Bにかしめ用のエンボス53も形成する。これにより、積層する薄板鋼25Bどうしの間での位置決めと固着を容易かつ確実に行うことができる。
【0041】
<5.1:第3実施形態の固定子>
図9、
図10は、第3の実施形態の固定子2Cの構成を表している。
図9は固定子分割直線部24Cを連結した固定子曲線部23C全体を上方から見た平面図を示し、
図10は固定子分割直線部24Cを固定子直線部22から切り出す際のレイアウトを上方から見た平面図を示している。まず
図9に示すように、第3実施形態の固定子2Cが備える固定子曲線部23Cは、それぞれの長手方向が直線状となっている複数の固定子分割直線部24Cを当該固定子曲線部23Cの周方向に連結して全体の長手方向が円弧状に構成されている。
【0042】
それぞれの固定子分割直線部24Cは、
図10に示すように、あらかじめ作成された固定子直線部22から長手方向に分割するよう切り出して作成される。図示する例の固定子分割直線部24Cは、それぞれ隣接する2本(所定数N=2)のティース21からなるティース群を有し、幅方向の一方の縁部が長さL1の短辺となり、他方の縁部が長さL2の長辺となる台形形状に形成される。そしてこれら複数の固定子分割直線部24Cは、固定子直線部22の長手方向に沿って隣接しつつ短辺の方向と長辺の方向を交互に入れ替えるレイアウトで切り出される。
【0043】
このようにして作成された複数の固定子分割直線部24Cを、短辺どうし内周側に隣接させて連結することで、上記
図9に示したように全体の長手方向が円弧状の固定子曲線部23Cを形成する。この固定子曲線部23Cにおいて、各固定子分割直線部24Cがそれぞれ備えるティース群内では個々のティース21どうしが平行な配置関係にあるが、隣合うティース群どうしの間では内周側ピッチよりも外周側ピッチが広くなるよう配置される。また、ティース群の単位で見ると、各ティース群は当該固定子曲線部23Cの曲率中心Pから放射状に配置されている。なお、各固定子分割直線部24の短辺の長さL1と長辺の長さL2の比を変えることで、連結した固定子曲線部23C全体の曲率(曲率半径R)を変更できる。
【0044】
<5.2:第3実施形態の効果>
以上説明したように、第3実施形態の固定子2Cを備えたリニアモータ1によれば、固定子分割直線部24Cが、2本(所定数N=2)のティース21からなるティース群を有し、幅方向の一方の縁部が短辺となり、他方の縁部が長辺となる台形形状に形成される。また、各前記固定子分割直線部24Cの短辺どうしを内周側に隣接させて連結することで、固定子曲線部23Cが構成される。これにより、固定子曲線部23Cを構成可能な固定子分割直線部24Cを、通常に製造された固定子直線部22から切り出して作成することができ、すなわち固定子直線部22から切り出して固定子曲線部23Cを作成できる。したがって、固定子直線部22と固定子曲線部23Cの製造手法をより共通化でき、低コスト化を向上できる。特に、固定子直線部22の長手方向に沿って隣接しつつ短辺(長辺)の方向を交互に入れ替えるよう複数の固定子分割直線部24Cを切り出すことで、固定子直線部22から生じる端材部分を低減でき、より低コスト化を向上できる。
【0045】
なお特に図示しないが、各ティース群を構成するティース21の本数(=所定数N)を3本以上としてもよく、この場合にはより少ない固定子分割直線部24Cの分割数で固定子曲線部23Cを構成できる。しかし、各ティース群を構成するティース21の本数が少ないほど(最低でも1本)、ティース群どうしをより放射状に近い位置関係で配置することができ、ティース群の間における推力のばらつきを低減して、固定子曲線部23Cにおける可動子4の旋回性能を向上できる。
【0046】
<6.1:第4実施形態>
第4実施形態では、固定子曲線部23と可動子4の間の配置関係に特徴を有する。例えば
図11に示す比較例のように、固定子曲線部23上において、可動子4(実質的には電機子42)がその長手方向(移動方向)の中央位置でのみ、固定子曲線部23と幅方向で中央揃いとなる配置関係、つまり当該可動子4の幅方向の中央位置が固定子曲線部23の幅方向中央位置と一致する配置関係、となる軌道で移動するものとする。なお、可動子4と固定子2はそれぞれの幅方向寸法Ws,Wtが同じとする。
【0047】
この比較例の場合、可動子4の長手方向中央位置においては、固定子曲線部23との幅方向での重複範囲を最大に確保し、またティース21が移動方向と直交するため、固定子直線部22上での走行時と同等の推力を受けることができる。しかし、可動子4の長手方向両端部に近づくに従って、固定子曲線部23との幅方向での重複範囲が減少し、またティース21と移動方向との相対的な傾きθskによるいわゆるスキュー効果が増大するため、それぞれ部分的に生じる推力が大幅に低減する。この比較例のように、可動子4(電機子42)の長手方向に沿った誘起電圧の偏差が大きい場合には、電機子42に給電される3相電力の各相にばらつきが生じ、電源リップルの原因となって制御上好ましくない。
【0048】
これに対して本実施形態では、
図12に示すように、固定子曲線部23上において、可動子4(実質的には電機子42)がその長手方向(移動方向)の両端部で固定子曲線部23と幅方向で中央揃いとなる配置関係、つまり当該可動子4の両端部における幅方向の中央位置が固定子曲線部23における幅方向中央位置と一致する配置関係、となる軌道で移動する。この軌道での移動を実現するためには、例えば固定子曲線部23の幅方向両脇に位置するガイドレール3が、上記
図12の軌道で可動子4を移動させるようその移動経路を規定すればよく、具体的には可動子4の長手方向中央位置における固定子曲線部23の幅方向中央位置との偏差ΔRに対応して当該固定子曲線部23よりもガイドレール3の曲率を小さく設定すればよい(図示省略)。
【0049】
<6.2:第4実施形態の効果>
以上説明したように、第4実施形態のリニアモータ1によれば、可動子4の移動経路を規定するガイドレール3を有している。そしてこのガイドレール3は、固定子曲線部23において、可動子4(実質的には電機子42)の長手方向(移動方向)の両端部における幅方向の中央位置が、固定子曲線部23における幅方向の中央位置に一致する軌道で可動子4が移動するよう移動経路を規定する。これにより、固定子曲線部23上を移動する可動子4の長手方向両端部においては、ティース21との相対的な傾きθskによるスキュー効果で誘起電圧が低減するものの、固定子2との幅方向での重複範囲を最大に確保してそれだけ誘起電圧を維持できる。また一方、可動子4の長手方向中央部においては、ティース21と直交して誘起電圧を維持できるものの、固定子2との幅方向での重複範囲が最小となってそれだけ誘起電圧が低減する。結果的に、可動子4全体の固定子曲線部23に対する誘起電圧は固定子直線部22上の場合と比較して低減するものの、長手方向全体に渡る誘起電圧の低減バランスを均一化できるため、3相電力の各相におけるばらつきと電源リプルの発生を抑制し、制御性能を向上できる。
【0050】
<7.1:第5実施形態の固定子>
図13〜
図15は、第5の実施形態の固定子2Eの構成を表している。
図13は基板部26上に別体で形成された柱状ティース21Eを複数配置した固定子直線部22Eを斜め上方から見た斜視図を示し、
図14は基板部26と柱状ティース21Eがいずれも電磁鋼で構成される場合の固定構造の例を表す側断面図を示し、
図15は柱状ティース21Eだけが電磁鋼で構成される場合の固定構造の例を表す側断面図を示している。まず
図13に示すように、第5実施形態が備える固定子2Eは、長手方向に長い平板形状の基板部26と、この基板部26の幅方向と同じ長さで別体に形成された複数の柱状ティース21Eとを有する。すなわち、各ティースが適宜の断面形状(図示する例では台形形状)にある柱形状で個別に形成されており、それら複数の柱状ティース21Eが基板部26の上方平面上に長手方向に沿った並列配置で固定されている。
【0051】
基本的に全ての柱状ティース21Eは、それぞれ基板部26の長手方向と直交する幅方向に向かう姿勢で、基板部26の幅方向中央位置におけるピッチλが一定となるよう配置すればよい。このような配置ルールに従うことで、
図13に示すような固定子直線部22Eにおいては柱状ティース21Eどうしが一定のピッチλで平行に配置され、また特に図示しないが固定子曲線部23においては各柱状ティース21Eが曲率中心Pから一定ピッチ角θ
λで放射状に配置される。つまり、上記配置ルールに基づいて柱状ティース21Eを基板部26上に配置し固定するといった製造工程のほとんどを、固定子直線部22Eと固定子曲線部23とで共通化して簡略化できるため、固定子2E全体の低コスト化を向上できる。
【0052】
ここで、少なくとも柱状ティース21Eだけでも電磁鋼で構成されていれば、可動子4(電機子42)の移動磁界を受けて推力を発生することができる。各柱状ティース21Eと基板部26の両方が電磁鋼で構成される場合には、例えば
図14に示すようにボルト55を用いて柱状ティース21Eを基板部26に固定する構造が望ましい。
図14(a)に示す構造では、断面が台形形状に形成された各柱状ティース21Eの上辺部を突出させつつ底辺部を押さえ板56で覆い、その押さえ板56をボルト55で基板部26に固定する。また
図14(b)に示す構造では、柱状ティース21Eの上辺部から直接ボルト55を垂直に貫通させて基板部26に固定する。
【0053】
また、各柱状ティース21Eだけが電磁鋼で構成され、基板部26が電磁鋼以外の材料で構成される場合には、例えば
図15に示すような組み接ぎ手での接合により柱状ティース21Eを基板部26に固定する構造が望ましい。
図15(a)に示す構造では、断面が台形形状に形成された柱状ティース21Eの底辺部自体を接ぎ手として、基板部26に形成した溝57に嵌入し固定する。また
図15(b)に示す構造では、柱状ティース21Eの底辺に接ぎ手58を形成して、基板部26の溝59に嵌入し固定する。
【0054】
<7.2:第5実施形態の効果>
以上説明したように、第5実施形態の固定子2Eを備えたリニアモータ1によれば、固定子2Eは、基板部26上に柱形状の柱状ティース21Eを複数配置して構成される。これにより、固定子直線部22E、固定子曲線部23のいずれにおいても共通した手法でティース21Eを容易かつ適切な配置で設けることができ、固定子2E全体の低コスト化を向上できる。
【0055】
なお、以上の説明における「垂直(直交)」とは、厳密な意味での垂直ではない。すなわち、「垂直(直交)」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直(直交)」という意味である。
【0056】
なお、以上の説明における「平行」とは、厳密な意味での平行ではない。すなわち、「平行」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に平行」という意味である。
【0057】
なお、以上の説明における「等しい(同一)」とは、厳密な意味ではない。すなわち、「等しい(同一)」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に等しい(同一である)」という意味である。
【0058】
なお、以上の説明における「直線状」とは、厳密な意味ではない。すなわち、「直線状」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に直線状」という意味である。
【0059】
なお、以上の説明における「円弧状」とは、厳密な意味ではない。すなわち、「円弧状」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に円弧状」という意味である。また、全体的に複雑に曲がった曲線であっても、部分的に見ておよそ同じ曲率半径の円弧状部分の集合であると見なせる。このため、長手方向が複雑な曲線状にある固定子2においては、それぞれ異なる曲率半径で円弧状となっている複数の固定子曲線部23の組み合わせと見なせる。
【0060】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0061】
その他、一々例示はしないが、上記実施形態や各変形例は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。