(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水平姿勢に保持されている基板の上面に付着しているリンス液よりも表面張力の低い液体の有機溶剤を前記基板の上面に供給して、前記基板の上面を覆う前記有機溶剤の液膜を前記基板上に形成し、前記リンス液を前記有機溶剤で置換する有機溶剤置換工程と、
前記有機溶剤の液膜の形成後、前記基板の上面を前記有機溶剤の沸点よりも高い所定の第1の温度に到達させ、これにより、前記有機溶剤の液膜の全域において前記有機溶剤の液膜と前記基板の上面との間に有機溶剤の蒸発気体膜を形成させると共に、前記有機溶剤の蒸発気体膜の上方に、基板の上面の全域を覆う前記有機溶剤の液膜を、分裂させることなく浮上させる基板高温化工程と、
前記基板の上面全域を覆いながら浮上している前記有機溶剤の液膜を、分裂させることなく液塊状態を維持しながら前記基板の上面の上方から排除する有機溶剤排除工程とを含む、基板処理方法。
前記基板処理方法は、前記有機溶剤置換工程に並行して、前記基板の回転を停止させ、またはパドル速度で前記基板を回転させるパドル工程をさらに含む、請求項1に記載の基板処理方法。
前記基板処理方法は、前記パドル工程に先立ち、前記有機溶剤置換工程に並行して、前記基板を、前記パドル工程における前記基板の回転速度よりも速い第1の回転速度で回転させる第1の高速回転工程をさらに含む、請求項2に記載の基板処理方法。
前記基板処理方法は、前記パドル工程の後、前記有機溶剤置換工程に並行して、前記基板を、前記パドル工程における前記基板の回転速度よりも速い回転速度で回転させる薄膜化工程をさらに含む、請求項2または3に記載の基板処理方法。
前記基板処理方法は、前記有機溶剤置換工程に並行して、前記基板の上面が前記有機溶剤の沸点より低い所定の第2の温度になるように前記基板を加熱する基板加熱工程をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の模式的な平面図である。
図2は、基板処理装置1に備えられたチャンバ4の内部の縦断面図である。
図1に示すように、基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、処理液や処理ガスによって基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、各処理ユニット2のチャンバ4に対して基板Wの搬入および搬出を行う基板搬送ロボットCRと、基板処理装置1に備えられた装置の動作やバルブの開閉などを制御する制御装置(制御手段)3とを含む。
【0027】
処理ユニット2は、円形の基板Wの表面(パターン形成面)および裏面に対して、第1薬液および第2薬液を用いた薬液処理(洗浄処理、エッチング処理等)を施すための枚葉型のユニットである。各処理ユニット2は、内部空間を有する箱形のチャンバ4と、チャンバ4内で一枚の基板Wを水平な姿勢で保持しながら、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させる基板保持回転ユニット(基板保持手段)5と、基板Wを下方から加熱する基板対向面6aを有し、基板Wの下面に接触して基板Wを下方から支持するホットプレート(基板保持手段、加熱手段)6と、ホットプレート6を水平姿勢と、傾斜姿勢との間で姿勢変更させるホットプレート姿勢変更ユニット90(
図4参照)と、基板保持回転ユニット5に保持されている基板Wに、第1薬液、第2薬液、リンス液等の処理液を供給する処理液供給ユニット7と、基板保持回転ユニット5またはホットプレート6に保持されている基板Wの上面に、リンス液よりも表面張力の低い液体の有機溶剤の一例である液体のIPAを供給する有機溶剤供給ユニット(有機溶剤供給手段)8と、基板保持回転ユニット5およびホットプレート6を密閉状態で収容可能なカップ9とを含む。
【0028】
図3は、基板保持回転ユニット5およびホットプレート6の平面図である。
図4は、
図3を切断面線IV−IVで切断したときの断面図である。
図2〜
図4に示すように、基板保持回転ユニット5は、基板Wよりもやや大径の外径を有する円環状の支持リング11を有している。支持リング11は、耐薬性を有する樹脂材料を用いて形成されており、基板Wの回転軸線A1と同心の回転中心を有している。支持リング11は、水平平坦状の円環状の平面からなる上面11aを有している。上面11aには、支持リング11に対して不動の複数本(たとえば6本)の固定ピン10、および支持リング11に対して可動であり、固定ピン10より少ない複数本(たとえば3本)の可動ピン12がそれぞれ設けられている。
【0029】
複数本の固定ピン10は、支持リング11の上面11aにおいて、円周方向に沿って等間隔に配置されている。複数本の可動ピン12は、支持リング11の上面11aにおいて、円周方向に沿って配置されている。複数本の可動ピン12は、複数本の固定ピン10のうち、予め定める互いに隣り合う、可動ピン12と同数(たとえば3つ)の固定ピン10に1対1対応で設けられている。各可動ピン12は、対応する固定ピン10に近接する位置に配置されており、すなわち、複数本の可動ピン12は、支持リング11の円周方向に関し、局所的に配置されている。
【0030】
支持リング11には、支持リング11を回転軸線A1回りに回転させるためのリング回転ユニット13が結合されている。リング回転ユニット13は、たとえばモータとそれに付随する伝達機構等によって構成されている。
図2〜
図4に示すように、ホットプレート6は、たとえばセラミックや炭化ケイ素(SiC)を用いて形成されており、円板状をなしている。ホットプレート6は、基板Wよりもやや小径の円形をなす平坦な基板対向面6aを有している。基板対向面6aは、支持リング11の内径よりも小径を有している。すなわち、ホットプレート6と基板保持回転ユニット5の支持リング11とが正面視で重複していない。ホットプレート6の内部には、たとえば抵抗式のヒータ15が埋設されている。ヒータ15への通電によりヒータ15が発熱し、これにより、基板対向面6aを含むホットプレート6全体が加熱される。
【0031】
図3に示すように、ホットプレート6の基板対向面6aには、基板Wに下方から当接支持するための略半球状の微小なエンボス61が、多数個(
図3では、たとえば24個)分散配置されている。エンボス61の配置密度は、基板対向面6aの全域において略均一にされている。具体的には、回転軸線A1を中心とする第1の仮想円62上に、4個のエンボス61が等間隔で配置されている。第1の仮想円62と同心の第2の仮想円63上に、8個のエンボス61が等間隔で配置されている。第1の仮想円62と同心の第3の仮想円64上に、12個のエンボス61が等間隔で配置されている。第2および第3の仮想円63,64の直径は、第1の仮想円62の直径のそれぞれ約2倍および約3倍に設定されている。多数個のエンボス61は、互いに同等の同径を有している。
【0032】
多数個のエンボス61と基板Wの下面との当接により、基板対向面6aの上方に、基板Wが、基板対向面6aと微小間隔(次に述べる
図5の高さH)を隔てて配置される。多数個のエンボス61と基板Wの下面との間に生じる摩擦力により、基板Wがホットプレート6上で支持され、この状態でヒータ15が発熱すると、基板対向面6aも発熱し、この熱が、熱輻射、基板対向面6aと基板Wとの間の空間内の流体熱伝導および多数個のエンボス61を介した伝熱により、基板Wに与えられる。これにより、多数個のエンボス61により支持されている基板Wが加熱される。
【0033】
図5は、ホットプレート6の基板対向面6aの拡大縦断面図である。
各エンボス61は、基板対向面6aに分散して形成された多数個の小溝65に嵌合した球体66の、対応する小溝65から上方にはみ出す部分により形成されている。球体66は、接着剤67により小溝65内に固定されている。
球体66は、たとえばセラミックや炭化ケイ素(SiC)等を用いて形成されている。多数個のエンボス61は、たとえば均一高さに設定されている。各エンボス61の高さHは、多数個のエンボス61によって支持されている基板Wが基板対向面6aに吸着するのを防止でき、かつ基板対向面6a上の汚染物質が当該基板Wの下面に転写しない十分な高さ(たとえば約0.1mm程度)に設定されている。
【0034】
したがって、基板対向面6aと間隔を隔てられた状態で基板Wが支持されるので、基板Wが基板対向面6aに吸着して基板対向面6aに貼り付くことを抑制または防止できる。また、基板対向面6aに汚染物質がある場合であっても、その汚染物質が基板W(の下面)に転写されることを抑制または防止できる。
また、基板対向面6aに分散配置されている多数個のエンボス61によって基板Wが支持されているので、基板対向面6aから基板Wへの伝熱による熱の伝わり易さを基板Wの面内で均一に保つことができるまた、基板Wにおいて反りが発生するのを抑制または防止できる。
【0035】
なお、多数個のエンボス61は互いに均一高さでなくてもよい。たとえば、基板対向面6aの中央部のエンボス61の高さが周縁部のエンボス61の高さよりも相対的に低く、かつ基板対向面6aの周縁部のエンボス61の高さは、中央部のエンボス61の高さよりも相対的に高く設けられていてもよい。
図2および
図4に示すように、ホットプレート6は、複数個(たとえば3つ)の伸縮ユニット24、およびたとえば円板状またはリング状(
図2では円板状)をなす支持部材17を介して、鉛直をなすプレート保持軸14により下方から支持されている。支持部材17は、水平平坦面からなる支持面17aを有し、プレート保持軸14の上端に固定的に取り付けられている。支持部材17の支持面17aの周縁部には、複数個(たとえば3つ)の伸縮ユニット24が円周方向に等間隔に配置されている。3つの伸縮ユニット24の配置位置は、たとえば6つの固定ピン10のうち1つとばしで並置された3つの固定ピン10と、ホットプレート6の円周方向に関して揃っている。
【0036】
伸縮ユニット24は、長手方向に伸縮可能な伸縮ロッドを備えたシリンダである。伸縮ユニット24の長さは、伸縮ロッドを伸縮させることにより最大縮小状態と最大拡大状態との間で連続的に調整することができる。複数の伸縮ユニット24は、伸縮ロッドの長手方向を鉛直方向に向けた姿勢で配置されている。各伸縮ユニット24は、ホットプレート6の周縁部を下方から支持している。複数の伸縮ユニット24は、それぞれ同一の諸元を有している。そのため、複数の伸縮ユニット24は、最大縮小状態における長さが同一である。各伸縮ユニット24には、各伸縮ロッドを長手方向に伸縮させる駆動流体を供給する伸縮駆動ユニット25が結合されている。この実施形態では、伸縮ユニット24および伸縮駆動ユニット25がそれぞれ別部材により設けられているが、電磁アクチュエータ等の単体の部材で伸縮ユニット24を構成してもよい。この実施形態では、支持部材17と、伸縮ユニット24と、伸縮駆動ユニット25とによって、ホットプレート姿勢変更ユニット90が構成されている。
【0037】
図4に示す通常状態では、全ての伸縮ユニット24が最大縮小状態に保たれており、そのため、全ての伸縮ユニット24が同等の長さを有している。これにより、ホットプレート6が水平姿勢に保たれている。この状態では、ホットプレート6の基板対向面6aが水平面をなしている。なお、後述するように基板対向面6aには基板Wが一時的に載置されることがあるが、基板対向面6aに基板Wを一時的に載置しても前記のエンボス61の摩擦力の働きにより、基板Wは移動せず、静止状態にある。
【0038】
図4に示すようなホットプレート6の水平姿勢から、後述する
図16のように、3つの伸縮ユニット24のうち所定の1つの伸縮ユニット24の長さをそのままとしながら、他の2つの伸縮ユニット24の長さを、それまでよりも長くすることにより、ホットプレート6が傾斜姿勢になる。これにより、簡単な構成により、ホットプレート6を、水平姿勢と傾斜姿勢との間で姿勢変更できる。
【0039】
プレート保持軸14は、鉛直方向に沿って延びている。プレート保持軸14は中空軸となっていて、プレート保持軸14の内部には、ヒータ15への給電線(図示しない)が挿通されていると共に、下配管18が挿通されている。
下配管18は、支持部材17の中央部をその厚み方向に貫通する第1の貫通穴55、およびホットプレート6の中央部をその厚み方向に貫通する第2の貫通穴19をそれぞれ介して、ホットプレート6の基板対向面6aの中央部で開口する下吐出口20に連通している。下配管18は、少なくとも下吐出口20に近い部分がフレキシブルパイプによって構成されている。下配管18には、第1薬液下バルブ21、第2薬液下バルブ22およびリンス液下バルブ23を介して、第1薬液の一例であるフッ酸、第2薬液の一例であるAPM(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素水混合液)およびリンス液が、選択的に供給されるようになっている。リンス液は、たとえば、純水(脱イオン水:Deionzied Water)である。リンス液は、純水に限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。下配管18に供給された第1および第2薬液ならびにリンス液は、第2の貫通穴19の内部を通って下吐出口20から上方に向けて吐出される。
【0040】
具体的には、第2薬液下バルブ22およびリンス液下バルブ23が閉じられた状態で第1薬液下バルブ21が開かれると、下吐出口20から第1薬液が上方に向けて吐出される。基板保持回転ユニット5に基板Wが保持されている場合には、基板Wの下面中央部に第1薬液が供給される。
同様に、第1薬液下バルブ21およびリンス液下バルブ23が閉じられた状態で第2薬液下バルブ22が開かれると、下吐出口20から第2薬液が上方に向けて吐出される。基板保持回転ユニット5に基板Wが保持されている場合には、基板Wの下面中央部に第2薬液が供給される。
【0041】
また、第1薬液下バルブ21および第2薬液下バルブ22が閉じられた状態でリンス液下バルブ23が開かれると、下吐出口20からリンス液が上方に向けて吐出される。基板保持回転ユニット5に基板Wが保持されている場合には、基板Wの下面中央部にリンス液が供給される。
図2〜
図4で示すように下吐出口20を1つのみ設ける場合には、各処理液間で吐出口を共有するが、下吐出口20が複数の吐出口を有してもよく、この場合には、処理液の種類毎に吐出口が設けられてもよい。
【0042】
プレート保持軸14には、プレート保持軸14を昇降させるためのプレート昇降ユニット16(
図2参照)が結合されている。プレート昇降ユニット16は、たとえばボールねじやモータを含む。プレート昇降ユニット16の駆動によるプレート保持軸14の昇降により、プレート保持軸14、複数個の伸縮ユニット24、支持部材17およびホットプレート6が一体的に昇降させられる。プレート昇降ユニット16の駆動により、ホットプレート6は、基板保持回転ユニット5に保持される基板Wの下面よりも、下方に大きく離間する下位置(
図13A等に示す位置。少なくとも、ホットプレート6の基板対向面6aが基板保持回転ユニット5に保持される基板Wの下面よりも下方となる高さ位置。ホットプレート6が常時ONとされる場合には、基板Wの下面がホットプレート6によって大きく加熱されないような高さ位置。)と、基板対向面6aが基板保持回転ユニット5に保持される基板Wの下面よりもやや上方に位置する上位置(
図13G等に示す位置)との間で昇降させられる。前述のように、ホットプレート6と基板保持回転ユニット5の支持リング11とが鉛直方向に重複していないので、ホットプレート6の昇降時に、ホットプレート6および基板保持回転ユニット5は互いに干渉しない。
【0043】
図2に示すように、処理液供給ユニット7は、第1薬液を吐出する第1薬液ノズル26と、第2薬液を吐出する第2薬液ノズル27と、リンス液を吐出するリンス液ノズル28とを含む。第1薬液ノズル26、第2薬液ノズル27およびリンス液ノズル28は、その吐出口を下方に向けた状態で、ほぼ水平に延びるアーム29の先端に取り付けられている。アーム29は所定の回転軸線まわりに揺動可能に設けられている。第1薬液ノズル26、第2薬液ノズル27およびリンス液ノズル28は、アーム29の揺動方向に関し揃っている。アーム29には、アーム29を所定角度範囲内で揺動させるためのアーム揺動ユニット30が結合されている。アーム29の揺動により、プレート保持軸14は、基板保持回転ユニット5またはホットプレート6に保持されている基板Wの中央部上と、カップ9外に設定されたホームポジションとの間を移動させられる。
【0044】
図2に示すように、第1薬液ノズル26は、たとえば、連続流の状態で第1薬液の一例であるフッ酸を下方に向けて吐出するストレートノズルである。第1薬液ノズル26には、第1薬液供給源からの第1薬液の供給通路となる第1薬液配管31が接続されている。第1薬液配管31には、第1薬液の供給を開閉するための第1薬液バルブ32が介装されている。第1薬液バルブ32が開かれると、第1薬液配管31から第1薬液ノズル26に第1薬液が供給され、また、第1薬液バルブ32が閉じられると、第1薬液配管31から第1薬液ノズル26への第1薬液の供給が停止される。
【0045】
図2に示すように、第2薬液ノズル27は、たとえば、連続流の状態で第2薬液の一例であるAPMを下方に向けて吐出するストレートノズルである。第2薬液ノズル27には、第2薬液供給源からの第2薬液の供給通路となる第2薬液配管33が接続されている。第2薬液配管33には、第2薬液の供給を開閉するための第2薬液バルブ34が介装されている。第2薬液バルブ34が開かれると、第2薬液配管33から第2薬液ノズル27に第2薬液が供給され、また、第2薬液バルブ34が閉じられると、第2薬液配管33から第2薬液ノズル27への第2薬液の供給が停止される。
【0046】
図2に示すように、リンス液ノズル28は、たとえば、連続流の状態でリンス液を下方に向けて吐出するストレートノズルである。リンス液ノズル28には、リンス液供給源からのリンス液の供給通路となるリンス液配管35が接続されている。リンス液配管35には、リンス液の供給を開閉するためのリンス液バルブ36が介装されている。リンス液バルブ36が開かれると、リンス液配管35からリンス液ノズル28にリンス液が供給され、また、リンス液バルブ36が閉じられると、リンス液配管35からリンス液ノズル28へのリンス液の供給が停止される。
【0047】
なお、
図2では、第1および第2薬液ノズル26,27ならびにリンス液ノズル28を1つのアーム29に配置する場合を示しているが、複数のアーム29にノズル26,27,28を1つずつ配置する構成を採用してもよい。
図2に示すように、カップ9は、基板保持回転ユニット5およびホットプレート6を収容する下カップ37と、下カップ37の開口38を閉塞するための蓋部材39とを備えている。蓋部材39が下カップ37の開口38を閉塞することで、内部に密閉空間を有する密閉カップが形成される。
【0048】
下カップ37は、略円筒容器状をなし、上面に円形の開口38を有している。下カップ37は略円板状の底壁部40と、底壁部40から上方に立ち上がる周壁部41とを一体的に備えている。周壁部41は、回転軸線A1を中心とする円筒状に形成されている。周壁部41は円環状の上端面41aを有している。底壁部40の上面には、廃液路(図示しない)の一端が接続されている。廃液路の他端は、機外の図示しない廃液設備に接続されている。
【0049】
周壁部41の周囲には、基板保持回転ユニット5またはホットプレート6に保持された基板Wから飛び散る処理液を捕獲するための捕獲カップ(図示しない)が配設され、当該捕獲カップは機外の図示しない廃液設備に接続されている。プレート保持軸14と底壁部40の中心部との間は、円環状のシール部材43によってシールされている。
蓋部材39は、下カップ37の上方において、ほぼ水平な姿勢で、かつその中心が基板Wの回転軸線A1上に位置するように配置されている。蓋部材39には、蓋昇降ユニット54が結合されている。蓋昇降ユニット54は、たとえばボールねじやモータを含む。蓋昇降ユニット54の駆動により、蓋部材39は、下カップ37の開口38を閉塞する蓋閉位置と、下カップ37よりも上方に退避して下カップ37の開口9を開放する蓋開位置との間で昇降させられる。蓋部材39の下面には、その中央部39aと周縁部39cとを除く領域に、蓋部材39と同心の円筒状の上環状溝39bが形成されている。
【0050】
蓋部材39の下面の中央部39aは、円形の水平平坦面を有している。蓋部材39の下面の中央部39aは、基板保持回転ユニット5に保持された基板Wの上面の中央部、またはホットプレート6に保持された基板Wの上面の中央部に対向している。
蓋部材39の下面の周縁部39cには、シール環53が全周に亘って設けられている。シール環53は、たとえば樹脂弾性材料を用いて形成されている。蓋部材39が蓋閉位置にある状態では、蓋部材39の下面の周縁部39cに配置されたシール環53が、その円周方向全域で下カップ37の上端面41aに当接し、蓋部材39と下カップ37との間がシールされる。
【0051】
図2に示すように、蓋部材39の中央部39aには、リンス液上配管44、有機溶剤上配管45および窒素ガス上配管46が、鉛直方向に延びて隣接して挿通している。
リンス液上配管44の下端は、蓋部材39の下面の中央部39aで開口し、リンス液吐出口47を形成している。リンス液上配管44の上端には、リンス液供給源が接続されている。リンス液上配管44には、リンス液がリンス液供給源から供給される。リンス液上配管44には、リンス液の供給を開閉するためのリンス液上バルブ48が介装されている。
【0052】
有機溶剤上配管45の下端は、蓋部材39の下面の中央部39aで開口し、有機溶剤吐出口49を形成している。有機溶剤上配管45の上端には、有機溶剤供給源が接続されている。有機溶剤上配管45には、液体のIPAがIPA供給源から供給される。有機溶剤上配管45には、液体のIPAの供給を開閉するための有機溶剤バルブ50が介装されている。有機溶剤上配管45および有機溶剤バルブ50によって、有機溶剤供給ユニット8が構成されている。
【0053】
窒素ガス上配管46の下端は、蓋部材39の下面の中央部39aで開口し、不活性ガスの一例としての窒素ガス(N
2)を吐出するための窒素ガス吐出口51を形成している。窒素ガス上配管46の上端には窒素ガス供給源が接続されている。窒素ガス供給源からは、窒素ガス上配管46を窒素ガス供給通路として窒素ガス吐出口51に窒素ガスが供給される。窒素ガス上配管46には、窒素ガスの供給を開閉するための窒素ガスバルブ52が介装されている。
【0054】
図6は、固定ピン10の構成を模式的に示す断面図である。
図3を用いて前記したように、複数本の固定ピン10は、支持リング11の上面11aに円周方向に沿って等間隔に配置されている。
図6に図解されている通り、各固定ピン10は、支持リング11に結合された第1の下軸部71と、第1の下軸部71の上端に一体的に形成された第1の上軸部72とを含む。第1の下軸部71および第1の上軸部72は、それぞれ円柱形状に形成されている。第1の上軸部72は、第1の下軸部71の中心軸線から偏心して設けられている。第1の下軸部71の第1の上軸部72に連結される部分には、下方向に向かうに従って次第に大径となるテーパ面73が形成されている。
【0055】
図7は、可動ピン12、および可動ピン12の周辺の構成を模式的に示す断面図である。各可動ピン12は、回転軸線A2まわりに回転可能に支持リング11に結合された鉛直方向に延びる第2の下軸部74と、中心軸線が回転軸線A2から偏心した状態で第2の下軸部74に固定された第2の上軸部75とを含む。第2の上軸部75は、基板Wの周端に当接可能な円筒面75aを有している。第2の下軸部74の回転により、第2の上軸部75の円筒面75aは、基板Wの回転軸線A1(
図2参照)から離れた開放位置と、回転軸線A1に近づいた保持位置との間で変位する。各可動ピン12は、チャック開閉ユニット76を含む。チャック開閉ユニット76は、第2の上軸部75の位置を開放位置と保持位置との間で変位させることにより、基板Wの挟持を開閉する。
【0056】
図6に示すように、複数の固定ピン10によって基板Wが下方から支持されている状態では、各固定ピン10のテーパ面73に基板Wの周端が当接している。この状態において、複数の可動ピン12の第2の上軸部75の位置が開放位置から、
図7に示すような保持位置に変位される。各第2の上軸部75が開放位置から保持位置に変位されると、円筒面75aが基板Wの周端に当接すると共に、当接している基板Wの周端を基板Wの内方に向けて押し込む。これにより、当該当接している基板Wの周端と回転軸線A1を挟んだ反対側の基板Wの周端が、当該可動ピン12と回転軸線A1を挟んだ反対側に位置する固定ピン10の第1の上軸部72に押し当てられる。このように、複数の可動ピン12の第2の上軸部75が開放位置から保持位置に変位させられることにより、複数の可動ピン12が挟持状態になり、これにより、複数の固定ピン10および複数の可動ピン12によって基板Wが水平姿勢に挟持される。
【0057】
なお、円筒面75aで基板Wの周端を押し付ける構成でなく、回転軸線A1側に向きかつ水平方向に開くV溝が、円筒面75aに形成されており、当該V溝を構成する上下のテーパ面が基板Wの周端に当接することにより基板Wを挟持する構成を採用してもよい。
図8〜
図10は、チャック開閉ユニット76の動きを示す模式的な図である。
図8〜
図10では、
図7を切断面線VIII−VIIIで切断した状態を示す。
図7〜
図10を参照して、チャック開閉ユニット76の構成について説明する。
【0058】
チャック開閉ユニット76は、駆動用永久磁石77と、ピン側永久磁石78と、操作リング79と、操作レバー80と、レバー操作ユニット81とを含む。
駆動用永久磁石77は、支持リング11の上面11aの可動ピン12の第2の下軸部74の外側において、たとえば、磁極方向を基板保持回転ユニット5の回転半径方向に沿う方向に向けた状態で、上面11aに固定的に配置されている。具体的には、駆動用永久磁石77は、この実施形態では、基板保持回転ユニット5の回転半径方向の内方にN極を有し、回転半径方向の外方にS極を有するように配置されている。
【0059】
ピン側永久磁石78は、厚肉の円環状体または円筒体状をなしている。ピン側永久磁石78は、その中心が可動ピン12の回転軸線A2に一致した状態で、第2の下軸部74の途中部に外嵌固定されている。ピン側永久磁石78には、N極に着磁されたN極性部82と、S極に着磁されたS極性部83とが、円周方向に関して異なる位置に設けられている。この実施形態では、S極性部83は、N極性部82に対し、回転軸線A2を中心として平面視で反時計回りにたとえば約90°ずれている。
【0060】
操作リング79は、その中心が可動ピン12の回転軸線A2に一致した状態で、ピン側永久磁石78の上方で第2の下軸部74に外嵌固定されている。操作リング79は、円柱状部84と、円柱状部84の側壁における180°ずつ異なる2つの位置から、回転半径方向の外方に向けて張り出す先尖状の一対の張り出し片85とを含む。一対の張り出し片85の一方が、操作レバーと当接して操作される被操作片86として機能する。操作リング79の被操作片86は、円周方向に関して、ピン側永久磁石78のN極性部82と揃っている。操作リング79は、ピン側永久磁石78と同伴して回転可能に設けられている。
【0061】
ピン側永久磁石78は、外周面が駆動用永久磁石77のN極性に対向するように配置されている。ピン側永久磁石78が第2の下軸部74に固定されているので、ピン側永久磁石78の外周面のうち駆動用永久磁石77のN極性に対向する部分が、第2の下軸部74の回転によって変化する。
操作レバー80は、たとえば棒状の先端部80aを有し、全体として線形状に設けられている。操作レバー80は、水平方向に沿う所定の方向に沿ってスライド移動可能に設けられている。操作レバー80の移動に伴って、操作レバー80の先端部80aが回転軸線A2回りに回動する。操作レバー80は、ホットプレート6の下方空間を、ホットプレート6の半径方向の外方に向けて、ホットプレート6の下面に近接しながら延びている。ホットプレート6の下面には凹凸が形成されているのであるが、操作レバー80は、ホットプレート6の下面に当らないように、ホットプレート6の下面形状に応じたクランク状をなしている。
【0062】
操作レバー80には、シリンダ等によって構成されるレバー操作ユニット81が結合されている。レバー操作ユニット81の駆動により、操作レバー80は、先端部80aが被操作片86の側方に退避する退避位置(
図8に示す位置)と、後述する解除位置(
図10に示す位置)との間で、水平方向にスライド移動させられる。
図8には、可動ピン12が挟持状態にある場合を示し、
図9には、可動ピン12が挟持状態から開状態に遷移中である場合を示す。
図10には、可動ピン12が開状態にある場合を示す。
図8に示す可動ピン12の挟持状態では、第2の上軸部75(
図7参照)が保持位置(
図7および
図8に示す位置)に配置される。また、
図10に示す可動ピン12の開状態では、第2の上軸部75が開放位置(
図10に示す位置)に配置される。
【0063】
図8〜
図10に示すように、可動ピン12の挟持状態では、駆動用永久磁石77のN極性と、ピン側永久磁石78のS極性部83とが対向し、可動ピン12の開状態では、駆動用永久磁石77のN極性と、ピン側永久磁石78のN極性部82とが対向する。第2の上軸部75(
図7参照)の開放位置(
図10に示す位置)は、第2の上軸部75の保持位置(
図7および
図8に示す位置)から、回転軸線A2を中心として平面視で反時計回りに約90°回転した位置である。
【0064】
図8に示す可動ピン12の挟持状態では、前述のように、駆動用永久磁石77のN極性と、ピン側永久磁石78のS極性部83とが対向している。この場合、ピン側永久磁石78において駆動用永久磁石77に対向する部分の極性が、駆動用永久磁石77の径方向内側の磁極と異なる極性である。そのため、駆動用永久磁石77は、ピン側永久磁石78に対して、径方向に沿う吸引磁力を作用させる。したがって、可動ピン12の挟持状態では、ピン側永久磁石78は、N極性部82が駆動用永久磁石77に対向する姿勢に保持され、これにより、第2の上軸部75が保持位置(
図7および
図8に示す位置)のまま保持される。可動ピン12の挟持状態では、レバー操作ユニット81より、操作レバー80は退避位置(
図8に示す位置)に退避させられている。
【0065】
可動ピン12を
図8に示す挟持状態から
図10に示す開状態に遷移させる際には、
図9に示すように、レバー操作ユニット81により操作レバー80が移動されて、操作レバー80の先端部80aが被操作片86に当接させられる。被操作片86への当接後も、操作ユニット81による操作レバー80の移動は続行させられ、その先端部80が、被操作片86との当接状態を保ちながら、回転軸線A2を中心として平面視で反時計回りに回動する。これにより、駆動用永久磁石77とピン側永久磁石78との間の吸引磁力に抗って、被操作片86が回転軸線A2回りに回動し、被操作片86の回動に同伴して、第2の下軸部74および第2の上軸部75が回転軸線A2回りに回転する。操作レバー80が解除位置(
図10に示す位置)まで移動されたとき、第2の上軸部75(
図7参照)が開放位置(
図10に示す位置)へと変位し、これにより、可動ピン12が開状態になる。
【0066】
図10に示すように、可動ピン12の開状態では、前述のように、駆動用永久磁石77のN極性と、ピン側永久磁石78のN極性部82とが対向している。また、操作ユニット81により、操作レバー80が解除位置に保持されている。この場合、ピン側永久磁石78において駆動用永久磁石77に対向する部分の極性が、駆動用永久磁石77の径方向内側の磁極と同じ極性である。この状態において、駆動用永久磁石77は、ピン側永久磁石78に対して、円周方向向きの反発磁力を作用させる。しかしながら、解除位置に保たれている操作レバー80が被操作片86と係合しているので、第2の上軸部75や被操作片86が回動しない。そのため、第2の上軸部75(
図7参照)が開放位置(
図10に示す位置)のまま保持される。
【0067】
可動ピン12を
図10に示す開状態から
図8に示す挟持状態に遷移させる際には、レバー操作ユニット81により操作レバー80が移動されて、操作レバー80が退避位置(
図8に示す位置)に戻される。前述のように、第2の上軸部75(
図7参照)が開放位置(
図10に示す位置)にある状態では、駆動用永久磁石77とピン側永久磁石78との間に反発磁力が作用しており、より具体的には、ピン側永久磁石78には、平面視で時計回りに向かう力が作用している。したがって、操作レバー80が退避位置(
図8に示す位置)に戻されることにより、操作レバー80の先端部80aと被操作片86との係合が解除されると、ピン側永久磁石78は、平面視で時計回りに回転する。これにより、第2の上軸部75(
図7参照)が開放位置(
図10に示す位置)から保持位置(
図7および
図8に示す位置)へと変位し、これにより、可動ピン12が挟持状態になる。
【0068】
なお、駆動用永久磁石77が、回転半径方向の内方にS極を有し、回転半径方向の外方にN極を有するように配置されてもよい。
また、前述の説明では、第2の上軸部75(
図7参照)が開放位置(
図10に示す位置)にある状態で、駆動用永久磁石77とピン側永久磁石78との間に反発磁力が作用し、第2の上軸部75が保持位置(
図7および
図8に示す位置)にある状態で、駆動用永久磁石77とピン側永久磁石78との間に吸引磁力が作用する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、第2の上軸部75が開放位置にある状態で、駆動用永久磁石77とピン側永久磁石78との間に吸引磁力が作用し、第2の上軸部75が保持位置にある状態で、駆動用永久磁石77とピン側永久磁石78との間に反発磁力が作用するように構成されていてもよい。
【0069】
図1に示す制御装置3は、たとえばマイクロコンピュータなどによって構成されている。制御装置3は、予め定められたプログラムに従って、リング回転ユニット13、伸縮駆動ユニット25、プレート昇降ユニット16、アーム揺動ユニット30、蓋昇降ユニット54、チャック開閉ユニット76、レバー操作ユニット81等の動作を制御する。また、制御装置3は、ヒータ15に供給される電力を調整する。さらに、制御装置3は、第1薬液下バルブ21、第2薬液下バルブ22、リンス液下バルブ23、第1薬液バルブ32、第2薬液バルブ34、リンス液バルブ36、リンス液上バルブ48、有機溶剤バルブ50、窒素ガスバルブ52等の開閉を制御する。
【0070】
図11は、処理ユニット2の処理対象の基板Wの表面を拡大して示す断面図である。処理対象の基板Wは、たとえばシリコンウエハであり、そのパターン形成面である表面(上面100)に微細パターン101が形成されている。微細パターン101は、
図11に示すように、凸形状(柱状)を有する構造体102が行列状に配置されたものであってもよい。この場合、構造体102の線幅W1はたとえば10nm〜45nm程度に、微細パターン101の隙間W2はたとえば10nm〜数μm程度に、それぞれ設けられている。
【0071】
また、微細パターン101は、微細なトレンチにより形成されたライン状のパターンが、繰り返し並ぶものであってもよい。
また、微細パターン101は、薄膜に、複数の微細孔(ボイド(void)またはポア(pore))を設けることにより形成されていてもよい。
微細パターン101は、たとえば絶縁膜を含む。また、微細パターン101は、導体膜を含んでいてもよい。より具体的には、微細パターン101は、複数の膜を積層した積層膜により形成されており、さらには、絶縁膜と導体膜とを含んでいてもよい。微細パターン101は、単層膜で構成されるパターンであってもよい。絶縁膜は、シリコン酸化膜(SiO
2膜)やシリコン窒化膜(SiN膜)であってもよい。また、導体膜は、低抵抗化のための不純物を導入したアモルファスシリコン膜であってもよいし、金属膜(たとえば金属配線膜)であってもよい。
【0072】
また、微細パターン101の膜厚Tは、たとえば、50nm〜5μm程度である。また、微細パターン101は、たとえば、アスペクト比(線幅W1に対する膜厚Tの比)が、たとえば、5〜500程度であってもよい(典型的には、5〜50程度である)。
図12は、処理ユニット2で実行される薬液処理の第1処理例について説明するための工程図である。
図13A−13Iは、第1処理例を説明するための模式図である。
図14A−14Dは、第1処理例における基板Wの上面の状態を説明するための模式的な断面図である。
図15および
図16は、基板保持回転ユニット5およびホットプレート6を水平方向から見たときの縦断面図である。
図15には、基板高温化工程(S10)時を示し、
図16には、有機溶剤排出工程(S11)時を示す。
図17は、有機溶剤置換工程(S9)、基板高温化工程(S10)および有機溶剤排出工程(S11)における、IPAの吐出流量の変化、および基板Wの回転速度の変化を示す図である。
【0073】
以下、
図1および
図2を参照する。
図11〜
図17については適宜参照する。なお、以下の説明における「基板Wの表面(上面)」は、基板W自体の表面(上面)および薄膜パターン101の表面(上面)を含む。
処理ユニット2によって基板Wが処理されるときには、チャンバ4内に未処理の基板Wを搬入する基板搬入工程(
図12のステップS1)が行われる。基板搬入工程(S1)に先立って、制御装置3は、ヒータ15をオン(通電状態)にしておき、ホットプレート6を、基板保持回転ユニット5による基板Wの保持位置から下方に退避した下位置に配置し、かつ全てのノズルを基板保持回転ユニット5の上方から退避させる。また、全ての可動ピン12を開放状態にさせる。
【0074】
基板搬入工程(S1)では、制御装置3は、基板Wを保持している基板搬送ロボットCR(
図1参照)のハンドをチャンバ4内に進入させ、基板搬送ロボットCRに、パターン形成面(表面)を上方に向けた状態で、基板保持回転ユニット5に基板Wを引き渡させる。基板保持回転ユニット5に受けられた基板Wは、複数本の固定ピン10によって下方から支持され、その後、制御装置3は、複数本の可動ピン12をいずれも挟持状態にさせる。これにより、
図13Aに示すように、複数本(たとえば、6本)の固定ピン10および複数本(たとえば、3本)の可動ピン12によって基板Wが水平姿勢に挟持される(
図13Aでは、固定ピン10のみを図示)。制御装置3は、基板保持回転ユニット5に基板Wを引き渡した後、基板搬送ロボットCRのハンドをチャンバ4内から退避させる。
【0075】
複数本の固定ピン10および複数本の可動ピン12によって基板Wが挟持されると、制御装置3は、リング回転ユニット13を制御して、基板Wの回転を開始させる。基板Wは予め定める液処理回転速度v3(
図17参照。たとえば100〜1500rpm程度)まで上昇され、その液処理回転速度v3に維持される。
なお、基板搬入工程(S1)からヒータ15がオン状態とされ、それゆえホットプレート6が発熱状態(この時の基板対向面の表面温度がたとえば約60〜250℃)とされているのであるが、ホットプレート6は下位置にあるため、ホットプレート6からの熱が基板Wに十分に届かない。
【0076】
次いで、第1薬液を基板Wに供給する第1薬液工程(
図12のステップS2)が行われる。
具体的には、
図13Bに示すように、制御装置3は、アーム揺動ユニット30を制御することにより、アーム29をホームポジションから揺動させ、第1薬液ノズル26を退避位置から基板W上に移動させる。これにより、第1薬液ノズル26が処理位置(基板Wの上方の、基板Wの回転軸線A1上の処理位置)に配置される。第1薬液ノズル26が処理位置に配置された後、制御装置3は、第2薬液バルブ34およびリンス液バルブ36を閉じつつ第1薬液バルブ32を開く。これにより、第1薬液ノズル26の吐出口から第1薬液が吐出される。また、制御装置3は、第2薬液下バルブ22およびリンス液下バルブ23を閉じつつ第1薬液下バルブ21を開く。これにより、下吐出口20から第1薬液が上方に向けて吐出される。
【0077】
基板Wの上面の中央部に供給された第1薬液は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面を基板Wの周縁部に向けて流れる。一方、基板Wの下面の中央部に供給された第1薬液は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの下面を伝って基板Wの周縁部に向けて流れる。これにより、基板Wの上面全域および下面全域に第1薬液が供給され、基板Wの上下面の全域に第1薬液による処理が施される。基板Wの上下面に供給された第1薬液は、基板Wの周縁部から基板Wの側方に向けて飛散する。
【0078】
基板Wの上下面の周縁部から飛散する第1薬液は、前述の捕獲カップの内壁に受け止められ、廃液路(図示しない)を介して、機外の廃液設備(図示しない)に送られ、そこで処理される。廃液設備ではなく、回収設備に送られ、そこで再利用されるようになっていてもよい。
第1薬液の吐出開始から、予め定める時間が経過すると、制御装置3は、第1薬液バルブ32および第1薬液下バルブ25を閉じて、第1薬液ノズル26および下吐出口20からの第1薬液の吐出を停止する。
【0079】
次いで、基板Wから第1薬液を除去するための第1のリンス工程(
図12のステップS3)が行われる。
具体的には、
図13Cに示すように、制御装置3は、アーム揺動ユニット30を制御することによりアーム29を揺動させ、リンス液ノズル28を処理位置に配置させる。リンス液ノズル28が処理位置に配置された後、制御装置3は、第1薬液バルブ32および第2薬液バルブ34を閉じつつリンス液バルブ36を開く。これにより、リンス液ノズル28の吐出口からリンス液が吐出される。また、制御装置3は、第1薬液下バルブ21および第2薬液下バルブ22を閉じつつリンス液下バルブ23を開く。これにより、下吐出口20からリンス液が上方に向けて吐出される。
【0080】
基板Wの上面の中央部に供給されたリンス液は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面を基板Wの周縁部に向けて流れる。一方、基板Wの下面の中央部に供給されたリンス液は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの下面を伝って基板Wの周縁部に向けて流れる。これにより、基板Wの上面全域および下面全域にリンス液が供給され、基板Wの上下面に付着している第1薬液が洗い流される。基板Wの上下面に供給されたリンス液は、基板Wの周縁部から基板Wの側方に向けて飛散する。
【0081】
基板Wの上下面の周縁部から飛散するリンス液は、下カップ37の周壁部41の内壁に受け止められ、この内壁を伝って下カップ37の底部に溜められる。下カップ37の底部に溜められた第リンス液は、廃液路(図示しない)を介して、機外の廃液設備(図示しない)に送られ、そこで処理される。
リンス液の吐出開始から、予め定める時間が経過すると、制御装置3は、リンス液バルブ36およびリンス液下バルブ23を閉じて、リンス液ノズル28および下吐出口20からのリンス液の吐出を停止する。
【0082】
次いで、第2薬液を基板Wに供給する第2薬液工程(
図12のステップS4)が行われる。
具体的には、
図13Dに示すように、制御装置3は、アーム揺動ユニット30を制御することによりアーム29を揺動させ、第2薬液ノズル27を処理位置に配置させる。第2薬液ノズル27が処理位置に配置された後、制御装置3は、第1薬液バルブ32およびリンス液バルブ36を閉じつつ第2薬液バルブ34を開く。これにより、第2薬液ノズル27の吐出口から第2薬液が吐出される。また、制御装置3は、第1薬液下バルブ21およびリンス液下バルブ23を閉じつつ第2薬液下バルブ22を開く。これにより、下吐出口20から第2薬液が上方に向けて吐出される。
【0083】
基板Wの上面の中央部に供給された第2薬液は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面を基板Wの周縁部に向けて流れる。一方、基板Wの下面の中央部に供給された第2薬液は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの下面を伝って基板Wの周縁部に向けて流れる。これにより、基板Wの上面全域および下面全域に第2薬液が供給され、基板Wの上下面の全域に第2薬液による処理が施される。基板Wの上下面に供給された第2薬液は、基板Wの周縁部から基板Wの側方に向けて飛散する。
【0084】
基板Wの上下面の周縁部から飛散する第2薬液は、下カップ37の周壁部41の内壁に受け止められ、この内壁を伝って下カップ37の底部に溜められる。下カップ37の底部に溜められた第2薬液は、廃液路(図示しない)を介して、機外の廃液設備(図示しない)に送られ、そこで処理される。廃液設備ではなく、回収設備に送られ、そこで再利用されるようになっていてもよい。
【0085】
第2薬液の吐出開始から、予め定める時間が経過すると、制御装置3は、第2薬液バルブ34および第2薬液下バルブ22を閉じて、第2薬液ノズル27および下吐出口20からの第2薬液の吐出を停止する。
次いで、基板Wから第2薬液を除去するための第2のリンス工程(
図12のステップS5。
図13Cを再度参照)が行われる。
【0086】
具体的には、制御装置3は、アーム揺動ユニット30を制御することによりアーム29を揺動させ、リンス液ノズル28を処理位置に配置させる。リンス液ノズル28が処理位置に配置された後、制御装置3は、第1薬液バルブ32および第2薬液バルブ34を閉じつつリンス液バルブ36を開く。これにより、リンス液ノズル28の吐出口からリンス液が吐出される。また、制御装置3は、第1薬液下バルブ21および第2薬液下バルブ22を閉じつつリンス液下バルブ23を開く。これにより、下吐出口20からリンス液が上方に向けて吐出される。
【0087】
基板Wの上面の中央部に供給されたリンス液は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面を基板Wの周縁部に向けて流れる。一方、基板Wの下面の中央部に供給されたリンス液は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの下面を伝って基板Wの周縁部に向けて流れる。これにより、基板Wの上面全域および下面全域にリンス液が供給され、基板Wの上下面に付着している第2薬液が洗い流される。基板Wの上下面に供給されたリンス液は、基板Wの周縁部から基板Wの側方に向けて飛散する。
【0088】
リンス液の吐出開始から、予め定める時間が経過すると、制御装置3は、リンス液バルブ36およびリンス液下バルブ23を閉じて、リンス液ノズル28および下吐出口20からのリンス液の吐出を停止する。次いで、再び、第1薬液を基板Wに供給する第1薬液工程(
図12のステップS6。
図13Bを再度参照)が行われる。
具体的には、制御装置3は、アーム揺動ユニット30を制御することによりアーム29を揺動させ、第1薬液ノズル26を処理位置に配置させる。第1薬液ノズル26が処理位置に配置された後、制御装置3は、第2薬液バルブ34およびリンス液バルブ36を閉じつつ第1薬液バルブ32を開く。これにより、第1薬液ノズル26の吐出口から第1薬液が吐出される。また、制御装置3は、第2薬液下バルブ22およびリンス液下バルブ23を閉じつつ第1薬液下バルブ21を開く。これにより、下吐出口20から第1薬液が上方に向けて吐出される。
【0089】
基板Wの上面の中央部に供給された第1薬液は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面を基板Wの周縁部に向けて流れる。一方、基板Wの下面の中央部に供給された第1薬液は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの下面を伝って基板Wの周縁部に向けて流れる。これにより、基板Wの上面全域および下面全域に第1薬液が供給され、基板Wの上下面の全域に第1薬液による処理が施される。基板Wの上下面に供給された第1薬液は、基板Wの周縁部から基板Wの側方に向けて飛散する。
【0090】
第1薬液の吐出開始から、予め定める時間が経過すると、制御装置3は、第1薬液バルブ32および第1薬液下バルブ25を閉じて、第1薬液ノズル26および下吐出口20からの第1薬液の吐出を停止する。次いで、基板Wから第1薬液を除去するための第3のリンス工程(
図12のステップS7。
図13Cを再度参照)が行われる。
具体的には、制御装置3は、アーム揺動ユニット30を制御することによりアーム29を揺動させ、リンス液ノズル28を処理位置に配置させる。リンス液ノズル28が処理位置に配置された後、制御装置3は、第1薬液バルブ32および第2薬液バルブ34を閉じつつリンス液バルブ36を開く。これにより、リンス液ノズル28の吐出口からリンス液が吐出される。また、制御装置3は、第1薬液下バルブ21および第2薬液下バルブ22を閉じつつリンス液下バルブ23を開く。これにより、下吐出口20からリンス液が上方に向けて吐出される。
【0091】
基板Wの上面の中央部に供給されたリンス液は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面を基板Wの周縁部に向けて流れる。一方、基板Wの下面の中央部に供給されたリンス液は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの下面を伝って基板Wの周縁部に向けて流れる。これにより、基板Wの上面全域および下面全域にリンス液が供給され、基板Wの上下面に付着している第1薬液が洗い流される。基板Wの上下面に供給されたリンス液は、基板Wの周縁部から基板Wの側方に向けて飛散する。
【0092】
リンス液の吐出開始から、予め定める時間が経過すると、制御装置3は、リンス液バルブ36およびリンス液下バルブ23を閉じて、リンス液ノズル28および下吐出口20からのリンス液の吐出を停止すると共に、アーム揺動ユニット30を制御して、アーム29を、そのホームポジションに戻す。これにより、第1薬液ノズル26、第2薬液ノズル26およびリンス液ノズル28が、退避位置に戻される。
【0093】
次いで、制御装置3は、蓋昇降ユニット54を制御して、蓋部材39を蓋閉位置まで下降させる。蓋閉位置に下降した蓋部材39により、下カップ37の開口9が閉塞される。この状態で、ロック部材(図示しない)により蓋部材39と下カップ37とが結合されると、蓋部材39の下面の周縁部39cに配置されたシール環53が、その円周方向全域に亘って下カップ37の上端面41aに当接し、下カップ37と蓋部材39との間がシールされる。これにより、下カップ37および蓋部材39の内部空間が密閉される。この状態で、リンス液吐出口47、有機溶剤吐出口49および窒素ガス吐出口51が、それぞれ基板Wの上面に対向して配置されている。
【0094】
次いで、最終リンス工程(
図12のステップS8)が基板Wに行われる。
具体的には、
図13Eに示すように、制御装置3は、リンス液上バルブ48を開いて、リンス液上配管44のリンス液吐出口47からリンス液を吐出する。リンス液吐出口47から吐出されたリンス液は、基板Wの上面の中央部に着液する。
基板Wの上面の中央部に供給されたリンス液は、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面を基板Wの周縁部に向けて流れる。これにより、基板Wの上面全域にリンス液が供給され、基板Wの上面にリンス処理が施される。最終リンス工程(S8)において、
図14Aに示すように、基板Wの上面100に形成された微細パターン101の隙間の底部(当該空間における基板W自体の上面100に極めて近い位置)までリンス液が行き渡る。
【0095】
また、基板Wの周縁部から飛散するリンス液は、下カップ37の周壁部41の内壁に受け止められ、この内壁を伝って下カップ37の底部に溜められる。下カップ37の底部に溜められた第リンス液は、廃液路(図示しない)を介して、機外の廃液設備(図示しない)に送られ、そこで処理される。
リンス液の吐出開始から、予め定める時間が経過すると、制御装置3は、リンス液上バルブ48を閉じて、リンス液吐出口47からのリンス液の吐出を停止する。
【0096】
次いで、基板Wの上面に液体のIPAが供給して、基板Wの上面のリンス液をIPAで置換する有機溶剤置換工程(
図12のステップS9)が行われる。
最終リンス工程(S8)の終了後、制御装置3は、基板Wの回転を、液処理回転速度v3(
図17参照)から高速回転速度v4(
図17参照。たとえば800rpm)に加速させる。
【0097】
基板Wの回転速度が高速回転速度v4に達すると、制御装置3は、
図13Fに示すように、有機溶剤バルブ50を開き、有機溶剤上配管45の有機溶剤吐出口49から、液体のIPAを連続流状に吐出する。有機溶剤吐出口49から吐出されるIPAは、常温、すなわちIPAの沸点(82.4℃)未満の液温を有しており、液体である。有機溶剤吐出口49から吐出された液体のIPAは、基板Wの上面の中央部に着液する。IPAの吐出開始により、有機溶剤置換工程(S9)が開始される。
【0098】
基板Wの上面の中央部に供給された液体のIPAは、基板Wの回転による遠心力を受けて、基板Wの上面を基板Wの周縁部に向けて流れる。そのため、基板Wの上面の中央部に供給された液体のIPAを周縁部に向けて拡げることができ、これにより、基板Wの上面の全域に液体のIPAを行き渡らせることができる。このとき、ホットプレート6は下位置にあり、基板Wにはホットプレート6からの熱が十分に伝わっていない。そのため、基板Wの上面の温度はたとえば常温(たとえば25℃)であり、IPAは、常温を維持したまま、基板Wの上面を流れる。
【0099】
制御装置3は、有機溶剤置換工程(S9)に並行して、高速回転速度v4で回転させる高速回転工程(ステップS91。
図17参照)と、高速回転工程(S91)に引き続いて、パドル速度v1(零に近い低速。たとえば50rpm未満の範囲で、たとえば約20rpm)で基板Wを回転させるパドル工程(ステップS92。
図17参照)とを実行する。
具体的には、制御装置3は、有機溶剤置換工程(S9)の開始後所定の高速回転時間t1(たとえば約15秒間)の間、基板Wを、高速回転速度v4で回転させる(高速回転工程(S91))。高速回転時間t1の経過後、制御装置3は、基板Wの回転速度を、高速回転速度v4からパドル速度v1に減速させる。基板Wの減速に伴って、基板W上の液体のIPAに作用する遠心力が小さくなり、液体のIPAが基板Wの周縁部から排出されず基板Wの上面に滞留するようになる。その結果、基板Wの上面に、パドル状態のIPAの液膜111が保持される(パドル工程(S92))。基板Wの上面の全域に液体のIPAが行き渡っているので、IPAの液膜111は、基板Wの上面の全域を覆う。IPAの液膜111は、所定の膜厚(たとえば1mm程度)を有している。
【0100】
基板Wの上面に供給されるIPAは液体であるため、
図14Bに示すように、微細パターン101の隙間に存在するリンス液を、良好に置換できる。IPAの液膜111が、基板Wの上面の全域を覆うので、基板Wの上面の全域において、リンス液を液体のIPAに良好に置換できる。パドル時間t2(たとえば約15秒間)の経過後、制御装置3は、リング回転ユニット13を制御して、基板Wの回転を停止させる。
【0101】
なお、パドル工程(S92)において基板Wを低速のパドル速度v1で回転させるものとして説明したが、パドル工程(S92)において基板Wの回転を停止(回転速度が零)させてもよい。この場合、パドル工程(S92)では、基板W上の液体のIPAに作用する遠心力が零になり、液体のIPAが基板Wの周縁部から排出されず基板Wの上面に滞留して、基板Wの上面に、パドル状態のIPAの液膜111が保持される。
【0102】
その後、基板高温化工程(
図12のステップS10)が実行される。
具体的には、制御装置3は、プレート昇降ユニット16を制御して、ホットプレート6を、下位置から上位置まで上昇させる。ホットプレート6が回転リング11と同じ高さまで上昇させられると、基板Wの下面にホットプレート6の基板対向面6a上の多数個のエンボス61が当接するようになる。その後、ホットプレート6がさらに上昇すると、複数の固定ピン10によって下から支持されていた基板Wがこれら複数の固定ピン10から離脱して、ホットプレート6に引き渡される。ホットプレート6に引き渡された基板Wは、多数個のエンボス61によって下方から支持される。ホットプレート6を上位置に配置した状態を、
図13Gおよび
図15に示す。
【0103】
ヒータ15は常時オン状態とされており、そのため、ホットプレート6(基板対向面6a)が発熱状態とされている。ホットプレート6上に基板Wが載置された状態では、基板対向面6aからの熱が、熱輻射、基板対向面6aと基板Wとの間の空間内の流体熱伝導および多数個のエンボス61を介した伝熱により、基板Wの下面に与えられ、これにより、基板Wの下面が加熱される。基板Wに与えられる単位面積当たりの熱量は、基板Wの全域においてほぼ均一となっている。
【0104】
基板高温化工程(S10)では、ホットプレート6による基板Wへの加熱により、基板Wの上面が、予め定める液膜浮上温度(第1の温度)TE1まで昇温させられる。液膜浮上温度TE1は、IPAの沸点(82.4℃)よりも40〜120℃高い範囲の所定の温度に設定されている。また、次に述べるように、基板高温化工程(S10)ではIPAの液膜111が浮上するのであるが、液膜浮上温度TE1は、浮上しているIPAの液膜111が沸騰しないような温度である。
【0105】
基板Wの上面の温度が液膜浮上温度TE1に達した後、基板Wの上面の温度(微細パターン101(
図14C等参照)の上面、より詳しくは、各構造体102の上端面102Aの温度)は、液膜浮上温度TE1に保持される。基板Wの上面の全域において、液膜浮上温度TE1に保持される。このとき、ヒータ15の単位時間当たりの発熱量は、ホットプレート6からの加熱により、ホットプレート6に載置されている基板Wの上面が液膜浮上温度TE1になるように設定されている。
【0106】
基板W上面の温度が液膜浮上温度TE1に到達してからしばらくすると、基板Wの上面のIPAの液膜111の一部が蒸発して気相化し微細パターン101の隙間を満たすと共に基板Wの上面(各構造体102の上端面102A)の上方空間にIPAの蒸発気体膜112を形成する。これにより、基板Wの上面(各構造体102の上端面102A)からIPAの液膜111が浮上する(
図14C参照)。また、微細パターン101の隙間が気相のIPAによって満たされるようになる。
【0107】
たとえば、微細パターン101の隙間が液相のIPAで満たされている場合、この状態から基板Wを乾燥させると、隣接する構造体102同士を引き付ける力が加わり、そもため、微細パターン101にパターン倒壊が生じるおそれがある。これに対し、
図14Cの状態では、微細パターン101の隙間は気相のIPAで満たされている。そのため、隣り合う構造体102の間には、極めて小さな表面張力しか生じない。その結果、表面張力に起因する微細パターン101の倒壊を抑制または防止できる。
【0108】
そして、
図14Cの状態では、基板Wの上面(各構造体102の上端面102A)からIPAの液膜111が浮上しているため、基板Wの上面とIPAの液膜111との間に生じる摩擦力の大きさは略零である。
また、基板高温化工程(S10)の実行期間(ホットプレート6で基板Wを保持し始めて以降の期間)は、ホットプレート6上の基板Wの上面全域でIPAの液膜111を浮上させることができ、かつ微細パターン101の隙間の液相のIPAが気相化するのに、十分な長さに設定されている。第1処理例では、基板高温化工程(S10)の実行期間は、たとえば、1〜2分間である。
【0109】
基板Wの上面100の微細パターン101のアスペクト比が高い場合、液相のIPAと微細パターン101内の構造体102との接触面積が大きくなり、隣り合う構造体102間の空間内の液相のIPAを蒸発させるには、より大きな熱量が必要になる。この場合、構造体102間の空間内の液相のIPAを蒸発させるために、処理対象の基板Wの微細パターン101のアスペクト比の大きさに応じて、液膜浮上温度TE1や基板高温化時間を調節することが望ましい。
【0110】
ところで、基板Wの上方に浮上しているIPAの液膜111に、亀裂や割れ113(以下、「亀裂等113」という)が生じることがある。亀裂等113が生じる結果、その部分にIPAの液滴と基板Wとの液固界面が生じるから、乾燥時に表面張力に起因してパターン倒壊が生じるおそれがある。また、亀裂等113が生じた部分には、乾燥後にウォータマーク等の欠陥が生じるおそれもある。そのため、基板高温化工程(S10)中において、浮上しているIPAの液膜111に亀裂等113が発生するのを抑制または防止する必要がある。
【0111】
浮上しているIPAの液膜111に亀裂等113が生じる要因として、次の2つの要因を挙げることができる。
1つ目の要因は、基板Wの長時間の加熱による多量のIPA蒸発気体の発生、および/またはIPAの液膜111の沸騰である。多量のIPA蒸発気体が発生すると、および/またはIPAの液膜111が沸騰すると、IPAの蒸発気体膜112がその上方のIPAの液膜111を突き破って当該IPAの液膜111の上方に噴き出し、その結果、IPAの液膜111に亀裂等113を生じさせるおそれがある。
【0112】
この1つ目の要因に関し、処理例1では、基板高温化工程(S10)における液膜浮上温度TE1、および基板高温化工程(S10)の実行期間を、それぞれ、亀裂等113が生じないような範囲に設定することで対応している。併せて、基板高温化工程(S10)中も、液体のIPAの供給を続行することにより、基板高温化工程(S10)の全期間を通して、浮上しているIPAの液膜111を、亀裂等が生じない程度の厚みに維持している。
【0113】
亀裂等113が生じる2つ目の要因は、基板Wの回転に伴う遠心力を受けることにより発生する、IPAの液膜111の分裂である。2つ目の要因に関して、処理例1では、基板高温化工程(S10)中において、基板Wの回転を停止させている。そのため、IPAの液膜に遠心力に起因する分裂が生じることを防止でき、これにより、亀裂等113の発生を防止できる。
【0114】
基板高温化工程(S10)に次いで、蒸発気体膜112の上方にあるIPAの液膜111を液塊状態のまま排除する有機溶剤排除工程(
図12のステップS11)が実行される。
具体的には、ホットプレート6に基板Wが引き渡されてから予め定める時間が経過すると、制御装置3は、
図13Gおよび
図16に示すように、制御装置3は、伸縮ユニット24を制御してホットプレート6を水平姿勢から傾斜姿勢に変更する。
【0115】
図16を参照しながら詳述する。3つの伸縮ユニット24のうち所定の1つの伸縮ユニット224の長さをそのままとしながら、他の2つの伸縮ユニット225(
図6では1つのみ図示)の長さを、それまでよりも長くする。このときの2つの伸縮ユニット225の伸び量は互いに等しい。これにより、ホットプレート6を傾斜姿勢に姿勢変更できる。ホットプレート6の傾斜姿勢では、基板対向面6aが水平面に対して傾斜している。このときの傾斜角度は、たとえば約1°である。すなわち、ホットプレート6の傾斜姿勢では、基板対向面6aが水平面に対してたとえば約1°傾斜し、これにより、ホットプレート6によって支持されている基板Wの上面も、水平面に対してたとえば約1°傾斜している。このとき、ホットプレート6の円周方向に関し、2つの伸縮ユニット225の配置位置のちょうど中間位置が最も高くなり、伸縮ユニット224の配置位置が最も低くなっている。
【0116】
また、基板Wが傾斜姿勢をなす状態で、
図16に示す、最も長さの短い伸縮ユニット224とホットプレート6の円周方向に関して揃っている(最も長さの短い伸縮ユニット224に最も近い)固定ピン10(固定ピン210)の第1の上軸部72やテーパ面73(
図6参照)が、傾斜している基板Wの周縁部の最も低い部分と当接し、これにより、基板対向面6aに沿う方向に関する基板Wの移動を阻止している。
【0117】
多数個のエンボス61と基板Wの下面との間に生じる摩擦力により、基板Wがホットプレート6上で支持されている。基板Wおよびホットプレート6が水平姿勢をなす状態では、前記の摩擦力の働きにより基板Wは移動せず、静止状態にある。一方、基板Wが傾斜状態では、基板Wに自重が作用する。自重に伴って生じる基板対向面6aに沿う方向に関する力が、前記の摩擦力を上回ると、基板Wが、基板対向面6aに沿う方向に移動するおそれがある。しかしながら、基板Wおよびホットプレート6が傾斜姿勢をなす状態で、固定ピン210(ホットプレート6の円周方向に関して伸縮ユニット224と揃っている固定ピン10)が、傾斜している基板Wの周縁部の最も低い部分と当接し、これにより、ホットプレート6上に沿う方向に関する基板Wの移動が阻止されて、ホットプレート6上からの基板Wの滑落が防止される。ゆえに、ホットプレート6上からの基板Wの滑落を確実に防止しながら、基板Wおよびホットプレート6の双方を傾斜姿勢に保持できる。
【0118】
また、基板Wを支持するための固定ピン210により、ホットプレート6上からの基板Wの滑落の防止が達成されているので、滑落防止部材を固定ピン210とは別の部材で設ける場合と比較して、部品点数を低減できると共にコストダウンを図ることができる。
基板高温化工程(S10)の終了時点において、前述のように、基板Wの上面とIPAの液膜111との間に生じる摩擦力の大きさは略零である。そのため、IPAの液膜111は基板Wの上面に沿って移動し易い。有機溶剤排除工程(S11)では、基板Wの上面が水平面に対して傾斜するので、IPAの液膜111は自重を受けて、傾斜している基板Wの周縁部の最も低い部分に向けて、基板Wの上面に沿って移動する。IPAの液膜111の移動は、液塊状態を維持しながら(すなわち、多数の小滴に分裂することなく)行われ、これにより、IPAの液膜111が基板Wの上方から排除される。
【0119】
基板Wの上方からIPAの液膜111が全て排除された後、制御装置3は、伸縮ユニット24を制御してホットプレート6を傾斜姿勢から水平姿勢に戻す。また、制御装置3は、プレート昇降ユニット16を制御して、ホットプレート6を、上位置から下位置まで下降させる。ホットプレート6が上位置から下位置まで下降する途中で、基板Wの下面周縁部が固定ピン10のテーパー面73と当接するようになる。その後、ホットプレート6がさらに下降することにより、ホットプレート6から基板Wが離脱して、基板保持回転ユニット5の複数本の固定ピン10によって下方から支持される。可動ピン12は開状態にあり、そのため、基板Wは、固定ピン10によって下から支持されるのみで、固定ピン10や可動ピン12等に挟持されない。
【0120】
また、制御装置3は、ロック部材(図示しない)を駆動して、蓋部材39と下カップ37との結合が解除する。そして、制御装置3は、
図13Iに示すように、蓋昇降ユニット54を制御して、蓋部材39を開位置まで上昇させる。
ホットプレート6が下位置まで下降させられた後は、ホットプレート6と基板保持回転ユニット5に保持されている基板Wとの間の間隔が、ホットプレート6が上位置にあるときよりも大きくなる、ホットプレート6からの熱(熱輻射、基板対向面6aと基板Wとの間の空間内の流体熱伝導および多数個のエンボス61を介した伝熱)が基板Wに十分に届かなくなる。これにより、ホットプレート6による基板Wの加熱が終了し、基板Wは、ほぼ常温になるまで降温する。
【0121】
これにより、1枚の基板Wに対する薬液処理が終了し、基板搬送ロボットCR(
図1参照)によって、処理済みの基板Wがチャンバ4から搬出される(
図12のステップS12)。
以上により、基板Wの上面に液体のIPAを供給して、基板Wの上面を覆うIPAの液膜111を基板W上に形成することにより、微細パターン101の隙間に存在するリンス液が液体のIPAで置換される。IPAの液膜111が基板Wの上面の全域を覆っているので、基板Wの上面の全域において、微細パターン101の隙間に存在するリンス液を良好に置換できる。そして、IPAの液膜111の形成後に、基板Wの上面の温度を液膜浮上温度TE1に到達させる。これにより、基板Wの上面全域においてIPAの液膜111と基板Wの上面との間にIPAの蒸発気体膜112が形成されると共に、当該IPAの蒸発気体膜112の上方にIPAの液膜111が浮上する。この状態では、基板Wの上面とIPAの液膜111との間に生じる摩擦力の大きさは略零であり、そのため、IPAの液膜111は、基板Wの上面に沿って移動し易い。
【0122】
有機溶剤排除工程(S11)において、基板Wとホットプレート6との相対姿勢を一定に維持しながら、基板Wおよびホットプレート6を傾斜姿勢に姿勢変更させて、基板Wの上面を水平面に対して傾斜させる。これにより、浮上しているIPAの液膜111は自重を受けて、傾斜している基板Wの周縁部の最も低い部分に向けて、基板Wの上面に沿って移動し、基板Wの周縁部から排出される。IPAの液膜111の移動は、液塊状態を維持しながら(すなわち、多数の小滴に分裂することなく)行われ、これにより、IPAの液膜111を、基板Wの上方からスムーズかつ完全に排除できる。
【0123】
そのため、IPAの液膜111の排除後の基板Wの上面には、IPAが小滴状に残留しない。すなわち、基板Wの上面に微細パターン101が形成される場合であっても、微細パターン101の間隙に液相のIPAが残留しない。したがって、微細パターン101が上面に形成された基板Wを処理する場合であっても、微細パターン101の倒壊を抑制または防止しつつ、基板Wの上面を良好に乾燥させることができる。
【0124】
また、有機溶剤置換工程(S9)に並行してパドル速度v1で基板Wが回転させられる。このような基板Wの減速に伴って、基板W上の液体のIPAに作用する遠心力が零または小さくなり、液体のIPAが基板Wの周縁部から排出されず基板Wの上面に滞留するようになる。その結果、基板Wの上面に、パドル状態のIPAの液膜111が保持される。基板Wの上面に保持されるIPAの液膜111に含まれるIPAによって、基板Wの上面のリンス液が置換されるので、これにより、基板Wの上面においてリンス液をより一層良好に有機溶剤で置換できる。
【0125】
また、パドル工程(S92)に先立って、第1の高速回転工程(S91)が実行される。第1の高速回転工程(S91)では、基板Wが第1の回転速度で回転させられ、これにより、基板W上の液体のIPAが、基板Wの回転による遠心力を受けて基板Wの周縁部に向けて拡がる。そのため、基板Wの上面の全域に液体のIPAを行き渡らせることができる。したがって、第1の高速回転工程(S91)に次いで実行されるパドル工程(S92)では、基板Wの上面に、基板Wの上面の全域を覆うパドル状態のIPAの液膜111を保持することができ、これにより、基板Wの上面の全域において、基板Wの上面のリンス液を、液体のIPAによって良好に置換することができる。
【0126】
また、基板Wが回転停止している状態で基板高温化工程(S8)が実行される。仮に、基板高温化工程(S8)中に基板Wが回転していると、基板Wの周縁部の回転速度が速くなって当該周縁部が冷却される結果、基板Wの上面の周縁部の温度が、液膜浮上温度TE1まで到達しないおそれがある。この場合、基板Wの周縁部において、IPAの液膜111が良好に浮上しないおそれがある。
【0127】
これに対し、処理例1では、基板Wが回転停止している状態で基板高温化工程(S10)が実行されるので、基板Wの上面の周縁部を、液膜浮上温度TE1まで昇温させることができる。これにより、基板Wの上面の全域でIPAの液膜111を浮上させることができる。
また、ホットプレート6は、基板Wを下方から加熱しながら、当該基板Wを下方から接触支持する。このホットプレート6を水平姿勢から傾斜姿勢に姿勢変更させることにより、ホットプレート6によって基板Wを良好に保持しながら、当該基板Wの上面を水平面に対して傾斜させることができる。これにより、ホットプレート6によって基板Wを加熱しながら、当該基板Wの上面を水平面に対して傾斜させることができる。
【0128】
また、ホットプレート6の周縁部が、複数の伸縮ユニット24によって下方から支持されている。複数の伸縮ユニット24の長さを互いに等しくすることにより、ホットプレート6が水平姿勢に保たれる。また、複数の伸縮ユニット24のうち少なくとも1つの伸縮ユニット24の長さを、それ以外の伸縮ユニット24と異ならせることにより、ホットプレート6が傾斜姿勢に保たれる。これにより、簡単な構成で、ホットプレート6を水平姿勢と傾斜姿勢との間で姿勢変更させることができる。
【0129】
図18は、本発明に係る第2処理例の最終リンス工程(S8)を説明するための模式図である。
基板処理装置1において実行される第2処理例が、前述の第1処理例と相違する点は、最終リンス工程(S8)および有機溶剤置換工程(S9)において、ホットプレート6により基板Wの上面を温めている点である。一連の工程の流れは、
図11に示す第1処理例の場合と同等である。
【0130】
この場合、最終リンス工程(S8)に先立って、または最終リンス工程(S8)中において、制御装置3は、プレート昇降ユニット16を制御して、ホットプレート6を、下位置(
図13A等に示す位置)から中間位置(
図18に示す位置。少なくともホットプレート6の基板対向面6aが基板保持回転ユニット5に保持される基板Wの下面よりも下方となる高さ位置。)まで上昇させる。そのため、最終リンス工程(S8)および有機溶剤置換工程(S9)に亘って、ホットプレート6を中間位置に配置されている。
【0131】
ホットプレート6が中間位置に位置する状態において、ヒータ15が発熱状態であると、基板対向面6aからの熱が、熱輻射により、基板保持回転ユニット5に保持されている基板Wに与えられる。この状態では、ホットプレート6と基板Wとが間隔を隔てて配置されているため、このとき基板Wに与えられる熱量は、ホットプレート6上に基板Wが載置されている場合よりも小さい。
【0132】
第2処理例の最終リンス工程(S8)では、ホットプレート6による基板Wの加熱により、基板Wの上面が、予め定める事前加熱温度(第2の温度)TE2まで昇温させられる。事前加熱温度TE2は、IPAの沸点(82.4℃)よりも低く常温よりも高い所定の温度(たとえば約40℃〜約80℃)に設定されている。
基板Wの上面の温度が事前加熱温度TE2に達した後、基板Wの上面の温度(微細パターン101(
図14C等参照)の上面、より詳しくは、各構造体102の上端面102Aの温度)は、事前加熱温度TE2に保持される。このとき、基板Wの上面の全域において、事前加熱温度TE2に保持される。すなわち、基板Wの上面が事前加熱温度TE2になるように、ホットプレート6の中間位置の高さが設定されている。
【0133】
これにより、第2処理例の最終リンス工程(S8)および有機溶剤置換工程(S9)では、基板Wの上面が事前加熱温度TE2に温められている。そのため、基板Wの上面に接触している液体のIPAの拡散係数が上昇し、これにより、IPAの置換効率を高めることができる。その結果、有機溶剤置換工程(S9)の実行期間を短縮することが可能である。
【0134】
また、基板Wの上面が温められている状態で基板高温化工程(S10)を開始するので、基板Wの上面が液膜浮上温度TE1まで昇温するのに要する時間を短縮でき、その結果、基板高温化工程(S10)の実行期間を短縮することが可能である。
そして、有機溶剤置換工程(S9)の実行期間が終了すると、制御装置3は、プレート昇降ユニット16を制御して、ホットプレート6を、中間位置(
図18に示す位置)から上位置(
図13G等に示す位置)まで上昇させる。これにより、基板保持回転ユニット5から基板Wが離脱して、ホットプレート6に基板Wが引き渡され、次いで、基板高温化工程(S10)が実行される。
【0135】
なお、第2処理例では、ホットプレート6による基板Wの加熱を最終リンス工程(S8)から開始しているが、有機溶剤置換工程(S9)から基板Wの加熱を開始するようにしてもよい。
図19は、本発明に係る第3処理例における、IPAの吐出流量の変化、および基板Wの回転速度の変化を示す図である。
【0136】
基板処理装置1において実行される第3処理例が、前述の第1処理例と相違する点は、有機溶剤置換工程(S9)において、パドル工程(S92)の終了後、基板高温化工程(S10)の開始に先立って、薄膜化工程(ステップS93。
図19参照)が実行される点である。薄膜化工程(S93)では、有機溶剤置換工程(S9)に並行して、基板Wが、パドル工程(S92)における基板Wの回転速度V1よりも速く、液処理速度V3よりも遅い処理速度V2(薄膜化回転速度)で回転させられる。また、薄膜化工程(S93)の開始と同時にIPAの吐出は停止させられる。
【0137】
具体的には、パドル工程(S92)の終了後、制御装置3は、基板Wの回転を、パドル速度v1から薄膜化回転速度v2(パドル速度v1以上、液処理速度v3未満。たとえば50rpm以上100rpm未満)に加速させ、所定の薄膜化時間t3(たとえば約5秒間)の間、基板Wを、薄膜化回転速度v2で回転させる。また、低速回転工程の回転と同時にIPAの吐出を停止する。IPAの供給が停止した状態での基板Wの低速回転により、基板W上のIPAの液膜111に基板Wの回転による遠心力が作用してIPAの液膜111が押し広げられ、IPAの液膜111の厚みが薄膜化(たとえば0.5mm)される。
【0138】
パドル工程(S92)では、基板W上の液体のIPAに作用する遠心力が零または小さいため、IPAの液膜111の厚みが厚い(たとえば1mm)。この厚みのまま基板高温化工程(S10)に移行すると、基板Wの上方に浮上するIPAの液膜111の厚みが厚くなり、液膜排除工程(S11)においてIPAの液膜111を排除するために長期間を要するおそれがある。
【0139】
これに対し、処理例3では、基板高温化工程(S10)に先立って低速回転工程(S9)が実行されるので、基板高温化工程(S10)において、基板Wの上方に浮上するIPAの液膜111の厚みが薄く(たとえば0.5mm)なり、これにより、液膜排除工程(S11)の実行期間(IPAの液膜111を排除するために要する期間)を短縮できる。
また、第1〜第3処理例において、下カップ37および蓋部材39の内部空間が密閉された状態で最終リンス工程(S8)が実行されるものとして説明したが、下カップ37および蓋部材39の内部空間が開放されている(蓋部材39が開位置にある)状態で最終リンス工程(S8)が実行されてもよい。リンス液上配管44のリンス液吐出口47からのリンス液を基板Wの上面に供給してもよいし、リンス液ノズル28を基板Wの上面に対向して配置させ、リンス液ノズル28からのリンス液を基板Wの上面に供給してもよい。この場合、最終リンス工程(S8)の後、下カップ37および蓋部材39の内部空間が密閉状態にされる。
【0140】
また、第1〜第3処理例において、第1薬液工程(S2,S6)を複数回(2回)繰り返しているが、第1薬液工程(S2,S6)は1回のみであってもよい。
また、第1〜第3処理例の第1および第2薬液工程(S2,S4,S6)ならびに第1〜第3のリンス工程(S3,S5,S7)において、基板Wの上下両面処理を例に挙げて説明したが、これらの工程(S2〜S7)において、基板Wの上面(パターン形成面)のみを処理するものであってもよい。
【0141】
また、第1〜第3処理例において、第3のリンス工程(S7)を省略してもよい。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、本発明は他の形態で実施することできる。
たとえば、
図20に示すように、多数個のエンボス61が、基板対向面6aの全域ではなく、基板対向面6aの周縁部にのみ配置されていてもよい。
図20では、基板対向面6aの周縁部において、回転軸線A1を中心とする第4の仮想円69上に、多数個のエンボス161が等間隔で配置されている。
【0142】
また、球体66の一部により構成されるエンボス61に代えて、
図21に示すように、ホットプレート6と一体に設けられたエンボス161が採用されていてもよい。
また、前述の実施形態では、各伸縮ユニット24の配置位置は、たとえば固定ピン10と、ホットプレート6の円周方向に関して揃っているとして説明したが、ホットプレート6の円周方向に関してずれていてもよい。この場合、基板Wが傾斜姿勢をなす状態で、最も長さの短い伸縮ユニット224に最も近い固定ピン10(固定ピン210)が、傾斜している基板Wの周縁部の低位側の部分と当接することにより、ホットプレート6上からの基板Wの滑落が防止されていてもよい。
【0143】
また、前述の処理例1〜3では、有機溶剤排除工程(S11)において、IPAの液膜111を基板Wの側方に向けて移動させるために、基板Wおよびホットプレート6をともに傾斜姿勢に姿勢変更させた。この手法に代えて、誘導面を有する誘導部材(誘導ピンや誘導リング)を、基板の周縁部に対向するように設けておき、有機溶剤排除工程(S11)において、誘導部材を基板Wの内方に向けて移動させて、浮上しているIPAの液膜111に誘導部材の誘導面を接触させるようにしてもよい。基板Wの上面とIPAの液膜111との間に生じる摩擦力の大きさは略零であるので、誘導部材の誘導面とIPAの液膜111との接触により、浮上しているIPAの液膜111が、液塊状態を維持しながら(多数の小滴に分裂させることなく)誘導面を伝って基板Wの側方へと案内される。これにより、IPAの液膜111を基板Wの上方から完全に排除できる。このような手法を採用する場合、有機溶剤排除工程(S11)において、基板Wおよびホットプレート6をともに水平姿勢に維持することが可能である。この場合、基板処理装置1からホットプレート姿勢変更ユニット90を省略してもよい。
【0144】
また、有機溶剤排除工程(S11)において、基板Wおよびホットプレート6をともに傾斜姿勢に姿勢変更させる手法に代えて、窒素ガスバルブ52を開いて窒素ガス吐出口51から窒素ガスを吐出し、この窒素ガスを基板Wの上面に中央部に吹き付けてもよい。これにより、浮上しているIPAの液膜111の中央部に、小径円形状の乾燥領域が形成される。基板Wの上面とIPAの液膜111との間に生じる摩擦力の大きさは略零であるので、窒素ガス吐出口51からの窒素ガスの吐出に伴って、前記の乾燥領域は拡大し、乾燥領域82が基板Wの上面の全域に広がることにより、浮上しているIPAの液膜111が、液塊状態を維持しながら(多数の小滴に分裂させることなく)、基板Wの側方へと案内される。これにより、IPAの液膜111を基板Wの上方から完全に排除できる。
【0145】
また、有機溶剤排除工程(S11)において、前記の誘導部材を基板Wの内方に向けて移動させると共に、窒素ガスを基板Wの上面に中央部に吹き付けてもよい。
また、前述の実施形態では、ホットプレート6を昇降させることにより、ホットプレート6と基板保持回転ユニット5との間で基板Wを受け渡す構成を例に挙げて説明したが、基板保持回転ユニット5を昇降させることにより、また、ホットプレート6と基板保持回転ユニット5との双方を昇降させることにより、ホットプレート6と基板Wとを受け渡すようにしてもよい。
【0146】
また、固定ピン210とは別の部材で滑落防止部材を設け、この滑落防止部材が、傾斜姿勢で基板Wの低位側の周縁部に係合することにより、ホットプレート6上からの基板Wの滑落の防止を図るようにしてもよい。
また、基板Wおよびホットプレート6が傾斜姿勢をなす状態における、前記の傾斜角度が十分に小さい場合や、エンボス61と基板Wの下面との間に生じる接触摩擦力の大きさが十分に大きい場合には、基板Wが、基板対向面6aに沿う方向に移動しない。したがって、この場合には、固定ピン210、他の滑落防止部材等による基板Wの滑落の防止を図らなくてもよい。例えば、エンボス61(161)の先端を接触摩擦力が高い部材で構成すると、基板Wの周縁部を固定ピン210等で支えなくても、傾斜した基板Wの滑落をエンボス61(161)のみによって防止することが可能になる。
【0147】
また、前述の実施形態では、基板高温化工程(S10)において、ホットプレート6に基板Wが載置された状態で基板Wを加熱するものとして説明したが、基板高温化工程(S10)において、基板保持回転ユニット5に保持されている基板Wの下面にホットプレート6を近接配置して基板Wを加熱するようにしてもよい。この場合、ホットプレート6と基板Wとの間隔を変化させることにより、基板Wに与えられる熱量を調整できる。
【0148】
また、前述の実施形態では、プレート昇降機構16を用いてホットプレート6を昇降させることにより基板Wの加熱温度を調整したが、ホットプレート6の発熱量が少なくとも2段階(ON状態とOFF状態)で調整できる場合には、プレート昇降機構16によらずに基板Wの加熱温度を調整することが可能である。
この場合、基板高温化工程(S10)に並行して基板Wを回転させることが可能である。基板高温化工程(S10)における基板Wの回転は、基板高温化工程(S10)の一部の期間で実行されてもよいし、全期間に亘って実行されてもよい。但し、この場合の基板Wの回転速度は、基板Wの上面の周縁部が冷却されない程度の低速(たとえば約10rpm〜約100rpm程度)であることが望ましい。基板Wの回転速度が低速である場合、基板高温化工程(S10)においてIPAの液膜111に小さな遠心力しか作用しないため、IPAの液膜111への亀裂等113の発生を、より確実に防止できる。
【0149】
前述の実施形態では、第1および第2薬液として、それぞれフッ酸およびAPMを例示したが、洗浄処理、エッチング処理等では、第1または第2薬液として、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、腐食防止剤のうちの少なくとも1つを含む液を採用できる。
【0150】
また、複数種類(2種類)の薬液を用いるのではなく、1種類の薬液のみを用いて基板Wに処理を施すものであってもよい。
また、リンス液より低い表面張力を有する有機溶剤としてIPAを例に挙げて説明したが、IPA以外に、たとえば、メタノール、エタノール、アセトン、およびHFE(ハイドロフルオロエーテル)などを採用できる。
【0151】
また、リンス液としてDIWを用いる場合を例に挙げて説明したが、リンス液は、DIWに限らず、炭酸水、電解イオン水、オゾン水、希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水、還元水(水素水)などをリンス液として採用することもできる。
また、前述した実施形態の薬液処理(エッチング処理、洗浄処理等)は、大気圧の下で実行したが、処理雰囲気の圧力はこれに限られるものではない。たとえば、蓋部材39と下カップ37とで区画される密閉空間の雰囲気を所定の圧力調整手段を用いて加減圧することにより、大気圧よりも高い高圧雰囲気または大気圧よりも低い減圧雰囲気とした上で各実施形態のエッチング処理、洗浄処理等を実行してもよい。
【0152】
また、上述した各実施形態では、基板Wの裏面にホットプレート6の基板対向面6aを接触させた状態で基板Wを加熱させたが、基板Wと基板対向面6aとを接触させず近接させた状態で基板Wを加熱する態様においても、本発明は実施することが可能である。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。