特許第6304711号(P6304711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6304711
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】バルーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20180326BHJP
【FI】
   A61M25/10 510
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-234042(P2014-234042)
(22)【出願日】2014年11月18日
(65)【公開番号】特開2016-96869(P2016-96869A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2016年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】594170727
【氏名又は名称】日本ライフライン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100066
【弁理士】
【氏名又は名称】愛智 宏
(72)【発明者】
【氏名】大川 靖洋
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 和都
【審査官】 鈴木 崇文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−152181(JP,A)
【文献】 特開2013−226244(JP,A)
【文献】 米国特許第06491711(US,B1)
【文献】 国際公開第2010/009784(WO,A1)
【文献】 特表2009−511149(JP,A)
【文献】 実開昭63−088312(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
A61F 2/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターシャフトと、
前記アウターシャフトの先端に接続されたバルーンと、
前記アウターシャフトのルーメンおよび前記バルーンの内部に挿通されてガイドワイヤルーメンを形成するインナーチューブと、
前記インナーチューブの外周面に固着または前記インナーチューブと一体的に形成され、前記インナーチューブの半径方向外側に突出し、前記バルーンの拡張時に当該バルーンの内表面を押圧する滑り防止要素とを備えてなり、
前記インナーチューブは、前記バルーンの中心軸から、前記滑り防止要素の突出方向に偏心していることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記バルーンには、前記滑り防止要素の形状に沿って凸部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
血管内の病変(狭窄部)に血管形成術を行うために使用するバルーンカテーテルには、バルーンの滑りを防止しながら狭窄部を効果的に拡張することが望まれる。
【0003】
ここに、狭窄部を効果的に拡張するためのバルーンカテーテルとして、切り刃を備えた切開器をバルーンの外表面に複数装着してなるバルーンカテーテル(カッティングバルーンカテーテル)が開示されている(特許文献1)。
このようなバルーンカテーテルによれば、バルーンの拡張時に切り刃によって狭窄部に切り込みが入れられるので、拡張中の血管の応力が緩和されて狭窄部を効果的に拡張できるとされる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のバルーンカテーテルでは、バルーンに切り刃を固定するのに特殊な搭載部(切開器)を設けなければならないという点で不利である。
また、かかる切り刃がバルーンから脱落してしまうことも考えられる。
【0005】
このような問題を解決するとともに、バルーンの滑りを防止することができる血管形成用のバルーンカテーテルとして、バルーンの外表面からは分離した状態でバルーンの後端部から先端部まで延びる可撓性の細長い要素(滑り防止要素)が、バルーンの周方向に沿って等角度間隔で複数(3箇所)に設けられてなるものが開示されている(特許文献2)。
【0006】
このようなバルーンカテーテルによれば、バルーンを拡張することにより、バルーンの両端に接着されている滑り防止要素を、バルーンの半径方向に移動させて病巣部と噛合わせることで、病巣部に長手方向軸線方向チャネルを形成し、これにより、バルーンの拡張時にバルーンが軸線方向に移動する(滑る)ことを防止することができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−293176号公報
【特許文献2】特許第4309286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献2に記載されたバルーンカテーテルにおいては下記のような問題がある。
【0009】
すなわち、バルーンカテーテルの使用前(バルーンを拡張させる前)における滑り防止要素は、折り畳まれた状態のバルーンによって覆われているが、バルーンを一度拡張させた後に収縮させると、バルーンの先端部および後端部のみに接着されている(先端部および後端部以外のバルーンの外表面には接着されていない)当該滑り防止要素は、バルーンの外表面から離間して弛んだ状態となり、バルーンを拡張する前の状態に戻すことは困難である。
【0010】
このため、このような状態のバルーンカテーテルを次の病変に向けて血管内を挿通させる際に、バルーンの外表面から離間して弛んだ状態の滑り防止要素が、血管の屈曲部位に引っ掛かることにより、バルーンカテーテルの挿通性が著しく損なわれる。
【0011】
また、バルーンの外表面から滑り防止要素が離間している状態で当該バルーンの先端側へ他のデバイスを挿入したり、バルーンの後端側に他のデバイスがある状態で当該バルーンカテーテルを引き戻したりする際に、バルーンの外表面から離間して弛んだ状態の滑り防止要素が当該他のデバイスに引っ掛かって(バルーンの外表面と滑り防止要素との間に他のデバイスが入り込み)、他のデバイスまたはバルーンカテーテルの破損(滑り防止要素の脱落を含む)を招くことがある。
【0012】
また、収縮させたバルーンをガイディングカテーテルなどのルーメンに引き戻す際に、ガイディングカテーテルの開口に滑り防止要素が引っ掛かってしまうこともある。
【0013】
更に、滑り防止要素がバルーンの外側に位置しているバルーンカテーテルにあっては、依然として、当該滑り防止要素がバルーンから脱落することのリスクを避けることはできない。
【0014】
本発明は、以上のような事情に基いてなされたものである。
本発明の目的は、バルーンの滑りを防止しながら狭窄部を効果的に拡張することができ、しかも、バルーンの滑りを防止するための要素が血管の屈曲部位や他のデバイスなどに干渉することがなく、脱落することもないバルーンカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)本発明のバルーンカテーテルは、アウターシャフトと、
前記アウターシャフトの先端に接続されたバルーンと、
前記アウターシャフトのルーメンおよび前記バルーンの内部に挿通されてガイドワイヤルーメンを形成するインナーチューブと、
前記インナーチューブの外周面に固着または前記インナーチューブと一体的に形成され、前記インナーチューブの半径方向外側に突出し、前記バルーンの拡張時に当該バルーンの内表面を押圧する滑り防止要素とを備えてなり、
前記インナーチューブは、前記バルーンの中心軸から、前記滑り防止要素の突出方向に偏心していることを特徴とする。
【0016】
このような構成を有するバルーンカテーテルによれば、バルーンを拡張させたときに、バルーン壁を介して(バルーン壁とともに)滑り防止要素を狭窄部に食い込ませて病変組織にチャネルを形成することができる。これにより、狭窄部を効果的に拡張させることができるとともに、拡張時のバルーンが軸線方向に移動する(滑る)ことを防止することができる。
しかも、従来のバルーンカテーテルとは異なり、滑り防止要素がバルーンの内部に存在するので、当該滑り防止要素が、血管の屈曲部位や他のデバイスに干渉するようなことはなく、当該滑り防止要素がバルーンから離間して脱落することもない。
【0018】
また、インナーチューブが、バルーンの中心軸から、滑り防止要素の突出方向に偏心しているので、滑り防止要素のサイズダウンを図ることができ、血管挿通性の更なる向上を図ることができる。
【0019】
(2)本発明のバルーンカテーテルにおいて、前記バルーンには、前記滑り防止要素の形状に沿って凸部が形成されていることが好ましい。
【0020】
このような構成のバルーンカテーテルによれば、バルーンを拡張させたときのバルーン(凸部)の壁に、滑り防止要素の押圧に伴って過大な張力が掛かることを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のバルーンカテーテルによれば、バルーンの滑りを確実に防止しながら狭窄部を効果的に拡張することができ、しかも、滑り防止要素が血管の屈曲部位や他のデバイスなどに干渉することがなく、当該滑り防止要素が脱落することもない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係るバルーンカテーテルの側面図である。
図2図1に示したバルーンカテーテルの先端部分を示す斜視図である。
図3図1に示したバルーンカテーテルの先端部分を示す側面図である。
図4図1に示したバルーンカテーテルの先端部分における横断面(図3のA−A断面図)である。
図5A図1に示したバルーンカテーテルを構成するバルーンの折り畳み方の一例を示す断面図である。
図5B図1に示したバルーンカテーテルを構成するバルーンの折り畳み方の他の例を示す断面図である。
図6図1に示したバルーンカテーテルにおいて、バルーン内表面を押圧する滑り防止要素が血管の狭窄部に食い込んでいる状態を模式的に示す説明図である。
図7A】本発明の他の実施形態に係るバルーンカテーテルの先端部分を示す斜視図である。
図7B】本発明の更に他の実施形態に係るバルーンカテーテルの先端部分を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1図5図5Aおよび図5B)に示す本実施形態のバルーンカテーテル100は、経皮的冠状動脈血管形成術(PTCA)などに使用される。
このバルーンカテーテル100は、樹脂チューブからなる先端側シャフト10(アウターシャフト)と、先端側シャフト10の後端に接続された金属チューブからなる後端側シャフト20と、先端側シャフト10の先端に接続されたバルーン30と、先端側シャフト10のルーメンおよびバルーン30の内部に挿通されて、ガイドワイヤルーメンを形成する樹脂チューブであって、先端側シャフト10の側面において、その後端がガイドワイヤポートとして開口し、バルーン30の先端部にその先端部が固定されて、その先端が開口するインナーチューブ40と、インナーチューブ40の外周面に接着固定されてインナーチューブ40の半径方向外側に突出し、バルーン30の拡張時において当該バルーン30の内表面を押圧する滑り防止要素50と、後端側シャフト20の後端に接続されたハブ60と、後端側シャフト20の後端とハブ60との接続部に設けられたストレインリリーフ70と、先端側シャフト10のルーメンに挿通されているコアワイヤ(図示省略)とを備えている。
【0024】
バルーンカテーテル100を構成する先端側シャフト10は、樹脂チューブからなるアウターシャフトである。
先端側シャフト10(アウターシャフト)には、バルーン30を拡張させるための流体を流通するルーメン(拡張ルーメン)が形成されている。
【0025】
先端側シャフト10を構成する樹脂チューブの外径は、通常0.7〜1.0mmとされ、この樹脂チューブの内径は、通常0.65〜0.95mmとされる。
先端側シャフト10の長さは、通常150〜450mmとされる。
【0026】
先端側シャフト10を構成する樹脂チューブの材料としては、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテルブロックアミド(PEBAX)(登録商標)およびナイロンなどの熱可塑性樹脂を挙げることができ、これらのうちPEBAXが好ましい。
先端側シャフト10を構成する樹脂チューブの硬度としては、D型硬度計による硬度で63〜80であることが好ましい。
【0027】
先端側シャフト10の後端には後端側シャフト20が接続されている。
バルーンカテーテル100を構成する後端側シャフト20には、先端側シャフト10のルーメンに連通するルーメン(拡張ルーメン)が形成されている。
後端側シャフト20は、ステンレス、Ni−Ti合金、Cu−Mn−Al系合金などの金属チューブ(ハイポチューブ)から構成されており、この金属チューブの先端部分には、螺旋状のスリットが形成されていてもよい。
【0028】
後端側シャフト20を構成する金属チューブは、その先端部が先端側シャフト10を構成する樹脂チューブの後端部に挿入されているとともに、その後端部がハブ60に挿入されている。
後端側シャフト20を構成する金属チューブの外径は、通常0.5〜0.8mmとされ、この金属チューブの内径は、通常0.4〜0.7mmとされる。
後端側シャフト20の長さは、通常900〜1500mmとされる。
【0029】
先端側シャフト10の先端にはバルーン30が装着されている。
バルーンカテーテル100を構成するバルーン30は、先端側シャフト10および後端側シャフト20のルーメンを流通する液体によって拡張する。ここに、液体としては、生理食塩水や造影剤を挙げることができる。
【0030】
図4に示すように、バルーン30は、部分円筒状部30Aと、凸部30Bとからなり、その横断面形状は、従来公知のバルーンのような円形ではなく、一方向に窄まった雫形になっている(窄まっている部分が凸部30Bである)。
拡張時におけるバルーン30(部分円筒状部30A)の直径としては、通常1.0〜5.0mmとされ、好ましくは2.0〜3.5mmとされる。
バルーン30の長さとしては、通常5〜40mmとされ、好ましくは15〜30mmとされる。
バルーン30の構成材料としては、従来公知のバルーンカテーテルを構成するバルーンと同一のものを使用することができ、好適な材料としてPEBAXを挙げることができる。
【0031】
バルーンカテーテル100を構成するインナーチューブ40は、先端側シャフト10のルーメンおよびバルーン30の内部(内腔)に延在しており、ガイドワイヤを挿通するためのルーメン(ガイドワイヤルーメン)を形成する樹脂チューブである。
インナーチューブ40の後端は、先端側シャフト10の側面において開口しており、この開口41はガイドワイヤポートとなっている。
インナーチューブ40の先端部は、バルーン30の先端部に固定されており、インナーチューブ40の先端には開口42が形成されている。
図2図4示すように、インナーチューブ40は、バルーン30の中心軸から、凸部30Bが位置する方向(後述する滑り防止要素50の突出方向)に偏心して延びている。
【0032】
インナーチューブ40の外径は、通常0.48〜0.60mmとされ、その内径は通常0.35〜0.45mmとされる。
ガイドワイヤポートであるインナーチューブ40の開口41の形成位置からバルーン30の後端位置までの軸方向の距離としては、通常150〜300mmとされる。
インナーチューブ40の開口41の形成位置から後端側シャフト20の先端までの軸方向の距離としては、通常50mm以下とされ、好ましくは5〜50mmとされる。
インナーチューブ40の構成材料としては、PEBAX、ナイロン、PEEKなどの合成樹脂を挙げることができる。
インナーチューブ40を構成する樹脂の曲げ弾性率(JIS K 7171に準拠して測定される曲げ弾性率)は、通常50〜10,000MPaとされ、好ましくは150〜5,000MPa、更に好ましくは3,500〜4,200MPaとされる。
インナーチューブ40を構成する樹脂の硬度は、D型硬度計による硬度で55以上であることが好ましい。
【0033】
図2図4示すように、インナーチューブ40の外周面には、インナーチューブ40の半径方向外側に突出する滑り防止要素50が接着により固定されている。
バルーンカテーテル100を構成する滑り防止要素50は、その形状に沿って形成されているバルーン30の凸部30B内に収容され、図1図4に示したバルーン30の拡張時において、滑り防止要素50の先端は凸部30Bの内表面を押圧している。
【0034】
図4に示すように、滑り防止要素50は、略三角形状の横断面を有している。ここに、この三角形の頂角(θ)としては30〜100°であることが好ましく、更に好ましくは40〜60°とされる。
【0035】
この角度(θ)が狭すぎる場合には、バルーンの拡張時において、狭窄部との間に介在するバルーン壁を傷つけたり(特に、滑り防止要素の硬度が高いとき)、滑り防止要素の先端が変形して(特に、滑り防止要素の硬度が低いとき)狭窄部に食い込ませることができなかったりする。他方、この角度(θ)が広すぎる場合にも、バルーンの拡張時において当該滑り防止要素を狭窄部に食い込ませることができなくなる。
【0036】
滑り防止要素50の構成材料としては、インナーチューブ40の構成材料と同一の合成樹脂を挙げることができる。
すべり防止要素50を構成する樹脂の曲げ弾性率(JIS K 7171に準拠して測定される曲げ弾性率)は、通常50〜10,000MPaとされ、好ましくは150〜5,000MPa、更に好ましくは3,500〜4,200MPaとされる。
すべり防止要素50を構成する樹脂の硬度は、D型硬度計による硬度で55以上であることが好ましい。
【0037】
この曲げ弾性率が低すぎる場合には、バルーンの拡張時において、滑り防止要素の先端が変形して狭窄部に食い込ませることができない。他方、滑り防止要素を構成する樹脂の曲げ弾性率が高すぎる場合には、バルーンの拡張時において、狭窄部との間に介在するバルーン壁を傷つけるおそれがある。また、そのような滑り防止要素が位置するバルーン部分が撓みにくくなり、彎曲している血管に追従して当該部分をカーブさせることが困難となるために、バルーンカテーテルとしての血管挿通性が損なわれることがある。
【0038】
図5Aおよび図5Bに示すように、収縮状態のバルーン30は、インナーチューブ40および滑り防止要素50のまわりを巻回するようにして折り畳むことができる。
ここに、バルーンの外側に滑り防止要素を備えた従来のバルーンカテーテルでは、当該滑り防止要素がバルーンを折り畳む際の邪魔になって綺麗に折り畳むことができないが、バルーン30の内部に滑り防止要素50を備えたこのバルーンカテーテル100によれば、容易かつ綺麗にバルーン30を折り畳むことができる。
【0039】
そして、このバルーン30を拡張させてから収縮させた後においても、使用前と同様の形態に容易かつ綺麗に折り畳むことができる。
すなわち、バルーン30の内部に滑り防止要素50が位置するこの実施形態のバルーンカテーテル100は、リラップ性にも優れている。
【0040】
本実施形態のバルーンカテーテル100によれば、狭窄部を効果的に拡張させることができるとともに、拡張時のバルーン30が滑ることを有効に防止することができる。
すなわち、バルーン30を拡張させたときには、図6に示すように、このバルーン30(凸部30B)の壁部とともに、滑り防止要素50を血管の病変(狭窄部90)に食い込ませて病変組織にチャネルを形成することができる。これにより、血管の応力が緩和されて狭窄部90を効果的に拡張できるとともに、病変組織との摩擦抵抗が増大してバルーン30が軸線方向に移動する(滑る)ことを防止することができる。
【0041】
また、本実施形態のバルーンカテーテル100によれば、バルーンの滑りを防止するための要素が当該バルーンの外部に位置している従来公知のバルーンカテーテルとは異なり、滑り防止要素50がバルーン30の内部に存在するので、バルーン30の外部にある血管の屈曲部位や他のデバイスに対して当該滑り防止要素50が干渉するようなことはなく、当該滑り防止要素50がバルーン30から離間して脱落することもない。
【0042】
また、本実施形態のバルーンカテーテル100によれば、バルーン30の中心軸から、インナーチューブ40が滑り防止要素50の突出方向に偏心しているので、バルーンの中心軸上にインナーチューブが延びている場合と比較して、滑り防止要素50を小さくすることができ、血管挿通性の更なる向上を図ることができる。
【0043】
また、本実施形態のバルーンカテーテル100によれば、滑り防止要素50の形状に沿って、バルーン30に凸部30Bが形成されているので、バルーン30を拡張させたときのバルーン30(凸部30B)の壁に対して、滑り防止要素50の押圧に伴う過大な張力が掛かることを防止することができる。
【0044】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明のバルーンカテーテルはこれらに限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
例えば、滑り防止要素の形状や個数は、当該滑り防止要素をバルーン壁を介して狭窄部に食い込ませることができれば特に限定されるものでなく、例えば、長さの短い複数の滑り防止要素(例えば、図7Aに示す滑り防止要素51,52,53)を直線上に配置してもよい。また、図7Bに示すように滑り防止要素51’,52’,53’を間隔を置いて配置してもよい。
【0045】
また、バルーンには、滑り防止要素の形状に沿って凸部が形成されていることが望ましいが、円形の横断面を有する(凸部が形成されていない)ものであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
100 バルーンカテーテル
10 先端側シャフト(アウターシャフト)
20 後端側シャフト
30 バルーン
40 インナーチューブ
41 開口(ガイドワイヤポート)
42 開口 50 滑り防止要素
60 ハブ
70 ストレインリリーフ
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B