(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記透明導電層を構成する材料が、酸化スズ、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、酸化亜鉛、ガリウムをドープした酸化亜鉛(GZO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性積層体。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の透明導電性積層体は、基材の少なくとも一方の面に、直接又は1層以上の層を介して、基材側から順に、低屈折層、中間屈折層、及び透明導電層を積層してなる透明導電性積層体であって、低屈折層の屈折率が1.40〜1.50、中間屈折層の屈折率が1.50〜1.80、かつ、中間屈折層の膜密度が2.5〜4.5であることを特徴とする。
【0011】
(基材)
本発明に用いる基材は、無色透明なものであって、透明導電性積層体の基材として十分な強度を有するものであれば特に制限されない。
基材の材質としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、芳香族系重合体、ポリウレタン系ポリマー等が挙げられる。
【0012】
これらの中でも、透明性に優れ、かつ、汎用性があることから、ポリエステル、ポリアミド又はシクロオレフィン系ポリマーが好ましく、ポリエステル又はシクロオレフィン系ポリマーがより好ましい。
ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等が挙げられる。
ポリアミドとしては、全芳香族ポリアミド、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン共重合体等が挙げられる。
シクロオレフィン系ポリマーとしては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。その具体例としては、アペル(三井化学社製のエチレン−シクロオレフィン共重合体)、アートン(JSR社製のノルボルネン系重合体)、ゼオノア(日本ゼオン社製のノルボルネン系重合体)等が挙げられる。
これらの中でも、汎用性及びコストの観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等のポリエステルが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0013】
基材は、これらの樹脂成分の他に、透明性等を損なわない範囲で、酸化防止剤、難燃剤、滑剤等の各種添加剤を含んでも良い。
基材の厚みは、通常0.01〜0.5mm、好ましくは0.05〜0.25mmである。基材の厚みがこの範囲内であることで、透明性及び屈曲性に優れる透明導電性積層体を容易に得ることができる。
【0014】
基材の全光線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは、70〜100%であり、さらに好ましくは、80〜95%である。基材のヘイズ値は、好ましくは10%以下、より好ましくは、1〜10%である。基材の全光線透過率やヘイズ値がこれらの範囲内であることで、透明性に優れる透明導電性積層体を容易に得ることができる。
また、基材の屈折率は、材質、延伸の有無によって異なるが、透明性の観点から、通常、1.45〜1.75、好ましくは1.6〜1.75の範囲である。
【0015】
(低屈折層)
本発明の透明導電性積層体に用いる低屈折層は、屈折率が1.40〜1.50、好ましくは、1.42〜1.48の層である。本発明においては、かかる特性を有する低屈折層を、後述する中間屈折層と組み合わせて用いることで、光学特性(全光線透過率及び色調)に優れる透明導電性積層体を得ることができる。
低屈折層は、光学膜厚が、通常、10〜800nm、好ましくは、100〜500nmである。低屈折層の光学膜厚がこの範囲内であることで、光学特性に優れ、かつ、薄い透明導電性積層体を得ることができる。光学膜厚とは、層の屈折率(n)と層の膜厚(d)との積(n×d)をいう。
【0016】
低屈折層は、上記特性を有する限り、その構成成分や形成方法は特に制限されず、公知のものが使用できる。低屈折層の材料としては、ケイ素系高分子化合物;光重合性モノマー及び/又は光重合性プレポリマーからなる光重合性化合物、及び光重合開始剤を含む光重合性組成物;ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂(特にポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等とイソシアネート化合物との2液硬化型樹脂)、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等の樹脂類;アルキルチタネート;エチレンイミン;フッ素系樹脂;等が挙げられる。これらの材料は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、ケイ素系高分子化合物から構成されるもの(以下、「ケイ素系高分子層」ということがある。)が好ましい。後述するように、ケイ素系高分子層の表面にプラズマイオン注入等のイオン注入処理をすると、ケイ素系高分子層の一部を改質することができ、目的の特性を有する中間屈折層を容易に形成することができる。改質された部分(以下、表層部ということがある)は、目的の特性を有する中間屈折層となり、改質されていない部分が低屈折層となるため、低屈折層としてケイ素系高分子層を用いることで、効率よく透明導電性積層体を得ることができる。
【0017】
ケイ素系高分子化合物としては、ケイ素を含有する高分子であれば、有機化合物であっても無機化合物であってもよい。例えば、ポリオルガノシロキサン系化合物、ポリカルボシラン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリシラザン系化合物等が挙げられる。
【0018】
ポリオルガノシロキサン系化合物は、加水分解性官能基を有するシラン化合物を重縮合して得られる化合物である。
【0019】
ポリオルガノシロキサン系化合物の主鎖構造に制限はなく、直鎖状、ラダー状、籠状のいずれであってもよい。
例えば、前記直鎖状の主鎖構造としては下記式(a)で表される構造が、ラダー状の主鎖構造としては下記式(b)で表される構造が、籠状の主鎖構造としては、例えば下記式(c)で表される構造が、それぞれ挙げられる。
【0023】
式中、Rx、Ry、Rzは、それぞれ独立して、水素原子、無置換若しくは置換基を有するアルキル基、無置換若しくは置換基を有するアルケニル基、無置換若しくは置換基を有するアリール基等の非加水分解性基を表す。なお、式(a)の複数のRx、式(b)の複数のRy、及び式(c)の複数のRzは、それぞれ同一でも相異なっていてもよい。ただし、前記式(a)のRxが2つとも水素原子であることはない。
【0024】
無置換若しくは置換基を有するアルキル基のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の炭素数1〜10のアルキル基が挙げられる。
【0025】
無置換又は置換基を有するアルケニル基のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基等の炭素数2〜10のアルケニル基が挙げられる。
【0026】
前記アルキル基及びアルケニル基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;ヒドロキシル基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基等の無置換若しくは置換基を有するアリール基;等が挙げられる。
【0027】
無置換又は置換基を有するアリール基のアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等の炭素数6〜10のアリール基が挙げられる。
【0028】
前記アリール基の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;ヒドロキシル基;チオール基;エポキシ基;グリシドキシ基;(メタ)アクリロイルオキシ基;フェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基等の無置換若しくは置換基を有するアリール基;等が挙げられる。
【0029】
これらの中でも、Rx、Ry、Rzとしては、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。
【0030】
ポリオルガノシロキサン系化合物としては、前記式(a)で表される直鎖状の化合物が好ましく、入手容易性、及び優れたガスバリア性を有する層を形成できる観点から、前記式(a)において2つのRxがともにメチル基の化合物であるポリジメチルシロキサンがより好ましい。
【0031】
ポリオルガノシロキサン系化合物は、例えば、加水分解性官能基を有するシラン化合物を重縮合する、公知の製造方法により得ることができる。
【0032】
用いるシラン化合物は、目的とするポリオルガノシロキサン系化合物の構造に応じて適宜選択すればよい。好ましい具体例としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等の2官能シラン化合物;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルジエトキシメトキシシラン等の3官能シラン化合物;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラs−ブトキシシラン、メトキシトリエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリメトキシエトキシシラン等の4官能シラン化合物等が挙げられる。
【0033】
ポリカルボシラン系化合物は、分子内の主鎖に、(−Si−C−)結合を有する高分子化合物である。なかでも、本発明に用いるポリカルボシラン系化合物としては、下記式(d)で表される繰り返し単位を含むものが好ましい。
【0035】
式中、Rw、Rvは、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、又は1価の複素環基を表す。複数のRw、Rvは、それぞれ同一であっても相異なっていてもよい。
【0036】
Rw、Rvのアルキル基、アリール基、アルケニル基としては、前記Rx等として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0037】
1価の複素環基の複素環としては、炭素原子の他に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む3〜10員の環状化合物であれば特に制約はない。
1価の複素環基の具体例としては、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−フリル基、3−フリル基、3−ピラゾリル基、4−ピラゾリル基、2−イミダゾリル基、4−イミダゾリル基、1,2,4−トリアジン−3−イル基、1,2,4−トリアジン−5−イル基、2−ピリミジル基、4−ピリミジル基、5−ピリミジル基、3−ピリダジル基、4−ピリダジル基、2−ピラジル基、2−(1,3,5−トリアジル)基、3−(1,2,4−トリアジル)基、6−(1,2,4−トリアジル)基、2−チアゾリル基、5−チアゾリル基、3−イソチアゾリル基、5−イソチアゾリル基、2−(1,3,4−チアジアゾリル)基、3−(1,2,4−チアジアゾリル)基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、3−イソオキサゾリル基、5−イソオキサゾリル基、2−(1,3,4−オキサジアゾリル)基、3−(1,2,4−オキサジアゾリル)基、5−(1,2,3−オキサジアゾリル)基等が挙げられる。
【0038】
これらの基は、任意の位置に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0039】
Rは、アルキレン基、アリーレン基又は2価の複素環基を表す。
Rのアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基等の炭素数1〜10のアルキレン基が挙げられる。
【0040】
アリーレン基としては、フェニレン基、1,4−ナフチレン基、2,5−ナフチレン基等の炭素数6〜20のアリーレン基が挙げられる。
【0041】
2価の複素環基としては、炭素原子の他に酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む3〜10員の複素環化合物から導かれる2価の基であれば特に制約はない。
【0042】
2価の複素環基の具体例としては、2,5−チオフェンジイル基等のチオフェンジイル基;2,5−フランジイル基等のフランジイル基;2,5−セレノフェンジイル基等のセレノフェンジイル基;2,5−ピロールジイル基等のピロールジイル基;2,5−ピリジンジイル基、2,6−ピリジンジイル基等のピリジンジイル基;2,5−チエノ[3,2−b]チオフェンジイル基、2,5−チエノ[2,3−b]チオフェンジイル基等のチエノチオフェンジイル基;2,6−キノリンジイル基等のキノリンジイル基;1,4−イソキノリンジイル基、1,5−イソキノリンジイル基等のイソキノリンジイル基;5,8−キノキサリンジイル基等のキノキサリンジイル基;4,7−ベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基等のベンゾ[1,2,5]チアジアゾールジイル基;4,7−ベンゾチアゾールジイル基等のベンゾチアゾールジイル基;2,7−カルバゾールジイル基、3,6−カルバゾールジイル基等のカルバゾールジイル基;3,7−フェノキサジンジイル基等のフェノキサジンジイル基;3,7−フェノチアジンジイル基等のフェノチアジンジイル基;2,7−ジベンゾシロールジイル基等のジベンゾシロールジイル基;2,6−ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[1,2−b:5,4−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[2,1−b:3,4−b’]ジチオフェンジイル基、2,6−ベンゾ[1,2−b:3,4−b’]ジチオフェンジイル基等のベンゾジチオフェンジイル基等が挙げられる。
【0043】
なお、Rのアルキレン基、アリーレン基、2価の複素環基は、任意の位置に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0044】
これらの中でも、式(d)において、Rw、Rvがそれぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基であり、Rがアルキレン基又はアリーレン基である繰り返し単位を含むものがより好ましく、Rw、Rvがそれぞれ独立して、水素原子又はアルキル基であり、Rがアルキレン基である繰り返し単位を含むものがさらに好ましい。
【0045】
式(d)で表される繰り返し単位を有するポリカルボシラン系化合物の重量平均分子量は、通常400〜12,000である。
【0046】
ポリカルボシラン系化合物の製造方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を採用できる。例えば、ポリシランの熱分解重合により製造する方法(特開昭51−126300号公報)、ポリ(ジメチルシラン)の熱転位により製造する方法(Journal of Materials Science,2569−2576,Vol.13,1978)、クロロメチルトリクロロシランのグリニャール反応によりポリカルボシラン系化合物を得る方法(Organometallics,1336−1344,Vol.10,1991)、ジシラシクロブタン類の開環重合により製造する方法(Journal of Organometallic Chemistry,1−10,Vol.521,1996)、ジメチルカルボシランとSiH基含有シランの構造単位を有する原料ポリマーに、塩基性触媒の存在下で水及び/又はアルコールを反応させることにより製造する方法(特開2006−117917号公報)、末端にトリメチルスズ等の有機金属基を有するカルボシランを、n−ブチルリチウム等の有機典型金属化合物を開始剤として重合反応させて製造する方法(特開2001−328991号公報)等が挙げられる。
【0047】
ポリシラン系化合物は、分子内に、(−Si−Si−)結合を有する高分子化合物である。かかるポリシラン系化合物としては、下記式(e)で表される構造単位から選択された少なくとも一種の繰り返し単位を有する化合物が挙げられる。
【0049】
式(e)中、Rq及びRrは、同一又は異なって、水素原子、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、置換基を有していてもよいアミノ基、シリル基、又はハロゲン原子を表す。
【0050】
Rq及びRrのアルキル基、アルケニル基、アリール基としては、前記Rx等で例示したのと同様のものが挙げられる。
【0051】
シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基等の炭素数3〜10のシクロアルケニル基が挙げられる。
シクロアルケニル基としては、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数4〜10のシクロアルケニル基が挙げられる。
【0052】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等の炭素数1〜10のアルコキシ基が挙げられる。
シクロアルキルオキシ基としては、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3〜10のシクロアルキルオキシ基が挙げられる。
【0053】
アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等の炭素数6〜20のアリールオキシ基が挙げられる。
アラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、フェニルプロピルオキシ基等の炭素数7〜20のアラルキルオキシ基が挙げられる。
置換基を有していてもよいアミノ基としては、アミノ基;アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アシル基等で置換されたN−モノ又はN,N−ジ置換アミノ基等が挙げられる。
【0054】
シリル基としては、シリル基、ジシラニル基、トリシラニル基等のSi1−10シラニル基(好ましくはSi1−6シラニル基)、置換シリル基(例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基等で置換された置換シリル基)等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0055】
前記シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、シリル基は、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基等の置換基を有していてもよい。
【0056】
これらの中でも、本発明のより優れた効果が得られることから、前記式(e)で表される繰り返し単位を含む化合物が好ましく、式(e)において、Rq、Rrが、それぞれ独立して、水素原子、ヒドロキシル基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基又はシリル基である繰り返し単位を含む化合物がより好ましく、式(e)において、Rq、Rrが、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基又はアリール基である繰り返し単位を含む化合物がさらに好ましい。
【0057】
ポリシラン系化合物の形態は特に制限されず、非環状ポリシラン(直鎖状ポリシラン、分岐鎖状ポリシラン、網目状ポリシラン等)や、環状ポリシラン等の単独重合体であっても、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、くし型共重合体等の共重合体であってもよい。
ポリシラン系化合物が非環状ポリシランである場合は、ポリシラン系化合物の末端基(末端置換基)は、水素原子であっても、ハロゲン原子(塩素原子等)、アルキル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シリル基等であってもよい。
【0058】
ポリシラン系化合物の具体例としては、ポリジメチルシラン、ポリ(メチルプロピルシラン)、ポリ(メチルブチルシラン)、ポリ(メチルペンチルシラン)、ポリ(ジブチルシラン)、ポリ(ジヘキシルシラン)等のポリジアルキルシラン、ポリ(ジフェニルシラン)等のポリジアリールシラン、ポリ(メチルフェニルシラン)等のポリ(アルキルアリールシラン)等のホモポリマー;ジメチルシラン−メチルヘキシルシラン共重合体等のジアルキルシランと他のジアルキルシランとの共重合体、フェニルシラン−メチルフェニルシラン共重合体等のアリールシラン−アルキルアリールシラン共重合体、ジメチルシラン−メチルフェニルシラン共重合体、ジメチルシラン−フェニルヘキシルシラン共重合体、ジメチルシラン−メチルナフチルシラン共重合体、メチルプロピルシラン−メチルフェニルシラン共重合体等のジアルキルシラン−アルキルアリールシラン共重合体等のコポリマ;等が挙げられる。
【0059】
なお、ポリシラン系化合物については、詳しくは、例えば、R.D.Miller、J.Michl;Chemical Review、第89巻、1359頁(1989)、N.Matsumoto;Japanese Journal of Physics、第37巻、5425頁(1998)等に記載されている。本発明においては、これらの文献に記載されるポリシラン系化合物を用いることができる。
【0060】
ポリシラン系化合物の平均重合度(例えば、数平均重合度)は、通常、5〜400、好ましくは10〜350、さらに好ましくは20〜300程度である。
また、ポリシラン系化合物の重量平均分子量は、300〜100,000、好ましくは400〜50,000、さらに好ましくは500〜30,000程度である。
【0061】
ポリシラン系化合物の多くは公知物質であり、公知の方法を用いて製造することができる。例えば、マグネシウムを還元剤としてハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(「マグネシウム還元法」、WO98/29476号公報等)、アルカリ金属の存在下でハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(「キッピング法」、J.Am.Chem.Soc.,110,124(1988)、Macromolecules,23,3423(1990)等)、電極還元によりハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1161(1990)、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.897(1992)等)、特定の重合用金属触媒の存在下にヒドロシラン類を脱水素縮合させる方法(特開平4−334551号公報等)、ビフェニル等で架橋されたジシレンのアニオン重合による方法(Macromolecules,23,4494(1990)等)、環状シラン類の開環重合による方法等が挙げられる。
【0062】
ポリシラザン系化合物としては、式(f)
【0064】
で表される繰り返し単位を有する化合物が好ましい。また、用いるポリシラザン系化合物の数平均分子量は、特に限定されないが、100〜50,000であるのが好ましい。
【0065】
式(f)中、nは任意の自然数を表す。
Rm、Rp、Rtは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルキルシリル基等の非加水分解性基を表す。
【0066】
前記アルキル基、アルケニル基、アリール基としては、前記Rx等で例示したのと同様のものが挙げられる。
シクロアルキル基としては、前記Rq等で例示したのと同様のものが挙げられる。
【0067】
アルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリt−ブチルシリル基、メチルジエチルシリル基、ジメチルシリル基、ジエチルシリル基、メチルシリル基、エチルシリル基等が挙げられる。
【0068】
これらの中でも、Rm、Rp、Rtとしては、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基が好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0069】
前記式(f)で表される繰り返し単位を有するポリシラザン系化合物としては、Rm、Rp、Rtが全て水素原子である無機ポリシラザン、Rm、Rp、Rtの少なくとも1つが水素原子ではない有機ポリシラザンのいずれであってもよい。
無機ポリシラザンとしては、下記式
【0071】
で表される繰り返し単位を有する直鎖状構造を有し、690〜2000の分子量を持ち、一分子中に3〜10個のSiH
3基を有するペルヒドロポリシラザン(特公昭63−16325号公報)、式(A)
【0073】
〔式中、b、cは任意の自然数を表し、Y
1は、水素原子又は式(B)
【0075】
(式中、dは任意の自然数を表し、*は結合位置を表し、Y
2は水素原子、又は前記(B)で表される基を表す。)で表される基を表す。〕で表される繰り返し単位を有する、直鎖状構造と分岐構造を有するペルヒドロポリシラザン、例えば、式(C)
【0077】
で表されるペルヒドロポリシラザン構造を有する、分子内に、直鎖状構造、分岐構造及び環状構造を有するペルヒドロポリシラザン等が挙げられる。
【0078】
有機ポリシラザンとしては、
(i)−(Rm’SiHNH)−(Rm’は、Rmと同様のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルキルシリル基を表す。以下のRm’も同様である。)を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するもの、
(ii)−(Rm’SiHNRt’)−(Rt’は、Rtと同様のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルキルシリル基を表す。)を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するもの、
(iii)−(Rm’Rp’SiNH)−(Rp’は、Rpと同様のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基アルキルシリル基を表す。)を繰り返し単位として、主として重合度が3〜5の環状構造を有するもの、
(iv)下記式で表される構造を分子内に有するポリオルガノ(ヒドロ)シラザン、
【0082】
〔Rm’、Rp’は前記と同じ意味を表し、e、fは任意の自然数を表し、Y
3は、水素原子又は下記式(D)
【0084】
(式中、gは任意の自然数を表し、*は結合位置を表し、Y
4は水素原子、又は前記(D)で表される基を表す。)で表される基を表す。〕
で表される繰り返し構造を有するポリシラザン等が挙げられる。
【0085】
上記有機ポリシラザンは、従来公知の方法により製造することができる。例えば、下記式
【0087】
(式中、mは2又は3を表し、Xはハロゲン原子を表し、R
1は、前述した、Rm、Rp、Rt、Rm’、Rp’、Rt’のいずれかの置換基を表す。)で表される無置換若しくは置換基を有するハロゲノシラン化合物と2級アミンとの反応生成物に、アンモニア又は1級アミンを反応させることにより得ることができる。
用いる2級アミン、アンモニア及び1級アミンは、目的とするポリシラザン系化合物の構造に応じて、適宜選択すればよい。
【0088】
また、本発明においては、ポリシラザン系化合物として、ポリシラザン変性物を用いることもできる。ポリシラザン変性物としては、例えば、金属原子(該金属原子は架橋をなしていてもよい。)を含むポリメタロシラザン、繰り返し単位が〔(SiH
2)
j(NH)
h)〕及び〔(SiH
2)
iO〕(式中、j、h、iはそれぞれ独立して、1、2又は3である。)で表されるポリシロキサザン(特開昭62−195024号公報)、ポリシラザンにボロン化合物を反応させて製造するポリボロシラザン(特開平2−84437号公報)、ポリシラザンとメタルアルコキシドとを反応させて製造するポリメタロシラザン(特開昭63−81122号公報等)、無機シラザン高重合体や改質ポリシラザン(特開平1−138108号公報等)、ポリシラザンに有機成分を導入した共重合シラザン(特開平2−175726号公報等)、ポリシラザンにセラミックス化を促進するための触媒的化合物を付加又は添加した低温セラミックス化ポリシラザン(特開平5−238827号公報等)、
ケイ素アルコキシド付加ポリシラザン(特開平5−238827号公報)、グリシドール付加ポリシラザン(特開平6−122852号公報)、アセチルアセトナト錯体付加ポリシラザン(特開平6−306329号公報)、金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(特開平6−299118号公報等)、
上記ポリシラザン又はその変性物に、アミン類及び/又は酸類を添加してなるポリシラザン組成物(特開平9−31333号公報)、ペルヒドロポリシラザンにメタノール等のアルコール或いはヘキサメチルジシラザンを末端N原子に付加して得られる変性ポリシラザン(特開平5−345826号公報、特開平4−63833号公報)等が挙げられる。
【0089】
これらの中でも、本発明において用いるポリシラザン系化合物としては、Rm、Rp、Rtが全て水素原子である無機ポリシラザン、Rm、Rp、Rtの少なくとも1つが水素原子ではない有機ポリシラザンが好ましく、入手容易性、及び優れたガスバリア性を有する注入層を形成できる観点から、無機ポリシラザンがより好ましい。
なお、ポリシラザン系化合物は、ガラスコーティング材等として市販されている市販品をそのまま使用することもできる。
【0090】
低屈折層は、本発明の目的を阻害しない範囲で他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、硬化剤、老化防止剤、光安定剤、難燃剤等が挙げられる。
低屈折層が、前記ケイ素系高分子層の場合、これらの成分に加えて、ケイ素系高分子以外の高分子を含んでいてもよい。低屈折層中のケイ素系高分子化合物の含有量は、後述するプラズマイオン注入等のイオン注入処理によって、目的の特性を有する中間屈折層を効率よく形成することができることから、低屈折層全体を基準として50質量%以上であるのが好ましく、70質量%以上であるのがより好ましい。
【0091】
低屈折層を形成する方法としては、特に制約はない。例えば、前記の低屈折層の材料及び所望により他の成分を適当な溶剤に溶解又は分散してなる低屈折層形成用溶液を、基材の片面又は両面に塗付し、得られた塗膜を乾燥させ、所望により加熱、エネルギー線を照射することより低屈折層を形成することができる。
また、後述するようにケイ素系高分子層にプラズマイオン注入等のイオン注入処理を施すことで中間屈折層及び低屈折層を形成する場合は、かかる処理によってケイ素系高分子層の一部(表層部)が改質されて中間屈折層になり、残りの部分は低屈折性が維持され、低屈折層となる。このように、ケイ素系高分子層にプラズマイオン注入等のイオン注入処理を施すことで、中間屈折層と同時に、所定の厚みを有する低屈折層を形成することができる。
【0092】
低屈折層形成用溶液を塗布する際に用いる塗工装置としては、スピンコーター、ナイフコーター、グラビアコーター等の公知の装置が挙げられる。
【0093】
塗膜の乾燥、加熱方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が採用できる。加熱温度は、通常、80〜150℃であり、加熱時間は、通常、数十秒から数十分である。
【0094】
(中間屈折層)
本発明に用いる中間屈折層は、屈折率が1.50〜1.80、好ましくは1.55〜1.75、より好ましくは1.60〜1.70の層である。かかる特性を有する中間屈折層を前記低屈折層と組み合わせて用いることで、光学特性(全光線透過率及び色調)及び耐熱性に優れる透明導電性積層体を得ることができる。中間屈折層は、屈折率が1.50未満であると、耐湿熱性が低下するため好ましくない。一方、屈折率が1.80より大きいと光学特性及び耐熱性が低下するため好ましくない。
【0095】
本発明に用いる中間屈折層は、膜密度が2.5〜4.5g/cm
3、好ましくは2.7〜3.5g/cm
3の層である。膜密度が2.5未満の中間屈折層を用いると、透明導電性積層体の耐湿熱性が低下する。また、膜密度が4.5を超えると、中間屈折層の柔軟性が低下し、透明導電性積層体の製造工程中や、搬送の際にクラックが発生し、耐湿熱性が悪くなる可能性がある。
【0096】
膜密度は、X線反射率法(XRR)を用いて算出することができる。
X線は、基板上の薄膜に対して非常に浅い角度で入射させると全反射される。入射X線の角度が全反射臨界角以上になると、薄膜内部にX線が侵入し薄膜表面や界面で透過波と反射波に分かれ、反射波は干渉する。全反射臨界角を解析することで、膜の密度を求めることができる。なお、入射角度を変えながら測定を行い、光路差の変化に伴う反射波の干渉信号の解析から、薄膜の膜厚も求めることができる。
膜密度は、以下の方法で測定することができる。
一般に、X線に対する物質の屈折率n、及び屈折率nの実部部分のδは以下の式1及び式2となることが知られている。
【0099】
ここで、r
eは電子の古典半径(2.818×10
−15m)を、N
0はアボガドロ数を、λはX線の波長を、ρは密度(g/cm
3)を、Zi、Mi、xiは、それぞれi番目の原子の原子番号、原子量及び原子数比(モル比)を、fi’はi番目の原子の原子散乱因子(異常分散項)を表す。また、全反射臨界角度θcは、吸収に関係するβを無視すると、式3で与えられる。
【0101】
従って、式2及び式3の関係から、密度ρは式4で求めることができる。
【0103】
ここで、θc
2はX線反射率より求めることのできる値であり、r
e、N
0、λは定数であり、Zi、Mi、fi’はそれぞれ構成原子に固有の値となる。なお、xi:原子数比(モル比)に関しては、XPS測定から得られた結果を用いる。
中間屈折層における膜密度は、実施例において説明する方法で測定し、式4を用いて得られる。
【0104】
中間屈折層は、光学膜厚が、通常、1〜100nm、好ましくは、10〜50nmである。中間屈折層の光学膜厚がこの範囲内であることで、光学特性に優れ、かつ薄い透明導電性積層体を得ることができる。
【0105】
中間屈折層は、前記特性を有する限り、その構成成分や形成方法は特に制限されず、公知のものが使用できる。中間屈折層の材料としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素等の酸化物;窒化ケイ素等の窒化物;酸窒化ケイ素等の酸窒化物;等が挙げられる。なかでも、酸素原子及びケイ素原子を含有するものが好ましい。中間屈折層が酸素原子及びケイ素原子を含有することで、ガスバリア性に優れる中間屈折層を容易に形成することができる。
酸素原子、ケイ素原子及び
窒素原子の存在量全体に対するそれぞれの原子の存在割合(原子数割合)は、透明導電性積層体の耐湿熱性や光学特性の観点から、好ましくは、酸素原子が60〜75%、ケイ素原子が25〜35%、窒素原子が0〜10%である。
【0106】
中間屈折層の形成方法としては、例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、プラズマCVD法のような物理的又は化学的な堆積法によって、直接形成してもよいが、特定の化学組成をもった層をイオン注入処理等によって形成する方法でもよい。簡便に中間屈折層を形成できることから、プラズマイオン注入処理を行う方法が好ましい。
【0107】
低屈折層として上記のケイ素系高分子層を用いる場合、前記特性を有する中間屈折層は、ケイ素系高分子層にプラズマイオン注入処理を施すことによって、容易に形成することができる。
具体的には、低屈折層として用いたケイ素系高分子層にプラズマイオン注入処理を施すことによって、その一部(表層部)が改質されることで、前記特性を有する中間屈折層を形成することができる。
【0108】
プラズマイオン注入処理の方法としては、公知の方法を用いることができる
プラズマイオン注入法を用いる場合、イオン注入電圧を変えることで、イオン注入領域を変化させ、これにより、中間屈折層の屈折率を制御することができる。このように、イオン注入法を用いることで、目的の屈折率を有する中間屈折層を容易に形成することができる。
【0109】
注入されるイオンとしては、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン等の希ガスのイオン;フルオロカーボン、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、塩素、フッ素、硫黄等のイオン;
メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等のアルカン系ガス類のイオン;エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン等のアルケン系ガス類のイオン;ペンタジエン、ブタジエン等のアルカジエン系ガス類のイオン;アセチレン、メチルアセチレン等のアルキン系ガス類のイオン;ベンゼン、トルエン、キシレン、インデン、ナフタレン、フェナントレン等の芳香族炭化水素系ガス類のイオン;シクロプロパン、シクロヘキサン等のシクロアルカン系ガス類のイオン;シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロアルケン系ガス類のイオン;
金、銀、銅、白金、ニッケル、パラジウム、クロム、チタン、モリブデン、ニオブ、タンタル、タングステン、アルミニウム等の導電性の金属のイオン;
シラン(SiH
4)又は有機ケイ素化合物のイオン;等が挙げられる。
【0110】
有機ケイ素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン等の無置換若しくは置換基を有するアルキルアルコキシシラン;
ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等のアリールアルコキシシラン;
ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)等のジシロキサン;
ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、テトラキスジメチルアミノシラン、トリス(ジメチルアミノ)シラン等のアミノシラン;
ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラメチルジシラザン等のシラザン;
テトライソシアナートシラン等のシアナートシラン;
トリエトキシフルオロシラン等のハロゲノシラン;
ジアリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン等のアルケニルシラン;
ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、テトラメチルシラン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ベンジルトリメチルシラン等の無置換若しくは置換基を有するアルキルシラン;
ビス(トリメチルシリル)アセチレン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン等のシリルアルキン;
1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン等のシリルアルケン;
フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン等のアリールアルキルシラン;
プロパルギルトリメチルシラン等のアルキニルアルキルシラン;
ビニルトリメチルシラン等のアルケニルアルキルシラン;
ヘキサメチルジシラン等のジシラン;
オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン等のシロキサン;
N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド;
ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド;
等が挙げられる。
これらのイオンは、一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
なかでも、より簡便に注入することができ、特に優れたガスバリア性を有し、かつ、目的の光学特性を有する中間屈折層を形成しうることから、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、及びクリプトンからなる群から選ばれる少なくとも一種のイオンが好ましい。
【0112】
イオンを注入する方法としては、特に限定されないが、電界により加速されたイオン(イオンビーム)を照射する方法、プラズマ中のイオンを注入する方法等が挙げられる。なかでも、本発明においては、簡便に目的の特性を有する中間屈折層を形成することができることから、後者のプラズマイオンを注入する方法が好ましい。
【0113】
プラズマイオン注入法としては、(A)外部電界を用いて発生させたプラズマ中に存在するイオンを、ケイ素系高分子層の表面部に注入する方法、又は(B)外部電界を用いることなく、前記層に印加する負の高電圧パルスによる電界のみで発生させたプラズマ中に存在するイオンを、ケイ素系高分子層の表面部に注入する方法が好ましい。
【0114】
前記(A)の方法においては、イオン注入する際の圧力(プラズマイオン注入時の圧力)を0.01〜1Paとすることが好ましい。プラズマイオン注入時の圧力がこのような範囲にあるときに、簡便にかつ効率よく均一にイオンを注入することができ、目的の中間屈折層を効率よく形成することができる。
【0115】
前記(B)の方法は、減圧度を高くする必要がなく、処理操作が簡便であり、処理時間も大幅に短縮することができる。また、前記層全体にわたって均一に処理することができ、負の高電圧パルス印加時にプラズマ中のイオンを高エネルギーで層の表面部に連続的に注入することができる。さらに、radio frequency(高周波、以下、「RF」と略す。)や、マイクロ波等の高周波電力源等の特別の他の手段を要することなく、層に負の高電圧パルスを印加するだけで、層の表面部に良質のイオン注入層を均一に形成することができる。
【0116】
前記(A)及び(B)のいずれの方法においても、負の高電圧パルスを印加するとき、すなわちイオン注入するときのパルス幅は、1〜15μsecであるのが好ましい。パルス幅がこのような範囲にあるときに、より簡便にかつ効率よく、均一にイオンを注入することができる。
【0117】
また、プラズマを発生させるときの印加電圧は、好ましくは−1〜−50kV、より好ましくは−1〜−30kV、特に好ましくは−5〜−20kVである。印加電圧が−1kVより大きい値でイオン注入を行うと、イオン注入量(ドーズ量)が不十分となり、所望の性能が得られない。一方、−50kVより小さい値でイオン注入を行うと、イオン注入時にフィルムが帯電し、またフィルムへの着色等の不具合が生じ、好ましくない。
【0118】
プラズマイオン注入するイオン種としては、前記注入されるイオンとして例示したのと同様のものが挙げられる。
【0119】
層の表面部にプラズマ中のイオンを注入する際には、プラズマイオン注入装置を用いる。
プラズマイオン注入装置としては、具体的には、(α)ケイ素系高分子層(以下、「イオン注入する層」ということがある。)に負の高電圧パルスを印加するフィードスルーに高周波電力を重畳してイオン注入する層の周囲を均等にプラズマで囲み、プラズマ中のイオンを誘引、注入、衝突、堆積させる装置(特開2001−26887号公報)、(β)チャンバー内にアンテナを設け、高周波電力を与えてプラズマを発生させてイオン注入する層周囲にプラズマが到達後、イオン注入する層に正と負のパルスを交互に印加することで、正のパルスでプラズマ中の電子を誘引衝突させてイオン注入する層を加熱し、パルス定数を制御して温度制御を行いつつ、負のパルスを印加してプラズマ中のイオンを誘引、注入させる装置(特開2001−156013号公報)、(γ)マイクロ波等の高周波電力源等の外部電界を用いてプラズマを発生させ、高電圧パルスを印加してプラズマ中のイオンを誘引、注入させるプラズマイオン注入装置、(δ)外部電界を用いることなく高電圧パルスの印加により発生する電界のみで発生するプラズマ中のイオンを注入するプラズマイオン注入装置等が挙げられる。
【0120】
これらの中でも、処理操作が簡便であり、処理時間も大幅に短縮でき、連続使用に適していることから、(γ)又は(δ)のプラズマイオン注入装置を用いるのが好ましい。
前記(γ)及び(δ)のプラズマイオン注入装置を用いる方法については、国際公開WO2010/021326号公報に記載のものが挙げられる。
【0121】
前記(γ)及び(δ)のプラズマイオン注入装置では、プラズマを発生させるプラズマ発生手段を高電圧パルス電源によって兼用しているため、RFやマイクロ波等の高周波電力源等の特別の他の手段を要することなく、負の高電圧パルスを印加するだけで、プラズマを発生させ、高分子層の表面部に連続的にプラズマ中のイオンを注入し、表面部にイオン注入により改質された部分を有するケイ素系高分子層、すなわち中間屈折層が形成されたフィルムを量産することができる。
【0122】
イオンが注入されたことは、X線光電子分光分析(XPS)を用いて高分子層の表面から10nm付近の元素分析測定を行うことによって確認することができる。
【0123】
(透明導電層)
本発明に用いる透明導電層は、導電性を有する透明な薄膜層である。
透明導電層は、光学膜厚が、通常、10〜300nm、好ましくは10〜250nm、より好ましくは、50〜250nm、さらに好ましくは100〜200nmである。透明導電層の光学膜厚がこの範囲内であることで、光学特性に優れ、かつ薄い透明導電性積層体を得ることができる。
【0124】
透明導電層としては、電子部材や光学部材の透明導電層として従来公知のものを用いることができる。
透明導電層を構成する材料としては、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物等が挙げられる。具体的には、酸化スズ、アンチモンをドープした酸化スズ(ATO);フッ素をドープした酸化スズ(FTO)、酸化亜鉛、ガリウムをドープした酸化亜鉛(GZO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)、等の導電性金属酸化物;金、銀、クロム、ニッケル等の金属;これら金属と導電性金属酸化物との混合物;ヨウ化銅、硫化銅等の無機導電性物質;ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性材料;等が挙げられる。これらの中でも、導電性の観点から導電性金属酸化物が好ましく、レアメタルの使用量を抑え、環境に配慮した製品設計を行なう上では、酸化亜鉛、ガリウムをドープした酸化亜鉛(GZO)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)などの酸化亜鉛系導電性材料がより好ましく、耐久性と材料コストを鑑みて、ガリウムをドープした酸化亜鉛(GZO)がさらに好ましく、導電性を考慮すると、三酸化二ガリウムを1〜10%の範囲で添加した酸化亜鉛が特に好ましい。
透明導電層は、これらの材料からなる層が複数積層されてなるものであってもよい。
【0125】
透明導電層の形成方法としては、例えば、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、熱CVD法、プラズマCVD法等が挙げられる。これらの中でも、本発明においては、簡便に導電体層が形成できることから、スパッタリング法が好ましい。
【0126】
スパッタリング法は、真空槽内に放電ガス(アルゴン等)を導入し、ターゲットと基板との間に高周波電圧あるいは直流電圧を加えて放電ガスをプラズマ化し、該プラズマをターゲットに衝突させることでターゲット材料を飛ばし、基板に付着させて薄膜を得る方法である。ターゲットとしては、前記透明導電層を形成する材料からなるものが使用される。
【0127】
(透明導電性積層体)
本発明の透明導電性積層体は、前記基材の少なくとも一方の面に、直接又は1層以上の層を介して、基材側から順に、前記低屈折層、中間屈折層、及び透明導電層を積層してなるものである。
【0128】
本発明の透明導電性積層体は、これらの層以外の層を有していてもよい。かかる層としては、基材と低屈折層との間のアンダーコート層等が挙げられる。
アンダーコート層を設けることで、基材と低屈折層との密着性に優れる透明導電性積層体を容易に得ることができる。
【0129】
アンダーコート層を構成する材料としては、特に限定されず、公知のものが使用できる。例えば、ケイ素含有化合物;光重合性モノマー及び/又は光重合性プレポリマーからなる光重合性化合物、及び光重合開始剤を含む光重合性組成物;ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂(特にポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等とイソシアネート化合物との2液硬化型樹脂)、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等の樹脂類;アルキルチタネート;エチレンイミン;等が挙げられる。これらの材料は一種単独で、あるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0130】
アンダーコート層は、前記の材料を適当な溶剤に溶解又は分散してなるアンダーコート層形成用溶液を、基材の片面に塗付し、得られた塗膜を乾燥させ、所望により、エネルギー線を照射することより形成することができる。
【0131】
アンダーコート層形成用溶液を基材に塗付する方法としては、通常の湿式コーティング方法を用いることができる。例えばディッピング法、ロールコート、グラビアコート、ナイフコート、エアナイフコート、ロールナイフコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、グラビアオフセット法等が挙げられる。
【0132】
アンダーコート層形成用溶液の塗膜を乾燥する方法としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法が採用できる。
【0133】
照射されるエネルギー線としては、種々のエネルギー線発生装置から発生するエネルギー線が用いられる。例えば、紫外線は、通常は紫外線ランプから輻射される紫外線が用いられる。紫外線ランプとしては、通常波長300〜400nmの領域にスペクトル分布を有する紫外線を発光する、高圧水銀ランプ、ヒュ−ジョンHランプ、キセノンランプ等の紫外線ランプが用いられ、照射量は通常50〜3000mJ/cm
2が好ましい。
【0134】
アンダーコート層は、その厚みが、好ましくは、0.05〜20μm、より好ましくは、0.1〜10μm、さらに好ましくは0.5〜5μmの範囲である。
また、アンダーコート層の屈折率は、通常、1.4〜1.7、好ましくは1.4〜1.6である。アンダーコート層の屈折率が上記範囲内であれば、透明性に優れ、黄色味が抑えられ光学特性に優れる透明導電性積層体を容易に得ることができる。
【0135】
本発明の透明導電性積層体は、表面抵抗率が低い。例えば、表面抵抗率は、1000Ω/□以下が好ましく、100〜600Ω/□がより好ましい。かかる範囲内であることで、静電容量方式タッチパネル用に好適な透明導電性積層体を得ることができる。
【0136】
本発明の透明導電性積層体は耐湿熱性に優れる。このことは、本発明の透明導電性積層体を湿熱条件下に置いたときに、表面抵抗率の変化が小さいことから確認することができる。
すなわち、湿熱条件下に置かれる前の透明導電性積層体の表面抵抗率をR
0、60℃90%RH(相対湿度)で7日間保管した後の透明導電性積層体の表面抵抗率をR
1としたとき、下記式
【0138】
で示される表面抵抗率の上昇率Tは、本発明の透明導電性積層体においては小さくなる。例えば、Tは1.5未満が好ましく、1.0以上1.2未満がより好ましい。
透明導電性積層体の表面抵抗率は、公知の方法(例えば、四端子四探針方式の定電流印加法)により測定することができる。
【0139】
本発明の透明導電性積層体が耐湿熱性に優れることは、本発明の透明導電性積層体の製造に用いる、中間屈折層を形成した直後の積層体(透明導電層を設ける前の状態のもの)の水蒸気等のガスの透過率が、非常に小さいことからも確認することができる。
例えば、この積層体の水蒸気透過率は、40℃、相対湿度90%雰囲気下で、0.1g/m
2/day以下が好ましく、0.001〜0.05g/m
2/dayがより好ましい。
また、かかる特性を有する積層体を用いて透明導電性積層体を製造することから、本発明の透明導電性積層体もまた、水蒸気等のガスの透過率が小さいものである。例えば、本発明の透明導電性積層体の水蒸気透過率は、40℃、相対湿度90%雰囲気下で、0.1g/m
2/day以下が好ましく、0.001〜0.05g/m
2/dayがより好ましい。
水蒸気透過率は、公知のガス透過率測定装置を使用して測定することができる。
【0140】
本発明の透明導電性積層体は、透明性に優れる。このことは、本発明の透明導電性積層体の全光線透過率が高いことから確認することができる。例えば、全光線透過率は、80%以上が好ましく、80〜95%がより好ましく、85〜90%がさらに好ましい。
全光線透過率は、公知の可視光透過率測定装置を使用して測定することができる。
【0141】
本発明の透明導電性積層体は、黄色味が抑制された自然な色調を有する。このことは、本発明の透明導電性積層体の透過色相b*値の絶対値が小さいことから確認することができる。例えば、透過色相b*値は、−2.0〜+2.0が好ましく、−1.5〜+1.5がより好ましく、−1.0〜+1.0がさらに好ましい。
【0142】
本発明の透明導電性積層体は、上記の特性を有するため、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、タッチパネル等の画像表示装置等の電子デバイス又はモジュールに用いられる電極等の電子部材として好適である。
【実施例】
【0143】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
【0144】
酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在割合の測定方法、膜密度の測定方法、屈折率及び膜厚の測定方法、水蒸気透過率の測定方法、透明導電性積層体の表面抵抗率の測定方法、全光線透過率の測定方法、透明導電性積層体の透過色相b*値の測定方法、耐湿熱性の評価方法、及び光学特性の評価方法は以下の通りである。
【0145】
(酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在割合の測定)
X線光電子分光測定装置を用いて、下記に示す測定条件にて、中間屈折層(イオン注入されて得られた層)における酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在割合の測定を行った。
測定装置:「PHI Quantera SXM」アルバックファイ社製
X線源:AlKα
X線ビーム径:100μm
電力値:25W
電圧:15kV
取り出し角度:45°
真空度:5.0×10
−8Pa
【0146】
(膜密度の測定)
中間屈折層の膜密度は、下記に示す測定条件にてX線の反射率を測定して全反射臨界角度θcを求め、その値から算出した。
【0147】
測定装置と測定条件は以下の通りである。
測定装置:薄膜評価用試料水平型X線回折装置「SmartLab」株式会社リガク製
測定条件:
X線源;Cu−Kα1(波長:1.54059Å)
光学系;並行ビーム光学系
入射側スリット系;Ge(220)2結晶、高さ制限スリット5mm、入射スリット0.05mm
受光側スリット系;受光スリット 0.10mm、ソーラースリット 5°
検出器;シンチレーションカウンター
管電圧・管電流;45kV−200mA
走査軸;2θ/θ
走査モード;連続スキャン
走査範囲;0.1−3.0deg.
走査速度;1deg./min.
サンプリング間隔;0.002°/step
なお、原子数比(xi)は、X線光電子分光測定により得られた中間屈折層における酸素原子、窒素原子及びケイ素原子の存在割合を用いた。
【0148】
(屈折率及び膜厚の測定)
各層の屈折率及び膜厚は、分光エリプソメーターM−2000U(J.A.ウーラム・ジャパン社製)を用いて測定した。
【0149】
(水蒸気透過率の測定)
水蒸気透過率は、mocon社製、PERMATRAN−W3/33を用いて、相対湿度90%、温度40℃の条件で測定した。
【0150】
(透明導電性積層体の表面抵抗率の測定)
透明導電性積層体の表面抵抗率は、三菱化学社製の装置「LORESTA―GP MCP−T600」(プローブ:三菱化学アナリテック社製「PROBE TYPE ASP」)を用いて、相対湿度50%、温度23℃の条件下で測定した。
【0151】
(全光線透過率の測定)
透明導電性積層体の全光線透過率は、濁度計(日本電色工業社製、HAZE METER NDH5000)を用いて、JIS K 7631−1に準じて測定した。
【0152】
(透明導電性積層体の透過色相b*値の測定)
分光色差計(日本電色工業社製、Spectro Color Meter SQ2000)を用いて、JIS K 7105に準拠しつつ、透明導電性積層体の透過色相b*値(CIE1976L*a*b*表色系におけるb*軸の値)を測定した。
なお、b*値は、それぞれ下記式にて求められる値である。
【0153】
【数6】
【0154】
(Y及びZは、色差計で測定される試料のXYZ座標系における三刺激値の値であり、Yn及びZnは、完全拡散反射面での三刺激値の値である。)
【0155】
(1)耐湿熱性の評価
上記方法により、透明導電性積層体の表面抵抗率を測定し、初期値(R
0)を得た。次いで、60℃90%RH(相対湿度)で7日間保管した後に、同様に透明導電性積層体の表面抵抗率を測定し、湿熱条件後の値(R
1)を得た。下記式
【0156】
【数7】
【0157】
で示される表面抵抗率の上昇率Tを算出し、以下の基準で耐湿熱性を評価した。
◎・・・Tが、1.2未満
○・・・Tが、1.2以上1.5未満
×・・・Tが、1.5以上
【0158】
(2)光学特性の評価
上記方法により、全光線透過率と透過色相b*値を測定し、以下の基準で光学特性を評価した。
◎・・・全光線透過率が85%以上、かつ、透過色相b*値の絶対値が1.0以下
○・・・全光線透過率が80%以上85%未満、かつ、透過色相b*値の絶対値が1.0以下、又は全光線透過率が85%以上、かつ、透過色相b*値の絶対値が1.0超2.0以下
×・・・全光線透過率が80%未満、又は、透過色相b*値の絶対値が2.0超
【0159】
製造例1 アンダーコート層形成用溶液の調製
トリメトキシメチルシラン(AZMAX社製)5.78g(42.5mmol)、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(信越化学社製、KBM−503)1.77g(7.5mmol)を酢酸エチル50mlに溶解させ、蒸留水25mlを加えて撹拌した。次いで、触媒としてリン酸数滴を加え、そのまま室温で18時間撹拌した。
この溶液に、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて中和した後、水層を除去し、得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ別した後、ろ液を減圧濃縮し、n−ヘキサンを用いて再沈殿法により精製した。
精製物を、酢酸エチルに溶解させた後、光重合性開始剤として、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキシド(BASF社製、Lucirin(登録商標)TPO)を固形分に対し1質量%、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトンを固形分に対し2wt%添加してアンダーコート層形成用溶液を得た。
【0160】
(実施例1)
ポリエステルフィルム(東洋紡社製、コスモシャインPETA4300、厚み100μm)上に製造例1で得られたアンダーコート層形成用溶液を塗布し、120℃で1分間加熱乾燥した後、UV光照射ラインを用いてUV光照射を行ない(高圧水銀灯、ライン速度、20m/min、積算光量100mJ、ピーク強度1.466W、パス回数2回)、アンダーコート層(厚み1100nm、屈折率1.49、光学膜厚1639nm)を形成した。
【0161】
アンダーコート層上に、ペルヒドロポリシラザン溶液(アクアミカNL110A−20)を塗布し、120℃で1分間加熱乾燥して、ケイ素系高分子層(厚み150nm、屈折率1.45、光学膜厚218nm)を形成した。
次に、プラズマイオン注入装置を用いて、このケイ素系高分子層の表面に、Arをプラズマイオン注入して、ケイ素系高分子層の一部を改質することにより、中間屈折層(表層部)及び低屈折層(非改質部)を形成した。得られた低屈折層は、厚み120nm、屈折率1.45、光学膜厚170nm、中間屈折層は、膜密度2.76g/cm
3、厚み30nm、屈折率1.59、光学膜厚48nmであった。
【0162】
用いたプラズマイオン注入装置及びプラズマオン注入条件は以下の通りである。
(プラズマイオン注入装置)
RF電源:日本電子社製、型番号「RF」56000
高電圧パルス電源:栗田製作所社製、「PV−3−HSHV−0835」
(プラズマイオン注入条件)
プラズマ生成ガス:Ar
ガス流量:100sccm
Duty比:0.5%
繰り返し周波数:1000Hz
印加電圧:−6kV
RF電源:周波数 13.56MHz、印加電力 1000W
チャンバー内圧:0.2Pa
パルス幅:5μsec
処理時間(イオン注入時間):5分間
搬送速度:0.2m/min
【0163】
中間屈折層上に、DCマグネトロンスパッタ法にて、Ga
2O
3を5.7質量%含有する酸化亜鉛ターゲット材を用いて、透明導電層(厚み92nm、屈折率1.81、光学膜厚167nm)を形成し、透明導電性積層体1を作製した。
透明導電性積層体1の特性及び評価結果を第1表に示す。
【0164】
以下に示す条件で透明導電層を形成した。
基板温度:室温
DC出力:500W
キャリアガス:アルゴン
【0165】
なお、透明導電層を設けない状態で、水蒸気透過率は0.01g/m
2/day以下であった。
【0166】
(実施例2)
実施例1において、厚み110nm、屈折率1.81、光学膜厚199nmの透明導電層を形成したことを除き、実施例1と同様の方法により、透明導電性積層体2を作製した。透明導電性積層体2の特性及び評価結果を第1表に示す。
【0167】
(実施例3)
実施例1において、イオン注入における印加電圧を−10kVとして、厚み100nm、屈折率1.45、光学膜厚145nmの低屈折層、膜密度3.32g/cm
3、厚み35nm、屈折率1.66、光学膜厚58nmの中間屈折層を形成したことを除き、実施例1と同様の方法により、透明導電性積層体3を作製した。透明導電性積層体3の特性及び評価結果を第1表に示す。
なお、透明導電層を設けない状態で、水蒸気透過率は0.01g/m
2/day以下であった。
【0168】
(実施例4)
実施例3において、厚み110nm、屈折率1.81、光学膜厚199nmの透明導電層を形成したことを除き、実施例3と同様の方法により、透明導電性積層体4を作製した。透明導電性積層体4の特性及び評価結果を第1表に示す。
【0169】
(実施例5)
実施例1において、イオン注入における印加電圧を−15kVとして、厚み100nm、屈折率1.45、光学膜厚145nmの低屈折層、膜密度4.45g/cm
3、厚み53nm、屈折率1.78、光学膜厚94nmの中間屈折層を形成したことを除き、実施例1と同様の方法により、透明導電性積層体5を作製した。透明導電性積層体5の特性及び評価結果を第1表に示す。
【0170】
(実施例6)
実施例1において、中間屈折層上に、DCマグネトロンスパッタ法にて、SnO
2を10質量%含有する酸化インジウムターゲット材(住友金属鉱山社製)を用いて、透明導電層(厚み112nm、屈折率2.00、光学膜厚224nm)を形成したことを除き、実施例1と同様の方法により、透明導電性積層体6を作製した。透明導電性積層体6の特性及び評価結果を第1表に示す。
【0171】
実施例6における透明導電層の形成条件は以下の通りである。
基板温度:室温
DC出力:500W
キャリアガス:アルゴン+酸素(酸素流量比2%)
【0172】
(比較例1)
実施例1において、プラズマイオン注入を行なわなかったことを除き、実施例1と同様の方法により、透明導電性積層体7を作製した。透明導電性積層体7の特性及び評価結果を第1表に示す。なお、比較例1においては、ケイ素系高分子層の透明導電層と接する面からアンダーコート層側に向かって30nmの部分(他の例の中間屈折層に対応する部分)を、形式的に表層部(中間屈折層)とし、他の部分を形式的に低屈折層として判断し、表1に、中間屈折層(膜密度2.2g/cm
3、厚み30nm、屈折率1.45、光学膜厚44nm)、低屈折層(屈折率1.45、光学膜厚218nm)として記載した。
【0173】
【表1】
【0174】
第1表より以下のことが分かる。
実施例1〜6の透明導電性積層体1〜6は、いずれも耐湿熱性に優れ、かつ全光線透過率が高く、透過色相b*値の絶対値が低く、黄色味が抑制されており、光学特性に優れている。
一方、比較例1の透明導電性積層体7は、中間屈折層の膜密度及び屈折率が小さすぎるものである。このため、透明導電性積層体7は、耐湿熱性に劣っており、また、全光線透過率も80%と低い値である。