(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6304734
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】電力制御回路および温度補償方法
(51)【国際特許分類】
H03G 3/30 20060101AFI20180326BHJP
H04B 1/04 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
H03G3/30 E
H04B1/04 E
H03G3/30 B
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-84165(P2013-84165)
(22)【出願日】2013年4月12日
(65)【公開番号】特開2014-207570(P2014-207570A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】599161890
【氏名又は名称】NECネットワーク・センサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩壁 冬樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124501
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 誠人
(72)【発明者】
【氏名】黒田 泰和
【審査官】
▲高▼橋 義昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開平01−007708(JP,A)
【文献】
特開平04−175014(JP,A)
【文献】
特開昭61−073406(JP,A)
【文献】
特開2003−273676(JP,A)
【文献】
特開平06−061874(JP,A)
【文献】
特開2005−252847(JP,A)
【文献】
特開平09−186538(JP,A)
【文献】
特開平04−316205(JP,A)
【文献】
特開2001−244827(JP,A)
【文献】
特開平05−029968(JP,A)
【文献】
特開平09−121132(JP,A)
【文献】
特開昭62−151006(JP,A)
【文献】
特開平02−217011(JP,A)
【文献】
特開平05−102863(JP,A)
【文献】
特開平07−336243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03G 3/30
H04B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力増幅器の出力電力の一部を入力し、検波電圧を出力する出力電力検出回路と、
前記検波電圧に応じて、前記電力増幅器の出力電力が目標値になるように前記電力増幅器に入力される電力を制御する処理回路と、
前記電力増幅器の出力電力の目標値と、前記出力電力検出回路の温度特性とにもとづいて予め決定された減衰量で、前記出力電力検出回路に入力される電力を減衰する固定減衰器と、
前記出力電力検出回路に入力する前記電力増幅器の出力電力の一部を取り出す方向性結合器とを含み、
前記方向性結合器と前記出力電力検出回路との間に前記減衰器のみが配置されている
ことを特徴とする電力制御回路。
【請求項2】
前記固定減衰器は、出力電力検出回路に入力される電力が、検波電圧の温度変動を最も小さくすると判断された電力量になるように減衰量が決定されている
請求項1に記載の電力制御回路。
【請求項3】
前記処理回路が、検波電圧に応じて電力増幅器に入力される電力を減衰する
請求項1または請求項2に記載の電力制御回路。
【請求項4】
前記処理回路が、検波電圧に応じて電力増幅器に入力される信号の位相を制御する
請求項1または請求項2に記載の電力制御回路。
【請求項5】
入力された電力にもとづいて検波電圧を出力する検波素子による前記検波電圧にもとづいて出力電力を一定にする電力制御方法において、
前記検波素子に入力する電力を取り出す方向性結合器と前記検波素子との間に固定減衰器のみを配置し、
前記固定減衰器が、前記出力電力の目標値と、前記検波素子の温度特性とにもとづいて予め決定された減衰量で、前記検波素子に入力される電力を減衰する
ことを特徴とする温度補償方法。
【請求項6】
前記固定減衰器が、検波素子に入力される電力が、検波電圧の温度変動を最も小さくすると判断された電力量になるように減衰量が決定されている
請求項5に記載の温度補償方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ALC回路等における温度変動を保障する電力制御回路および温度補償方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波増幅器(以下、アンプともいう。)は、周囲温度変動や、アンプ自体の発熱、つまりアンプ自体の温度変動や、入力電力の変動によって、出力電力が変動しないことが望ましい。その周囲温度変動、アンプ自体の温度変動、入力電力の変動等に対して出力電力を補償し安定化する技術として、ALC(Automatic Level Control)回路がある(例えば、特許文献1、2参照。)。特許文献1、2には、一般的なALC回路が記載されている。ALC回路は、出力電力を検出し、アンプに対して前置されている可変減衰器の減衰量を変化させ、出力電力を一定に保つ回路である。
【0003】
特許文献1、2に記載されたALC回路では、周囲温度変動等による特性変化を保障することはできるが、出力電力を検出する回路(以下、出力電力検出回路という。)の温度変化による特性変化を補償することができない可能性がある。つまり、ALC回路では、出力電力検出回路の温度が変化した場合、出力電力を一定に保てなくなる可能性がある。従って、ALC回路において、出力電力をより安定化させるためには、出力電力検出回路の温度を補償する回路が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−019310号公報
【特許文献2】特開平02−217011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
出力電力検出回路の温度を補償するためには、例えば、温度センサを用意し、アンプの温度を計測し、そのデータに基づき可変減衰器の制御信号に補正を加えるなど、複雑な制御が必要となる。つまり、温度センサや当該複雑な制御を行うための回路等が必要となる。従って、出力電力検出回路の温度を補償する場合、ALC回路における部品点数が増え、回路構成が複雑になる可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、複雑な制御を必要とせず、また回路の部品点数を増やすことなく、出力電力検出回路の温度特性変化を低減させることができる電力制御回路および温度補償方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による電力制御回路は、電力増幅器の出力電力の一部を入力し、検波電圧を出力する出力電力検出回路と、検波電圧に応じて、電力増幅器の出力電力が目標値になるように電力増幅器に入力される電力を制御する処理回路と、電力増幅器の出力電力の目標値と、出力電力検出回路の温度特性とにもとづいて
予め決定された減衰量で、出力電力検出回路に入力される電力を減衰する
固定減衰器と、出力電力検出回路に入力する電力増幅器の出力電力の一部を取り出す方向性結合器とを含み、方向性結合器と出力電力検出回路との間に減衰器のみが配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明による温度補償方法は、入力された電力にもとづいて検波電圧を出力する検波素子による検波電圧にもとづいて出力電力を一定にする電力制御方法において、検波素子に入力する電力を取り出す方向性結合器と検波素子との間に
固定減衰器のみを配置し、該
固定減衰器が、出力電力の目標値と、検波素子の温度特性とにもとづいて
予め決定された減衰量で、検波素子に入力される電力を減衰することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複雑な制御を必要とせず、また回路の部品点数を増やすことなく、出力電力検出回路の温度特性変化を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明による電力制御回路の第1の実施形態の構成を示す説明図である。
【
図2】PINダイオードの温度特性の一例を示す説明図である。
【
図3】本発明による電力制御回路の第1の実施形態の他の構成を示す説明図である。
【
図4】本発明による電力制御回路の第1の実施形態の他の構成を示す説明図である。
【
図5】本発明による電力制御回路の最小構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態1.
以下、本発明の第1の実施形態を図面を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明による電力制御回路の第1の実施形態の構成を示す説明図である。
【0013】
図1に示すように、本発明による電力制御回路は、ALC回路を含む。具体的には、電力制御回路は、可変減衰器11と、増幅器(アンプ)12と、方向性結合器13と、検波ダイオード15と、可変減衰器制御回路(以下、ALC処理回路という。)16とを含む。さらに、電力制御回路は、固定減衰器14を含む。
【0014】
可変減衰器11は、ALC処理回路16が指定する減衰量に応じて、アンプ12に入力される電力を減衰する。
【0015】
アンプ12は、アンプ12に対して前置されている可変減衰器11から入力した電力を増幅し、出力する。
【0016】
方向性結合器13は、アンプ12の出力電力、つまりアンプ12によって増幅された電力を分波する。
【0017】
固定減衰器14は、方向性結合器13が分派した電力を入力し、減衰する。
【0018】
検波素子としての検波ダイオード15は、例えば、PIN(p−intrinsic−n)ダイオードである。検波ダイオード15は、本実施形態における出力電力検出回路である。検波ダイオード15は、固定減衰器14によって減衰された電力を入力し、検波電圧に変換する。検波ダイオード15は、ALC処理回路16に検波電圧を出力する。
【0019】
ALC処理回路16は、入力した検波電圧を基準電圧と比較する。ALC処理回路16は、比較結果に応じて、可変減衰器11の減衰量を制御し、アンプ12の出力電力を安定化させる。すなわち、ALC処理回路16は、アンプ12の出力電力が予め定められた目標値となるように、可変減衰器11の減衰量を制御する。
【0021】
図2は、PINダイオードの温度特性の一例を示す説明図である。具体的には、PINダイオードの温度が+50℃、+25℃、−20℃であるときの、PINダイオードの入力電力と検波電圧との対応を示すグラフである。
【0022】
図2に示すように、PINダイオードに入力される電力がA[dBm]である場合には、検波電圧は温度変動しないことが分かる。従って、検波ダイオード15がPINダイオードである場合、つまり検波ダイオード15の入力電力と検波電圧とが
図2に示す温度特性を有する場合には、検波ダイオード15の入力電力をA[dBm]となるように最適化することにより、検波電圧の温度変動を無くすことができる。
【0023】
逆に、検波ダイオード15の入力電力が
図2に示すB[dBm]である場合には、検波電圧の温度変動が発生する。仮に、検波ダイオード15の入力電力をB[dBm]にした場合、B[dBm]は変化していないにもかかわらず、検波電圧が温度により変動する。そのため、ALC処理回路16は、可変減衰器11の減衰量を変えようと制御する可能性がある。その結果、アンプ11の出力電力が変化する可能性がある。
【0024】
そこで、本実施形態では、固定減衰器14が、検波ダイオード15の入力電力を、
図2に示すA[dBm]となるように、減衰する。つまり、減衰後の電力がA[dBm]となるような減衰量を有する固定減衰器14を、検波ダイオード15に対して前置する。固定減衰器14の減衰量は、アンプ12の出力電力の目標値と、
図2に示す検波ダイオード15の温度特性とにもとづいて決定すればよい。
【0025】
それにより、検波ダイオード15の入力電力を
図2に示すA[dBm]にすることができ、検波電圧の温度変動を無くすことが可能となる。よって、ALC処理回路16に入力さる検波電圧が安定化される。従って、ALC処理回路16は、可変減衰器11の減衰量を正確に調整することができ、アンプ12の出力電力が一定になる。
【0026】
以上に説明したように、本実施形態では、所定の減衰量を有する固定減衰器14を検波ダイオード15に対して前置し、検波ダイオード15に入力される電力を最適化する。それにより、検波ダイオード15における、検波電圧の温度変動を低減することができる。例えば、検波ダイオード15の入力電力を、検波電圧が温度変動しない電力量(例えば、
図2に示すA[dBm])に最適化すれば、検波電圧の温度変動を無くすことができる。従って、アンプ12の出力電力の安定化を図ることができる。
【0027】
また、固定減衰器14を検波ダイオード15に対して前置するだけでよいので、温度センサなどの部品や、複雑な制御を必要としない。従って、複雑な制御を必要とせず、また部品点数を増やすことなく、出力電力検出回路の温度特性変化を低減することができる。
【0028】
なお、本実施形態では、検波ダイオード15の検波電圧をALC処理回路16に入力する場合を例にしたが、
図3に示すような、検波ダイオード15の検波電圧を処理する位相処理回路17を含む回路にも本発明を適用することができる。
図3は、本発明による電力制御回路の第1の実施形態の他の構成を示す説明図である。
図3に示す回路は、ALC処理回路16の代わりに位相処理回路17が配置されている。また、可変減衰器11の代わりに可変移相器18が配置されている。
図3に示す回路においても同様に、検波ダイオード15に入力される電力が最適化されるため、温度変動による出力電力の誤差を低減することが可能である。
【0029】
また、
図4に示すように、ALC処理回路16を、検波ダイオード15の検波電圧を入力とするAGC(Automatic Gain Control)処理回路19に置き換えた、高周波アンプのAGC回路にも、本発明を適用することができる。
図4は、本発明による電力制御回路の第1の実施形態の他の構成を示す説明図である。
図4に示すAGC回路においても同様に、検波ダイオード15に入力される電力が最適化されるため、温度変動による出力電力の誤差を低減することが可能である。
【0030】
図5は、本発明による電力制御回路の最小構成を示すブロック図である。
図5に示すように、電力制御回路は、電力増幅器1(
図1に示すアンプ12に相当。)の出力電力の一部を入力し、検波電圧を出力する出力電力検出回路2(
図1に示す検波ダイオード15に相当。)と、検波電圧に応じて、電力増幅器1の出力電力が目標値になるように電力増幅器1に入力される電力を制御する処理回路3(
図1に示す可変減衰器11およびALC処理回路16に相当。)と、電力増幅器1の出力電力の目標値と、出力電力検出回路2の温度特性とにもとづいて決定された減衰量で、出力電力検出回路2に入力される電力を減衰する減衰器4(
図1に示す固定減衰器14に相当。)とを含む。
【0031】
そのような構成によれば出力電力検出回路における、検波電圧の温度変動を低減すことができ、アンプの出力電力の安定化を図ることができる。また、減衰器を出力電力検出回路に対して前置するだけでよいので、温度センサなどの部品や、複雑な制御を必要としない。従って、複雑な制御を必要とせず、また部品点数を増やすことなく、出力電力検出回路の温度特性変化を低減することができる。
【0032】
上記の実施形態には、以下のような電力制御回路も開示されている。
【0033】
(1)減衰器4は、出力電力検出回路2に入力される電力が、検波電圧の温度変動を最も小さくすると判断された電力量になるように、出力電力検出回路2に入力される電力を減衰する電力制御回路。
【0034】
そのような構成によれば、検波電圧の変動をより確実に小さくすることができる。また、出力電力検出回路の入力電力を、検波電圧が温度変動しない電力量(例えば、
図2に示すA[dBm])にすることにより、検波電圧の温度変動を無くすことが可能となる。
【0035】
(2)処理回路3が、検波電圧に応じて電力増幅器1に入力される電力を減衰する電力制御回路。
【0036】
(3)処理回路3(
図4に示す可変減衰器11およびAGC処理回路19に相当。)が、検波電圧に応じて電力増幅器1の利得を制御する電力制御回路。
【0037】
(4)処理回路3(
図3に示す可変移相器18および位相処理回路17に相当。)が、検波電圧に応じて電力増幅器1に入力される信号の位相を制御する電力制御回路。
【0038】
上記の実施形態には、以下のような減衰器(温度補償回路)も開示されている。
【0039】
(5)電力増幅器1の出力電力の一部を入力し、検波電圧を出力する出力電力検出回路2と、検波電圧に応じて、電力増幅器1の出力電力が目標値になるように電力増幅器1に入力される電力を制御する処理回路3とを含む電力制御回路において、電力増幅器1の出力電力の目標値と、出力電力検出回路2の温度特性とにもとづいて決定された減衰量で、出力電力検出回路2に入力される電力を減衰する温度補償回路。
【0040】
そのような構成によれば、複雑な制御を必要とせず、また部品点数を増やすことなく、電力制御回路における出力電力検出回路の温度特性変化を低減することができる。
【0041】
(6)出力電力検出回路2に入力される電力が、検波電圧の温度変動を最も小さくすると判断された電力量になるように、出力電力検出回路2に入力される電力を減衰する温度補償回路。
【0042】
そのような構成によれば、検波電圧の変動をより確実に小さくすることができる。また、出力電力検出回路の入力電力を、検波電圧が温度変動しない電力量(例えば、
図2に示すA[dBm])にすることにより、検波電圧の温度変動を無くすことが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1 電力増幅器
2 出力電力検出回路
3 処理回路
4 減衰器
10 変減衰器
11 可変減衰器
12 増幅器(アンプ)
13 方向性結合器
14 固定減衰器
15 検波ダイオード
16 ALC処理回路
17 位相処理回路
18 可変移相器
19 AGC処理回路