(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記紫外線硬化型側鎖結晶性ポリマーは、側鎖結晶性ポリマーに紫外線硬化性官能基を有する化合物を反応させることによって得られる、請求項1〜3のいずれかに記載のインプリント用レジスト材。
前記側鎖結晶性ポリマーは、少なくとも炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートおよびヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレートを重合させることによって得られる共重合体からなる、請求項4または5に記載のインプリント用レジスト材。
前記側鎖結晶性ポリマーは、前記炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートおよび前記ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレートとともに、炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートをさらに重合させることによって得られる共重合体からなる、請求項6に記載のインプリント用レジスト材。
前記紫外線硬化性官能基を有する化合物は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するイソシアナート化合物である、請求項4〜7のいずれかに記載のインプリント用レジスト材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、インプリント条件を緩和でき、かつモールドのパターン転写精度に優れるインプリント用レジスト材およびそれを用いた微細構造の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)紫外線硬化型側鎖結晶性ポリマーからなる、インプリント用レジスト材。
(2)前記紫外線硬化型側鎖結晶性ポリマーは、紫外線硬化性官能基と、炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する側鎖結晶性部位と、を有し、融点未満の温度で結晶化し、かつ前記融点以上の温度で流動性を示し、紫外線照射によって紫外線硬化する、前記(1)に記載のインプリント用レジスト材。
(3)前記紫外線硬化性官能基は、(メタ)アクリロイルオキシ基である、前記(2)に記載のインプリント用レジスト材。
(4)前記紫外線硬化型側鎖結晶性ポリマーは、側鎖結晶性ポリマーに紫外線硬化性官能基を有する化合物を反応させることによって得られる、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のインプリント用レジスト材。
(5)前記側鎖結晶性ポリマーの含有量は、前記紫外線硬化性官能基を有する化合物の含有量よりも多い、前記(4)に記載のインプリント用レジスト材。
(6)前記側鎖結晶性ポリマーは、少なくとも炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートおよびヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレートを重合させることによって得られる共重合体からなる、前記(4)または(5)に記載のインプリント用レジスト材。
(7)前記側鎖結晶性ポリマーは、前記炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートおよび前記ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレートとともに、炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートをさらに重合させることによって得られる共重合体からなる、前記(6)に記載のインプリント用レジスト材。
(8)前記紫外線硬化性官能基を有する化合物は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するイソシアナート化合物である、前記(4)〜(7)のいずれかに記載のインプリント用レジスト材。
(9)シート状である、前記(1)〜(8)のいずれかに記載のインプリント用レジスト材。
(10)前記(1)〜(9)のいずれかに記載のインプリント用レジスト材からなる被膜を基板の表面に積層する工程と、前記被膜の温度を前記紫外線硬化型側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度にした状態で、前記被膜をモールドによって加圧する工程と、前記被膜に紫外線を照射して前記被膜を紫外線硬化させるとともに、前記被膜の温度を前記紫外線硬化型側鎖結晶性ポリマーの前記融点未満の温度にした状態で、前記モールドを前記被膜から剥離して前記モールドの微細パターンを前記被膜に転写する工程と、を備える、微細構造の製造方法。
(11)前記微細パターンは、ナノないしマイクロメートルスケールである、前記(10)に記載の微細構造の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、比較的緩和なインプリント条件でモールドのパターン転写精度に優れるインプリントが可能になるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<インプリント用レジスト材>
本発明のインプリント用レジスト材(以下、「レジスト材」と言うことがある。)は、紫外線(Ultra Violet:以下、「UV」と言うことがある。)の照射によって硬化するUV硬化型側鎖結晶性ポリマーからなる。UV硬化型側鎖結晶性ポリマーは、UV硬化性に加えて、温度変化に対応して結晶状態および流動状態を可逆的に起こす感温性を有する。
【0011】
具体的に説明すると、UV硬化型側鎖結晶性ポリマーは、融点を有する。融点とは、ある平衡プロセスにより、最初は秩序ある配列に整合されていた重合体の特定部分が無秩序状態になる温度であり、示差熱走査熱量計(DSC)によって10℃/分の測定条件で測定して得られる値のことを意味するものとする。
【0012】
UV硬化型側鎖結晶性ポリマーは、上述した融点未満の温度で結晶化し、かつ融点以上の温度では相転移して流動性を示す。このようなUV硬化型側鎖結晶性ポリマーからなる本発明のレジスト材に対するインプリントは、UV硬化型側鎖結晶性ポリマーが流動性を示す融点以上の温度で行う。したがって、UV硬化型側鎖結晶性ポリマーの融点を調整すれば、インプリント条件を低温および低圧にすることができ、結果として、インプリント条件を比較的緩和にすることが可能となる。このような観点から、UV硬化型側鎖結晶性ポリマーの融点としては、40〜60℃であるのが好ましく、45〜55℃であるのがより好ましい。
【0013】
また、UV硬化型側鎖結晶性ポリマーにおけるUV硬化性は、後述するUV硬化性官能基に起因するものである。このUV硬化性官能基量を調整すると、UV硬化時の体積収縮を抑制することが可能となる。さらに、モールドの剥離は、UV硬化型側鎖結晶性ポリマーが結晶化する融点未満の温度で行うが、結晶状態のUV硬化型側鎖結晶性ポリマーは、その側鎖に位置している長鎖アルキル基に起因する高い離型性を有することから、モールドの剥離性にも優れる。そして、これらの効果が相まって、モールドのパターン転写精度に優れるという効果が得られる。
【0014】
なお、上述した融点は、UV硬化型側鎖結晶性ポリマーの組成等を変えることによって調整することができる。また、融点は、UV照射前後で変化しない傾向にある。すなわち、UV硬化後の融点は、UV硬化前の融点と実質的に同じ値になる傾向がある。さらに、UV硬化型側鎖結晶性ポリマーは、UV硬化後においても融点未満の温度で結晶化し、かつ融点以上の温度で流動性を示す。つまり、UV硬化型側鎖結晶性ポリマーは、UV照射前後のいずれの状態においても、温度変化に対応して結晶状態および流動状態を可逆的に起こすことができる。
【0015】
このようなUV硬化型側鎖結晶性ポリマーは、側鎖結晶性ポリマーにUV硬化性官能基を有する化合物を反応させることによって得ることができる。側鎖結晶性ポリマーとしては、例えば、少なくとも炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートおよびヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレートを重合させることによって得られる共重合体、炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートをさらに重合させることによって得られる共重合体等が挙げられる。
【0016】
炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートは、その炭素数16以上の直鎖状アルキル基がUV硬化型側鎖結晶性ポリマーにおける側鎖結晶性部位として機能する。すなわち、UV硬化型側鎖結晶性ポリマーは、側鎖に炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する櫛形のポリマーであり、この側鎖が分子間力等によって秩序ある配列に整合されることにより結晶化するのである。このような炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばセチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の炭素数16〜22の線状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレートは、後述するUV硬化性官能基を有する化合物と反応するものであり、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0019】
上述した各モノマーは、例えば炭素数16以上の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレートを20〜99重量部、炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを0〜70重量部、ヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレートを1〜20重量部とする割合で重合させるのが好ましい。
【0020】
重合方法としては、特に限定されるものではなく、例えば溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が採用可能である。溶液重合法を採用する場合には、上述した各モノマーを溶剤に混合し、重合開始剤を加えて40〜90℃程度で2〜10時間程度攪拌すればよい。
【0021】
側鎖結晶性ポリマーの重量平均分子量としては、100,000以上が好ましく、400,000〜800,000がより好ましい。重量平均分子量は、側鎖結晶性ポリマーをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0022】
一方、UV硬化性官能基を有する化合物においてUV硬化性官能基とは、UV照射によって硬化する官能基のことを意味するものとする。UV硬化性官能基としては、例えば(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、グリシジル基等が挙げられ、例示したこれらの官能基のうち(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。
【0023】
また、UV硬化性官能基を有する化合物としては、上述したヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレートと反応する上で、イソシアナート化合物が好ましく、例えば下記式(I)で表される2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート、下記式(II)で表される2−アクリロイルオキシエチルイソシアナート、下記式(III)で表される1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアナート等が挙げられる。
【0025】
また、式(I)〜(III)以外の他のUV硬化性官能基を有するイソシアナート化合物としては、例えば2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアナート、2−(メタ)アクリロイルオキシブチルイソシアナート、(メタ)アクリロイルイソシアナート、1−(4−ビニルフェニル)−1−メチルエチルイソシアナート等が挙げられ、例示したこれらのイソシアナート化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0026】
側鎖結晶性ポリマーとUV硬化性官能基を有する化合物との反応は、両者を所定の割合で混合した後、酸化防止剤および触媒等を必要に応じて加えて窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下とし、40〜80℃程度で1〜6時間程度攪拌して行うのが好ましい。
【0027】
両者の混合割合としては、例えば側鎖結晶性ポリマー100重量部に対して、UV硬化性官能基を有する化合物を1〜180重量部とするのが好ましく、5〜50重量部とするのがより好ましく、5〜20重量部とするのがさらに好ましい。また、側鎖結晶性ポリマーの含有量は、UV硬化性官能基を有する化合物の含有量よりも多いのが好ましい。
【0028】
UV硬化性官能基の硬化には、光重合開始剤を用いる。光重合開始剤としては、UV硬化性官能基の組成に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。また、光重合開始剤は、市販品を用いることができる。市販の光重合開始剤としては、例えばいずれもチバ・ジャパン社製の「IRGACURE 184」、「IRGACURE 500」等が挙げられる。
【0029】
得られるUV硬化型側鎖結晶性ポリマーの重量平均分子量としては、100,000以上が好ましく、600,000〜800,000がより好ましい。重量平均分子量は、UV硬化型側鎖結晶性ポリマーをGPCによって測定し、得られた測定値をポリスチレン換算した値である。
【0030】
UV硬化型側鎖結晶性ポリマーには、例えば老化防止剤、架橋剤等の各種の添加剤を添加することができる。架橋剤を添加する場合には、架橋剤と架橋反応する架橋成分として、極性モノマーをUV硬化型側鎖結晶性ポリマーに共重合させるのが好ましい。極性モノマーとしては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基を有するエチレン不飽和単量体等が挙げられ、これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
このようなUV硬化型側鎖結晶性ポリマーからなる本発明のレジスト材は、シート状であるのが好ましい。これにより、液状レジスト材による上述した問題を解消することができる。すなわち、例えば押し出し成形、カレンダー加工等によってシート状に成形したUV硬化型側鎖結晶性ポリマーからなるレジスト材は、均一な厚みを有することから、ローラーインプリントのような均一に塗布し難い問題を解消することができる。また、シート状のレジスト材によれば、被膜硬化時に発生するアウトガス量を液状レジスト材よりも著しく少なくすることができる。
【0032】
シート状のレジスト材の厚さとしては、0.01〜1000μm程度であり、0.01〜500μmが好ましい。
【0033】
<微細構造の製造方法>
次に、本発明の一実施形態に係る微細構造の製造方法について、上述した本発明のレジスト材を用いる場合を例にとって、
図1を参照して詳細に説明する。
【0034】
本実施形態では、
図1(a)に示すように、まず、上述した本発明のレジスト材からなる被膜1を、基板2の表面21に積層する。被膜1の積層は、シート状のレジスト材を基板2の表面21に積層することによって行うのが好ましい。シート状のレジスト材は、上述した押し出し成形等によって予めシート状に成形したものであってもよい。また、UV硬化型側鎖結晶性ポリマーに所定の溶剤を加えて塗工液を得、この塗工液を基板2の表面21に塗工し乾燥させることによってシート状に成形したものでもよい。塗工手段としては、例えばアプリケーター等が挙げられる。被膜1の厚さとしては、0.01〜1000μm程度であり、0.01〜500μmが好ましい。
【0035】
一方、基板2の構成材料としては、例えばシリコン、石英ガラス等の他、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンポリプロピレン共重合体、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂が挙げられる。基板2の構成材料は、光学特性に優れるものが好ましい。
【0036】
また、基板2はフレキシブル性を有するのが好ましく、その厚さとしては、50〜300μm程度であり、50〜150μmが好ましい。さらに、基板2の表面21には、表面処理を施すことができる。表面処理としては、例えばコロナ処理等が挙げられる。
【0037】
被膜1を基板2の表面21に積層した後、
図1(b)に示すように、被膜1の上方にモールド3を配置する。モールド3は、例えば石英ガラス等を構成材料とし、UV透過性を有するのが好ましい。また、モールド3は、その微細パターン31が被膜1と対向するように配置する。微細パターン31は、ナノないしマイクロメートルスケールであるのが好ましい。
【0038】
次に、モールド3を矢印A方向に動かして、
図1(c)に示すように、被膜1をモールド3によって加圧する。加圧は、被膜1の温度をUV硬化型側鎖結晶性ポリマーの融点以上の温度にした状態で行う。これにより、UV硬化型側鎖結晶性ポリマーが流動状態になることから、被膜1を微細パターン31に沿って変形させることが可能となる。被膜1の温度としては、インプリント条件を緩和にする観点から、UV硬化型側鎖結晶性ポリマーの融点+30℃〜融点+100℃の温度が好ましい。被膜1の温度調整は、例えばヒーター等の加熱手段によって行うことができる。その他の加圧条件としては、圧力が9〜11MPa程度であり、加圧時間が60〜300秒程度であるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
次に、被膜1にUVを照射して被膜1をUV硬化させる。UVの照射は、モールド3で加圧されている状態の被膜1に対して行う。UVの照射方向は、被膜1にUVを照射可能な限り、特に限定されない。例えば、基板2がUV透過性を有する場合には、基板2の裏面側から被膜1にUVを照射することができる。また、モールド3がUV透過性を有する場合には、モールド3を介して被膜1にUVを照射することができる。
【0040】
次に、
図1(d)に示すように、モールド3を矢印B方向に動かして、モールド3を被膜1から剥離する。剥離は、被膜1の温度をUV硬化型側鎖結晶性ポリマーの融点未満の温度にした状態で行う。被膜1の温度調整は、例えばファン等の冷却手段によって行うことができる。また、剥離は、モールド3および被膜1を相対的に遠ざければよいため、例えばモールド3から被膜1を基板2とともに剥離してもよい。
【0041】
モールド3を被膜1から剥離すると、上述した理由より、寸法精度よく微細パターン31が転写された硬化被膜11と、基板2とからなる微細構造4が得られる。硬化被膜11の厚さとしては、0.01〜1000μm程度であり、0.01〜500μmであるのが好ましい。
【0042】
得られた微細構造4は、例えば光学用途等に使用することができる。また、微細構造4は、その残膜41を、例えば酸素リアクティブイオンエッチング等によって除去し、硬化被膜11のうち互いに隣接する凸部間から基板2の表面21を露出させた後、硬化被膜11をマスクとしてエッチング処理するか、アルミ等をリフトオフ加工することによって配線等に利用することもできる。
【0043】
以下、合成例および実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の合成例および実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において「部」は、重量部を意味する。
【0044】
以下の実施例で使用したUV硬化型側鎖結晶性ポリマーは、以下の2種類である。
<合成例1>
まず、ベヘニルアクリレートを43部、メチルアクリレートを47部、2−ヒドロキシエチルアクリレートを10部、および重合開始剤として日油社製の「パーブチルND」を0.3部の割合で混合し、これらを酢酸エチル:ヘプタン=7:3(重量比)の混合溶媒によって固形分量が30部となるように調整し、混合液を得た。
【0045】
次に、得られた混合液を55℃で4時間撹拌した後、重合開始剤として日油社製の「パーブチルPV」を0.5部の割合でさらに添加し、80℃で2時間撹拌することによって各モノマーを重合させ、側鎖結晶性ポリマーの溶液を得た。
【0046】
そして、得られた側鎖結晶性ポリマーの溶液を固形分換算で100部、上述した式(I)で表される2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート(昭和電工(株)製の「カレンズMOI」)を13部、酸化防止剤としてジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を0.1部、および触媒としてジラウリン酸ジ−n−ブチルスズ(DBTDL)を0.2部の割合で混合し、窒素ガス雰囲気下、60℃で4時間撹拌して反応させ、UV硬化型側鎖結晶性ポリマーを溶液の状態で得た。
【0047】
得られたUV硬化型側鎖結晶性ポリマーについて、重量平均分子量および融点を測定した。各測定結果は、以下の通りである。
重量平均分子量:70万
融点:50℃
【0048】
なお、重量平均分子量は、UV硬化型側鎖結晶性ポリマーをGPCで測定し、得られた測定値をポリスチレン換算することによって得た。融点は、UV硬化型側鎖結晶性ポリマーをDSCで10℃/分の測定条件で測定することによって得た。
【0049】
<合成例2>
まず、ベヘニルアクリレートを43部、メチルアクリレートを42部、2−ヒドロキシエチルアクリレートを15部、および「パーブチルND」を0.3部の割合で混合し、これらを合成例1と同じ混合溶媒によって固形分量が25部となるように調整し、混合液を得た。
【0050】
次に、得られた混合液中の各モノマーを合成例1と同様にして重合させ、側鎖結晶性ポリマーの溶液を得た。そして、得られた側鎖結晶性ポリマーの溶液を固形分換算で100部、上述した式(I)で表される2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート(昭和電工(株)製の「カレンズMOI」)を20部にした以外は合成例1と同様にして反応させ、UV硬化型側鎖結晶性ポリマーを溶液の状態で得た。
【0051】
得られたUV硬化型側鎖結晶性ポリマーについて、合成例1と同様にして重量平均分子量および融点を測定した。各測定結果は、以下の通りである。
重量平均分子量:70万
融点:50℃
【実施例1】
【0052】
<微細構造の製造>
まず、合成例1で得たUV硬化型側鎖結晶性ポリマーの溶液に、固形分換算でチバ・ジャパン社製の光重合開始剤「IRGACURE 500」を2部添加し、塗工液を得た。
【0053】
次に、得られた塗工液を基板表面に塗工して乾燥させ、厚さ40μmのシート状の被膜を基板の表面に積層した。使用した基板、塗工条件、乾燥条件は、以下の通りである。
基板:表面をコロナ処理した厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートからなる基板を用いた。
塗工条件:塗工液を、基板のコロナ処理面にベーカー式アプリケーターによって厚さ10milで塗工した。
乾燥条件:110℃の乾燥機内で10分間乾燥した。
【0054】
次に、上述した被膜に対してインプリントを行った。インプリント条件は、以下の通りである。
モールド:350nm〜10μmスケールの微細パターンを有するNTT−AT社製の石英モールド「NIM−PH350」を使用した。
インプリント装置:明昌機工社製のナノインプリント装置「NM0901−HB」を使用した。
被膜温度:80℃(UV硬化型側鎖結晶性ポリマーの融点+30℃)
圧力:10MPa
加圧時間:60秒
【0055】
次に、モールドで加圧されている状態の被膜に対してUVを照射した。UV照射条件は、以下の通りである。
UV照射装置:HOYA CANDEO OPTRONICS社製のUV−LED「EXECURE−H−1VC」を使用した。
UV量:60mW/cm
2
UV照射時間:60秒
備考:UVは、モールドを介して被膜の全面に向けて80℃で照射した。
【0056】
最後に、雰囲気温度を80℃から23℃(室温)に冷却し、雰囲気温度23℃でモールドを被膜から剥離し、微細パターンが転写された硬化被膜および基板からなる微細構造を得た。
【0057】
<評価>
微細構造を得る際の評価として、モールド剥離性を評価した。また、得られた微細構造について、転写精度および光透過率を評価した。各評価方法を以下に示すとともに、その結果を表1に示す。
【0058】
(モールド剥離性)
上述したモールドを被膜から剥離するときの抵抗、および剥離したモールドにおける被膜残渣の有無を評価した。具体的には、上述したモールドを被膜から剥離する工程は、固定されているモールドから被膜を基板とともに手で剥離することによって行った。そして、このときの抵抗を評価するとともに、剥離したモールドにおける被膜残渣の有無を実体顕微鏡によって観察した。評価基準は、以下のように設定した。
○:剥離時に抵抗がなく、かつモールドに被膜残渣がない。
×:剥離時に抵抗が強く、かつモールドに被膜残渣がある。
【0059】
(転写精度)
モールドの微細パターンおよび硬化被膜に転写された微細パターンのそれぞれの高さを、感知レバーを使用した原子間力顕微鏡(AFM)によって測定し、得られた測定値を下記式(i)に当てはめて転写精度(%)を算出した。
【0060】
【数1】
【0061】
(光透過率)
得られた微細構造について、日本分光社製のUV−可視光分光機「JASCO V−570」を用いて波長400〜700nmの光透過率を測定した。
【実施例2】
【0062】
合成例1で得たUV硬化型側鎖結晶性ポリマーの溶液に代えて、合成例2で得たUV硬化型側鎖結晶性ポリマーの溶液を使用した以外は、実施例1と同様にして塗工液を得、得られた塗工液を用いて厚さ40μmのシート状の被膜を基板の表面に積層し、インプリントおよびUV照射を行った後、モールドを被膜から剥離して微細構造を得た。そして、実施例1と同様にしてモールド剥離性、転写精度および光透過率を評価した。その結果を表1に示す。
【0063】
[比較例]
シリコンからなる基板の表面に、東洋合成工業社製の光インプリント用液状レジスト材「PAK−01」をスピンコートした以外は、実施例1と同様にしてインプリントおよびUV照射を行い、モールドを被膜から剥離して微細構造を得た。そして、実施例1と同様にしてモールド剥離性、転写精度および光透過率を評価した。その結果を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
表1から明らかなように、実施例1および実施例2はいずれも、モールド剥離性および転写精度に優れていることから、比較的緩和なインプリント条件で優れたモールドのパターン転写精度を達成できているのがわかる。また、実施例1および実施例2はいずれも、波長400〜700nmの光透過率に優れていることから、光学用フィルムとして好適に使用することが可能である。なお、実施例1については、UV照射前における転写精度および光透過率についても評価した。その結果、表1から明らかなように、UV照射によって転写精度は向上する傾向にあり、光透過率は実質的に変化しない傾向にあった。
【0066】
一方、市販の光インプリント用液状レジスト材である比較例は、モールド剥離性および転写精度に劣る結果を示した。また、比較例は液状であるため、均一な膜加工が必要であり、硬化時に発生するアウトガスによってモールド等のインプリント装置部材が損傷するおそれもあった。