特許第6304762号(P6304762)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6304762
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】空間光通信用投光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/64 20100101AFI20180326BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20180326BHJP
【FI】
   H01L33/64
   H01L33/00 J
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-156931(P2014-156931)
(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公開番号】特開2016-33989(P2016-33989A)
(43)【公開日】2016年3月10日
【審査請求日】2017年4月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】507299758
【氏名又は名称】株式会社アウトスタンディングテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】黒川 裕之
【審査官】 村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−200187(JP,A)
【文献】 特開平11−163411(JP,A)
【文献】 特開2007−165728(JP,A)
【文献】 特開2008−117886(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0271992(US,A1)
【文献】 特開2010−80844(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LEDを設けた投光器を備え、情報信号を重畳した空間光を、該投光器のLEDから投光して空間光通信を行なう空間光通信用投光装置において、
該投光器のLEDは回路基板上に実装され、該回路基板にはヒートシンクが取り付けられ、該ヒートシンクと該LEDとの間に放熱部材が介挿され、該放熱部材が窒化ホウ素セラミックスから形成されたことを特徴とする空間光通信用投光装置。
【請求項2】
前記放熱部材は、前記ヒートシンクと前記回路基板との間または前記LEDと該回路基板との間に介挿されることを特徴とする請求項1記載の空間光通信用投光装置。
【請求項3】
前記放熱部材は、六方晶系窒化ホウ素セラミックスから形成されたことを特徴とする請求項1記載の空間光通信用投光装置。
【請求項4】
前記放熱部材は、立方晶系窒化ホウ素セラミックスから形成されたことを特徴とする請求項1記載の空間光通信用投光装置。
【請求項5】
前記放熱部材は、前記ヒートシンクと前記回路基板との間で、熱伝導性接着剤により接着されたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の空間光通信用投光装置。
【請求項6】
前記LEDは、ミラー型のLEDであって、凹面反射鏡の内側にLEDチップがその投光面を反射面に向けて配置され、該凹面反射鏡の裏面が前記回路基板上に実装され、アノードリードとカソードリードが該凹面反射鏡の前面から両外側に開くように配線され、該ミラー型のLEDの裏面が接する該回路基板上の導電部に、該アノードリード及び該カソードリードが半田付けされたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の空間光通信用投光装置。
【請求項7】
前記LEDは、ミラー型のLEDであって、凹面反射鏡の裏面が前記回路基板上に実装され、該凹面反射鏡の内側にLEDチップがその投光面を反射面に向けて配置され、アノードリードが凹面反射鏡の外側に突き出すように延設されてアノードリード拡張部が形成され、該アノードリード拡張部の裏面が前記放熱部材と固定ねじ及び熱伝導性接着剤により接着され、該放熱部材の裏面が前記ヒートシンクと熱伝導性接着剤により接着されたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の空間光通信用投光装置。
【請求項8】
前記LEDは、前記回路基板に設けた開口部上に配置されるとともに、該開口部の縁部上に設けた該回路基板の導電部に該LEDの電極リードが半田付けされ、前記放熱部材は、該開口部に嵌入され、且つ該LEDの裏面に熱伝導性接着剤により接着されたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の空間光通信用投光装置。
【請求項9】
前記LEDは、パッケージ型のLEDであって、パッケージのケース内にLEDチップが取着されて、該ケース内の該LEDチップの周囲に封止樹脂が充填され、該ケースの裏面が前記回路基板上に実装され、アノードリードとカソードリードが該ケースの両外側に開くように配線され、該LEDの裏面が接する該回路基板上の導電部に、該アノードリード及び該カソードリードが半田付けされ、該回路基板の裏面が熱伝導性接着剤により前記放熱部材に接着され、該放熱部材の裏面が前記ヒートシンクと熱伝導性接着剤により接着されたことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の空間光通信用投光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間光通信用投光装置に関し、詳しくは、空間に照射された可視光等を使用して通信を行なう空間光通信において、高周波信号を効率良く可視光に重畳して高速通信を行うことができる空間光通信用投光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電波を通信媒体とした無線通信は、携帯電話網、無線LAN、近距離無線通信など多くの分野で使用されている。
【0003】
しかし、電波を媒体として使用する無線通信は、人の近くで送受信を行なう場合、電磁波の人体への影響を考慮して、送信電力を上げることができない。また、無線通信に使用される電波の周波数帯域は、既に多くの使用分野において割り振られ、使用されていることもあって、広帯域の周波数帯を自由に使用することはできない。さらに、病院などの特殊な環境下においては、電波の使用に制限が加えられるなどの制約がある。
【0004】
そこで、近年、可視光を通信媒体として用いる可視光通信が開発され、例えば下記特許文献1などに記載されるように、室内照明用のLED照明装置を可視光通信用の投光器として使用し、LED照明装置の照射する可視光に情報信号を重畳させて可視光通信を行なう可視光通信システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−290335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この可視光通信システムの送信器は、その投光器が照明用LEDを備えた照明装置から構成され、照明用LEDの点灯駆動回路に、増幅した情報信号を含む変調信号を印加して、LED光に情報信号を重畳させ、拡散照明光として室内に照射し投光する。一方、可視光通信システムの受信器は、フォトダイオードなどの受光素子を備えた受光器で、例えば数mの距離からLED光を受光し、受光素子で電気信号に変換し、受光回路、復調回路を経て、電気信号に含まれる高周波情報信号を復調し、受信した情報信号を出力するように構成される。
【0007】
近年の無線通信は、送受信する情報信号の増大に伴い、情報通信の高速化が必須となり、OFDMなどの変調方式により変調された大量のデータを、非常に高い周波数の搬送波に重畳して送受信を行なう通信方式が採用されており、可視光通信においても、情報信号により搬送波を変調して生成された高周波信号を、LED光に重畳させて送信する送信器が開発されている。
【0008】
しかしながら、可視光通信の送信器で投光素子として使用されるLEDは、発光ダイオード自体がインダクタンス、キャパシタンスを有しており、しかも回路基板上に実装された場合、アノードとグランド間及びアノードリードとグランド間に少なからず浮遊静電容量が生じる。特に、室内などの照明用に使用されるLED照明具を投光器とする場合、或いは長距離間での可視光通信を行なう送信器の投光器では、消費電力の大きいパワーLEDが使用され、LEDチップの近傍に放熱フィンが取り付けられるため、LEDのアノードリードと金属製の放熱フィンを含むグランド間に、無視できない浮遊静電容量が生じる。
【0009】
高速通信を行なう可視光通信システムでは、必然的に情報信号をLED光に重畳する情報高周波信号が非常に高い周波数の信号となり、その高周波信号がLEDの駆動回路に印加されるが、投光器のLED駆動回路において、高周波信号の一部はLEDのアノードからLEDのPN半導体接合部に流れるものの、アノードとグランド間またはアノードリードと放熱フィンを含むグランド間に浮遊静電容量が生じている場合、高周波信号の大部分はアノードリードから放熱フィンに流出しやすい。
【0010】
このため、可視光通信の投光器において、LEDのアノードとグランド間またはアノードリードと放熱フィンを含むグランド間に浮遊静電容量が生じる場合、LEDはLED光を定格通り照射するものの、LEDの高周波応答性(高速応答性)が高周波領域ほど低下し、OFDMなどで変調された情報量の大きい高周波信号を高速で送信することは難しく、可視光通信の高速化が阻害される課題があった。
【0011】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、空間光を媒体とする空間光通信の高速化を図ることができる空間光通信用投光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の空間光通信用投光装置は、LEDを設けた投光器を備え、情報信号を重畳した空間光を、該投光器のLEDから投光して空間光通信を行なう空間光通信用投光装置において、該投光器のLEDは回路基板上に実装され、該回路基板にはヒートシンクが取り付けられ、該ヒートシンクと該LEDとの間に放熱部材が介挿され、該放熱部材が窒化ホウ素セラミックスから形成されたことを特徴とする。
【0013】
なお、上記空間光は、白色光等の可視光に加え赤外線、紫外線を含む概念であり、上記LEDは可視光、赤外線、または紫外線を放射する発光ダイオードである。また、上記ヒートシンクは、金属板製の放熱板、放熱フィン、フィン付きヒートパイプ、冷却ファン付き放熱フィンなどの各種放熱器を含むものである。
【0014】
この発明によれば、LEDとヒートシンク間に、熱伝導率が良好で且つ誘電損失が小さく高周波電流に対する絶縁性の高い窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材が介挿されるので、LED及びそのアノードリードとヒートシンク(グランド)間の距離が離れて浮遊静電容量は大幅に減少し、且つLEDの熱も、窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材を通して放熱することができる。
【0015】
通常、LEDの投光器では、LEDの放熱を考慮して、ヒートシンクがLEDに接近して取り付けられ、金属製のヒートシンクをLEDに接近して取着した場合、LEDのアノード、アノードリード、カソード、或いはカソードリードとヒートシンクを含むグランド間に、浮遊静電容量が発生し、この浮遊静電容量は、LEDとヒートシンクの距離が近いほど増大する。空間光通信を行なう投光装置のLEDには送信用の高周波信号が印加され、高周波信号は浮遊静電容量を通してグランドに漏洩流出しやすく、高周波信号の周波数が高くなるほど、LEDのアノードまたはカソードに印加される信号レベルは、大きく低下する。
【0016】
しかし、上記構成の空間光通信用投光装置は、LEDとヒートシンク間に、誘電損失が小さく高周波電流に対する絶縁性の高い窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材を介挿するので、放熱性を確保しつつ、その間の浮遊静電容量を減少させることができる。これにより、高周波信号のヒートシンク側への漏洩流出が抑制され、LEDのアノードからPN接合部に高周波信号を効率良く印加させることができ、且つLEDの放熱も良好となる。
【0017】
このため、LEDの浮遊静電容量に起因した高周波信号のヒートシンクへの漏洩流出を低減して、高周波信号を高効率でLEDに印加し、LEDの高周波応答性(高速応答性)を向上させ、LED光に高周波信号を良好に重畳させ、空間光通信の高速化を実現することができる。また、LEDの放熱性も確保されるので、例えば、空間光通信の送信器の投光器に照明用のパワーLEDが使用され、或いは長距離で可視光通信を行うため投光器にパワーLEDが使用される場合であっても、LEDの熱を効率良くヒートシンクに逃しLEDの発光効率を高く維持しつつ、LED光に高周波信号を良好に重畳させ、空間光通信の高速化を図ることができる。
【0018】
ここで、上記放熱部材は、上記ヒートシンクと上記回路基板との間または上記LEDと該回路基板との間に介挿することができる。
【0019】
またここで、上記放熱部材は、六方晶系窒化ホウ素セラミックスから形成することができ、或いは立方晶系窒化ホウ素セラミックスから形成することができる。
【0020】
またここで、上記空間光通信用投光装置において、上記窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材はヒートシンクと上記回路基板との間で熱伝導性の高い熱伝導性接着剤により接着することが好ましい。
【0021】
またここで、上記LEDはミラー型のLEDであって、凹面反射鏡の内側にLEDチップがその投光面を反射面に向けて配置され、該凹面反射鏡の裏面が上記回路基板上に実装され、アノードリードとカソードリードが該凹面反射鏡の前面から両外側に開くように配線され、ミラー型LEDの裏面が接する回路基板上の導電部に、半田付けされるように構成することができる。
【0022】
またここで、上記LEDはミラー型のLEDであって、凹面反射鏡の裏面が上記回路基板上に実装され、凹面反射鏡の内側にLEDチップの投光面を反射面に向けて配置し、アノードリードは凹面反射鏡の外側に突き出すように延設されてアノードリード拡張部が形成され、該アノードリード拡張部の裏面が上記放熱部材と固定ねじ及び熱伝導性接着剤により接着され、該放熱部材の裏面が上記ヒートシンクと熱伝導性接着剤により接着されるように構成することができる。
【0023】
これにより、発熱しやすいLEDのアノードの熱を、アノードリード拡張部を通して放熱部材及びヒートシンクに効率良く逃がすことができ、これにより、LEDの温度上昇を抑え、LEDの発光効率を向上させることができる。さらに誘電損失の小さい放熱部材を介在させて、LEDのアノード及びアノードリードとグランド間の距離を離し、LEDのアノードとグランド間に生じやすい浮遊静電容量を最小に抑制するため、高周波信号がアノードからグランドに流れる割合を最少にし、高い効率でLEDのアノードに高周波信号を供給可能として、空間光通信の高速化を図ることができる。
【0024】
またここで、上記空間光通信用投光装置において、上記LEDは回路基板に設けた開口部上に配置されるとともに、該開口部の縁部上に設けた導電部にLEDの電極リードが半田付けされ、上記窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材は、該開口部に嵌入され、且つLEDの裏面に熱伝導性の高い熱伝導性接着剤により接着することができる。
【0025】
またここで、上記空間光通信用投光装置において、上記LEDは、パッケージ型のLEDであって、パッケージのケース内にLEDチップが取着されて、該ケース内の該LEDチップの周囲に封止樹脂が充填され、該ケースの裏面が前記回路基板上に実装され、アノードリードとカソードリードが該ケースの両外側に開くように配線され、該LEDの裏面が接する該回路基板上の導電部に、該アノードリード及び該カソードリードが半田付けされ、該回路基板の裏面が熱伝導性接着剤により前記放熱部材に接着され、該放熱部材の裏面を前記ヒートシンクと熱伝導性接着剤により接着するように構成することできる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の空間光通信用投光装置によれば、投光器のLEDの温度上昇を抑制するとともに、LEDのアノードとグランド間の浮遊静電容量を低減して高周波信号のアノードへの流出を抑制し、空間光を媒体とする空間光通信の高速化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態を示す空間光通信用投光装置の拡大平面図である。
図2図1のII−II断面図である。
図3】ミラー型のLEDの側面図である。
図4】同LEDの中央縦断面図である。
図5】第2実施形態の空間光通信用投光装置の拡大平面図である。
図6図5のVI-VI断面図である。
図7】ミラー型のLEDの側面図である。
図8】同LEDの中央縦断面図である。
図9】第3実施形態の空間光通信用投光装置の拡大平面図である。
図10図9のX-X断面図である。
図11】第4実施形態の空間光通信用投光装置の拡大平面図である。
図12図11のXII-XII断面図である。
図13】第5実施形態の空間光通信用投光装置の拡大平面図である。
図14図13の中央縦断面図である。
図15】他の実施形態の空間光通信用投光装置の中央縦断面図である。
図16】他の実施形態の空間光通信用投光装置の中央縦断面図である。
図17】LEDを駆動する駆動回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1図4は第1実施形態の空間光通信用投光装置を示し、この空間光通信用投光装置は、投光器1の投光素子となるミラー型のLED2と、LED2が実装される回路基板10と、回路基板10の裏面側にスペーサ9を介して固定されるヒートシンク12と、LED2の側方に突設されたアノードリード拡張部6と、アノードリード拡張部6とヒートシンク12との間に介挿される窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材11とを備えて構成される。
【0029】
LED2は、ミラー型のLEDとして構成され、図3,4に示すように、LEDのパッケージともなる凹面反射鏡15を備え、凹面反射鏡15の凹部内中央に、LEDチップ3がその投光面を凹面反射鏡15の反射面15a側に向く状態で配設される。なお、LEDチップ3には、各種色彩の可視光LED(白色光LED,青色光LEDなど)を使用することができ、さらに、赤外線を空間光として放射する赤外線LEDを使用することもできる。
【0030】
LED2には、アノードリード4がLEDチップ3のアノード電極に接続され、カソードリード5がそのカソード電極に接続される。アノードリード4とカソードリード5は、各々、LEDチップ3から凹面反射鏡15の中央から両側に開くように延設され、カソードリード5は凹面反射鏡15の一方の側にその上面から側面に延設される。
【0031】
一方、アノードリード4は、凹面反射鏡15の他方の側にその上面から側方に突設され、アノードリード4の先端には、方形で大面積のアノードリード拡張部6が拡張する形態で一体に形成される。アノードリード拡張部6は、図2に示す如く、放熱部材11に対し固定ねじ6bにより固定されるが、そのために、中央には固定ねじ用の固定孔6aが設けられる(図3)。
【0032】
凹面反射鏡15は、その本体が合成樹脂により略直方体状に形成され、その本体の前面に凹面鏡となる放物面または楕円面を有した凹部が形成される。凹部の前面(内面)が放物面または楕円面として形成され、その放物面または楕円面には、反射用の金属膜がめっき或いは蒸着により形成され、反射面15aを形成している。
【0033】
なお、凹面反射鏡15の凹部内は空間とすることもできるが、凹面反射鏡15の前面中央部にLEDチップ3を取り付けた状態で、凹部内に透明合成樹脂(例えばエポキシ樹脂など)を充填することもできる。これにより、凹面反射鏡15の反射面15aとLEDチップ3の投光面を透明合成樹脂で覆い、これを保護している。
【0034】
投光器1の投光素子となるミラー型のLED2は、図1、2に示すように、LEDの駆動回路を形成する回路基板10上に実装され、LED2のカソードリード5は、回路基板10上の銅箔パターンの導電部13に半田付けされる。回路基板10には、LED2の熱を逃すために、放熱機能を有したメタルコア型、メタルベース型などの放熱基板を使用することができる。アノードの接続は、アノードリード拡張部6に対しリード線など介して回路基板10上の導電部に接続し、或いはコンデンサ素子などに接続して行なう。回路基板10は、スペーサ9を介して、ヒートシンク12上に固定され、或いは回路基板10の裏面にヒートシンク12がスペーサ9を介して固定される。ヒートシンク12は、アルミ合金、銅合金などの金属板状の放熱板、金属フィンを設けた放熱フィン、フィン付きヒートパイプ式の放熱器、或いは冷却用ファンを設けたファン付き放熱器等から構成される。
【0035】
さらに、LED2のアノードリード拡張部6とヒートシンク12間に、窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材11が介挿される。放熱部材11は窒化ホウ素セラミックスにより直方体状に成形され、その上面がアノードリード拡張部6の裏面に当接し、その底面がヒートシンク12の上面に当接して固定される。この窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材11は、良好な熱伝導性を有し、誘電損失が少なく、高周波信号に対し優れた絶縁性を有する電気絶縁体である。
【0036】
放熱部材11の窒化ホウ素セラミックスには、常圧相窒化ホウ素である六方晶系窒化ホウ素セラミックスを使用することができるが、この六方晶系窒化ホウ素セラミックスを原料として作られる、より熱伝導性の高い高圧相窒化ホウ素の立方晶系窒化ホウ素セラミックスから放熱部材11を形成することもできる。
【0037】
また、窒化ホウ素セラミックスは、純粋な窒化ホウ素を焼成したセラミックスのほか、窒化アルミニウム、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、ホウ化チタニウム、或いは炭化ケイ素を、窒化ホウ素に添加して焼成した窒化ホウ素複合焼成物を含む。
【0038】
放熱部材11には、LED2のアノードリード拡張部6を固定するために、固定用のねじ穴が形成されるが、窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材11は、他のセラミックス素材とは異なり、工作機械による切削加工やねじ穴加工が可能であり、ねじ穴を設けて、固定ねじ6bによる固定が可能となる。
【0039】
このような窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材11は、図1,2に示すように、その上面が、熱伝導性の高い熱伝導性接着剤(熱伝導性粘着シート或いは熱伝導性接着シートを含む)によりアノードリード拡張部6の裏面に接着され、且つ固定ねじ6bにより締め付け固定される。
【0040】
また、放熱部材11の裏面は、同様に、熱伝導性の高い熱伝導性接着剤により、アルミ合金製ヒートシンク或いは銅合金製ヒートシンクなどかなるヒートシンク12上に接着される。熱伝導性接着剤としては、エポキシ系接着剤、銀粒子配合のエポキシ系銀接着剤、シリコーン系接着剤、高熱伝導性両面粘着シートを使用することができる。また、図2に示すように、放熱部材11の厚さは、LED2の厚さより十分に厚く形成され、回路基板10上に実装したミラー型のLED2とヒートシンク12との間に、十分な間隔スペースが生じるように、放熱部材11はアノードリード拡張部6とヒートシンク12間に介挿される。
【0041】
上記のように、LED2を回路基板10上に実装し、放熱部材11をヒートシンク12上に取着し、LED2のアノードリード拡張部6を放熱部材11上に固定する場合、放熱部材11に固定用のねじ穴を設けておき、アノードリード拡張部6の固定孔6aから放熱部材11のねじ穴に固定ねじ6bをねじ込み締め付け固定する。これにより、アノードリード拡張部6は放熱部材11に対し確実に接して固定され、LEDチップ3の発光時に、主にアノード電極及びアノードリード4で発生する熱は、放熱部材11及びヒートシンク12に逃し、LED2の発熱を抑制することができる。
【0042】
このように、回路基板10上に実装されるLED2のアノードリード拡張部6とヒートシンク12との間に、熱伝導率が高く且つ誘電損失の小さい窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材11が介挿されることにより、LED2の熱を効率良くヒートシンク12に逃し、さらに、LED2のアノード回路とグランド間に生じやすい浮遊静電容量を最少に抑制し、高周波信号の絶縁性を高め、高周波信号がアノード回路からグランドに流出する割合を最少に抑制する。
【0043】
また、ミラー型のLED2において、LEDチップ3から導出されるアノードリード4とカソードリード5は、両側に開くように配設され、両リードの間隔を広くして回路基板10の導電部13または素子に接続している。このため、LEDチップ3のカソード電極とグランド間及びアノード電極とグランド間に生じる静電容量を非常に小さくすることができ、当該静電容量の抑制により、例えば数百MHzの高周波信号をLEDチップ3のアノードとP型またはN型半導体の接合部に高効率で印加することができる。
【0044】
また、投光器1が照明用と通信用に兼用され、LEDチップ3に光量の大きいパワーLEDが使用される場合、アノードに高電流が供給され、アノードの温度上昇も大きくなるが、上記の如くアノードの熱は、アノードリード拡張部6から放熱部材11とヒートシンク12に流れて効率良く放熱され、アノードの温度上昇を抑制して、LEDチップ3の発光効率を高く維持することができるようになっている。
【0045】
図17は、空間光通信用投光装置の投光器1が接続されるLEDの駆動回路19を示し、この駆動回路19は、トランス式駆動回路から構成される。LEDチップ3のトランス式の駆動回路19は、トランスTの入力側(一次側)に端子部J1を通して高周波信号を入力し、トランスTの出力側(二次側)に結合用のコンデンサC2、C3を介して接続された、信号電圧発生用の抵抗R2の両端に信号電圧を発生させる。信号電圧発生用の抵抗R2の両端は、LED2のアノードとカソードに接続され、LED2のアノードには、抵抗R1とコイルL1を通して駆動用の直流電流が供給される。
【0046】
トランスTは、インピーダンス調整用に接続され、トランスTの出力側にコンデンサC2、C3を介して抵抗R2の両端が接続され、抵抗R2と並列にLED2が接続され、低インピーダンス化されたトランスTの二次側に、降圧された高周波信号を出力し、LED2のアノードに高周波信号を高効率で印加するように構成される。駆動回路19の端子部J1を通してトランスTの一次側に入力される高周波信号は、図示しない変調増幅回路において送信情報信号により搬送波を変調して生成され、増幅されて端子部J1に入力される。
【0047】
図17に示すLEDの駆動回路19、つまりトランスT,トランスTの出力側に接続されるコンデンサC2,C3、抵抗R2などは、投光器1の回路基板10上に実装される。図17に示す如く、LEDチップ3のアノードとカソードは抵抗R2の両端に接続され、さらに、LEDチップ3のアノードには、電源回路が抵抗R1、コイル(リアクトル)L1を介して接続され、LEDチップ3のカソードは、コイル(リアクトル)L2を介してグランドに接続される。
【0048】
トランス式の駆動回路19は、トランスTの二次側(出力側)を低インピーダンスとすることができるので、その出力側に接続される抵抗R2と並列接続されるLEDチップ3は、少ない消費電力で効率良く駆動することができる。
【0049】
通常、空間光通信の投光器に使用されるLEDは、トランジスタ駆動方式によって駆動され、パワートランジスタのコレクタがそのアノードに接続され、パワートランジスタによりLEDを駆動するように構成されるが、この場合、パワートランジスタに対しLEDが直列に接続され、LEDに流れる電流がそのままパワートランジスタのコレクタ電流となって流れる。このため、特に光量の大きいパワーLEDを使用する場合、パワーLEDの電力消費に加え、パワートランジスタで大きな電力が消費され、熱量となって放出され、電力消費量が増大する。
【0050】
これに対し、図17に示すトランス式の駆動回路19は、LED2のLEDチップ3に、抵抗R1とコイルL1を通して駆動用の直流電流を供給し、情報信号により搬送波を変調して生成した高周波信号をトランスTによって降圧し、低インピーダンスの抵抗R2の両端からLEDチップ3に印加する構成とされるので、パワートランジスタによる駆動回路に比して、より少ない消費電力で、発熱量も少なく、高周波信号をLED2に効率良く印加して送信を行なうことができる。
【0051】
なお、上記駆動回路19において、トランスTの出力端子3とコンデンサC2との間、及びトランスTの出力端子1とコンデンサC3との間に、各々、抵抗を接続してもよい。このようなトランスTの出力端子3とコンデンサC2との間、及びトランスTの出力端子1とコンデンサC3との間に、数Ω程度の抵抗を直列接続することにより、トランスTからLED2側に出力される高周波信号の周波数変化に対するトランスTの出力側のインピーダンス変化を増大させ、より効率良く高周波信号をLED2に供給することができる。
【0052】
上記構成の空間光通信用投光装置1を用いた空間光通信用送信器は、例えば散乱空間光を媒体とした無線LANシステムの送信器として使用される。送信器の投光器1は、例えば室内照明装置の照明用灯具を兼用して使用され、散乱空間光として投光器1のLED2からLED光を照射する。
【0053】
無線LANシステムの送信器には、情報信号を例えばOFDM変調して高周波信号を生成する図示しない変調回路が設けられ、変調回路で変調された高周波信号が増幅回路で増幅された後、図17の駆動回路19のトランスTの一次側に入力される。投光器1では、LED2のLEDチップ3が点灯駆動され、変調回路からトランスTを通して抵抗R2の両側に出力される高周波信号が、LEDチップ3のアノード、カソード間に印加され、点灯するLEDチップ3のLED光に、高周波信号が重畳され、LED2から散乱空間光として投光される。
【0054】
このとき、投光器1では、LED2を実装した回路基板10とヒートシンク12間に、熱伝導率が良好で且つ誘電損失が小さく高周波電流に対する絶縁性の高い窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材11が介挿され、且つLED2のアノードリード4とヒートシンク12(グランド)間の距離が離れ、LEDチップ3のアノード及びアノードリードとグランド間の浮遊静電容量は大幅に減少する。
【0055】
このため、高周波信号のヒートシンク側への漏洩流出を阻止して、LED2のアノードからPN接合部に高周波信号を効率良く供給することができ、且つLED2の放熱も十分に行われる。これにより、LED2の浮遊静電容量に起因した高周波信号のヒートシンクへの漏洩流出を防止して、高周波信号を高効率でLED2に供給し、LED光に高周波信号を良好に重畳させ、空間光通信の高速化を図ることができる。
【0056】
また、空間光通信の送信器の投光器1に、照明用のパワーLEDが使用される場合、或いは長距離で可視光通信を行うため投光器にパワーLEDが使用される場合、LED2の熱を効率良くヒートシンク12に逃しLED2の発光効率を高く維持しつつ、LED光に高周波信号を良好に重畳させ、空間光による高速通信を行なうことができる。
【0057】
図5図8は第2実施形態の空間光通信用投光装置を示す。なお、この実施形態において、上記第1実施形態と同様な部分については、図に上記と同じ符号を付すとともに説明に同じ符合を使用してその詳細な説明は省略する。
【0058】
この投光装置の投光器21は、ミラー型のLED22を設けて構成され、図5,6に示すように、LEDのパッケージともなる凹面反射鏡25を備え、凹面反射鏡25の凹部内中央に、LEDチップ23がその投光面を凹面反射鏡25の反射面25a側に向く状態で配設される。
【0059】
LEDチップ23のアノード電極に接続されるアノードリード24とカソード電極に接続されるカソードリード26は、LEDチップ23から各々両側に開くように延設され、さらに凹面反射鏡25の側面に沿って延設される。そして、アノードリード24とカソードリード26の先端は凹面反射鏡25の底面まで延設される。LED22は、その駆動回路19を含む回路基板20上に実装され、LED22の凹面反射鏡25の底面のアノードリード24とカソードリード26の先端は、回路基板20上の導電部33に半田付けされる。
【0060】
LED22を実装する回路基板20は、放熱性を良くするために、放熱基板とすることができる。放熱基板としては、金属板を内装したメタルコア放熱基板、メタルベースに基板を貼り合わせたメタルベース放熱基板、或いはサーマルビアタイプの放熱基板を使用することができる。LED22に発熱量の大きいパワーLEDが使用される場合、回路基板20に放熱基板を使用することは有効である。
【0061】
回路基板20は、図6に示すように、ヒートシンク12上にスペーサ9を介して取り付けられるが、回路基板20の裏面におけるLED22と反対側に、窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材31がヒートシンク12との間に介挿される。
【0062】
この窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材31は、長方形の板状に形成され、図6に示すように、その上面が、熱伝導性の高い熱伝導性接着剤(粘着・接着シートを含む)により回路基板20の裏面に接着され、放熱部材31の裏面は、やはり熱伝導性の高い熱伝導性接着剤により、ヒートシンク12上に接着される。
【0063】
上記構成の投光器21では、LED22を実装した回路基板20とヒートシンク12間に、熱伝導率が良好で且つ誘電損失が小さく高周波電流に対する絶縁性の高い窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材31が介挿され、且つLED22のアノードリード24とヒートシンク12(グランド)間の距離が大きくなることにより、LEDチップ23のアノード及びアノードリードとグランド間の浮遊静電容量は大幅に減少する。
【0064】
このため、高周波信号のヒートシンク側への漏洩流出を阻止して、LED22のアノードからPN接合部に高周波信号を効率良く供給することができ、且つLED22の放熱も十分に行われる。これにより、LED22の浮遊静電容量に起因した高周波信号のヒートシンク12への漏洩流出を防止して、高周波信号を高効率でLED22に供給し、LED光に高周波信号を良好に重畳させ、空間光通信の高速化を図ることができる。また、空間光通信の送信器の投光器21に、照明用のパワーLEDが使用される場合、或いは長距離で可視光通信を行うため投光器にパワーLEDが使用される場合、LED22の熱を効率良くヒートシンク12に逃しLED22の発光効率を高く維持しつつ、LED光に高周波信号を良好に重畳させ、空間光による高速通信を行なうことができる。
【0065】
図9図10は第3実施形態の空間光通信用投光装置を示している。なお、この実施形態において、上記実施形態と同様な部分については、図に上記と同じ符号を付すとともに説明に同じ符合を使用してその詳細な説明は省略する。
【0066】
この投光装置の投光器41は、レンズ型のLED42を設けて構成され、図9に示すように、LEDのパッケージ上にレンズ部45が設けられ、レンズ部45の内側中央には、LEDチップ43がその投光面を上に向けて配設される。
【0067】
LEDチップ43のアノード電極に接続されるアノードリード44とカソード電極に接続されるカソードリード46は、LEDチップ43から各々両側に開くように延設され、さらにパッケージの側面に沿って延設される。そして、アノードリード44とカソードリード46の先端は底面位置で外側に延設される。レンズ型のLED42は、その駆動回路19を含む回路基板30上に実装され、LED42のパッケージの両側に延設されたアノードリード44とカソードリード46の先端は、回路基板30上の導電部53に半田付けされる。
【0068】
LED42を実装する回路基板30は、放熱性を良くするために、放熱基板とすることができる。放熱基板としては、金属板を内装したメタルコア放熱基板、メタルベースに基板を貼り合わせたメタルベース放熱基板、或いはサーマルビアタイプの放熱基板を使用することができる。
【0069】
回路基板30は、図10に示すように、放熱部材51を介してヒートシンク12上に取り付けられる。つまり、回路基板30の裏面のLED42と反対側には、窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材51が取着され、放熱部材51の裏面はヒートシンク12上に取着され、放熱部材51が回路基板30とヒートシンク12との間に介挿される。
【0070】
この窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材31は、回路基板30と略同じ大きさで長方形の板状に形成され、図10に示すように、その上面が、熱伝導性の高い熱伝導性接着剤(熱伝導性粘着シート、熱伝導性接着シートを含む)により回路基板30の裏面に接着され、放熱部材51の裏面は、熱伝導性接着剤によりヒートシンク12上に接着される。
【0071】
上記構成の投光器41では、LED42を実装した回路基板30とヒートシンク12間に、熱伝導率が良好で且つ誘電損失が小さく高周波電流に対する絶縁性の高い窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材51が介挿され、且つLED42のアノードリード44とヒートシンク12(グランド)間の距離が大きくなることにより、LEDチップ43のアノード及びアノードリードとグランド間の浮遊静電容量は大幅に減少する。
【0072】
このため、高周波信号のヒートシンク12側への漏洩流出を阻止して、LED42のアノードからPN接合部に高周波信号を効率良く供給することができ、且つLED42の放熱も十分に行われる。これにより、LED42の浮遊静電容量に起因した高周波信号のヒートシンク12への漏洩流出を防止して、高周波信号を高効率でLED42に供給し、LED光に高周波信号を良好に重畳させ、空間光通信の高速化を図ることができる。
【0073】
また、空間光通信の送信器の投光器41に、照明用のパワーLEDが使用される場合、或いは長距離で可視光通信を行うため投光器にパワーLEDが使用される場合、LED42の熱を効率良くヒートシンク12に逃しLED42の発光効率を高く維持しつつ、LED光に高周波信号を良好に重畳させ、空間光による高速通信を行なうことができる。
【0074】
図11図12は第4実施形態の空間光通信用投光装置を示している。なお、この実施形態において、上記実施形態と同様な部分については、図に上記と同じ符号を付すとともに説明に同じ符合を使用してその詳細な説明は省略する。
【0075】
この投光装置の投光器71は、レンズ型のLED42を設けて構成される。図12に示すように、LED42のベース部上に、レンズ部45が設けられ、レンズ部45の内側中央に、LEDチップ43がその投光面を上に向けて配設される。
【0076】
LEDチップ43のアノード電極に接続されるアノードリード44とカソード電極に接続されるカソードリード46は、LEDチップ43から各々両側に開くように延設され、さらにパッケージの側面に沿って延設される。そして、アノードリード44とカソードリード46の先端は底面位置で外側に延設される。
【0077】
LED42の駆動回路19を実装する回路基板50には、LED42のベース部と略同じ大きさの開口部54が形成される。回路基板50は、図12に示すように、スペーサ9を介してヒートシンク12上に固定される。
【0078】
一方、LED42は、回路基板50に設けた開口部54上に配置され、開口部54の縁部上に設けた導電部53にLED42の電極リードつまりアノードリード44とカソードリード46が半田付けされる。
【0079】
さらに、窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材61が、回路基板50の下側から開口部54に嵌入される。この放熱部材61は、厚さの厚い(高さの高い)直方体形状に形成され、LED42をヒートシンク12に対しスペーサ9と同じ間隔をおいて連結する。放熱部材61は、その上面が熱伝導性接着剤によりLED42の底面に接着され、放熱部材61の下面はヒートシンク12上に熱伝導性接着剤により接着される。そして、LED42は、その駆動回路19を含む回路基板50上に実装され、LED42のパッケージの両側に延設されたアノードリード44とカソードリード46の先端は、回路基板50上の導電部53に半田付けされる。
【0080】
このように、回路基板50上に実装されたLED42は、回路基板50がヒートシンク12に対しスペーサ9を介して間隔をあけて取り付けられ、且つLED42の底面とヒートシンク12との間に、窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材61が介挿されるため、LED42のアノードリード44とグランド間に生じやすい浮遊静電容量を抑制するとともに、LED42の熱を、放熱部材61を通してヒートシンク12側に流し、LED42の温度上昇を効果的に抑制する。
【0081】
これにより、LED42の浮遊静電容量に起因した高周波信号のヒートシンク12への漏洩流出を防止して、高周波信号を高効率でLED42に供給し、LED光に高周波信号を良好に重畳させ、空間光通信の高速化を図ることができる。また、空間光通信の送信器の投光器71に、照明用のパワーLEDが使用される場合、或いは長距離で可視光通信を行うため投光器にパワーLEDが使用される場合、LED42の熱を効率良くヒートシンク12に逃しLED42の発光効率を高く維持しつつ、LED光に高周波信号を良好に重畳させ、空間光による高速通信を行なうことができる。
【0082】
なお、窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材は、比較的型成形が容易であり、工作機械による切削加工もできるので、LEDのパッケージを、窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材により成形し、窒化ホウ素セラミックス製のパッケージにLEDを装着することもできる。この窒化ホウ素セラミックス製のパッケージを有したLEDは、そのまま回路基板上に実装して使用することができる。
【0083】
図13図14は第5実施形態の空間光通信用投光装置を示している。なお、この実施形態において、上記実施形態と同様な部分については、図に上記と同じ符号を付すとともに説明に同じ符合を使用してその詳細な説明は省略する。
【0084】
この投光装置の投光器91は、パッケージ型のLED92を設けて構成され、図14に示すように、パッケージのケース82が合成樹脂により形成され、ケース82の内側中央には、ケース内ヒートシンク87が配設され、LEDチップ83はケース内ヒートシンク87上に、投光面を上に向けて取り付けられる。なお、このケース内ヒートシンク87は、なくても良く、その場合、LEDチップ83はケース内の合成樹脂上に直接取り付けられる。ケース82内には、透明な封止樹脂86が充填され、LEDチップ83の周囲のケース内が封止される。
【0085】
LEDチップ83のアノード電極に接続されるアノードリード84とカソード電極に接続されるカソードリード85は、LEDチップ83から各々両側に開くように延設され、さらにケース82の側面に沿って延設される。そして、アノードリード84とカソードリード85の先端は底面位置で外側に延設される。パッケージ型のLED92は、その駆動回路19を含む回路基板80上に実装され、LED92のケース82の両側に延設されたアノードリード84とカソードリード85の先端は、回路基板80上の導電部88に半田付けされる。
【0086】
LED92を実装する回路基板80は、放熱性を良くするために、放熱基板とすることができる。放熱基板としては、金属板を内装したメタルコア放熱基板、メタルベースに基板を貼り合わせたメタルベース放熱基板、或いはサーマルビアタイプの放熱基板を使用することができる。
【0087】
回路基板80は、図14に示すように、窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材81を介してヒートシンク12上に取り付けられる。つまり、回路基板80の裏面のLED92と反対側には、窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材81が取着され、放熱部材81の裏面はヒートシンク12上に取着され、放熱部材81が回路基板80とヒートシンク12との間に介挿される。
【0088】
この窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材81は、回路基板80と略同じ大きさで長方形の板状に形成され、図13、14に示すように、その上面が、熱伝導性の高い熱伝導性接着剤(熱伝導性粘着シート、熱伝導性接着シートを含む)により回路基板80の裏面に接着され、放熱部材81の裏面は、熱伝導性接着剤によりヒートシンク12上に接着される。
【0089】
上記構成の投光器91では、パッケージ型のLED92を実装した回路基板80とヒートシンク12間に、熱伝導率が良好で且つ誘電損失が小さく高周波電流に対する絶縁性の高い窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材81が介挿され、且つLED92のアノードリード84とヒートシンク12(グランド)間の距離が大きくなることにより、LEDチップ83のアノード及びアノードリードとグランド間の浮遊静電容量は大幅に減少する。
【0090】
このため、高周波信号のヒートシンク12側への漏洩流出を阻止して、LED92のアノードからPN接合部に高周波信号を効率良く供給することができ、且つLED92の放熱も十分に行われる。これにより、LED92の浮遊静電容量に起因した高周波信号のヒートシンク12への漏洩流出を防止して、高周波信号を高効率でLED92に供給し、LED92の高周波応答性(高速応答性)を向上させることができる。このため、空間光通信用の情報信号をOFDM方式などで変調して生成される高周波信号を、LED光に良好に重畳させ、空間光通信の高速化を図ることができる。
【0091】
また、空間光通信の送信器の投光器91に、照明用のパワーLEDが使用される場合、或いは長距離で可視光通信を行うため投光器にパワーLEDが使用される場合、LED92の熱を効率良くヒートシンク12に逃しLED92の発光効率を向上させて、空間光による高速通信を行なうことができる。
【0092】
なお、パッケージのないチップ型LEDについても、上記窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材を使用して、チップ型LEDの放熱を効率良く行なうとともに、誘電損失を小さくすることができる。この場合、チップ型LEDは、LEDチップがチップ基板上に、アノード電極に接続されるアノードリードとカソード電極に接続されるカソードリードとともに取着され、LEDチップの周囲を含む上面が封止樹脂により覆われ、回路基板上に実装される。そして、回路基板の裏面側に、放熱部材が熱伝導性接着剤により接着され、放熱部材の裏面は、熱伝導性接着剤によりヒートシンク上に接着される。
【0093】
また、図15に示すように、パッケージのケース82の底部を、窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材93で形成し、或いはケース82の底部に放熱部材93を取り付けることができる。この場合、LEDチップ83は、熱伝導性接着剤により放熱部材93上に接着され、放熱部材93はLEDチップ83とヒートシンク12との間に、回路基板80を挟んで、介挿されることとなる。この場合も、上記と同様、チップ型LEDの放熱を効率良く行なうとともに、誘電損失を小さくし、LEDに生じる浮遊静電容量を小さくすることができる。
【0094】
また、図16に示すように、上記ヒートシンク12に代えて、フィン付きヒートパイプを備えたヒートシンク32を、LED92の冷却用に使用することもできる。フィン付きヒートパイプ式のヒートシンク32は、金属製のヒートパイプ内に気化性の作動液が入れられ、ヒートパイプの底部の作動液が、LED92の熱を、放熱部材81を介して吸収し、気化する。ヒートパイプでは、作動液が気化して気化熱を吸収した後、フィン近傍のヒートパイプの冷却により、気化した作動液が液化して底部に戻り、放熱部材81を介してLED92の熱を冷却する。
【0095】
図16に示す如く、窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材81は、上記と同様、ヒートシンク32と回路基板80との間に介挿される。回路基板80の裏面のLED92と反対側に、放熱部材81が熱伝導性接着剤により接着され、放熱部材81の裏面がヒートシンク32のヒートパイプ上に熱伝導性接着剤により接着される。
【0096】
このヒートパイプ式のヒートシンク32を使用する投光器91は、LED92を実装した回路基板80とヒートシンク32間に、熱伝導率が良好で且つ誘電損失が小さく高周波電流に対する絶縁性の高い窒化ホウ素セラミックス製の放熱部材81が介挿され、且つLED92のアノードリード84とヒートシンク32(グランド)間の距離が大きくなり、LEDチップ83のアノード及びアノードリードとグランド間の浮遊静電容量は大幅に減少する。
【0097】
このため、高周波信号のヒートシンク32側への漏洩流出を阻止して、LED92のアノードからPN接合部に高周波信号を効率良く供給することができ、且つLED92の放熱も十分に行われる。これにより、LED92の浮遊静電容量に起因した高周波信号のヒートシンク32への漏洩流出を防止して、高周波信号を高効率でLED92に供給し、LED92の高周波応答性(高速応答性)を向上させることができる。
【符号の説明】
【0098】
1 投光器
2 LED
3 LEDチップ
4 アノードリード
5 カソードリード
6 アノードリード拡張部
6a 固定孔
9 スペーサ
10 回路基板
11 放熱部材
12 ヒートシンク
13 導電部
15 凹面反射鏡
15a 反射面
19 駆動回路
20 回路基板
21 投光器
22 LED
23 LEDチップ
24 アノードリード
25 凹面反射鏡
25a 反射面
26 カソードリード
30 回路基板
31 放熱部材
33 導電部
41 投光器
42 LED
43 LEDチップ
44 アノードリード
45 レンズ部
46 カソードリード
50 回路基板
51 放熱部材
53 導電部
54 開口部
61 放熱部材
71 投光器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17