特許第6304782号(P6304782)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社三谷バルブの特許一覧

特許6304782内容物放出状態切換え機構ならびにこの内容物放出状態切換え機構を備えたエアゾール式製品およびポンプ式製品
<>
  • 特許6304782-内容物放出状態切換え機構ならびにこの内容物放出状態切換え機構を備えたエアゾール式製品およびポンプ式製品 図000002
  • 特許6304782-内容物放出状態切換え機構ならびにこの内容物放出状態切換え機構を備えたエアゾール式製品およびポンプ式製品 図000003
  • 特許6304782-内容物放出状態切換え機構ならびにこの内容物放出状態切換え機構を備えたエアゾール式製品およびポンプ式製品 図000004
  • 特許6304782-内容物放出状態切換え機構ならびにこの内容物放出状態切換え機構を備えたエアゾール式製品およびポンプ式製品 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6304782
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】内容物放出状態切換え機構ならびにこの内容物放出状態切換え機構を備えたエアゾール式製品およびポンプ式製品
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/14 20060101AFI20180326BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20180326BHJP
   B05B 1/12 20060101ALI20180326BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20180326BHJP
   B05B 11/00 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   B65D83/14 220
   B65D83/00 K
   B05B1/12
   B05B9/04
   B05B11/00 101B
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-504048(P2016-504048)
(86)(22)【出願日】2015年2月10日
(86)【国際出願番号】JP2015053581
(87)【国際公開番号】WO2015125654
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2016年7月28日
(31)【優先権主張番号】特願2014-31359(P2014-31359)
(32)【優先日】2014年2月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144463
【氏名又は名称】株式会社三谷バルブ
(74)【代理人】
【識別番号】100097593
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 治幸
(72)【発明者】
【氏名】大島 保夫
【審査官】 谷川 啓亮
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02887273(US,A)
【文献】 米国特許第03703994(US,A)
【文献】 独国特許出願公開第1926796(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102005037068(DE,A1)
【文献】 特表2013−543465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
B65D 83/08 − 83/76
B05B 1/00 − 3/18
B05B 7/00 − 9/08
B05B 11/00 − 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の内容物を外部空間域へ放出するための出力側通路部,操作部およびカバーキャップを有し、前記カバーキャップへの周方向の回動操作により、前記操作部の上下方向への内容物放出操作が阻止されない静止モードおよび前記内容物放出操作が阻止されるロックモードを、選択的に設定する内容物放出状態切換え機構において、
前記出力側通路部は、
その下流側にそれぞれ前記外部空間域へ続く横方向の筒状態様で形成された複数の個別通路部と、
その上流側に弁作用部のステムから前記個別通路部へ続く縦方向の筒状態様で形成された共通通路部と、
前記個別通路部のそれぞれを前記共通通路部に選択的に連通させるための複数の孔部と、
前記共通通路部のステム係合側とは上下逆の内周面部分に形成されて、前記回動操作を可能とするための回動係合作用部と、を備え、
前記カバーキャップは、
前記出力側通路部と一体で前記容器本体に固定されるカバーキャップ下部と、
前記操作部と一体で、前記カバーキャップ下部との間の前記回動操作が可能な形に配設されたカバーキャップ上部と、を備え、
前記操作部は、
前記内容物放出操作の対象となる表面部分と、
前記表面部分とは反対の裏面側に形成されて、前記回動係合作用部との間の周方向回動にともない前記孔部それぞれの開閉状態を設定し、これにより前記共通通路部に通じる前記個別通路部を選択する選択作用部と、
前記静止モードのとき、前記孔部を介して前記共通通路部と連通する前記個別通路部の放出口との対向位置に設定される内容物放出用の開口部と、
前記ロックモードのとき、前記内容物放出操作の阻止状態に保持される放出操作阻止部と、を備え、
前記カバーキャップ下部は、
前記ロックモードのとき、前記放出操作阻止部を前記内容物放出操作の阻止状態に保持するストッパ部と、
前記ロックモードのとき、前記開口部に対向して、開口部内側の露出化を防止する遮蔽部と、を有し、
前記静止モードを設定する第一の前記回動操作により、
前記選択作用部を介して、前記開口部の対向部分となる前記個別通路部の前記孔部が前記共通通路部と連通し、
前記放出操作阻止部が前記ストッパ部から周方向にずれた状態に、かつ、前記遮蔽部が前記開口部の対向部分から周方向にずれた状態に、それぞれ配設され、
前記ロックモードを設定する第二の前記回動操作により、
前記個別通路部それぞれの前記孔部が前記選択作用部で閉塞され、
前記放出操作阻止部が前記ストッパ部と当接し、かつ、前記遮蔽部が前記開口部の対向部分に位置する状態に配設される、
ことを特徴とする内容物放出状態切換え機構。
【請求項2】
前記選択作用部は、
前記複数の孔部より上方位置までの短垂下部分および前記複数の孔部より下方位置までの長垂下部分を備えた、前記裏面側からの鞘状垂下部である、
ことを特徴とする請求項1記載の内容物放出状態切換え機構。
【請求項3】
前記出力側通路部は、
前記ステムに取り付けられる下端開口部と、
前記カバーキャップ下部との接続部分であって変位可能な形に設定された連結部と、を備えている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の内容物放出状態切換え機構。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の内容物放出状態切換え機構を備えて前記容器本体に放出用ガスおよび内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の内容物放出状態切換え機構を備えて前記容器本体に内容物を収容した、
ことを特徴とするポンプ式製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体内容物の出力側通路部から外部空間域への放出状態(放出パターン,放出量,霧状噴射,直噴など)の選択が可能な内容物放出状態切換え機構ならびにこの切換え機構を備えたエアゾール式製品およびポンプ式製品に関する。
【0002】
特に、出力側通路部や放出操作部などを保護するカバーキャップを上下に分けて、その下部が当該出力側通路部と一体で容器本体に固定され、その上部が当該放出操作部と一体で当該下部に対して回動可能な形に配設された内容物放出状態切換え機構に関する。
【0003】
内容物の出力側通路部は、外部空間域へ続く下流側の複数の個別通路部と、ステムから続く上流側の共通通路部とを有している。この出力側通路部および放出操作部の間の周方向回動操作(内容物放出操作とは別の放出状態切換え操作)により、共通通路部と連通した内容物通過域となる個別通路部が選択される。
【0004】
そして、選択された個別通路部の放出口側の形状,構造などに対応した放出状態(放出パターン,放出量,霧状噴射,直噴など)が設定される。
【0005】
内容物放出操作部などの保護部材であるカバーキャップを備えた内容物放出状態切換え機構において、切換え操作上の利便性を損なうことなく、カバーキャップの有効利用を図ることなどが望ましく、本発明はこのような要請に応えるものである。
【0006】
本発明の内容物放出状態切換え機構の適用対象はエアゾール式およびポンプ式の各製品である。
【0007】
この明細書および要約書においては、共通通路部と連通して内容物放出操作が可能な状態の個別通路部の放出口側を「前」とし、当該「前」と周方向に略180度反対側を「後」とする。すなわち、図1および図4の左側ならびに図2の右側が「前」で、図1および図4の右側ならびに図2の左側が「後」となる。
【0008】
また、「ヒンジ結合」の語を、第1の構成要素が第2の構成要素に対し変位可能、例えば回動可能な形で一体化していることを示す意で用いる。
【背景技術】
【0009】
従来、複数の個別通路部とその上流側の共通通路部とを有する操作ボタンに、その周方向への回動により使用対象の個別通路部を選択的に共通通路部と連通させる切換え部を設けた、スプレーボタンが提案されている(特許文献1参照)。
【0010】
このスプレーボタンは、使用対象の個別通路部を、操作ボタンと切換え部との間の回動操作で選択して共通通路部に連通させるようにしたものである。
【0011】
また、選択されなかった使用対象外の個別通路部の放出口を切換え部で覆うことにより、当該放出口がゴミ,チリなどで目詰まりするのを阻止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実願平1−93313号(実開平3−32002号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記提案済みのスプレーボタンにおける、切換え部の回動操作により、外部空間域への複数の個別通路部から使用対象のものを共通通路部へ選択的に連通させるといった基本的手法を、カバーキャップありの内容物放出機構に適用したものである。
【0014】
すなわち、内容物の出力側通路部や放出操作部などの保護部材であるカバーキャップを備えた内容物放出状態切換え機構において、簡単な切換え操作およびシンプルな切換え構造を確保し、かつ、カバーキャップの有効利用を図ることを目的とする。
【0015】
また、ステムに取り付けられる出力側通路部とカバーキャップ下部との連結部分を変位可能な形に設定し、これにより取付け対象のステム上端位置のバラツキをいわば吸収して、ステムと出力側通路部との間の取付け態様の確実化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)容器本体(例えば後述の容器本体1)の内容物を外部空間域へ放出するための出力側通路部(例えば後述の出力側通路部4),操作部(例えば後述の操作部6)およびカバーキャップ(例えば後述のカバーキャップ下部3およびカバーキャップ上部5)を有し、前記カバーキャップへの周方向の回動操作により、前記操作部の上下方向への内容物放出操作が阻止されない静止モードおよび前記内容物放出操作が阻止されるロックモードを、選択的に設定する内容物放出状態切換え機構において、
前記出力側通路部は、
その下流側にそれぞれ前記外部空間域へ続く横方向の筒状態様で形成された複数の個別通路部(例えば後述の個別通路部4c,4d,第1ノズル4g,第2ノズル4h)と、
その上流側に弁作用部のステム(例えば後述のステム2)から前記個別通路部へ続く縦方向の筒状態様で形成された共通通路部(例えば後述の共通縦通路部4b)と、
前記個別通路部のそれぞれを前記共通通路部に選択的に連通させるための複数の孔部(例えば後述の孔部4e,4f)と、
前記共通通路部のステム係合側とは上下逆の内周面部分に形成されて、前記回動操作を可能とするための回動係合作用部(例えば後述の上環凹状部4j)と、を備え、
前記カバーキャップは、
前記出力側通路部と一体で前記容器本体に固定されるカバーキャップ下部(例えば後述のカバーキャップ下部3)と、
前記操作部と一体で、前記カバーキャップ下部との間の前記回動操作が可能な形に配設されたカバーキャップ上部(例えば後述のカバーキャップ上部5)と、を備え、
前記操作部は、
前記内容物放出操作の対象となる表面部分(例えば後述の天板表面部分6c)と、
前記表面部分とは反対の裏面側に形成されて、前記回動係合作用部との間の周方向回動にともない前記孔部それぞれの開閉状態を設定し、これにより前記共通通路部に通じる前記個別通路部を選択する選択作用部(例えば後述の鞘状垂下部6d)と、
前記静止モードのとき、前記孔部を介して前記共通通路部と連通する前記個別通路部の放出口(例えば後述の第1ノズル4g,第2ノズル4h)との対向位置に設定される内容物放出用の開口部(例えば後述の開口部6b)と、
前記ロックモードのとき、前記内容物放出操作の阻止状態に保持される放出操作阻止部(例えば後述の放出操作阻止部6h)と、を備え、
前記カバーキャップ下部は、
前記ロックモードのとき、前記放出操作阻止部を前記内容物放出操作の阻止状態に保持するストッパ部(例えば後述のストッパ部3f)と、
前記ロックモードのとき、前記開口部に対向して、開口部内側の露出化を防止する遮蔽部(例えば後述の遮蔽部3g)と、を有し、
前記静止モードを設定する第一の前記回動操作により、
前記選択作用部を介して、前記開口部の対向部分となる前記個別通路部の前記孔部が前記共通通路部と連通し、
前記放出操作阻止部が前記ストッパ部から周方向にずれた状態に、かつ、前記遮蔽部が前記開口部の対向部分から周方向にずれた状態に、それぞれ配設され、
前記ロックモードを設定する第二の前記回動操作により、
前記個別通路部それぞれの前記孔部が前記選択作用部で閉塞され、
前記放出操作阻止部が前記ストッパ部と当接し、かつ、前記遮蔽部が前記開口部の対向部分に位置する状態に配設される、
構成態様のものを用いる。
(2)上記(1)において、
前記選択作用部は、
前記複数の孔部より上方位置までの短垂下部分(例えば後述の短垂下部分6g)および前記複数の孔部より下方位置までの長垂下部分(例えば後述の長垂下部分6f)を備えた、前記裏面側からの鞘状垂下部(例えば後述の鞘状垂下部6d)である、
構成態様のものを用いる。
(3)上記(1),(2)において、
前記出力側通路部は、
前記ステムに取り付けられる下端開口部(例えば後述の下端開口部4a)と、
前記カバーキャップ下部との接続部分であって変位可能な形に設定された連結部(例えば後述の平板状起立部4k,4m,屋根形状連結部4n,4p)と、を備えた、
構成態様のものを用いる。
【0017】
このような構成からなる内容物放出量切換え機構ならびに、当該内容物放出量切換え機構を備えて後述のガス,内容物などを収容したエアゾール式製品および、当該内容物放出量切換え機構を備えて後述の内容物などを収容したポンプ式製品を、本発明の対象としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以上の課題解決手段により、
(11)カバーキャップを備えた内容物放出状態切換え機構において、簡単な切換え操作およびシンプルな切換え構造を確保し、かつ、カバーキャップの有効利用を図る、
(12)出力側通路部の取付け対象域であるステム上端位置のバラツキをいわば吸収して、ステムと出力側通路部との間の取付け態様の確実化を図る、
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】図示左側の第1ノズル4gから円状パターンの内容物が外部空間域に噴射されえる状態の、静止モードを示す説明図である。
図2】図示右側の第2ノズル4hから縦長楕円状パターンの内容物が外部空間域に噴射されえる状態の、静止モードを示す説明図である。
図3図1の上ユニット(カバーキャップ上部5+操作部6)をその上方からみて反時計方向に90度ほど回動させた状態のロックモードを示す説明図である。
図4図1の操作部6を押下げ回動操作したときの第1ノズル4gからの内容物噴射状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1図4を用いて本発明を実施するための形態を説明する。
【0021】
上述したように本発明はエアゾール式製品およびポンプ式製品を対象としているが、以下の説明では、単なる説明の便宜上、エアゾール式製品の場合を前提とする。
【0022】
なお、以下のアルファベット付き参照番号の構成要素(例えば肩カバー1a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば容器本体1)の一部であることを示している。
【0023】
図1乃至図4において、
1は後述の内容物および噴射用ガスを収納したエアゾール式製品の容器本体,
1aは容器本体1の上側部分を構成する周知の肩カバー
1bは肩カバー1aの外側下端部分に形成されて、後述のカバーキャップ下部3の周方向凸状部3aと強く係合する環凹状部,
2は周知のバルブ機構(図示省略)の構成要素であって、コイルスプリング(図示省略)の弾性力により上方向に付勢されるステム,
をそれぞれ示している。
【0024】
また、
3は後述の出力側通路部4と一体成形されて、容器本体1に固定状態で取り付けられる略筒状のカバーキャップ下部,
3aは当該カバーキャップ下部の内周面下端部分に複数形成されて、環凹状部1bと強く係合する周方向凸状部,
3bは当該カバーキャップ下部の内周面縦方向に複数形成されて、周方向凸状部3aとともに肩カバー1aの下外端部分を挟持する縦リブ状部,
3cは当該カバーキャップ下部の外周面上端側部分に形成されて、当該カバーキャップ下部(容器本体1)と、後述のカバーキャップ上部5との間の相対的な周方向回動操作を案内する下環凹状部,
3d,3eは平面視状態における後述の個別横通路部4c,4dからなる直線状部分の両側で、かつ、当該個別横通路部の下方域の前後方向に、それぞれ形成された一対の天板状片部,
3fは一方の天板状片部3dの外端側部分に円弧状起立部態様で形成されて、後述の操作部6を、押下げ操作(内容物放出操作)阻止状態にロックするストッパ部(図3参照),
3gは他方の天板状片部3eの外端側部分に円弧状起立部態様で形成されて、押下げ操作阻止のロックモードのとき、後述の操作部6の開口部6bと対向することによりカバーキャップ内部の露出化を防止する遮蔽部(図3参照),
をそれぞれ示している。
【0025】
また、
4はカバーキャップ下部3と一体成形されて、ステム2の内容物流出側に取り付けられる出力側通路部,
4aはステム2の流出部分に嵌合状態で取り付けられる下端開口部,
4bは下端開口部4aからその下流側に続く筒状の共通縦通路部,
4c,4dは共通縦通路部4bから略180度反対の各横方向に延びる筒状で一対の個別横通路部,
4e,4fは共通縦通路部4bと個別横通路部4c,4dとの間の孔部,
4gは個別横通路部4cの構成要素であり、その下流端部分に取り付けられて外部空間域への放出口として作動し、円状パターンの内容物噴射を設定する周知の第1ノズル,
4hは個別横通路部4dの構成要素であり、その下流端部分に取り付けられて外部空間域への放出口として作動し、かつ、当該放出口の先端左右両側の外部に設けた対向壁の流れ規制作用に基づいて縦長楕円状パターンの内容物噴射を設定する周知の第2ノズル,
4jは共通縦通路部4bの内周面で孔部4e,4fよりも上方の上端側部分に形成されて、当該出力側通路部部(容器本体1)と、後述のカバーキャップ上部5との間の相対的な周方向回動操作を案内する上環凹状部(回動係合作用部に相当),
4k,4mはカバーキャップ下部3と当該出力側通路部との一体成形接続部分の外端側であって、天板状片部3d,3eそれぞれの対向内端側部分にヒンジ結合態様により形成された一対の平板状起立部(連結部に相当:図3参照),
4n,4pはカバーキャップ下部3と当該出力側通路部との一体成形接続部分の内側であって、平板状起立部4k,4mの上内端部分、および共通縦通路部4bの外周面それぞれとのヒンジ結合態様により形成された一対のいわば屋根形状連結部(連結部に相当:図3参照),
をそれぞれ示している。
【0026】
また、
5は後述の操作部6と一体成形され、かつ、カバーキャップ下部3にその周方向へ回動可能な形で取り付けられて出力側通路部4および後述の操作部6などを保護する略筒状のカバーキャップ上部,
5aは当該カバーキャップ上部の内周面下端部分に複数形成されて、下環凹状部3cとの係合案内作用により、当該カバーキャップ上部と、カバーキャップ下部3(容器本体1)との間の相対的な周方向回動操作を案内する周方向下凸状部,
5bは後述の操作部6などの保護のためその左右両側に配設された一対の壁状部,
5cは当該カバーキャップ上部の後側部分に形成されて、利用者の指が、後述の操作部6の押下げ操作のいわば最終段階で当接する操作規制部,
をそれぞれ示している。
【0027】
また、
6はカバーキャップ上部5と一体成形された作動モード設定用で回動タイプの操作部,
6aは当該操作部とカバーキャップ上部5とのヒンジ結合部、すなわち当該操作部の回動中心として作用する薄肉部,
6bは薄肉部6aの直上部分に形成された内容物噴射用の開口部,
6cは操作対象面としての天板表面部分,
6dは天板表面部分6cと上下反対側となる天板裏面部分の略中央に形成されて、出力側通路部4の共通縦通路部4bに回動可能な状態で係合案内される鞘状垂下部(選択作用部に相当),
6eは鞘状垂下部6dの外周面に複数形成されて、出力側通路部4の上環凹状部4jとの係合案内作用により、当該操作部(カバーキャップ上部5)と、カバーキャップ下部3(容器本体1)との間の相対的な周方向回動操作を案内する周方向上凸状部,
6fは鞘状垂下部6dの周面部分の中で下端までが長い、すなわち下端部分が出力側通路部4の孔部4e,4fより下方まで延びる形で設定されて、当該孔部の任意の一方または双方を選択的に閉じる長垂下部分,
6gは鞘状垂下部6dの周面部分の中で下端までが短い、すなわち下端部分が出力側通路部4の孔部4e,4fの上方に位置する形で設定されて、当該孔部に対する選択的な開閉動作を生じえない短垂下部分,
6hは当該操作部の後下端部分であって、ロックモード(図3参照)のとき、カバーキャップ下部3のストッパ部3fとの対向,当接作用により当該操作部の押下げ操作を阻止する放出操作阻止部,
をそれぞれ示している。
【0028】
ここで、ステム2,カバーキャップ下部3,出力側通路部4,カバーキャップ上部5および操作部6などは例えばポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。容器本体1は例えば金属製のものである。
【0029】
なお上述したように、カバーキャップ下部3および出力側通路部4の下ユニット、およびカバーキャップ上部5および操作部6の上ユニットはそれぞれ一体成形品である。
【0030】
図示の内容物放出状態切換え機構の基本的特徴は、
(21)容器本体1に常時、すなわち内容物噴射状態の作動モードのときも取り付けられて、前後方向反転位置の第1ノズル4bおよび第2ノズル4hを備えた出力側通路部4や、作動モード設定用の操作部6などを保護するカバーキャップを、カバーキャップ下部3とカバーキャップ上部5とに分割し、
(22)カバーキャップ下部3および出力側通路部4を、これら相互間のカバーキャップ周方向への回動が生じない形の下ユニットとし、
(23)カバーキャップ上部5および操作部6を、これら相互間のカバーキャップ周方向への回動が生じない形の上ユニットとし、
(24)カバーキャップ下部3を容器本体1に固定的に取り付け、かつ、当該カバーキャップ下部と一体の出力側通路部4の下端開口部4aをステム2に嵌合させ、
(25)カバーキャップ上部5をカバーキャップ下部3に対して双方間の相対的回動が可能な態様で配設し、かつ、当該カバーキャップ上部と一体の操作部6を出力側通路部4に対して双方間の相対的回動が可能な態様で配設した、
ことである。
【0031】
すなわち、例えば容器本体1を利用者が把持したとき、これと一体のカバーキャップ下部3,出力側通路部4の下ユニットも固定され、カバーキャップ上部5および操作部6の上ユニットがこの下ユニットに対してカバーキャップ周方向に回動可能なことである。
【0032】
上ユニットの周方向回動操作にともない、操作部6の開口部6bが第1ノズル4gまたは第2ノズル4hとの対向状態に、かつ、長垂下部分6fが出力側通路部4の孔部4eまたは孔部4fの閉状態に,それぞれ選択的に設定される(図1図2参照)。
【0033】
容器本体1に固定された下ユニットを構成する第1ノズル4gおよび第2ノズル4hそれぞれの位置は、勿論、上ユニットの周方向回動操作の前後で変化しない。
【0034】
なお、ステム2に取り付けられる出力側通路部4(共通縦通路部4b,個別横通路部4c,4d)およびカバーキャップ下部3は、屋根形状連結部4n,4pおよび平板状起立部4k,4mのそれぞれとのヒンジ結合により一体化している。
【0035】
このヒンジ結合にともなう変位作用により、出力側通路部4の取付け対象となるステム上端位置のバラツキをいわば吸収して、ステム2と出力側通路部4との一体化取付け精度を確実なものにしている。
【0036】
図1は、第1ノズル4gから円状パターンの内容物が外部空間域に噴射されえる状態の、静止モードを示している。
【0037】
このとき、操作部6は、その開口部6bが第1ノズル4gに対向し、その長垂下部分6fが出力側通路部4の孔部4fを閉塞し、かつ、その短垂下部分6gが孔部4eよりも上方に位置する状態に設定される。操作部6の放出操作阻止部6hは勿論、ストッパ部3fから周方向にずれている。
【0038】
ステム2と第1ノズル4gとは、共通縦通路部4b,孔部4eおよび個別横通路部4cを経て連通する。
【0039】
なお、図1のステム2は弾性力で上方向に付勢されて周知のステム弁作用部が閉じているので、容器本体1の内容物が共通縦通路部4bへ流入することはない。
【0040】
図2は、第2ノズル4hから縦長楕円状パターンの内容物が外部空間域に噴射されえる状態の、静止モードを示している。
【0041】
すなわち、図1の上ユニット(カバーキャップ上部5および操作部6)を、下ユニット(カバーキャップ下部3および出力側通路部4)に対して180度回動させることにより、当該上ユニットの図示左右関係が逆転した状態に相当する。
【0042】
このとき、操作部6は、その開口部6bが第2ノズル4hに対向し、その長垂下部分6fが出力側通路部4の孔部4eを閉塞し、かつ、その短垂下部分6gが孔部4fよりも上方に位置する状態に設定される。図1の場合と同じように、操作部6の放出操作阻止部6hはストッパ部3fから周方向にずれている。
【0043】
ステム2と第2ノズル4hとは、共通縦通路部4b,孔部4fおよび個別横通路部4dを経て連通する。
【0044】
図1の場合と同じように、図2においても周知のステム弁作用部が閉じているので、容器本体1の内容物が共通縦通路部4bへ流入することはない。
【0045】
図3は、図1の上ユニット(カバーキャップ上部5および操作部6)をその上方からみて反時計方向に90度ほど回動させた状態のロックモードを示している。
【0046】
このとき、操作部6は、その開口部6bがカバーキャップ下部3の遮蔽部3gに対向し、その長垂下部分6fが出力側通路部4の孔部4e,4fをそれぞれ閉塞し、かつ、その放出操作阻止部6hがストッパ部3fと対向,当接する状態に設定される。
【0047】
この放出操作阻止部6hとカバーキャップ下部3のストッパ部3fとの対向,当接作用により、図3のロックモードにおける操作部6への作動モード設定用の押下げ操作は確実に阻止される。
【0048】
また、操作部6の開口部6bはカバーキャップ下部3の遮蔽部3gに対向するので、当該開口部の内側に配設された出力側通路部4(共通縦通路部4b,個別横通路部4c,4dの外周面部分など)が利用者にとっていわば目障りとなるようなことは生じにくい。
【0049】
図4は、図1の操作部6を押下げ操作したときの第1ノズル4gからの内容物噴射状態を示している。
【0050】
利用者が図1の操作部6の天板表面部分6cを押下げることにより、当該操作部は薄肉部6aを中心にして図示時計方向に回動する。
【0051】
この回動にともない、操作部6の鞘状垂下部6dと係合状態の出力側通路部4ならびにこれとの一体成形部分である平板状起立部4k,4m,屋根形状連結部4n,4pおよび天板状片部3d,3eが、全体として後方下がり状態に変位しながら下動する。この下方への移動は、ステム2に対する周知の上方向への弾性力に抗しながらのシフトである。
【0052】
この変位,下動にともない、ステム2も、上方向への弾性力に抗しながら後方傾斜の状態で下方に移動して、周知のステム弁作用部(例えばステム内外連通用の孔部とこれに対するステムガスケット)がそれまでの閉状態から開状態にシフトする。
【0053】
このステム弁作用部の開状態へのシフト動作により、容器本体1の内容物が噴射剤の作用で「ステム弁作用部−ステム2の内部通路域−共通縦通路部4b−孔部4e−個別横通路部4c」を経て、第1ノズル4gから円状パターンにて外部空間域に噴射される。
【0054】
図2の天板表面部分6cを押下げ操作したときにも、図4と同様に「ステム弁作用部−ステム2の内部通路域−共通縦通路部4b−孔部4f−個別横通路部4d」を経て、第2ノズル4hから縦長楕円状パターンにて外部空間域に噴射される、ことは勿論である。
【0055】
なお、利用者が天板表面部分6cの押下げ操作を終えると、それまで図4に示すように下動(回動)していたステム2および出力側通路部4,操作部6が周知のステム付勢用のコイルスプリングの弾性力により上動(回動)する。
【0056】
この弾性力に基づく上方向への回動作用により、ステム2などは、図1の円状パターン噴射が可能な静止モード、および図2の縦長楕円上パターン噴射が可能な静止モードにそれぞれ復帰する。
【0057】
なお、本発明が図示の内容に限定されないことは勿論であり例えば、
(31)個別横通路部4c,4dの流出側に取り付けるノズルとして、例えばノズル先端孔部の径の変更により内容物噴射量を調整するタイプや、ノズル先端側などに設けた溝部により噴射内容物の噴霧化を図るタイプなどの各種ノズルを用いる、
(32)操作部6の長垂下部分6fの周方向設定範囲を、図3のロックモードにおいて、
図示のように出力側通路部4の孔部4e,4fの双方を閉じることに代え、当該孔部の双方を開く、または当該孔部のいずれか一方を開く態様に設定する、
(33)3個以上の個別横通路部およびそれぞれの共通縦通路部との孔部を設定し、当該孔部の位置に応じて長垂下部分6fの周方向設定範囲を変化させる、
(34)操作部として、上下動タイプ,チルト作動タイプやトリガレバータイプなどの各種操作部材を用いる、
(35)任意の構成要素間の凹状部と凸状部との形状関係を逆にする、
(36)操作部6の開口部6bに代えて、いわば天板部分まで連続開口した内容物噴射用の切欠状部を形成する、
(37)利用者が、図1図2および図3それぞれの状態を選択操作する際に、カバーキャップ上部5を手などで固定保持してから、カバーキャップ下部3および容器本体1を当該カバーキャップ上部に対して回動する、
ようにしてもよい。
【0058】
容器内容物の対象としては、液状,発泡性(泡状),ペースト状,ジェル状,粉状などの各種性状のものがある。
【0059】
本発明が適用されるエアゾール式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0060】
容器本体に収容される内容物としては、液状,クリーム状,ゲル状など種々の形態のものを用いる。内容物に配合される成分は例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分,水などである。
【0061】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0062】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0063】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコール,グリセリン,1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0064】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0065】
高分子化合物としては、ヒドロキシエチルセルロース,メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼイン,キサンタンガム,カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【0066】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ピレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、パラフェノールスルホン酸亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,過酸化水素水などの酸化剤、リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0067】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0068】
エアゾール式製品における内容物噴射用ガスとしては、炭酸ガス,窒素ガス,圧縮空気,酸素ガス,希ガス,これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス,ジメチルエーテル,フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【符号の説明】
【0069】
1:容器本体
1a:肩カバー
1b:環凹状部
2:ステム
【0070】
3:略筒状のカバーキャップ下部
3a:周方向凸状部
3b:縦リブ状部
3c:下環凹状部
3d,3e:天板状片部
3f:ストッパ部
3g:遮蔽部
【0071】
4:出力側通路部
4a:下端開口部
4b:共通縦通路部
4c,4d:個別横通路部
4e,4f:孔部
4g:第1ノズル
4h:第2ノズル
4j:上環凹状部
4k,4m:平板状起立部
4n,4p:屋根形状連結部
【0072】
5:カバーキャップ上部
5a:周方向下凸状部
5b:壁状部
5c:操作規制部
【0073】
6:回動タイプの操作部
6a:薄肉部
6b:開口部
6c:天板表面部分
6d:鞘状垂下部
6e:周方向上凸状部
6f:長垂下部分
6g:短垂下部分
6h:放出操作阻止部
図1
図2
図3
図4