(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記付勢部材の付勢力により前記センサーアームが最大限揺動した状態において、前記当接部が、前記センサーアームの前記他端よりも管路径方向の外方に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の管路内径検査装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、管路内を検査する検査具は、例えば管路内面の一部に欠損がある、または異径管路等の理由で管路内を前進不能になった場合には、後退させる必要がある。しかしながら、特許文献1の管路用たわみ測定器は、羽根部がたわんだ状態でその先端部が管路内面に接触する構成であるため、後退させると、羽根部の先端が管路内面に引っ掛かって羽根部が座屈してしまう。また、後退させる途中で内径が小さくなる段差がある場合には、羽根部の先端部が段差に当たってそれ以上後退できなくなってしまう。
【0007】
そこで、本発明は、管路内を管路長さ方向のどちらの方向にも走行可能な管路内径検査装置を提供することを目的とする。
【0008】
第1の発明に係る管路内径検査装置は、管路内を管路長さ方向に走行可能な台車と、
管路周方向に並んで配置され、それぞれの一端が前記台車に対して管路径方向に揺動可能に取り付けられており、
それぞれの他端
部が管路長さ方向に延びると共に、一端と他端の間に管路内面方向に突出する当接部を
それぞれ有する
複数のセンサーアームと、前記台車に取り付けられ、前記センサーアームを管路内面方向に付勢して、前記当接部を管路内面に当接させる付勢部材とを備えていることを特徴とする。
第2の発明に係る管路内径検査装置は、管路内を管路長さ方向に走行可能な台車と、その一端が前記台車に対して管路径方向に揺動可能に取り付けられており、他端部が管路長さ方向に延びると共に、一端と他端の間に管路内面方向に突出する当接部を有するセンサーアームと、前記台車に取り付けられ、前記センサーアームを管路内面方向に付勢して、前記当接部を管路内面に当接させる付勢部材とを備えており、前記台車は、前記センサーアームおよび前記付勢部材が取り付けられる台座部と、前記台座部から下方に延びており、その下端が管路内面に接する脚部とを有しており、前記脚部の上下方向長さが変更可能であることを特徴とする。
【0009】
第1の発明および第2の発明によると、管路内径検査装置が管路内を走行中、当接部が管路内面の段差を通過すると、センサーアームが揺動するため、その揺動方向の変位を検出することで、管路の内径の変化を検査できる。
当接部は、センサーアームの管路長さ方向の途中部に突出して設けられているため、センサーアームの両端部を管路内面に当接させることなく、当接部だけを管路内面に当接させることができる。したがって、管路の内径が大きくなる段差をセンサーアームが通過した後で、検査装置を逆方向に走行させても、センサーアームの端部がこの段差に接触するのを防止できる。そのため、管路長さ方向のどちらの方向にも検査装置を走行させることができる。また、センサーアームの破損を防止できる。
また、付勢部材によってセンサーアームを付勢することで、センサーアームの当接部を管路内面に当接させているため、センサーアーム自体の弾性力によってセンサーアームの一部を管路内面に当接させる場合に比べて、センサーアームの剛性を高くすることができる。したがって、センサーアームの振動やたわみを防止でき、検査精度を向上できる。
さらに、第1の発明によると、管路周方向に並んだ複数のセンサーアームによって、管路の内径の変化を検査するため、検査精度を向上できると共に、管路内面の形状をより詳細に把握することができる。
また、第2の発明によると、管路内径検査装置の脚部の上下方向長さを変更することで、様々な内径の管路の検査を1つの管路内径検査装置で行うことができる。
尚、本発明及び本明細書において、管路内面方向とは、管路の中心から管路内面に向かう管路径方向のことである。
【0010】
第3の発明は、第1の発明において、前記台車は、前記センサーアームおよび前記付勢部材が取り付けられる台座部と、前記台座部から下方に延びており、その下端が管路内面に接する脚部とを有しており、前記脚部の上下方向長さが変更可能であることを特徴とする。
この構成によると、管路内径検査装置の脚部の上下方向長さを変更することで、様々な内径の管路の検査を1つの管路内径検査装置で行うことができる。
【0011】
第4の発明に係る管路内径検査装置は、第1〜第3の発明のいずれかにおいて、前記付勢部材の付勢力により前記センサーアームが最大限揺動した状態において、前記当接部が、前記センサーアームの前記他端よりも管路径方向の外方に位置することを特徴とする。
この構成によると、当接部は、常に、センサーアームの前記他端よりも管路径方向の外方に位置するため、センサーアームの他端が当接部より走行方向前方となるように走行している際に、管路の内径が極端に大きくなる段差が存在しても、センサーアームの他端が管路内面に接触するのを防止できる。
【0012】
第
5の発明に係る管路内径検査装置は、第1
〜第4の発明のいずれかにおいて、前記センサーアームの前記一端から前記センサーアームの前記他端よりも離れた位置に配置された目盛り板と、前記目盛り板と前記センサーアームの前記他端を撮影可能な撮影装置とを備えることを特徴とする。
【0013】
この構成によると、撮影装置は、センサーアームの前記他端と目盛り板とを撮影するため、撮影装置の撮影画像から、センサーアームの前記他端の目盛り板に対する位置の変化を確認することで、センサーアームの揺動方向の変位を検出でき、管路の内径の変化を検査することができる。
また、センサーアームの前記他端は、当接部よりも揺動軸から離れているため、センサーアームが揺動したときの前記他端の移動量は、当接部の移動量よりも大きくなる。そのため、管路内面の段差が小さい場合であっても検出しやすい。
【0014】
第
6の発明に係る管路内径検査装置は、第1〜第
5の発明のいずれかにおいて、前記付勢部材は、前記センサーアームと前記台車との間に管路径方向に沿って配置された圧縮バネを有することを特徴とする。
【0015】
この構成によると、圧縮バネの圧縮方向は管路径方向であるため、圧縮バネの弾性復元力によって当接部を管路内面に管路径方向に強固に押し付けることができる。その結果、当接部が管路内面の段差を通過する際に、当接部を管路内面に確実に追従させて、センサーアームが振動するのを防止できるため、検査精度を向上できる。
【0018】
第
7の発明に係る管路内径検査装置は、第1〜第
6の発明のいずれかにおいて、前記当接部が、管路内面方向に突出した「円弧状」または「くの字状」であることを特徴とする。
【0019】
この構成によると、当接部は、管路径方向に対して管路長さ方向に傾斜する縁部を有するため、内径が小さくなる段差を当接部が通過する際に、当接部が段差に引っ掛かるのを防止できる。
【0020】
第
8の発明に係る管路内径検査装置は、第1〜第
7の発明のいずれかにおいて、前記当接部の管路内面方向の突出高さが変更可能であることを特徴とする。
【0021】
この構成によると、管路内径検査装置の当接部の突出高さを変更することで、様々な内径の管路の検査を1つの管路内径検査装置で行うことができる。
【0024】
第9の発明に係る管路内径検査装置は、第1〜第8の発明のいずれかにおいて、前記台車に取り付けられ、管路内面を撮影可能な撮影装置を備えていることを特徴とする。
【0025】
この構成によると、台車を走行させつつ撮影装置で管路内面を撮影することで、撮影画像から管路内面の欠陥の有無などを確認することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、本実施形態の管路内径検査装置1は、下水道管、上水道管、ガス管などの地中に埋設された断面円形の管路Pに挿通されて、管路Pの内径の変化を検査する装置である。下水道管などの地中管路Pは、通常は内径が一定であるが、まれに管路Pの途中に異径管が配置されていたりして、管路Pの内径が一定でない場合がある。管路内径検査装置1は、このような管路Pの内径の変化を検査するために用いられる。この検査は、例えば、管路の内面に補修が必要か否かを判断したり、補修方法によっては補修が可能かどうかを判断するために行われる。なお、
図1では管路Pの延在方向はほぼ水平であるが水平でなくてもよい。本実施形態の管路内径検査装置1が検査対象とする管路Pの基本内径をR1とする。R1は、例えば200mmである。
【0028】
管路内径検査装置1は、台車2と、3つのセンサーアーム部材3と、3つの圧縮バネ(付勢部材)4と、目盛り板5と、撮影装置6と、照明装置7とを有する。以下、管路内径検査装置1を管路P内に設置した状態での管路長さ方向、管路径方向、および管路周方向を用いて、管路内径検査装置1について説明する。
【0029】
台車2は、略板状の台座部21と、台座部21から下方に延び、管路Pの内面に接する脚部22とを有する。台座部21には、3つのセンサーアーム部材3、3つの圧縮バネ4、目盛り板5、撮影装置6、および照明装置7が取り付けられている。
図2(a)に示すように、台座部21は、管路長さ方向に延びている。台座部21の管路長さ方向の両端部には、それぞれ牽引線連結部23が設けられており、この牽引線連結部23には、ワイヤーなどの牽引線24が取り付けられる。
【0030】
また、台座部21の長手方向に沿った両縁部には、それぞれ2つの脚連結部25が接続されている。管路長さ方向に並ぶ2つの脚連結部25は、2つの長さ調整部材26を介して滑走部材27に連結されている。脚部22は、4つの脚連結部25と、4つの長さ調整部材26と、2つの滑走部材27によって構成されている。脚連結部25と長さ調整部材26はボルトとナットで着脱可能に連結されており、長さ調整部材26と滑走部材27もボルトとナットで着脱可能に連結されている。長さ調整部材26は、略三角形状の板状部材である。
図2(b)に示すように、管路長さ方向から見たとき、長さ調整部材26は、管路径方向に沿って配置されている。
【0031】
滑走部材27は、管路長さ方向に延びるソリ状の部材である。台座部21に取り付けられた牽引線24を管路長さ方向に引っ張ることで、2つの滑走部材27が管路Pの内面を管路長さ方向に摺動して、管路内径検査装置1が管路P内を走行する。上述したように牽引線24は台座部21の管路長さ方向の両端部に取り付けられているため、台車2は管路P内を管路長さ方向のどちらの方向にも走行できる。
【0032】
3つのセンサーアーム部材3は、台座部21の上方に管路周方向に並んで配置されており、互いにほぼ同じ形状である。なお、
図2(a)では、3つのセンサーアーム部材3のうち中央のセンサーアーム部材3のみを表示しており、両側の2つのセンサーアーム部材3の表示は省略している。
【0033】
センサーアーム部材3は、例えば金属で形成された細長い板状の部材である。センサーアーム部材3は、その長手方向が管路長さ方向に沿うように配置され、長手方向の一端部が台座部21に取り付けられている。各センサーアーム部材3は、その板厚方向が管路Pの略周方向となるように配置されている。また、各センサーアーム部材3は、その板厚方向に延びる軸線Cs(以下、揺動軸Csとする)を中心として揺動可能に台座部21に取り付けられている。したがって、各センサーアーム部材3は、管路Pの略径方向に揺動可能となっている。
図2(a)に示すように、センサーアーム部材3の揺動方向のうち、センサーアーム部材3の揺動軸Csと反対側の先端3bが、台座部21から離れる方向(管路内面に向かう方向)をX方向とする。
【0034】
センサーアーム部材3は、管路長さ方向の途中部に、X方向(管路内面方向)に突出する当接部3aを有する。この当接部3aは、揺動軸Cs方向(センサーアーム部材3の板厚方向)から見て、円弧状に形成されている。また、センサーアーム部材3の上縁(管路径方向の外方の縁)のうち当接部3aとその周囲部との連結部分は、揺動軸Cs方向から見て凹状となる円弧状に形成されており、当接部3aとその周囲部とは滑らかに接続されている。
【0035】
センサーアーム部材3は、当接部3aにおいて管路Pの内面に当接する。
図2(b)に示すように、基本内径R1の管路内面に当接部3aと滑走部材27が接している状態で管路長さ方向から見たとき、3つのセンサーアーム部材3の側面の延長線は、管路Pの中心軸Cの近傍で交差する。なお、3つのセンサーアーム部材3の側面の延長線が中心軸Cで交差するようにセンサーアーム部材3が配置されていてもよい。
【0036】
管路内径検査装置1が管路P内を走行中、
図3に示すように、内径が基本内径R1より小さくなる段差を当接部3aが通過すると、センサーアーム部材3はX方向(
図2(a)参照)と逆方向に揺動する。また、管路内径検査装置1が管路P内を走行中、
図4に示すように、内径が基本内径R1より大きくなる段差を当接部3aが通過すると、センサーアーム部材3はX方向に揺動する。
【0037】
センサーアーム部材3の当接部3aより先端3b側の部分は、揺動軸Cs方向から見て、先端3bに向かって先細り状に形成されている。センサーアーム部材3の先端3bの下縁(管路径方向内側の縁)は、センサーアーム部材3の板厚方向に対して斜めに形成されている(
図2(b)参照)。
【0038】
また、基本内径R1の管路内面に当接部3aと滑走部材27が接している状態において、センサーアーム部材3の上縁(管路径方向内側の縁)のうち当接部3aより先端3b側の部分は、先端3bに向かうほど径方向内側に向かうように管路長さ方向に対して傾斜している。
【0039】
センサーアーム部材3は、揺動軸Csの近傍において屈曲している。また、基本内径R1の管路内面に当接部3aと滑走部材27が接している状態において、センサーアーム部材3の上縁のうち当接部3aより揺動軸Cs側の部分は、揺動軸Csに向かうほど径方向内側に向かうように管路長さ方向に対して傾斜している。
【0040】
3つの圧縮バネ4は、その一端が3つのセンサーアーム部材3にそれぞれ連結され、他端が台座部21に連結されている。圧縮バネ4は、センサーアーム部材3の揺動軸Csの近傍に連結されている。また、圧縮バネ4は、コイルバネであって、そのコイル軸方向が管路径方向に沿うように配置されている。基本内径R1の管路内面に当接部3aと滑走部材27が接している状態において、圧縮バネ4は圧縮された状態となる。この圧縮バネ4によって、センサーアーム部材3はX方向に付勢され、当接部3aが管路Pの内面に押し付けられる。
【0041】
図2(a)に示す二点鎖線のセンサーアーム部材3は、圧縮バネ4の付勢力によりセンサーアーム部材3が最大限揺動した状態を示している。圧縮バネ4の付勢力によりセンサーアーム部材3が最大限揺動した状態において、当接部3aは、センサーアーム部材3の先端3bよりも管路径方向の外方に位置する。
【0042】
目盛り板5は、台座部21のセンサーアーム部材3の先端3bよりも揺動軸Csから離れた位置に設置されている。目盛り板5は、管路長さ方向に垂直に配置されている。目盛り板5は、上部が半円形状に形成されている。また、目盛り板5のセンサーアーム部材3側の面は、4つの領域51〜54に色分けされている。領域51〜54は、目盛り板5の上縁から下方に向かってこの順で並んでおり、領域51〜53は扇形状に形成されている。
【0043】
目盛り板5の上縁(領域51の上縁)は、センサーアーム部材3の当接部3aが当接している管路Pの内径がR1の場合のセンサーアーム部材3の先端3bの位置に対応している。領域52の上縁(領域51の下縁)は、センサーアーム部材3の当接部3aが当接している管路Pの内径がR1−10mmの場合のセンサーアーム部材3の先端3bの位置に対応している。領域53の上縁(領域52の下縁)は、センサーアーム部材3の当接部3aが当接している管路Pの内径がR1−15mmの場合のセンサーアーム部材3の先端3bの位置に対応している。領域54の上縁(領域53の下縁)は、センサーアーム部材3の当接部3aが当接している管路Pの内径がR1−20mmの場合のセンサーアーム部材3の先端3bの位置に対応している。つまり、領域51の上縁から下縁までの離間距離は、当接部3aの管路径方向の10mmの移動量に対応しており、領域52、53の上縁から下縁までの離間距離は、当接部3aの管路径方向の5mmの移動量に対応している。
【0044】
また、上述したようにセンサーアーム部材3の先端3bの下縁は、センサーアーム部材3の板厚方向に対して斜めに形成されており、各領域51〜54の上縁は、厳密には、先端3bの管路の中心軸Cに最も近い角部の位置に対応している。
【0045】
図3に示すように、内径がR1−20mmの管路内面に当接部3aと滑走部材27が接している状態では、センサーアーム部材3の先端3bは、領域51の上縁の位置に配置される。また、
図4に示すように、内径がR1+10mmの管路内面に当接部3aと滑走部材27が接している状態では、センサーアーム部材3の先端3bは、目盛り板5の上縁より上方(管路径方向の外方)に配置される。
【0046】
撮影装置6は、目盛り板5とセンサーアーム部材3の先端3bを撮影するためのものであって、台座部21の上部に設置されている。撮影装置6は、管路内面も撮影できるように、撮影視野を広く設定しておくことが好ましい。撮影装置6は、センサーアーム部材3の下方からセンサーアーム部材3を撮影するため、センサーアーム部材3の先端3bが最下端でない場合でも、センサーアーム部材3の先端3bを撮影可能である。
【0047】
また、撮影装置6は、撮影開始時からの時間をカウントできるようになっている。撮影装置6で撮影された画像データと撮影時間データは、撮影装置6に内蔵された記録部に記録される。撮影装置6は、防水性を有することが好ましい。撮影装置6としては、例えば映像記録型のドライブレコーダを用いてもよい。
【0048】
照明装置7は、撮影装置6の撮影対象である目盛り板5とセンサーアーム部材3の先端3bに光を照射するためのものであって、台座部21の上部に設置されている。照明装置7は、防水性を有することが好ましい。なお、撮影装置6が照明を備えている場合、照明装置7はなくてもよい。
【0049】
次に、本実施形態の管路内径検査装置1を用いて管路Pの内径の変化を検査する方法について説明する。
【0050】
管路内径検査装置1を管路P内に配置して、撮影装置6を撮影状態にしながら、台座部21の管路長さ方向の両端部に取り付けられた2本の牽引線24のいずれか一方を所定の速度で牽引して管路内径検査装置1を走行させる。上述したように、管路内径検査装置1はどちらの方向にも走行可能であるが、揺動軸Csが目盛り板5より前方となる方向に走行させることが好ましい。また、撮影を開始するタイミングと牽引を開始するタイミングは同じであっても異なっていてもよいが、異なる場合にはその時間差を計測しておく。
【0051】
検査対象の管路Pに、異径管の継ぎ手部の段差や、管路内面に配置された管路内面を部分的に補修する筒部材による段差などのかなり大きい段差があった場合には、台車2が前進不能になる場合がある。また、検査対象の管路Pに分岐管が存在した場合(特に分岐管の口径が大きい場合)や、管路の継ぎ手部分が欠損又は欠落している場合にも、台車2が前進不能になる場合がある。このように台車2が前進不能になった場合には、他方の牽引線24を引っ張って、管路内径検査装置1を一旦後方に走行させてから再度前方に走行させる。
【0052】
管路内径検査装置1を検査対象となる管路P内を走行させた後、撮影装置6で撮影された画像をモニタに表示して、作業者が確認する。センサーアーム部材3の先端3bが目盛り板5の上縁(領域51の上縁)の位置からずれている画像があれば、牽引開始時からその画像が撮影されるまでの経過時間と牽引線24の牽引速度とに基づいて、その画像が撮影された箇所の牽引開始位置からの距離を導出する。これにより、内径が基本内径R1と異なっている箇所の位置とその内径を検出することができる。また、撮影装置6が管路Pの内面も撮影している場合には、撮影画像から管路Pの内面の欠陥や水漏れの有無などを検査することができる。
【0053】
本実施形態の管路内径検査装置1は、以下の特徴を有する。
【0054】
管路内径検査装置1が管路P内を走行中、当接部3aが管路Pの内面の段差を通過すると、センサーアーム部材3が揺動するため、その揺動方向の変位を検出することで、管路Pの内径の変化を検査できる。
当接部3aは、センサーアーム部材3の管路長さ方向の途中部に突出して設けられているため、センサーアーム部材3の両端部を管路Pの内面に当接させることなく、当接部3aだけを管路Pの内面に当接させることができる。したがって、管路Pの内径が大きくなる段差をセンサーアーム部材3が通過した後で、検査装置を逆方向に走行させても、センサーアーム部材3の端部がこの段差に接触するのを防止できる。そのため、管路長さ方向のどちらの方向にも検査装置を走行させることができる。また、センサーアーム部材3の破損を防止できる。
また、圧縮バネ4でセンサーアーム部材3を付勢することで、センサーアーム部材3の当接部3aを管路Pの内面に押し付けているため、センサーアーム部材自体の弾性力によってセンサーアーム部材の一部を管路Pの内面に押し付ける場合に比べて、センサーアーム部材3の剛性を高くすることができる。したがって、センサーアーム部材3のたわみや振動を防止でき、検査精度を向上できる。
【0055】
また、本実施形態では、圧縮バネ4の付勢力によりセンサーアーム部材3が最大限揺動した状態では、当接部3aは、センサーアーム部材3の先端3bよりも管路径方向の外方に位置する。したがって、当接部3aの先端は、常に、センサーアーム部材3の先端3bよりも管路径方向の外方に位置するため、センサーアーム部材3の先端3bが当接部3aより走行方向前方となるように走行している際に、管路Pの内径が極端に大きくなる段差が存在しても、先端3bが管路Pの内面に接触するのを防止できる。
【0056】
また、本実施形態では、撮影装置6が、目盛り板5とセンサーアーム部材3の先端3bを撮影するため、その撮影画像から、センサーアーム部材3の先端3bの目盛り板5に対する位置の変化を確認することで、センサーアーム部材3の揺動方向の変位を検出でき、管路Pの内径の変化を検査することができる。
また、センサーアーム部材3の先端3bは、当接部3aよりも揺動軸Csから離れているため、センサーアーム部材3が揺動したときの先端3bの移動量は、当接部3aの移動量よりも大きくなる。そのため、管路Pの内面の段差が小さい場合であっても検出しやすい。
【0057】
また、撮影装置6が管路Pの内面を撮影している場合には、撮影画像から管路Pの内面の欠陥の有無などを確認することができる。
【0058】
また、本実施形態では、圧縮バネ4の圧縮方向は管路径方向であるため、圧縮バネ4によって、当接部3aを管路Pの内面に管路径方向に強固に押し付けることができる。その結果、当接部3aが管路Pの内面の段差を通過する際に、当接部3aを管路Pの内面に確実に追従させて、センサーアーム部材3が振動するのを防止できるため、検査精度を向上できる。
【0059】
また、本実施形態では、管路周方向に並んだ3つのセンサーアーム部材3によって、管路Pの内径の変化を検査するため、検査精度を向上できると共に、管路Pの内面の形状をより詳細に把握することができる。
【0060】
また、本実施形態では、当接部3aが、揺動軸Cs方向から見て、管路内面方向に突出する円弧状に形成されているため、内径が小さくなる段差を当接部3aが通過する際に、当接部3aが段差に引っ掛かることを防止できる。
【0061】
また、本実施形態では、センサーアーム部材3の上縁(管路径方向の外方の縁)のうち当接部3aとその周囲部との連結部分は、揺動軸Cs方向から見て凹状となる円弧状に形成されている。そのため、内径が極端に小さくなる段差を当接部3aが通過する際に、接部の根元部分が段差に引っ掛かるのを防止できる。
【0062】
また、本実施形態の管路内径検査装置1は、部品の一部を追加及び交換することで、基本内径R1よりも大きい基本内径の管路Pも検査することができる。以下、具体的に説明する。
【0063】
図5は、基本内径R1よりも大きい基本内径R2の管路Pを管路内径検査装置1で検査する場合を示している。検査対象となる管路Pの基本内径がR2の場合の管路内径検査装置1を、管路内径検査装置1aとする。R2は、例えば230mmである。
【0064】
管路内径検査装置1aでは、センサーアーム部材3の当接部3aに、当接部材10がボルトとナットによって着脱可能に取り付けられている。当接部材10は、当接部3aよりもX方向に突出している。当接部材10は、板状の部材であって、センサーアーム部材3に重ねて配置される。つまり、当接部材10の板厚方向は、センサーアーム部材3の板厚方向および揺動軸Csの方向と平行である。当接部材10のうち、当接部3aよりX方向に突出している部分を当接部10aとする。当接部10aは、当接部材10の板厚方向(揺動軸Cs方向)から見て、管路内面方向に突出する円弧状に形成されている。管路内径検査装置1aでは、センサーアーム部材3と当接部材10とを合わせたものが、本発明のセンサーアームに相当する。
【0065】
また、管路内径検査装置1aでは、長さ調整部材26の代わりに、長さ調整部材28によって脚連結部25と滑走部材27が連結されている。長さ調整部材28は、長さ調整部材26よりも管路径方向長さ(及び上下方向長さ)が大きい。したがって、管路内径検査装置1aの脚部22の上下方向長さは、
図2の管路内径検査装置1の脚部22の上下方向長さよりも大きい。
【0066】
基本内径R2の管路Pの内面に当接部10aと滑走部材27が接している状態で管路長さ方向から見たとき、3つのセンサーアーム部材3の側面の延長線は、管路Pの中心軸Cで交差する。なお、中心軸Cから若干上下方向にずれた位置で交差していてもよい。
【0067】
この管路内径検査装置1aでは、目盛り板5の領域51〜54の上縁は、当接部10aが当接している管路Pの内径が、それぞれ、R2+10mm、R2、R2−5mm、R2−10mmの場合のセンサーアーム部材3の先端3bの位置にそれぞれ対応している。したがって、この管路内径検査装置1aでは、センサーアーム部材3の先端3bが領域52の上縁の位置からずれている場合に、管路Pの内径が基本内径R2と異なっていると判断できる。なお、目盛り板5は、
図1の目盛り板5と異なるものに交換してもよい。
【0068】
また、
図6は、基本内径R2よりも大きい基本内径R3の管路Pを管路内径検査装置1で検査する場合を示している。検査対象となる管路Pの基本内径がR3の場合の管路内径検査装置1を、管路内径検査装置1bとする。R3は、例えば300mmである。
【0069】
管路内径検査装置1bでは、センサーアーム部材3の当接部3aに、当接部材11がボルトとナットによって着脱可能に取り付けられている。当接部材11は、当接部3aからのX方向の突出高さが上述した当接部材10よりも大きい。つまり、当接部材11のうち、当接部3aからX方向に突出している部分を当接部11aとする。当接部11aは、当接部材11の板厚方向(揺動軸Cs方向)から見て管路内面方向に突出する円弧状に形成されている。管路内径検査装置1bでは、センサーアーム部材3と当接部材11とを合わせたものが、本発明のセンサーアームに相当する。
【0070】
また、管路内径検査装置1bでは、長さ調整部材29によって脚連結部25と滑走部材27が連結されている。長さ調整部材29は、長さ調整部材28よりも管路径方向長さ(及び上下方向長さ)が大きい。したがって、管路内径検査装置1bの脚部22の上下方向長さは、管路内径検査装置1aの脚部22の上下方向長さよりも大きい。
【0071】
基本内径R3の管路Pの内面に当接部11aと滑走部材27が接している状態で管路長さ方向から見たとき、3つのセンサーアーム部材3の側面の延長線は、管路Pの中心軸Cで交差する。なお、中心軸Cから若干上下方向にずれた位置で交差していてもよい。
【0072】
この管路内径検査装置1bでは、目盛り板5の領域51〜54の上縁は、当接部11aが当接している管路Pの内径が、それぞれ、R3+10mm、R3、R3−5mm、R3−10mmの場合のセンサーアーム部材3の先端3bの位置にそれぞれ対応している。したがって、この管路内径検査装置1bでは、センサーアーム部材3の先端3bが領域52の上縁の位置からずれている場合に、管路Pの内径が基本内径R3と異なっていると判断できる。なお、目盛り板5は、
図1の目盛り板5と異なるものに交換してもよい。
【0073】
このように管路内径検査装置1は、当接部のX方向の突出高さと、台車2の脚部22の上下方向長さを変更可能である。そのため、当接部の突出高さを変更したり、脚部22の上下方向長さを変更することで、様々な内径の管路Pの検査を1つの管路内径検査装置1で行うことができる。
【0074】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。
【0075】
上記実施形態では、センサーアーム部材3のX方向と反対側に配置された圧縮バネ4によってセンサーアーム部材3をX方向に付勢しているが、センサーアーム部材3をX方向に付勢する付勢部材は圧縮バネ4に限定されるものではない。
【0076】
例えば
図7に示すように、センサーアーム部材3のX方向側に配置された引張バネ104によって、センサーアーム部材3をX方向に付勢してもよい。引張バネ104の一端は、センサーアーム部材3の揺動軸Csの近傍に連結されており、他端は台座部21に連結されている。基本内径R1の管路内面に当接部3aと滑走部材27が接している状態において、引張バネ104は伸張した状態となる。また、引張バネ104の付勢力によりセンサーアーム部材3が最大限揺動した状態(
図7中、二点鎖線で表示)において、当接部3aは、センサーアーム部材3の先端3bよりも管路径方向の外方に位置する。したがって、当接部3aは、上記実施形態と同様に、常に、センサーアーム部材3の先端3bよりも管路径方向の外方に位置する。
【0077】
また、
図7の引張バネ104は、そのコイル軸方向が管路径方向に対して管路長さ方向に傾斜しており、センサーアーム部材3との連結部分を径方向内側に引っ張っている。そのため、引張バネ104が当接部3aを管路内面に管路径方向に押し付ける力は小さい。したがって、当接部3aを管路内面へ押し付ける力を大きくしてセンサーアーム部材3の振動を防止するには、付勢部材としては圧縮バネ4を用いることが好ましい。
【0078】
また、例えば
図8及び
図9に示すように、1つのセンサーアーム部材(203、303)を付勢する付勢部材として、引張バネ104と圧縮バネ204の両方を用いてもよい。
【0079】
図8及び
図9に示すように、圧縮バネ204には、ショックアブソーバー(ダンパ)205を取り付けてもよい。これにより、センサーアーム部材203、303が急激に管路内面方向に揺動するのを防止できる。そのため、検査対象となる管路に分岐管が存在した場合に、センサーアーム部材203、303の当接部203a、303aが分岐管に嵌まり込むのを防止できる。また、ショックアブソーバー205を設けることにより、台座部221からセンサーアーム部材203、303に伝わる振動を低減できる。
【0080】
上記実施形態では、管路内径検査装置1は、管路Pの周方向に並んで配置される3つのセンサーアーム部材3を有するが、管路内径検査装置1が有するセンサーアーム部材3の数は、2つ以下であっても、4つ以上であってもよい。但し、センサーアーム部材3が複数の場合には、複数のセンサーアーム部材3を管路Pの周方向に並ぶように配置することが好ましい。
【0081】
上記実施形態では、センサーアーム部材3の当接部3a、及び当接部材10、11の当接部10、11は、揺動軸Cs方向から見て、管路内面方向に突出する円弧状に形成されているが、当接部の形状はこれに限定されるものではない。但し、基本内径の管路内面に当接部と滑走部材27が接している状態において、揺動軸Cs方向から見た当接部の形状は、当接部の突出先端からセンサーアーム部材3の両端側に向かうにつれて管路径方向内側に向かうように形成されていることが好ましい。これにより、当接部の突出先端部が管路Pの内面の段差に引っ掛かるのを防止できる。例えば、
図8(a)及び
図9(a)に示すように、センサーアーム部材203、303の当接部203a、303aが、揺動軸Cs方向から見て、管路内面方向に突出するくの字状に形成されていてもよい。また、例えば、
図8(b)、(c)及び
図9(b)、(c)に示すように、当接部材210、211、310、311の当接部210a、211a、310a、311aが、揺動軸Cs方向から見て、管路内面方向に突出するくの字状に形成されていてもよい。
【0082】
また、センサーアーム部材3の当接部3a以外の部分の形状は、上記実施形態の形状に限定されるものではない。上記実施形態では、センサーアーム部材3は、当接部3aを除く部分は、ほぼ直線状に形成されているが、例えば
図8及び
図9に示すように、センサーアーム部材203、303が、全体としてくの字状に屈曲していてもよい。この屈曲部分が、当接部203a、303aを構成している。また、例えば
図9及び
図10に示すように、センサーアーム部材303、403は、先端303b、403bが管路径方向内側を向くように、当接部303a、403aと先端303b、403bの間の位置で屈曲していてもよい。
【0083】
上記実施形態では、センサーアーム部材3に当接部3aが形成されているが、センサーアーム部材3に当接部3aを形成せずに、センサーアーム部材3の管路長さ方向の途中部に当接部材を取り付けて、この当接部材のセンサーアーム部材3から突出する部分を当接部としてもよい。つまり、上記実施形態では、センサーアーム部材3に当接部材10、11を取り付ける場合と、取り付けない場合とで、当接部の突出長さを変更できるようになっているが、センサーアーム部材3に取り付ける当接部材の突出長さを変更することによってのみ、センサーアームの当接部の突出高さを変更するようになっていてもよい。
【0084】
例えば
図8(b)〜(d)に示す当接部材210〜212、
図9(b)〜(d)に示す310〜312のように、突出先端からセンサーアーム部材側に向かって、当接部の幅(管路長さ方向の長さ)が大きくなるように形成されていてもよい。これにより、検査対象となる管路に分岐管が存在した場合に、当接部210a〜212a、310a〜312aが分岐管に嵌まり込むのを防止できる。当接部が分岐管に嵌まり込むと、センサーアーム部材が大きく広がってセンサーアーム部材の先端が管路内面に引っ掛かる可能性が高くなる。目盛り板5を進行方向前方として走行している場合には特に引っ掛かりやすくなる。当接部が分岐管に嵌まり込むのを防止することで、センサーアーム部材のこのような引っ掛かりを防止できる。
【0085】
上記実施形態の管路内径検査装置1は、センサーアームの当接部の突出高さと、台車2の脚部22の上下方向長さの両方を変更可能となっているが、いずれか一方のみ変更可能であってもよい。また、どちらも変更不能であってもよい。
【0086】
上記実施形態では、滑走部材27は長さ調整部材26、28、29を介して台座部21の脚連結部25に連結されているが、滑走部材27は、長さ調整部材を介して脚連結部25に連結できるだけでなく、直接脚連結部25に連結できるようになっていてもよい。つまり、脚部22の長さを最短にする場合には、滑走部材27を直接脚連結部25に連結し、脚部22の長さをそれより長くする場合には、長さ調整部材を介して滑走部材27を脚連結部25に連結するようになっていてもよい。
【0087】
上記実施形態では、牽引線24は、台座部21に設けられた牽引線連結部23に取り付けられているが、例えば
図8及び
図9に示すように、台座部221に牽引線連結部23を設ける代わりに、滑走部材227の前後先端に孔を設けて、この孔に牽引線24を取り付けてもよい。これにより、管路内径検査装置をより安定して走行させることができる。
【0088】
上記実施形態では、台車2の脚部22のうち管路Pの内面に接する部分は、ソリ状の滑走部材27で構成されているが、管路Pの内面に接する部分の構成はこれに限定されるものではない。例えば、滑走部材27の代わりに、車輪を用いても良い。また、上記実施形態では、牽引線24で牽引することで管路内径検査装置1は走行するが、管路内径検査装置1が動力源を搭載しており、この動力源により自走できるようになっていてもよい。
【0089】
上記実施形態では、撮影装置6で撮影された画像データは撮影装置6に記録され、撮影終了後に、記録された画層データを取り出してモニタで確認しているが、撮影装置6で撮影された画像データを、有線または無線で地上のモニタに送信できるように構成されていてもよい。この場合、管路内径検査装置1を管路P内で走行させつつ、モニタで撮影画像を確認することができる。
【0090】
上記実施形態では、管路内径検査装置1は、撮影装置6を1台だけ有しており、この撮影装置6によって、センサーアーム部材3の先端3bと目盛り板5の撮影と、管路Pの内面の撮影の両方を行っているが、撮影装置6に加えて、管路Pの内面を撮影するためだけの撮影装置を追加してもよい。この変更例では、撮影装置6の撮影視野に管路内面が入ってなくてもよい。また、この変更例では、管路Pの内面を撮影する撮影装置6のために別途照明装置を設けてもよい。
【0091】
上記実施形態では、撮影装置6で撮影された画像から、センサーアーム部材3の先端3bの位置の変化を目盛り板5を用いて読み取ることで、管路Pの内径の変化を検出しているが、センサーアーム部材3の揺動を利用して管路Pの内径の変化を検出するための検出用手段は、撮影装置6や目盛り板5に限定されるものではない。
例えば、センサーアーム部材3の揺動角度を検出する回転角度センサーをセンサーアーム部材3の揺動軸部に設けて、回転角度センサーで検出されたセンサーアーム部材3の揺動角度に基づいて、管路Pの内径の変化を検出してもよい。この変更例では、センサーアーム部材3は、当接部3aから揺動軸と反対側の部分の長さが、上記実施形態よりも短くてもよい。