特許第6304827号(P6304827)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6304827
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】ロック機構を有する台車
(51)【国際特許分類】
   B62B 5/04 20060101AFI20180326BHJP
   B60B 33/00 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   B62B5/04 A
   B60B33/00 U
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-244528(P2015-244528)
(22)【出願日】2015年12月15日
(65)【公開番号】特開2017-109570(P2017-109570A)
(43)【公開日】2017年6月22日
【審査請求日】2017年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】504156795
【氏名又は名称】株式会社ネオスター
(74)【代理人】
【識別番号】100104581
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 伊章
(74)【代理人】
【識別番号】100188525
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 超史
(72)【発明者】
【氏名】星川 和胤
【審査官】 梶本 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−016407(JP,A)
【文献】 特開2012−101562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 5/04
B60B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を載置する荷台と、
荷台の背面の後側に設けられたキャスター枠と、
該キャスター枠に設けられた車輪と、
該車輪の内側に水平方向に環状に渡って形成された複数の凹部と、
を有し、
台車の幅方向に前記凹部に車輪ロックピンを出し入れして車輪をロックするロック機構を備えた台車において、
前記ロック機構は
鍔部を備える前記車輪ロックピンと、
前記車輪ロックピンを水平方向に通過する孔を設けた一組の軸支部と、
前記車輪ロックピンの周囲を囲繞する押圧スプリングと、
左後輪と右後輪間の台車本体裏面に固定された回転体保持部と、
前記回転体保持部に保持され、ロックレバー部とカム部を備える回転体と、
を有し、
前記軸支部は、車輪側軸支部と回転体側軸支部とからなり、
ロック時には、
前記回転体のロックレバー部を回転させることにより、
回転体のカム部が、押圧スプリングの弾性力に抗して車輪ロックピンの幅方向の押し込み幅を増加させることにより車輪ロックピンを台車の幅方向に移動させ、車輪ロックピン端部が車輪の凹部に歯合するようにし、
アンロック時には、
前記回転体をロック時と逆方向にロックレバーを回転させることにより、回転体のカム部が車輪ロックピンの幅方向の押し込み幅を減少させ、押圧スプリングがその弾性力により車輪ロックピンの鍔部と車輪側軸支部を押圧することにより、車輪ロックピン端部が車輪の凹部に歯合しないようにすることを特徴とする台車。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の運搬に用いる台車に関し、特に小型の載置面を有し、ロック機構を有する台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物品を載置、運搬できる台車において、ロック機構としては特許文献1又は特許文献2が提案されている。
【0003】
特許文献1は、車輪を備えた台車に設けられる接地可能なロック機構であって、ロック機構は、台車の下部に接続され接地可能な支持体と、支持体に設けられたロック手段からなり、支持体は、台車の下部に接続されるとともに平面視四角形状に形成され少なくとも下方を開口した第1の筒部材を備えた基礎部材と、地面に当接可能で平面視四角形状に形成された第2の筒部材を備えた脚部材と、基礎部材と脚部材の中間に位置し、平面視四角形状に形成され少なくとも下方を開口した第3の筒部材を備え、第1の筒部材の下方側における開口部分に第3の筒部材を上下方向にスライド自在に設けるとともに、第3の筒部材の下方側における開口部分に第2の筒部材を上下方向にスライド自在に設けたものである。
特許文献2は、荷台に取付けたキャスター枠の一対の側部片に車輪を転動自在に軸支した手押し運搬車において、キャスター枠の一方の側部片と該側部片に並べて荷台に取付けた支持片に架設した規制杆と、該規制杆を車輪のホイール部に交差するように付勢する押圧スプリングと、この押圧スプリングの付勢に抗して規制杆を前記ホイール部から後退させる作動片および作動片を駆動する駆動レバーとで成る手押し運搬車の停止装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−283902号公報
【特許文献2】特開平9−207786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の台車のロック機構は、ロックさせるためのペダル部材を踏み込むことによってロックする機構になっているため、ペダル部材が台車の裏面から後方に飛び出るように設置することが必要になる。そうすると、この種のロック機構では、飛び出たペダル部材が作業者や障害物に接触するため、作業者に危険が生じ、またペダル部材が障害物に接触することによって破損する等の問題があった。その他、台車を立てた状態で保管する際、ブレーキペダルが邪魔をして立てられない等問題があった。
また、特許文献2は、駆動レバーを回動することによって台車のロックを操作する構成になっているため、駆動レバーや、駆動レバーからロック機構まで動力を伝達する各種部品の数が増え、また、その組み付け容積を要するものである。
近年、荷台をできる限り小型化しており、しかも作動片を無くすなど従来例に比して組み付ける容積もできる限り小さくし、ロックを有する台車が望まれている。
【0006】
本発明は上記のような従来の問題を解決するもので、ペダル部材が障害物に接触することを未然に防止し、作業者及び台車の安全を確保すること、台車を立てた状態で維持できるため省スペースで保管可能なこと、また、部品点数を削減し、コスト削減・組み付け容積削減を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る台車は、物品を載置する荷台と、荷台の背面の後側に設けられたキャスター枠と、該キャスター枠に設けられた車輪と、該車輪の両側若しくは少なくとも内側に水平方向に環状に渡って形成された複数の凹部と、
を有し、台車の幅方向に前記凹部に車輪ロックピンを出し入れして車輪をロックするロック機構を備えた台車において、
前記ロック機構は鍔部を備える前記車輪ロックピンと、前記車輪ロックピンを水平方向に通過する孔を設けた一組の軸支部と、前記車輪ロックピンの周囲を囲繞する押圧スプリングと、左後輪と右後輪間の台車本体裏面に固定された回転体保持部と、前記回転体保持部に保持され、ロックレバー部とカム部を備える回転体と、を有し、
前記軸支部は、車輪側軸支部と回転体側軸支部とからなり、
ロック時には、前記回転体のロックレバー部を回転させることにより、回転体のカム部が、押圧スプリングの弾性力に抗して車輪ロックピンの幅方向の押し込み幅を増加させることにより車輪ロックピンを台車の幅方向に移動させ、車輪ロックピン端部が車輪の凹部に歯合するようにし、
アンロック時には、
前記回転体をロック時と逆方向にロックレバーを回転させることにより、回転体のカム部が車輪ロックピンの幅方向の押し込み幅を減少させ、押圧スプリングがその弾性力により車輪ロックピンの鍔部と車輪側軸支部を押圧することにより、車輪ロックピン端部が車輪の凹部に歯合しないようにすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の台車によれば、ロックレバー部とカム部を備える回転体を有しているため、ロック時、アンロック時共に、ロックレバー部が台車の裏面から後方に飛び出ることはないことから、ロックレバー部が障害物に接触することを未然に防止することができる。そのため、台車の運搬時や停止時において、作業者及び台車の安全を確保することができ、台車を立てた状態で保管する事ができる。
また、車輪ロックピン、軸支部、押圧スプリング、回転体保持部、回転体という比較的部品点数が少なく、各部品の容積が小さいロック機構のため、コスト削減、組み付け容積削減を図ることができる。
さらに、回転体のカム部が、押圧スプリングの弾性力に抗して車輪ロックピンの幅方向の押し込み幅を増加させることにより車輪ロックピンを台車の幅方向に移動させ、車輪ロックピン端部が車輪の凹部に歯合するように形成されているため、ブレーキシューを押圧してロックする従来の機構と違い確実にロックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施例における運搬台車を示す斜視図である。
図2図1における拡大斜視図である。
図3図1におけるアンロック時の底面図である。
図4図1におけるロック時の低面図である。
図5図4における拡大低面図である。
図6図4におけるA−A’線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施例における台車の斜視図を示す。図2は、本発明の一実施例における台車の拡大斜視図を示す。
【0011】
まず、本発明の一実施例における台車100の構成について説明する。
【0012】
台車100は、物品を載置することが可能な荷台10を有しており(荷台10は図6に図示)、荷台10の背面の後側左右にはそれぞれキャスター枠20が設けられ、そのキャスター枠20にはそれぞれ車輪21が設けられている。車輪21の両側若しくは少なくとも内側には、水平方向に環状に渡って形成された複数の凹部22が形成されている。この凹部22に、台車100の幅方向に車輪ロックピン30を出し入れすることにより車輪21をロックすることができる。
荷台10は、限定されるものではないが合成樹脂製又は金属製又は木製等であり、平面形状が一方に長い略矩形状に形成されている。
【0013】
車輪ロックピン30には、押圧スプリング32の押圧を受けるための鍔部31が設けられており、押圧スプリング32は、車輪ロックピン30の周囲に囲繞されている。
軸支部40は、車輪ロックピン30を水平方向に通過するための孔が設けられており、車輪側軸支部41と回転体側軸支部42の一組から構成されている。但し、軸支部は車輪ロックピンの動作を保持する役割が主であるため、動作を妨げない限り、一組以上の複数で構成されていても構わない。
車輪側軸支部41、回転体側軸支部42は、主に、車輪ロックピン30を支える役割がある。また、車輪側軸支部41は、押圧スプリング32の押圧を受けており、その押圧スプリング32の反力を車輪ロックピン30の鍔部31に与えることにより、アンロック時には車輪ロックピン30の台車幅方向の押し込み幅を減少させ、車輪ロックピン30端部が車輪21の凹部22に歯合しないようにしている。
【0014】
また、左後輪と右後輪間の台車100本体裏面には、回転体保持部50が固定されている。
図2に示すように、回転体保持部50は回転体60を保持しており、カム部62を上下方向に規制することによって、回転体60を回転体保持部50から離脱することを防いでいる。
回転体60はロックレバー部61とカム部62から構成されており、ロックレバー部61を回転させることにより、それに伴いカム部62が連動して回転し、その力を車輪ロックピン30に伝えることができる。そのため、ロックレバー部61を操作することにより、ロック又はアンロック(ロック解除)が可能となる。
図示していないが、ロック状態、アンロック状態をそれぞれ安定的に維持するために、さらに回転体保持部50の壁面に係合凹部を設け、回転体保持部50と接するカム部62の内側壁面に係合凸部を設けることが考えられる。それにより、カム部62を回転させた場合、ロック時又はアンロック時のみ係合凹部と、係合凸部がそれぞれ係合し、ロック状態、アンロック状態をそれぞれ安定的に維持することができる。
【0015】
図3は、本発明の一実施例における台車のアンロック時の底面図を示す。図4は、本発明の一実施例における台車のロック時の底面図を示す。
【0016】
次に、本発明の一実施例における台車100の使用方法及びロック機構の仕組みについて説明する。
【0017】
図3は、アンロック時の台車100であり、台車100の移動時に使用する。台車100を移動させる方法は、一般的な台車と同じであるので省略する。アンロック時から、台車100をロックさせる方法は、ロックレバー部61を時計方向に回転させるだけでよい。ただし、完全にロックするためには、車輪ロックピン30が車輪21の凹部22に歯合するまで、ロックレバー部61を回転させる必要がある。
本実施例では、時計方向に回転させることでロックする方法を採用したが、回転体60を左右対象に作成することにより、反時計方向に回転させることによりロックすることもできる。
【0018】
このロック機構の仕組みは、回転体60のロックレバー部61を回転させると、それに伴い回転体60のカム部62が、押圧スプリング32の弾性力に抗して車輪ロックピン30の幅方向の押し込み幅を増加させることにより車輪ロックピン30を台車100の幅方向に移動させ、車輪ロックピン30端部が車輪21の凹部22に歯合することで、ロックすることが可能となる。ロック後の台車100は、図4の通りとなる。
【0019】
ロック時から、台車100をアンロックさせる方法は、ロックレバー部61を反時計方向に回転させるだけでよい。完全にアンロックするためには、車輪ロックピン30が車輪21の凹部22に歯合さない位置まで回転させる必要がある。なお、回転体60を左右対象に作成することにより、時計方向に回転させることによりアンロックすることもできる。
【0020】
アンロック時のロック機構の仕組みは、回転体60をロック時と逆方向(時計方向)にロックレバーを回転させることにより、回転体60のカム部62が車輪ロックピン30の幅方向の押し込み幅を減少させ、押圧スプリング32が車輪ロックピン30の鍔部31と車輪側軸支部41を押圧することにより、誤って車輪ロックピン30端部が車輪21の凹部22に歯合しないようにすることにより、安全にアンロックすることが可能となる。
【0021】
図5は、本発明の一実施例における台車のロック時の拡大底面図を示す。図6は、本発明の一実施例における台車のA−A’線断面図を示す。
図6に示す通り、ロック時には、ロックレバー部61が台車の裏面から後方に飛び出ることはないため、ロックレバー部61が障害物に接触することを未然に防止することができる。そのため、台車100の運搬時や停止時において、作業者及び台車100の安全を確保することができる。また、図示していないが、アンロック時であってもロック時と同様にロックレバー部61が台車100の裏面から後方に飛び出ることはなく安全性を確保している。
【0022】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではない。例えばブレーキの材質は合成樹脂を用いているが、金属製等でも差し支えない。天板の材質も同様である。
【符号の説明】
【0023】
10 荷台
20 キャスター枠
21 車輪
22 凹部
30 車輪ロックピン
31 鍔部
32 押圧スプリング
40 軸支部
41 車輪側軸支部
42 回転体側軸支部
50 回転体保持部
60 回転体
61 ロックレバー部
62 カム部
100 台車
図1
図2
図3
図4
図5
図6