特許第6304881号(P6304881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6304881アキュムレータを備えた流体回路の制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6304881
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】アキュムレータを備えた流体回路の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/02 20060101AFI20180326BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   F15B11/02 V
   E02F9/22 N
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-131096(P2014-131096)
(22)【出願日】2014年6月26日
(65)【公開番号】特開2016-8695(P2016-8695A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2016年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116506
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 義宏
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 佳幸
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−024778(JP,A)
【文献】 特開2008−019910(JP,A)
【文献】 特表2011−514954(JP,A)
【文献】 特開2011−133097(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/061741(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 1/00−7/10
F15B 11/00−11/22
F15B 21/14
E02F 3/42−9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧ポンプと、この流体圧ポンプから吐出される流体によって駆動される流体圧アクチュエータと、前記流体圧ポンプと流体圧アクチュエータとの間に接続され、操作手段からの操作信号に応じて前記流体圧アクチュエータに供給される流体を制御する切換弁と、前記流体圧ポンプと前記流体圧アクチュエータとを接続する第1流路に接続された流体圧エネルギ蓄積用のアキュムレータを備えた流体回路において、
前記第1流路と前記アキュムレータとを接続する第2流路に配設された比例電磁式絞り弁と、
前記第2流路の前記比例電磁式絞り弁の前記第1流路側に設けられた圧力検出手段及び反第1流路側に設けられた圧力検出手段と、
前記比例電磁式絞り弁の開度を制御するコントローラとを備え、
前記コントローラと前記比例電磁式絞り弁の信号入力ポートとは電気信号ラインで接続されると共に、前記コントローラと前記それぞれの圧力検出手段とは電気信号ラインで接続され、
アキュムレータ内の蓄圧流体を比例電磁式絞り弁を介して前記第1流路側に吐出する際、前記第2流路の前記比例電磁式絞り弁の前記第1流路側に設けられた圧力検出手段及び反第1流路側に設けられた圧力検出手段からの圧力信号を検知しながら前記比例電磁式絞り弁の開口断面積を制御して前記アキュムレータからの吐出流量を任意に制御可能とすることを特徴とするアキュムレータを備えた流体回路の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアキュムレータを備えた流体回路の制御装置において、前記コントローラと前記流体圧ポンプの流量制御手段とは電気信号ラインで接続され、前記アキュムレータからの吐出流量と前記流体圧ポンプからの吐出量の合計吐出量を前記コントローラにより一定に制御可能とすることを特徴とするアキュムレータを備えた流体回路の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、建設機械、運搬車両、産業用車両及び産業機械等の油圧装置に関し、特に、アキュムレータを備えた流体回路の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アキュムレータ内の封入ガス圧をP1、最低作動圧力をP2、最高作動圧力をP3、アキュムレータの容積をV1とすると、下式によって表される容積Vwがアキュムレータから吐出されることが知られている。
但し、m、nはそれぞれ、蓄積時及び吐出時のポリトロープ指数とする。
【数1】
【0003】
ところで、従来、アキュムレータを用いた液圧エネルギー回生システムの蓄圧油制御例として、例えば、特開平10−175459号公報(以下、「特許文献1」という。)や特開2008−19910号公報(以下、「特許文献2」という。)に記載の技術(以下、「従来技術」という。)が知られているが、いずれも回路内に設置された圧力検知装置からの圧力信号のある一定値を境としてアキュムレータ内の蓄圧油の回生を切換弁により、オン・オフ的に行う方式となっていて、式1に示すような被供給回路の負荷圧(最低作動圧力)とアキュムレータ内の蓄圧時負荷圧(最高作動圧力)によるアキュムレータからの吐出量とポンプからの吐出量の合計を考慮した回路への流入量の制御は行われていない。
【0004】
図5に従来技術によるアキュムレータを用いた油圧回路の例を示す。
図5において、油圧回路は、エンジンや電動モータといった駆動機構51により駆動される油圧ポンプ52、切換弁53、油圧シリンダ54、リリーフ弁55、油圧タンク56、電磁切換弁57、アキュムレータ58、リモコン弁61、油路59、60、64〜71、及び、信号油路62、63とから構成されている。
油圧ポンプ52は、駆動機構51と連結されていて駆動機構からの動力によって回転することにより圧油を油路59を通って下流側へ供給している。油圧ポンプ52から吐出された圧油は油路59を通って切換弁53に流入している。切換弁53は6ポート3位置タイプのオープンセンタ型切換弁で、その中立位置では、油圧ポンプ52から吐出された圧油は全量が油路60を通ってタンク56に流れている。また、リモコン弁61は、可変型の減圧弁で操作レバー61aをシリンダの伸び又は縮み方向に操作することにより、図6に示すようなレバー操作量に比例したパイロット2次圧が信号油路62または63を通って切換弁53の信号ポート53aまたは53bに供給されることにより、「伸び」位置または「縮み」位置に切り換わる。さらに、本回路には、シリンダロッド54aが伸び終端若しくは縮み終端に達した際やシリンダ54へ急激な負荷が加わり回路内の油が閉塞状態となって異常高圧になり、回路内の油機が破損するのを防ぐためにリリーフ弁55が設置されており、高圧油が油路64及び65を通ってタンク56に排出されるようになっている。
【0005】
リモコン弁61の操作レバー61aを伸び方向に操作して切換弁53が伸び位置に切り換わると油圧ポンプ52からの圧油は油路66及び67を通ってシリンダ54の油室54−1に流入し、油室54−2内の油が油路68を通って切換弁53を介して油路69を通ってタンク56に排出される。これにより、シリンダ54のロッド54aは伸び方向に作動する。また、リモコン弁61の操作レバー61aを縮み方向に操作して切換弁53が縮み位置に切り換わると油圧ポンプ52からの圧油は油路66及び68を通ってシリンダ54の油室54−2に流入し、油室54−1内の油が油路67を通って切換弁53を介して油路69を通ってタンク56に排出される。これにより、シリンダ54のロッド54aは縮み方向に作動する。
【0006】
切換弁53は、図7に示すような開口特性を有しており、前述のとおり、リモコン弁61の操作レバー61aの操作量を増やすのに従い、パイロット圧が高くなるにつれてその開口量が増加し、シリンダ54への供給油量が増え、シリンダ54のロッド作動スピードが増すようになっている。つまり、リモコン弁61の操作レバー61aの操作量に応じてシリンダロッドスピードをコントロールするようになっている。レバーストローク(パイロット2次圧)対シリンダロッド伸び速度の関係を図8の実線部で示す。電磁切換弁57は、2ポート2位置タイプのノーマルクローズ型電磁切換弁で、油路59から分岐している油路70とアキュムレータ58に接続している油路71との間にあり、油路59とアキュムレータ58間の油の流出入を制御するために設けられている。
なお、本発明はアキュムレータ58内から油路59への油の流出時の制御に関わるものであり、アキュムレータ58内への油の蓄圧手段については、本発明と直接関係しないことから説明は省略する。
【0007】
今、図5において、何らかの設定条件を満たした場合に電磁切換弁57が切り換わって、アキュムレータ58内の蓄圧油が油路59に吐出される場合を考える。電磁切換弁57が切り換わる直前の油路59の圧力をPL、アキュムレータ58内の圧力をPA(但し、PL<PA)とすると、電磁切換弁57が切り換わって油路70と油路71が導通し、油路71の圧力がPLまで低下するものとするとアキュムレータ58内の蓄圧油の一部は、式1により、下記容積Vwxが油路59に一気に吐出される。
【数2】
この時、例えば、操作レバー61aを伸び方向に操作量Lxで操作してシリンダのロッド54aが伸び方向に作動しているときに、電磁切換弁57が切り換わると、アキュムレータ58内の油が油路59に一気に流入し、吐出が終わるまでにシリンダ54への流入流量が急激に変化し、図8のS部(破線部)で示すようにシリンダロッド54aのスピードが一時的に変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−175459号公報
【特許文献2】特開2008−19910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した従来技術においては、以下の欠点・問題点がある。
(1)式1に示すような被供給回路の負荷圧とアキュムレータ58内の蓄圧時負荷圧によるアキュムレータ58からの吐出量とポンプ52からの吐出量の合計を考慮した回路への流入量の制御は行われていないので、切換弁53を切り換えた際に急激に回路内にアキュムレータ58から圧油が流入すると、例えば、図8のS部に示すようなシリンダなどの急激なスピード変化によるショックが発生する恐れがある。
(2)アキュムレータ58からの吐出油量を見込んでポンプ52からの吐出油量を減らすことによる、いわゆる、油圧エネルギー回生によるパワーセーブ(吐出量を減らすことによりポンプ出力を減らして運転すること。)を行う際に、アキュムレータ58からの吐出量及びポンプ流量の合計油量が適切に制御されないために、シリンダなどのアクチュエータの速度の過不足が発生してしまう恐れがある。
【0010】
本発明は、比例電磁式絞り弁を流体回路に設け、流体回路の圧力とアキュムレータ内の圧力に基づいて比例電磁式絞り弁の開度を制御してアキュムレータからの吐出流量を任意に制御可能とし、アクチュエータの急激なスピード変化による異常を防止できるようにした流体回路の制御装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、アキュムレータからの吐出量とポンプからの吐出量の合計吐出量を一定に制御可能とし、アクチュエータの速度の過不足の発生を防止できるようにした流体回路の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明のアキュムレータを備えた流体回路の制御装置は、第1に、流体圧ポンプと、この流体圧ポンプから吐出される流体によって駆動される流体圧アクチュエータと、前記流体圧ポンプと流体圧アクチュエータとの間に接続され、操作手段からの操作信号に応じて前記流体圧アクチュエータに供給される流体を制御する切換弁と、前記流体圧ポンプと前記流体圧アクチュエータとを接続する第1流路に接続された流体圧エネルギ蓄積用のアキュムレータを備えた流体回路において、
前記第1流路と前記アキュムレータとを接続する第2流路に配設された比例電磁式絞り弁と、
前記第2流路の前記比例電磁式絞り弁の前記第1流路側及び反第1流路側に設けられた圧力検出手段と、
前記比例電磁式絞り弁の開度を制御するコントローラとを備え、
前記コントローラと前記比例電磁式絞り弁の信号入力ポートとは電気信号ラインで接続されると共に、前記コントローラと前記それぞれの圧力検出手段とは電気信号ラインで接続され、
アキュムレータ内の蓄圧流体を比例電磁式絞り弁を介して前記第1流路側に吐出する際、前記圧力検出手段のそれぞれの圧力に基づいて前記比例電磁式絞り弁の開度を制御して前記アキュムレータからの吐出流量を任意に制御可能とすることを特徴としている。
【0012】
上記第1の特徴により、アキュムレータ内の蓄圧流体を比例電磁式絞り弁を介して第1流路側に吐出する際、圧力検出手段のそれぞれの圧力に基づいて比例電磁式絞り弁の開度を制御して前記アキュムレータからの吐出流量を任意に制御可能としているので、従来技術のような切換弁を切り換えた際に、急激に第1油路内にアキュムレータから圧油が流入することによるシリンダなどのアクチュエータの急激なスピード変化によるショックなどの異常を発生させることなく、切換弁を切り換えた際でもシリンダなどのアクチュエータをスムーズに作動させることができる。
【0013】
また、本発明のアキュムレータを備えた流体回路の制御装置は、第2に、第1の特徴において、前記コントローラと前記流体圧ポンプの流量制御手段とは電気信号ラインで接続され、前記アキュムレータからの吐出流量と前記流体圧ポンプからの吐出量の合計吐出量を前記コントローラにより一定に制御可能とすることを特徴としている。
【0014】
上記第2の特徴により、油圧ポンプの吐出流量は、コントローラからの電気信号により、アキュムレータからの吐出油によるシリンダへの油量の増加分を見込んで、油圧ポンプからの流量を任意に減じることができ、アキュムレータからの吐出油との合計が、アキュムレータからの吐出油がない場合のシリンダへの供給油量と全く同じにすることができるので、従来技術のようなアキュムレータからの吐出量及びポンプ流量の合計油量が適切に制御されないことによるシリンダなどのアクチュエータの速度の過不足が発生してしまうということもなく、適切なパワーセーブを実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以下のような優れた効果を奏する。
(1)アキュムレータ内の蓄圧流体を比例電磁式絞り弁を介して第1流路側に吐出する際、圧力検出手段のそれぞれの圧力に基づいて比例電磁式絞り弁の開度を制御して前記アキュムレータからの吐出流量を任意に制御可能としているので、従来技術のような切換弁を切り換えた際に、急激に第1油路内にアキュムレータから圧油が流入することによるシリンダなどのアクチュエータの急激なスピード変化によるショックなどの異常を発生させることなく、切換弁を切り換えた際でもシリンダなどのアクチュエータをスムーズに作動させることができる。
【0016】
(2)油圧ポンプの吐出流量は、コントローラからの電気信号により、アキュムレータからの吐出油によるシリンダへの油量の増加分を見込んで、油圧ポンプからの流量を任意に減じることができ、アキュムレータからの吐出油との合計が、アキュムレータからの吐出油がない場合のシリンダへの供給油量と全く同じにすることができるので、従来技術のようなアキュムレータからの吐出量及びポンプ流量の合計油量が適切に制御されないことによるシリンダなどのアクチュエータの速度の過不足が発生してしまうということもなく、適切なパワーセーブを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例に係るアキュムレータを備えた流体回路の制御装置の構成図である。
図2】本発明の実施例に係る比例電磁式絞り弁の開口特性を示す図である。
図3】本発明の実施例に係るアキュムレータからの吐出流量を示す図である。
図4】本発明の実施例に係る流体圧ポンプの流量特性をを示す図である。
図5】従来技術に係るアキュムレータを備えた流体回路の制御装置の構成図である。
図6】従来技術に係るリモコン弁のレバー操作量とパイロット2次圧との関係を示す図である。
図7】従来技術に係る切換弁の開口特性を示す図である。
図8】従来技術に係るリモコン弁のレバー操作量とシリンダロッドの伸びスピードとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置などは、特に明示的な記載がない限り、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例】
【0019】
図1乃至図4を参照して、本発明の実施例に係るアキュムレータを備えた油圧回路の制御装置について説明する。
本発明に係るアキュムレータを備えた流体回路の制御装置を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は油圧回路に限定されて解釈されるものではなく、水圧回路あるいは空気圧回路にも適用可能であって、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加えうるものである。
【0020】
まず、図1に基づいて本発明の実施例に係るアキュムレータを備えた油圧回路の制御装置の全体の構成を説明する。
図1において、油圧回路は、エンジンや電動モータといった駆動機構1により駆動される油圧ポンプ2、切換弁3、油圧シリンダ4、リリーフ弁5、油圧タンク6、アキュムレータ8、リモコン弁11、第1油路9、第2油路10、その他の油路14〜20、信号油路12、13、比例電磁式絞り弁22、及び、コントローラ25とから構成されている。
本発明においては、特に、比例電磁式絞り弁22、及び、コントローラ25を備えた点に特徴があり、後記において詳しく説明する。
【0021】
油圧ポンプ2は、駆動機構1と連結されていて駆動機構からの動力によって回転することにより圧油を第1油路9を通って下流側へ供給している。油圧ポンプ2から吐出された圧油は第1油路9を通って切換弁3に流入している。切換弁3は6ポート3位置タイプのオープンセンタ型切換弁で、その中立位置では、油圧ポンプ2からと出された圧油は全量が油路20を通ってタンク6に流れている。また、リモコン弁11は、従来例のものと同じであり、可変型の減圧弁で操作レバー11aをシリンダの伸び又は縮み方向に操作することにより、レバー操作量に比例したパイロット2次圧が信号油路12または13を通って切換弁3の信号ポート3aまたは3bに供給されることにより、「伸び」位置または「縮み」位置に切り換わる。さらに、本回路には、シリンダロッド4aが伸び終端若しくは縮み終端に達した際やシリンダ4へ急激な負荷が加わり回路内の油が閉塞状態となって異常高圧になり、回路内の油機が破損するのを防ぐためにリリーフ弁5が設置されており、高圧油が油路14及び15を通ってタンク6に排出されるようになっている。
【0022】
リモコン弁11の操作レバー11aを伸び方向に操作して切換弁3が伸び位置に切り換わると油圧ポンプ2からの圧油は油路16及び17を通ってシリンダ4の油室4−1に流入し、油室4−2内の油が油路18を通って切換弁3を介して油路19を通ってタンク6に排出される。これにより、シリンダ4のロッド4aは伸び方向に作動する。また、リモコン弁11の操作レバー11aを縮み方向に操作して切換弁3が縮み位置に切り換わると油圧ポンプ2からの圧油は油路16及び18を通ってシリンダ4の油室4−2に流入し、油室4−1内の油が油路17を通って切換弁3を介して油路19を通ってタンク6に排出される。これにより、シリンダ4のロッド4aは縮み方向に作動する。
【0023】
切換弁3は、従来例のものと同じであり、図7に示すような開口特性を有しており、前述のとおり、リモコン弁11の操作レバー11aの操作量を増やすのに従い、パイロット圧が高くなるにつれてその開口量が増加し、シリンダ4への供給油量が増え、シリンダ4のロッド作動スピードが増すようになっている。つまり、リモコン弁11の操作レバー11aの操作量に応じてシリンダロッドスピードをコントロールするようになっている。レバーストローク(パイロット2次圧)対シリンダロッド伸び速度の関係は図8の実線部で示すものになっている。
【0024】
比例電磁式絞り弁22は、第1油路9とアキュムレータ8とを接続する第2油路10に配設されており、第2油路10の比例電磁式絞り弁22の第1油路側10a及び反第1油路側10bには、それぞれ、圧力検出装置23及び24が設けられている。
比例電磁式絞り弁22は、JIS B0142で定義されたものであり、電気的アナログ入力信号に比例した絞りの制御ができる絞り弁である。この「絞り弁」の用語についてもJIS B0142で定義されており、絞り作用によって流量を規制する圧力補償機能のない流量制御弁を指すものである。
【0025】
コントローラ25は、比例電磁式絞り弁22の開度を制御すると共に、流体圧ポンプ2の流量を制御するものである。
コントローラ25と比例電磁式絞り弁22の信号入力ポート22aとは電気信号ライン30で接続され、比例電磁式絞り弁22はコントローラ25からの電気信号により制御される。また、コントローラ25と圧力検出装置23及び24とは、それぞれ、電気信号ライン28及び29で接続され、それぞれの圧力検出装置23及び24からの圧力信号がコントローラ25に入力されるようになっている。
図2には、比例電磁式絞り弁22の開口特性が示されており、コントローラ25からの電気信号により任意の開度(「開口面積」ともいう。)に制御されるようになっている。
【0026】
コントローラ25と油圧ポンプ2の流量制御手段とは電気信号ラインで接続され、油圧ポンプ2の吐出量が制御可能にされている。具体的には、油圧ポンプ2の流量制御手段が油圧ポンプ自体の容量制御部2aより構成される場合は、コントローラ25と容量制御部2aとが電気信号ライン31で接続され、コントローラ25からの制御信号により容量制御部2aが制御されて油圧ポンプ2の吐出量が制御される。
また、油圧ポンプ2の流量制御手段が駆動機構1の出力軸回転数制御部1aより構成される場合は、コントローラ25と出力軸回転数制御部1aとが電気信号ライン32で接続され、コントローラ25からの制御信号により出力軸回転数制御部1aが制御されて油圧ポンプ2の吐出量が制御される。
【0027】
比例電磁式絞り弁22の開口部を流れる流量をQ、第2油路10の第1油路側10aの圧力をPL、反第1油路側10bの圧力をPA、比例電磁式絞り弁22の開口部断面積をAとすると、オリフィスの式により、次の式2が成り立つ。但し、Kは定数を表す。
【数3】
【0028】
今、比例電磁式絞り弁22が閉止状態にあり、リモコン弁11の操作レバー11aを伸び方向に操作量Lxで操作し、シリンダ4のロッド4aが伸び方向に作動しているときの圧力をPL、アキュムレータ8内の圧力をPA(但し、PL<PA)とし、比例電磁式絞り弁22を開いて第1油路9側に吐出しうる油の容積をVmとすると、上記の式1より、第1油路9側に吐出される油の容積Vmは次の式で示される。
【数4】
【0029】
比例電磁式絞り弁22を開いてアキュムムレータ8内の蓄圧油を第2油路10を介して第1油路9に吐出するに当たり、コントローラ25はそれぞれの圧力検出装置23(Px)と24(Py)からの圧力信号を検知しながら、式2中の比例電磁式絞り弁22の開口部断面積Aを調整するものであり、例えば、図3に示すように、比例電磁式絞り弁22の開口部を流れる流量Q、すなわち、アキュムレータ8から吐出される流量を任意に制御することができる。
なお、図3における面積Sv(斜線部)は、上記のVmに相当する。
【0030】
一方、油圧ポンプ2の吐出流量は、コントローラ25からの電気信号により、容量制御部2aまたは出力軸回転数制御部1aを制御することにより、例えば、図4に示すように、アキュムレータ8からの吐出油によるシリンダ4への油量の増加分を見込んで、破線部Tのようなポンプ流量となるように制御することができる。すなわち、油圧ポンプ2からの流量Qpとアキュムレータ8からの吐出油Qの合計を、アキュムレータ8からの吐出油Qがない場合のシリンダ4への供給油量、すなわち、設定された適正な供給油量と全く同じにすることができる。
なお、コントローラ25には、予め、圧力検出装置23(Px)と24(Py)からの圧力信号を検知しつつ、電気信号により比例電磁式絞り弁22の開口部断面積Aを制御して、図3に示すようなアキュムレータ8からの吐出流量Qを任意に制御すると同時に、電気信号により、油圧ポンプ2の容量制御部2aまたは出力軸回転数制御部1aを制御することにより、図4に示すように、アキュムレータ8からの吐出油によるシリンダ4への油量の増加分を見込んで、破線部Tのようなポンプ流量となるように制御するための演算回路が組み込まれている。
【0031】
上記によれば、本発明の実施例に係るアキュムレータを備えた油圧回路の制御装置においては次のような効果を奏する。
(1)比例電磁式絞り弁22を開いてアキュムレータ8内の蓄圧油を第2油路10を介して第1油路9側に吐出するに当たり、コントローラ25が圧力検出装置23(Px)と24(Py)からの圧力信号を検知しながら、式2中の比例電磁式絞り弁22の開口部断面積Aをコントローラ25からの電気信号により調整することにより、アキュムレータ8から吐出される流量Qを任意に制御することができるので、従来技術のような切換弁を切り換えた際に急激に第1油路9内にアキュムレータ8から圧油が流入することによるシリンダ4などのアクチュエータの急激なスピード変化によるショックなどの異常を発生させることなく、第1油路9内に吐出することができる。
(2)アキュムレータ8からの吐出油量を見込んで油圧ポンプ2からの吐出油量を減らすことによる、油圧エネルギー回生によるパワーセーブを行う際に、コントローラ25が圧力検出装置23(Px)と24(Py)からの圧力信号を検知しながら、式2中の比例電磁式絞り弁22の開口部断面積Aをコントローラ25からの電気信号により調整することにより、アキュムレータ8から吐出される流量Qを任意に制御することができ、同時に、油圧ポンプ2の吐出流量は、コントローラ25からの電気信号により、容量制御部2aまたは出力軸回転数制御部1aを制御することにより、アキュムレータ8からの吐出油によるシリンダ4への油量の増加分を見込んで、油圧ポンプ2からの流量Qpを任意に減じることにより、アキュムレータ8からの吐出油Qとの合計が、アキュムレータ8からの吐出油Qがない場合のシリンダ4への供給油量と全く同じにすることができるので、従来技術のようなアキュムレータからの吐出量及びポンプ流量の合計油量が適切に制御されないことによるシリンダなどのアクチュエータの速度の過不足が発生してしまうということもなく、適切なパワーセーブを実現することができる。
【0032】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0033】
例えば、前記実施例では、流体回路の流体として油を挙げて説明したが、油以外のすべての流体においても本発明が適用できることはいうまでもなく、例えば、水圧や空圧などを用いた回路についても本発明は適用できる。
【0034】
また、例えば、前記実施例では、 アキュムレータについて特段説明していないが、本発明におけるアキュムレータは、油圧系や空圧系の流体機器に使われる装置の一つで、高圧流体を蓄えておく装置を意味し、代表的なものとしてはブラダ型が挙げられる。
【0035】
また、例えば、前記実施例では、油圧ポンプについて特段説明していないが、例えば、ねじポンプ、歯車ポンプ、ベーンポンプあるいはプランジャポンプなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0036】
1 駆動機構
2 油圧ポンプ(流体圧ポンプ)
3 切換弁
4 油圧シリンダ
5 リリーフ弁
6 油圧タンク
8 アキュムレータ
9 第1油路(第1流路)
10 第2油路(第2流路)
11 リモコン弁
12、13 信号油路
14〜20 油路
22 比例電磁式絞り弁
23 圧力検出装置
24 圧力検出装置
25 コントローラ
28〜32 電気信号ライン















図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8