【実施例】
【0019】
図1乃至
図4を参照して、本発明の実施例に係るアキュムレータを備えた油圧回路の制御装置について説明する。
本発明に係るアキュムレータを備えた流体回路の制御装置を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は油圧回路に限定されて解釈されるものではなく、水圧回路あるいは空気圧回路にも適用可能であって、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良を加えうるものである。
【0020】
まず、
図1に基づいて本発明の実施例に係るアキュムレータを備えた油圧回路の制御装置の全体の構成を説明する。
図1において、油圧回路は、エンジンや電動モータといった駆動機構1により駆動される油圧ポンプ2、切換弁3、油圧シリンダ4、リリーフ弁5、油圧タンク6、アキュムレータ8、リモコン弁11、第1油路9、第2油路10、その他の油路14〜20、信号油路12、13、比例電磁式絞り弁22、及び、コントローラ25とから構成されている。
本発明においては、特に、比例電磁式絞り弁22、及び、コントローラ25を備えた点に特徴があり、後記において詳しく説明する。
【0021】
油圧ポンプ2は、駆動機構1と連結されていて駆動機構からの動力によって回転することにより圧油を第1油路9を通って下流側へ供給している。油圧ポンプ2から吐出された圧油は第1油路9を通って切換弁3に流入している。切換弁3は6ポート3位置タイプのオープンセンタ型切換弁で、その中立位置では、油圧ポンプ2からと出された圧油は全量が油路20を通ってタンク6に流れている。また、リモコン弁11は、従来例のものと同じであり、可変型の減圧弁で操作レバー11aをシリンダの伸び又は縮み方向に操作することにより、レバー操作量に比例したパイロット2次圧が信号油路12または13を通って切換弁3の信号ポート3aまたは3bに供給されることにより、「伸び」位置または「縮み」位置に切り換わる。さらに、本回路には、シリンダロッド4aが伸び終端若しくは縮み終端に達した際やシリンダ4へ急激な負荷が加わり回路内の油が閉塞状態となって異常高圧になり、回路内の油機が破損するのを防ぐためにリリーフ弁5が設置されており、高圧油が油路14及び15を通ってタンク6に排出されるようになっている。
【0022】
リモコン弁11の操作レバー11aを伸び方向に操作して切換弁3が伸び位置に切り換わると油圧ポンプ2からの圧油は油路16及び17を通ってシリンダ4の油室4−1に流入し、油室4−2内の油が油路18を通って切換弁3を介して油路19を通ってタンク6に排出される。これにより、シリンダ4のロッド4aは伸び方向に作動する。また、リモコン弁11の操作レバー11aを縮み方向に操作して切換弁3が縮み位置に切り換わると油圧ポンプ2からの圧油は油路16及び18を通ってシリンダ4の油室4−2に流入し、油室4−1内の油が油路17を通って切換弁3を介して油路19を通ってタンク6に排出される。これにより、シリンダ4のロッド4aは縮み方向に作動する。
【0023】
切換弁3は、従来例のものと同じであり、
図7に示すような開口特性を有しており、前述のとおり、リモコン弁11の操作レバー11aの操作量を増やすのに従い、パイロット圧が高くなるにつれてその開口量が増加し、シリンダ4への供給油量が増え、シリンダ4のロッド作動スピードが増すようになっている。つまり、リモコン弁11の操作レバー11aの操作量に応じてシリンダロッドスピードをコントロールするようになっている。レバーストローク(パイロット2次圧)対シリンダロッド伸び速度の関係は
図8の実線部で示すものになっている。
【0024】
比例電磁式絞り弁22は、第1油路9とアキュムレータ8とを接続する第2油路10に配設されており、第2油路10の比例電磁式絞り弁22の第1油路側10a及び反第1油路側10bには、それぞれ、圧力検出装置23及び24が設けられている。
比例電磁式絞り弁22は、JIS B0142で定義されたものであり、電気的アナログ入力信号に比例した絞りの制御ができる絞り弁である。この「絞り弁」の用語についてもJIS B0142で定義されており、絞り作用によって流量を規制する圧力補償機能のない流量制御弁を指すものである。
【0025】
コントローラ25は、比例電磁式絞り弁22の開度を制御すると共に、流体圧ポンプ2の流量を制御するものである。
コントローラ25と比例電磁式絞り弁22の信号入力ポート22aとは電気信号ライン30で接続され、比例電磁式絞り弁22はコントローラ25からの電気信号により制御される。また、コントローラ25と圧力検出装置23及び24とは、それぞれ、電気信号ライン28及び29で接続され、それぞれの圧力検出装置23及び24からの圧力信号がコントローラ25に入力されるようになっている。
図2には、比例電磁式絞り弁22の開口特性が示されており、コントローラ25からの電気信号により任意の開度(「開口面積」ともいう。)に制御されるようになっている。
【0026】
コントローラ25と油圧ポンプ2の流量制御手段とは電気信号ラインで接続され、油圧ポンプ2の吐出量が制御可能にされている。具体的には、油圧ポンプ2の流量制御手段が油圧ポンプ自体の容量制御部2aより構成される場合は、コントローラ25と容量制御部2aとが電気信号ライン31で接続され、コントローラ25からの制御信号により容量制御部2aが制御されて油圧ポンプ2の吐出量が制御される。
また、油圧ポンプ2の流量制御手段が駆動機構1の出力軸回転数制御部1aより構成される場合は、コントローラ25と出力軸回転数制御部1aとが電気信号ライン32で接続され、コントローラ25からの制御信号により出力軸回転数制御部1aが制御されて油圧ポンプ2の吐出量が制御される。
【0027】
比例電磁式絞り弁22の開口部を流れる流量をQ、第2油路10の第1油路側10aの圧力をPL、反第1油路側10bの圧力をPA、比例電磁式絞り弁22の開口部断面積をAとすると、オリフィスの式により、次の式2が成り立つ。但し、Kは定数を表す。
【数3】
【0028】
今、比例電磁式絞り弁22が閉止状態にあり、リモコン弁11の操作レバー11aを伸び方向に操作量Lxで操作し、シリンダ4のロッド4aが伸び方向に作動しているときの圧力をPL、アキュムレータ8内の圧力をPA(但し、PL<PA)とし、比例電磁式絞り弁22を開いて第1油路9側に吐出しうる油の容積をVmとすると、上記の式1より、第1油路9側に吐出される油の容積Vmは次の式で示される。
【数4】
【0029】
比例電磁式絞り弁22を開いてアキュムムレータ8内の蓄圧油を第2油路10を介して第1油路9に吐出するに当たり、コントローラ25はそれぞれの圧力検出装置23(Px)と24(Py)からの圧力信号を検知しながら、式2中の比例電磁式絞り弁22の開口部断面積Aを調整するものであり、例えば、
図3に示すように、比例電磁式絞り弁22の開口部を流れる流量Q、すなわち、アキュムレータ8から吐出される流量を任意に制御することができる。
なお、
図3における面積Sv(斜線部)は、上記のVmに相当する。
【0030】
一方、油圧ポンプ2の吐出流量は、コントローラ25からの電気信号により、容量制御部2aまたは出力軸回転数制御部1aを制御することにより、例えば、
図4に示すように、アキュムレータ8からの吐出油によるシリンダ4への油量の増加分を見込んで、破線部Tのようなポンプ流量となるように制御することができる。すなわち、油圧ポンプ2からの流量Qpとアキュムレータ8からの吐出油Qの合計を、アキュムレータ8からの吐出油Qがない場合のシリンダ4への供給油量、すなわち、設定された適正な供給油量と全く同じにすることができる。
なお、コントローラ25には、予め、圧力検出装置23(Px)と24(Py)からの圧力信号を検知しつつ、電気信号により比例電磁式絞り弁22の開口部断面積Aを制御して、
図3に示すようなアキュムレータ8からの吐出流量Qを任意に制御すると同時に、電気信号により、油圧ポンプ2の容量制御部2aまたは出力軸回転数制御部1aを制御することにより、
図4に示すように、アキュムレータ8からの吐出油によるシリンダ4への油量の増加分を見込んで、破線部Tのようなポンプ流量となるように制御するための演算回路が組み込まれている。
【0031】
上記によれば、本発明の実施例に係るアキュムレータを備えた油圧回路の制御装置においては次のような効果を奏する。
(1)比例電磁式絞り弁22を開いてアキュムレータ8内の蓄圧油を第2油路10を介して第1油路9側に吐出するに当たり、コントローラ25が圧力検出装置23(Px)と24(Py)からの圧力信号を検知しながら、式2中の比例電磁式絞り弁22の開口部断面積Aをコントローラ25からの電気信号により調整することにより、アキュムレータ8から吐出される流量Qを任意に制御することができるので、従来技術のような切換弁を切り換えた際に急激に第1油路9内にアキュムレータ8から圧油が流入することによるシリンダ4などのアクチュエータの急激なスピード変化によるショックなどの異常を発生させることなく、第1油路9内に吐出することができる。
(2)アキュムレータ8からの吐出油量を見込んで油圧ポンプ2からの吐出油量を減らすことによる、油圧エネルギー回生によるパワーセーブを行う際に、コントローラ25が圧力検出装置23(Px)と24(Py)からの圧力信号を検知しながら、式2中の比例電磁式絞り弁22の開口部断面積Aをコントローラ25からの電気信号により調整することにより、アキュムレータ8から吐出される流量Qを任意に制御することができ、同時に、油圧ポンプ2の吐出流量は、コントローラ25からの電気信号により、容量制御部2aまたは出力軸回転数制御部1aを制御することにより、アキュムレータ8からの吐出油によるシリンダ4への油量の増加分を見込んで、油圧ポンプ2からの流量Qpを任意に減じることにより、アキュムレータ8からの吐出油Qとの合計が、アキュムレータ8からの吐出油Qがない場合のシリンダ4への供給油量と全く同じにすることができるので、従来技術のようなアキュムレータからの吐出量及びポンプ流量の合計油量が適切に制御されないことによるシリンダなどのアクチュエータの速度の過不足が発生してしまうということもなく、適切なパワーセーブを実現することができる。
【0032】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0033】
例えば、前記実施例では、流体回路の流体として油を挙げて説明したが、油以外のすべての流体においても本発明が適用できることはいうまでもなく、例えば、水圧や空圧などを用いた回路についても本発明は適用できる。
【0034】
また、例えば、前記実施例では、 アキュムレータについて特段説明していないが、本発明におけるアキュムレータは、油圧系や空圧系の流体機器に使われる装置の一つで、高圧流体を蓄えておく装置を意味し、代表的なものとしてはブラダ型が挙げられる。
【0035】
また、例えば、前記実施例では、油圧ポンプについて特段説明していないが、例えば、ねじポンプ、歯車ポンプ、ベーンポンプあるいはプランジャポンプなどが挙げられる。