特許第6304906号(P6304906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6304906平面近接場プローブによる高速データ・リンク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6304906
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】平面近接場プローブによる高速データ・リンク
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/06 20060101AFI20180326BHJP
   H04B 5/02 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   H01P1/06
   H04B5/02
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-540636(P2016-540636)
(86)(22)【出願日】2014年12月9日
(65)【公表番号】特表2017-503412(P2017-503412A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】US2014069244
(87)【国際公開番号】WO2015094802
(87)【国際公開日】20150625
【審査請求日】2016年8月2日
(31)【優先権主張番号】61/917,026
(32)【優先日】2013年12月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501188177
【氏名又は名称】ムーグ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コールマン、ドニー、エス.
【審査官】 岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表平09−500513(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0163483(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/00−11/00
H04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの相対的に移動可能な部材間に画成されたインターフェースを横切って電気信号を伝送するための非接触回転接合であって、
高速のデジタル・データ出力信号を提供するように動作可能に配置された信号源(A)と、
送信源ギャップ(D)及び終端ギャップ(E)を有するインピーダンス制御された差動伝送線路(C)と、
前記信号源から前記高速のデジタル・データ出力信号を受け取るように、且つ前記信号源からの前記高速のデジタル・データ出力信号を前記インピーダンス制御された差動伝送線路の前記送信源ギャップに供給するように動作可能に配置された電力分割器(B)と、
前記インターフェースを横切って伝送された信号を受け取るための信号取得領域を有し、前記インピーダンス制御された差動伝送線路に対して離間した関係で配置された近接場プローブ(G)であって、前記信号取得領域が第1の領域と第2の領域を有し、当該信号取得領域が不連続な幾何学形状を有するように、前記第1の領域と前記第2の領域は異なる幾何学形状を有する、近接場プローブ(G)と、
前記プローブが受け取った前記信号を受け取るように動作可能に配置された受信電子機器(H)と、を備える、
非接触回転接合。
【請求項2】
プリント回路板をさらに備え、前記電力分割器が前記プリント回路板に埋め込まれている、請求項1に記載の非接触回転接合。
【請求項3】
プリント回路板をさらに備え、前記インピーダンス制御された差動伝送線路は、前記プリント回路板に埋め込まれている少なくとも1つの終端を有する、請求項1に記載の非接触回転接合。
【請求項4】
10Gbpsを超えるデータ伝送速度をサポートすることができる、請求項1に記載の非接触回転接合。
【請求項5】
前記プローブが前記インピーダンス制御された差動伝送線路上に、ある距離をおいて懸架されている、請求項1に記載の非接触回転接合。
【請求項6】
前記近接場プローブの前記信号取得領域の前記第1の領域が第1の幾何学パターンを有し、前記近接場プローブの前記信号取得領域の前記第2の領域は、前記第1の領域の前記第1の幾何学パターンとは異なる第2の幾何学パターンを有する、請求項1に記載の非接触回転接合。
【請求項7】
前記近接場プローブの前記信号取得領域の前記第1の領域が平坦である、請求項1に記載の非接触回転接合。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2013年12月17日に出願された米国仮特許出願第61/917,026号の先の出願日の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は、摺動電気接点を使用することなく、2つの相対的に移動可能な部材(例えば、回転子と固定子)間で高速の広帯域電気信号の送信を可能にする、改善された回転接合に関する。
【背景技術】
【0003】
相互に回転可能な2つの部材間で電気信号を伝えるためのデバイスは、当技術分野で周知である。総称して回転接合として知られているそのようなデバイスは、とりわけ、スリップ・リング及びツイスト・カプセルを含む。スリップ・リングは、部材間の無制限の回転が望まれる場合に一般に使用されるが、ツイスト・カプセルは、部材間の限れた回転のみが必要な場合に一般に使用される。
【0004】
従来のスリップ・リングは、一般に部材間の摺動電気接点を用いる。これらは、ほとんどの用途でうまく機能するが、比較的高い周波数で電気性能を制約する固有の弱点を有する。電気接点の物理的な構造は、一般にシグナル・インテグリティを劣化させるインピーダンス整合及び帯域幅の制約をもたらす。加えて、摺動電気接点は、デジタル信号からのデータの復元を複雑にし、シグナル・インテグリティ及び耐用年数に悪影響を与える摩耗粉及び微小間欠性を本質的に発生させる。これらの問題は、高速のデジタル信号の速い立上りエッジ及び立下りエッジ時間によって悪化し、それによって、スリップ・リングの高周波性能を制約する。
【0005】
より高い周波数及びより高いデータ伝送速度まで接触型スリップ・リング技術の使用を拡大する様々な技法が存在する。これらの技法は、代表的には、以下の特許に示され、記載されている。
【0006】
【表1】
【0007】
毎秒10ギガビット(「Gbps」)程度のデータ伝送速度でデジタル電気信号を高速伝送することができる接触型スリップ・リング技術が存在する。しかしながら、摺動電気接点に固有の問題(例えば、摩耗粉の生成及び接触潤滑性の問題)は、信頼性に対する長期的な制約をもたらす。
【0008】
本発明は、摺動電気接点なしに、回転子と固定子間の高周波電気信号の伝送を可能にする。以下の特許は、既存の非接触回転接合システムの態様を開示する。
【0009】
【表2】
【0010】
そのような非接触システムは、信号源と信号受信器間の空間を横切って伝送された電磁エネルギーを復元するデバイスを含む。無線周波数(「RF:radio frequency」)通信システムでは、そのようなデバイスは、アンテナと呼ばれ、典型的には、自由空間の古典的な遠距離場の電磁放射において動作する。対照的に、本発明は、極めて近距離を横切る電気通信をもたらす電磁近接場を利用する回転接合を提供する。電磁近接場からエネルギーを復元するデバイスは、「電磁場プローブ」、又は単に「プローブ」と呼ばれる。
【0011】
電磁源の反応性近接場において機能するように意図されたデバイスは、当技術分野で知られている磁気ループ、電圧プローブ、及び抵抗負荷双極子を有する遠距離場のデバイスとは異なる形態をとる。近接場の用途には、無線周波数(RF)IDタグ及び安全な低速データ転送が含まれ、これらは、近接場における磁気誘導を利用する。本明細書で使用されるように、「プローブ」は、電磁源の近接場において動作する構造体であり、「アンテナ」は、主に遠距離場のデバイスであることが意図されている放射構造体向けのものである。本開示の主題は、非接触回転接合の近接場において動作する電磁場プローブの主題を含む。
【0012】
従来のアンテナ及び近接場プローブは、1Gbps超のデータ伝送速度で動作する場合に、非接触回転接合システムにおいてそれらの使用を妨げる又は損なう様々な挙動を示す。そのような回転接合システムは、マルチギガビット・デジタル・データの必要な周波数成分を通過させるために超広帯域(「UWB」)周波数応答、並びに信号の時間領域特性を保つために高反射減衰量及び低歪みインパルス応答を示すことが必要である。加えて、非接触回転接合は、回転ギャップを横切って伝送されたエネルギーを取得するのに必要なアンテナ及び電磁場プローブの設計を複雑にする特性を示す。典型的には、非接触回転接合は、回転子と固定子間の回転により電磁場強度のばらつきを示し、信号が信号源から伝送線路終端まで伝送線路中を波として進むにつれ、指向性の挙動を示し、近接場において不連続となる場合さえある。高周波非接触回転接合は、近接場プローブの設計に対して一連の独特の課題を引き起こす。
【0013】
超広帯域非接触回転接合の用途における理想的なプローブは、高データレートで首尾よく動作するために7つの基準を満たすべきである。すなわち、
(1)許容できる信号対雑音比のために十分なエネルギーを取得すること、
(2)信号の主要な周波数成分に対応するのに十分な帯域幅を有すること、
(3)内部反射を制御し、シグナル・インテグリティを保つために高反射減衰量を示すこと、
(4)十分なシグナル・インテグリティをサポートするために低歪みインパルス応答を示すこと、
(5)安定した信号を送出する一方で、送信器パターン中のヌルに対応すること、
(6)安定な出力信号を維持しながら回転接合の指向性の応答に対応すること、及び
(7)前述の要求事項を維持しながら回転接合自体の指向性の影響を改善すること、である。
【0014】
通常の従来技術のアンテナ及び近接場プローブは、一般に前述の要求事項の1つ又は複数を達成できない。ほとんどの従来技術のアンテナ及びプローブは、マルチギガビット・データ・ストリームの広帯域のエネルギーに対応するための周波数応答及び時間領域応答の両方を欠く狭帯域定在波デバイスである。小さな近接場電圧及び電流プローブは、妥当な周波数及びインパルス応答を示すことがあるが、許容できる信号対雑音比のための十分な取得領域が不足する場合がある。現代の平面のパッチ及びボウタイUWBアンテナは、近接場プローブに対する望ましい特性のほとんどを示すが、他の従来技術のアンテナ及びプローブと同様に、非接触回転接合の指向性に取り組みながら、同時に、放射パターンにおけるヌル又は不連続性に対処することは本質的にない。さらに、ほとんどのアンテナ及び近接プローブは、高周波でそれら自体の指向性の挙動を示す。この指向性結合器効果は、非接触回転接合の指向性に関連付けられている問題をさらに悪化させる。上記の効果の組合せは、典型的な近接場プローブからの信号出力におけるばらつきとして示され、20dBを超えることがあり、信号復元に対する深刻な課題を引き起こすことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第6,956,445 B2号
【特許文献2】米国特許第7,142,071 B2号
【特許文献3】米国特許第7,559,767 B2号
【特許文献4】米国特許第6,437,656 B1号
【特許文献5】米国特許第5,140,696 A号
【特許文献6】米国特許第6,351,626 B1号
【特許文献7】米国特許第6,433,631 B2号
【特許文献8】米国特許第6,798,309 B2号
【特許文献9】米国特許第6,614,848 B2号
【特許文献10】米国特許第7,466,791 B2号
【特許文献11】米国特許第7,880,569 B2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
これらの要求事項すべてに同時に取り組むことが本発明の主題である。本発明は、当技術を発展させ、従来の回転接合解決策の欠点に取り組む。本発明は以下の特性を示し、
(1)信号経路に電気接点のない高速回転接合であり、
(2)高周波において周波数プローブ及びアンテナの指向性を改善し、
(3)回転接合における不連続な電磁場応答(ヌル)に対応し、
(4)高い信号対雑音比のために十分な取得領域を有し、
(5)許容できる反射減衰量を有し、
(6)最大40GHzまでの超広帯域周波数応答を示し、
(7)毎秒10ギガビット超のデータ伝送速度をサポートすることができる、高速回転接合を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
限定ではなく単に例示のための、開示された実施例の対応する構成要素、部分又は表面に対する括弧内付記によって、本発明は、2つの相対的に移動可能な部材間に画成されたインターフェースを横切って電気信号を伝送するための改善された非接触回転接合を提供する。改善された非接触回転接合は、高速のデジタル・データ出力信号を提供するように動作可能に配置された信号源(A)と、送信源ギャップ(D)及び終端ギャップ(E)を有するインピーダンス制御された差動伝送線路(C)と、信号源から高速のデジタル・データ出力信号を受け取るように、且つこの高速のデジタル・データ出力信号をインピーダンス制御された差動線路の送信源ギャップに供給するように動作可能に配置された電力分割器(B)と、インターフェースを横切って伝送される信号を受け取るように、伝送線路に対して離間した関係で配置された近接場プローブ(G)と、プローブが受け取った信号を受け取るように動作可能に配置された受信電子機器(H)と、を広く含み、回転接合が最大40GHzまでの超広帯域周波数応答能力を示す。
【0018】
改善された接合は、プリント回路板をさらに含むことができ、電力分割器がプリント回路板に埋め込まれていてもよい。
【0019】
改善された接合は、プリント回路板をさらに含むことができ、伝送線路がプリント回路板に埋め込まれている少なくとも1つの終端を有することができる。
【0020】
改善された接合は、10Gbpsを超えるデータ伝送速度をサポートすることができる可能性がある。
【0021】
プローブは、伝送線路上に、ある距離をおいて懸架されてもよい。
【0022】
近接場プローブは、パターニングされた幾何学形状内部に、決定論的又は非決定論的な不連続な幾何学形状を含むことができる。
【0023】
近接場プローブは、平坦な部分を有することができる。
【0024】
したがって、本発明の一般的な目的は、2つの相対的に移動可能な部材間に画成されたインターフェースを横切って電気信号を伝送するための改善された非接触回転接合を提供することである。
【0025】
別の目的は、(1)信号経路に電気接点のない高速回転接合であり、(2)高周波において周波数プローブ及びアンテナの指向性を改善し、(3)回転接合における不連続な電磁場応答(ヌル)に対応し、(4)高い信号対雑音比のために良好な取得領域を有し、(5)許容できる反射減衰量を有し、(6)最大40GHzまでの超広帯域周波数応答を示し、及び(7)最大毎秒10ギガビット超のデータ伝送速度をサポートすることができる高速回転接合を提供することである。
【0026】
これら及び他の目的並びに利点は、前述の事項並びに目下進行中の書面による明細書、図面及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】改善された非接触回転接合の概略図である。
図2】無線周波数(RF)送信源ギャップの概略図である。
図3】無線周波数(RF)伝送線路終端ギャップの概略図である。
図4】不連続な幾何学形状を有する近接場プローブの概略図である。
図5】終端ギャップでの信号加算の概略図である。
図6】送信源ギャップでのヌル信号加算の概略図である。
図7】局所的な反射によって送信源ギャップのヌルの充填を示す図である。
図8】集積回路(「IC:integrated circuit」)のプローブ構造体へのワイヤ・ボンディングを示す図である。
図9】プローブ構造体に接合されたフリップ・チップを示す図である。
図10】様々なプローブ構造体に組み込まれた抵抗性材料のいくつかの形態を示す図である。
図11A】毎秒1.0ギガビットでの受信アイ・ダイアグラムの図である。
図11B】毎秒7.0ギガビットでの受信アイ・ダイアグラムの図である。
図12A】低インピーダンス検出器による近接場プローブ波形のプロットである。
図12B】高インピーダンス検出器による近接場プローブ波形のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
初めに、同様の参照数字は、いくつかの図面全体にわたって一貫して同一の構造要素、部分又は表面を識別することが意図されていることを明白に理解されるべきであり、その理由は、そのような要素、部分又は表面が、本明細書全体によってさらに記載され又は説明されることがあり、この詳細な説明が本明細書の不可欠な部分であるためである。別段の定めがない限り、図面(例えば、クロスハッチング、部品の配置、割合、程度など)は、明細書と共に読まれることが意図されており、本発明の明細書全体の一部と考えられるべきである。以下の記載で使用されるように、用語「水平の」、「垂直の」、「左の」、「右の」、「上方の」、及び「下方の」、並びにそれらの形容詞的及び副詞的派生語(例えば、「水平に」、「右側に」、「上方へ」など)は、単に、特定の図面が読者の方に向いている場合に、図示された構造の向きを指す。同様に、用語「内側に」及び「外側に」は、一般に表面の伸長軸又は回転軸に対する表面の向きを必要に応じて指す。
【0029】
本発明は、一態様において、米国特許第6,437,656 B1に開示されているような、高速データ・リンク(「HSDL:high−speed data link」)に基づく非接触回転接合(「NCRJ:non−contacting rotary joint」)を提供し、本米国特許に記載された構造に対する改善と考えることができる。この改善は、信号経路に摺動電気接点を使用することなく、2つの相対的に移動可能な部材間で、間に挟まれたインターフェースを横切る高速のデータ信号の伝送を含むように、従来技術の高速データ・リンク(HSDL)技法を発展させている。本発明は、電力分割器を介して信号源によって駆動され、遠端部で抵抗終端されている分割された差動マイクロストリップ伝送線路と、送信器差動マイクロストリップの近接場を検知する平面差動電磁場プローブを含み且つ復元された信号エネルギーを検出用の電子受信器に送出する受信器と、を含む。差動近接場プローブは、近接場における取得領域、帯域幅、インピーダンス、反射減衰量、及び過渡応答を最適化するために超広帯域応答を有し、一方で、遠距離場に対する放射を相殺する。近接場プローブは、数ギガヘルツ未満のヘルツ双極子として、及びセンチメートル波長での進行波プローブとして本質的に動作する。本発明は、プリント回路板(「PCB:printed circuit board」)技術を用いて実施することができ、最大40ギガヘルツ(「GHz」)までの周波数領域の帯域幅で、マルチギガビット・データ伝送速度をサポートすることができる高速非接触回転接合(「HS−NCRJ:high−speed non−contacting rotary joint」)を提供する。
【0030】
近接場プローブの特性は、近接場応答の指向性及び不連続な性質を含む非接触回転接合の様々な問題となる特性に対応する。プローブは、非接触回転接合の動作に役立ついくつかの効果を生み出すために、異なる幾何学形状の使用を利用し、これらの効果には、
(1)プローブ給電点の近くでの意図的な信号反射、
(2)無効負荷による帯域幅の拡大、及び
(3)無効負荷及び/又は抵抗性負荷による反射減衰量の増大、が含まれる。
【0031】
プローブの選択された部分の異なる幾何学形状は、プローブ内部で信号反射を意図的に引き起こすことによってデータ伝送線路の不連続場特性を改善する。図1は、非接触回転接合の性質をシステム図として示す。
【0032】
図1では、信号源(A)は、電力分割器(B)(能動的であっても受動的であってもよい)に高速のデジタル・データ信号を送出するための役目を果たし、信号は、送信源ギャップ(D)を通過して、インピーダンス制御された差動伝送線路(C)へと移行する。次いで、信号は、信号が広帯域終端技法(F)による遠端部終端ギャップ(E)で終端する場所まで、差動の伝送線路リング構造体上をTEM波(「TEM:transverse electromagnetic wave」)として伝播する。リング伝送線路上を進むTEM信号は、超広帯域平面近接場プローブ(G)によって近接場でサンプリングされ、この近接場プローブ(G)が、物理的接触なしに回転接合が自由に回転することができるようにリング構造体上のある距離に懸架されている。近接場プローブによって復元された信号は、受信器(H)に送出され、ここで信号を検出し、増幅し、そのデータを復元することができる。個別の要素の動作について以下で説明し、示す。
データソースドライバー及び電力分割器
データソースドライバー(A)は、電流モード論理回路(「CML:current−mode logic」)、フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(「FPGA:field−programmable gate array」)、低電圧差動信号(「LVDS:low−voltage differential signaling」)デバイス、及び他のディスクリート・デバイスを含む、所望のデータレートが可能な多くの技術のいずれであってもよい。データ信号は、差動リング・システムに供給するために2つの等しい振幅の位相反転した信号に分割され、これは、受動抵抗分割器又は能動技法(例えば、CMLファンアウト・バッファー)によって行うことができる機能である。例えば、1:2ファンアウト・バッファーは、単一データ・チャネルを駆動することができるが、より高い次数のファンアウト・バッファーは、高信頼用途のために複数の冗長なチャネルを駆動することができる。差動信号の利点を放棄しているとはいえ、非接触回転接合のシングルエンドの動作も可能である。電力分割器は、ディスクリートの組立体として実施されても、或はディスクリート部品若しくは集積化された部品又は平坦なプリント回路板(PCB)幾何学形状で実施された埋め込み受動部品を有するプリント回路板(PCB)構造上に組み込まれてもよい。電力分割器を実装するために用いられる技術は、より高い周波数で次第により顕著になる信号反射をもたらす部品パッケージの寄生リアクタンスのために、データ・チャネルの高周波動作に対して制約を課す。駆動電子機器、電力分割器、及び伝送線路終端は、高周波性能の能力が寄生リアクタンスを減少させることによって決定される様々な技術(例えば、プリント回路板(PCB)構造上のスルーホール部品若しくは表面実装部品、集積部品、又は平坦なプリント回路板(PCB)幾何学形状で実施された埋め込み受動部品)を使用して実施されてもよい。以下の表は、様々な技術の一般的な動作能力を要約する。
【0033】
【表3】
【0034】
インピーダンス制御された差動伝送線路リング・システム
非接触回転接合におけるリング・システムは、非共振で、不連続な、典型的にはマイクロストリップ多層プリント回路板技術で実施されたインピーダンス制御された差動伝送線路である。リング伝送線路の性質は、信号エネルギーの大部分が導体の近接場に含まれているといったものである。構造体から放射されたエネルギーは、遠距離場で打ち消し合う傾向があり、電磁干渉(EMI:electromagnetic interference)の抑制を支援する。リング・システム上で伝播する信号は、図2及び図3に示されるように指向性を有する。これは、近接場プローブの設計のための重要な要素である。
【0035】
近接場プローブ
近接場プローブ(G)は、リング伝送線路上の高速データ通信の特定の要求事項を満たしながら、超広帯域近接場応答を有するように設計された平面構造である。特に、近接場プローブは、(a)信号検出のために十分なエネルギーを復元するための適切な取得領域を有すること、(b)データ・ストリームの少なくとも3次高調波に対して十分な、適切な帯域幅を有すること、(c)検出器にふさわしい出力インピーダンスを有すること、(d)高反射減衰量を有すること、(e)リングの不均一な電磁場応答に対応する近接場特性を有すること、(f)良好なインパルス応答を有すること、並びに(g)回転接合及びプローブ自体の両方の指向性のある信号特性を改善すること、が必要である。
【0036】
図4は、毎秒数ギガビットのデータレートで動作し、非接触回転接合に固有のいくつかの課題に取り組むことができる広帯域のプローブ設計の概念を示す。図4の「A」として示される三角形の部分が近接場プローブの平坦な要素である。プローブ要素の実際の形状は、特定の用途の物理的及び電気的な要求事項に応じて多くの形態をとることができる。本実例では、項目「A」及び「C」として示される幾何学形状は、異なっており、非接触回転接合の不連続な近接場応答の解決策の一部である。
【0037】
プローブの機能を理解するために、従来の近接場プローブの一つの実例が、効果を説明する仕方として図5及び6に示されている。図5は、図の下方部分に伝送線路における送信器信号の流れの実例を示す。プローブ内部の受信信号の流れは、図の上方部分に示されている。
【0038】
比較的高い周波数では、近接場プローブは、進行波アンテナと同様の指向性を示し、この進行波アンテナでは、誘起される信号の強さが、信号が構造体に沿って伝播するとともに増加する。図5において、内側に向いた矢印を有するテーパ付けされた実線は、信号レベルが伝送線路上を進むデータ信号に応じて増加する、誘起された信号を示す。プローブが終端ギャップ上に置かれている場合は、プローブ内で誘起される2つの信号は、反対方向に進み、プローブの給電点に達し、同相で合体し、信号出力としてプローブから送出される。プローブが終端ギャップから離れて位置する場合は、プローブの双方向応答により、信号の振幅が多少減少しているとはいえ、終端ギャップの両側のどちらの方向からも信号を受信することができる。
【0039】
また、図5は、矢印を有する破線によって示される、プローブに存在する他の信号を示し、プローブの端部に達して、インピーダンス不連続により反射する、誘起された信号に起因するプローブ内部への反射を表す。これらの反射信号は、プローブの反射減衰量に影響を与えるいくつかの効果のために振幅を減少させながら、プローブを横切って複数回反射する。反射は、所望の直接信号と干渉する、より低い振幅で給電点に達し、時間的にずれた不要信号を引き起こす。これらの内部反射は、非接触回転接合のデータレートを制限する効果の1つである。
【0040】
図6は、送信器送信源ギャップが電磁場プローブの直ぐ下におかれている場合に、非接触回転接合で起こる別の問題となる効果を示す。送信源の直ぐ上にあるとき、プローブが受け取ったエネルギーは、プローブ給電点の方にではなく、送信源から離れるように伝播しており(外側に向いた実線の矢印)、信号出力をほとんど生成せずに、プローブ応答にヌルを生成する。プローブに沿って伝播する、誘起された進行波信号は、プローブの端部でインピーダンス不連続により反射され、次いでプローブ給電点の方へ進み(内側に向いた点線の矢印)、プローブを横切って繰り返し反射する。
【0041】
プローブ端部でのインピーダンス変化により反射された信号は、部分的にプローブ出力におけるヌルを埋めるが、時間的にずれている。結果は、データ復元を複雑にする低い信号振幅及び時間的なひずみである。自動利得制御は、部分的なヌルに対する従来技術の解決策であるが、反射による時間的なひずみは、データレートに対する主要な制約である。本発明は、これらの欠陥をすべて修正し、はるかに高速のデータ伝送速度をサポートする。
【0042】
図7は、不連続な幾何学形状を使用することによって、本発明が送信器送信源ギャップの問題となるケースを改善するメカニズムを示す。
【0043】
中心からある距離離れたプローブ上の領域からの信号反射を意図的に生成することによって、普通ならば生じるヌルを埋める信号エネルギーを提供する。反射サイトを信号出力部へ近接させることによって、時間的なひずみが最小となり、ヌルを埋め、したがってデータ伝送速度への制約条件の2つを改善する。図7の領域「C」から領域「B」への移行部においてプローブの特性インピーダンスを変化させることによって、図7の中央の湾曲した矢印によって示されるように、そのような反射を生成する。インピーダンス変化は、半田マスクの適用、めっき又は半田被膜による断面の変化によって、又は図7に示されるように幾何学パターン領域などの幾何学的変化を導入することによって、様々な度合で、領域「B」において達成することができる。
【0044】
プローブの幾何学形状の変化を導入することによって、特性インピーダンスを変化させ、所望の反射を提供するが、そのような幾何学的構造は、システムの帯域幅及び反射減衰量を増加させるための分布負荷としても働く。図7の実例は、帯域幅の拡大並びに反射減衰量の増加を提供する多重共振をもたらすように働くメッシュの使用を示す。反射減衰量の増加は、プローブ端部からの信号の反射を減衰させて、普通ならばプローブを横切って反射し、所望の信号に対する妨害信号となる反射信号の振幅を低減させる。また、連続的な抵抗性負荷は、所望の反射を生み出し、並びに反射減衰量を増加させるために使用することができるが、帯域幅の増大という利点はもたらさない。
【0045】
幾何学パターンは、図7に示されるように、平坦な金属構造における孔として、又は直線状の又は湾曲したフィーチャとして実施されてもよく、これらの両方ともが、プローブの通過帯域に新しい共振を生成するように働く。共振の周波数及び構造体のインピーダンスは、プローブの幾何学形状の関数であり、このプローブの幾何学形状が、高速データ・ストリームの所望の偶数次及び奇数次高調波において選択的に共振を提供するなど、所望の特性を提供すように実施され得る。
【0046】
フラクタル幾何学形状も、近接場プローブのパターンとして利用することができる。フラクタル幾何学形状は、物理的な幾何学形状を生成するための決定論的アルゴリズムを提供するという利点を有するが、結果として生じる通過帯域の共振をどちらかというとあまり制御しないという欠点がある。フラクタル構造における共振は、高速データ信号の高調波をそれほどサポートしない対数関係を有する傾向がある。
【0047】
現状技術によっては、不連続な幾何学形状に対して閉じた形態での設計を実施することはできないが、電磁シミュレーションを使用して、非接触回転接合システムの最適な反射減衰量及び周波数応答のために、幾何学的なフィーチャ、開口、不連続、並びに他の構造のサイズ、形状、数、及び配置を最適化することができる。
【0048】
近接場プローブ及び差動増幅器の究極の高周波性能は、図4に示されるように、この2つを互いに接続する伝送線路によって一部制約される。プローブのインピーダンス及び増幅器の入力インピーダンスは、周波数依存性があり、互いに無関係に変化し、それらを接続する伝送線路の特性インピーダンスとほぼ同じになることができるのみである。プローブ及び増幅器のインピーダンスが伝送線路の特性インピーダンスと異なる周波数では、インピーダンス不整合を悪化させ、システムの周波数応答に悪影響を及ぼす可能性があるインピーダンス変換がある。この影響は、接続伝送線路の電気的長さが4分の1波長の奇数倍となる周波数で最も強い。伝送線路を短くすることは、これらのインピーダンス逆転効果が顕著となる周波数を増加させることよって、周波数応答を改善する。窮極の高周波性能は、例えば、フリップ・チップ・デバイス又はプローブ構造体内に直接ワイヤ・ボンディングされた集積回路を利用することなどによって、プローブと電子機器間の相互接続を最短の実際的な物理的寸法にまで短くした場合に実現される。図8及び図9にそれぞれ示されるように、ワイヤボンド相互接続及びフリップ・チップ実装、その後に続く上部樹脂封入又は他のパッシベーション技法は、プローブ・システムの帯域幅を60GHz(すなわち、5ミリメートルの波長)にまで拡大することができる。
【0049】
近接場プローブの幾何学形状は、柔軟性があり、特定の用途及び選択された伝送タイプの帯域幅要求に応じて多くの変形形態が可能である。近接場プローブは、伝送線路の物理的な形態を補完するように、菱形の、円形の、三角形の、テーパ付けされた、曲がった、直線の、又は他の形態を含む様々な形状を呈することができる。同様に、無効負荷を実装して帯域幅及び反射減衰量を向上させるためのプローブ内部のパターン開口又は特徴は、いかなるタイプの幾何学形状も利用することができ、従来の決定論的な幾何学的形態によって制約されず、ランダムな、又は任意の形態を含む、特定の信号タイプ及び特定の回転接合伝送線路特性の動作要求を提供するすべての形態の不連続な幾何学形状を使用することができる。さらに、パターニングされた幾何学形状の無効負荷は、電磁場プローブの構造に連続的な抵抗性負荷材料を使用することによって増強され、又は置き換えられてもよい。ニッケル合金及び窒化タンタルなどの抵抗性材料は、電磁場プローブの末端部からの反射を減衰させることによって、反射減衰量及び時間領域の応答を改善することができる。図10は、幾何学的なパターニングの使用の有無を問わず、様々なプローブ構造体に組み込まれた抵抗性の導電層の使用を示す。ここでもまた、近接場プローブの実際の形状は、適用する場合の詳細に適するように、多くの形態をとることができる。図示された疑似直線状の領域の存在は、以前に記載されたようなやり方で機能し、回転接合用途において遭遇する不連続場及び指向性を改善するために意図的な、局所的な反射を導入する。
【0050】
テスト・データ
以下のデータは、非接触回転接合において動作する、発明の様々な性能態様を説明するために提示され、図11A及び図11Bに示されるアイ・ダイアグラムから始まる。アイ・ダイアグラムは、デジタル・データ・システムの性能を評価するための標準的な技法である。図11Aは、毎秒1.0ギガビットで動作するプロトタイプの非常に良好なシグナル・インテグリティを示し、図11Bは、毎秒7.0ギガビットで動作するプロトタイプの非常に良好なシグナル・インテグリティを示す。システムの性能は、電子機器の帯域幅によって制限される。
【0051】
図12A及び図12Bは、低インピーダン及び高インピーダンスの増幅器によって近接場プローブから受け取った信号をそれぞれ示す。図11A及び図11並びに図12A及び図12Bに示されるデータは、不連続な幾何学形状を有する平面近接場プローブを使用する非接触回転接合の高周波性能を示す。
【0052】
したがって、本発明は、2つの相対的に移動可能な部材間に画成されたインターフェースを横切って電気信号を伝送するための改善された非接触回転接合を提供する。改善された非接触回転接合は、大まかに言って、高速のデジタル・データ出力信号を提供するように動作可能に配置された信号源(A)と、送信源ギャップ(D)及び終端ギャップ(E)を有するインピーダンス制御された差動伝送線路(C)と、信号源から高速のデジタル・データ出力信号を受け取るように、且つこの高速のデジタル・データ出力信号をインピーダンス制御された差動線路の送信源ギャップに供給するように動作可能に配置された電力分割器(B)と、インターフェースを横切って伝送される信号を受け取るように、伝送線路に対して離間した関係で配置された近接場プローブ(G)と、プローブが受け取った信号を受け取るように動作可能に配置された受信電子機器(H)と、を含み、回転接合が40GHzまでの超広帯域周波数応答能力を示す。
【0053】
本発明は、以下の特許請求の範囲によって規定され、差別化されているような本発明の趣旨から逸脱せずに様々な変更及び修正がなされてもよいことを想定している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12A
図12B