特許第6305002号(P6305002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6305002球状シリカ粒子、その製造法およびこれを含有する樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305002
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】球状シリカ粒子、その製造法およびこれを含有する樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20180326BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20180326BHJP
   C08K 7/18 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   C01B33/18 C
   C08L101/00
   C08K7/18
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-214979(P2013-214979)
(22)【出願日】2013年10月15日
(65)【公開番号】特開2015-78080(P2015-78080A)
(43)【公開日】2015年4月23日
【審査請求日】2016年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】306032316
【氏名又は名称】新日鉄住金マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕
(72)【発明者】
【氏名】阿江 正徳
(72)【発明者】
【氏名】矢木 克昌
(72)【発明者】
【氏名】田中 睦人
(72)【発明者】
【氏名】村田 栄二
【審査官】 廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/154186(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/132771(WO,A1)
【文献】 特開2009−184843(JP,A)
【文献】 特開2010−275138(JP,A)
【文献】 特開2005−306923(JP,A)
【文献】 特開2000−169132(JP,A)
【文献】 特開2006−290724(JP,A)
【文献】 特開平10−251042(JP,A)
【文献】 特開2008−162849(JP,A)
【文献】 特開2001−106521(JP,A)
【文献】 特開2009−198083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状シリカ粒子を溶射法で製造する方法において、平均粒径が1〜70μmの範囲である原料のシリカ粒子にAl化合物をアルミナ換算で2〜10質量%(原料のシリカ粒子とAl化合物の合計質量を基準とする)混合した後、中心温度が2100℃以上2800℃以下の火炎中で溶射し、粒径30〜500nmの粒子の含有量が0.5〜10質量%(球状シリカ粒子の質量を基準とする)である球状シリカ粒子を製造することを特徴とする球状シリカ粒子の製造方法。
【請求項2】
Al化合物として平均粒径0.01〜5μmのアルミナ粒子を用いることを特徴とした請求項1記載の球状シリカ粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法で製造された球状シリカ粒子を、樹脂に混合して製造することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂と混合して半導体封止材料等に用いられる、球状シリカ粒子の製造方法、そのシリカ粒子および、そのシリカ粒子を含有する樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージに用いられる封止材には、高熱伝導化、高強度化を目的にシリカ粒子をフィラーとして充填した樹脂組成物が用いられている。樹脂組成物をより高熱伝導率化することを目的として、樹脂より熱伝導率の高いシリカ粒子の充填量を増やすために球状のシリカ粒子が多く用いられている。
【0003】
近年では更に半導体パッケージの小型化、薄型化が進んでおり、これに伴いボンディングワイヤの細径化、狭ピッチ化へのニーズが高まる一方、半導体素子の高性能化に伴う発熱量の増大により、半導体パッケージの放熱性の向上がより重要となっている。
【0004】
半導体パッケージに用いられる封止材料に対するニーズも、狭小部への充填性を高めるため、より高流動の封止材が求められるとともに、高熱伝導化を更に高めるためにもフィラーをより高充填化することが求められている。
【0005】
このため、用いられるシリカ粒子には、より円形度が高く、流動性の良い球状フィラーへのニーズが高まっている。
【0006】
球状のシリカ粒子の製造方法としては、粉砕したシリカの原料粉末を火炎中に吹き込んで、高温で溶融させ、溶融シリカの粘度が低くなり、表面エネルギーにより球状化することを利用した溶射方法が知られている。この方法では高い円形度の球状シリカ粒子を得ることが可能となる。
【0007】
しかしながら、シリカを高温で溶融させると、シリカの一部がSiOあるいはSiOの形で蒸発し、これが凝固して超微粒子が多く発生してしまう。
【0008】
シリカが蒸発固化して生成する超微粒子は、一般的に0.5μm以下の非常に微細な粒子であり、このような超微粒子が多く混入すると、樹脂と混合した際に、樹脂の粘度を大きく上昇させてしまい、流動性を低下させ、充填性が高まらない原因となる。
【0009】
このような超微粒子に起因する流動性または充填性低下に関して、従来は、以下に示すように生成した超微粒子の量を調整する技術思想が主であった。
本発明者らは、特許文献1で開示したように、超微粒子の量を制御することにより、高い充填率でシリカ粒子を樹脂と混合した場合でも高流動の球状シリカ粒子が得られる技術を開発している。
【0010】
特許文献2には、50nm未満の超微粒子を実質的に含有しない球状無機質粉末が開示されている。超微粒子は球状無機質粉末の高充填時に樹脂組成物を増粘させ、流動性、成形性を著しく損なってしまい、特に50nm未満の粒子はその傾向が著しいため、50nm未満の超微粒子を実質的に含有しないことが好ましいとしている。しかしながら、特許文献2には50nm未満の超微粒子を含有しない球状フィラーの製造方法については、具体的な説明が成されていない。
【0011】
特許文献3には、溶融球状シリカ表面に付着している超微粒子を剥離、除去する方法として、溶融球状シリカと溶融球状シリカ付着微粒子除去助剤との混合物を湿式処理する方法が開示されている。溶融球状シリカ付着微粒子除去助剤としては、苛性アルカリ、弗化水素酸、ガラスビーズ、アルミナ、ジルコニア、シリカビーズ等の無機粉砕物を用い、湿式処理後、遊離した付着微粒子はデカンテーション又は傾斜法等により除去し、溶融球状シリカは濾過、乾燥して、超微粒子の付着していない表面が平滑な球状フィラーが得られるとしている。しかしながら、この方法では超微粒子を完全に除去する方法ではあるが、火炎中で溶融して得た球状シリカを、更に湿式処理する必要があり、生産性が劣るとともに、高コストとなる問題があった。また、この方法では、超微粒子を完全に除去することは可能であると考えられるが、特許文献1に示したように超微粉量を最適な量に制御して、流動性を損なうことなくフィラーとしての充填性を高めることはできない。
【0012】
特許文献4には、超微粒子に相当する、シリカフューム(SiO2成分が一旦SiO蒸気となりそれが酸化沈着して生成したもの)の付着量が5質量%以下になるように、二酸化ケイ素粉末原料の濃度が20〜80質量%の水スラリーを気体で分散させながら、火炎中に噴霧する方法が開示されている。しかしながら、この方法では原料を水と混合したスラリーとするため、一度に大量のスラリーを供給すると火炎の温度が低下し、シリカの未溶融粒子が発生し、球形度の低い粒子となる問題点がある。さらに、特許文献4では、二流体ノズルで突出速度が少なくとも50m/s以上とした気体と水スラリーを噴射し、水スラリーを分散させて火炎中に噴霧する方法を用いているが、生産性で通常の火炎溶融法より劣るなどの課題がある。
【0013】
この他に、球状シリカ粒子に含まれる超微粒子の量を制御する方法としては、風力分級などの方法があるが、風力分級では分級点を精密に制御することができないため、超微粒子だけを分離・回収することは困難である。このため、超微粒子以外の粒子も超微粒子と一緒に除去され、歩留まりが大きく低下する問題がある。また、風力分級で、超微粒子のようなサブミクロンの粒子を効率良く分級するためには、高速回転するローターで粒子を分散させてから、分級する必要があり、特殊な装置が必要であるとともに、ローターや装置からの摩耗によるコンタミが混入するなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2010−275138号公報
【特許文献2】特許第3571009号明細書
【特許文献3】特許第4043103号明細書
【特許文献4】特許第4145855号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上のように従来は、溶射法による球状シリカ粒子製造において、生成した超微粒子の量を制御する技術思想がいくつかあるが、超微粒子の発生を十分かつ効率よく抑制することは従来の技術では困難であり、簡便な製造方法の開発が望まれていた。
【0016】
本発明は、球状シリカ粒子において、所定の超微粒子の量を制御した高流動性の球状シリカ粒子の安価な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の要旨は、以下の通りである。
【0018】
(1) 球状シリカ粒子を溶射法で製造する方法において、平均粒径が1〜70μmの範囲である原料のシリカ粒子にAl化合物をアルミナ換算で2〜10質量%(原料のシリカ粒子とAl化合物の合計質量を基準とする)混合した後、中心温度が2100℃以上2800℃以下の火炎中で溶射し、粒径30〜500nmの粒子の含有量が0.5〜10質量%(球状シリカ粒子の質量を基準とする)である球状シリカ粒子を製造することを特徴とする球状シリカ粒子の製造方法。
【0019】
(2) Al化合物として平均粒径0.01〜5μmのアルミナ粒子を用いることを特徴とした(1)記載の球状シリカ粒子の製造方法。
【0022】
) (1)又は(2)に記載の製造方法で製造された球状シリカ粒子を樹脂に混合して製造することを特徴とする樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明により、高流動性の球状シリカ粒子を安価に提供することが可能となり、本発明の方法により製造した球状シリカ粒子をフィラーとして樹脂と混合して用いることにより、フィラーの充填率が高い樹脂組成物を得ることができ、特に、狭小部への充填が可能であるため、熱伝導性の高い半導体封止材等として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明者らは、特許文献1の技術によって、粒径50nm〜300nmの範囲に粒度分布の極大値をもつシリカ超微粒子は、樹脂に添加されると樹脂と一体化して流動することができること、したがって、このようなシリカ超微粒子を用いれば、樹脂組成物の流動性を損なうことなく、シリカ粒子の樹脂への充填率を上げることが可能であることを示した。
【0025】
また、この極大値をもつシリカ超微粒子の含有割合が、0.5〜10質量%(シリカ粒子の質量を基準とする)である場合に、そのシリカ粒子の樹脂組成物への充填率を上げたときに、その樹脂組成物に高流動性を付与することができることを示した。
【0026】
粒径50nm〜300nmの範囲に粒度分布の極大値をもつシリカ超微粒子は、前述したように溶射プロセスにおいてシリカの一部が蒸発、固化することにより、生成し、従来の技術では、この超微粒子の量を制御する安価、かつ大量製造を可能とすることは困難であった。
【0027】
発明者らは、シリカ原料を中心温度が2100℃以上の火炎中で溶融させて球状化する際に、シリカ原料に予めAl化合物を混合すると、溶融段階で溶融シリカの表面を溶融アルミナが被覆し、シリカの蒸発を抑える効果が得られることを見出した。
【0028】
これにより、シリカ超微粒子の発生を抑制することが出来ること、さらにAl化合物の添加量を変えることによって、シリカ超微粒子の量を制御可能であることを見出した。
【0029】
この方法を用いることにより、特別な装置を用いることなく、低い製造コストで、シリカ超微粒子の量を制御した、高い円形度を持つ球状シリカ粒子を得ることが可能となった。
【0030】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0031】
シリカ原料に添加するAl化合物としては、アルミナ、水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコキシドなどを用いることができる。シリカと混合して溶融シリカの表面に溶融アルミナを形成するものであれば、これらの限定されるものではないが、原料として安価であり、溶融してシリカの表面を被覆するのに有効な粒径の小さい原料を入手できる点から、Al化合物としてはアルミナを用いることが望ましい。
【0032】
原料のシリカ粒子に混合するAl化合物としてアルミナ粒子を用いる場合は、平均粒径0.01〜5μmのものを用いることが望ましい。
これは、溶融時にシリカ粒子の表面に溶融したアルミナが被覆するためには、シリカ原料粒子の表面にアルミナ粒子が付着、もしくは接触していることが必要であるため、この範囲の粒径のものを用いることが望ましい。
0.01μmより小さい粒径のものは、ハンドリングが困難であるとともに、凝集し易いため、シリカと均一に混合することが困難である。また、市販されているアルミナ粒子で最も粒径の小さいフュームドアルミナでも0.01μm以上であり、これより小さい粒径のものを用いることは現実的ではない。
また、5μmより大きい粒子を用いた場合、アルミナ粒子が単独で溶融し易くなるため、同じアルミナ粒子の添加量でも、シリカを被覆する割合が少なくなるため、望ましくない。
また、原料段階でシリカの表面に付着し易くするためには、0.01〜1μmのアルミナ粒子を用いることがより望ましい。
【0033】
原料と混合するアルミニウム化合物の量は、アルミナ換算で2〜10質量%(シリカ原料とアルミニウム化合物の合計質量を基準とする)である。
2質量%より少ないと、シリカ粒子の表面を被覆する割合が低くなるため、シリカの蒸発を抑制する効果が得られず、粒径30〜500nmの超微粒子の含有量を10質量%(溶射後のシリカ粒子の質量を基準とする)以下に低減できない。
また、10質量%より多いとシリカ表面を被覆するのに必要とされるアルミナ量より多くなり、アルミナ単独で溶融する粒子が多くなるため、これ以下の量を添加することが望ましい。
また、アルミナなどのアルミニウム化合物の添加量によって、溶融シリカの表面を被覆する割合を変えることができるため、超微粒子の量を制御することができる。
【0034】
原料のシリカ粒子とアルミナ粒子などのアルミニウム化合物を混合する方法は、均一に混合されるのであれば、特に制限されずどのような方法を用いても良い。
一般的な混合方法としては、ボールミル、アトライター、V型混合機、W型混合機、振動ミル、ジェットミル、スクリュー式混合機、機械撹拌式混合機、容器回転式混合機などを用いることができる。また、混合は、湿式でも乾式でも混合することができる。
【0035】
シリカ粒子とアルミナ粒子などのアルミニウム化合物を混合した原料を中心温度が2100℃以上の火炎中に供給し、溶融させて球状化する。
火炎は、2100℃以上の火炎を形成できる可燃性材料であれば特に限定されるものではないが、低コストかつ高温の火炎が得られることからLNG、LPGを燃料として用いることが望ましい。
また、混合原料を供給する方法としては、燃焼に必要な酸素ガスを搬送ガスとして、火炎中に供給することが望ましい。
また、原料を供給する火炎の中心温度は、2100℃以上である。
シリカの融点は1710℃であり、これより高温で溶融させることにより、溶融シリカの粘度が低下し、円形度の高い球状シリカ粒子を得ることができる。また、アルミナの融点が2054℃であるため、火炎の温度はこれ以上の温度とする。このため、少なくとも火炎の温度分布で高温となる火炎中心の温度は2100℃以上である。
2100℃より温度が低い場合、溶融せずに原料状態のまま回収されるアルミナ粒子が多くなり、シリカ粒子表面を覆うアルミナ量が少なくなるため、超微粒子の発生を抑制することができない。
火炎中心の温度は、2100℃以上であれば、本発明の効果が得られるが、高温になる方がシリカ粒子の粘度が下がり、円形度の高いシリカ粒子を得ることができる。
しかしながら、高温になるに従いシリカの蒸気圧が高くなり、アルミナで被覆された状態でも、シリカの蒸発量が多くなり超微粒子の発生量が多くなってしまう。このため、火炎の中心温度は、2800℃以下であることが望ましい。
【0036】
原料として用いるシリカ粒子は、平均粒径1〜70μmの範囲のものを用いることが望ましい。
平均粒径が1μm未満のシリカ粒子を原料と用いた場合、比表面積が大きいため、蒸発するシリカ量が多くなり、粒径30〜500nmの超微粒子の量が多くなるため、望ましくない。
平均粒径が70μmより大きいシリカ粒子を原料として用いた場合、粒子が大きいため、火炎中で原料を溶射する際に、粒子全体が溶融せずに、円形度の低い粒子が多く含まれる粒子が得られる可能性が高いため、望ましくない。
【0037】
溶融して球形化した粒子は、冷却されてサイクロンやバグフィルタなどの回収装置を用いて回収する。溶融した粒子は、装置の溶射チャンバ―の内壁等に接触するまでに、固化することが望ましいため、粒子が移動中に冷却・固化するのに十分な距離を取ることが望ましい。また、バグフィルタで回収する際、粒子が高温のままだとバグフィルタを溶損する可能性があるため、冷却後の粒子の流路は、粒子が冷却されるのに十分な長さを取ることが望ましい。このため、必要に応じて冷却ガスを装置内部に導入して冷却を促進することが望ましい。
【0038】
以上の方法で得られる球状シリカ粒子に含まれる粒径30〜500nmの超微粒子の含有量が0.5〜10質量%(球状シリカ粒子の質量を基準とする)になるように、アルミナ粒子などのアルミニウム化合物の添加量により、調整することが可能である。
粒径30〜500nmの超微粒子を樹脂中に分散させると、超微粒子は樹脂と一体化して流動するため、見かけ上の樹脂の体積が増えて、500nmより大きい粒子同士が直接接触しにくくなるため、流動性を高める効果を得ることができる。
粒径30〜500nmの超微粒子の含有割合が0.5質量%より少ないと、樹脂と一体化する超微粒子の量が少ないため、500nmより大きい粒子の間隔を広げる効果が得られないため、流動性を高める効果を得ることができない。
一方、シリカ超微粒子の含有割合が10質量%より多いと、超微粒子が凝集しやすくなるため、超微粒子を樹脂中に均一に分散することが困難となり、樹脂の流動性が低下する原因となる。また、シリカ超微粒子の含有割合が多くなると、超微粒子と樹脂との混合により樹脂組成物の粘度が著しく上昇したりすることがあるため、全体の流動性を低下させてしまう。
【0039】
得られた球状シリカ粒子に含まれる30〜500nmの超微粒子の粒径および量は、ディスク遠心式粒度分布測定法やStokesの式を用いた自然沈降法で測定することができる。
ディスク遠心式粒度分布測定法を用いる場合、10μm以上の大きな粒子は沈降速度が速すぎるため正確な量を測定することができない場合がある。このような場合、測定サンプルの質量をあらかじめ測定しておき、測定された粒径30〜500nmの粒子の質量と測定サンプル全体の質量から、その割合を算出する方法が有効である。
また、シリカ超微粒子の量は、高分解能走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡を用いた直接観察により、粒径および個数を計測して測定することもできる。
【0040】
また、本発明の方法により製造される球状シリカ粒子の円形度は、0.85以上であることが望ましい。ここで、シリカ粒子の円形度とは、面積相当円の周囲長 ÷ 実際の周囲長である。
円形度が0.85以下の場合、樹脂と混合して樹脂組成物を作製した際の流動性が低下するために望ましくない。円形度を高くする方法としては、超微粒子の発生が本発明の範囲より多くならない程度に溶射する際の火炎の温度を高くすることが望ましい。また、平均円形度が1.0で真球となるので、この値を超えることはないため、平均円形度は1.0以下の値となる。
また、円形度は、シスメックス製FPIA2100などの円形度測定装置で測定する方法で測定することができる。また、SEMで粒子を撮影した画像を用いて、画像処理ソフト等で「面積相当円の周囲長」および「実際の粒子の周囲長」を測定し、円形度を計算する等の方法でも測定することが可能である。
【0041】
本発明の方法により製造されるシリカ粒子は、フィラーとして樹脂と混合して樹脂組成物に使用することができる。樹脂組成物を封止材として用いる場合、樹脂はo'−クレゾールノボラック樹脂、ビフェニル樹脂などを用いることができるが、樹脂の種類は特にこれらに限定されるものではない。
【0042】
以上の方法により、粒径30nm〜500nmの粒子の含有量が0.5〜10質量%である高流動性の球状シリカ粒子を得ることができ、樹脂と混合した際に、高流動性の樹脂組成物を得ることが可能となる。
【実施例】
【0043】
以下に、本発明の実施例および比較例を示す。
【0044】
(実施例1)
平均粒径20μmに破砕したシリカ原料に粒径の異なるアルミナ、粒径2μmの水酸化アルミニウムを表1に示す添加量(原料のシリカ粒子とAl化合物の合計質量を基準とする)で加え、V型混合機で混合した混合原料を作製した。LPGを燃料とし、酸素を搬送ガスとして用いて、混合原料を火炎中に供給し、サイクロンおよびバグフィルタで溶融後のシリカ粒子を回収した。
得られたシリカ粒子は、ディスク遠心式粒度分布測定装置で超微粒子の粒度分布および含有量を測定した。
得られたシリカ粒子をビフェニル系エポキシ樹脂にシリカ粒子が90質量%(樹脂組成物の質量を基準とする)の割合で予備混合し、100℃で加熱混合して樹脂組成物を作製した。この樹脂組成物を160℃でスパイラルフロー測定用金型を用いて流動性を評価した。
【0045】
本発明による2〜10%のアルミナ粒子を混合して得られたシリカ粒子は、いずれも0.2〜0.22μmに極大値をもつ超微粒子が含まれていた。30〜500nmの超微粒子の割合は、1.4〜9.4質量%(得られた球状シリカ粒子の質量を基準とする)であった。
これに対し、本発明の範囲外のものは、超微粒子が30〜500nmの超微粒子が10.3質量%以上含まれていた。
樹脂組成物の流動性では、本発明によるものがおおよそ100〜120cmであったのに対し、本発明の範囲外のものは97cm以下であり、本発明による球状シリカ粒子で高流動性の樹脂組成物を得ることができた。
【0046】
【表1】
【0047】
(実施例2)
粒径の異なるシリカ原料を用いて、粒径0.013μmのアルミナを5質量%(原料のシリカ粒子とAl化合物の合計質量を基準とする)添加して、実施例1と同様の方法で球状シリカ粒子を作製した。
得られたシリカ粒子は、ディスク遠心式粒度分布測定装置で超微粒子の粒度分布および含有量を測定した。
得られたシリカ粒子をビフェニル系エポキシ樹脂にシリカ粒子が90質量%(樹脂組成物の質量を基準とする)の割合で予備混合し、100℃で加熱混合して樹脂組成物を作製した。この樹脂組成物を160℃でスパイラルフロー測定用金型を用いて流動性を評価した。
原料シリカに平均粒径0.8μmのものを用いた場合、原料が超微粒子を多く含むことから30〜500nm粒子の割合が24.8質量%(得られたシリカ粒子の質量を基準とする)と本発明の範囲外となり、樹脂組成物の流動性も78cmと低流動性であった。原料シリカに平均粒径1〜75μmを用いたものは、30〜500nm粒子の割合が4.4〜9.8質量%と本発明の範囲内となり、樹脂組成物の流動性も93〜112cmと高い流動性のものが得られた。
【0048】
【表2】