特許第6305038号(P6305038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305038
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/08 20060101AFI20180326BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20180326BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20180326BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   C08L25/08
   C08L33/12
   C08K5/49
   C08K5/10
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-249596(P2013-249596)
(22)【出願日】2013年12月2日
(65)【公開番号】特開2015-105371(P2015-105371A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年10月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597003516
【氏名又は名称】MGCフィルシート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【弁理士】
【氏名又は名称】潮 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】大西 猛史
(72)【発明者】
【氏名】中安 康善
(72)【発明者】
【氏名】小澤 帰心
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−102614(JP,A)
【文献】 特開2004−318021(JP,A)
【文献】 特開2008−189902(JP,A)
【文献】 特開昭64−066218(JP,A)
【文献】 特開平05−320472(JP,A)
【文献】 特開2007−238800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 25/08
C08L 33/12
C08K 5/10
C08K 5/49
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量平均分子量が10,000〜500,000のビニル系単量体を構成単位とする樹脂(A)50〜10質量%、
スチレン系単量体単位(b1)40〜70質量%、不飽和ジカルボン酸単量体単位(b2)10〜30質量%、ビニル系単量体単位(b3)10〜30質量%である特定のスチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体(B)50〜90質量%
からなる(A)と(B)の樹脂成分の合計100質量部に対し、
りん系安定剤0.001〜1質量部、および、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物0.01〜0.5質量部を含有し、
前記スチレン系単量体単位(b1)が、スチレン、α―メチルスチレン、o―メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、及び、t−ブチルスチレンのいずれかを含み、
前記ビニル系単量体単位(b3)が、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n―ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、及び、メタクリル酸2エチルヘキシルのいずれかを含み、
前記樹脂組成物のガラス転移温度が115℃以上かつ飽和吸水率が1.0%以下であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂成分(A)および(b3)のビニル系単量体単位がメチルメタクリレートを含むことを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(b1)のスチレン系単量体単位が、スチレンを含むことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(b2)の不飽和ジカルボン酸単量体単位が、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、及び、アコニット酸のいずれかを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(b2)の不飽和ジカルボン酸単量体単位が、無水マレイン酸を含むことを特徴とする請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記脂肪族アルコールが、炭素数30以下の1価または多価の飽和アルコールを含み、前記脂肪族カルボン酸が、炭素数6〜36のモノまたはジカルボン酸を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
JIS K 5600−5−4に準拠した鉛筆硬度がH以上であることを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載の樹脂組成物を含む成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニル系単量体を含有する樹脂組成物に関するものである。さらに詳しくは、特定のスチレン系共重合樹脂及び特定のビニル系樹脂を特定の割合でポリマーブレンドしたものであり、ビニル系樹脂の熱変形温度および吸水性能を改善し、ビニル系単量体を含有する樹脂がもつ高い鉛筆硬度を保持することを特徴とする透明性樹脂組成物である。
【背景技術】
【0002】
透明部材として広く用いられ、光および熱硬化樹脂、塗料、接着剤、インキなどの原料としても有用であるポリメタクリル酸メチル(以下、PMMA)に代表されるメタクリル樹脂の利点は、透明性および耐候性に優れ、機械的物性とのバランスがよく、かつ、加工性がよいことにある。しかしながら、グレージング材、ディスプレイ部材(液晶ディスプレイ用導光板・拡散板、あるいは、プロジェクションディスプレイ用スクリーン板等)、照明カバー、あるいは光学用レンズ等の部材として、メタクリル樹脂、あるいは、その代替樹脂の物性に対する要求も多様化してきており、例えば、耐熱性、吸水性などの改良が求められている。
従来から知られているPMMAの耐熱性向上技術としては、例えば、メタクリル酸メチル(以下、MMA)とα−メチルスチレンとの共重合樹脂(特許文献1)、MMAとスチレン、あるいは、α−メチルスチレンおよび無水マレイン酸との共重合樹脂(特許文献2)、MMA、α−メチルスチレン、および、マレイミドとの共重合樹脂(特許文献3)、等が挙げられる。
特許文献1〜3に記載の方法によれば、いずれも耐熱性は向上できるが、重合速度が著しく遅く重合に長時間を要するため、着色などが発生し透明性が損なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第3135723号
【特許文献2】特開昭58−87104号公報
【特許文献3】特開昭48−95490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述の課題に鑑みて創案されたもので、ビニル系単量体を含有する樹脂が本来有する高い表面硬度を損なうことなく、透明性を維持しつつ、ガラス転移温度が高く、さらに低吸水性に優れたビニル系単量体を含有する樹脂組成物に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、i)スチレン系単量体単位45〜70質量%、不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位10〜30質量%、ビニル系単量体10〜35質量%である特定のスチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体50〜90質量%とii)ビニル系単量体を構成単位とする樹脂50〜10質量%をポリマーアロイすることで、透明かつ耐熱性が高く、吸水率が低い樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下の合成樹脂組成物、および樹脂組成物を用いた成形品を提供するものである。
【0006】
<1> 質量平均分子量が10,000〜500,000のビニル系単量体を構成単位とする樹脂(A)50〜10質量%、
スチレン系単量体単位(b1)40〜70質量%、不飽和ジカルボン酸単量体単位(b2)10〜30質量%、ビニル系単量体単位(b3)10〜30質量%である特定のスチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体(B)50〜90質量%からなる(A)と(B)の樹脂成分の合計100質量部に対し、りん系安定剤0.001〜1質量部、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物0.01〜0.5質量部を含有し、得られた樹脂組成物のガラス転移温度が115℃以上かつ飽和吸水率が1.0%以下であることを特徴とする樹脂組成物である。
<2> 前記樹脂成分(A)および(b3)のビニル系単量体単位がメチルメタクリレートであることを特徴とする上記<1>に記載の樹脂組成物である。
<3> 前記(b1)のスチレン系単量体単位が、スチレンであることを特徴とする上記<1>〜<2>のいずれかに記載の樹脂組成物である。
<4> 前記(b2)の不飽和ジカルボン酸単量体単位が、無水マレイン酸であることを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれかに記載の樹脂組成物である。
<5> 上記<1>〜<4>のいずれかに記載の樹脂組成物を含む成形品である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高温や高湿な環境における形状安定性、表面硬度及び/又は耐熱性に優れる合成樹脂組成物が提供され、該合成樹脂組成物は、透明性基板材料や透明性保護材料の原料として用いられる。具体的には携帯電話端末、携帯型電子遊具、携帯情報端末、モバイルPCいった携帯型のディスプレイデバイスや、ノート型PC、デスクトップ型PC液晶モニター、液晶テレビといった設置型のディスプレイデバイスなどに好適に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について製造例や実施例等を例示して詳細に説明するが、本発明は例示される製造例や実施例等に限定されるものではなく、本発明の内容を大きく逸脱しない範囲であれば任意の方法に変更して行なうこともできる。
【0009】
本発明は、特定のスチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体(B)50〜90質量%とビニル系単量体を構成単位とする樹脂(A)50〜10質量%を含有してなる樹脂組成物に関するものである。以下に、ビニル系単量体を含有する樹脂成分(A)とスチレンー不飽和ジカルボン酸系共重合体の樹脂成分(B)について順次説明する。
【0010】
<ビニル系単量体を含有する樹脂(A)>
本発明で用いられるビニル系単量体を含有する樹脂(A)としては、例えばアクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n―ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2エチルヘキシル等のビニル系単量体を単独重合したものが挙げられ、特に単量体単位として、メタクリル酸メチルが好ましい。また、前記単量体単位を2種類以上含んだ共重合体でも良い。
樹脂(A)の質量平均分子量は、10,000〜500,000であり、好ましくは50000〜300000である。
【0011】
<スチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体(B)>
本発明の樹脂組成物に用いられる前記(B)の樹脂成分は、スチレン系単量体単位(b1)、不飽和ジカルボン酸無水物単量体単位(b2)とを含み、さらに共重合可能なビニル系単量体(b3)を含む。
【0012】
<スチレン系単量体>
スチレン系単量体とは、特に限定せず、任意の公知のスチレン系単量体を用いることが出来るが、入手の容易性の観点からスチレン、α―メチルスチレン、o―メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン等が挙げられる。これらの中でも、相溶性の観点からスチレンが特に好ましい。これらのスチレン系単量体は2種以上を混合しても良い。
<不飽和ジカルボン酸無水物単量体>
不飽和ジカルボン酸無水物単量体としては、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アコニット酸等の酸無水物が挙げられ、ビニル系単量体との相溶性の観点から無水マレイン酸が好ましい。これらの不飽和ジカルボン酸無水物系単量体は2種以上を混合しても良い。
<ビニル系単量体>
ビニル系単量体とは、例えばアクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n―ブチル、アクリル酸2エチルヘキシル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2エチルヘキシル等のビニル系単量体が挙げられる。ビニル系単量体との相溶性の観点からメタクリル酸メチル(MMA)が好ましい。これらのビニル系単量体は2種以上を混合しても良い。
【0013】
<スチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体の組成比率>
スチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体の組成比率は、スチレン系単量体単位(b1)40〜70質量%、不飽和ジカルボン酸単量体単位(b2)10〜30質量%、ビニル系単量体単位(b3)10〜30質量%である。
【0014】
スチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体(B)の重量平均分子量は、50,000〜200,000が好ましく、80,000〜200,000がより好ましい。重量平均分子量が50,000〜200,000において、ビニル系単量体を含有する樹脂成分(A)との相溶性が良好であり、耐熱性の向上効果に優れる。なお、樹脂成分(B)の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分布(Mw/Mn)は、溶媒としてTHFやクロロホルムを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定を行うことができる。
【0015】
本発明の樹脂組成物は、リン系安定剤を含有する。リン系安定剤は一般的に、ビニル系単量体を含有する樹脂(A)およびスチレンー不飽和ジカルボン酸系共重合体(B)を溶融混練する際、高温下での滞留安定性や樹脂成形体使用時の耐熱安定性向上に有効である。
【0016】
本発明に用いるリン系化合物としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル等が挙げられ、中でも3価のリンを含み、変色抑制効果を発現しやすい点で、ホスファイト、ホスホナイト等の亜リン酸エステルが好ましい。
【0017】
ホスファイトとしては、具体的には例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジラウリルハイドロジェンホスファイト、トリエチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、モノフェニルジデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、水添ビスフェノールAフェノールホスファイトポリマー、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジ(トリデシル)ホスファイト)テトラ(トリデシル)4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマー、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
【0018】
また、ホスホナイトとしては、テトラキス(2,4−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−iso−プロピルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、およびテトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイトなどが挙げられる。
【0019】
また、アシッドホスフェートとしては、例えば、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、ビスフェノールAアシッドホスフェート、ジメチルアシッドホスフェート、ジエチルアシッドホスフェート、ジプロピルアシッドホスフェート、ジイソプロピルアシッドホスフェート、ジブチルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ジオクチルアシッドホスフェート、ジラウリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ジフェニルアシッドホスフェート、ビスノニルフェニルアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0020】
亜リン酸エステルの中では、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく、耐熱性が良好であることと加水分解しにくいという点で、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが特に好ましい。
【0021】
本発明に用いるリン系安定剤(C)の含有量は、ビニル系単量体を含有する樹脂(A)およびスチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体(B)の樹脂成分の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.003質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上であり、1質量部以下、あるいは0.1質量部以下、好ましくは0.08質量部以下、より好ましくは0.06質量部以下である。リン系安定剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、熱安定効果が不十分となる可能性があり、リン系安定剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、効果が頭打ちとなり経済的でなくなる可能性がある
【0022】
<脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物>
本発明のビニル系単量体を含有する樹脂組成物は、所望によって脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物を含有することができる。脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物を含有することで、成形時の金型からの離型性をさらに向上することができる。
【0023】
フルエステル化物を構成する脂肪族カルボン酸としては、飽和または不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸またはトリカルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸は、脂環式カルボン酸も包含する。このうち好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数6〜36のモノまたはジカルボン酸であり、炭素数6〜36の脂肪族飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
【0024】
一方、フルエステル化物を構成する脂肪族アルコール成分としては、飽和または不飽和の1価アルコール、飽和または不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数30以下の1価または多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数30以下の脂肪族飽和1価アルコールまたは多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。
【0025】
これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2−ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等を挙げることができる。これらの脂肪族カルボン酸エステルは、不純物として脂肪族カルボン酸及び/またはアルコールを含有していてもよく、複数の化合物の混合物であってもよい。
【0026】
なお、上記脂肪族アルコールと上記脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物は、そのエステル化率が必ずしも100%である必要はなく、80%以上であればよい。本発明にかかるフルエステル化物のエステル化率は好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
【0027】
さらに、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物は、モノ脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物、および多価脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物を含有することが好ましい。
【0028】
モノ脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸のフルエステル化物としては、ステアリルアルコールとステアリン酸とのフルエステル化物(ステアリルステアレート)、ベヘニルアルコールとベヘン酸とのフルエステル化物(ベヘニルベヘネート)が好ましく、多価脂肪族アルコールとモノ脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物としては、グリセリンセリンとステアリン酸とのフルエステル化物(グリセリントリステアリレート)、ペンタエリスリトールとステアリン酸とのフルエステル化物(ペンタエリスリトールテトラステアリレート)が好ましく、特にグリセリントリステアレートが好ましい。
【0029】
脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのフルエステル化物(D)の含有量は、ビニル系単量体を含有する樹脂(A)とスチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体(B)の樹脂成分の合計100質量部に対して1質量部以下、例えば0.01〜0.5質量部であり、好ましくは0.4質量部以下である。1質量部を超えると耐加水分解性の低下、射出成形や押出成形時の金型汚染等の問題がある。
【0030】
<酸化防止剤>
本発明の樹脂組成物は、所望によって酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤を含有することで、色相劣化や、熱滞留時の機械物性の低下が抑制できる。
【0031】
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’−ヘキサ−tert−ブチル−a,a’,a’’−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
【0032】
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、チバ社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、アデカ社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等が挙げられる。
なお、酸化防止剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0033】
<紫外線吸収剤>
本発明のビニル系単量体を含む樹脂組成物は、所望によって紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤を含有することで、本発明のビニル系単量体を含む樹脂組成物の耐候性を向上できる。
【0034】
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本発明のビニル系単量体を含む樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
【0035】
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が好ましく、特に2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ701」、「シーソーブ705」、「シーソーブ703」、「シーソーブ702」、「シーソーブ704」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、アデカ社製「LA−32」、「LA−38」、「LA−36」、「LA−34」、「LA−31」、チバ・スペシャリティケミカルズ社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
【0036】
ベンゾフェノン化合物の具体例としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−n−ドデシロキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられ、このようなベンゾフェノン化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ100」、「シーソーブ101」、「シーソーブ101S」、「シーソーブ102」、「シーソーブ103」、共同薬品社製「バイオソーブ100」、「バイオソーブ110」、「バイオソーブ130」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ10」、「ケミソーブ11」、「ケミソーブ11S」、「ケミソーブ12」、「ケミソーブ13」、「ケミソーブ111」、BASF社製「ユビヌル400」、BASF社製「ユビヌルM−40」、BASF社製「ユビヌルMS−40」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV9」、「サイアソーブUV284」、「サイアソーブUV531」、「サイアソーブUV24」、アデカ社製「アデカスタブ1413」、「アデカスタブLA−51」等が挙げられる。
【0037】
サリシレート化合物の具体例としては、例えば、フェニルサリシレート、4−tert−ブチルフェニルサリシレート等が挙げられ、このようなサリシレート化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ201」、「シーソーブ202」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ21」、「ケミソーブ22」等が挙げられる。
【0038】
シアノアクリレート化合物の具体例としては、例えば、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等が挙げられ、このようなシアノアクリレート化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ501」、共同薬品社製「バイオソーブ910」、第一化成社製「ユビソレーター300」、BASF社製「ユビヌルN−35」、「ユビヌルN−539」等が挙げられる。
【0039】
オギザニリド化合物の具体例としては、例えば、2−エトキシ−2’−エチルオキザリニックアシッドビスアリニド等が挙げられ、このようなオキザリニド化合物としては、具体的には例えば、クラリアント社製「サンデュボアVSU」等が挙げられる。
【0040】
マロン酸エステル化合物としては、2−(アルキリデン)マロン酸エステル類が好ましく、2−(1−アリールアルキリデン)マロン酸エステル類がより好ましい。このようなマロン酸エステル化合物としては、具体的には例えば、クラリアントジャパン社製「PR−25」、チバ・スペシャリティケミカルズ社製「B−CAP」等が挙げられる。
【0041】
紫外線吸収剤の含有量は、ビニル系単量体を構成単位とする樹脂(A)とスチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体(B)の樹脂成分の合計100質量部に対して、通常0.001質量部以上、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上であり、また、通常3質量部以下、好ましくは2質量部以下、より好ましくは1質量部以下である。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値以下の場合は、耐候性の改良効果が不十分となる可能性があり、紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の上限値を超える場合は、モールドデボジット等が生じ、金型汚染を引き起こす可能性がある。なお、紫外線吸収剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
【0042】
本発明において、ビニル系単量体を含有する樹脂組成物の製造方法は特に制限はなく、必要な成分を例えばタンブラーやヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどの混合機を用いて予め混合しておき、その後バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸押出機、二軸押出機、加圧ニーダーなどの機械で溶融混練するといった公知の方法が適用できる。
【0043】
本発明における樹脂組成物は、フィルター処理によりろ過精製されることが好ましい。フィルターを通して生成あるいは積層することにより異物や欠点といった外観不良が少ない合成樹脂積層体を得ることが出来る。ろ過方法に特に制限はなく、溶融ろ過、溶液ろ過、あるいはその組み合わせ等を使うことが出来る。
【0044】
使用するフィルターに特に制限はなく、公知のものが使用でき、各材料の使用温度、粘度、ろ過精度により適宜選ばれる。フィルターの濾材としては、特に限定されないがポリプロピレン、コットン、ポリエステル、ビスコースレイヨンやグラスファイバーの不織布あるいはロービングヤーン巻物、フェノール樹脂含浸セルロース、金属繊維不織布焼結体、金属粉末焼結体、ブレーカープレート、あるいはこれらの組み合わせなど、いずれも使用可能である。特に耐熱性や耐久性、耐圧力性を考えると金属繊維不織布を焼結したタイプが好ましい。
【0045】
ろ過精度は、ビニル系単量体を含有する樹脂(A)とスチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体(B)については、50μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。またハードコート剤のろ過精度は、合成樹脂積層板の最表層に塗布されることから、20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。
【0046】
ビニル系単量体を含有する樹脂(A)スチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体のろ過については、例えば熱可塑性樹脂溶融ろ過に用いられているポリマーフィルターを使うことが好ましい。ポリマーフィルターは、その構造によりリーフディスクフィルター、キャンドルフィルター、パックディスクフィルター、円筒型フィルターなどに分類されるが、特に有効ろ過面積が大きいリーフディスクフィルターが好適である。
【0047】
本発明の樹脂組成物のガラス転移温度は、115℃以上であり、好ましくは118℃以上である。また、本発明の樹脂組成物の飽和吸水率は、1.0%以下であり、好ましくは0.8%以下である。
【実施例】
【0048】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
製造例で得られた樹脂の物性測定および実施例ならびに比較例で得られた樹脂組成物の評価は以下のように行った。
【0049】
<重量平均分子量>
あらかじめ標準ポリスチレンをクロロホルムに溶かしてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定した検量線を基準にして、ビニル系単量体を含有する樹脂(A)とスチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体(B)を同様にGPCで測定した。両者の比較により、それぞれの重量平均分子量を算出した。GPCの装置構成は以下の通りである。
装置:Wates 2690
カラム:Shodex GPC KF−805L 8φ×300mm 2連結
展開溶媒:クロロホルム
流速:1ml/min
温度:30℃
検出器:UV・・・486nm スチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体(B)
RI・・・ビニル系単量体を含有する樹脂(A)
【0050】
<吸水率>
JIS−K7209 A法に準処し吸水率測定を行った。まずプレス成型で作成した60mm×60mm×1.0mmの試験片を作成し、それを50℃のオーブンに入れて乾燥させた。24時間後、試験片をオーブンから取り出し、23℃に温調したデシケーター中で冷却した。1時間後、試験片の重量を測定し、その後23℃の水中に投入した。300時間後、水中から試験片を取り出し、表面の水分を拭き取った後重量を測定した。水中投入後の重量と乾燥直後の重量の差を乾燥直後の重量で除し、その値に100を乗じることで、吸水率を算出した。吸水率1.0%以下で合格とした。
【0051】
<鉛筆引っかき硬度試験>
JIS K 5600−5−4に準拠し、表面に対して角度45度、荷重750gで樹脂(A)の表面に次第に硬度を増して鉛筆を押し付け、傷跡を生じなかった最も硬い鉛筆の硬度を鉛筆硬度として評価した。鉛筆硬度H以上で合格とした。
【0052】
<ガラス転移温度試験>
パーキンエルマー社製示差走査熱量計Pyris1型を用いて、窒素雰囲気下、25℃で1分間保持後、10℃/分の昇温速度下で測定し、接線法を用いて得られたDSC曲線における2つの接線の交点をガラス転移温度として求めた。ガラス転移温度が115℃以上で合格とした。
【0053】
<各種材料例>
ビニル系単量体を含有する樹脂Aおよびスチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体Bについて、下記に示す材料を例示するが、これに限定されるわけではない。
A7:スチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体:電気化学工業(株)KX−378
A8:スチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体:電気化学工業(株)KX−381
【0054】
実施例1〔樹脂組成物(A1ペレットの製造〕
スチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体(B)としてKX−378(電気化学工業製、ガラス転移温度126℃、重量平均分子量:170,000、b1:b2:b3=65:15:20)50質量%とメチルメタクリレート樹脂パラペットHR−L(クラレ製)50質量%とりん系添加剤PEP36(ADEKA製) 500ppmおよびステアリン酸モノグリセリド(製品名:H−100、理研ビタミン製)2000ppmを仕込み、ブレンダーで20分混合後、スクリュー径26mmの2軸押出機を用い、シリンダー温度260℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化した。ペレットは安定して製造できた。得られたペレットは透明であり、ガラス転移温度は、118℃であった。吸水率は、0.8%であり、鉛筆硬度は、Hであった。
【0055】
実施例2〔樹脂組成物(A2)ペレットの製造〕
スチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体(B)としてKX−378(電気化学工業製、重量平均分子量:170,000、b1:b2:b3=65:15:20)80質量%と、メチルメタクリレート樹脂パラペットHR−L(クラレ製)20質量%とりん系添加剤PEP36(ADEKA製) 500ppmおよびステアリン酸モノグリセリド(製品名:H−100、理研ビタミン製)0.2%を仕込み、ブレンダーで20分混合後、スクリュー径26mmの2軸押出機を用い、シリンダー温度260℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化した。ペレットは安定して製造できた。得られたペレットは透明であり、ガラス転移温度は、123℃であり、吸水率は0.55%であり、鉛筆硬度はHであった。
【0056】
実施例3〔樹脂組成物(A3)ペレットの製造〕
スチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体(B)としてKX−378(電気化学工業製、重量平均分子量:170,000、b1:b2:b3=65:15:20)65質量%と、メチルメタクリレート樹脂パラペットHR−L(クラレ製)35質量%とりん系添加剤PEP36(ADEKA製) 500ppmおよびステアリン酸モノグリセリド(製品名:H−100、理研ビタミン製)0.2%を仕込みブレンダーで20分混合後、スクリュー径26mmの2軸押出機を用い、シリンダー温度260℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化した。ペレットは安定して製造できた。得られたペレットは透明であり、ガラス転移温度は、120℃であり、吸水率は0.65%であり、鉛筆硬度はHであった。
【0057】
実施例4〔樹脂組成物(A4)ペレットの製造〕
スチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体(B)としてKX−381(電気化学工業製、重量平均分子量:185,000、b1:b2:b3=55:20:25)50質量%と、メチルメタクリレート樹脂パラペットHR−L(クラレ製)50質量%とりん系添加剤PEP36(ADEKA製) 500ppmおよびステアリン酸モノグリセリド(製品名:H−100、理研ビタミン製)0.2%を仕込みブレンダーで20分混合後、スクリュー径26mmの2軸押出機を用い、シリンダー温度260℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化した。ペレットは安定して製造できた。得られたペレットは透明であり、ガラス転移温度は、122℃であり、吸水率は0.9%であり、鉛筆硬度はHであった。
【0058】
実施例5〔樹脂組成物(A5)ペレットの製造〕
スチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体(B)としてKX−381(電気化学工業製、重量平均分子量:185,000、b1:b2:b3=55:20:25)80質量%と、メチルメタクリレート樹脂パラペットHR−L(クラレ製)20質量%とりん系添加剤PEP36(ADEKA製) 500ppmおよびステアリン酸モノグリセリド(製品名:H−100、理研ビタミン製)0.2%を仕込み、ブレンダーで20分混合後、スクリュー径26mmの2軸押出機を用い、シリンダー温度260℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化した。ペレットは安定して製造できた。得られたペレットは透明であり、ガラス転移温度は、129℃であり、吸水率は0.60%であり、鉛筆硬度はHであった。
【0059】
実施例6〔樹脂組成物(A6)ペレットの製造〕
スチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体(B)としてKX−381(電気化学工業製、重量平均分子量:185,000、b1:b2:b3=55:20:25)65質量%と、メチルメタクリレート樹脂パラペットHR−L(クラレ製)35質量%とりん系添加剤PEP36(ADEKA製) 500ppmおよびステアリン酸モノグリセリド(製品名:H−100、理研ビタミン製)0.2%を仕込みブレンダーで20分混合後、スクリュー径26mmの2軸押出機を用い、シリンダー温度260℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化した。ペレットは安定して製造できた。得られたペレットは透明であり、ガラス転移温度は、124℃であり、吸水率は0.75%であり、鉛筆硬度はHであった。
【0060】
比較例1〔樹脂(B1)ペレットの製造〕
メチルメタクリレート樹脂パラペットHR−L(クラレ製)のみを材料とし、実施例1と同様にペレット化を行なった。ペレットは安定して製造できた。得られたペレットは透明であり、ガラス転移温度は、105℃であり、吸水率は2.1%であり、鉛筆硬度は3Hであった。
【0061】
比較例2〔樹脂(B2)ペレットの製造〕
スチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体(B)としてKX−378(電気化学工業製、重量平均分子量:00000、b1:b2:b3=65:15:20)25質量%と、メチルメタクリレート樹脂パラペットHR−L(クラレ製)75質量%とを仕込みブレンダーで20分混合後、スクリュー径26mmの2軸押出機を用い、シリンダー温度260℃で溶融混錬して、ストランド状に押出してペレタイザーでペレット化した。ペレットは安定して製造できた。
得られたペレットは透明であり、ガラス転移温度は、113℃であり、吸水率は1.1%であり、鉛筆硬度は2Hであった。
【0062】
実施例及び比較例の結果から明らかであるように、ビニル系単量体を含有する樹脂(A)とスチレン−不飽和ジカルボン酸系共重合体(B)をポリマーアロイした本発明の樹脂組成物は、比較例の樹脂組成物と比較して、ビニル系単量体を含有する樹脂が本来有する高い表面硬度を損なうことなく、透明性を維持しつつ、ガラス転移温度が高く、さらに耐薬品性に優れたビニル系単量体を含有する樹脂組成物である。本発明の合成樹脂組成物は、ビニル系単量体を含有する樹脂(A)と比較して、高い表面硬度を維持しつつ、吸水率が大幅に改善されていることが特徴である。
【0063】
表1より、本発明の合成樹脂組成物は、高温や高湿な環境における形状安定性、表面硬度および耐熱性に優れていることが確認される。
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の合成樹脂組成物は、高温や高湿な環境における形状安定性、表面硬度および耐熱性に優れるという特徴を有し、透明性基板用材料、透明性保護材料などとして好適に用いられ、特にOA機器・携帯電子機器の表示部前面板やタッチパネル基板用表層樹脂として好適に用いられる。