(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305064
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】コントロールケーブル装置
(51)【国際特許分類】
F16C 1/26 20060101AFI20180326BHJP
F16H 61/36 20060101ALN20180326BHJP
【FI】
F16C1/26 Z
!F16H61/36
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-557548(P2013-557548)
(86)(22)【出願日】2013年2月6日
(86)【国際出願番号】JP2013052735
(87)【国際公開番号】WO2013118774
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2016年2月4日
(31)【優先権主張番号】特願2012-23160(P2012-23160)
(32)【優先日】2012年2月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390000996
【氏名又は名称】株式会社ハイレックスコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】澤木 一裕
(72)【発明者】
【氏名】江川 広剛
【審査官】
尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−085395(JP,A)
【文献】
特開2009−068518(JP,A)
【文献】
実開昭58−170417(JP,U)
【文献】
特開平09−240303(JP,A)
【文献】
特開2006−266284(JP,A)
【文献】
実開平01−104826(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 1/26
F16H 61/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の貫通孔に挿通されるコントロールケーブルと、
前記コントロールケーブルに設けられ、前記貫通孔を塞ぎ、車体に固定されるグロメットとを備えたコントロールケーブル装置であって、
前記グロメットは、本体部と、前記本体部に接続され、前記コントロールケーブルが挿通される筒状部と、車体への固定部とを有し、
前記筒状部の内周側には、前記本体部の断面上の所定領域のみにコントロールケーブル支持部が設けられ、
前記コントロールケーブルは前記アウターケーシングと前記インナーケーブルとを有し、
前記本体部は、前記筒状部よりも肉厚で、前記インナーケーブルの操作時に発生する前記アウターケーシングの反力による荷重に抗する剛性を有していることを特徴とするコントロールケーブル装置。
【請求項2】
前記コントロールケーブル支持部は、前記筒状部の内周側から突出して設けられていることを特徴とする請求項1記載のコントロールケーブル装置。
【請求項3】
前記コントロールケーブル支持部は、前記コントロールケーブルを前記筒状部へ挿通したときに、前記コントロールケーブルの周まわりに配置されることを特徴とする請求項2記載のコントロールケーブル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コントロールケーブル装置に関し、特に、車両の車体を貫いて車内から車外にかけて配索されるコントロールケーブルを備えるコントロールケーブル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車内側に設けられた操作部に一端が連結され、車外側の操作対象に他端が連結されるインナーケーブル及びこのインナーケーブルを内部に収納するアウターケーシングを備えるコントロールケーブルは、車体の貫通孔を通って配索される。そして車体の貫通孔には、車外側から水、排気ガス、又は塵埃等の異物が車内側に入り込まないように、貫通孔を塞ぐグロメットが設けられている。
【0003】
このようなグロメットとしては、例えば、ゴム製の平板状であって、一方の面から他方の面に向けてコントロールケーブルを挿通する挿通孔が2箇所に設けられたグロメットが開示されている(特許文献1)。そしてこのグロメットを車体の貫通孔を塞ぐように車体に固定し、挿通孔にそれぞれコントロールケーブルを挿通させることにより、貫通孔を塞ぎつつコントロールケーブルを車内側から車外側に配索している。このようなグロメットは、挿通孔端部にシール部が設けられており、このシール部でコントロールケーブルを支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−240303号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、コントロールケーブルは配索時に車体の構造等により直線状態ではなく、コントロールケーブルの性能に影響が少ない程度に曲げられて配索される。そのため、操作部を操作してインナーケーブルに引張力を加えると、シール部にはアウターケーシングの直線になろうとする反力による荷重が加わる。そして、剛性の低いシール部はその荷重を支持することができずに弾性変形し、アウターケーシングの配索経路が変更されてしまう問題がある。アウターケーシングの配索経路が変更されると、インナーケーブル操作時のストロークロスが大きくなり、インナーケーブルの一端側の操作部から他端側の操作対象へと変位が十分に伝達されなくなり、操作対象を操作できなくなるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、インナーケーブルが操作されたときに発生するアウターケージングの反力による荷重によってアウターケージングの配索経路が変わるのを抑制することで、インナーケーブル操作時のストロークロスの増大を防ぎ、操作対象を確実に操作することができるコントロールケーブル装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のコントロールケーブル装置は、車体の貫通孔に挿通されるコントロールケーブルと、前記コントロールケーブルに設けられ、前記貫通孔を塞ぎ、車体に固定されるグロメットとを備えたコントロールケーブル装置であって、前記グロメットは、本体部と、前記本体部に接続され、前記コントロールケーブルが挿通される筒状部と、車体への固定部とを有し、前記筒状部の内周側には、前記本体部の断面上にコントロールケーブル支持部が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
(1)本発明のコントロールケーブル装置によれば、筒状部の端部に比べて、肉厚で剛性の高い本体部の断面上にコントロールケーブル支持部が設けられているので、インナーケーブルが操作されたときに発生するアウターケージングの反力による荷重を支持して、アウターケージングの配索経路が変わることを抑制することができる。したがって、インナーケーブル操作時のストロークロスの増大を防ぐことができ、操作部の変位を操作対象に確実に伝達することができ、操作対象を確実に操作することができる。また、コントロールケーブル支持部がより本体部の断面上に配置されることで、操作対象からコントロールケーブルを伝わってくる振動をコントロールケーブル支持部を介して本体部に伝達することで振動を吸収し、操作部に振動が伝わることを抑制することができる。
【0009】
(2)本発明のコントロールケーブル装置によれば、コントロールケーブル支持部は、筒状部の内周側から突出して設けられているので、コントロールケーブルをより確実に支持できる。
【0010】
(3)本発明のコントロールケーブル装置によれば、コントロールケーブル支持部はコントロールケーブルの周まわりに配置されるので、より安定してコントロールケーブルを支持できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】車体の貫通孔周辺のコントロールケーブル装置の構成を説明する図。
【
図2】コントロールケーブル装置の内部構造を説明する断面図。
【
図3】コントロールケーブル装置の全体構成を説明する図。
【
図4】(A)はグロメットを車体に取付けた時に車内側となる面から見た図、(B)はグロメットを取付けた時に車外側となる面から見た図。
【
図5】
図4(A)のV−V線に沿う一部省略拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態のコントロールケーブル装置1について説明する。コントロールケーブル装置1は、
図1及び
図2に示すように、車体2の例えばフロアパネルなどに形成された貫通孔3を挿通して配索されるコントロールケーブル4と、このコントロールケーブル4に設けられ、車体2の貫通孔3を塞いだ状態で、車体2に固定されるグロメット5と、を備えている。
【0013】
コントロールケーブル4は、
図3に示すように、車内側Iに設けられた例えば変速レバーなどの操作部6の操作を車外側Oの例えば図示しないエンジンルームに設けられた車両用変速機などの操作対象7に伝達するケーブルである。このコントロールケーブル4は、
図1から
図3に示すように、一端が操作部6に連結されており、他端が操作対象7に連結されるインナーケーブル8と、このインナーケーブル8を摺動自在に内部に収納して挿通させる筒状のアウターケーシング9とを有している。コントロールケーブル4は操作対象7及び操作部6の位置、及び車体2の構造等の条件により必要に応じて直線状態ではなく、コントロールケーブル4の性能に影響を及ぼさない程度に曲げられて配索される。本実施形態においては、コントロールケーブル装置1は、例えば車両用変速機のシフト及びセレクトの2本のコントロールケーブル4を有しているが、コントロールケーブル4の本数はこれに限定されず、操作対象7及び操作部6に応じて必要な本数が選択される。
【0014】
グロメット5は、
図4に示すように、略長方形の平板状に形成された本体部10と、この本体部10に接続され、コントロールケーブル4が挿通される筒状部11と、本体部10と略同一の平面形状を有しており、車体2との間に本体部10を挟んで保持するリテーナ12とを有する。また、本体部10の対角の2隅には、グロメット5を車体2に固定するための取付孔14が形成されており、同様にリテーナ12の平面図上における本体部10の取付孔14に対応する位置にも固定孔21が形成されており、
図2に示すように、これら取付孔14と固定孔21によってグロメット5を車体2に固定するためのボルト23を挿入する固定部25が形成されている。固定部25は予めグロメット5にボルト23を固定しておくなど、グロメット5を車体2に固定することができればどのようなものでもよい。本体部10及び筒状部11は例えばゴム製であり、本実施形態においては本体部10及び筒状部11は一体成形されている。
【0015】
本体部10の平面形状は、車体2の貫通孔3よりも大きく形成されており、グロメット5で貫通孔3を覆ったときに、貫通孔3からはみ出した本体部10の延在部分26が車体2に対してシールする領域として機能する。車体2に固定されたときに車内側を向く本体部10の面Yには、貫通孔3の内側縁の形状とほぼ等しい形状を描くように凸部13が突出している。凸部13の断面形状は
図2に示すように台形で側面が斜面となっており、組み付け相手である車体2の貫通孔3の車外側から押し込んではめ込みやすくなっている。そして、この凸部13によりグロメット5が車体2に対して位置決めされる。
【0016】
さらに、本体部10の凸部13の外側、すなわちグロメット5で貫通孔3を覆ったときに貫通孔3からはみ出した延在部分26には、本体部10の周縁部と、取付孔14よりも内側で且つ凸部13から外側に等間隔空けた凸部13の周囲とにリップ15がそれぞれ設けられており、グロメット5を車体2に取付けたときに確実にシールしている。また本体部10の車外側を向く面Zの適宜位置には、この面から垂直に突出する円柱状の突起部16が形成されており、リテーナ12の対応する位置に設けられた小孔17に挿入されてリテーナ12と本体部10とが互いに固定される。
【0017】
筒状部11は、略円筒状に形成され、グロメット5を車体2に固定したときに、本体部10の車内側を向く面Yから車外側を向く面Zに向けて斜めに貫通して形成されている。筒状部11の両端は本体部10のそれぞれの面から突出している。なお、筒状部11の本体部10のそれぞれの面に対する角度は特に限定されるものではなく、例えば本体部10のそれぞれの面に対して直交するように貫通していてもよい。また筒状部11の内周側にはコントロールケーブル4を支持するためのコントロールケーブル支持部18が設けられている。
【0018】
このコントロールケーブル支持部18は、
図2及び
図5に示すように、コントロールケーブル4を筒状部11に挿通したときに、コントロールケーブル4の周まわりに連続して配置されるよう、筒状部11の内周側から突出して設けられている。コントロールケーブル支持部18の半径方向内側に最も突出した部分、すなわちコントロールケーブル支持部18の最も径の小さい部分は、筒状部11に挿通されるコントロールケーブル4の外周よりも径が小さくなるように形成されており、コントロールケーブル4を圧入して挿通したときに、コントロールケーブル4の外周面にコントロールケーブル支持部18が密着して、コントロールケーブル4を支持する。
【0019】
コントロールケーブル支持部18は、コントロールケーブル4の周回りに連続して配置されているので、コントロールケーブル4を確実に安定して支持することができる。また、コントロールケーブル支持部18は、コントロールケーブル4の軸方向に複数並んで設けられており、少なくともその一部が本体部10の断面上に形成されている。すなわち、
図5に詳しく示すように、コントロールケーブル支持部18の一部は、少なくとも、グロメット5を車体2に取付けたときに、本体部10の車内側を向く面Yと車外側を向く面Zとの間Xにおいて、筒状部11が本体部10を貫通している部分に設けられている。
【0020】
このようにコントロールケーブル支持部18が本体部10の断面上に形成されていることにより、筒状部11に挿通されるコントロールケーブル4は、コントロールケーブル支持部18を介して本体部10に支持される。本体部10は筒状部11よりも肉厚で剛性が高いので、例えばインナーケーブル8の操作時に発生するアウターケーシング9の反力による荷重に抗して、アウターケーシング9の動きを抑えることができ、アウターケーシング9の配索経路が変わることを抑制して、操作対象7を確実に操作することができる。また、コントロールケーブル支持部18がより剛性の高い本体部10の断面上に配置されることで、例えば車両用変速機などの操作対象7からコントロールケーブル4を介して伝わる振動をコントロールケーブル支持部18で吸収することができる。
【0021】
なお、コントロールケーブル支持部18は、上記のものに限定されるものではない。コントロールケーブル4を支持することができる機能を有していれば、例えば筒状部11の内周側から突出する複数の突起や螺旋状に連なる突条であってもよい。
【0022】
リテーナ12は、その外縁の形状が、
図2に示すように、本体部10の外縁形状とほぼ同じになるように金属板材をプレス加工して形成したものである。リテーナ12の外縁部は本体部10と当接する側に折り曲げられて、外周壁19が形成され、外周壁19の内部に本体部10が収容されている。これによりリテーナ12の剛性が増し、また本体部10のずれが防止される。また、リテーナ12は
図4の(B)に示すように、中央部に略四角形の開口20を有しており、この開口20から筒状部11が車外側Oへ導出されている。また、平面図上における本体部10の取付孔14に対応した位置には、ボルト23を挿入する固定孔21が設けられている。なお、
図2に示すように、グロメット5を車体2に取付けたときに、取付孔14及び固定孔21に対応する位置の車体2にもボルト挿通孔22が形成されている。
【0023】
このようなコントロールケーブル装置1を車体2に取り付けるときには、筒状部11にコントロールケーブル4を挿通した状態で、車体2の貫通孔3に本体部10の凸部13を嵌合させる。そして、車体2の車内側Iからボルト挿通孔22を通して本体部10の取付孔14及びリテーナ12の固定孔21に向けてボルト23を挿入して、車外側Oからナット24を締結してグロメット5を車体2に固定する。本体部10は、車体2とリテーナ12とに挟まれて、リップ15が車体2に押し付けられてシールされる。コントロールケーブル4は車体2の形状等に応じて、少なくとも一部が曲げられて配索されて、一端が操作部6に、他端が操作対象7に連結される。
【0024】
そして、操作部6を操作してインナーケーブル8に引張力を加えると、操作部6と操作対象7との間でインナーケーブル8は直線になろうとし、アウターケーシング9にも直線になろうとする反力による荷重が発生する。そしてこの荷重は、車体2に固定されるとともに、コントロールケーブル4を支持しているグロメット5のコントロールケーブル支持部18に伝わる。しかし、コントロールケーブル支持部18は、少なくともその一部が、筒状部11の端部に比べて肉厚で剛性の強い、すなわち撓みにくい本体部10の断面上に設けられているので、アウターケーシング9の反力による荷重に抗して、アウターケージング9の配索経路が変わることを抑制することができる。したがって、アウターケーシング9の配索経路の変更によって生じるインナーケーブル8操作時のストロークロスの増大を防ぐことができ、操作部6の変位を操作対象7に確実に伝達することができるので、操作対象7を確実に操作することができる。
【0025】
また、特に操作対象7が車両用変速機であって、操作部6が変速レバーである場合のように、車外側Oのエンジンからの振動がコントロールケーブル4を伝わって、車内側Iにある操作部6に伝達されると、車内側Iにある例えばダッシュボードを振動させるなどして、車内の音響環境を悪くすることになるが、本実施形態のコントロールケーブル装置1のように、コントロールケーブル支持部18が本体部10の断面上に配置されることで、コントロールケーブル4を伝わってくる振動をコントロールケーブル支持部18を介して本体部10に伝達することで振動を吸収し、操作部6に振動が伝わることを抑制することができる。
【0026】
なお、本発明のコントロールケーブル装置1は、上述の形態に限るものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係るコントロールケーブル装置1は、例えば車両用変速機のコントロールケーブル装置1として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 コントロールケーブル装置
2 車体
3 貫通孔
4 コントロールケーブル
5 グロメット
10 本体部
11 筒状部
12 リテーナ
18 コントロールケーブル支持部
25 固定部