(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、洗濯機および洗濯機の製造方法に係る複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態で実質的に同一の要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
例えば
図1に示す洗濯機100は、回転槽の回転中心軸が垂直方向に延びるいわゆる縦軸型の洗濯機であり、その外郭を構成する外箱101の内部には、上面が開放した有底円筒状の水槽102が弾性吊持機構103によって弾性的に支持されている。この水槽102の内部には、上面が開放した有底円筒状の回転槽104が回転可能に設けられている。
【0011】
回転槽104は、例えばステンレスなどからなる金属製の胴部材104aにより胴部が構成され、例えば合成樹脂製の底部材104bにより底部が構成されている。回転槽104の底部を構成する底部材104bの外側には、当該底部材104b、換言すれば回転槽104の底部を補強するための補強部材104cが設けられている。この補強部材104cは、例えばステンレス板などからなる金属製である。この回転槽104は、垂直な軸線を中心に回転するように構成されており、洗濯物を洗う洗い行程および洗濯物をすすぐすすぎ行程における洗濯槽、および、洗濯物を脱水する脱水行程における脱水槽として兼用される。
【0012】
回転槽104は、その周壁部に多数の孔105aを有している。これら孔105aは、回転槽104の周壁部を貫通しており、通水および通気が可能である。なお、図面では、これら孔105の一部のみを示している。また、回転槽104は、その周壁部に多数の突起105bを有している。この場合、突起105bは、回転槽104の内方に向かって突出している。回転槽104の上部には、例えば塩水などの液体が封入された合成樹脂製のバランスリング106が取り付けられている。このバランスリング106は、例えばステンレスなどからなる金属製のねじ106aによって回転槽104の外面側から固定されている。回転槽104内の底部には、合成樹脂製の撹拌体107が回転可能に設けられている。
【0013】
水槽102の下部には排水経路108が設けられている。この排水経路108には排水弁109が設けられており、この排水弁109が開放されることにより、水槽102内の水が機外に排出される。また、水槽102の底部には、水位検知用のエアトラップ110が設けられている。このエアトラップ110には、エアチューブ111を介して図示しない水位センサが接続されている。この水位センサは、この場合、圧力センサからなり、エアトラップ110内の圧力に基づいて水槽102内の水位を検知する。
【0014】
水槽102の下部の中央部には駆動機構部113が設けられている。この駆動機構部113は、可変速駆動が可能なモータ、クラッチ機構、減速装置、ブレーキ装置などを備えている。また、駆動機構部113は、主として回転槽104にモータの回転力を伝達するための脱水軸113a、および、主として撹拌体107にモータの回転力を伝達するための洗い軸113bを備える。脱水軸113aは回転槽回転軸の一例であり、洗い軸113bは撹拌体回転軸の一例である。洗い行程時またはすすぎ行程時においては、駆動機構部113は、モータの回転力を、減速装置によって減速し、且つ、クラッチ機構を切り替えることによって洗い軸113bを介して撹拌体107に伝達する。脱水行程時においては、駆動機構部113は、モータの回転力を、減速装置によって減速することなく、クラッチ機構を切り替えることによって脱水軸113aを介して回転槽104および撹拌体107に高速で伝達する。
【0015】
外箱101の上部には、トップカバー114が設けられている。このトップカバー114には、洗濯物出入口を開閉する例えば二つ折り式の蓋115が開閉可能に設けられている。なお、水槽102の上部には、槽カバー102aが取り付けられている。トップカバー114の前部には、操作パネル117が設けられている。操作パネル117の裏側には、洗濯機100の動作全般を制御する図示しない制御装置が設けられている。トップカバー114内の後部には、水道からの水を水槽102内に供給する図示しない給水機構部が設けられている。
【0016】
また、回転槽104の内底部には、撹拌体107が配置される円形の凹状領域が設けられている。そして、この凹状領域には、撹拌体107との間に、ポンプ室118が形成されるようになっている。ここで、撹拌体107は、その上面に、回転水流を生成するための突条部を有する円板状をなしている。また、撹拌体107は、その板面を上下に貫通する複数個の通水孔を有している。また、この撹拌体107の下面には、複数枚のポンプ羽根107aが一体に設けられている。このポンプ羽根107aは、中心部からほぼ半径方向に沿って放射状に延びる薄板状をなしている。また、ポンプ室118の外周部には、当該ポンプ室118から水を流出させるための複数の流出口が設けられている。この場合、ポンプ室118の外周部には、例えば角度が120度ずつ離れた3箇所に位置して、3つの流出口が設けられている。
【0017】
そして、回転槽104の側壁部には、各流出口からそれぞれ上方に延びるようにして、複数個の通水路119が設けられている。この通水部119は、ポンプ室118から流出する水を揚水するためのものである。この場合、
図1には1つのみを示しているが、3つの流出口に対応して3つの通水路119が設けられている。これら通水路119は、その上部に散水口119aを有している。ポンプ室118において撹拌体107が回転することにより、回転槽104内の水は、ポンプ室118の流出口から外周方向に向けて吐出される。さらに、その水は、通水路119内を上昇し、散水口119aから回転槽104内に散水される。これにより、散水口119aから回転槽104内に水がシャワー状に供給されるようになる。
【0018】
そして、
図1に示す通水路119は、詳しくは後述する回転槽104の接合部に対向する位置に設けられている。そして、接合部に対向して設けられる通水路119の下部には、除菌剤ユニット120が着脱可能に取り付けられる。この除菌剤ユニット120は、例えば樹脂材料からなる除菌剤ケースの内部に図示しない除菌剤を備える。除菌剤ケースには、図示しない多数の孔が設けられており、通水路119内を流れる水の一部が当該除菌剤ケース内にも流れ込む構成となっている。これにより、除菌剤ケース内に流れ込む水に除菌剤が溶け込み、その除菌成分を含む水が通水路119内を流れて散水口119aから散水されるようになっている。
【0019】
また、例えば
図2に示す洗濯機200は、回転槽の回転中心軸が水平、若しくは若干傾斜したいわゆる横軸型のドラム式の洗濯機であり、その外郭を構成する外箱201は、合成樹脂製の基台202と、基台202に結合された箱本体203とから構成されている。
図2では左側となる箱本体203の前面部には、そのほぼ中央部に洗濯物出入口204が設けられている。また、箱本体203の前面部には、洗濯物出入口204を開閉する扉205が設けられている。箱本体203の前面部の上部には、操作パネル206が設けられている。操作パネル206の裏側には、洗濯機200の動作全般を制御する制御装置207が設けられている。外箱201内には、底部である背面部側が閉塞された有底円筒状の水槽208が設けられている。水槽208は、その中心軸が、
図2では右方となる後方に向かって下降する若干傾斜した軸線上に位置するようにしてサスペンション209によって弾性的に支持されている。
【0020】
水槽208の背面部の外側には、モータ210が設けられている。このモータ210は、例えば直流のブラシレスモータで構成されており、アウターロータ型であり、ステータ211およびロータ212を備えている。ステータ211は、水槽208の背面部の外側に固定されている。ロータ212の中心部には回転軸213が設けられている。回転軸213は、軸受ブラケット214に軸受215を介して支承されて、水槽208の内部に挿通されている。水槽208の内部には、底部である背面部側が閉塞された有底円筒状のドラム216が設けられている。
【0021】
ドラム216は、例えばステンレスなどからなる金属製である。ドラム216は、その背面部の中心部がモータ210の回転軸213の先端部に固定され、水槽208の軸線、つまり、後方に向かって下降傾斜した軸線を中心に回転可能に設けられている。この場合、モータ210は、ドラム216を回転させる駆動装置として機能する。ドラム216の底部、換言すれば背面部の外面には、当該ドラム216の背面部を補強するための補強部材217が設けられている。この補強部材217は、例えばアルミニウムのダイキャストなどからなる金属製である。ドラム216の胴部を構成する周壁部には、多数の孔218が全域にわたって形成されている。これら孔218は、ドラム216の周壁部を貫通しており、通水および通気が可能である。また、ドラム216の内周部には、洗濯物掻き上げ用の複数の合成樹脂製のバッフル219が設けられている。なお、水槽208は、その中心軸が傾斜しない水平な軸線上に位置するように設けてもよく、この場合、ドラム216は、水平な軸線を中心に回転可能に設けられる。
【0022】
ドラム216および水槽208は、何れも前面側が開口しており、開口部220および開口部221となっている。ドラム216の開口部220の周囲には、例えば塩水などの液体が封入された合成樹脂製のバランスリング222が設けられている。このバランスリング222は、例えばステンレスなどからなる金属製の図示しないねじによってドラム216の外面側から固定されている。水槽208の開口部221は、例えばゴムなどの弾性材料からなる環状のベローズ223を介して洗濯物出入口204に連結されている。これにより、洗濯物出入口204は、ベローズ223、水槽208の開口部221、および、ドラム216の開口部220を介して、ドラム216の内部に連なっている。
【0023】
水槽208の背面側の底部には排水口224が設けられている。この排水口224には、機内排水ホース225の一端部が接続されている。機内排水ホース225の他端部は、外箱201の基台202の前部に設けられたフィルタケース226に接続されている。フィルタケース226の前端部にはキャップ227が着脱可能に装着されている。フィルタケース226の内部には、キャップ227に一体的に設けられた図示しないリントフィルタが収納されている。また、フィルタケース226の下部には排水弁228が接続されている。この排水弁228の出口部には排水パイプ229が接続されている。排水パイプ229の先端部は、外箱201の基台202から機外に導出され、図示しない機外排水ホースに接続される。
【0024】
フィルタケース226の上部には、エアトラップ230が設けられている。このエアトラップ230と外箱201内の上部に配設された水位センサ231とは、エアチューブ232によって接続されている。水位センサ231は、水槽208内の水位を、機内排水ホース225、フィルタケース226、エアトラップ230およびエアチューブ232を介して検出して制御装置207に出力する。
【0025】
外箱201内の上部には、給水弁233および給水ケース234が設けられている。給水弁233の入口部には、図示しない水道の蛇口から延びる機外給水ホースが接続される。また、給水弁233の出口部には、接続パイプ235の一端部が接続されている。接続パイプ235の他端部は、給水ケース234に接続されている。給水ケース234の内部には、図示しない洗剤類貯留部が設けられている。給水ケース234には、機内給水ホース236の一端部が接続されている。機内給水ホース236の他端部は、水槽208の上部に接続されている。水道から給水弁233を介して供給される水は、接続パイプ235、給水ケース234および機内給水ホース236を介して水槽208内に供給される。
【0026】
例えば
図1に示すように、上述の洗濯機100は、少なくとも回転槽104の側部を構成する胴部材104aの外面に、防汚コーティング300が施されている。また、例えば
図2に示すように、上述の洗濯機200は、少なくともドラム216の側部の外面に、防汚コーティング300が施されている。また、図示はしないが、特に洗濯機100においては、脱水軸113aのうち水槽208内に突出する部分、および、洗い軸113bのうち水槽208内に突出する部分にも、それぞれ防汚コーティングが施されている。
【0027】
本実施形態では、この防汚コーティング300が親水性のコーティングで実現されている。次に、防汚コーティング300を、親水性のコーティングで実現した場合について、さらに詳細に説明する。即ち、防汚コーティング300を例えば親水性のコーティングで実現する場合には、例えばシリカ系の無機塗料など親水性能を有する塗料(以下、「親水性材料」と称する)をドラム216の側部の外面あるいは回転槽104の側部の外面に吹き付けてコーティングを形成する。
【0028】
防汚コーティング300を例えば親水性のコーティングで実現する場合、本実施形態では、少なくとも以下の性能を有する防汚コーティング300を形成する親水性材料が適用される。即ち、本実施形態の防汚コーティング300は、水の接触角が、ガラスに対する水の接触角の下限値未満となる親水性能を有する。一般的に、ガラスに対する水の接触角の下限値は20度と考えられている。従って、本実施形態では、水の接触角が20度未満である例えば13度となる防汚コーティング300を形成する親水性材料が適用されている。
【0029】
また、本実施形態では、防汚コーティング300を形成する親水性材料としてケイ素酸化物を含む材料が適用されており、この親水性材料により形成される防汚コーティング300は、少なくとも鉛筆硬度が5H以上となる硬度特性を有する。即ち、本実施形態の防汚コーティング300には、いわゆるシロキサン骨格とアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属とからなる強固な構造が形成されており、これにより、防汚コーティング300は、鉛筆硬度が5H以上という強固な構造を有している。
【0030】
また、本実施形態の防汚コーティング300はシラノール基を有しており、その親水性能が極めて高いものとなっている。具体的には、防汚コーティング300は、当該防汚コーティング300に付着した一般的な油性インクを、水を接触させるだけで取り除くことが可能なほどの親水性能を有する。よって、防汚コーティング300に一般的な油性ペンのインクを付着させたとしても、その部分に水を接触させることにより、当該インクが水によって浮き上がるようにして剥離し、除去される。
【0031】
また、本実施形態の防汚コーティング300は、10μm以下の厚さであり、その膜厚が極めて薄いものとなっている。即ち、一般的に親水性能を高めたい場合には、親水性材料のコーティングを繰り返す必要があり、従って、得られる親水性能部の膜厚が厚くなってしまう傾向がある。本実施形態では、1回の親水性材料のコーティングおよび焼き付けにより、極めて高い親水性能を有する防汚コーティング300が形成される親水性材料が適用されている。従って、親水性材料のコーティングを繰り返さなくとも、極めて高い親水性能を有する防汚コーティング300を形成することができ、これにより、防汚コーティング300の膜厚を10μm以下という薄さに抑えることができる。なお、図面では、便宜上、防汚コーティング300の膜厚を実際よりも厚くして示している。
【0032】
また、本実施形態の防汚コーティング300は、いわゆる表面粗さが2μm以内である。本実施形態では、このように極めて平滑な表面を有する防汚コーティング300が形成される親水性材料が適用されている。また、本実施形態で適用される親水性材料は、吹き付け前の状態では乳白色であるが、吹き付けた後には乳白色が殆ど認識できないほど透明となり、焼き付けた後には殆どあるいは完全に透明となる。
【0033】
また、例えば
図1に示すように、特に縦軸型の洗濯機100においては、防汚コーティング300は、当該洗濯機100において設定可能な水位のうち最低レベルの水位Lよりも高い領域に設けられている。洗濯機100においては、通常、最低レベルの水位Lが設定されることは稀であり、従って、最低レベルの水位Lよりも高い水位で運転される場合が殆どである。そのため、本実施形態に係る洗濯機100によれば、通常行われる殆どの運転において、防汚コーティング300に水を接触させることができる。また、洗濯機100が最低レベルの水位Lで運転される場合であっても、例えば撹拌体107の回転などにより水槽208内の水に回転や対流などの流れを発生させることで、防汚コーティング300に水を到達させることができる。
【0034】
次に、洗濯機100および洗濯機200を製造するための製造方法の一例について説明する。
(1)縦軸型洗濯機100の製造方法の一例
洗濯機100の製造方法は、以下に例示するプレス加工工程、洗浄工程、水切り/乾燥工程、マスキング工程、コーティング工程、焼付工程、マスキング剥がし工程、曲げ工程、接合工程、絞り加工工程、底部材の取り付け工程、バランスリングの取り付け工程、回転槽の取り付け工程などを含む。以下、各工程を順に説明する。
【0035】
≪プレス加工工程≫
このプレス加工工程は、少なくとも、切断工程、孔形成工程、突起形成工程を含む。例えば
図3に示すように、切断工程では、例えばステンレスなどからなる金属製の母材Sから、回転槽104を形成するための基材となる板材Saが得られる。即ち、金属製の母材Sは、送り機401によって順次送られ、そして、切断機402によるプレス加工よって順次切断される。これにより、回転槽104を形成するために所定の大きさに切断された板材Saが得られる。
【0036】
例えば
図4に示すように、孔形成工程では、図示しない孔あけ機によるプレス加工によって板材Saに孔105aが形成される。この孔105aは、板材Saを貫通するものであり、回転槽104においては、通気および通水が可能な孔として機能する。また、突起形成工程では、図示しない突起形成機によるプレス加工によって板材Saに突起105bが形成される。この突起105bは、回転槽104においては、当該回転槽104の内側に突出するものであるが、当該回転槽104の外側に突出するものであってもよい。
【0037】
このプレス加工工程により、所定の大きさに切断され、且つ、孔105aや突起105bが形成された板材Saが得られる。なお、切断工程、孔形成工程、突起形成工程の実施順は適宜変更して行うことができ、例えば、突起形成工程の後に孔形成工程を実施してもよい。また、孔形成工程や突起形成工程の後に切断工程を実施してもよい。また、切断工程、孔形成工程、突起形成工程を同時に実施してもよい。また、得られた板材Saを台車やトラックなどに積んで輸送する場合には、板材Saの表面に、例えばビニールシートなどで構成される保護シートを貼り付けるようにするとよい。
【0038】
≪洗浄工程≫
この洗浄工程では、プレス加工工程によって得られた板材Saを洗浄する。なお、板材Saに保護シートが貼り付けられている場合には、この洗浄工程に先立ち、当該保護シートを板材Saから剥がす剥がし工程が行われる。この洗浄工程においては、板材Saがステンレス製であることから、例えばPH14といった強アルカリ性の脱脂剤を用いて板材Saの脱脂を行うことが可能である。よって、強アルカリ性の脱脂剤による洗浄効果により、板材Saの表面から殆どあるいは確実に油脂成分を除去することができる。
【0039】
≪水切り/乾燥工程≫
この水切り/乾燥工程では、板材Saに残っている脱脂剤が例えば拭き取りによって除去される。さらに、図示しない乾燥機によって板材Saの乾燥が行われる。
【0040】
≪マスキング工程≫
このマスキング工程では、板材Saのうち回転槽104の側部の外面を形成する面における所定部位を、図示しないマスキング材によって覆う。例えば
図5に示すように、この場合、板材Saの長手方向の両端部に設定された接合部Ra,Rb、および、板材Saのうち長手方向と直行する短手方向の両端部に設定された成形加工部Rc,Rdがマスキング材によって覆われる。なお、
図5では、孔105aや突起105bの図示を省略している。
【0041】
マスキング材で覆う接合部Ra,Rbおよび成形加工部Rc,Rdの大きさは適宜変更して実施することができる。例えば、接合部Raの幅寸法Waおよび接合部Rbの幅寸法Wbは、一般的な溶接幅の寸法である2〜4mmよりも若干大きめの寸法で設定するとよく、例えば、板材Saの長手方向の端部から5mmほどの幅で設けるとよい。なお、幅寸法Wa,Wbは、何れも同じ寸法で設定してもよいし、それぞれ異なる寸法で設定してもよい。また、詳しくは後述する焼付工程を実施する場合には、マスキング材としては、耐熱性が極力高い材料を使用することが好ましい。
【0042】
なお、板材Saのうちマスキング材で覆う部分を大きくしすぎると、回転槽104の側部の外面において防汚コーティングが施される面積が必要以上に狭くなってしまう可能性が生じる。よって、このマスキング工程においては、マスキング材で覆われる領域が必要以上に大きくならないよう注意を払うことが好ましい。特に、洗濯機100において設定可能な水位のうち最低レベルの水位Lよりも上側となる領域には、極力広い範囲にわたって防汚コーティングが施されるように、マスキング材で覆う面積を適宜調整するとよい。
【0043】
≪コーティング工程≫
このコーティング工程では、板材Saのうち回転槽104の側部の外面を形成する面に、この場合、親水性材料を吹き付ける。これにより、板材Saのうち回転槽104の側部の外面を形成する面に親水性材料が塗装される。この場合、板材Saのうちマスキング材によって覆われている部分を除く領域に親水性材料が塗装される。よって、この場合、例えば
図5に示す板材Saのうちマスキング材で覆われている接合部Ra,Rbおよび成形加工部Rc,Rdには親水性材料が塗装されない。また、上述の洗浄工程において十分に油脂成分が除去されていれば、吹き付けた親水性材料が板材Saの表面に対して馴染みやすくなる。なお、上述した孔形成工程あるいは突起形成工程は、このコーティング工程の後に実施してもよい。
【0044】
≪焼付工程≫
この焼付工程では、板材Saに塗装された親水性材料を所定温度で焼き付ける。なお、親水性材料の焼き付け温度は、一般的に有機物が分解する温度であると考えられている250℃よりも高い温度で設定することが好ましく、例えば300℃、500℃といった温度で設定するとよい。このような高温で親水性材料を焼き付けることにより、当該親水性材料に含まれる有機物を殆どあるいは完全に分解することができ、殆どあるいは完全に無機化された防汚コーティング300を形成することができる。
【0045】
≪マスキング剥がし工程≫
このマスキング剥がし工程では、板材Saに貼り付けられているマスキング材を剥がす。これにより、マスキング材によって覆われた部分を除く部分に防汚コーティング300が施された板材Saが得られる。なお、得られた板材Saを台車やトラックなどに積んで輸送する場合には、板材Saの表面に保護シートを貼り付けるようにするとよい。
【0046】
≪曲げ工程≫
この曲げ工程では、例えば
図6に示すように、防汚コーティング300が施された板材Saを曲げ加工機501によって円筒状に曲げる。なお、板材Saに保護シートが貼り付けられている場合には、この曲げ工程に先立ち、当該保護シートを板材Saから剥がす剥がし工程が行われる。この場合、曲げ加工機501は、板材Saの両面、つまり親水性材料が塗装された面および塗装されていない面の双方を挟むようにして送ることにより、当該板材Saを円筒状に曲げる構成である。なお、曲げ加工機501による板材Saの曲げ加工に要する時間は、例えば2〜3秒ほどで実施可能であるが、その時間は、適宜変更して実施することができる。また、上述の焼付工程は、この曲げ工程の後に実施してもよい。
【0047】
≪接合工程≫
この接合工程では、例えば
図7に示すように、曲げ工程によってほぼ円筒状に曲げられた板材Saの長手方向の両端部、つまり接合部Ra,Rbの端部同士を接合する。この場合、板材Saの長手方向の両端部の接合は、溶接により行われる。これにより、回転槽104の原形である円筒状の中間体104Sが得られる。また、この場合、板材Saの溶接は、回転槽104において上側となる部分から下側となる部分に向かう方向、つまり矢印Ya方向に進められる。しかし、板材Saの溶接は、回転槽104において下側となる部分から上側となる部分に向かう方向、つまり矢印Yb方向に進めてもよい。また、例えば
図8に示すように、板材Saの長手方向の両端部を、かしめることにより接合するようにしてもよい。
【0048】
≪絞り加工工程≫
この絞り加工工程では、円筒状となった板材Sa、つまり接合工程により得られた中間体104Sの一部を変形させるために絞り加工を施す。即ち、例えば
図9に示すように、中間体104Sのうち成形加工部Rc,Rdからなる部分に図示しないローラなどを外面側から押し付けることにより、成形加工部Rc,Rdの形状を内側に絞る。これにより、中間体104Sの上部、つまり回転槽104において上側となる部分には、バランスリング取付部104Saが形成され、中間体104Sの下部、つまり回転槽104において下側となる部分には、底部材取付部104Sbが形成される。なお、
図9においては、防汚コーティング300の図示を省略している。
【0049】
≪底部材の取り付け工程≫
この取り付け工程では、中間体104Sの下部側に設けられた底部材取付部104Sbに底部材104bを取り付ける。即ち、例えば
図10に示すように、底部材取付部104Sbの内側に底部材104bを嵌め込む。そして、底部材取付部104Sbの下端を内側に折り曲げて、底部材104bに係止させる。これにより、底部材104bが、底部材取付部104Sb内に取り付けられ固定される。
【0050】
≪バランスリングの取り付け工程≫
この取り付け工程では、中間体104Sの上部側に設けられたバランスリング取付部104Saにバランスリング106を取り付ける。即ち、例えば
図11に示すように、バランスリング取付部104Saの内側にバランスリング106を嵌め込む。そして、バランスリング取付部104Saの外側からねじ106aをねじ込む。これにより、バランスリング106が、バランスリング取付部104Sa内に取り付けられ固定される。
【0051】
≪回転槽の取り付け工程≫
中間体104Sに底部材104bおよびバランスリング106が取り付けられることにより、回転槽104が製造される。そして、その回転槽104は、洗濯機100の水槽102内に回転可能に取り付けられる。なお、図面では、孔105aや突部105bの図示を省略している。
【0052】
(2)ドラム式洗濯機200の製造方法の一例
洗濯機200の製造方法は、以下に例示するプレス加工工程、洗浄工程、水切り/乾燥工程、曲げ工程、接合工程、径拡大工程、背面板の取り付け工程、コーティング工程、焼付工程、バランスリングの取り付け工程、回転槽の取り付け工程などを含む。以下、各工程を順に説明する。
【0053】
≪プレス加工工程≫・≪洗浄工程≫・≪水切り/乾燥工程≫
プレス加工工程、洗浄工程、水切り/乾燥工程は、それぞれ、上述したプレス加工工程、洗浄工程、水切り/乾燥工程と同様であるので説明を省略する。
【0054】
≪曲げ工程≫
この曲げ工程では、板材Saを曲げ加工機501によって円筒状に曲げる。即ち、この場合、防汚コーティング300が施されていない板材Saを円筒状に曲げる。なお、板材Saに保護シートが貼り付けられている場合には、この曲げ工程に先立ち、当該保護シートを板材Saから剥がす剥がし工程が行われる。
【0055】
≪接合工程≫
接合工程は、上述した接合工程と同様であるので説明を省略する。
≪径拡大工程≫
この径拡大工程(エキスパンド工程)では、円筒状となった板材Sa、つまり接合工程により得られた中間体216Sの径寸法を拡大する。即ち、例えば
図12(a)に矢印Eで示すように、中間体216Sの内側から、図示しない拡開機により当該中間体216Sの特に中間部分を外側に押し拡げる。これにより、例えば
図12(b)に示すように、中間体216Sの特に中間部分の径寸法を若干拡大することができる。なお、図面では、説明の便宜のため、径寸法の拡大量を実際よりも誇張して示している。
【0056】
≪背面板の取り付け工程≫
この取り付け工程では、例えば
図13に示すように、中間体216Sに背面板216Hを取り付ける。即ち、中間体216Sの一端部内に例えばステンレスなどからなる金属製の背面板216Hを嵌め込む。そして、中間体216Sの外側から図示しないねじをねじ込む。これにより、背面板216Hが中間体216Sの一端部内に取り付けられ固定される。なお、この背面板216Hは、ドラム216の背面を構成するものであり、洗濯機200においては、モータ210の回転軸213や補強部材217などが取り付けられる。
【0057】
≪コーティング工程≫
このコーティング工程では、中間体216Sの側部の外面、つまりドラム216の側部の外面を形成する面に、この場合、親水性材料を吹き付ける。即ち、例えば
図14に示すように、背面板216Hが取り付けられた中間体216Sを、例えば、背面板216Hが取り付けられた側を上にして回転テーブル601に載置する。そして、回転テーブル601によって中間体216Sを回転させながら、当該中間体216Sの外面に親水性材料を吹き付ける。これにより、ドラム216の側部の外面を形成する面に親水性材料が塗装される。この場合、中間体216Sのうち接合された部分やねじ止めされた部分にも親水性材料が吹き付けられる。なお、このコーティング工程に先立ち、中間体216Sの側部の外面のうちの所定部位をマスキング材によって覆うようにしてもよい。この場合、マスキング材で覆う部分は、例えば板材Saのうち接合される部分など、適宜変更して実施することができる。これにより、例えば板材Saのうち接合される部分などには防汚コーティングを施さない構成を実現することができる。
【0058】
≪焼付工程≫
焼付工程は、上述した焼付工程と同様であるので説明を省略する。
≪バランスリングの取り付け工程≫
この取り付け工程では、中間体216Sにバランスリング222を取り付ける。即ち、中間体216Sのうち背面板216Hが取り付けられた側とは反対側の端部にバランスリング222を嵌め込む。そして、中間体216Sの外側から図示しないねじをねじ込む。これにより、バランスリング222が、中間体216Sに取り付けられ固定される。
【0059】
≪回転槽の取り付け工程≫
中間体216Sにバランスリング222が取り付けられることにより、ドラム216が製造される。そして、そのドラム216は、洗濯機200の水槽208内に回転可能に取り付けられる。なお、図面では、孔218などの図示を省略している。
【0060】
本実施形態に係る洗濯機100,200によれば、水槽102,208内に回転可能に設けられた回転槽104,216の側部の外面に、防汚機能を有する防汚コーティング300が施されている。この構成によれば、手が届かず清掃などのメンテナンスを容易に行うことができない回転槽104,216の側部の外面を防汚コーティング300による防汚機能によって清潔に保つことができ、洗濯機100,200において、防汚機能を最も有効に活用することができる。
【0061】
また、本実施形態に係る洗濯機100,200によれば、防汚コーティング300は、極めて高い親水性能を有する親水性のコーティングとなっている。従って、防汚コーティング300に付着した汚れと当該防汚コーティング300の表面との間に水が浸入しやすくなり、防汚コーティング300に付着した汚れを浮き上がらせるようにして、あるいは、剥がすようにして除去することができる。また、手が届かず清掃などのメンテナンスを容易に行うことができない回転槽104,216の側部の外面を防汚コーティング300の親水性による防汚機能によって清潔に保つことができ、洗濯機100,200において、親水性による防汚機能を最も有効に活用することができる。
【0062】
また、洗濯機100,200によれば、回転する回転槽104,216の側部の外面に防汚コーティング300を備えている。そのため、回転槽104,216の回転時においては、当該回転槽104,216の表面から剥離した汚れが遠心力の作用も受けて除去されやすくなり、回転槽104,216の表面を一層清潔に維持することができる。
【0063】
また、洗濯機100,200によれば、防汚コーティング300は、回転槽104,216の側部の外面のほぼ全体に設けられている。よって、回転槽104,216の側部の外面のほぼ全体を防汚コーティング300による防汚機能によって清潔に保つことができる。また、洗濯機100,200によれば、回転槽104,216が合成樹脂製ではなく金属製であるから、回転槽104,216の金属部分の外面に親水性材料を焼き付けによりコーティングすることができる。これにより、高度に無機化された強固で耐久性を有する防汚コーティング300を形成することができる。
【0064】
また、洗濯機100,200によれば、防汚コーティング300は、水の接触角がガラスに対する水の接触角の下限値未満であり、また、シラノール基を有している。そのため、防汚コーティング300は、極めて高い親水性能を発揮する。これにより、防汚コーティング300の表面と当該防汚コーティング300に付着した汚れとの間に水が浸入しやすくなり、防汚コーティング300に付着した汚れを浮き上がらせるようにして除去することができる。
【0065】
また、洗濯機100,200によれば、防汚コーティング300は、ケイ素酸化物を有し、鉛筆硬度が5H以上となる硬度特性を有している。よって、防汚コーティング300に傷が付いたり、防汚コーティング300が剥がれてしまうことを防止することができる。また、洗濯機100,200によれば、防汚コーティング300は、10μm以下の厚さであり、極めて薄い防汚コーティング300が実現されている。また、洗濯機100,200によれば、防汚コーティング300は、その表面粗さが2μm以内であり、極めて平滑な防汚コーティング300が実現されている。
【0066】
また、特に洗濯機100によれば、モータの回転力を回転槽104あるいは撹拌体107に伝達するための脱水軸113aおよび洗い軸113bにも、それぞれ親水性コーティングが施されている。よって、脱水軸113aあるいは洗い軸113bも衛生的に維持することができ、ひいては槽内を衛生的に維持することができる。
【0067】
また、洗濯機100によれば、回転槽104の接合部、つまり防汚コーティング300が施されない部位に対向して、除菌剤ユニット120を備える通水路119が設けられている。そのため、防汚コーティング300による防汚効果を得にくい部位に対し、除菌剤による衛生的効果を与えることができる。
【0068】
また、洗濯機100によれば、防汚コーティング300は、当該洗濯機100において設定可能な水位のうち最低レベルの水位Lよりも高い領域に設けられている。そのため、洗濯機100により行われる殆どの運転において、防汚コーティング300に水を接触あるいは到達させることができ、防汚コーティング300による防汚効果を有効に発揮することができる。
【0069】
また、本実施形態に係る洗濯機の製造方法によれば、安定した品質の防汚コーティングが施された洗濯機100,200を提供することができる。特に、板材Saを曲げる前に防汚コーティングを形成する製造方法によれば、防汚コーティングが施された板材Saを平板状で扱うことができ、例えば、複数の板材Saを積み上げて運搬することができるなど、その取扱いのしやすさや、作業性の向上を図ることができる。
【0070】
なお、洗濯機100は、さらに、回転槽104に取り付けられる金属製のねじ106a、あるいは、回転槽104の内面にも防汚コーティング300を備える構成としてもよい。また、洗濯機200は、さらに、ドラム216に取り付けられる金属製のねじ、あるいは、ドラム216の内面にも防汚コーティング300を備える構成としてもよい。即ち、本実施形態において防汚コーティング300を形成する部分は、回転槽104の側部の外面あるいはドラム216の側部の外面に限られるものではない。なお、金属製のねじに防汚コーティング300を形成する場合には、ねじ全体に防汚コーティング300を形成する必要はなく、その外面となるねじ頭の表面に防汚コーティング300を形成すれば十分である。また、回転槽104あるいはドラム216の内面に防汚コーティング300を形成する場合には、内面全体に防汚コーティング300を形成してもよいし、内面の一部に親水性能部300を形成してもよい。
【0071】
また、防汚コーティング300は着色されていてもよい。即ち、防汚コーティング300を形成する親水性材料として、基材への吹き付け後および焼き付け後において色が残る材料を適用してもよい。これにより、形成された防汚コーティング300にムラが生じていないか否かを目視などにて容易に確認することができ、例えば防汚コーティング300が均一に形成されていない回転槽を不良品として特定することができる。
【0072】
また、洗濯機100,200においては、洗濯行程、すすぎ行程、脱水行程などを含む洗濯コースの終了後または当該洗濯コースの実行中に、水槽102,208に水を溜めて回転槽104,ドラム216を回転させる洗浄行程を実行するように設定してもよい。この洗浄行程において防汚コーティング300に水が接触することにより、当該防汚コーティング300に付着した汚れを除去することができる。なお、この洗浄行程では、水槽102,208の内部に溜める水の量を洗濯コースより増加させたり、回転槽104,ドラム216の回転速度を洗濯行程またはすすぎ行程における回転速度よりも速い速度で設定するとよい。
また、洗濯機100,200によれば、防汚コーティング300による防錆効果も期待することができる。
【0073】
(第2実施形態)
本実施形態も、板材Saのうち回転槽104の側部の外面を形成する面において、接合される部分には防汚コーティング300を施さないようにした実施形態である。即ち、例えば
図15に示すように、マスキング工程では、板材Saの長手方向の両端部に設定された接合部Ra,Rbをマスキング材によって覆い、板材Saのうち長手方向と直行する短手方向の両端部に設定された成形加工部Rc,Rdはマスキング材によって覆わないようにする。
【0074】
これにより、例えば
図16に示すように、回転槽104の側部の外面のほぼ全体に防汚コーティング300を施すことができる。よって、回転槽104の側部の外面の広範囲にわたって、防汚コーティングによる防汚機能を発揮することができる。このように、マスキング工程においてマスキング材で覆う領域を適宜調整することにより、回転槽の側部の外面において防汚コーティングが施される領域を適宜調整することができる。
【0075】
(その他の実施形態)
本実施形態は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように拡張または変形することができる。
【0076】
防汚コーティングは、親水性による防汚機能を発揮する親水性コーティングに限られるものではなく、例えば、撥水性による防汚機能を発揮する撥水性コーティングであってもよい。この場合、コーティング工程では、板材のうち回転槽の側部の外面を形成する面に、撥水性能を有する塗料、即ち撥水性塗料を吹き付けてコーティングする。
【0077】
防汚コーティングは、回転槽の側部の外面の全体に設けるのではなく、回転槽の側部の外面の一部に設ける構成としてもよい。また、防汚コーティングは、回転槽の背面部の外面あるいは底面の外面に設ける構成としてもよい。この場合、防汚コーティングは、回転槽の背面部の外面の全体に設けてもよいし、一部に設けてもよい。また、防汚コーティングは、回転槽の底面の外面の全体に設けてもよいし、一部に設けてもよい。また、防汚コーティングは、回転槽を補強する補強部材に設けてもよい。この場合、防汚コーティングは、補強部材の全体に設けてもよいし、一部に設けてもよい。また、防汚コーティングは、回転槽に形成された複数の貫通孔に設けてもよい。
【0078】
脱水軸113aや洗い軸113bに防汚コーティングを施す工程は、例えば脱水軸113aや洗い軸113bの組み付け前あるいは組み付け後など、適宜のタイミングで行うことができる。また、洗濯機が備える回転槽以外の構成要素に防汚コーティングを施す場合には、その構成要素の組み付け前あるいは組み付け後の適宜のタイミングで防汚コーティングを施す工程を実施することができる。
【0079】
また、上述した各製造工程の実施順や組み合わせは適宜変更することが可能である。
以上に説明した本実施形態に係る洗濯機は、金属製の板材を円筒状に曲げることにより、水槽内に回転可能に設けられる回転槽の側部を形成した洗濯機であって、前記板材のうち前記回転槽の側部の外面を形成する面に、防汚機能を有する防汚コーティングを施すコーティング工程を実施することにより製造され、前記回転槽の側部の外面に防汚コーティングが施されている。
【0080】
また、本実施形態に係る洗濯機の製造方法は、金属製の板材を円筒状に曲げることにより、水槽内に回転可能に設けられる回転槽の側部を形成した洗濯機を製造する方法であって、前記板材のうち前記回転槽の側部の外面を形成する面に、防汚機能を有する防汚コーティングを施すコーティング工程を実施することにより、前記回転槽の側部の外面に防汚コーティングが施されている洗濯機を製造する。
【0081】
本実施形態に係る洗濯機あるいは洗濯機の製造方法によれば、洗濯機において、手が届かず清掃などのメンテナンスを容易に行うことができない部分である回転槽の外面を清潔に保つことができ、防汚コーティングによる防汚機能を最も有効に活用することができる。
【0082】
また、本実施形態による洗濯機によれば、コーティング工程の後に、板材を円筒状に曲げる曲げ工程を実施することにより製造される。従って、洗濯機を製造する際には、防汚コーティングが施された板材を平板状で扱うことができ、例えば、複数の板材を積み上げて運搬することができるなど、その取扱いのしやすさや、作業性の向上を図ることができる。
【0083】
また、本実施形態に係る洗濯機は、曲げ工程の後に、板材の両端部を接合する接合工程を実施することにより製造される洗濯機であり、コーティング工程では、板材のうち、接合される両端部には防汚コーティングを施さない。また、洗濯機は、板材を円筒状に曲げる曲げ工程の後に、円筒状となった板材に加工を施す加工工程を実施することにより製造される洗濯機であり、板材のうち加工工程により加工が施される部分には防汚コーティングを施さない。具体的には、洗濯機は、板材のうち絞り加工が施される部分には防汚コーティングが施されていない。また、板材のうちバランスリングが取り付けられる部分には防汚コーティングが施されていない。また、板材のうち底部材が取り付けられる部分には防汚コーティングが施されていない。即ち、板材のうち加工工程により加工を施す部位に防汚コーティングが存在すると、加工が施された際に、その加工部位の防汚コーティングが損傷を受けるおそれがある。従って、板材のうち加工工程により加工を施す部位には防汚コーティングを施さないようにすることにより、防汚コーティングが損傷を受けてしまうことを回避することができる。また、防汚コーティングを形成する材料の使用量を抑えることができ、コスト面から見ても有利である。
【0084】
また、特に、板材をTIG溶接により接合する場合には、接合される部分あるいはその周辺にコーティングが施されていると、溶接が上手くいかない場合がある。本実施形態によれば、コーティング工程において、板材のうち接合される両端部には防汚コーティングを施さない。従って、板材をTIG溶接により接合する場合においても、板材の溶接を良好に行うことができる。
【0085】
また、本実施形態に係る洗濯機によれば、コーティング工程の後であって、且つ、板材を円筒状に曲げる曲げ工程の前に、当該コーティング工程において板材に付着されたコーティング材料を焼き付ける焼付工程を実施することにより製造することが可能である。これにより、強固な防汚コーティングを形成した上で板材を曲げることができ、板材が曲げられることに伴う防汚コーティングの損傷を抑えることができる。
【0086】
また、本実施形態に係る洗濯機によれば、板材を円筒状に曲げる曲げ工程の後に、コーティング工程を実施することにより製造することが可能である。また、洗濯機によれば、板材を円筒状に曲げる曲げ工程の後に、当該コーティング工程において板材に付着されたコーティング材料を焼き付ける焼付工程を実施することにより製造することが可能である。このように、板材を曲げた後に強固な防汚コーティングを形成するようにしても、防汚コーティングの損傷を抑えることができる。
【0087】
また、本実施形態に係る洗濯機によれば、曲げ工程の後であって、且つ、コーティング工程の前に、板材の両端部を接合する接合工程を実施することにより製造することが可能である。これにより、接合される部分の表面にも防汚コーティングを形成することができる。
【0088】
また、本実施形態に係る洗濯機によれば、コーティング工程の後に、当該コーティング工程において板材に付着されたコーティング材料を焼き付ける焼付工程を実施することにより製造することが可能である。これにより、強固な防汚コーティングを形成することができる。
【0089】
また、本実施形態に係る洗濯機によれば、板材に孔を形成する孔形成工程の後に、コーティング工程を実施することにより製造することが可能である。また、本実施形態に係る洗濯機によれば、板材に突起を形成する突起形成工程の後に、コーティング工程を実施することにより製造することが可能である。また、本実施形態に係る洗濯機によれば、板材を円筒状に曲げる曲げ工程、板材を接合する接合工程の後に、円筒状となった板材の径を拡大する径拡大工程を実施することにより製造することが可能である。また、本実施形態に係る洗濯機によれば、径拡大工程の後に、コーティング工程を実施することにより製造することが可能である。孔形成工程、突起形成工程、径拡大工程においては、板材に過大な負荷がかかるおそれがある。従って、このように板材に過大な負荷がかかる工程の後にコーティング工程を実施することにより、形成される防汚コーティングに過大な負荷がかかってしまうことを回避することができる。
【0090】
さらに、本実施形態に係る洗濯機によれば、径拡大工程およびコーティング工程の後に、コーティング工程において板材に付着されたコーティング材料を焼き付ける焼付工程を実施することにより製造することが可能である。即ち、過大な負荷がかかる工程の後に強固な防汚コーティングを形成することで、防汚コーティングの損傷を抑えることができる。
【0091】
また、本実施形態に係る洗濯機によれば、コーティング工程では、板材のうち、回転槽の側部の外面において設定可能な最低水位よりも高くなる領域を形成する部分に防汚コーティングを施すとよい。これにより、洗濯機により行われる殆どの運転において、防汚コーティングに水を接触あるいは到達させることができ、防汚コーティングによる防汚効果を有効に発揮することができる。
【0092】
また、本実施形態に係る洗濯機によれば、回転槽を回転させるための回転槽回転軸のうち水槽内に突出する部分にも防汚コーティングを施すとよい。また、本実施形態に係る洗濯機によれば、回転槽内に回転可能に設けられた撹拌体を回転させるための撹拌体回転軸のうち水槽内に突出する部分にも防汚コーティングを施すとよい。これにより、回転槽回転軸および撹拌体回転軸も衛生的に維持することができ、ひいては槽内を衛生的に維持することができる。
【0093】
また、本実施形態に係る洗濯機の製造方法によれば、上述の通り有利な効果を奏する洗濯機を、安定的に、効率良く製造することができる。
なお、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。本実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。