特許第6305141号(P6305141)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305141
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】非水性分散媒用分散剤
(51)【国際特許分類】
   B01F 17/42 20060101AFI20180326BHJP
   B01F 17/44 20060101ALI20180326BHJP
   B01F 17/52 20060101ALI20180326BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20180326BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20180326BHJP
   C09D 4/00 20060101ALI20180326BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20180326BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20180326BHJP
   C07C 69/708 20060101ALN20180326BHJP
   C07F 9/09 20060101ALN20180326BHJP
【FI】
   B01F17/42
   B01F17/44
   B01F17/52
   C09D201/00
   C09D7/12
   C09D4/00
   C09D17/00
   B05D7/24 303E
   !C07C69/708 Z
   !C07F9/09 K
【請求項の数】10
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-56773(P2014-56773)
(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公開番号】特開2015-178073(P2015-178073A)
(43)【公開日】2015年10月8日
【審査請求日】2016年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浅井 千穂
(72)【発明者】
【氏名】鍵政 俊夫
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−301353(JP,A)
【文献】 特開2000−327514(JP,A)
【文献】 特開2000−143431(JP,A)
【文献】 特開昭63−214334(JP,A)
【文献】 特開昭63−214331(JP,A)
【文献】 特開平6−254372(JP,A)
【文献】 特開2002−80506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 17/42
B01F 17/44
B01F 17/52
B05D 7/24
C09D 4/00
C09D 7/12
C09D 17/00
C09D 201/00
C07C 69/708
C07F 9/09
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される化合物を含有する非水性分散媒用分散剤。
【化1】
但し、一般式(1)中、Rは、炭素数6〜30の直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、Rは重合性の炭素−炭素二重結合を有する基を表し、lは平均繰り返し単位数を表し、1〜2の範囲にある数であり、
及びYはそれぞれ炭素数1〜4のオキシアルキレン基または下記一般式(2)で示される置換基であり、かつ、Y及びYの少なくとも1つが下記一般式(2)で示される置換基であり、k及びmは繰り返し単位数を表し、kは0〜30の範囲にある数であり、mは0〜30の範囲にある数であり、kとmの和(k+m)は0を超えて60以下の数であり、
Xは少なくとも1個の炭素原子と、少なくとも1個の水素原子及び/又は少なくとも1個の酸素原子とを有する連結基であり、nは0又は1の数であり、
Zはカルボキシル基、スルホ基、硫酸エステル基、又はリン酸エステル基のいずれかの基を表し、これらの基が塩を形成していてもよい。
【化2】
但し、一般式(2)中、Aは炭素数1〜30の炭化水素基である。
【請求項2】
一般式(1)のRが下記一般式(3)〜(9)で示される基のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載の非水性分散媒用分散剤。
【化3】
但し、一般式(3)〜(9)のR及びRは、それぞれ水素原子又はメチル基を表す。
【請求項3】
一般式(1)のXが、炭素数1〜15のアルキレン基または下記一般式(10)で示される基であることを特徴とする、請求項1又は2記載の非水性分散媒用分散剤。
【化4】
但し、一般式(10)のBは、炭素数1〜15のアルキレン基、ビニレン基、フェニレン基及びカルボキシル基含有フェニレン基の中から選択されるいずれかである。
【請求項4】
一般式(1)のZがカルボキシル基又はリン酸エステル基であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水性分散媒用分散剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水性分散媒用分散剤により被覆及び/又は含浸の処理がなされた固体粒子。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水性分散媒用分散剤を用いて、有機物粒子又は無機物粒子を非水性分散媒中に分散してなる固体粒子分散体組成物。
【請求項7】
前記非水性分散媒が溶剤であることを特徴とする、請求項6に記載の固体粒子分散体組成物。
【請求項8】
前記非水性分散媒が重合性不飽和モノマー又はオリゴマーであることを特徴とする、請求項7に記載の固体粒子分散体組成物。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の固体粒子分散体組成物を含有することを特徴とする、コーティング組成物。
【請求項10】
請求項9に記載のコーティング組成物を硬化させてなる硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体微粒子を非水性分散媒に分散させる反応性分散剤及びその分散剤を用いてなる固体粒子分散体等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
無機又は有機材料からなる微細な固体粒子を、水性分散媒や非水性分散媒中に分散させた分散体が塗料その他の種々の用途で使用され、その分散性の向上のために種々の分散剤が使用されている(特許文献1,2)。
【0003】
このような分散体は、分散質の素材変更や粒子サイズの微小化により分散安定性が低下し、分散質が分散媒中で凝集し易くなり、分散質の凝集は分散体の製造において、生産性低下、加工特性低下、ハンドリング性低下及び歩留低下を招くに留まらず、最終製品の製品特性、素材物性及び品質の低下を引き起こすため、分散性のより一層の向上が望まれている。
【0004】
また、ナノメーターサイズの微粒子(粒子径1〜100nm)は凝集しやすく、樹脂に対する親和性が低いために樹脂中に均一に分散させるには、水性分散媒では極めて困難であり、通常は非水性分散媒中に分散剤を用いてナノ粒子を均一に分散させた分散体を調製し、この分散体に樹脂を溶解させて混合するか、又は樹脂を溶媒に溶解させた溶液状態のものと上記分散体とを混合し、溶解及び分散させる方法が用いられている。
【0005】
例えば、特許文献1にはカルボキシル基を有する無機粉末用分散剤が開示されている。また、特許文献2では無機系ナノ粒子の表面変性を目的とするカルボキシル基を有する分散剤が開示されている。しかし、これら従来の分散剤は、分散安定性が十分でないという問題を有する。
【0006】
また、非水性媒体中に微粒子を分散させるには多量の分散剤が必要であり、そのように多量の分散剤を使用して粒子を分散させた場合、それを硬化させて得られる樹脂は、分散剤のブリードアウトを生じ易く、ブリードアウトはさらに、耐水性や硬度、引っ掻き強度等の樹脂物性の低下を引き起こす。
【0007】
これらの問題を解決するために、モノマーと共重合可能な炭素−炭素二重結合を分子内に有する反応性分散剤が近年提案されている。
【0008】
例えば、特許文献3には、オキシアルキレン鎖の末端に(メタ)アクリル基を有するフォトレジスト用反応性分散剤が開示されている。
【0009】
また、特許文献4には、エポキシ基を有するビニル化合物重合体にカルボキシル基含有(メタ)アクリル化合物を付加反応させて得られる、金属酸化物微粒子用反応性分散剤が開示されている。
【0010】
しかしながら、これら従来の反応性乳化剤は、分散媒又は分散質の種類によっては分散性や分散安定性が低く、また樹脂物性の低下抑制効果もなお十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−262883号公報
【特許文献2】特表2005−519143号公報
【特許文献3】特開2010−134014号公報
【特許文献4】特開2007−289943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記のような従来技術の問題に鑑みてなされたものであり、分散性や分散安定性がより向上し、これを用いて得られる樹脂硬化物において、分散剤のブリードアウト等による樹脂物性低下がさらに抑制される、非水性分散媒用の反応性分散剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の非水性分散媒用分散剤(以下、単に「分散剤」という)は、上記の課題を解決するために、下記一般式(1)で示される化合物を含有するものとする。
【0014】
【化1】
【0015】
但し、一般式(1)中、Rは、炭素数6〜30の直鎖又は分岐のアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、Rは重合性の炭素−炭素二重結合を有する基を表し、lは平均繰り返し単位数を表し、1〜2の範囲にある数であり、Y及びYはそれぞれ炭素数1〜4のオキシアルキレン基または下記一般式(2)で示される置換基であり、かつ、Y及びYの少なくとも1つが下記一般式(2)で示される置換基であり、k及びmは繰り返し単位数を表し、kは0〜30の範囲にある数であり、mは0〜30の範囲にある数であり、kとmの和(k+m)は0を超えて60以下の数であり、Xは少なくとも1個の炭素原子と、少なくとも1個の水素原子及び/又は少なくとも1個の酸素原子とを有する連結基であり、nは0又は1の数であり、Zはカルボキシル基、スルホ基、硫酸エステル基、又はリン酸エステル基のいずれかの基を表し、これらの基が塩を形成していてもよい。
【0016】
【化2】
但し、一般式(2)中、Aは炭素数1〜30の炭化水素基である。
【0017】
上記本発明の分散剤において、一般式(1)のRは下記式(3)〜(9)で示される基のいずれかであることが好ましい。
【0018】
【化3】
【0019】
但し、式(3)〜(9)のR及びRは、それぞれ水素原子又はメチル基を表す。
【0020】
また、一般式(1)のXは、炭素数1〜15のアルキレン基または下記一般式(10)で示される基であることが好ましい。
【0021】
【化4】
【0022】
但し、一般式(10)のBは、炭素数1〜15のアルキレン基、ビニレン基、フェニレン基及びカルボキシル基含有フェニレン基の中から選択されるいずれかである。
【0023】
一般式(1)のZはカルボキシル基又はリン酸エステル基であることが好ましい。
【0024】
本発明の固体粒子は、上記本発明の分散剤による被覆及び/又は含浸の処理を行うことにより得ることができる。
【0025】
本発明の固体粒子分散体組成物は、上記本発明の分散剤を用いて、有機物粒子又は無機物粒子を非水性分散媒中に分散することにより得られる。
【0026】
上記固体粒子分散体組成物において、非水性分散媒としては、溶剤、重合性不飽和モノマー又はオリゴマーのいずれも使用可能である。
【0027】
本発明のコーティング組成物は、上記本発明の固体粒子分散体組成物を含有するものとする。
【0028】
上記本発明のコーティング組成物を硬化させることにより本発明の硬化物が得られる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の分散剤は、一般式(1)で表される構造を有することにより、従来の分散剤よりも分散性及び分散安定性がより優れ、少量の添加で優れた分散安定性を発揮するものとなる。また、この分散剤を用いてなる分散体組成物を硬化させる際に分散剤とモノマーを共重合させた場合、得られるフィルムその他の樹脂硬化物において、分散剤のブリードアウト等による樹脂物性への悪影響を従来の反応性分散剤よりも大きく低減し、硬度、引っ掻き強度、耐水性等がより向上した樹脂硬化物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好ましい実施形態について、詳細に説明する。
【0031】
本発明の分散剤は、上記の通り、一般式(1)で示される化合物を含有する。
【0032】
【化5】
【0033】
一般式(1)に示す通り、本化合物は重合性の炭素−炭素二重結合を有し、一般式(2)で示される置換基、または、一般式(2)で示される置換基とアルキレンオキシド鎖を含む分散媒親和性部位とZで示される分散質親和性部位を有し、これらの分散媒親和性部と分散質親和性部とが連結基Xで連結されたものである。
【0034】
一般式(1)における疎水基Rは、炭素数6〜30の、直鎖又は分岐のアルキル基、又はアルケニル基、又はアリール基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。アルキル基の具体例としては、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、イソヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、イソウンデシル基、ドデシル基、イソドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、イソテトラデシル基、ペンタデシル基、イソペンタデシル基、ヘキサデシル基、イソヘキサデシル基、2−ヘキシルデシル基、ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、2−オクチルデシル基、2−ヘキシルドデシル基、ノナデシル基、イソノナデシル基、エイコシル基、イソエイコシル基、ヘンエイコシル基、イソヘンエイコシル基、ドコシル基、イソドコシル基、トリコシル基、イソトリコシル基、テトラコシル基、イソテトラコシル基、ペンタコシル基、イソペンタコシル基、ヘキサコシル基、イソヘキサコシル基、ヘプタコシル基、イソヘプタコシル基等が挙げられる。
【0035】
アルケニル基の具体例としては、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、オレイル基等が挙げられる。
【0036】
アリール基の具体例としては、フェニル基、トルイル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ヘプチルフェニル基、オクチルフェニル基、ノニルフェニル基、デシルフェニル基、ウンデシルフェニル基、ドデシルフェニル基、スチレン化フェニル基、p−クミルフェニル基、フェニルフェニル基、ベンジルフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等が挙げられる。
【0037】
次に、重合性の炭素−炭素二重結合を有する基Rについて、重合性炭素−炭素二重結合の例としてはアリル基、2−プロペニル基、メタリル基、ビニル基、アクリル基、メタクリル基が挙げられる。重合性の炭素−炭素二重結合を有する基Rはこれらの炭素−炭素二重結合1つ以上有する置換基であり、下記一般式(3)〜(9)で示される基のいずれかであることが好ましい。
【0038】
【化6】
【0039】
但し、一般式(3)〜(9)のR及びRは、それぞれ水素原子又はメチル基を表す。
【0040】
本発明の分散剤において、分子中のR基は、重合性の炭素−炭素二重結合を有し、ラジカル重合触媒あるいはカチオン重合触媒の存在下で、紫外線、電子線、又は熱により、この重合性不飽和モノマーと共重合させることが可能である。これにより分散剤のブリードアウトを抑制し、樹脂物性への悪影響を低減することができる。lは平均繰り返し単位数を表し、1以上3未満の数であり、1〜2の範囲にあるのが好ましく、1〜1.5の範囲にあるのがより好ましい。式(1)の他の部分の構造にもよるが、lが2を超える場合、分散性能が低下して安定した分散体が得られないおそれが生じる。
【0041】
次に、一般式(1)における置換基YおよびYは、一般式(2)で示される置換基または炭素数1〜4のオキシアルキレン基であり、Y及びYの少なくとも一方が一般式(2)で示される置換基である。
【0042】
【化7】
【0043】
但し、一般式(2)において、Aは炭素数1〜30の炭化水素基であり、炭素数が1〜20であることが好ましい。また、炭化水素基は、アルキレン基、分岐アルキレン基、であることが好ましい。
【0044】
置換基YおよびYにおける炭素数1〜4のオキシアルキレン基としては、具体的には炭素数2のアルキレンオキシドはエチレンオキシドである。炭素数3のアルキレンオキシドはプロピレンオキシドである。炭素数4のアルキレンオキシドは、テトラヒドロフラン或いはブチレンオキシドであるが、好ましくは、1,2−ブチレンオキシドまたは2,3−ブチレンオキシドである。炭素数1〜4のオキシアルキレン基は、単独重合鎖であっても、2種以上のアルキレンオキサイドのランダム重合鎖でもブロック重合鎖でもよく、また、その組み合わせであってもよい。
【0045】
式(1)の置換基YおよびYの繰り返し単位数を示すk及びmは、kが0〜30の範囲にある数であり、mが0〜30の範囲にある数であり、kとmの和(k+m)が0を超えて60以下の数である。これらのうち、kは0〜10であることが好ましく、0〜5であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。また、mは1〜20であることが好ましく、3〜15であることがより好ましく、5〜10であることがさらに好ましい。kとmの和(k+m)は、1〜40であることが好ましく、3〜20であることがより好ましい。
【0046】
次に、連結基Xは、少なくとも1個の炭素原子を有し、さらに少なくとも1個の水素原子及び/又は少なくとも1個の酸素原子を有する公知の構造から選択可能であるが、好ましくは飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、エーテル基、カルボニル基、エステル基から選ばれるいずれかひとつの基またはこれらの2つ以上の組み合わせから形成される基であり、脂環構造、芳香環構造を有していてもよく、また、繰り返し単位を有していてもよい。2種以上の基の組み合わせの例としては、2個の飽和又は不飽和炭化水素基が、エーテル基、カルボニル基又はエステル基を介して連結された基が挙げられる。
【0047】
また、Xは炭素数1〜15のアルキレン基または下記一般式(10)で示される基であることが好ましい。
【0048】
【化8】
【0049】
但し、一般式(10)のBは、炭素数1〜15のアルキレン基、ビニレン基、フェニレン基及びカルボキシル基含有フェニレン基の中から選択されるいずれかである。
【0050】
Xがアルキレン基である場合、炭素数が1〜8であることがより好ましく1〜4であることがさらに好ましく、炭素数1〜2であることが最も好ましい。
【0051】
Xが一般式(10)で示される基ある場合、Bはアルキレン基またはビニレン基であることがより好ましい。また、Bは、炭素数が1〜8であることがより好ましい。
【0052】
次に分散質親和性部位Zは、カルボキシル基、スルホ基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、又はそれらの塩を表し、カルボキシル基又はリン酸エステル基であることが好ましい。リン酸エステルはモノエステル、ジエステル及びこれらの混合物を指す。
【0053】
Zは酸型でも塩を形成していてもよい。形成する塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルカノールアミン塩が挙げられる。以下にその具体例を示す。
【0054】
アルカリ金属塩の例としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等が挙げられる。アルカリ土類金属塩の例としては、カルシウム塩及びマグネシウム塩等が挙げられる。アルカノールアミン塩の例としては、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩等が挙げられる。
【0055】
次に、本発明の分散剤の製造方法について説明する。本発明の分散剤は公知の方法で製造することができ、以下にその例を示すが、これらの方法に限定されるものではない。
【0056】
例えば、炭素数6〜30の直鎖又は分岐のアルキル基またはアリール基を有するアルコール誘導体またはフェノール誘導体と、重合性炭素−炭素二重結合を有するエポキシドとを反応させた後に、公知の方法でラクトン化合物を開環重合あるいはヒドロキシカルボン酸を縮合重合またはアルキレンオキシドを付加した後、分散質親和性部位Zを導入する方法が用いられる。
【0057】
ラクトン化合物としては、例えば、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
【0058】
ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、リシノレイン酸、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ひまし油脂肪酸、水添ひまし油脂肪酸、δ−ヒドロキシ吉草酸、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシピバリン酸、4−ヒドロキシイソフタル酸サリチル酸、11−オキシヘキサデカン酸、2−オキシドデカン酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸、2,2−ジメチロールペンタン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、4,4−ビス(ヒドロキシフェニル)酪酸、グルクロン酸、3−ヒドロキシブタン酸等が挙げられる。
【0059】
分散質親和性部位Zがカルボン酸である場合、モノハロゲン化低級カルボン酸またはその塩を用い、塩基存在下で末端水酸基と反応させる方法、または、酸無水物を用いて末端水酸基との開環反応による方法により製造することができる。
【0060】
分散質親和性部位Zがリン酸エステルである場合、無水リン酸、オルトリン酸、ポリリン酸、オキシ塩化リン酸等のリン酸化剤を末端水酸基と反応させる方法により製造することができる。製造方法によってはモノエステル型の化合物とジエステル型の化合物が混合体として得られるが、これらは分離してもよいし、そのまま混合物として使用してもよい。また、水の存在下で反応させ、モノエステル化合物の含有割合を高めて使用することもできる。
【0061】
本発明の非水性分散媒用分散剤は、本発明の効果を発現するために上記のように限定した範囲内で、疎水基の種類、ラクトンあるいはヒドロキシカルボン酸またはアルキレンオキシドとその付加形態、付加モル量、連結基の構造などを最適化することにより、公知の分散剤よりも、より広範な種類の分散質を分散でき、より広範な種類の分散媒に分散質を分散安定化できる点で産業上の利用価値が大きい。
【0062】
なお、本発明の分散剤は、含有するイオン量、特にアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、重金属イオン、ハロゲンイオンの各イオンの含有量を公知の精製法により低減して用いることができる。分散剤中のイオンは、分散体の分散安定性、耐触性、耐酸化性、分散塗膜の電気特性(導電特性、絶縁特性)、経時安定性、耐熱性、低湿性、耐候性に大きく影響するため、上記イオンの含有量は適宜決定することができるが、好ましくは分散剤中で50ppm未満であることが望ましい。
【0063】
次に、本発明で使用できる分散質である固体粒子について説明する。本発明の分散剤により分散される分散質粒子は、特に限定されず、無機物由来粒子(無機物粒子)又は有機物由来粒子(有機物粒子)のいずれでもよい。また、分散質粒子は2種以上を混合して用いることもできる。
【0064】
無機物由来粒子の例としては、鉄、アルミニウム、クロム、ニッケル、コバルト、亜鉛、タングステン、インジウム、スズ、パラジウム、ジルコニウム、チタン、銅、銀、金、白金など、及びそれらの合金、又はそれらの混合物が挙げられる。後述するように金属粒子を媒体中から安定に取り出す為に、アルカン酸類や脂肪酸類、ヒドロキシカルボン酸類、脂環族、芳香族カルボン酸類、アルケニルコハク酸無水物類、チオール類、フェノール誘導体類、アミン類、両親媒性ポリマー、高分子界面活性剤、低分子界面活性剤などの保護剤で被覆されていてもよい。その他、カオリン、クレー、タルク、マイカ、ベントナイト、ドロマイト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、アスベスト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、ケイ酸アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化インジウムスズ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、チタン酸バリウム、珪藻土、カーボンブラック、黒鉛、ロックウール、グラスウール、ガラス繊維、炭素繊維、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ(シングルウォールナノチューブ、ダブルウォールナノチューブ、マルチウォールナノチューブ)等がある。
【0065】
有機物由来粒子の例としては、アゾ系、ジアゾ系、縮合アゾ系、チオインジゴ系、インダンスロン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ベンゾイミダゾロン系、ペリレン系、フタロシアニン系、アントラピリジン系、ジオキサジン系等の有機顔料、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、アクリル樹脂、ビニロン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ乳酸、アセテート繊維、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、キチン、キトサン、澱粉、ポリアセタール、アラミド樹脂、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリイミド等がある。
【0066】
本発明で分散質となる上記固体粒子は、結晶状であってもアモルファス状であってもよい。また、本発明の分散剤により分散される分散質粒子は、等方性粒子であっても異方性粒子であってもよく、繊維状であってもよい。
【0067】
上記固体粒子の大きさは特に限定されないが、通常は粒子径(繊維状であれば長さ)1〜500nm程度である。特に、凝集しやすく、従来は分散が困難であった粒子径1〜100nm程度のナノメータサイズの粒子でも、本発明の分散剤によれば分散安定化が可能となる。
【0068】
上記固体粒子は、公知の方法で得たものが使用できる。微粒子の調製方法としては、粗大粒子を機械的に解砕、微細化していくブレイクダウン方式と、いくつかの単位粒子を生成させ、それが凝集したクラスター状態を経由して粒子が形成されるビルドアップ方式の2通りの方式があるが、いずれの方法で調製されたものであっても好適に使用できる。また、それらは湿式法、乾式法のいずれの方法によるものであってもよい。
【0069】
次に、本発明で使用できる非水性分散媒について説明する。
【0070】
本発明で使用できる非水性分散媒は特に限定されないが、例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、アミルアルコール、シクロペンタノール、ヘキシルアルコール、シクロヘキサノール、ヘプチルアルコール、n−オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ウンデシルアルコール、ドデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、フルフリルアルコール、アリルアルコール、エチレンクロロヒドリン、ベンジルアルコール、α−テルピネオール、ターピネオール類、3−メトキシブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタンなどの炭化水素系溶剤、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル、ブチルエチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ターピニルメチルエーテル、ジヒドロターピニルメチルエーテル、ジグライムなどのエーテル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジエチルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸シクロヘキシル、乳酸エチル、酢酸−3−メトキシブチル、酢酸ヘキシル、酢酸−2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソアミル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル系溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤、及び、それらモノエーテル類の酢酸エステル系溶剤、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのジアルキルエーテル系溶剤が挙げられる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、へキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルキレングリコール系溶剤が挙げられる。その他、ハロゲン化炭化水素系溶剤、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤などが挙げられる。なお、上記例示した溶剤において、アルキル組成は直鎖構造であっても分岐構造であってもそれらの混合物であってもよい。
【0071】
また、非水性分散媒として、通常の塗料用や粘着用、接着用、成型用に利用されている各種樹脂類も特に制限無く使用できる。具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0072】
非水性分散媒としては、炭素−炭素二重結合を分子中に少なくとも1個有する重合性不飽和モノマー及びオリゴマー類も使用できる。その例として、単官能(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンフェニルエーテル(メタ)アクリレート、2−[2−(エトキシ)エトキシ]エチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル(メタ)アクリレート、フェニルグリセリルエーテル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートとしては、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、ビニルモノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクトン、スチレン等が使用できる。その他、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジブチル等も使用できる。
【0073】
また、二官能(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、その他のアルキレンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクアリレート、ポリオキシアルキレンビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0074】
また、三官能(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンアルコキシレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。その他、四官能以上のモノマーとしては、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0075】
また、(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、分子内にウレタン構造を有するウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応によってエポキシ基が開環してできるエポキシ(メタ)アクリレート、分子内にポリエステル構造を有するポリエステル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0076】
以上例示した分散媒は本発明で使用できる分散媒の一例であり、分散媒はこれらに限定されるものではない。なお、分散媒は1種単独で使用することも、2種以上を混合して使用することもできる。また、本発明は非水性環境下で微粒子分散体が得られる分散剤を提供することを目的としているが、上記分散媒に対して意図的か偶発的かを問わず、微粒子分散体の製造工程中又は最終製品設計段階のいずれにおいても、水が混入又は混合した場合を除外するものではない。
【0077】
本発明の分散剤は重合性の炭素−炭素二重結合を分子内に有することから、非水性分散媒として重合性不飽和モノマー及びオリゴマー類を選択した場合には、ラジカル重合触媒又はカチオン重合触媒の存在下で、紫外線や電子線等のエネルギー線、又は熱により、本発明の分散剤を重合性不飽和モノマーと共重合させて樹脂成分として固定化することにより、非反応性分散剤使用の際に問題となっていた分散剤のブリードアウトによる樹脂物性への悪影響を低減できる。
【0078】
上記のようにエネルギー線照射や加熱により本発明の分散体組成物を硬化させるに際しては、重合開始剤を併用することが望ましい。この重合開始剤種としては、ラジカル重合触媒、又はカチオン重合触媒があり、重合開始の手段によって光(エネルギー線)重合用、又は熱重合用に区分することができる。本発明の分散剤は、そのいずれにも適用可能である。
【0079】
重合開始剤としては、公知の重合開始剤を適宜選択して利用できる。例えば、ラジカル光重合開始剤として、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルフェニルグリオキシレート、アセトフェノン、ベンゾフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]モルフォリノ−1−プロパノン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニル−フォスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチル−フォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは一種又は二種以上を併用して用いてもよい。また、ラジカル熱重合開始剤として、過硫酸アンモニウム、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。カチオン光重合開始剤として、トリフェニルスルホニウムヘキサクロロホスフェートのようなオニウム塩やアリールジアゾニウム塩など、カチオン熱重合開始剤として、三フッ化ホウ素エーテル錯塩等のルイス酸等が挙げられる。
【0080】
本発明で好適に採用される分散質粒子の分散媒中の含有量は、上記非水性分散媒中で均一に分散することができれば特に限定されるものではなく、用途などによって異なるものであるが、0.5〜70質量%の範囲内であることが好ましい。また、本発明の分散剤の好適な使用濃度は、分散質粒子に対して1〜5,000質量%の範囲内であり、1〜1,000質量%の範囲がより好適である。
【0081】
また、本発明の分散体組成物は、公知の撹拌手段、均一化手段、又は分散化手段を用いて調製することができる。使用可能な分散機の例としては、2本ロール、3本ロールなどのロールミル、ボールミル、振動ボールミルなどのボールミル、ペイントシェーカー、連続ディスク型ビーズミル、連続アニュラー型ビーズミルなどのビーズミル、サンドミル、ジェットミルなどが挙げられる。また、超音波発生浴中において分散処理を行うこともできる。
【0082】
また、本発明の分散剤は、非水性分散媒中での分散質粒子の分散安定化に対して、公知技術に比べて優れた分散安定化効果を発揮するのみならず、分散質粒子を媒体中から安定に取り出すための保護剤として使用することができる。分散剤を固体粒子の保護剤として使用するための具体的方法は特に限定されないが、例えば微粒子製造を分散剤の存在下で行う方法が挙げられる。
【0083】
分散質粒子を媒体中から安定に取り出すための保護剤の機能としては、生成粒子の凝集抑制、容器壁面への吸着抑制及び汚染防止、易再分散性付与、金属粒子の酸化防止、粒子表面の表面改質、機能性表面の劣化防止、溶媒の置換や極性変更時のショック緩和、粉末の流動性改良、粉末の固化防止などが挙げられる。本発明の分散剤は公知の保護剤よりもこれらの機能に優れ、疎水基の組成、アルキレンオキシドの付加形態とその付加モル量、疎水基の種類や連結基などを最適選定することにより、公知の保護剤よりも一層広範な分散媒に所望の分散質を分散安定化できという利点を有する。
【0084】
非水性分散媒として樹脂を用いた本発明の分散体組成物を含有するコーティング組成物又は非水性分散媒として溶剤を用いた本発明の分散体組成物と樹脂との混合物を含有するコーティング組成物を塗布する基材としては、例えば、ガラス、樹脂フィルム、ガラスコンポジット、セラミックス、金属・鋼板などを使用することができる。
【実施例】
【0085】
以下に本発明の実施例及び比較例について説明する。なお、以下において、配合量を示す「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示す。但し、本発明は下記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において適宜変更や修正が可能である。
【0086】
<分散剤の合成>
[製造例1(分散剤1の合成)]
撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応器に、スチレン化フェノール(モノ体/ジ体/トリ体=15/55/30、質量比)318g(1.0モル)、触媒として水酸化カリウム5gを仕込み105℃で30分間減圧脱水した。アリルグリシジルエーテル137g(1.2モル)を徐々に滴下し100℃にて5時間反応させた。次いで、ε−カプロラクトン1141.4g(10モル)、テトラブチルチタネート1.0gを加え、窒素雰囲気下180℃で残存するε−カプロラクトンが1%以下になるまで反応させた。
【0087】
次に、トルエン1000gを加え均一になるよう攪拌した後、反応系の温度を60℃以下に保ちながらモノクロロ酢酸ナトリウム151g(1.3モル)、水酸化ナトリウム52g(1.3モル)を徐々に添加した後、80℃で3時間反応させた。反応後、98%硫酸120g(1.2モル)を滴下することにより、白色懸濁溶液を得た。この白色懸濁溶液を蒸留水で洗浄し、溶媒を減圧留去することにより分散剤1(R:スチレン化フェニル基、R:アリル基、k:0、l:1.2、Y:−C(=O)−(CH−O−、m:10、X:CH、n:1、Z:COOH)を得た。
【0088】
[製造例2(分散剤2の合成)]
スチレン化フェノールに代えてベンジル化フェノール(モノ体/ジ体/トリ体=15/60/25質量比)283g(1.0モル)を用いた以外は製造例1と同様の操作を行い、分散剤2(R:ベンジル化フェニル基、R:アリル基、k:0、l:1.2、Y:−C(=O)−(CH−O−、m:10、X:CH、n:1、Z:COOH)を得た。
【0089】
[製造例3(分散剤3の合成)]
スチレン化フェノールに代えてクミルフェノール212g(1.0モル)を用いた以外は製造例1と同様の操作を行い、分散剤3(R:クミルフェニル基、R:アリル基、k:0、l:1.2、Y:−C(=O)−(CH−O−、m:10、X:CH、n:1、Z:COOH)を得た。
【0090】
[製造例4(分散剤4の合成)]
スチレン化フェノールに代えてノニルフェノール220g(1.0モル)を用いた以外は製造例1と同様の操作を行い、分散剤4(R:ノニルフェニル基、R:アリル基、k:0、l:1.2、Y:−C(=O)−(CH−O−、m:10、X:CH、n:1、Z:COOH)を得た。
【0091】
[製造例5(分散剤5の合成)]
スチレン化フェノールに代えてラウリルアルコール186g(1.0モル)を用いた以外は製造例1と同様の操作を行い、分散剤5(R:ラウリル基、R:アリル基、k:0、l:1.2、Y:−C(=O)−(CH−O−、m:10、X:CH、n:1、Z:COOH)を得た。
【0092】
[製造例6(分散剤6の合成)]
アリルグリシジルエーテルの使用量を171g(1.5モル)とした以外は製造例1と同様の操作を行い、分散剤6(R:スチレン化フェニル基、R:アリル基、k:0、l:1.5、Y:−C(=O)−(CH−O−、m:10、X:CH、n:1、Z:COOH)を得た。
【0093】
[製造例7(分散剤7の合成)]
アリルグリシジルエーテルに代えて1−プロペニルフェニルグリシジルエーテル228g(1.2モル)を用いた以外は製造例1と同様の操作を行い、分散剤7(R:スチレン化フェニル基、R:プロペニルフェニル基、k:0、l:1.2、Y:−C(=O)−(CH−O−、m:10、X:CH、n:1、Z:COOH)を得た。
【0094】
[製造例8(分散剤8の合成)]
アリルグリシジルエーテルに代えてグリシジルメタクリレート170g(1.2モル)を用いた以外は製造例1と同様の操作を行い、分散剤8(R:スチレン化フェニル基、R:メタクリル基、k:0、l:1.2、Y:−C(=O)−(CH−O−、m:10、X:CH、n:1、Z:COOH)を得た。
【0095】
[製造例9(分散剤9の合成)]
ε−カプロラクトンに代えてγ−ブチロラクトン860.9g(10モル)を用いた以外は製造例1と同様の操作を行い、分散剤9(R:スチレン化フェニル基、R:アリル基、k:0、l:1.2、Y:−C(=O)−(CH−O−、m:5、X:CH、n:1、Z:COOH)を得た。
【0096】
[製造例10(分散剤10の合成)]
ε−カプロラクトンに代えてδ−バレロラクトン1001.2g(10モル)を用いた以外は製造例1と同様の操作を行い、分散剤10(R:スチレン化フェニル基、R:アリル基、k:0、l:1.2、Y:−C(=O)−(CH−O−、m:20、X:CH、n:1、Z:COOH)を得た。
【0097】
[製造例11(分散剤11の合成)]
撹拌機、温度計、窒素導入管を備えた反応器に、スチレン化フェノール(モノ体/ジ体/トリ体=15/55/30、質量比)318g(1.0モル)、触媒として水酸化カリウム5gを仕込み105℃で30分間減圧脱水した。アリルグリシジルエーテル137g(1.2モル)を徐々に滴下し100℃にて5時間反応させた。次いで、反応器に検水管を取り付け、12−ヒドロキシステアリン酸1802.9g(6モル)、テトラブチルチタネート1.0gを加え、窒素雰囲気下180℃で残存する酸価が2mgKOH/g以下になるまで反応させた。
【0098】
次に、検水管を外しトルエン1000gを加え均一になるよう攪拌した後、反応系の温度を60℃以下に保ちながらモノクロロ酢酸ナトリウム151g(1.3モル)、水酸化ナトリウム52g(1.3モル)を徐々に添加した後、80℃で3時間反応させた。反応後、98%硫酸120g(1.2モル)を滴下することにより、白色懸濁溶液を得た。この白色懸濁溶液を蒸留水で洗浄し、溶媒を減圧留去することにより分散剤11(R:スチレン化フェニル基、R:アリル基、k:0、l:1.2、Y:−C(=O)−(CH10−CH(C13)O−、m:10、X:CH、n:1、Z:COOH)を得た。
【0099】
[製造例12(分散剤12の合成)]
ε−カプロラクトンの使用量を57.7g(5モル)とした以外は製造例1と同様の操作を行い、分散剤12(R:スチレン化フェニル基、R:アリル基、k:0、l:1.2、Y:−C(=O)−(CH−O−、m:20、X:CH、n:1、Z:COOH)を得た。
【0100】
[製造例13(分散剤13の合成)]
攪拌機、温度計、窒素導入管付きの反応器にスチレン化フェノール(モノ体/ジ体/トリ体=15/55/30質量比)318g(1.0モル)、ε−カプロラクトン141.4g(10モル)、テトラブチルチタネート0.5gを仕込んだ後、窒素雰囲気下180℃で残存するε−カプロラクトンが1%以下になるまで反応させた。次に、触媒として水酸化カリウム5gを仕込み105℃で30分間減圧脱水した。アリルグリシジルエーテル137g(1.2モル)を徐々に滴下し100℃にて5時間反応させた。
【0101】
次に、トルエン1000gを加え均一になるよう攪拌した後、反応系の温度を60℃以下に保ちながらモノクロロ酢酸ナトリウム151g(1.3モル)、水酸化ナトリウム52g(1.3モル)を徐々に添加した後、80℃で3時間反応させた。反応後、98%硫酸120g(1.2モル)を滴下することにより、白色懸濁溶液を得た。この白色懸濁溶液を蒸留水で洗浄し、溶媒を減圧留去することにより、分散剤13(R:スチレン化フェニル基、R:アリル基、Y:−C(=O)−(CH−O−、k:10、l:1.2、m:0、X:CH、n:1、Z:COOH)を得た。
【0102】
[製造例14(分散剤14の合成)]
ε−カプロラクトンの使用量を57.7g(5モル)とした以外は製造例13と同様の操作を行い、分散剤14(R:スチレン化フェニル基、R:アリル基、Y:−C(=O)−(CH−O−、k:5、l:1.2、m:0、X:CH2、n:1、Z:COOH)を得た。
【0103】
[製造例15(分散剤15の合成)]
攪拌機、温度計、窒素導入管付きの反応器にスチレン化フェノール(モノ体/ジ体/トリ体=15/55/30質量比)318g(1.0モル)、ε−カプロラクトン57.7g(5モル)、テトラブチルチタネート0.5gを仕込んだ後、窒素雰囲気下180℃で残存するε−カプロラクトンが1%以下になるまで反応させた。次に、触媒として水酸化カリウム5gを仕込み105℃で30分間減圧脱水した。アリルグリシジルエーテル137g(1.2モル)を徐々に滴下し100℃にて5時間反応させた。さらに、ε−カプロラクトン57.7g(5モル)、テトラブチルチタネート0.5gを仕込んだ後、窒素雰囲気下180℃で残存するε−カプロラクトンが1%以下になるまで反応させた。
【0104】
次に、トルエン1000gを加え均一になるよう攪拌した後、反応系の温度を60℃以下に保ちながらモノクロロ酢酸ナトリウム151g(1.3モル)、水酸化ナトリウム52g(1.3モル)を徐々に添加した後、80℃で3時間反応させた。反応後、98%硫酸120g(1.2モル)を滴下することにより、白色懸濁溶液を得た。この白色懸濁溶液を蒸留水で洗浄し、溶媒を減圧留去することにより、分散剤15(R:スチレン化フェニル基、R:アリル基、Y:−C(=O)−(CH−O−、k:5、l:1.2、Y:−C(=O)−(CH−O−、m:5、X:CH、n:1、Z:COOH)を得た。
【0105】
[製造例16(分散剤16の合成)]
撹拌機、温度計、窒素導入管、原料仕込用導入管、及び減圧用排気管を備えた温度調節機付きのオートクレーブに、スチレン化フェノール(モノ体/ジ体/トリ体=15/55/30質量比)318g(1.0モル)、触媒として水酸化カリウム5gを仕込み、オートクレーブ内の雰囲気を窒素で置換し、減圧条件下で温度100℃まで昇温した後、エチレンオキサイド220g(5.0モル)を逐次導入しながら、圧力0.15MPa、温度120℃の条件にて反応させた。
【0106】
得られた反応物を攪拌基、温度計、窒素導入管付きの反応器に移し、ε−カプロラクトン57.7g(5モル)、テトラブチルチタネート0.5gを仕込んだ後、窒素雰囲気下180℃で残存するε−カプロラクトンが1%以下になるまで反応させた。次に、トルエン1000gを加え均一になるよう攪拌した後、反応系の温度を60℃以下に保ちながらモノクロロ酢酸ナトリウム151g(1.3モル)、水酸化ナトリウム52g(1.3モル)を徐々に添加した後、80℃で3時間反応させた。反応後、98%硫酸120g(1.2モル)を滴下することにより、白色懸濁溶液を得た。この白色懸濁溶液を蒸留水で洗浄し、溶媒を減圧留去することにより、分散剤16(R:スチレン化フェニル基、R:アリル基、Y:−(CH−O−、k:5、l:1.2、Y:−C(=O)−(CH−O−、m:5、X:CH、n:1、Z:COOH)を得た。
【0107】
[製造例17(分散剤17の合成)]
攪拌機、温度計、窒素導入管付きの反応器にスチレン化フェノール(モノ体/ジ体/トリ体=15/55/30質量比)318g(1.0モル)、ε−カプロラクトン57.7g(5モル)、テトラブチルチタネート0.5gを仕込んだ後、窒素雰囲気下180℃で残存するε−カプロラクトンが1%以下になるまで反応させた。次に、触媒として水酸化カリウム5gを仕込み105℃で30分間減圧脱水した。アリルグリシジルエーテル137g(1.2モル)を徐々に滴下し100℃にて5時間反応させた。
【0108】
得られた反応物を撹拌機、温度計、窒素導入管、原料仕込用導入管、及び減圧用排気管を備えた温度調節機付きのオートクレーブに移し、オートクレーブ内の雰囲気を窒素で置換し、減圧条件下で温度100℃まで昇温した後、エチレンオキサイド220g(5.0モル)を逐次導入しながら、圧力0.15MPa、温度120℃の条件にて反応させた。
【0109】
得られた反応物を攪拌機、温度計付きの反応器に移し、トルエン1000gを加え均一になるよう攪拌した後、反応系の温度を60℃以下に保ちながらモノクロロ酢酸ナトリウム151g(1.3モル)、水酸化ナトリウム52g(1.3モル)を徐々に添加した後、80℃で3時間反応させた。反応後、98%硫酸120g(1.2モル)を滴下することにより、白色懸濁溶液を得た。この白色懸濁溶液を蒸留水で洗浄し、溶媒を減圧留去することにより、分散剤17(R:スチレン化フェニル基、R:アリル基、Y:−C(=O)−(CH−O−、k:5、l:1.2、Y:−(CH−O−、m:5、X:CH、n:1、Z:COOH)を得た。
【0110】
[製造例18(分散剤18の合成)]
製造例1と同様にして得たε−カプロラクトン10モル付加体にスベリン酸無水物156g(1モル)を120℃で2時間反応させることで分散剤18(R:スチレン化フェニル基、R:アリル基、k:0、l:1.2、Y:−C(=O)−(CH−O−、m:10、X:−C(=O)−(CH−、n:1、Z:COOH)を得た。
【0111】
[製造例19(分散剤19の合成)]
製造例1と同様にして得たε−カプロラクトン10モル付加体にコハク酸無水物100g(1モル)を120℃で2時間反応させることで分散剤19(R:スチレン化フェニル基、R:アリル基、k:0、l:1.2、Y:−C(=O)−(CH−O−、m:10、X:−C(=O)−(CH−、n:1、Z:COOH)を得た。
【0112】
[製造例20(分散剤20の合成)]
製造例1と同様にして得たε−カプロラクトン10モル付加体に無水マレイン酸198g(1モル)を120℃で2時間反応させることで分散剤20(R:スチレン化フェニル基、R:アリル基、k:0、l:1.2、Y:エチレンオキシド、m:10、X:−C(=O)−CH=CH−、n:1、Z:COOH)を得た。
【0113】
[製造例21(分散剤21の合成)]
製造例1と同様にして得たε−カプロラクトン10モル付加体に無水リン酸47g(0.33モル)を80℃で5時間反応させることで分散剤21(R:スチレン化フェニル基、R:アリル基、k:0、l:1.2、Y:−C(=O)−(CH−O−、m:10、n:0、Z:リン酸モノエステルPO/リン酸ジエステルPOH)を得た。
【0114】
[製造例22(分散剤22の合成)]
製造例1と同様にして得たエチレンオキシド10モル付加体を反応器にとり、クロロスルホン酸117g(1.0モル)を約1時間かけて滴下した。液温は10〜15℃に維持した。クロロスルホン酸の滴下終了後、反応液中に窒素ガスを流し、副生の塩化水素ガスを除去し、分散剤22(R:スチレン化フェニル基、R:アリル基、k:0、l:1.2、Y:−C(=O)−(CH−O−、m:10、n:0、Z:スルホン基)を得た。
【0115】
[比較製造例1(比較例1の分散剤の合成)]
スチレン化フェノールに代えて1−プロパノール60g(1.0モル)を用いた以外は製造例1と同様の操作を行い、比較例1の分散剤(R:1−プロピル基、R:アリル基、k:0、l:1.2、Y:−C(=O)−(CH−O−、m:10、X:CH、n:1、Z:COOH)を得た。
【0116】
[比較製造例2(比較例2の分散剤の合成)]
ε−カプロラクトン付加操作を行なわない以外は製造例1と同様の操作を行い、比較例2の分散剤(R:スチレン化フェニル基、R:アリル基、k:0、l:1.2、m:0、X:CH、n:1、Z:COOH)を得た。
【0117】
[比較製造例3(比較例3の分散剤の合成)]
製造例1においてε−カプロラクトン付加終了時に得られた組成物を比較例3の分散剤(R:スチレン化フェニル基、R:アリル基、k:0、l:1.2、Y:−C(=O)−(CH−O−、m:10、X:CH、n:0、Z:H)とした。
【0118】
〔分散試験1〕
以下の表1に示す本発明の分散剤1.5部(固形分換算)及び表2に示す比較分散剤1.5部(固形分換算)を、分散媒としての表1,2に示す溶剤68.5部に溶解し、さらに、分散質としての酸化マグネシウム(MgO)30部及び直径0.5mmのジルコニアビーズ100mlを加えたものに、ペイントシェーカーで12時間微細化処理を実施した。その結果、得られた処理液を透明の容器に移して容器内の処理液の分散性について、その処理液を目視にて観察することによって、以下の基準で評価した。その結果を表1と表2に示す。
◎:すべての分散質が液中に分散し、容器の底部に沈降物は見られない
○:ほとんどの分散質が液中に分散しているが、容器の底部にごくわずかの沈降物が見られる
×:ほとんどの分散質が底部に沈降している
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
表1及び表2に示した結果から、本発明の分散剤を用いた分散体は比較例のものと比較して分散性がより優れていることが分かる。
【0122】
〔分散試験2〕
以下の表3に示す本発明の分散剤及び比較例の分散剤の所定量を、それぞれ分散媒として表3に示す分散媒の所定量に溶解し、さらに、分散質としての酸化ジルコニウム(ZrO)5部を加えたものに、ビーズミル(寿工業(株)製、商品名ウルトラアペックスミルUAM−005、直径50μmのジルコニアビーズ使用、周速10m/秒)で2時間微細化処理を実施した。その結果得られた処理液を透明の容器に移して、微細化処理直後の容器内の処理液の分散性と、24時間後の容器内の処理液(分散剤が0.25部で分散質が5部の処理液)の分散安定性とについて、処理液を目視にて観察することによって、同上基準で評価した。また、一部の処理液(分散剤が0.25部で分散質が5部の処理液)について、粒度分布計(日機装株式会社製、マイクロトラックUPAMODEL 9230)を使用して動的光散乱法により測定した50%体積粒径(D50)を微細化処理直後の酸化ジルコニウムの粒子径とした。なお、分散剤に対する分散媒の配合量は、分散剤0.5部、0.25部、0.15部、0.05部に対して、それぞれ分散媒94.5部、94.75部、94.85部、94.95部である。また、表3における分散剤使用量(対酸化ジルコニウム)は、10%が分散剤0.5部、5%が分散剤0.25部、3%が分散剤0.15部、1%が分散剤0.05部にそれぞれ対応する。上記分散性と分散安定性の目視評価と酸化ジルコニウムの粒子径測定結果を表3に示す。
【0123】
また、以下の表3に示す組成を有する本発明の分散剤又は比較分散剤と、酸化ジルコニウム、分散媒からなる前記の酸化ジルコニウム分散体(分散剤 0.25部、酸化ジルコニウム 5.00部、分散媒 94.75部)の70部を、アクリル樹脂(三菱レイヨン(株)製、商品名アクリペットVH)25部を溶解させたメチルエチルケトン溶液70部に混合してなる分散液について、ビーズミル(寿工業(株)製、商品名ウルトラアペックスミルUAM−005、直径50μmのジルコニアビーズ使用、周速10m/秒)で2時間微細化処理を実施した。その結果、得られた処理液を透明の容器に移して容器内の処理液の分散性について、処理液を目視にて観察することによって、上記基準で評価した。その結果を表3に示す。
【0124】
また、上記分散液(2時間の微細化処理後のもの)を厚さ10mmの清浄なガラス板上に塗布した後、乾燥機にて120℃で1時間乾燥して塗膜を得た。次いで、上記ガラス板の下に12ポイントで印字したアルファベットを記した紙を置き、ガラス板上に得られた塗膜の透明性について、その塗膜越しにアルファベットを判別できるかどうかの点から、以下の基準で評価した。その結果を表3に示す。
◎:12ポイントのアルファベット文字を鮮明に判別することができる
○:塗膜にごく僅かの濁りを生じているが、12ポイントのアルファベット文字を判別することができる
×:塗膜に濁りがあり、12ポイントのアルファベット文字を判別することができない
【0125】
【表3】
【0126】
表3に示すように、本発明の分散剤を用いたものの分散性と分散安定性は比較例のものと比較して優れていた。また、同表に示すように、本発明の分散剤を用いてなる分散体中の分散質の粒径は比較例の分散体中の分散質の粒径に比べてはるかに小さく、このことから本発明の分散剤の効果は明らかである。さらに、同表に示すように、本発明の分散体からなる塗膜の透明性は優れており、本発明の分散体の優れた分散性が実証されている。
【0127】
〔分散試験3〕
1.酸化ジルコニウムのアクリレートモノマー分散体(1)の作製
酸化ジルコニウム粉末(日本電工(株)製、商品名PCS、一次粒子径30nm)100部とメチルエチルケトン400部とを混合したものに、以下の表4に示す本発明の分散剤又は比較分散剤10部を添加したものを、ビーズミル(寿工業(株)製、商品名ウルトラアペックスミルUAM−005、直径50μmのジルコニアビーズ使用、周速10m/秒)で4時間微細化処理を実施して、酸化ジルコニウム分散体を作製した。得られた酸化ジルコニウム分散体100部に、フェノキシエチルアクリレート(第一工業製薬(株)製、商品名ニューフロンティアPHE)10部と、ペンタエリスリトールトリアクリレート(第一工業製薬(株)製、商品名ニューフロンティアPET−3)10部とを添加して混合した後、溶媒のメチルエチルケトンを、ロータリーエバポレーターを用いて減圧除去し、酸化ジルコニウムのアクリレートモノマー分散体(1)を得た。
【0128】
2.酸化ジルコニウムのアクリレートモノマー分散体(2)の作製
市販の酸化ジルコニウム分散体(堺化学(株)製、商品名SZR−M、一次粒子径3nm、30質量%のメタノールを含有する分散体)100部に、以下の表4に示す組成を有する本発明の分散剤又は比較分散剤3部と、フェノキシエチルアクリレート(第一工業製薬(株)製、商品名ニューフロンティアPHE)15部と、ペンタエリスリトールトリアクリレート(第一工業製薬(株)製、商品名ニューフロンティアPET−3)15部とを添加して混合した後、溶媒のメタノールをロータリーエバポレーターを用いて減圧除去し、酸化ジルコニウムのアクリレートモノマー分散体(2)を得た。
【0129】
3.酸化ジルコニウムのアクリレートモノマー分散体(3)の作製
市販の酸化ジルコニウム分散体(堺化学(株)製、商品名SZR−M、一次粒子径3nm、30質量%のメタノールを含有する分散体)100部に、以下の表4に示す組成を有する本発明の分散剤又は比較分散剤3部と、o−フェニルフェノキシエチルアクリレート(日本化薬(株)製、商品名KAYARAD OPP−1)28.5部を添加して混合した後、溶媒のメタノールをロータリーエバポレーターを用いて減圧除去し、酸化ジルコニウムのアクリレートモノマー分散体(3)を得た。
【0130】
<アクリレートモノマー分散体の特性評価>
上記により得られたアクリレートモノマー分散体(1)、(2)及び(3)の分散性に関し、透明性、粘度及び屈折率を、以下の方法で評価又は測定した。それらの結果を表4に示す。
【0131】
a.透明性
酸化ジルコニウムのアクリレートモノマー分散体を透明のガラス容器に入れ、上記ガラス容器の下に12ポイントで印字したアルファベットを記した紙を置き、分散体の透明性について、その分散体越しにアルファベットを判別できるかどうかの点から、以下の基準で評価した。
◎:分散体を5cm深さのガラス容器に入れたときに、12ポイントのアルファベット文字が見える(分散体が透明である)
○:分散体を1cm深さのガラス容器に入れたときに、12ポイントのアルファベット文字がはっきり見える(分散体に僅かな濁りがある)
×:分散体を1cm深さのガラス容器に入れたときに、12ポイントのアルファベット文字がはっきり見えない(分散体に濁りがある)
【0132】
b.粘度
酸化ジルコニウムのアクリレートモノマー分散体の粘度を、E型粘度計(東機産業(株)製の商品名RE−80R)を用いて25℃で測定した。
【0133】
c.屈折率
酸化ジルコニウムのアクリレートモノマー分散体の屈折率を、アッベ屈折率計(アタゴ(株)製、商品名NAR−1T)を用いて25℃で測定した。
【0134】
<光重合硬化膜の作成及び特性評価>
さらに、上記酸化ジルコニウムのアクリレートモノマー分散体(1)、(2)及び(3)の光重合硬化膜の作製及び評価を以下の通り行った。
【0135】
すなわち、上記酸化ジルコニウムのアクリレートモノマー分散体(1)、(2)又は(3)100部に、光重合開始剤(BASF社製、商品名IRGACURE184)1部を添加して混合し、酸化ジルコニウムペーストを得た。その酸化ジルコニウムペーストを、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にアプリケーター(小平製作所製、YA型)を用いて約50μmの膜厚で塗布した後、高圧水銀灯を用いて80W/cmの強さで約200mJ/cmのエネルギーの紫外線を照射することにより、酸化ジルコニウムのアクリレートモノマー分散体の光重合硬化膜を得た。得られた塗膜の透明性、屈折率、鉛筆硬度及び耐水性を、以下の通り評価又は測定した。それらの結果を表4に示す。
【0136】
a.透明性
上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの下に12ポイントで印字したアルファベットを記した紙を置き、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に得られた光重合硬化膜の透明性について、その硬化膜越しにアルファベットを判別できるかどうかの点から、以下の基準で評価した。
◎:12ポイントのアルファベット文字を鮮明に判別することができる
○:硬化膜にごく僅かの濁りを生じているが、12ポイントのアルファベット文字を判別することができる
×:硬化膜に濁りがあり、12ポイントのアルファベット文字を判別することができない
【0137】
b.屈折率
光重合硬化膜の屈折率を、プリズムカプラ(セキテクノトロン社製、MODEL 2010/M)を用いて25℃で測定を行った。
【0138】
c.鉛筆硬度
光重合硬化膜の鉛筆硬度を、JIS K5400に準拠して所定硬さの鉛筆で引っ掻き試験を行って確認した。
【0139】
d.耐水性
光重合硬化膜を60℃の恒温水槽で3日間浸漬し、光重合硬化膜の透明性について、aと同様の基準で評価した。
【0140】
【表4】
【0141】
表4に示すように、本発明の分散体は優れた分散性(外観の透明性)と高い屈折率を有し、本発明の分散体の光重合硬化膜は優れた透明性と高い屈折率と良好な鉛筆硬度と高い耐水性を備えている。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の分散体組成物は、ハイブリッド材料、表面保護剤、導電性ペースト、導電性インク、センサー、精密分析素子、光メモリ、液晶表示素子、ナノ磁石、熱伝媒体、燃料電池用高機能触媒、有機太陽電池、ナノガラスデバイス、研磨剤、ドラッグキャリヤー、環境触媒、塗料、印刷インキ、インクジェット用インキ、カラーフィルター用レジスト、筆記具用インキ、光学薄膜、粘着剤、反射防止膜、ハードコート膜等の分野で使用できる。本発明の分散剤は上記用途製品及びその製造工程で主体成分となるナノサイズの無機物由来又は有機物由来の等方性材料及び/又は異方性材料を非水性分散媒中で分散安定化させて、分散媒中における分散質の凝集を抑制し、長期間分散安定化を達成することで所望する製品特性、加工特性、品質安定化、生産性向上を得るために有効である。