特許第6305195号(P6305195)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305195
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】レーザ加工機及び加工原点補正方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/02 20140101AFI20180326BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20180326BHJP
【FI】
   B23K26/02 A
   B23K26/00 M
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-97533(P2014-97533)
(22)【出願日】2014年5月9日
(65)【公開番号】特開2015-213939(P2015-213939A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 広一
【審査官】 岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−275230(JP,A)
【文献】 特開2013−146733(JP,A)
【文献】 特開2008−105073(JP,A)
【文献】 特開2013−015383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/02
B23K 26/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のワークに対してパンチ加工を行った後に、加工プログラムに基づいてワークの製品部分の輪郭に沿ってレーザ加工を行うレーザ加工機において、
レーザ光を照射するノズルを着脱可能に備えたレーザ照射ユニットと、
前記レーザ照射ユニットに対して前記ノズルの交換を行うノズル交換ユニットと、
前記レーザ照射ユニットの照射位置に対する撮像位置が相対的に設定され、前記ノズルの交換の度に、ワークの製品部分に対応した箇所に予め形成した基準パンチ穴の周辺の画像を撮像する撮像ユニットと、
ワークを前記レーザ照射ユニットの照射位置及び前記撮像ユニットの撮像位置に対して相対的に水平方向へ移動させるワーク移動ユニットと、
前記レーザ照射ユニットに対して前記ノズルの交換を行った後に、前記レーザ照射ユニットを制御して前記ノズルから低出力のレーザ光を照射させつつ、前記ワーク移動ユニットを制御して前記基準パンチ穴の中心の前記加工プログラム上の位置を動作中心としたワークの特定の動作を前記レーザ照射ユニットの照射位置に対して相対的に行うことにより、ワークに前記基準パンチ穴を囲む所定の軌跡を形成する軌跡形成部と、
前記基準パンチ穴の中心の前記加工プログラム上の位置に基づいて、前記ワーク移動ユニットを制御してワークを前記撮像ユニットの撮像位置に対して相対的に水平方向へ移動位置決めし、前記撮像ユニットを制御して前記所定の軌跡を含む前記基準パンチ穴の周辺の画像を撮像した後に、前記撮像ユニットから前記画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部によって取得した前記画像に基づいて、前記画像中における前記所定の軌跡の中心の位置と前記基準パンチ穴の中心の位置とのずれ量を演算するずれ量演算部と、
前記ずれ量演算部によって演算された前記ずれ量に基づいて、前記ずれ量がゼロになるようにレーザ加工の基準となる前記加工プログラム上の位置を補正する原点補正部と、を具備し
前記ノズルの交換後に、前記ノズルのノズル径の相違やアシストガスの流れの変化によって実際の照射位置が前記レーザ照射ユニットの照射位置に対してずれてあっても、そのずれを前記加工プログラム上で修正することを特徴とするレーザ加工機。
【請求項2】
前記加工プログラムに基づいてワークに対してパンチ加工を行うためのパンチ加工ユニットを具備した複合タイプの装置であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加工機。
【請求項3】
板状のワークに対してパンチ加工を行った後に、レーザ光を照射するノズルを着脱可能に備えたレーザ照射ユニットを用い、加工プログラムに基づいてワークの製品部分の輪郭に沿ってレーザ加工を行う場合に使用される方法であって、ワークの製品部分の前記加工プログラム上の加工原点位置を補正する加工原点補正方法において、
前記レーザ照射ユニットに対して前記ノズルの交換を行った後に、前記ノズルから低出力のレーザ光を照射させつつ、ワークの製品部分に対応した箇所に予め形成した基準パンチ穴の中心の前記加工プログラム上の位置を中心としたワークの特定の動作を前記レーザ照射ユニットの照射位置に対して相対的に行うことにより、ワークに前記基準パンチ穴を囲む所定の軌跡を形成する軌跡形成ステップと、
前記軌跡形成ステップの終了後に、前記基準パンチ穴の中心の前記加工プログラム上の位置に基づいて、前記所定の軌跡を含む前記基準パンチ穴の周辺の画像を撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップの終了後に、撮像された前記画像に基づいて、前記画像中における前記所定の軌跡の中心の位置と前記基準パンチ穴の中心の位置とのずれ量を演算するずれ量演算ステップと、
前記ずれ量演算ステップの終了後に、演算された前記ずれ量に基づいて、前記ずれ量がゼロになるようにレーザ加工の基準となる前記加工プログラム上の位置を補正する補正ステップと、を具備し
前記ノズルの交換後に、前記ノズルのノズル径の相違やアシストガスの流れの変化によって実際の照射位置が前記レーザ照射ユニットの照射位置に対してずれてあっても、そのずれを前記加工プログラム上で修正することを特徴とする加工原点補正方法。
【請求項4】
パンチ加工及びレーザ加工は、前記レーザ照射ユニットの他に、前記加工プログラムに基づいてワークに対してパンチ加工を行うためのパンチ加工ユニットを具備した複合タイプのレーザ加工機によって行われることを特徴とする請求項3に記載の加工原点補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状のワークに対してパンチ加工を行った後に、加工プログラムに基づいてワークの製品部分(製品に相当する部分)の輪郭に沿ってレーザ加工を行うレーザ加工機等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、板状のワークに対してパンチ加工とレーザ加工の複合加工を行う複合加工機(複合タイプのレーザ加工機)が広く使用されている。そして、一般的な複合加工機は、ワークに対してパンチ加工を行うためのパンチ加工ユニットと、レーザ光を照射するノズルを着脱可能に備えたレーザ照射ユニットと、レーザ照射ユニットに対してノズルの交換(自動交換)を行うノズル交換ユニットとを具備している。また、一般的な複合加工機は、ワークをパンチ加工ユニットのパンチ加工位置(加工プログラム上の加工位置)及びレーザ照射ユニットの照射位置(加工プログラム上の照射位置)に対して相対的に水平方向へ移動させるワーク移動ユニットを具備している。更に、一般的な複合加工機は、加工プログラムに基づいてパンチ加工ユニット、レーザ照射ユニット、ノズル交換ユニット、及びワーク移動ユニットを制御する制御ユニットを具備している。
【0003】
なお、本発明に関連する先行技術として特許文献1及び特許文献2に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−154383号公報
【特許文献2】特開2013−146733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、レーザ加工を行う前に、ワークの加工条件、材質、厚み等の変更に伴い、ノズル径の異なるノズルに交換することがある。この場合には、ノズル交換ユニットを制御してノズル照射ユニットに対してノズルの交換を行った後に、ノズルのノズル径の相違やアシストガスの流れの変化等によってビーム形状やビームの中心位置が変化して、ノズルの実際の照射位置がレーザ照射ユニットの照射位置(加工プログラム上の照射位置、基準の照射位置)に対してずれが生じることがある。このような場合に、パンチ加工とレーザ加工の複合精度(パンチ基準の複合精度)が低下して、製品の加工精度を十分に向上させることが困難になるという問題がある。
【0006】
なお、前述の問題は、パンチ加工とレーザ加工の複合加工を行う複合加工機だけでなく、別の加工機であるパンチプレスによってワークの製品部分にパンチ加工を行った後に、ワークの製品部分の輪郭に沿ってレーザ加工を行うレーザ加工機においても、同様に生じるものである。
【0007】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成のレーザ加工機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の特徴は、板状のワークに対してパンチ加工(打ち抜き加工、成形加工を含む)を行った後に、加工プログラムに基づいてワークの製品部分(製品に相当する部分)の輪郭に沿ってレーザ加工を行うレーザ加工機において、レーザ光を照射するノズルを着脱可能に備えたレーザ照射ユニット(レーザ照射手段)と、前記レーザ照射ユニットに対して前記ノズルの交換(自動交換)を行うノズル交換ユニット(ノズル交換手段)と、前記レーザ照射ユニットの照射位置(加工プログラム上の照射位置、基準の照射位置)に対する撮像位置(撮像中心の位置、加工プログラム上の撮像位置)が相対的に設定され、前記ノズルの交換の度に、ワークの製品部分に対応した箇所に予め形成した基準パンチ穴の周辺の画像(基準パンチ穴を含む周辺の画像)を撮像する撮像ユニット(撮像手段)と、ワークを前記レーザ照射ユニットの照射位置及び前記撮像ユニットの撮像位置に対して相対的に水平方向(X軸方向及びY軸方向)へ移動させるワーク移動ユニット(ワーク移動手段)と、前記レーザ照射ユニットに対して前記ノズルの交換を行った後に、前記レーザ照射ユニットを制御して前記ノズルから低出力のレーザ光を照射させつつ、前記ワーク移動ユニットを制御して前記基準パンチ穴の中心の前記加工プログラム上の位置(制御位置)を動作中心としたワークの特定の動作(円形状の旋回動作、正多角形状の旋回動作等を含む)を前記レーザ照射ユニットの照射位置に対して相対的に行うことにより、ワークに前記基準パンチ穴を囲む所定の軌跡(けがき線)を形成する軌跡形成部(けがき線形成部)と、前記基準パンチ穴の中心の前記加工プログラム上の位置に基づいて、前記ワーク移動ユニットを制御してワークを前記撮像ユニットの撮像位置に対して相対的に水平方向へ移動位置決めし、前記撮像ユニットを制御して前記所定の軌跡を含む前記基準パンチ穴の周辺の画像を撮像した後に、前記撮像ユニットから前記画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部によって取得した前記画像に基づいて、前記画像中における前記所定の軌跡の中心の位置(画像位置)と前記基準パンチ穴の中心の位置(画像位置)とのずれ量を演算するずれ量演算部と、前記ずれ量演算部によって演算された前記ずれ量に基づいて、前記ずれ量がゼロになるようにレーザ加工の基準となる前記加工プログラム上の位置(加工原点位置)を補正(変更)する原点補正部と、を具備し、前記ノズルの交換後に、前記ノズルのノズル径の相違やアシストガスの流れの変化によって実際の照射位置が前記レーザ照射ユニットの照射位置に対してずれてあっても、そのずれを前記加工プログラム上で修正することを要旨とする。
【0009】
なお、本願の明細書及び特許請求の範囲において、「レーザ加工機」とは、板状のワークに対してレーザ加工のみを行うレーザ加工機の他に、板状のワークに対してパンチ加工とレーザ加工を行う複合加工機も含む意であって、「パンチ加工」とは、打ち抜き加工、成形加工を含む意である。また、「基準パンチ穴」とは、レーザ加工の加工基準となる加工原点位置の補正を行うためのパンチ穴(貫通穴)のことであって、レーザ加工におけるピアスのために開けた穴や製品内、外に開けたパンチ穴でもよい。更に、「低出力のレーザ光」とは、ワークを切断しない程度の出力のレーザ光のことをいう。
【0010】
本発明の第1の特徴によると、レーザ加工の途中に、ワークの加工条件等の変更に伴い、前記ノズル交換ユニットを制御して前記ノズル照射ユニットに対して前記ノズルの交換を行う。
【0011】
前記レーザ照射ユニットに対して前記ノズルの交換を行った後に、前記軌跡形成部は、前記レーザ照射ユニットを制御して前記ノズルから低出力のレーザ光を照射させつつ、前記ワーク移動ユニットを制御して前記基準パンチ穴の中心の前記加工プログラム上の位置を中心としたワークの特定の動作を前記レーザ照射ユニットの照射位置に対して相対的に行う。これにより、ワークに前記所定の軌跡を形成することができる。
【0012】
ワークに前記所定の軌跡を形成した後に、前記基準パンチ穴の中心の前記加工プログラム上の位置に基づいて、前記ワーク移動ユニットを制御してワークを前記撮像ユニットの撮像位置に対して相対的に水平方向へ移動位置決めする。そして、前記撮像ユニットを制御して前記所定の軌跡を含む前記基準パンチ穴の周辺の前記画像を撮像し、前記画像取得部が前記撮像ユニットから前記画像を取得する。
【0013】
前記画像を取得した後に、前記ずれ量演算部は、撮像された前記画像(取得した前記画像)に基づいて、前記画像中における前記所定の軌跡の中心の位置(画像位置)と前記基準パンチ穴の中心の位置(画像位置)とのずれ量を演算する。そして、前記原点補正部は、演算された前記ずれ量に基づいて、前記ずれ量がゼロになるようにレーザ加工の基準となる前記加工プログラム上の位置(制御位置)を補正(変更)する。これにより、ワークの製品部分の前記加工プログラム上の加工原点位置を補正することができる。
【0014】
要するに、前記ノズルの交換を行った後に、ワークに前記所定の軌跡を形成し、前記所定の軌跡を含む前記基準パンチ穴の周辺の前記画像を撮像した上で、撮像された前記画像に基づいて、前記画像中における前記所定の軌跡の中心の位置と前記基準パンチ穴の中心の位置との前記ずれ量を演算し、レーザ加工の基準となる前記加工プログラム上の位置を補正しているため、前記ノズルの実際の照射位置が前記レーザ照射ユニットの照射位置(加工プログラム上の照射位置、基準の照射位置)に対してずれが生じても、そのずれを前記加工プログラム上で修正することができる。
【0015】
本発明の第2の特徴は、板状のワークに対してパンチ加工を行った後に、レーザ光を照射するノズルを着脱可能に備えたレーザ照射ユニットを用い、加工プログラムに基づいてワークの製品部分(製品に相当する部分)の輪郭に沿ってレーザ加工を行う場合に使用される方法であって、ワークの製品部分の前記加工プログラム上の加工原点位置を補正する加工原点補正方法において、前記レーザ照射ユニットに対して前記ノズルの交換を行った後に、前記ノズルから低出力のレーザ光を照射させつつ、ワークの製品部分に対応した箇所に予め形成した基準パンチ穴の中心の前記加工プログラム上の位置(制御位置)を中心としたワークの特定の動作を前記レーザ照射ユニットの照射位置に対して相対的に行うことにより、ワークに前記基準パンチ穴を囲む所定の軌跡(けがき線)を形成する軌跡形成ステップと、前記軌跡形成ステップの終了後に、前記基準パンチ穴の中心の前記加工プログラム上の位置に基づいて、前記所定の軌跡を含む前記基準パンチ穴の周辺の画像を撮像する撮像ステップと、前記撮像ステップの終了後に、撮像された前記画像に基づいて、前記画像中における前記所定の軌跡の中心の位置(画像位置)と前記基準パンチ穴の中心の位置(画像位置)とのずれ量を演算するずれ量演算ステップと、前記ずれ量演算ステップの終了後に、演算された前記ずれ量に基づいて、前記ずれ量がゼロになるようにレーザ加工の基準となる前記加工プログラム上の位置(制御位置)を補正(変更)する補正ステップと、を具備し、前記ノズルの交換後に、前記ノズルのノズル径の相違やアシストガスの流れの変化によって実際の照射位置が前記レーザ照射ユニットの照射位置に対してずれてあっても、そのずれを前記加工プログラム上で修正することを要旨とする。
【0016】
第2の特徴によると、前記ノズルの交換を行った後に、ワークに前記所定の軌跡を形成し、前記所定の軌跡を含む前記基準パンチ穴の周辺の前記画像を撮像した上で、撮像された前記画像に基づいて、前記画像中における前記所定の軌跡の中心の位置と前記基準パンチ穴の中心の位置との前記ずれ量を演算し、レーザ加工の基準となる前記加工プログラム上の位置を補正しているため、前記ノズルの実際の照射位置が前記レーザ照射ユニットの照射位置(加工プログラム上の照射位置、基準の照射位置)に対してずれてあっても、そのずれを前記加工プログラム上で修正することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、前記ノズル交換後の実際の照射位置が前記レーザ照射ユニットの照射位置に対してずれてあっても、そのずれを前記加工プログラム上で修正できるため、前記ノズルの交換後においても、パンチ加工とレーザ加工の複合精度(パンチ基準の複合精度)を高精度に維持して、製品の加工精度を十分に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施形態に係る複合加工機の制御ブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る複合加工機の一連の動作を示すフローチャートである。
図3図3は、本発明の実施形態に係る加工原点補正処理の具体的な内容を示すフローチャートである。
図4図4は、所定の軌跡を含む所定の基準パンチ穴の周辺の画像を示す図である。
図5図5は、図6における矢視部Vの拡大図である。
図6図6は、パンチ加工済みのワークを示す図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る複合加工機の側面図である。
図8図8は、図7におけるVIII-VIII線に沿った平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態について図1から図8を参照して説明する。なお、図面中、「L」は、左方向、「R」は、右方向、「FF」は、前方向、「FR」は、後方向をそれぞれ指している。
【0020】
図7及び図8に示すように、本発明に実施形態に係る複合加工機1は、加工プログラムに基づいて板状のワークWに対してパンチ加工(打ち抜き加工、成形加工を含む)を行うものである。また、複合加工機1は、ワークWに対してパンチ加工を行った後に、加工プログラムに基づいてワークWの複数の製品部分(製品に相当する部分)Mの輪郭に沿ってレーザ加工を行うものである。
【0021】
複合加工機1は、ブリッジ型の加工機本体(本体ベース)3を具備しており、この加工機本体3は、上下に対向した上部フレーム5と下部フレーム7を備えている。また、下部フレーム7には、ワークWをX軸方向(水平方向の1つである左右方向)及びY軸方向(水平方向の1つである前後方向)へ移動自在に支持する固定テーブル9が設けられている。更に、下部フレーム7における固定テーブル9の左右両側には、ワークWをX軸方向へ移動自在に支持する可動テーブル11,13がY軸方向へ移動可能に設けられている。
【0022】
加工機本体3の適宜位置には、加工プログラムに基づいてワークWの複数の製品部分Mにパンチ加工を行うためのパンチ加工ユニット15が設けられている。具体的には、上部フレーム5には、複数の上部金型17を保持する円形状の上部タレット19がその鉛直な軸心周りに回転可能に設けられている。また、下部フレーム7における上部タレット19に上下に対向する位置には、複数の下部金型21を保持する円形状の下部タレット23がその鉛直な軸心周りに回転可能に設けられている。ここで、上部タレット19及び下部タレット23を回転モータ(図示省略)の駆動により同期して回転させることによって、所定の上部金型17及び所定の下部金型21をパンチ加工ユニット15のパンチ加工位置(加工プログラム上のパンチ加工位置)P1に割り出し可能になっている。そして、上部フレーム5における上部タレット19の上方位置には、ラム25が昇降可能(上下方向へ移動可能)に設けられており、このラム25は、昇降シリンダ(図示省略)の駆動により昇降するものである。更に、ラム25には、パンチ加工位置P1に割り出した所定の上部金型17を上方向から打圧するストライカー27が設けられている。
【0023】
パンチ加工ユニット15に離隔した位置には、ワークWに向かってアシストガスを噴射しつつレーザ光を照射するためのレーザ照射ユニット29が設けられている。具体的には、上部フレーム5には、Y軸スライダ31がY軸方向へ移動可能に設けられている。また、Y軸スライダ31には、レーザ照射ヘッド33が設けられており、レーザ照射ヘッド33は、先端側に、アシストガスを噴射しつつレーザ光を照射するノズル35を着脱可能に備えている。また、加工機本体3の近傍には、レーザ光を発振するレーザ発振器37が配設されており、このレーザ発振器37は、レーザ照射ヘッド33に光学的に接続されている。更に、加工機本体3の近傍には、アシストガスを供給するためのアシストガス供給源(図示省略)が配設されており、このアシストガス供給源は、レーザ照射ヘッド33に接続されている。そして、固定テーブル9におけるレーザ照射ヘッド33のY軸方向の移動領域に上下に対向する箇所には、Y軸方向へ延びた長穴39が貫通形成されており、この長穴39は、スクラップ等を回収する回収ユニット(図示省略)に接続されている。
【0024】
加工機本体3の適宜位置には、レーザ照射ヘッド33に対してノズル35の交換(自動交換)を行うノズル交換ユニット41が配設されている。また、ノズル交換ユニット41は、例えば、特許第4177343号公報に示す公知の構成からなるものであって、複数のノズル35を収納するノズルストッカ(図示省略)を備えている。
【0025】
レーザ照射ヘッド33の側部には、撮像ユニットとしてのCCDカメラ43が設けられており、このCCDカメラ43は、ノズル35の交換の度に、ワークWの製品部分Mに対応した箇所にパンチ加工ユニット15によって予め形成した基準パンチ穴Whの周辺の画像G(図4参照)を撮像するものである。また、レーザ照射ヘッド33の照射位置(加工プログラム上の照射位置)P2とCCDカメラ43の撮像位置(カメラ中心の位置、加工プログラム上の撮像位置)P3との距離は、例えば特許文献1及び特許文献2に示す公知の手法によってキャリブレーションされており、換言すれば、レーザ照射ヘッド33の照射位置(レーザ照射ユニット29の照射位置)P2に対するCCDカメラ43の撮像位置P3は、相対的に設定されている。
【0026】
固定テーブル9及び上部フレーム5等に亘って、ワーク移動ユニット45が設けられており、このワーク移動ユニット45は、ワークWをパンチ加工ユニット15のパンチ加工位置P1、レーザ照射ヘッド33の照射位置P2、及びCCDカメラ43の撮像位置P3に対して相対的にX軸方向及びY軸方向へ移動させるものである。具体的には、一方の可動テーブル11の前部と他方の可動テーブル13の前部の間には、X軸方向へ伸びたキャレッジベース47が連結するように設けられており、上部フレーム5の適宜位置には、キャレッジベース47を一対の可動テーブル11,13と一体的にY軸方向へ移動させるための第1Y軸モータ49が設けられている。また、キャレッジベース47には、キャレッジ51がX軸方向へ移動可能に設けられており、キャレッジベース47の適宜位置には、キャレッジ51をX軸方向へ移動させるためのX軸モータ53が設けられている。更に、キャレッジ51には、ワークWの端部を把持する複数のクランパ55が設けられている。そして、上部フレーム5の適宜位置には、Y軸スライダ31をY軸方向へ移動させるための第2Y軸モータ57が設けられている。
【0027】
図1に示すように、複合加工機1は、パンチ加工ユニット15及びレーザ照射ユニット29等の他に、制御ユニット(NC制御ユニット)59を具備しており、この制御ユニット59は、加工プログラムに基づいてパンチ加工ユニット15、レーザ照射ユニット29、ノズル交換ユニット41、CCDカメラ43、及びワーク移動ユニット45を制御するものである。また、制御ユニット59は、加工プログラム、金型情報等を記憶するメモリと、加工プログラムを解釈して実行するCPUとを備えている。そして、制御ユニット59のCPUは、軌跡形成部(けがき線形成部)61としての機能、画像取得部63としての機能、ずれ量演算部65としての機能、原点補正部67としての機能を有している。
【0028】
ここで、図1図4、及び図5に示すように、軌跡形成部61は、レーザ照射ヘッド33に対してノズル35の交換を行った後に、レーザ発振器37を制御してノズル35から低出力のレーザ光を照射させつつ、第1Y軸モータ49及びX軸モータ53等を制御して基準パンチ穴Whの中心Whcの加工プログラム上の位置(制御位置)を動作中心としたワークWの円形状の旋回動作をレーザ照射ヘッド33の照射位置P2に対して相対的に行うことにより、ワークWに所定の基準パンチ穴Whを囲む所定の軌跡(けがき線)Sを形成するものである。ここで、所定の基準パンチ穴Whとは、ノズル35の交換後(交換直後)にレーザ加工の対象となる所定の製品部分Mに対応する箇所に形成された基準パンチ穴Whのことをいう。なお、ワークWの円形状の旋回動作の代わりに、ワークWの正多角形状の旋回動作等、ワークWの別の特定動作を行うようにしても構わない。
【0029】
画像取得部63は、基準パンチ穴Whの中心の加工プログラム上の位置に基づいて、第1Y軸モータ49及びX軸モータ53等を制御してワークWをCCDカメラ43の撮像位置P3に対して相対的にX軸方向及びY軸方向へ移動位置決めし、CCDカメラ43を制御して所定の軌跡Sを含む所定の基準パンチ穴Whの周辺の画像を撮像した後に、CCDカメラ43から画像Gを取得するものである。また、ずれ量演算部65は、画像取得部63によって取得した画像Gに基づいて、画像G中における所定の軌跡Sの中心Scの位置(画像位置)と所定の基準パンチ穴Whの中心Whcの位置(画像位置)とのずれ量(ΔX,ΔY)を演算するものである。また、原点補正部67は、ずれ量演算部65によって演算されたずれ量(ΔX,ΔY)に基づいて、ずれ量がゼロになるようにレーザ加工の基準となる加工プログラム上の位置(制御位置)を補正(変更)するものである。
【0030】
続いて、複合加工機1の一連の動作について図2等を参照して説明する。
【0031】
加工プログラムに基づいて第1Y軸モータ49及びX軸モータ53等を制御してワークWをパンチ加工ユニット15のパンチ加工位置P1に対してX軸方向及びY軸方向へ移動位置決めしつつ、パンチ加工ユニット15を制御してワークWに対してパンチ加工を行う(図2におけるステップ101)。これにより、図5及び図6に示すように、ワークWの各製品部分Mに対応する箇所に基準パンチ穴Whを形成すると共に、ワークWの各製品部分Mに製品穴Mh等を形成することができる。
【0032】
ワークWに対してパンチ加工を行った後でかつレーザ加工を行う前に、ワークWの加工条件に伴い、ノズル交換ユニット41を制御してレーザ照射ヘッド33に対してノズル35の交換(自動交換)を行った場合には(図2におけるステップ102)、加工原点補正処理を実行する(図2におけるステップ103)。なお、加工原点補正処理の具体的な内容については、後述する。
【0033】
ワークWに対してパンチ加工を行った後(ノズル35の交換を行った場合には、加工原点補正処理を実行した後)に、ワークWに対してーザ加工を行う(図2におけるステップ104)。具体的には、加工プログラムに基づいてX軸モータ53及び第2Y軸モータ57等を制御してワークWをレーザ照射ヘッド33の照射位置P2に対してX軸方向及びY軸方向へ移動位置決めしつつ、レーザ照射ユニット29を制御することにより、ワークWの複数の製品部分Mの輪郭に沿ってレーザ加工を行う。
【0034】
そして、ワークWの複合加工(レーザ加工)を終了した後に(図2におけるステップ105)、目標枚数のワークWの複合加工が終了するまで、ステップ101からステップ105までの処理を繰り返して実行する(図2におけるステップ106)。
【0035】
続いて、複合加工機1の一連の動作のうちの加工原点補正処理の具体的な内容、換言すれば、本発明の実施形態に係る加工原点補正方法について図3等を参照して説明する。ここで、本発明の実施形態に係る加工原点補正方法は、加工プログラムに基づいてワークWに対してパンチ加工を行った後に、加工プログラムに基づいてワークWの複数の製品部分Mの輪郭に沿ってレーザ加工を行う場合に使用される方法であって、ワークWの製品部分Mの加工プログラム上の加工原点位置を補正する方法である。
【0036】
レーザ照射ヘッド33に対してノズル35の交換を行った後に、レーザ発振器37を制御してノズル35から低出力のレーザ光を照射させつつ、第1Y軸モータ49及びX軸モータ53等を制御して所定の基準パンチ穴Whの中心Whcの加工プログラム上の位置(制御位置)を動作中心としたワークWの円形状の旋回動作をレーザ照射ヘッド33の照射位置P2に対して相対的に行う。これにより、ワークWに所定の基準パンチ穴Whを囲む所定の軌跡(けがき線)Sを形成することができる(図3におけるステップ201(軌跡形成ステップ)、図4参照)。なお、所定の基準パンチ穴Whとは、レーザ加工の対象となる所定の製品部分Mに対応する箇所に形成された基準パンチ穴Whのことをいう。
【0037】
ワークWに所定の軌跡Sを形成した後に、所定の基準パンチ穴Whの中心の加工プログラム上の位置に基づいて、第1Y軸モータ49及びX軸モータ53等を制御してワークWをCCDカメラ43の撮像位置P3に対して相対的にX軸方向及びY軸方向へ移動位置決めする。そして、CCDカメラ43を制御して所定の軌跡Sを含む所定の基準パンチ穴Whの周辺の画像Gを撮像し(図3におけるステップ202(撮像ステップ))、画像取得部63がCCDカメラ43からその画像Gを取得する(図3におけるステップ203)。
【0038】
画像取得部63が画像Gを取得した後に、ずれ量演算部65は、撮像された画像(取得した画像)Gに基づいて、画像G中における所定の軌跡Sの中心Scの位置(画像位置)と所定の基準パンチ穴Whの中心Whcの位置(画像位置)とのずれ量(ΔX,ΔY)を演算する(図3におけるステップ204(ずれ量演算ステップ)、図4参照)。そして、原点補正部67は、演算されたずれ量(ΔX,ΔY)に基づいて、ずれ量(ΔX,ΔY)がゼロになるようにレーザ加工の基準となる加工プログラム上の位置(制御位置)を補正(変更)する(図3におけるステップ205(補正ステップ))。これにより、ワークWの所定の製品部分Mの加工プログラム上の加工位置を補正することができる。
【0039】
続いて、本発明の実施形態の作用及び効果について説明する。
【0040】
ノズル35の交換を行った後に、ワークWに所定の軌跡Sを形成し、所定の軌跡Sを含む所定の基準パンチ穴Whの周辺の画像Gを撮像した上で、撮像された画像Gに基づいて、画像G中における所定の軌跡Sの中心Scの位置と所定の基準パンチ穴Whの中心Whcの位置とのずれ量(ΔX,ΔY)を演算し、レーザ加工の基準となる加工プログラム上の位置を補正しているため、ノズル35の交換後に、ノズル35の実際の照射位置がレーザ照射ヘッド33の照射位置(加工プログラム上の照射位置、基準の照射位置)に対してずれてあっても、そのずれを加工プログラム上で修正することができる。
【0041】
従って、本発明の実施形態によれば、ノズル35の交換後においても、パンチ加工とレーザ加工の複合精度(パンチ基準の複合精度)を高精度に維持して、製品の加工精度を十分に向上させることができる。
【0042】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、複合加工機1だけでなく、別の加工機であるパンチプレス(図示省略)によってワークWの製品部分Mにパンチ加工を行った後に、ワークWの製品部分Mの輪郭に沿ってレーザ加工を行うレーザ加工機(図示省略)にも及ぶものある。
【符号の説明】
【0043】
W ワーク
Wh 基準パンチ穴
M 製品部分
Mh 製品穴
P1 パンチ加工位置
P2 照射位置
P3 撮像位置
S 軌跡
G 画像
1 複合加工機
3 加工機本体
15 パンチ加工ユニット
29 レーザ照射ユニット
33 レーザ照射ヘッド
35 ノズル
37 レーザ発振器
41 ノズル交換ユニット
43 CCDカメラ
45 ワーク移動ユニット
49 第1Y軸モータ
53 X軸モータ
57 第2Y軸モータ
59 制御ユニット
61 軌跡形成部
63 画像取得部
65 ずれ量演算部
67 原点補正部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8