(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ドア開放時のエレベーターの出入口に形成される乗車空間における障害物を検出するためのセンサ部を備え、前記センサ部は各々が垂直方向に配列される少なくとも一つの発光端子及び複数の受光端子を有し、前記少なくとも一つの発光端子及び前記複数の受光端子間において、前記複数の受光端子を基準として前記乗車空間を挟んだ複数の光送信経路を形成し、
同時刻に少なくとも二つの光送信経路が遮断された後において、予め定められた検出時間以内の前記光送信経路単位の遮光状態の時系列変化に基づき、紐状物体検知処理を実行する、少なくとも一つの検知手段をさらに備える、
紐状物体検知装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<装置構成>
本明細書において、乗客が乗降するエレベーターの筐体のことを、「かご」と呼ぶ。
図1は、本実施の形態に係る紐状物体検知装置2を含むエレベーターシステムの構成を示すブロック図である。
【0017】
図1のエレベーター制御装置1は制御手段15を備えており、制御手段15はマイクロコンピュータが実行可能なソフトウェア(プログラム)によって構成(実現)されている。また、エレベーター制御装置1は、紐状物体検知装置2と電気的に接続されており、検知結果S2等の信号授受が可能である。
【0018】
エレベーター制御装置1の制御手段15は紐状物体検知装置2からの検知結果S2に基づくドアの開閉制御及び告知処理部9を用いた告知処理の実行制御を行う。
【0019】
図1で示す紐状物体検知装置2は、第1検知手段21、第2検知手段22、及び第3検知手段23を内部に備えており、外部にドアセンサ部10を有している。したがって、本実施の形態の紐状物体検知装置として広義には紐状物体検知装置2及びドアセンサ部10を含む構成を意味する。
【0020】
各検知手段21〜23は、マイクロコンピュータが実行可能なソフトウェア(プログラム)によって構成(実現)されている。そして、紐状物体検知装置2は外部のドアセンサ部10からのセンス信号S10を受信することができる。また、紐状物体検知装置2はエレベーター制御装置1と電気的に接続されており、上述したように検知結果S2をエレベーター制御装置1に送信することができる。
【0021】
なお、
図1ではドアセンサ部10を模式的に示している。ドアセンサ部10は発光端子群30および受光端子群40を有しており、発光端子群30および受光端子群40は、ドア5の開放時にエレベーターの出入口に形成される乗車空間8を挟んで左右に設けられる。
【0022】
図2は
図1で示したドアセンサ部10を構成する発光端子群30および受光端子群40の詳細を示す説明図である。
図2ではXY直交座標系を併せて示している。同図に示すように、エレベーター乗場において、かご用のドア5a及び5bの両端側に側壁部11及び12が設けられ、上部に天井部13が設けられている。したがって、側壁部11,12によって挟まれる空間(領域)がドア5a及び5bの開放時にかごの出入り口となる乗車空間8となる。
【0023】
同図に示すように、発光端子群30及び受光端子群40は側壁部11及び12に設けられる。そして、発光端子群30はかごの出入り口のドア5a及び5bの開閉方向(水平方向(X方向))に垂直な方向(鉛直方向(Y方向))に一直線上に並べられた複数の発光端子3から構成されている。同様にして、受光端子群40は鉛直方向に一直線上に並べられた複数の受光端子4から構成される。なお、発光端子3としては例えば赤外線LEDが考えられ、受光端子4としては例えばフォトダイオード等が考えられる。
【0024】
複数の発光端子3及び複数の受光端子4は鉛直方向(Y方向)に沿って形成され、対応する発光端子3,受光端子4間において同一位置(Y座標が同一)になるように略等間隔で設けられる。
【0025】
したがって、側壁部11,側壁部12間の乗車空間8に乗客等の障害物が存在しない場合、発光端子3から発光される赤外線等の光を受光端子4にて受光することができる光送信経路RTが形成される。すなわち、
図2に示すように、発光端子群30,受光端子群40間において水平方向に複数の光送信経路RTが形成される。このように、ドアセンサ部10によって、複数の受光端子4(複数の発光端子3)を基準として乗車空間8を挟んだ複数の光送信経路RTが形成される。
【0026】
上述したように、ドアセンサ部10は乗車空間8における乗客等の障害物の有無を検知する一般的なドアセンス機能を基本的に有している。すなわち、複数の光送信経路RTの一部が遮断状態となると乗客等の障害物が存在したことを認識することができる。
【0027】
なお、側壁部11及び側壁部12はエレベーター乗場側に設けられたドアの閉方向端面であっても良く、乗場側のドアとかご側のドア5(5a,5b)との間あるいは近傍に設けられた固定された側壁部であっても良い。
【0028】
図2で示した例及び上述した例では、エレベーター乗場側(エレベーター乗場側のドアを含む)にドアセンサ部10(発光端子群30及び受光端子群40)を設けた構成を示したが、エレベーター乗場側ではなく、かごのドア側(ドア5a及び5b)にドアセンサ部10を設けても良い。
【0029】
図3はドア5a及び5bの開放時の状態を模式的に示す説明図である。例えば、
図3に示すように、ドア5a及び5bの閉方向端面5ap及び5bp(矩形板状に形成された2枚のドア5a、5bの接続面)に発光端子群30及び受光端子群40に相当する受発光端子を設けても良い。
【0030】
かご側のドア5にドアセンサ部10相当の構成を設けた場合、ドアセンサ部10はかごの移動と共に移動するため、各階のエレベーター乗場側にドアセンサ部10相当の構成を設ける必要性は無くなる。
【0031】
上述したように、発光端子群30および受光端子群40に相当する受発光端子群の構成は多様に考えられる。すなわち、かご用のドア5a及び5bの開放時のエレベーター(かご)の出入口に形成される乗車空間8を複数の光送信経路RTが横断し、その遮断状態(遮光/非遮光状態)が検出可能であれば、エレベーター乗場側及びかご側のいずれに発光端子群30及び受光端子群40を設けても良い。
【0032】
また、発光端子群30および受光端子群40は、上述したように、複数の発光端子3及び複数の受光端子4によって構成されるが一般的であるが、発光端子3および受光端子4は、必ずしも1対1に対応している必要はない。発光側がビームを広角に発射することで、1つの発光端子と、複数の受光端子との間に、複数の光送信経路RTが形成されたのと等価となる。すなわち、複数の受光端子を基準として乗車空間を挟んだ複数の光送信経路RTが形成される。そして、複数の受光端子の受光状態から、複数の光送信経路RTの計測結果(遮断状態)を測定することが可能であり、上記構成のドアセンサ部10と紐状物体検知装置2とからなる本実施の形態の広義の紐状物体検知装置を実現することができる。
【0033】
エレベーター制御装置1の制御手段15は、紐状物体検知装置2の検知結果S2に基づき、エレベーターのドア5の開閉動作等を適切に制御する。例えば、検知結果S2が紐状物体の検知を指示するときは、かごの停止時にドア5a及び5bの開放時間(以後、「戸全開時間」と称する場合あり)を延長する開放時間延長処理、音声アナウンス部やLCDなどのディスプレイ表示部等により構成される告知処理部9によって紐状物体がドア付近(乗車空間)に存在することを注意喚起する告知処理、あるいはドアを閉める速度(以後、「戸閉速度」と称する場合あり)を低速にする戸閉低速化処理等の紐状物体検知時対応処理が可能となる。
【0034】
第1検知手段21、第2検知手段22、および第3検知手段23はそれぞれ、ドアセンサ部10の発光端子群30,発光端子群30間における複数の光送信経路RTそれぞれの遮光/非遮光状態を指示するドアセンス信号S10の時系列変化に基づき、紐状物体がドア開放時における乗車空間8に存在するか否かを検知する。第1検知手段21、第2検知手段22、及び第3検知手段23は、後に詳述するようにそれぞれ異なる検知方法または異なる検知条件で紐状物体を検知している。
【0035】
<第1検知手段21>
次に、紐状物体検知装置2の動作についてより詳細に説明する。
図4は、本実施の形態に係る
図1で示した紐状物体検知装置2の第1検知手段21による検知動作を示すフローチャートである。
【0036】
同図を参照して、ステップST10において、検出回数NKを“0”に初期設定した後、続くステップST11において、第1検知手段21は、ドアセンサ部10からドアセンス信号S10を受信し、複数の光送信経路RTの遮断状態(遮光/非遮光状態)を認識する。
【0037】
図5は、ドアセンス信号S10の指示内容例を模式的に示す説明図である。同図において、縦軸は、複数の光送信経路RTの高さ(経路高さ)を示しており、横軸は、時刻を示している。時刻t1,t2はドアセンス信号S10を受信(サンプリング)したタイミングを示している。
【0038】
複数の光送信経路RTはそれぞれ
図2に示すように対応する発光端子3,受光端子4間で水平方向(X方向)に沿って形成されているため、光送信経路RTの高さは対応する発光端子3および受光端子4の鉛直方向の位置(形成高さ)に一致する。
図5において、上方の光送信経路RTは高い位置に設けられていることを示す。なお、複数の光送信経路RTにおいて遮光されている経路RTxは黒丸で、非遮光の経路は白丸で示している。以下、説明の都合上、光送信経路RTの高さを単に「経路高さ」と称する場合がある。
【0039】
なお、発光側がビームを広角に発射して、1つの発光端子と、複数の受光端子との間に、複数の光送信経路RTが形成される場合、光送信経路RTの経路高さは発光端子,受光端子間の水平方向の位置によって異なるため、例えば、複数の受光端子の設置位置を代表値として経路高さとして用いる等の対応が考えられる。
【0040】
上記したステップST11では、第1検知手段21は、ドアセンス信号S10に基づき、あるサンプリング時刻(
図5の時刻t1,t2等)の複数の光送信経路RTそれぞれの遮光/非遮光状態を経路高さと共に受信する。例えば、時刻t1の場合、経路高さが異なる5つの光送信経路RTに関し、鉛直方向の下方から遮光、非遮光、遮光、遮光、遮光が検知され、高さ方向に4つの光送信経路RTが遮光されている空間方向塊G1を認識することができる。
【0041】
ステップST12において、第1検知手段21は光送信経路RTが遮光される部分の塊の有無を検知する。「塊」とは、同時刻に鉛直方向において少なくとも二つの光送信経路RTが遮光されている場合、あるいは少なくとも一つの光送信経路RTが時間方向あるいは時空間方向に連続して遮光されて場合を意味する。
【0042】
例えば、時刻t1における空間方向塊G1のように、
図5の縦軸方向(空間方向)、すなわち、同時刻t1おいて、鉛直方向に遮光状態の光送信経路RTが複数存在するということは、鉛直方向に幅を持った物体が乗車空間8に存在することと判断し、「塊」が存在すると認識する。
【0043】
さらに、時刻t1,t2間における時間方向塊G2のように時間方向に同一の光送信経路RTが連続している場合、時刻t1,t2間における時空方向塊G3のように時空間方向(空間方向及び時間方向;
図5中の斜め方向)に連続している場合(つまり、隣接する光送信経路RTが連続時間で遮光状態の場合)は、水平方向に幅を持った物体が乗車空間8を通過したと判断し、「塊」が存在すると認識する。
【0044】
なお、少なくとも一つの光送信経路RTが時間方向あるいは時空間方向に連続して遮光されて場合に「塊」と認識する場合は、紐状物体により時間方向あるいは時空間方向に連続して光送信経路RTを遮光することが無い程度の時間間隔でドアセンス信号S10をサンプリングすることが望ましい。
【0045】
したがって、空間方向に少なくとも二つの光送信経路RTが遮光されている第1の遮光状態、時間方向に連続して少なくとも一つの光送信経路RT(同一の光送信経路RT)が遮光されている第2の遮光状態、あるいは時空間方向に連続して少なくとも一つの光送信経路RT(隣接する光送信経路RT)が遮光されている第3の遮光状態が存在すると、第1検知手段21は塊有りと検出し(YES)、第1〜第3の遮光状態のいずれもが存在しない場合、第1検知手段21は塊無しを検出する(NO)。なお、第2及び第3の遮光状態の検出には、
図5における時刻t2に対する時刻t1のように、直近過去のドアセンス信号S10を保持する機能を第1検知手段21が有する必要がある。
【0046】
また、ステップST12において、上記第1の遮光状態のみを「塊」として認識するに留め、上記第2及び第3の遮光状態は「塊」と認識しない対応も考えられる。すなわち、本実施の形態では、同時刻に鉛直方向において少なくとも二つの光送信経路RTが遮光されている第1の遮光状態時は少なくとも「塊」であると判断する。
【0047】
そして、ステップST12がYESの場合は経過時間のカウントを開始してステップST13に移行し、NOの場合はステップST11に戻り、新たなドアセンス信号S10を受信する。なお、
図5では、時刻t2で時間方向塊G2,時空方向塊G3等の塊が検出され、次のドアセンス信号S10の受信タイミングである時刻t2から経過時間が開始された状態を示している。
【0048】
ステップST13において、第1検知手段21は、上記経過時間を計測する。経過時間が予め設定された閾値(N(秒))以内である場合(YES)は、ステップST14に進み、経過時間が閾値Nを超える場合(NO)は、ステップST10に戻り、検出回数NKが“0”に再びセットされる。
【0049】
紐状物体検知装置2は、ドア5a及び5bが開放状態の期間内に紐状物体を検知しなければ、乗車空間8に存在する紐状物体がドア5a及び5bに挟まれる懸念現象を減らすことができない。通常、エレベーターは、がご内に設けられる戸閉ボタンを押さなければ、ドア5a及び5bが全開した開放状態から、予め定められた戸全開時間の経過後に、ドア5a及び5bを閉状態とする戸閉処理を開始する。
【0050】
したがって、ステップST13で利用する閾値Nは、上記戸全開時間以下の時間に設定することが望ましい。また、ドア5a及び5bが全開した開放状態の開始時から、ステップST12にて塊を検出するまでに要した時間を塊検出時間TSとすると、上記戸全開時間に塊検出時間TSを差し引いた時間が残存戸全開予定時間となる。したがって、ステップST13で利用する閾値Nは上記残存戸全開予定時間よりも短い時間が望ましい。
【0051】
ステップST13でYESの場合に実行されるステップST14において、第1検知手段21は、複数の光送信経路RT(仮にW個とする)のうち鉛直方向の位置が下からL(L<W)番目以内の一の光送信経路RTのみが遮光された一経路遮光状態の有無を検知する。ここで、「一経路遮光状態」とは、
図6に示すように、空間方向に一つの光送信経路RTxのみ遮光され、かつ、遮光された光送信経路RTxを基準として時間方向及び時空間方向のいずれにおいても隣接して遮光された光送信経路RTxが存在しないことを意味する。以下、説明の都合上、一経路遮光状態が検知された光送信経路RTの高さを単に「遮光経路高さ」と称する場合がある。
【0052】
なお、空間方向に一つの光送信経路RTxのみ遮光された状態のみ一経路遮光状態として、時間方向及び時空間方向の連続性は考慮しない態様も考えられる。したがって、本実施の形態では、一経路遮光状態は、複数の光送信経路RTのうち一の光送信経路のみが同時刻で遮断状態となる場合を少なくとも含んでいる。
【0053】
ステップST14において、遮光経路高さがL番目以下の一経路遮光状態が検知された場合(YES)は、ステップST15に進み、遮光経路高さがL番目以下の一経路遮光状態が検知されなかった場合(NO)は、ステップST18へ進む。
【0054】
ステップST14でNOの場合、あるいは後述するステップST16でNOの場合に実行されるステップST18において、第1検知手段21は、前回、ドアセンス信号S10を受信してから、1サンプリング周期後の新たなドアセンス信号S10を受信した後、ステップST13に戻る。
【0055】
一方、ステップST14でYESの場合に実行されるステップST15において、第1検知手段21は、遮光経路高さがL番目以下の一経路遮光状態が検知された回数として検出回数NKを“1”増やした後、ステップST16に進む。
【0056】
ステップST16において、検出回数NKと予め定められた閾値M(≧2)とを比較する。検出回数NKが閾値M以上であれば(YES)、ステップST17へ進み、検出回数NKが閾値M未満であれば(NO)、ステップST18へ進む。以降、ステップST13で経過時間が閾値N秒を超えるか(NO)、ステップST16で検出回数NK≧閾値Mとなる(YES)まで、ステップST13〜ST16及びST18間のループが繰り返される。
【0057】
なお、ステップST15およびステップST16では遮光経路高さがL番目以下の一遮光状態の検知回数が閾値以上の条件で評価しているが、遮光経路高さがL番目以下の一遮光状態の検知合計時間が一定時間以上の条件で評価しても良い。例えば、ステップST15において、ステップST14でYESになる度にサンプリング周期を加算することにより、初期値“0”から検知合計時間NTを計測する。そして、ステップST16において、検知合計時間NTと予め定められた閾値時間MTとを比較し、検知合計時間NTが閾値時間TM以上であれば(YES)、ステップST17へ進み、検知合計時間NTが閾値時間TM未満であれば(NO)、ステップST18へ進むようにしても良い。なお、検知合計時間NTを計測する際、一度でもステップST14においてNOとなった場合、検知合計時間NTを“0”にリセットして、検知合計時間NTに連続性を持たせても良い。
【0058】
さらに、ステップST15およびステップST16における検知回数NKは連続性が問われなかったが、遮光経路高さがL番目以下の一遮光状態の検知回数が連続して閾値以上の条件で評価するようにしても良い。例えば、ステップST15において遮光経路高さがL番目以下の一経路遮光状態が最初に検知されてから、一度でも、ステップST14において、遮光経路高さがL番目以下の一経路遮光状態が検知されなかった場合(NO)は、検出回数NKを“0”にリセットするようにしても良い。この場合、検出回数NKは連続性を有する連続検出回数として機能し、予め定められた(連続検出回数用の)閾値Mとが比較されることになる。
【0059】
ステップST16でYESの場合に実行されるステップST17において、第1検知手段21は、乗車空間に紐状物体が存在する、すなわち、紐状物体がドア(開閉領域)を跨いでいるものと判定し、紐状物体の検知を指示する検知信号S21を検知結果S2としてエレベーター制御装置1に出力する。
【0060】
一般的に、発光端子群30における複数の発光端子3間の端子間距離d3(
図2参照)は、紐状物体の太さよりも十分広いため、紐状物体が複数の光送信経路RTを同時に遮光することはない。したがって、一経路遮光状態が検知される(ステップST14)場合、紐状物体である可能性が高い。
【0061】
しかしながら、発光端子3あるいは受光端子4の汚れなどにより、一経路遮光状態が検知される可能性を存在するため、紐状物体として正確に検知する条件を追加しなければ、誤検知が多いという課題が残存してしまう。
【0062】
紐状物体が開放状態のドアにより形成された乗車空間に存在するということは、ペットと飼い主が、エレベーター乗場とかご内とに別れている状況であると推測できる。したがって、ペットか飼い主のどちらか一方が、紐状物体より先に乗車空間を通過していることになる。
【0063】
したがって、本実施の形態の第1検知手段21では、一経路遮光状態の有無に基づく紐状物体の検知処理(紐状物体検知処理)を開始する検知開始条件として、上述した第1〜第3の遮断状態の有無に基づく、塊有り(ペットや飼い主の存在有り)の条件である塊物体検知条件を課し、さらに、塊有りの検知後の経過時間が閾値N以内である(ステップST12〜ST13)という時間条件を課している。
【0064】
また、飼い主とペットを繋ぐ紐(リード)等の紐状物体は、複数の光送信経路RTのうち、鉛直方向上方に位置する光送信経路RTを通過することは少ない。したがって、本実施の形態の第1検知手段21では、複数の光送信経路RTのうち鉛直方向において下方からL番目以内の光送信経路RTにおいて一経路遮光状態となった時のみに、検出回数NKをインクリメントして紐状物体の可能性を高めるという、検知位置条件を課している。
【0065】
さらに、遮光経路高さがL番目以下の一経路遮光状態の検出回数NKが、1回だけだと、突発的な埃等を紐状物体として検知する可能性がある。そこで、本実施の形態の第1検知手段21では、検出回数NKが閾値M(≧2)以上となったときに、紐状物体として検知するという、検出回数要件を課している。
【0066】
この際、検出回数NKを連続性を有する連続検出回数とした検出回数要件を課しても良い。また、上述したように、検知合計時間NTが閾値時間MT以上になったときに、紐状物体として検知するという、検出時間要件を検出回数要件に代えて課しても良い。すなわち、紐状物体検知処理における紐状物体検知条件として上述した検出回数要件(連続性有り、連続性無し)及び検出時間要件を用いることができる。
【0067】
このように、実施の形態1の紐状物体検知装置2における第1検知手段21は、水平方向のビーム等で形成される複数の光送信経路RTを利用する既存のドアセンサと同等なハードウェア構成のドアセンサ部10を用いながら、紐状物体検出用の種々条件(上記した検知開始条件、時間条件、検知位置条件及び検出回数要件(検出時間要件))を設定した紐状物体検出処理を実行することにより、紐状物体を正確かつ迅速に検知することができるという効果を奏する。
【0068】
上述したように、本実施の形態の紐状物体検知装置2おける第1検知手段21は、ドアセンサ部10によって形成される複数の光送信経路RTの遮断状況(遮光/非遮光状態)の時間変化に基づき、紐状物体を検知することができる。
【0069】
この際、上述したように、既存のドアセンサと同等なハードウェア構成のドアセンサ部10を用いながら、ハードウェア構成を複雑化することなく紐状物体検知装置2を得ることができる。
【0070】
さらに、第1検知手段21は、同時刻に少なくとも二つの光送信経路RTが遮断される第1の遮断状態時等に塊の存在を認識することにより、乗客,ペット等のエレベーターへの乗車時あるいは降車時を検知した後に、一経路遮光状態の時間変化による紐状物体検知処理(
図4のステップST13以降の処理)を実行することにより、精度良く紐状物体を検知することができる。
【0071】
さらに、エレベーターの停止時におけるドアの開放時間である戸全開時間や上記残存戸全開予定時間以内に検出時間の閾値Nを設定することにより、乗客のエレベーターの乗降に影響を与えることなく、紐状物体を検知することができる。
【0072】
そして、紐状物体が2つ以上の光送信経路を同時に遮光する可能性が実質的に無い等の特性を考慮して、紐状物体検知処理時において一経路遮光状態のみを検出対象とすることにより、ドアセンサ部10からのドアセンス信号S10に基づき、精度良く、紐状物体を検知することができる。
【0073】
加えて、第1検知手段21は、紐状物体は相対的に乗車空間の下方に存在する傾向を考慮した処理(
図4のステップST14で複数の光送信経路RTのうち下からL番目以内の一の光送信経路RTのみが遮光された一経路遮光状態の検出回数NKに基づく処理)を行うことにより、効率的に紐状物体を検知することができる。
【0074】
<第2検知手段22>
図7は、本実施の形態に係る
図1の紐状物体検知装置2における第2検知手段22の検知動作を示すフローチャートである。
【0075】
同図を参照して、ステップST20において、総スコアACを“0”に初期設定した後、続くステップST21において、第2検知手段22は、
図4で示した第1検知手段21におけるステップST11と同様にドアセンサ部10からドアセンス信号S10を受信する。
【0076】
その後、ステップST22において、第2検知手段22は、
図4のステップST12と同様に塊の有無を検知する。塊有りが検知された場合(YES)はステップST20に戻り、塊無しが検知された場合(NO)はステップST23に進む。したがって、ステップST22において塊有りが検出される毎に、ステップST20にて総スコアACは“0”にセットされる。
【0077】
ステップST22でNOの場合に実行されるステップST23において、第2検知手段22は、遮光経路高さ(一経路遮光状態が検知された光送信経路RTの高さ)に基づく加算スコアSCを算出し、算出した加算スコアSCを総スコアAC(AC=AC+SC)に加算する。
【0078】
図8は加算スコアSC算出用の換算関数FS(i)の一例を示すグラフである。同図において、横軸を加算スコアSC、縦軸を遮光経路高さとしている。
【0079】
図8で示す換算関数FS(i)を利用することにより、遮光経路高さiに基づき加算スコアSCを算出することができる。換算関数FS(i)として、切断正規分布の確率密度関数f(i)を用いても良い。確率密度関数f(i)は切断正規分布の平均値(ave)、標準偏差σと、上限値(ceil)と下限値(bottom)によって一意に決まる。例えば、遮光経路高さの平均(ave)と標準偏差(σ)を事前の実験から求める。紐状物体が存在する場合、がごやエレベーター乗場の床よりも低い位置に存在することは無いため、下限値(bottom)は“0”、もしくは最も低い経路高さに設定できる。一方、上限値(ceil)は、ドア5a及び5bの高さとしても良いし、最も高い位置の経路高さとしてもよいし、紐状物体が遮光可能と想定される最も高い経路高さとしても良い。これら平均値(ave)、標準偏差σ、上限値(ceil)および下限値(bottom)により確率密度関数f(i)が決まる。したがって、確率密度関数f(i)のパラメータとして遮光経路高さiを代入することで、加算スコアSCを算出することができる。なお、加算スコアSCは、必ずしも
図8に示す換算関数FS(i)に従う必要はない。また、遮光経路高さに関係なく加算スコアSCを固定値に設定することも考えられる。
【0080】
一般的に、複数の発光端子3(受光端子4)の設置間隔(端子間距離d3(
図2参照))は、紐の太さよりも十分広いため、紐が複数の光送信経路RTを同時に遮光することはない。したがって、ステップST23において、一経路遮光状態を検知したときに、紐状物体の存在可能性を示す総スコアACに、加算スコアSCを加算する処理を行っている。
【0081】
また、全ての光送信経路RTが非遮光状態である全非遮光状態の場合においても、総スコアACに加算された直近の加算スコアSCに基づいて、新たな加算スコアSCを算出するようにしても良い。
【0082】
例えば、時刻t1において一経路遮光状態時となり遮光経路高さiに基づく加算スコアSC1が算出できた場合は、以下の式(1)に示すように総スコアACを求め、次の時刻t2において、全非遮光状態(全ての光送信経路RTが非遮光状態)の場合、以下の式(2)に示すように、時刻t1時に算出した加算スコアSC1を利用して総スコアACを算出しても良い。
【0083】
AC=AC+SC1…(1)
AC=AC+SC1・α…(2)
なお、「α」は係数とし、“1”以下の値とする。
【0084】
例えば、時刻t1に一経路遮光状態を検知したときに、上記式(1)に沿って、総スコアACに100点(時刻t1時の加算スコアSC1)を加算したとする。次の計測周期となる時刻t2で、全非遮光状態が検知された場合、上記式(2)に沿って、100点(前回(時刻t1)の加算スコアSC1)に係数αを掛けた値を、総スコアACに加算する。
【0085】
このように、現時点で全非遮光状態であったとしても、過去に一経路遮光状態が存在した場合は、紐状物体が遮光経路高さの近辺にある可能性が比較的高い。そのため、ステップST23において、上記した式(1)及び式(2)に基づき総スコアACを求めることにより、紐状物体としてより検知しやすくすることができる。
【0086】
このように、第2検知手段22は、水平方向のビーム等により形成される複数の光送信経路RTを利用する既存のドアセンサと同等な構成なドアセンサ部10のドアセンス信号S10に基づき、誤検知を減らしつつ、紐状物体を検知することができるように、総スコアACを求めることができる。
【0087】
図7に戻って、ステップST24において、第2検知手段22は、総スコアACと予め定めた閾値Pとを比較する。総スコアACが閾値P以上であれば(YES)、判定基準を満足するためステップST25に進み、総スコアACが閾値P未満であれば(NO)、判定基準を満足しないためステップST21に戻り、新たなドアセンス信号S10を受信する。以降、ステップST22で塊有りが検出されるか(YES)、総スコアACが閾値P以上であると認識される(YES)まで、ステップST21〜ST24が繰り返される。
【0088】
ステップST24でYESの場合に実行されるステップST25において、第2検知手段22は、乗車空間に紐状物体が存在する、すなわち、紐状物体がドア(開閉領域)を跨いでいるものと判定し、紐状物体の存在を指示する検知信号S22を検知結果S2としてエレベーター制御装置1に出力する。
【0089】
第2検知手段22は、汚れなどにより一経路遮光状態が検知される可能性を考慮して、実質的な紐状物体検知処理であるステップST23〜ST25を実行する際、総スコアACが閾値P以上の値にならないと、紐状物体として検知しないようにしている。
【0090】
上述したように、本実施の形態の第2検知手段22では、遮光経路高さによる加算スコアSCの算出処理を実行する検知開始条件として塊有りの検知を実質的に課している。すなわち、ステップST22において塊有りが検知される毎に、ステップST20にて総スコアACが“0”にセットされるため、第2検知手段22においても、加算スコアSCを順次加算して総スコアACを求める紐状物体検知処理(ステップST23〜ST25)の開始条件として、塊有りの検知を課していることになる。
【0091】
そして、飼い主とペットを繋ぐ紐(リード)等の紐状物体が、複数の光送信経路RTのうち経路高さが比較的高い鉛直方向上方を通過することは少ないことを考慮して、第2検知手段22では、
図8に示すように、鉛直方向において遮光経路高さiが比較的低い位置にあるとき、加算スコアSCが高くなるように換算関数FS(i)(確率密度関数f(i)等)を設定する検知位置条件を課している。
【0092】
さらに、一経路遮光状態の検知回数が少ない場合、あるいは遮光経路高さが比較的高い場合には、突発的な埃等を紐状物体として誤検知する可能性がある。そこで、第2検知手段22では、上記誤検知を回避すべく、遮光経路高さiに基づく加算スコアSCの加算によって得られる総スコアACが閾値P以上となったときに、はじめて紐状物体として検知するという、スコア要件を課している。
【0093】
このように、本実施の形態の紐状物体検知装置2における第2検知手段22は、水平方向のビーム等により形成される複数の光送信経路RTを利用する既存のドアセンサと同等なハードウェア構成のドアセンサ部10を用いながら、紐状物体検出用の種々条件(上記した検知開始条件、検知位置条件及びスコア要件)を設定した紐状物体検出処理を実行することにより、紐状物体を正確に検知することができるという効果を奏する。
【0094】
上述したように、本実施の形態の第2検知手段22は、遮光経路高さに基づき算出(配点)される加算スコアSCの積算値である総スコアACと基準値(閾値P)とを比較することにより、より精度良く紐状物体を検知することができる。
【0095】
(第2検知手段22の他の態様)
なお、実質的な紐状物体検知処理であるステップST23〜ST25において、総スコアACを求め、総スコアACが閾値P以上であれば紐状物体として検知するということは、一経路遮光状態が、どの遮光経路高さでどのタイミングで計測されるかという時系列変化のパターンに基づいて、紐状物体を検知していることと等価である。
【0096】
図9は遮光経路高さの時系列パターンを模式的に示す説明図である。
図9に示すように、10個の経路高さh1〜h10で5周期分(時刻t1〜t5)の遮光の有無の時系列変化が計測されたとする。
【0097】
時刻t1〜t5において、同時刻における一経路遮光状態か、全非遮光状態のいずれかの状態であるとする。この場合、時系列変化のパターンは、161051通り(11の5乗)になる。遮光経路高さに基づく加算スコアSCの値が予め
図8のように決まっているのであれば、どのパターンの総スコアACが閾値P以上となり、紐状物体として検知されるのか、予め求めることも可能である。
【0098】
したがって、第2検知手段22は、他の態様として、紐状物体として検知するための時系列変化の履歴パターンを予め保持する履歴パターン保持機能(履歴保持機能)を有しており、実際に計測された複数の光送信経路RTの遮光/非遮光の時系列変化が、上記履歴パターンと同じであるかを判定し、同じ場合は紐状物体として検知するようにしても、ステップST23〜ST25で実行した紐状物体検知処理と等価な検知内容を得ることができる。ただし、この場合、第2検知手段22は、予め履歴パターンを保持する機能を内部あるいは外部に有することが必須となる。
【0099】
すなわち、
図9で示した例では、5回の測定結果における161051通りのうち、
図7で示すフローチャートで総スコアが閾値P以上となる時系列パターンを履歴パターンとして予め記憶する履歴パターン保持機能を第2検知手段22に持たせ、保持した履歴パターンと実測した時系列パターンとのマッチングを行う他の態様によっても、
図7,
図8で示した第2検知手段22と等価な検知動作を行うことができる。
【0100】
このように、第2検知手段22の他の態様では、過去の測定されたドアセンス信号S10の時系列パターンである履歴パターンと新たに実測した一経路遮光状態を含む時系列パターンとを比較することにより、より精度良く紐状物体を検知することができる。
【0101】
<第3検知手段23>
次に、紐状物体検知装置2の第3検知手段23の動作について説明する。第3検知手段23の動作は、第1検知手段21や第2検知手段22の検知条件を変更して実現している。
【0102】
例えば、第1検知手段21では、検出回数NKが閾値M回以上になったことを、紐として検知するための検知条件としている。したがって、検出回数NKを閾値Mよりも大きな値と比較するように変更(第1の変更)して紐状物体の検知条件を厳しくすることにより、紐状物体の誤検知をより少なくし、紐状物体の検知精度を高めることができる。一方、検出回数NKを閾値Mよりも小さな値(M=1を含む)と比較するように変更(第2の変更)して紐状物体の検知条件を緩やかにして早期検知を図ることもできる。ただし、この場合、紐状物体の検知精度は低くなる。
【0103】
また、第2検知手段22では、紐状物体としてもっともらしさを表す総スコアACが、既定の閾値P以上となったことを、紐状物体の検知条件としている。したがって、総スコアACを閾値Pよりも大きな値と比較するように変更(第3の変更)して、紐状物体の検知条件を厳しくして紐状物体の検知精度を高めることができる。あるいは、総スコアACを閾値Pよりも小さな値と比較するように変更(第4の変更)して紐状物体の検知条件を緩やかにして早期検知を図ることができる。ただし、この場合、紐状物体の検知精度は低くなる。
【0104】
このように、第3検知手段23は、第1検知手段21に対する上記した第1あるいは第2の変更、第2検知手段22に対する上記した第3あるいは第4の変更を施した検知手段であり、乗車空間における紐状物体の存在を検知すると、紐状物体の存在を指示する検知信号S23を検知結果S2として出力する。
【0105】
したがって、第3検知手段23により、第1検知手段21、あるいは第2検知手段22と同様に、水平方向のビーム等により形成される複数の光送信経路RTを利用する既存のドアセンサ相当のドアセンサ部10を用いて、誤検知を減らしつつ、紐状物体を正確に検知することができるという効果を奏する。
【0106】
(他の検知方法)
第1検知手段21、第2検知手段22、及び第3検知手段23は、上記の方法に代わり、次のような検知方法を用いて紐状物体を検知しても良い。
【0107】
図10は、紐状物体の他の検知方法を説明するための説明図である。事前の実験や、理論的検討などにより、紐状物体であるならば、ある時刻t1に、遮光経路高さh1〜h8のうちある遮光経路高さi1にて一経路遮光状態が計測された場合、時刻t1からΔt経過後に遮光経路高さi2にて紐状物体が計測される確率f(i1, i2, Δt)が事前に明らかにされていたとする。
【0108】
そして、その確率f(i1, i2, Δt)は、検知手段(第1検知手段21〜第3検知手段23のいずれか)が予め保持しているとする。そして実際にある時刻T1に、ある遮光経路高さI1にて一経路遮光状態が計測され、時刻T1からΔT経過後に遮光経路高さI2にて一経路遮光状態が計測された場合、その確率f(I1, I2, ΔT)が、事前の閾値q1以上であるならば、検知手段は紐状物体が乗車空間に存在しているものと判定し、紐状物体として検知する。
【0109】
図10では、説明を簡易にするために、一経路遮光状態が2回計測されたときのことを示したが、必ずしも2回である必要はない。例えば、紐状物体であるならば、ある時刻t1に、ある遮光経路高さi1にて一経路遮光状態(紐状物体と想定可能な状態)が計測された後、時刻t1からΔt経過後の時刻t2に遮光経路高さi2にて紐状物体が計測され、その後、さらに、時刻t2からΔt2経過後に遮光経路高さi3にて紐が計測される確率g(i1, i2, i3,Δt,Δt2)が、事前の実験や理論的検討により明らかにされ、検知手段によって保持されていたとする。そして実際にある時刻T1に、ある遮光経路高さI1にて一経路遮光状態が計測され、時刻T1からΔT1経過後の時刻T2に遮光経路高さI2にて一経路遮光状態が計測され、さらに時刻T2からΔT2経過後に遮光経路高さI3にて一経路遮光状態が計測された場合、その確率g(I1,I2,I3,ΔT1,ΔT2)が、事前の閾値q2以上であるならば、検知手段は紐状物体がドアを跨いでいるものと判定し、紐状物体として検知しても良い。なお、閾値q(q1,q2)の値が大小によって、別々の検知手段としても良い。
【0110】
また、第1検知手段21、第2検知手段22、及び第3検知手段23は、それぞれ同時並行して動作しても良いし、第1検知手段21によって紐状物体の存在が検知された後、第2検知手段22が動作するように、第1検知手段21〜23間に動作順序を設定しても良い。
【0111】
<エレベーター制御装置1>
次に、上述した実施の形態の紐状物体検知装置2を有するエレベーターシステムにおけるエレベーター制御装置1の動作について説明する。
【0112】
エレベーター制御装置1内の制御手段15は、紐状物体検知装置2から紐状物体を検知したことを指示する検知結果S2(検知信号S21〜S23のいずれか)を受信した場合、紐状物体検知時対応処理を実行する。紐状物体検知時対応処理としては、戸全開時間を延長する開放時間延長処理、音声アナウンス部やLCDなどのディスプレイ表示部等の告知処理部9を用いてよって紐状物体がドア付近にあることを注意喚起する告知処理、あるいは戸閉速度を低速にする戸閉低速化処理が考えられる。
【0113】
ここで、例えば、第1検知手段21が、最も早く紐状物体を検知可能であり、第3検知手段23が、紐状物体の検知に最も時間を要し、第2検知手段22は、第1検知手段21と第3検知手段23との中間の検知時間を有すると仮定(第1の仮定)する。あるいは、第1検知手段21が、最も(紐状物体の)検知精度が低い手段とし、第3検知手段23が、最も検知精度が高い手段とし、第2検知手段22は、第1検知手段21と第3検知手段23との中間レベルの検知精度であると仮定(第2の仮定)する。
【0114】
以下、上記第1の仮定あるいは上記第2の仮定時における制御手段15による紐状物体検知時対応処理(実行制御)の内容について説明する。
【0115】
第1検知手段21によって紐状物体が検知された場合(検知結果S2として検知信号S21が紐状物体の検知を指示する場合)、制御手段15は、紐状物体検知時対応処理として、開放時間延長処理の実行に留め、告知処理部9を用いた告知処理や戸閉低速化処理は実施しない。この際、戸全開時間を延長しても、乗客がかご内で戸閉ボタンを押下すれば、ドアを閉めることは可能とする。
【0116】
開放時間延長処理のみを実施するのは、紐状物体が検知された場合、ドアを閉めてしまうと懸念現象を引き起こしてしまうため、一刻も早くドアを開放状態に維持する必要があるが、誤検知であった場合、告知処理や戸閉低速化処理まで実施してしまうと、乗客に不快感を与えてしまうためである。
【0117】
なお、安全性を最大限尊重し、戸閉ボタンが押下されるまでドアを閉めないようにしても良い。これは言い換えると、戸全開時間を無限大まで延長することと等価である。しかし、センサ(ドアセンサ部10)の原理上、絶対に誤検知しないようにすることは、実用レベルでは難しい。戸閉ボタンが押下されるまでドアを閉めないようにすると、他の階の乗客を含めて、エレベーターを利用することができなくなってしまい、利便性が大きく悪化する懸念がある。
【0118】
ただし、一般的な乗客はかごに乗車したら、戸閉ボタンを押下することが多い。したがって、第1検知手段21による紐状物体検知が誤検知であったとしても、乗客は戸閉ボタンを押下し、開放時間延長処理がなされたことに気づかない可能性が高く、この場合、上記懸念が回避されることになる。
【0119】
このように、制御手段15は、最も検知時間が短い、あるいは最も検知精度が低い、すなわち、最も信頼性の低い第1検知手段21により紐状物体を検知した場合は、紐状物体検知時対応処理として開放時間延長処理のみに留めることにより、乗客に不快感を与えることなく、紐状物体がドアに挟まれてしまう懸念現象を減らし、安全性を高めることができるという効果を奏する。
【0120】
上述したように、制御手段15は、検知手段21〜23間で最も信頼性の低い第1検知手段21の紐状物体検知時において、紐状物体検知時対応処理を開放時間延長処理のみに留めることにより、第1検知手段21が紐状物体を誤検知したとしても、乗客の不快感を少なくしつつ、安全性を高めることができる。
【0121】
一方、第2検知手段22によって紐状物体が検知された場合(検知結果S2として検知信号S22が紐状物体の検知を指示する場合)、制御手段15は、告知処理部9を用いて紐状物体が乗車空間に存在することを注意喚起する告知処理を実行する。この際、戸全開時間の再延長(第1検知手段21によって紐状物体が検知され既に戸全開時間が延長されている場合)しても良い。なお、検知精度に関する上記第2の仮定時において、第1検知手段21より先に第2検知手段22が紐状物体を検知した場合、開放時間延長処理を併せて実行することが望ましい。
【0122】
なお、戸閉低速化処理の実行は必ずしも必要ない。告知処理部9を用いた告知処理によって、紐状物体がドア5に挟まる恐れがあることを乗客に注意喚起することができるため、ドアから紐状物体を離す等の乗客側の対応が可能である。したがって、戸閉低速化処理まで実行する必要性は低いと考えられる。なぜなら、乗車空間における紐状物体が存在しないにも拘わらず、戸閉低速化処理を実行すると、乗客の不快感が高まる可能性があるからである。
【0123】
このように、制御手段15は、検知時間が中間レベル、あるいは検知精度が中間レベルの第2検知手段22により紐状物体を検知した場合は、告知処理により乗客への注意喚起を行うことにより、乗客が何らかの理由でペットから目を離している間に、紐状物体がドアに挟まれて事故を引き起こしてしまうことを減らし、安全性を高めることができる。さらに、不必要に戸閉低速化処理を実行することなく、乗客の不快感を与えないという効果を奏する。
【0124】
上述したように、制御手段15は、検知手段21〜23間で中間レベルの信頼性を有する第2検知手段22の紐状物体検知時において、紐状物体検知時対応処理として告知処理を実行して乗客に紐状物体の存在を注意喚起することにより、紐状物体を誤検知したとしても乗客の不快感を少なくしつつ、より安全性を高めた紐状物体検知時対応処理を行うことができる。
【0125】
第3検知手段23によって紐状物体が検知された場合(検知結果S2として検知信号S23が紐状物体の検知を指示する場合)、制御手段15は、紐状物体検知時対応処理として戸閉低速化処理を実行する。なお、戸全開時間を再延長(第1検知手段21あるいは第2検知手段22によって紐状物体が検知され既に開放時間延長処理が実行されている場合)や、告知処理を継続実施(第2検知手段22によって既に告知処理が行われている場合)を行っても良い。また、検知精度に関する上記第2の仮定時において、第1検知手段21及び第2検知手段22より先に第3検知手段23が紐状物体を検知した場合、開放時間延長処理及び告知処理部9を用いた告知処理を併せて行うことが望ましい。
【0126】
なお、安全性を最大限尊重し、戸閉ボタンが押下されるまでドアを閉めないようにしても良い。これは言い換えると、戸閉速度を“0”にまで低下させることと等価である。しかし、センサの原理上、絶対に誤検知しないようにすることは、実用上は極めて困難である。戸閉ボタンが押下されるまでドアを閉めないようにすると、他の階の乗客を含めて、エレベーターを利用することができなくなってしまい、利便性が大きく悪化する可能性が高い。
【0127】
このように、制御手段15は、最も検知時間が長い、あるいは最も検知精度が高い第3検知手段23により紐状物体を検知した場合は、紐状物体検知時対応処理として戸閉低速化処理を実行することにより、乗客に不快感を与えたり、利便性の低下を招いたりすることなく、紐状物体がドア5に挟まれてしまう懸念現象を減らし、安全性を高めることができるという効果を奏する。
【0128】
上述したように、制御手段15は、第3検知手段23の紐状物体検知時において、紐状物体検知時対応処理として戸閉速度低下処理を実行することにより、紐状物体を誤検知したとしても乗客の不快感を少なくしつつ、さらに安全性を高めた紐状物体検知時対応処理を行うことができる。
【0129】
なお、本実施の形態では、紐状物体の検知手段を第1検知手段21〜第3検知手段23の3つを記載しているが、必ずしも3つであるとは限らない。上述したパラメータ(例えば,NK、L, M, P, q(q1,q2)等)を変えた手段を複数用意し、より多くの検知手段を備えても良い。検知手段が増えるほど、制御手段15は、より段階的にエレベーターを制御することが可能になる。例えば、戸閉速度を複数段設定して、段階的に低速化することもできる。種類や内容の異なる告知処理(音声アナウンスの文言や警報音など)を段階的に実施するようにしても良い。各検知手段21〜23等が紐状物体を検知するたびに、開放時間延長処理を実行することで、結果的に戸全開時間が非常に長くなり、より安全性を高めることも可能になる。
【0130】
以上より、本実施の形態の紐状物体検知装置2によれば、第1検知手段21〜23によって、ドア5の左右の両端に、受発光素子を鉛直方向に複数並べた既存のドアセンサ相当のドアセンサ部10を利用し、精度良く、紐状物体を検知する紐状物体検知装置を提供することができる。
【0131】
また、本実施の形態のエレベーターシステムによれば、制御手段15によって、紐状物体を検知した場合は安全性を高めつつ、紐状物体を誤検知したとしても、エレベーターの乗客に不快感を与えないようにエレベーターを制御するエレベーターシステムを提供することが可能になる。
【0132】
上述したように、制御手段15、第1検知手段21、第2検知手段22、及び第3検知手段23は、ソフトウェアに基づくCPUを用いたプログラム処理によって実行される。この際、第1検知手段21〜23は、ドアセンス信号S10、検出回数NK(検出合計時間NT)、閾値N,換算関数FS(i)、総スコアAC、閾値P、履歴パターン等を保持する保持機能として、例えば、HDD、DVD、メモリなど記憶部を用いて実現することができる。
【0133】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。