特許第6305209号(P6305209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305209
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】超音波式のガス測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/66 20060101AFI20180326BHJP
   G01N 29/024 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   G01F1/66 A
   G01F1/66 101
   G01N29/024
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-107683(P2014-107683)
(22)【出願日】2014年5月26日
(65)【公開番号】特開2015-224870(P2015-224870A)
(43)【公開日】2015年12月14日
【審査請求日】2017年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】507294395
【氏名又は名称】株式会社ホクシンエレクトロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100155882
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100154678
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 博子
(72)【発明者】
【氏名】風間 勝己
(72)【発明者】
【氏名】細川 嘉寛
(72)【発明者】
【氏名】大友 勇人
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4612218(JP,B2)
【文献】 特許第5938597(JP,B2)
【文献】 特許第5391402(JP,B2)
【文献】 特許第4697212(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F1/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流から下流へとガスが流れるとともに長手方向へ延びる測定管と、前記測定管の一端および他端に設けられた保持部材と、前記保持部材を介して前記測定管の内周側であって前記一端および前記他端に設けられた一対の超音波送受信器とを備え、
前記超音波送受信器は、前記長手方向へ離間する内面および外面と、前記内面および外面との間に位置する側面と、これら面の内側に位置する超音波振動子とを備え、
前記超音波送受信器の前記側面は、前記測定管の内周面から離間するとともに、前記外面が前記保持部材を介して前記測定管に固定され、
前記保持部材および前記測定管は、音響インピーダンスが互いに異なることを特徴とする超音波式のガス測定装置。
【請求項2】
前記保持部材は、前記測定管よりも音響インピーダンスが小さいことを特徴とする請求項1記載の超音波式のガス測定装置。
【請求項3】
前記測定管は、プラスチック樹脂を用い、前記保持部材は、エラストマ樹脂を用いることを特徴とする請求項1または2記載の超音波式のガス測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、酸素や混合気体などのガスを供給する医療機器において、供給されるガスの流量または濃度のいずれか一方、あるいはその両方を測定することができる超音波式のガス測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波式のガス測定装置において、測定ガスが流れる測定管と、測定管中に対向させて配置した超音波を送受信する二つの超音波送受信器とを備える。このような装置において、一方の超音波送受信器からガスの流れと順方向に超音波が送信され、他方の超音波送受信器によって受信され、順方向における超音波伝播時間が算出される。また、他方の超音波送受信器からガスの流れと逆方向に超音波が送信され、一方の超音波送受信器によって受信され、逆方向における超音波伝播時間が算出される。順方向における超音波伝播時間と逆方向における超音波伝播時間の平均を取ると、流れのない状態での超音波伝播時間となる。そして、超音波送受信器間の距離を、流れのない状態での超音波伝播時間で割ることによって、ガスの音速が求まる。ガスの音速が分かれば、ガス流量やガス濃度も求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−306603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の超音波式のガス測定装置によれば、超音波が、測定管内のガスを介して伝播するだけでなく、測定管自身を伝播してしまい、ノイズや誤検出の要因になるという問題があった。
【0005】
この発明は、ノイズや誤検出を低減することができる超音波式のガス測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上流から下流へとガスが流れるとともに長手方向へ延びる測定管と、前記測定管の一端および他端に設けられた保持部材と、前記保持部材を介して前記測定管の内周側であって前記一端および前記他端に設けられた一対の超音波送受信器とを備え、前記超音波送受信器は、前記長手方向へ離間する内面および外面と、前記内面および外面との間に位置する側面と、これら面の内側に位置する超音波振動子とを備え、前記超音波送受信器の前記側面は、前記測定管の内周面から離間するとともに、前記外面が前記保持部材を介して前記測定管に固定され、前記保持部材および前記測定管は、音響インピーダンスが互いに異なることを特徴とする。
【0007】
前記保持部材は、前記測定管よりも音響インピーダンスが小さくてもよい。
【0008】
前記測定管は、プラスチック樹脂を用い、前記保持部材は、エラストマ樹脂を用いることができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る超音波式のガス測定装置によれば、一対の超音波送受信器は保持部材を介して測定管に取り付けられるとともに、測定管と保持部材とは音響インピーダンスが異なるから、これらの境界面で測定管を伝播する超音波の影響を抑えることができ、ノイズや誤検出を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の実施形態に係る超音波式のガス測定装置の分解組立を示す斜視図。
図2図1の組立状態における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1および図2を参照すれば、この発明の実施形態の一例である超音波式のガス測定装置1は、長手方向Lへ延びる測定管2と、測定管2の長手方向Lへ離間して設けられる一対の超音波送受信器3A,3Bと、超音波送受信器3A,3Bを保持するとともに測定管2へと固定する保持部材4とを備える。
【0012】
測定管2は、長手方向へ延びる中空環状体であり、より具体的には円筒形である。この実施形態において、測定管2はABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン−コポリマー)やPC樹脂(ポリカーボネート樹脂)などの硬質プラスチック樹脂を用いることができる。
【0013】
測定管2は、例えば医療用の呼吸器や酸素濃縮器のガス供給流路に設けられる。詳細には、測定管2の長手方向Lの一端2Aに位置し、ガス供給流路の上流側に連結される流入管21と、長手方向Lの他端2Bに位置し、ガス供給流路の下流側に連結される流出管22とを備え、ガス供給流路を流れるガスの一部を測定管2へと導くことができる。すなわち、ガス測定装置1において、ガスは流入管21から入り、測定管2内を長手方向Lへと移動して流出管22からガス供給流路へと戻る。この実施形態において、流入管21および流出管22は、これらを流れるガスの流路が、測定管2の長手方向Lに交差するように設けられ、より詳細には、長手方向Lに直交するように設けられる。
【0014】
測定管2の外周面には、径方向外側へと突出するリブ23が設けられる。この実施形態において、リブ23は、測定管2の外周に沿って環状となっている。リブ23は、一端2Aから所定寸法離間した位置と、他端2Bから所定寸法離間した位置とにそれぞれ配置される。リブ23は、流入管21および流出管22の長手方向L外側に位置する。
【0015】
一対の超音波送受信器3A,3Bは、互いに送受信可能である。すなわち、一方の超音波送受信器3Aから送信された超音波は、他方の超音波送受信器3Bによって受信可能であるとともに、他方の超音波送受信器3Bから送信された超音波が、一方の超音波送受信器3Aによって受信可能である。この実施形態において、上流側の一方の超音波送受信器3Aから超音波が送信された場合には、ガスの流れの順方向における送信であり、下流側の他方の超音波送受信器3Bから超音波が送信された場合には、ガスの流れの逆方向における送信である。
【0016】
超音波送受信器3A,3Bは、測定管2の内側に収めることができる円柱状であり、超音波送受信器3A,3Bの直径は、測定管2の内径よりも小さい。超音波送受信器3A,3Bは、略円形の内面31、外面32および側面33を有し、その内部には図示しない超音波振動子を備える。内面31は超音波振動子の保護板としての機能の他、振動子と負荷である気体との音響インピーダンスの差による超音波の反射を抑えるための音響整合層として機能する。超音波振動子から外面32に向かって2本のリード線34が延びる。リード線34は図示しない制御装置に接続される。制御装置は、超音波送信回路と超音波受信回路を備え、測定に必要な超音波の送受信の制御とガスの流量や濃度の計算を行う。超音波の送受信の制御方法とガスの流量や濃度の計算方法は、例えば、特開2012−239690号公報に記載の方法を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0017】
超音波送受信器3A,3Bは、保持部材4を介して測定管2に取付けられる。保持部材4は、測定管2とは音響インピーダンスが異なるものを用いる。この実施形態では、保持部材4の音響インピーダンスは測定管2よりも小さく、保持部材4としては、例えば、エラストマ樹脂などを用いることができる。また、保持部材4は、超音波送受信器3A,3Bの外面32に当接する底部41と、底部41から起立する環状壁部42とを備える。底部41には、リード線34が挿入可能な貫通孔43が設けられ、超音波送受信器3A,3Bの外面32を底部41に接触させたときにリード線34が底部41から突出するようにしている。
【0018】
上記のような超音波送受信器3A,3Bは、その外面32を接着剤等の接合手段によって、保持部材4の底部41に接合される。この時、リード線34が貫通孔43に挿入されるとともに、外面32の中心と底部41の中心とを一致させる。これら接合された超音波送受信器3A,3Bおよび保持部材4を、測定管2の一端2Aおよび他端2Bへと取り付ける。具体的には、超音波送受信器3A,3Bが測定管2の内側へ位置し、保持部材4の環状壁部42が外側へ位置するように取り付ける。
【0019】
図2を参照すれば、超音波送受信器3A,3Bおよび保持部材4を測定管2に取付けた状態において、環状壁部42は、長手方向Lにおける寸法が、超音波送受信器3A,3Bの長手方向における寸法よりも小さく、保持部材4の先端44がリブ23に当接する寸法としている。また、超音波送受信器3A,3Bの直径は、測定管2の内径よりも小さく、側面33は測定管2の内周面とは離間して保持される。
【0020】
上記のような構成において、流入管21および流出管22をガス供給流路に接続し、測定管2内にガスを導くとともに、超音波送受信器3A,3Bによる超音波の送受信を行うことによって、ガス流量を測定することができる。すなわち、一方の超音波送受信器3Aから他方の超音波送受信器3Bへと超音波を送信することによって、順方向の超音波伝播時間を測定するとともに、他方の超音波送受信器3Bから一方の超音波送受信器3Aへと超音波を送信することによって逆方向の超音波伝播時間を測定することができる。順方向における超音波伝播時間と逆方向における超音波伝播時間の平均を取ると、流れのない状態での超音波伝播時間となる。そして、超音波送受信器間の距離を、流れのない状態での超音波伝播時間で割ることによって、ガスの音速が求まる。ガスの音速が分かれば、ガス流量を求めることができる。
【0021】
超音波送受信器3A,3Bに、温度センサおよび湿度センサ等を備えることによって、温度や湿度によるガスの流量への影響を補正することもできる。さらに、ガス測定装置1を流れるガスが混合気体であった場合には、超音波伝播時間からガスの音速を求めるとともに、この音速と各気体の分子量とによって、各気体の濃度を求めることもできる。
【0022】
上記のような構成において、一方の超音波送受信器3Aから他方の超音波送受信器3Bへと超音波が送信された場合、超音波は図2の矢印5に沿って気体中を伝播するとともに、超音波送受信器3Aで発生した超音波は、超音波送受信器3Aに接触する保持部材4にも伝播して、ガス流量等の影響を受けずに、一定速度で伝播するので、ノイズとして作用してしまう。しかし、保持部材4は、測定管2よりも音響インピーダンスの小さい材料を用いているので、これら音響インピーダンスの差によって、超音波が保持部材4と測定管2との境界面で反射してノイズを遮断する。したがって、測定管2を伝播しノイズとなる超音波を減衰させ、ガスの流量等を正確に測定することができる。
さらに、保持部材4として音響インピーダンスが小さいエラストマ樹脂等を用いた場合には、保持部材4によって伝播した超音波が吸収されるので、より一層ノイズを遮断することができる。
【0023】
同様に、他方の超音波送受信器3Bから一方の超音波送受信器3Aへと超音波が送信された場合であっても、測定管2を伝播する超音波の影響を抑え、ガスの流量等を正確に測定することができる。
【0024】
ガス測定装置1を構成する各構成部材には、本明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられている、各種の公知の材料を制限なく用いることができる。また、測定管2の外周面および保持部材4の環状壁部42の内周面には、周方向における互いの位置決めができる手段を設けることができる。例えば、一方に凸部を設け、他方にはこれに嵌合する凹部を設けることができる。
【0025】
この実施形態において、測定管2は、ガス供給流路とは別に設けているが、ガス供給流路に直接設けるようにしてもよい。すなわち、一対の超音波送受信器は、ガス供給流路を挟んで対向するように配置され、ガス供給流路の一部が測定管2の一部を兼ねるようにすることもできる。この場合には、一対の超音波送受信器を繋ぐ直線は、ガス供給流路のガスの流れに傾斜するように超音波送受信器を配置することもできる。
【符号の説明】
【0026】
1 ガス測定装置
2 測定管
2A 一端
2B 他端
3 超音波送受信器
4 保持部材
21 流入管
22 流出管
23 リブ
31 内面
32 外面
34 リード線
41 底部
42 環状壁部
43 貫通孔
L 長手方向
図1
図2