(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305235
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】手摺ガイド調整装置
(51)【国際特許分類】
B66B 31/02 20060101AFI20180326BHJP
B66B 23/24 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
B66B31/02 Z
B66B23/24 C
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-124176(P2014-124176)
(22)【出願日】2014年6月17日
(65)【公開番号】特開2016-3102(P2016-3102A)
(43)【公開日】2016年1月12日
【審査請求日】2016年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 卓
【審査官】
今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−126619(JP,A)
【文献】
特開2004−182463(JP,A)
【文献】
特開2001−146378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00 − 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手摺ガイドが締結部材によって接続される取付アングルを備えるエスカレータに用いられる手摺ガイド調整装置であって、
前記取付アングルを跨いで挟持する挟持部と、
前記挟持部に貫通形成される調整ボルト用ネジ穴と、
前記調整ボルト用ネジ穴に螺合して進退自在し前記手摺ガイドに当接可能な先端部を有し、前記先端部を前記手摺ガイドに押し付けることで前記手摺ガイドをその幅方向に移動させる調整ボルトと、
を備えることを特徴とする手摺ガイド調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載の手摺ガイド調整装置において、
前記挟持部は、前記締結部材を通す貫通孔を有することを特徴とする手摺ガイド調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手摺ガイド調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商業施設等においてエスカレータが設置されている。エスカレータには、無端状の移動手摺を案内する手摺ガイドが設けられている。さらに、その手摺ガイドの端部近傍には、移動手摺を駆動する駆動ローラが設けられている。手摺ガイドと移動手摺の配置位置の関係等によって、移動手摺の内側側面と手摺ガイドの幅方向の一方側とが接触することがある。
【0003】
このままエスカレータを使用すると、移動手摺の内側側面と手摺ガイドの一方側との摺動によって手摺ガイドが幅方向に削られる。手摺ガイドが幅方向に削られると、無端状の移動手摺のうち削られた手摺ガイドに対応する部分が他の部分に比べて幅方向にずれてしまう。その結果、移動手摺を駆動する駆動ローラの側面と移動手摺の内側側面とが接触してしまうことにより、エスカレータの運行状態が悪くなることがある。
【0004】
本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、全体としてクランク形状を有し、一端側を下に向けて手摺ガイドの幅方向奥側(エスカレータの内側であって、作業者から見て奥側)の部位に係合させ、他端側の上方に伸びる部分に対し手前側に向けて外力を作用させることで、手摺ガイドを幅方向手前側に移動させるエスカレータ用治具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−116542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の構成によれば、治具に外力を与えて、手摺ガイドを手前側に移動させることで、駆動ローラの側面と移動手摺の内側側面との間隙を調整することができる。しかしながら、この構成では、外力の大きさによって移動量が変化するため、手摺ガイドの移動量が不足する、あるいは過剰となって上記間隙の微調整が困難となる場合がある。
【0007】
本発明の目的は、手摺ガイドを適切な量だけ移動させることを可能とする手摺ガイド調整装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る手摺ガイド調整装置は、手摺ガイドが締結部材によって接続される取付アングルを備えるエスカレータに用いられる手摺ガイド調整装置であって、前記取付アングルを跨いで挟持する挟持部と、前記挟持部に貫通形成される調整ボルト用ネジ穴と、前記調整ボルト用ネジ穴に螺合して進退自在し前記手摺ガイドに当接可能な先端部を有し、前記先端部
を前記手摺ガイド
に押し付け
ることで前記手摺ガイドをその幅方向に移動させる調整ボルトと、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る手摺ガイド調整装置において、前記挟持部は、前記締結部材を通す貫通孔を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
上記構成によれば、調整ボルトを調整ボルト用ネジ穴に螺合して手摺ガイドの移動量を調整することができる。したがって、手摺ガイドを適切な量だけ移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る実施形態において、エスカレータの構成を示す図である。
【
図2】本発明に係る実施形態において、エスカレータの手摺駆動装置の拡大図である。
【
図5】本発明に係る実施形態の手摺ガイド調整装置の斜視図である。
【
図6】本発明に係る実施形態の手摺ガイド調整装置の正面図である。
【
図7】本発明に係る実施形態の手摺ガイド調整装置の側面図である。
【
図8】本発明に係る実施形態の手摺ガイド調整装置を取り付けた様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。また、以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0013】
図1は、エスカレータ10の構成を示す図である。
図2は、エスカレータ10の手摺駆動装置20の拡大図である。
図3は、
図2のA−A線断面図である。エスカレータ10は、乗場床11と降場床13との間で乗客8を移動させる装置である。エスカレータ10は、複数のステップ12と、各ステップ12が連結されるステップチェーン14と、ステップチェーン14を駆動する主駆動装置16と、移動手摺18を駆動する手摺駆動装置20とを備える。
【0014】
ステップ12は、乗客8が一人または二人乗れる程度の大きさを有する。また、ステップ12にはスリップ防止のための溝が複数設けられている。
【0015】
ステップチェーン14は、図示されていない適当な軸部材を介して、各ステップ12を連結し、主駆動装置16の駆動力をそれぞれのステップ12に伝達するものである。また、ステップチェーン14は、ステップ12の左右両側に1本ずつ配置されている。
【0016】
主駆動装置16は、ステップ12及び移動手摺18を駆動する駆動力を出力する装置で、例えば、電動機と減速歯車等から構成される。主駆動装置16により出力された駆動力は、図示されていない駆動伝達手段を介してステップチェーン14及び図示されていない移動手摺チェーンを介して手摺駆動装置20に伝達される。
【0017】
欄干部25は、無端状の移動手摺18と、ステップ12の両側に立設される支え部26とを備える。移動手摺18は、乗客8が手を添え、又は掴まる部分である。支え部26は、移動手摺18を案内する機能を有する。また、支え部26は、手摺ガイド28と、内側板24で構成される。なお、手摺ガイド28は、トラス内に配置される手摺駆動装置20の両端近傍において途切れた端部を有している。
【0018】
手摺ガイド28は、略C字状断面(短手方向断面)の移動手摺18の内側に配置され、移動手摺18の内側面形状に沿った外形を有する。移動手摺18の内側面に手摺ガイド28の外周面が接触し、これにより移動手摺18の長手方向移動が案内される。
【0019】
内側板24は、ステップ12の両側に立設され、装飾的な観点や適当な強度を確保するため、例えば、ガラスパネルやステンレスを素材として構成される。なお、手摺ガイド28と内側板24とは、ボルト等の接続部材を用いて接続されている。
【0020】
次に、手摺駆動装置20について説明する。手摺駆動装置20は、上記のように移動手摺18を駆動する機能を有し、駆動ローラ32と加圧ローラ34とを含んで構成される。
【0021】
手摺駆動装置20においては、移動手摺18を挟んで駆動ローラ32に対向する位置に加圧ローラ34が配置される。駆動ローラ32は、主駆動装置16より出力された駆動力により駆動され、また、加圧ローラ34は、対応する駆動ローラ32に向かって、移動手摺18を図示していない加圧手段によって押し付け、移動手摺18の移動に従って回転する。なお、
図3に示されるように、駆動ローラ32の側面と移動手摺18の両端部(両内側端部)には、所定の間隔Dが保たれる。
【0022】
図4は、
図2のB−B線断面図において、手摺ガイド調整装置50を省略した(取り外した状態の)図である。手摺ガイド28の両端部は、取付アングル36によってエスカレータ10のトラスを構成する躯体に固定される。取付アングル36は、手摺ガイド28の上部を覆う平面部35と、平面部35の移動手摺18の移動方向における端部に立設される取付部37とを備える。取付部37がエスカレータ10の躯体に固定される。平面部35には、ボルト38が挿通される孔が設けられている。平面部35に対応する手摺ガイド28の上部には、移動手摺18の移動方向に伸びる板状の手摺ガイド本体28aの上側に設けられた箱状固定部28bが設けられている。すなわち、箱上固定部28bは、板状の手摺ガイド28の幅方向の断面C字状の移動手摺18の開口部近傍内側において起立する起立部28cと、内側に折れ曲がり取付アングル36の下面に並行な上部28dを有し、内部が断面四角形状の空間となっている。そして、上部28dには、移動手摺18の幅方向に沿った長孔28eが設けられている。締結部材42のナット40は、箱状固定部28bの空間部に配置されており、ボルト38が取付アングル36の平面部35の孔、手摺ガイド28bの長孔28eを通って、ナット40に至り、ボルト38、ナット40による締め付けが可能となっている。すなわち、ボルト38、ナット40により手摺ガイド28が取付アングル36に接続固定される。すなわち、ボルト38を締め付けることで手摺ガイド28が取付アングル38に接続固定された状態となり、ボルト38を緩めることで手摺ガイド28が移動手摺18の幅方向に移動可能な状態となる。
なお、取付アングル36に対し、手摺ガイド28が幅方向に移動可能であればいいので、取付アングル36に幅方向の長孔を設け、ボルト38を手摺ガイド28と共に移動可能としてもよい。
【0023】
移動手摺18の幅方向位置が移動することにより、手摺ガイド28の幅方向の一方側の端部に、無端状の移動手摺18に接触することがある。このとき、移動手摺18が手摺ガイド28に摺動するため、移動手摺18の内側面と手摺ガイド28の外周面との摩擦によって、手摺ガイド28が削られることがある。このような手摺ガイド28が削られた状態になると、無端状の移動手摺18の走行軌道が変わり、移動手摺18の手摺ガイド28の削られた部分に対応する部分が他の部分と幅方向にずれて移動手摺18が駆動ローラ32とが接触することとなり、この結果、エスカレータ10の運行状態が悪くなる可能性がある。なお、手摺ガイド18が削られなくていなくても、手摺ガイド18の幅方向位置がずれてしまう場合もある。
【0024】
図5は、手摺ガイド調整装置50の斜視図である。
図6は、手摺ガイド調整装置50の正面図である。
図7は、手摺ガイド調整装置50の側面図である。
【0025】
手摺ガイド調整装置50は、上記のように手摺ガイド28が削られてしまった場合に、手摺ガイド28を幅方向に移動させて、移動手摺18と駆動ローラ32との間隙を調整するための治具である。手摺ガイド調整装置50は、平面部51と、挟持部52と、調整ボルト用ネジ穴54と、調整ボルト56とを備える。
【0026】
平面部51は、取付アングル36の幅よりも大きい幅を有し、締結部材42のボルト38を通すための貫通孔58を有する。貫通孔58は、移動手摺18の幅方向に長い長孔である。
【0027】
挟持部52は、平面部51の幅方向両端部に立設される。従って、手摺ガイド調整装置50を移動手摺18の進行方向から見た場合には、下方が開いたコ字状であり、平面部51が取付アングル36の上方に位置し、一対の挟持部52が取付アングル30の両側に位置する。挟持部52の側面内側には、平面部51の下面に沿って中央側に伸び、取付アングル36を挟み込む一対の挟み部57が設けられている。取付アングル36を挟む2つの挟み部57の間隔は、取付アングル36の幅とほぼ同じである。
【0028】
挟持部52の側面下部には、調整ボルト56を螺合するためにねじ切りされた調整ボルト用ネジ穴54が貫通形成されている。調整ボルト56は、調整ボルト用ネジ穴54に螺合して進退自在である。調整ボルト56は、手摺ガイド28に当接可能な先端部55を有し、先端部55によって手摺ガイド28を押し付けて移動させる。なお、本実施形態では、調整ボルト56は、挟持部52の両方に取り付けられる例を示しているが、調整ボルト56は一方側のみに設けてもよい。通常は移動手摺18の内側面と手摺ガイド28の端部とが接触するのは一方側のみであるため、調整ボルト56により移動したい方向に手摺ガイド28を移動させればいい。また、調整ボルト56の配置されている側を手前側または奥側に入れ替えることで手摺ガイド28を両方向に移動させることも可能である。
【0029】
また、調整ボルト56は、先端部55の形状を面取りすることで手摺ガイド28に接触した際に手摺ガイド28を傷つけないように加工処理しておくことも好適である。調整ボルト56の外周に目盛を記すことで、調整ボルト56の移動量を確認できるようにすることも好ましい。また、挟み部57を内側に移動可能な機構とすることで、取付アングル36をしっかりと挟み込むようにすることも可能である。
【0030】
続いて、上記構成の手摺ガイド調整装置50の作用について説明する。
【0031】
手摺ガイド調整装置50の貫通孔58と締結部材42のボルト38の位置関係を合わせ込み、挟み部57が取付アングル36を挟持するように、手摺ガイド調整装置50を取付アングル36に装着する。すなわち、挟み部57が、取付アングル36の平面部35の幅方向両側に位置し、調整用ボルト56の先端が手摺ガイド28の両側に位置する。また、調整ボルト56は十分緩めておき、両者の先端と手摺ガイド28の両側の間には十分間隙を保持しておく。
【0032】
そして、締結部材42のボルト38を緩めて、手摺ガイド28を移動手摺18の幅方向に移動可能な状態とする。その後、手摺ガイド28の端部のうち削られた側と反対側に位置する調整ボルト56を所定の量だけ締め付ける。調整ボルト56を締め付けることで、先端部55が手摺ガイド28の側面に当接し、その状態でさらに締め付けることで調整ボルト56が進んだ分だけ手摺ガイド28を押圧し、押圧された手摺ガイド28が移動する。これにより、調整ボルト56の目盛を見て微調整をしながら、調整ボルト56を締め付けることで、狭くなっていた手摺ガイド28と駆動ローラ32の間隙を広げることができる。もし、手摺ガイド28が移動しすぎた場合には、締め付けていた調整ボルトを必要量だけ緩め、反対側の調整ボルト56によって手摺ガイド28を戻すこともできる。このように、本実施形態によれば、調整ボルト56を締め付けることによって手摺ガイド28を移動させるので、外力(ハンマーによる衝撃力)の印加による場合に比べ、移動量の正確な調整が可能となる。
このような手摺ガイド28の幅方向位置調整が終了したときには、締結部材42のボルト38を締め付けて手摺ガイド28を取付アングル36に固定する。これによって、
手摺ガイド28の幅方向位置が修正されて、この状態が維持される。従って、手摺ガイド28と駆動ローラ32が接触することを防止することができる。また、調整作業が終了した場合には、調整ボルト56を緩め手摺ガイド調整装置50を取り外す。
なお、手摺ガイド28の位置調整が終了した場合に、一対の調整ボルト56を両側から締め付け、手摺ガイド28が移動しないようにして、締結部材42による締め付けを行うことも好適である。
【0033】
なお、上記では、手摺ガイド調整装置50を手摺ガイド28と駆動ローラ32の間隙を調整する際に装着するものとして説明したが、常時装着しておいてもよい。なお、調整ボルト56を一方側の挟持部52のみに設ける場合には、他側の挟持部52には、手摺ガイド28を押圧付勢するばね部材を設けるとよい。これによって、調整ボルト56を緩めた場合に、ばね部材の力により手摺ガイド28を戻し方向に移動することができる。
【符号の説明】
【0034】
8 乗客、10 エスカレータ、11 乗場床、12 ステップ、13 降場床、14ステップチェーン、16 主駆動装置、18 移動手摺、20 手摺駆動装置、24 内側板、25 欄干部、26 支え部、28 手摺ガイド、28a 手摺ガイド本体、28b 箱状固定部、28c 起立部、28d 上部、28e 長孔、32 駆動ローラ、34 加圧ローラ、35,51 平面部、36 取付アングル、37 取付部、38 ボルト、40 ナット、42 締結部材、50 手摺ガイド調整装置、52 挟持部、54 調整ボルト用ネジ穴、55 先端部、56 調整ボルト、57 挟み部、58 貫通孔。