【実施例】
【0021】
以下に、レーザ加工装置の典型例であるレーザマーカに本発明を適用した、本発明の好ましい実施例を説明する。
【0022】
実施例のレーザマーカ(図1):
【0023】
図1を参照して、実施例のレーザマーカ100は、レーザ励起部200とレーザ出力部300とを含む。レーザ出力部300はレーザ発振部302を有している。レーザ発振部302はレーザ媒質304を含む。レーザマーカ100は、レーザ媒質304で発振されたレーザビームLbを対象物(ワーク)Wの表面上で走査させることで対象物Wの表面にキャラクタを印字する。
【0024】
印字動作を制御する印字信号は、そのHIGH/LOWに応じてレーザビームLbのON/OFFが切り替えられ、その1パルスが発振されるレーザビームLbの1パルスに対応するPWM信号である。PWM信号は、その周波数に応じたデューティ比に基づいてレーザ強度を規定することができる。変形例として、周波数に基づいた走査速度によってレーザ強度を規定してもよい。
【0025】
レーザ励起部200はレーザ励起光源202と集光部204を有している。レーザ励起光源202には電源部206から定圧電源が供給される。レーザ励起光源202は半導体レーザやランプ等で構成される。具体的には、レーザ励起光源202は、複数の半導体レーザダイオード素子を直線状に並べたレーザダイオードアレイで構成されている。各素子からのレーザ発振がライン状に出力され、この出力は集光部204の入射面に入射される。集光部204は典型的にはフォーカシングレンズ等で構成され、そして、集光部204の出射面からレーザ励起光がレーザ出力部300に向けて出力される。
【0026】
レーザ励起部200とレーザ出力部300とは光ファイバーケーブル208によって連結されている。レーザ励起部200が生成したレーザ励起光は上述したレーザ媒質304に入る。ここに、レーザ媒質304はロッド状の固体レーザ媒質(例えばNd:YVO
4)で構成され、その一方の端面からレーザ励起光を入力して励起され、他方の端面からレーザビームLbを出射する、いわゆるエンドポンピングによる励起方式が採用されている。レーザ媒質304は、固体レーザ媒質に波長変換素子を組み合わせて、出力されるレーザビームLbの波長を任意の波長に変換できるようにしてもよい。
【0027】
レーザ媒質304の変形例として、レーザビームを発振させる共振器でレーザ媒質304を構成しないで、固体レーザ媒質の代わりに、波長変換のみを行う波長変換素子でレーザ媒質304を構成してもよい。この場合は、半導体レーザの出力光に対して波長変換を行えばよい。波長変換素子としては、例えばKTP(KTiPO
4)、有機非線形光学材料や他の無機非線形光学材料、例えばKN(KNbO
3)、KAP(KAsPO
4)、BBO、LBOや、バルク型の分極反転素子(LiNbO
3(Periodically Polled Lithium Niobate :PPLN)、LiTaO
3等)が利用できる。また、Ho、Er、Tm、Sm、Nd等の希土類をドープしたフッ化物ファイバーを用いたアップコンバージョンによるレーザの励起光源用半導体レーザを用いることもできる。
【0028】
レーザ出力部300は、レーザビームLbを発生させる上述したレーザ発振部302を備える。レーザ発振部302は、上述したレーザ媒質304が放出する誘導放出光の光路に沿って所定の距離を隔てて対向配置された出力ミラー及び全反射ミラーと、これらの間に配されたアパーチャ、Qスイッチ等を備える。レーザ媒質304が放出する誘導放出光を、出力ミラーと全反射ミラーとの間での多重反射により増幅し、Qスイッチの動作により短周期にて通断しつつアパーチャによりモード選別して、出力ミラーを経てレーザビームLbを出力する。
【0029】
レーザ発振部302の変形例として、CO
2やヘリウム−ネオン、アルゴン、窒素等の気体を媒質として用いる気体レーザ方式を採用してもよい。例えば炭酸ガスレーザを用いた場合、レーザ発振部302は、内蔵電極を含むレーザ発振部302の内部に炭酸ガス(CO
2)が充填され、制御部320から与えられる印字信号に基づいて内蔵電極により炭酸ガスを励起してレーザ発振させる。
【0030】
レーザマーカ100はレーザビーム走査系310を有する。レーザビーム走査系310は、レーザ発振部302と光路を一致させたZ軸スキャナを内蔵するビームエキスパンダ312と、X軸スキャナ314と、このX軸スキャナ314と直交するよう配置されたY軸スキャナ316とを備える。このレーザビーム走査系310は、レーザ発振部302より出射されるレーザビームLbをX軸スキャナ314、Y軸スキャナ316で対象物Wの表面上の作業領域で二次元的に走査させる。好ましくは、Z軸スキャナ(図示せず)を設けて、このZ軸スキャナで高さ方向に焦点距離を調整できるようにするのが良い。これにより三次元状に印字加工が可能となる。なお、集光レンズであるfθレンズは図示を省略している。
【0031】
X軸、Y軸スキャナ314、316は、光を反射するガルバノミラー314a、316aと、このガルバノミラー314a、316a、を回動軸に固定して回動するためのガルバノモータ314b、316bと、回動軸の回転位置を検出して位置信号として出力する位置検出部を備える。また各X軸、Y軸スキャナ314、316はスキャナ駆動回路318に接続されている。スキャナ駆動回路318は制御部320に接続されている。そして制御部320から供給される制御信号によってX軸、Y軸スキャナ314、316の動作が制御される。
【0032】
ビームエキスパンダ312は、これに含まれるZ軸スキャナによって、レーザ媒質304から出射するレーザビームLbのスポット径を調整する機能が付加されている。スポット径を調整することで、焦点距離を調整することができる。すなわち、ビームエキスパンダ312で入射レンズと出射レンズとの相対距離を変化させることでレーザビームLbのビーム径を拡大/縮小し、焦点位置も変化させることができる。このビームエキスパンダ312の具体的な構成は特開2007−111763号公報に詳細に記載されていることから、この特開2007−111763号の記載を援用することにより、ビームエキスパンダ312のこれ以上の説明を省略する。
【0033】
ビームエキスパンダ312に含まれるZ軸スキャナ及びX軸、Y軸スキャナ314、316を制御することにより、ワーキングディスタンスが変化するようなワークに対しても、例えば照準距離を調整しながらレーザビームLbを走査することができる。したがって、曲面状や段差状の対象物(ワーク)Wの三次元印字位置の全エリアに対して焦点距離を合わせた状態で高精度に且つ最小スポットで印字加工できる。また、印字対象物となるワークの高さが途中で変わる、すなわち段取り替えにも、柔軟に対応することが可能となる。なお、実施例において、「ワーキングディスタンス」とは、レーザマーカ100のヘッド筐体の下面を基準面とし、この基準面とワーク表面までの距離を意味しているが、本発明はこれに限られず、ヘッド筐体の所定位置(例えばヘッド筐体の上面や、冶具の一面など)を基準面とすることもできる。
【0034】
レーザマーカ100は、レーザビーム走査系310のレーザビームの行路から分岐した受光軸330を有する撮像素子332を有し、この撮像素子332は実質的にカメラつまり撮像部を構成している。具体的に説明すると、レーザマーカ100は、ビームエキスパンダ312と、X、Y軸ガルバノミラー314a、316aとの間に配置されたハーフミラー334を有している。撮像素子332の受光軸330は、レーザビーム出射軸336が偏向されるハーフミラー334を介してレーザビーム出射軸336から分岐されている。
【0035】
図1を引き続き参照して、参照符号340は距離測定用ポインタ光出射器を示す。距離測定用ポインタ光出射器340は、レーザマーカ100に内蔵されていてもよいし、レーザマーカ100にアタッチメント形式で外付けされていてもよい。距離測定用ポインタ光出射器340はワークWに向けてポインタ光Lpを間欠的に投光する。このポインタ光Lpは、ワークWの表面で反射し、反射光は、レーザビームLbと同じ光軸を通り、X軸・Y軸ガルバノミラー314a、316aを経由して撮像素子332で受光される。実施例では、ポインタ光Lpとしてレーザ光が採用されている。
【0036】
他の実施例のレーザマーカを含む印字システムの一例(図2、図3):
図2は、例示としての印字システムの全体構成を示す。
図3は、そのブロック図である。印字システム400は、マーキングヘッド402と、マーキングヘッド402を制御するコントローラ404と、コントローラ404とデータ通信可能に接続された三次元加工データ設定装置つまりパーソナルコンピュータ(PC)406とを有する。
【0037】
PC406つまり三次元加工データ設定装置を使って、ユーザはワークWの加工条件などを入力することができる。また、三次元加工データ設定装置406のディスプレイ上にパラメータの設定画面などを表示させて、コントローラ404に対して印字パターンを三次元加工データとして設定することができる。三次元加工データ設定装置406は、三次元加工データ設定プログラムをインストールしたパーソナルコンピュータやプログラマブルロジックコントローラ(PLC)で構成される。
【0038】
コントローラ404には、必要に応じて各種外部機器408が接続される。外部機器408としては、例えばワーク搬送ラインで搬送されるワークWの種別、位置等を確認するイメージセンサ等の画像認識装置、ワークWとマーキングヘッド402との距離に関する情報を取得する変位計等の距離測定装置、所定のシーケンスに従って機器の制御を行うPLC、ワークWの通過を検出するPDセンサその他各種のセンサ等を例示的に挙げることができる。
【0039】
印字システム400は、入力された対象物の印字面に加工パターンを仮想的に一致させるように加工パターン情報を平面状から三次元空間座標データに変換して、対象物の印字面が三次元の凹凸面であっても比較的容易に印字パターンを設定してこれを対象物の表面に印字できる。三次元加工データの設定は例えば特開2007−111763号公報に三次元加工データの具体的な手法が記載されていることから、この特開2007−111763号公報の全文を本明細書に援用することにより、その説明を省略する。
【0040】
コントローラ404は、メイン制御回路410、ワーク加工情報記憶部412、電源回路414、励起光源416を有し、また、レーザビーム増幅器418を含むレーザ発振器ユニットを有する。コントローラ404によってレーザ発振の制御やレーザビームの走査制御が実行される。励起光源416は、レーザ媒質を励起するための励起光を生成するLD(レーザダイオード)などの発光素子と集光レンズとを含む。
【0041】
レーザビーム増幅器418は、コアにレーザ媒質が添加された光ファイバーを含み、このファイバー式のレーザビーム増幅器418を用いてレーザビームを増幅することによりエネルギー密度の高い高出力のレーザビームを生成することができる。このレーザビーム増幅器418は、低出力の種光を発生させるマスターオシレータ部、種光を増幅するパワーアンプ部、ポンピング用光源装置、アイソレータなどで構成され、マスターオシレータ部及びパワーアンプ部は、レーザ媒質としてイッテルビウム(Yb)などの希土類元素が添加された希土類ドープ光ファイバーによって構成される。
【0042】
レーザビーム増幅器418は、例えば、レーザ発振を制御するためのQスイッチを設けるのが好ましく、Qスイッチの切り替えにより、連続発振をパルス発振に変換することができ、ピークパワーの大きなパルス波を生成することができる。なお、レーザビーム増幅器418としては、種光を生成するLDを直接にオン又はオフすることによって、パルス発振可能な発振器のように、Qスイッチ無しで構成してもよい。
【0043】
コントローラ404とマーキングヘッド402とは光ファイバーケーブル420によって連結されている。光ファイバーケーブル420には、レーザビーム増幅器418でレーザビームが直接的に入力される。すなわち、光ファイバーケーブル420は、レーザビーム増幅器418によって増幅されたレーザビームをマーキングヘッド402に伝送するデリバリファイバーである。
【0044】
マーキングヘッド402は、光アイソレータ422、ビームエキスパンダ424、ビームサンプラー426、シャッタ428、フォトインタラプタ430、ダイクロイックミラー432、Z軸スキャナ434、X軸・Y軸スキャナ436、パワーモニタ438及びガイド光源440を含む。
【0045】
光アイソレータ422は、光ファイバーケーブル420の端面から出射されたレーザビームを通過させ、戻り光を抑制する戻り光抑制手段を構成し、光ファイバーケーブル420を介して伝送されたレーザビームをビームエキスパンダ424へ入力する順方向の伝送を許容し、逆方向への伝送を禁止する。光アイソレータ422は、例えば、アパーチャ、偏光子、ファラデー回転子によって構成される。アパーチャは、通過光を制限するための遮断板である。偏光子は、複屈折結晶からなるロッド状の光学素子である。ファラデー回転子は、磁界の印加によって偏光面を回転させる磁気光学素子である。
【0046】
ビームエキスパンダ424は、レーザビームのビーム径を可変に制御するビーム径可変手段を構成し、光アイソレータ422と光軸を一致させて配置される。このビームエキスパンダ424は、光路上に配置された複数のレンズによって構成され、レンズ間の距離を調整することにより、ビーム径を所望の値に変換している。ビームサンプラー426は、ビームエキスパンダ424を通過したレーザビームの一部をダイクロイックミラー432に向けて反射させ、他の一部をパワーモニタ438側へ透過させる光学素子である。
【0047】
パワーモニタ438は、ビームサンプラー426を透過したレーザビームを受光し、レーザパワーを検出するレーザパワー検出用センサであり、レーザパワーの検出結果をパワーレベル検出信号としてコントローラ404内のメイン制御回路410へ出力する。この様なパワーモニタ438としては、例えば、サーモパイル(熱電堆)、或いは、フォトダイオードが用いられる。
【0048】
シャッタ428は、レーザビームを必要に応じて遮断するための遮断装置であり、遮断板や遮断板を移動させる駆動機構によって構成される。このシャッタ428は、ビームサンプラー426及びダイクロイックミラー432間に配置されている。
【0049】
フォトインタラプタ430は、シャッタ428が閉じているか否かを光学的に検出する光学センサである。ダイクロイックミラー432は、特定波長の光のみを反射し、他の波長の光を透過させる光学素子であり、シャッタ428を通過したレーザビームをZ軸スキャナ434に向けて反射し、ガイド光源440からのガイド光をそのまま透過させる。
【0050】
Z軸スキャナ434は、光路上に配置された1又は2以上のレンズと、レンズを移動させるレンズ駆動用モーターによって構成されるレーザビームの走査機構であり、レンズを変位させることによって、マーキングヘッド402から出射されるレーザビームの焦点位置を光軸方向に調整することができる。また、Z軸スキャナ434は、レーザビームの集光機能を有している。なお、このZ軸スキャナ434は、ワークWの高さに追随してレーザビームの焦点位置を光軸方向に移動させることが可能な走査機構である。
【0051】
X軸・Y軸スキャナ436は、交差する回転軸にそれぞれ配置された2つのガルバノミラーと、これらのガルバノミラーを回転させるガルバノミラー駆動用モーターによって構成される。X軸・Y軸スキャナ436はレーザビームの走査機構である。X軸・Y軸スキャナ436は、ガルバノミラーを軸回転させることによって、レーザビームを光軸と交差する方向に走査させる。ここでは、加工対象面に照射されるレーザビームの光軸方向をZ軸方向と呼び、光軸と交差する互いに平行でない2つの方向をそれぞれX軸方向及びY軸方向と呼ぶ。
【0052】
Z軸スキャナ434を通過したレーザビームは、X軸・Y軸スキャナ436のガルバノミラーによって反射され、ワークWに照射される。ガイド光源440は、レーザビームLbの照射位置をワークW上で可視化するためのガイド光を生成する光源装置である。ガイド光源440から出射されたガイド光は、ダイクロイックミラー432を透過し、レーザビームの光路に入る。レーザビームの光路に入ったガイド光は、Z軸スキャナ434及びX軸・Y軸スキャナ436を経てワークWに照射される。
【0053】
ワーク加工情報記憶部412は、ワークWのレーザ加工に関する情報をワーク加工情報として保持するメモリである。ワーク加工情報として、文字などのキャラクタをワークW上に加工する際の加工線の描画情報、レーザ発振を制御するためのレーザ出力制御情報などを含む。加工線の描画情報は、レーザビームの照射目標を示す三次元位置情報、例えば、座標データからなる。また、レーザ出力制御情報としては、例えば、レーザビームのピークパワー、パルス幅、繰返し周波数などが保持される。
【0054】
ピークパワーは、パルスエネルギーをパルス幅で除算することによって得られる物理量である。パルス幅は、ピークパワーの半分程度のパワーレベルにおけるパルス波の時間長であり、繰返し周波数は、パルス発振の周波数である。また、中心波長は、レーザビーム増幅器418により生成されるレーザビームの波長である。
【0055】
メイン制御回路410は、ワーク加工情報記憶部412内に保持されているワーク加工情報に基づいて、励起光源416、レーザビーム増幅器418、Z軸スキャナ434、X軸・Y軸スキャナ436及びシャッタ428を制御する制御手段を構成する。具体的には、メイン制御回路410は、レーザ出力制御情報に基づいて、マーキングヘッド402から出射されるレーザビームのピークパワーやパルス幅を調整するための発振器制御信号を生成し、そして、励起光源416及びレーザビーム増幅器418へ制御信号を出力する。
【0056】
メイン制御回路410は、また、レーザ出力制御情報や描画情報に基づいて、Z軸スキャナ434のレンズ駆動用モーター、X軸・Y軸スキャナ436のミラー駆動用モーター、及び、シャッタ428を制御するための駆動信号を生成し、この各種の制御信号をZ軸スキャナ434、X軸・Y軸スキャナ436及びシャッタ428へ出力する。
【0057】
この印字システム400においても、Z軸スキャナ434及びX軸・Y軸スキャナ436を制御することにより、ワーキングディスタンスを調整しながらレーザビームLbを走査することができる。したがって、曲面状や段差状の対象物(ワーク)Wの三次元印字位置の全エリアに対して焦点距離を合わせた状態で高精度に且つ最小スポットで印字加工できる。
【0058】
図3を参照して、印字システム400は、Z軸スキャナ434と、X軸・Y軸スキャナ436つまりガルバノミラーとの間にハーフミラー450を有している。このハーフミラー450は、レーザビームの出射軸452から分岐した受光軸454を生成する。この受光軸454は撮像素子456の受光軸である。撮像素子456は実質的にカメラつまり撮像部を構成する。
【0059】
図3を引き続き参照して、参照符号460は距離測定用ポインタ光出射器を示す。距離測定用ポインタ光出射器460は、マーキングヘッド402に内蔵されていてもよいし、マーキングヘッド402にアタッチメント形式で外付けされていてもよい。距離測定用ポインタ光出射器460はワークWに向けてポインタ光Lpを間欠的に投光する。このポインタ光Lpは、ワークWの表面で反射し、反射光はX軸・Y軸スキャナ436を経由して撮像素子456で受光される。実施例では、ポインタ光Lpとしてレーザ光が採用されている。
【0060】
図1を参照して説明したレーザマーカ100、
図2、
図3を参照して説明した印字システム400の印字可能範囲500を
図4に示す。
図4に示す参照符号502は座標原点である。また、
図4に示す参照符号504は撮像領域を示す。X軸・Y軸スキャナ314、316、436を動作させることにより、撮像領域504を移動させることができる。なお、
図4に示されるように、撮像領域504は、印字可能範囲500よりも狭い領域であり、X軸、Y軸スキャナ314、316(
図1)、X軸・Y軸スキャナ436(
図3)を制御することによって、撮像領域504を所望の位置に動かすことが可能となる。
【0061】
レーザマーカ100、
図2、
図3を参照して説明した印字システム400の基本動作の概要を
図5のフローチャートに基づいて説明する。
図5を参照して、先ず、レーザマーカ100、レーザ印字システム400のメモリに記憶されている印字データから所望のキャラクタ及びこれに関連したデータの読み出しが行われる(S10)。次に、ワークWがワーク搬送ラインの加工ステージつまり印字及び読取ステージ11に到着したことを例えば光電センサで検知すると(S11)、撮像部(撮像素子332、456)によるワークの撮像が行われ、この撮像画像に基づいて実際のワークWの印字予定位置の位置ズレ、つまり基準となる印字位置からの変位量が算出される(S12)。この変位量は、X座標、Y座標及び回転角度θによって規定される。そして、この変位量に基づいて印字位置補正データが作成される。次のステップS13で上記印字位置補正データに基づいて印字位置が補正され、補正後の印字位置に基づいてワークWへの印字が実行される(S14)。
【0062】
印字の際に使用した撮像部(撮像素子332、456)を再び使って、印字したキャラクタの読み取りが行われる(S15)。この読取処理では、上記印字位置補正データのうちX座標、Y座標を使って撮像領域の位置補正が行われる。この光軸調整を行った後にキャラクタの撮像が実行される。そして、この画像に基づいてキャラクタの品質の評価が行われる。この読取処理(S15)が完了すると、ワークは次のステージに搬送される。
【0063】
上述した実施例では、撮像素子332、456つまりカメラの光軸が、レーザビームLbの出射光軸から分岐した光軸であるため、印字処理及び読取処理を共通の座標系つまり座標原点502が同じ座標系を使って制御することができる。したがって、印字処理で作成した印字位置補正データを使ってカメラの受光軸を調整つまり撮像領域の位置を補正することで、印字処理でワークに付記したキャラクタを、次の読取処理で読み取るときに当該キャラクタを撮像領域504に確実に納めることができる。
【0064】
レーザマーカ100、レーザ印字システム400は、また、印字処理において、レーザビームLbの焦点をワークWの印字ポイントに整合させて実際のワーキングディスタンスに整合するZ座標の補正が行われる。なお、Z座標の補正を行ったときに、レーザビームLbの焦点距離を自動的に追従補正させてもよい。
【0065】
図6は、Z座標(高さ)補正に関する制御の一例を説明するためのフローチャートである。
図6を参照して、ステップS20において距離測定用ポインタ光出射器340、460のポインタ光Lpを使って高さ測定つまりワーキングディスタンスの測定が行われる。この測定の詳しい説明は後述する。
【0066】
次に、ステップS20で求めたワーキングディスタンスに基づいて印字データのZ座標を補正する(S21)。そして、先に
図5を参照して説明した印字処理を実行する(S14)。上述したように、ステップS21でのZ座標の補正に伴って、レーザビームの焦点距離を追従補正してもよい。
【0067】
図7〜
図8を参照して高さ補正について説明する。説明の都合上、
図7の(b)を説明すると、この
図7の(b)は、印字処理でのZ座標が「0」の基準面を示す。実施例では、Z座標値(Z=0)のワーキングディスタンス(WD)は189mmである。
図7の(a)はZ座標が「Z=10」の平面を示す。実施例では、Z座標値(Z=10)のワーキングディスタンス(WD)は179mmである。
図7の(c)はZ座標が「Z=−10」の平面を示す。実施例では、Z座標値(Z=−10)のワーキングディスタンス(WD)は199mmである。
【0068】
図7の右側は、 (a)、(b)、(c)の各々のポインタ光Lpの反射光の撮像画像である。この撮像画像は、X軸、Y軸スキャナ314、316、436に映った画像である。参照符号510(a)、510(b)、510(c)は撮像画像508でのポインタ光Lpの輝点を示す。
【0069】
距離測定用ポインタ光出射器340、460は、その出射方向が必ずしも必須ではないが、
図7の(b)に図示の基準面におけるレーザビームLbの基準位置つまり座標原点(X座標、Y座標、Z座標が共に「0」)に指向されるのが好ましい。距離測定用ポインタ光出射器340、460は、また、好ましくは座標原点から延びるX座標軸又はY座標軸に配置されるのがよい。
【0070】
図7の(a)の右側には、ワーキングディスタンス(179mm)で撮像画像508(a)を示し、参照符号510(a)はポインタ光Lpの輝点位置を示す。この輝点510(a)の中心のX、Y座標が「110、0」であったとする。
図7の(b)の右側には、ワーキングディスタンス(189mm)で撮像画像508(b)を示し、参照符号510(b)はポインタ光Lpの輝点を示す。輝点510(b)の中心のX、Y座標は「10、0」である。
図7の(c)の右側には、ワーキングディスタンス(199mm)で撮像画像508(c)を示し、参照符号510(c)はポインタ光Lpの輝点を示す。この輝点510(c)の中心のX、Y座標が「−90、0」であったとする。
【0071】
図8は、高さ、つまりワーキングディスタンス(WD)とポインタ光Lpの輝点510の中心座標との対照表(対照テーブル)である。すなわち、
図8は、複数の前記輝点510の位置と、各輝点510の位置に対応するワーキングディスタンス(WD)とを相関させたテーブルを示す。この
図8に図示のテーブルは予めレーザ印字装置のメモリに記憶される。
【0072】
図9は、距離測定用ポインタ光出射器460を点滅してポインタ光LpをワークWに向けて出射して得た撮像画像508である。図中、参照符号510は、ポインタ光Lpの輝点を示す。いま、この輝点510の中心座標が「60、0」だったとする。
【0073】
この輝点510の中心座標「60、0」と上述した対照テーブル(
図8)とに基づいて、そして、この対照テーブルを距離導出情報として、
図9に図示の輝点510に対応するワーキングディスタンスWDを線形近似(線形補正)により求めることができる。すなわち、座標原点「0、0」(WD=189mm)(
図7の(b))と、
図7の(a)の輝点位置510(a)の座標「10、0」(WD=179mm)とに基づいて、輝点510の座標「60、0」から、そのワーキングディスタンスWD(=189+((179−189)/(110−10))×(60−10)=189−5)=184mmであると言うことができる。なお、本実施例では、2点の線形近似を用いることとしたが、3点以上を使用した曲線近似を使用可能であることは言うまでもない。
【0074】
ワーキングディスタンスWDの求め方として、予め記憶してある数式を距離導出情報とし、この数式に対して、実際に取り込んだ輝点の位置を代入して実際のワーキングディスタンスWDを求めるようにしてもよい。これによれば上述した対照テーブル(
図8)を用意する必要はない。
【0075】
高さ(ワーキングディスタンス)測定の処理手順を
図10を参照して説明する。一般的にレーザマーカは、印字処理時間を短縮することが常に求められている。この要請に応じるために、レーザ印字が終了したとき、X軸・Y軸スキャナ314、316、436つまりガルバノミラーは、このレーザ印字が完了したときの状態が維持される。換言すれば、ガルバノミラーはレーザビームLbが座標原点502(
図4)と整合する原位置に戻されない。
図10のステップS30の「ガルバノミラーが向いている」という意味は、前回、印字処理が完了した時点のガルバノミラーの位置にあることを意味している。勿論、撮像領域504は、ガルバノミラーが動作すると、その位置が変化する。
【0076】
次のステップS31では、撮像領域504の中心が座標原点502(
図4)と一致するようにガルバノミラーの制御が行われる。この制御によって、
図11に示すように、撮像領域504は、その中心が印字可能領域500の座標原点502と整合する位置まで移動する。
【0077】
次いでステップS32で、距離測定用ポインタ光出射器340、460を点灯し、この点灯画像を取り込む(S33)。
【0078】
次のステップS34で、距離測定用ポインタ光出射器340、460を消灯し、この消灯画像を取り込む(S35)。なお、上記消灯画像を先ず取得し、その次に上記点灯画像を取得するようにしてもよい。
【0079】
次のステップS36で、点灯画像(S33)及び消灯画像(S35)から、その差分画像を生成する。
図12の参照符号508Aは点灯画像(S33)を示す。また、参照符号508Bは消灯画像(S35)を示す。また、参照符号508Cは差分画像を示す。
【0080】
ポインタ光Lpの輝点510を抽出するために差分画像508Cを用いることで、輝点510の抽出精度を高めることができる。
【0081】
図10のフローチャートに戻って、S37で、差分画像508Cの輝点510の中心座標から、前述したテーブル(
図8)を使ってワーキングディスタンスWDが算出される。このワーキングディスタンスWDにより、
図6を参照して説明したステップS21で印字データの補正が行われる。
【0082】
次のステップS38で、ガルバノミラーの制御が行われ、前述したステップS30の位置、つまり前回、印字処理が完了した時点のガルバノミラーの位置に戻される。
【0083】
図10を参照して前述した高さ(ワーキングディスタンス)測定の処理手順の変形例を
図13を参照して説明する。
図13に図示の処理手順では、ポインタ光Lpを点灯した後に、ガルバノミラー制御が実行される。
図13に図示のフローチャートを参照して、先ずS40で「ガルバノミラーが向いている」状態で、次のS41で距離測定用ポインタ光出射器340、460が点灯される。そして、次のS42で、撮像領域504の中心が座標原点502(
図4)と一致するようにガルバノミラーの制御が行われる。そして、このガルバノミラー制御が終わると、点灯画像508A(
図12)が取り込まれる(S43)。
【0084】
次のステップS44で距離測定用ポインタ光出射器340、460が消灯された後に、消灯画像508B(
図12)が取り込まれる(S45)。
【0085】
ステップS46以降の差分画像508C(
図12)の生成(S46)、ワーキングディスタンスWDの算出(S47)、ガルバノミラー制御による前回、印字処理が完了した時点のガルバノミラーの位置に戻す制御(S48)は、
図10を参照して前述したステップS36〜S38と同じである。
【0086】
レーザマーカ(
図1)、印字システム400(
図2、
図3)は追加の機能として公差設定機能を有している。この公差機能は、上述したワーキングディスタンスWDの測定の結果、計測したワーキングディスタンスWDが、基準となるワーキングディスタンスWD(0)よりも所定の範囲(公差)を超えている場合には、警告などを出力する機能である。
【0087】
図14は、PC406に表示可能なGUI(グラフィカルユーザインターフェース)を示す。図示のGUIは、公差設定機能に関連した設定画面である。図示のGUIの下段に「公差設定」という項目の上限及び下限のアップ、ダウンボタンを操作することで公差の範囲を設定することができる。「上限」の項目に見られる「2.000」mmは、上述した基準面(
図7の(b))よりも上方に2.000mm高いという意味である。「下限」の項目に見られる「−2.000」mmは、上述した基準面(
図7の(b))よりも下方に2.000mm低いという意味である。
【0088】
図15は、公差設定機能に関連した制御の一例を説明するためのフローチャートである。
図15を参照して、ステップS50で、上記GUI(
図14)を使って公差の上限値及び下限値を設定する。そして、ステップS51で印字開始トリガを受け取ると、上述した高さ測定(ワーキングディスタンスWDの測定)処理が実行される。そして、ワーキングディスタンスWDの測定が終わると、ステップS53に進んで、実測したワーキングディスタンスWDが所定の公差の範囲であるか否かの判定が行われ、YESつまり公差の範囲内であるときにはステップS54に進んで、印字データの高さ補正つまりワーキングディスタンスWDの調整を行い、次いで印字処理が実行される(S55)。
【0089】
上記ステップS53で実測したワーキングディスタンスWDが所定の公差の範囲から逸脱しているときには、ステップS56に進んで、印字を実行するか否かをユーザに確認する。ユーザが「印字を実行しない」を選択したときには、ステップS57に進んで「エラー」信号を外部機器408(例えばPLC)に出力する。他方、ユーザが「印字を実行する」を選択したときには、ステップS58に進んで「警告」信号を外部機器408(例えばPLC)に出力した後に上述したステップS54(印字データの高さ補正)、S55(印字処理)を実行する。