(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1流路を形成する管は、前記第2流路側の端部において、壁厚が前記第2流路側に向かうほど薄くなるテーパ領域を有し、当該テーパ領域のテーパ角は180度未満であることを特徴とする請求項1または2に記載のパルス管冷凍機。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施の形態について図面と共に説明する。まず、本発明のある実施の形態に係るパルス管冷凍機200について、その全体構成と動作を説明する。
【0009】
図1は、実施の形態に係るパルス管冷凍機200の概略を模式的に示す図である。このパルス管冷凍機200は、2段式の構造となっている。
【0010】
図1に示すように、パルス管冷凍機200は、圧縮機212、高温側蓄冷管240および低温側蓄冷管280、高温側パルス管250および低温側パルス管290、第1配管256および第2配管286、オリフィス等で構成された第1流路抵抗260、第2流路抵抗261、ならびに開閉バルブV1〜V6等を備える。高温側蓄冷管240の内部空間には、高温側蓄冷材が充填される。高温側蓄冷材は、例えば銅製の金網である。低温側蓄冷管280の内部空間には、低温側蓄冷材が充填される。低温側蓄冷材は、例えば鉛、ビスマス、錫の粒である。
【0011】
高温側蓄冷管240は、高温端242および低温端244を有する。低温側蓄冷管280は、高温端244(高温側蓄冷管240の低温端244に相当)および低温端284を有する。高温側パルス管250は、高温端252および低温端254を有する。低温側パルス管290は、高温端292および低温端294を有する。高温側パルス管250の高温端252および低温端254、低温側パルス管290の高温端292および低温端294には、それぞれ熱交換器が設置されている。高温側蓄冷管240の低温端244は低温側蓄冷管280の高温端244と共通であるため、高温側蓄冷管240と低温側蓄冷管280とは長手方向の軸が共通するように配置される。また、高温側蓄冷管240と高温側パルス管250とは、長手方向の軸が平行になるように並んで配置される。低温側蓄冷管280と低温側パルス管290も、長手方向の軸が平行になるように並んで配置される。
【0012】
高温側蓄冷管240の低温端244は、第1配管256を介して、高温側パルス管250の低温端254と接続される。また、低温側蓄冷管280の低温端284は、第2配管286を介して、低温側パルス管290の低温端294と接続される。したがって、高温側蓄冷管240の低温端244における作動ガスの温度と、高温側パルス管250の低温端254における作動ガスの温度は、ほぼ等しい温度となる。また、低温側蓄冷管280の低温端284における作動ガスの温度と、低温側パルス管290の低温端294の温度も、ほぼ等しい温度となる。
【0013】
高温側蓄冷管240の低温端244は低温側蓄冷管280の高温端244と共通である。このため、低温側蓄冷管280の低温端284は、高温側蓄冷管240の低温端244よりもさらに低温となる。ゆえに、低温側パルス管290の低温端294は、高温側パルス管250の低温端254よりもさらに低温となる。
【0014】
圧縮機212の高圧側(吐出側)のガス流路は、
図1におけるA点で3方向に分岐し、第1ガス供給流路H1、第2ガス供給流路H2、および第3ガス供給流路H3が構成される。第1ガス供給流路H1は、第1開閉バルブV1が設置された第1高圧配管215A〜共通配管220で構成され、圧縮機212の高圧側と高温側蓄冷管240の高温端242とを接続する。第2ガス供給流路H2は、第3開閉バルブV3が接続された第2高圧配管225A〜第1流路抵抗260が設置された共通配管230で構成され、圧縮機212の高圧側と高温側パルス管250の高温端252とを接続する。第3ガス供給流路H3は、第5開閉バルブV5が接続された第3高圧配管235A〜第2流路抵抗261が設置された共通配管299で構成され、圧縮機212の高圧側と低温側パルス管290の高温端292とを接続する。
【0015】
一方、圧縮機212の低圧側(吸込側)のガス流路は、第1ガス回収流路L1、第2ガス回収流路L2および第3ガス回収流路L3の、3方向に分岐している。第1ガス回収流路L1は、共通配管220〜第2開閉バルブV2が設置された第1低圧配管215B〜B点で構成され、高温側蓄冷管240の高温端242と、圧縮機212とを接続する。第2ガス回収流路L2は、第1流路抵抗260が設置された共通配管230〜第4開閉バルブV4が設置された第2低圧配管225B〜B点で構成され、高温側パルス管250の高温端252と圧縮機212とを接続する。第3ガス回収流路L3は、第2流路抵抗261が設置された共通配管299〜第6開閉バルブV6が設置された第3低圧配管235B〜B点で構成され、低温側パルス管290の高温端292と圧縮機212とを接続する。このように、共通配管220、230、299は、圧縮機が高圧のガスを供給するときには、それぞれガス供給流路の一部となり、低圧のガスを回収するときには、それぞれガス回収路の一部となる。
【0016】
圧縮機212は、低圧側のガス流路から低圧の作動ガスを回収する。圧縮機212は、回収した低圧の作動ガスを圧縮して高圧の作動ガスを生成する。圧縮機212は、生成した高圧の作動ガスを高圧側のガス流路に供給する。
【0017】
続いて、パルス管冷凍機200の動作について説明する。
【0018】
図2は、
図1に示した4バルブ型のパルス管冷凍機200の作動の際の、6つのバルブの開閉状態を時系列的に示す図であり、6つの開閉バルブV1〜V6の開閉状態を時系列的に示した図である。
【0019】
図2に示すように、パルス管冷凍機の200
の作動時には、6つの開閉バルブV1〜V6の開閉状態は、以下のように周期的に変化する。
【0020】
(第1過程:時間0〜t1)
まず、時間t=0において、第5開閉バルブV5のみが開にされる。これにより、圧縮機212から、第3ガス供給流路H3を介して、すなわち第3高圧配管235A〜第2流路抵抗261〜共通配管299〜高温端292の経路で、低温側パルス管290に高圧作動ガスが供給される。その後、時間t=t1において、第5開閉バルブV5が開状態のまま、第3開閉バルブV3が開にされる。これにより、圧縮機212から、第2ガス供給流路H2を介して、すなわち第2高圧配管225A〜共通配管230〜高温端252の経路で、高温側パルス管250に高圧作動ガスが供給される。
【0021】
(第2過程:時間t2〜t3)
次に、時間t=t2において、開閉バルブV5、V3が開いた状態で、第1開閉バルブV1が開にされる。これにより、高圧作動ガスは、圧縮機212から、第1ガス供給流路H1を介して、すなわち第1高圧配管215A〜共通配管220〜高温端242の経路で、高温側蓄冷管240および低温側蓄冷管280に導入される。高圧作動ガスは、高温側蓄冷管240および低温側蓄冷管280を通過するときに、蓄冷材により冷却される。作動ガスの一部は、第1配管256を介して、高温側パルス管250に、低温端254の側から流入する。また作動ガスの他の一部は、低温側蓄冷管280を通り、第2配管286を介して、低温側パルス管290に、低温端294の側から流入する。
【0022】
(第3過程:時間t3〜t4)
次に、時間t=t3において、第1開閉バルブV1が開状態のまま、第3開閉バルブV3が閉にされ、その後、時間t=t4において、第5開閉バルブV5も閉にされる。圧縮機212からの作動ガスは、第1ガス供給流路H1のみを介して、高温側蓄冷管240に流入するようになる。作動ガスは、その後、高温側パルス管250および低温側パルス管290内に、それぞれ低温端254および低温端294の側から流入する。
【0023】
(第4過程:時間t4〜t5)
時間t=t5において、全ての開閉バルブV1〜V6が閉にされる。高温側パルス管250および低温側パルス管290の圧力上昇のため、高温側パルス管250および低温側パルス管290内の作動ガスの一部は、両パルス管の高温端252、292の側に設置された第1リザーバ251および第2リザーバ291に移動している。
【0024】
(第5過程:時間t5〜t7)
その後、時間t=t5において、第6開閉バルブV6が開かれ、低温側パルス管290内の作動ガスは、第3ガス回収流路L3を通って圧縮機212に戻る。その後、時間t=t6において、第4開閉バルブV4が開かれ、高温側パルス管250内の作動ガスは、第2ガス回収流路L2を通って圧縮機212に戻る。これにより、高温側パルス管250および低温側パルス管290の圧力が低下する。すなわち、高温側パルス管250の低温端254および低温側パルス管290の低温端294で作動ガスが膨張し、寒冷が発生する。
【0025】
(第6過程:時間t7〜t8)
次に、時間t=t7において、開閉バルブV6、V4が開状態のまま、第2開閉バルブV2が開かれる。これにより、高温側パルス管250および低温側パルス管290、および低温側蓄冷管280内の作動ガスの大部分は、高温側蓄冷管240を通り、第1ガス回収流路L1を介して、圧縮機212に戻る。膨張した作動ガスは、高温側蓄冷管240および低温側蓄冷管280を通過するときに、蓄冷材を冷却する。
【0026】
(第7過程:時間t8〜t10)
次に、時間t=t8において、第2開閉バルブV2が開いた状態で、第4開閉バルブV4が閉止され、その後、時間t=t9において、第6開閉バルブV6も閉にされる。その後、時間t=t10において、第2開閉バルブV2が閉止され、1サイクルが完了する。
【0027】
以上のサイクルを1サイクルとして、サイクルを繰り返すことにより、高温側パルス管250の低温端254、および低温側パルス管290の低温端294に寒冷が発生し、冷却対象を冷却することができる。
【0028】
ここで、圧縮機212、高温側蓄冷管240、低温側蓄冷管280、低温側パルス管290、および、第2流路抵抗261を含むループ状の経路(以下、単に「ループ経路」という。)に着目する。上述の各過程において、低温側パルス管290の高温端292側から流出する作動ガスの方が、低温端294側から流出する作動ガスよりも多いとする。この場合、低温側蓄冷管280の低温端294から高温端292に向かってループ経路を移動する作動ガスの直流成分が存在することになる。ループ経路におけるこの作動ガスの直流成分は「DCフロー」とも呼ばれ、パルス管冷凍機200の冷凍性能に大きな性能を及ぼすことが知られている。
【0029】
ループ経路に含まれる第2流路抵抗261は、例えばオリフィス等によって実現され、ループ経路における作動ガスの流れを調整する機能を担う。本願の発明者は、ループ経路に含まれる第2流路抵抗261を利用して、ループ経路における作動ガスのDCフローを調整しうる可能性について認識するに至った。以下、実施の形態に係る第2流路抵抗261についてより詳細に説明する。
【0030】
図3は、実施の形態に係る第2流路抵抗261の断面を模式的に示す図である。
図3に示すように、実施の形態に係る第2流路抵抗261は、ニードルバルブ300と、ニードルバルブ300を収容するハウジング400とを備える。ニードルバルブ300は、ニードル軸302とニードルホルダ304とを備える。
【0031】
ハウジング400には、共通配管299を介して低温側パルス管290の高温端292と接続するハウジング側第1流路402aが設けられている。ハウジング400にはまた、第3ガス供給流路H3と第3ガス回収流路L3とに接続する第2流路404も設けられている。第3ガス供給流路H3と第3ガス回収流路L3とはともに圧縮機212に接続されている。したがって、第2流路404は圧縮機212と接続する流路とも言える。
【0032】
ニードルバルブ300のニードルホルダ304は、ハウジング400に挿入されて用いられる。ニードルホルダ304は、ハウジング400に挿入されたときに、ハウジング側第1流路402aと連通するバルブ側第1流路402bが設けられている。このハウジング側第1流路402aとバルブ側第1流路402bとを合わせて、第1流路402を構成する。ニードルホルダ304がハウジング400に挿入されると、バルブ側第1流路402bの出口は、第2流路404の出口と対向する。第2流路404の出口は、第1流路402に向けて径が大きくなるように拡張してもよい。
【0033】
ニードルホルダ304は第1Oリング306aを備える。このためニードルホルダ304がハウジング400に挿入されると、第1流路402と第2流路404とを流れる作動ガスが、ニードルホルダ304とハウジング400との間から外部に漏れることが抑制される。結果として、第1流路402の出口と第2流路404の出口とは、ハウジング400によって気密に収容される。また、ニードルホルダ304は第2Oリング306bを備える。このため、作動ガスは確実にバルブ側第1流路402bを通過する。
【0034】
ニードルバルブ300のニードル軸302は、ハウジング400に挿入された状態のニードルホルダ304に螺合されて用いられる。ニードルホルダ304にニードル軸302を螺合すると、ニードル軸302の先端部分はバルブ側第1流路402bに挿入される。ニードル軸302を回転すると、ニードル軸302はニードルホルダ304のねじに沿って移動する。バルブ側第1流路402bのうち、ニードル軸302の先端部分が挿入される部分にはオリフィス308が形成されている。このため、ニードル軸302をニードルホルダ304内で移動させることにより、第1流路402を流れる作動ガスの流量(流路抵抗)を調整することができる。なお、ニードル軸302は第3Oリング310を備えている。このため、第1流路402と第2流路404とを流れる作動ガスが、ニードルホルダ304とハウジング400との間から外部に漏れることが抑制される。
【0035】
上述したように、バルブ側第1流路402bはニードルホルダ304内に設けられる流路であり、ニードルホルダ304はバルブ側第1流路402bを形成する管でもある。したがって、ニードルホルダ304は、バルブ側第1流路402
bの壁部として機能する。
図3に示すように、ニードルホルダ304の第2流路404側の端部は、壁厚が第2流路404側に向かうほど薄くなるテーパ領域312を有する。ニードルホルダ304の本体部分は円筒形状であるが、テーパ領域312を有する第2流路404側の端部は、先細りする円錐台形状となっている。
【0036】
一方、ハウジング400のうちニードルホルダ304を挿入する領域は、略円筒形状の孔である。したがって、ハウジング400にニードルホルダ304を挿入すると、ニードルホルダ304のテーパ領域312とハウジング400とによって気密空間406が形成される。
図3に示すように、バルブ側第1流路402bの出口と、その第1流路の出口と対向する第2流路404の出口との間には空隙がある。このため、気密空間406は、空隙を介してバルブ側第1流路402bの出口と第2流路404の出口との両方に連通する空間となる。
【0037】
気密空間406は、ニードルホルダ304のテーパ領域312とハウジング400とによって形成される空間である。このため気密空間406は、バルブ側第1流路402bの出口よりも、ニードル軸302側、すなわち低温側パルス管290側に存在する。気密空間406の内壁の一部はテーパ領域312の外壁であるため、気密空間406は、第2流路404側からバルブ側第1流路402b側に向かって徐々に狭くなる形状を有する。以下、バルブ側第1流路402b、第2流路404、および気密空間406についてより詳細に説明する。
【0038】
図4(a)−(b)は、ニードルホルダ304のテーパ領域312を拡大して示す模式図である。
【0039】
図4(a)は、バルブ側第1流路402bの出口の流路径D1、それと対向する第2流路404の出口の流路径D2、および両出口間の距離D3の大小関係を模式的に示す図である。
図4(a)に示すように、バルブ側第1流路402bの出口の流路径D1は、第2流路404の出口の流路径D2よりも小さい。また、バルブ側第1流路402bの第2流路404側の出口と、第2流路404のバルブ側第1流路402b側の出口との間の距離D3は、バルブ側第1流路402bの流路径D1よりも小さい。限定はしない例として、バルブ側第1流路402bの出口の流路径D1は1[mm]であり、第2流路404の出口の流路径D2は3[mm]である。また、バルブ側第1流路402bの第2流路404側の出口と、第2流路404のバルブ側第1流路402
b側の出口との間の距離D3は0.5[mm]である。なお、バルブ側第1流路402bと第2流路404とは同軸に配置されている。
【0040】
上述の第5過程において、低温側パルス管290内の作動ガスは第3ガス回収流路L3を通って圧縮機212に回収される。このとき、作動ガスはハウジング側第1流路402aとバルブ側第1流路402bを経由して、第2流路404の出口に至る。一方、上述の第1過程および第2過程において、圧縮機212から吐出された作動ガスは、第3ガス供給流路H3を通って低温側パルス管290に流入する。このとき、作動ガスは第2流路404を通ってバルブ側第1流路402bの出口に至る。以下説明の便宜のため、第2流路抵抗261を低温側パルス管290から圧縮機212に向かう方向を「回収方向」、圧縮機212から低温側パルス管290に向かう方向を「供給方向」と記載することがある。
【0041】
作動ガスが回収方向に流れるとき、バルブ側第1流路402bの出口の流路径D1は第2流路404の出口の流路径D2よりも短いので、バルブ側第1流路402bから流出した作動ガスは、そのまま第2流路404に流入する。一方、作動ガスが供給方向に流れるとき、第2流路404から流出した作動ガスの一部は、気密空間406に流入する。特に、第2流路404の壁部付近を流れる作動ガスは、第2流路の出口を出ると気密空間406に流入しやすい。
【0042】
したがって、バルブ側第1流路402bの出口と第2流路404の出口とが対向する部分では、回収方向に向かう作動ガスの方が、供給方向に向かう作動ガスよりも流れやすい。すなわち、バルブ側第1流路402bの出口と第2流路404の出口とが対向する部分では、回収方向に向かう流路抵抗の方が、供給方向に向かう流路抵抗よりも小さい。これにより、上述したループ経路におけるこの作動ガスのDCフローを生み出すことができる。
【0043】
バルブ側第1流路402bの出口の流路径D1、第2流路404の出口の流路径D2、およびバルブ側第1流路402bの第2流路404側の出口と第2流路404のバルブ側第1流路402
b側の出口との間の距離D3は、DCフローを調整するためのパラメータとなる。例えば、バルブ側第1流路402bの出口の流路径D1を、第2流路404の出口の流路径D2と比較してさらに小さくすることにより、
回収方向に向かう流路抵抗と供給方向に向かう流路抵抗との差をより大きくすることができる。
【0044】
また、バルブ側第1流路402bの第2流路404側の出口と第2流路404のバルブ側第1流路402
b側の出口との間の距離D3が大きくなりすぎると、回収方向に向かう作動ガスの一部も気密空間406に流入するかもしれない。このため、出口間の距離D3はバルブ側第1流路402bの出口の流路径D1以下であることが好ましい。
【0045】
一方上述したように、気密空間406は、バルブ側第1流路402bの出口よりも、低温側パルス管290側に存在する。このため、出口間の距離D3がゼロであっても、バルブ側第1流路402bの出口の流路径D1が第2流路
404の出口の流路径D2よりも小さければ、供給方向に流れる作動ガスの一部は気密空間406に流入するので、DCフローを発生することができる。さらに、出口間の距離D3が少しでも存在すれば、バルブ側第1流路402bの出口の流路径D1と第2流路
404の出口の流路径D2とが等しくても、供給方向に流れる作動ガスの一部は気密空間406に流入する。以上を勘案して、D1、D2、D3は以下の不等式(1)を満たすのが好ましい。
D3≦D1≦D2 (1)
【0046】
ここで、DCフローを調整するためのパラメータは、上述のD1、D2、D3の他に、テーパ領域312のテーパ角θもある。
【0047】
図4(b)は、実施の形態に係るニードルホルダ304のテーパ領域312を拡大して示す図であり、より具体的にはニードルホルダ304をその長軸を含む平面で切断した断面図である。
図4(b)に示すように、ニードルホルダ304のテーパ領域312は線形テーパであり、ニードルホルダ304の長軸に対するテーパ領域312の外壁部分の角度は一定である。したがって、
図4(b)に示す断面図において、テーパ領域312の外壁部がなす角θが、テーパ領域312
のテーパ角となる。このテーパ角θが180度未満であれば、上述の気密空間406が形成され、DCフローを生み出すことができる。テーパ角θが小さいほど気密空間406の体積が大きくなる。
【0048】
本願の発明者は、テーパ領域312のテーパ角θを変更してパルス管冷凍機200の冷凍性能を評価する実験を行った。この結果、テーパ角θが180度〜45度の間にあるときは、テーパ角θが小さいほどパルス管冷凍機200の冷凍性能が向上することを見出した。テーパ角θが45度未満となると、テーパ角θとパルス管冷凍機200の冷凍性能との間の相関が小さくなることを見出した。
【0049】
ニードルホルダ304のテーパ領域312のテーパ角θが小さくなるほど、バルブ側第1流路402bの管壁が薄くなる。このため、テーパ角θを小さくしすぎることは、ニードルホルダ304の強度を担保する観点から好ましいことではない。以上より、ニードルホルダ304のテーパ領域312のテーパ角θは、180度未満であればよく、特に90度以下であることが好ましい。まとめると、テーパ角θは以下の不等式(2)を満たすことが好ましい。
45度≦θ<180度 (2)
【0050】
以上説明したように、実施の形態に係るパルス管冷凍機200は、圧縮機212、高温側蓄冷管240、低温側蓄冷管280、および低温側パルス管290を含むループ経路において、第2流路抵抗261を改良することでDCフローを生じさせる。これにより、パルス管冷凍機200の冷凍能力を向上することができる。
【0051】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示すにすぎない。また、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【0052】
(変形例)
上記の説明では、ニードルホルダ304の第2流路404側の端部にテーパ領域312を設けることにより、気密空間406を形成した。しかしながら、気密空間406の形成の仕方は上記に限られない。
【0053】
図5(a)−(b)は、実施の形態の変形例に係る気密空間406を模式的に示す図である。具体的に、
図5(a)は第1の変形例に係る気密空間406を模式的に
示す図であり、
図5(b)は第2の変形例に係る気密空間406を模式的に示す図である。
【0054】
図5(a)に示す第1の変形例では、ニードルホルダ304の第2流路404側の端部の径が、本体部分の径よりも小さくなっている。一方、ハウジング400の形状は実施の形態に係るハウジング400と同様であり、ニードルホルダ304を挿入する領域は、略円筒形状の孔である。したがって、ハウジング400に第1の変形例に係るニードルホルダ304を挿入すると、ニードルホルダ304の小径部分とハウジング400とによって、気密空間406が形成される。
【0055】
図5(b)に示す第2の変形例では、ニードルホルダ304の第2流路404側の端部の径は、本体部分の径と同じである。その代わり、
図5(b)に示すように、ハウジング400のうち、ニードルホルダ304の第2流路404側の端部が収容される部分に溝が設けられている。この溝が気密空間406として機能する。
【0056】
図5(a)に示す第1の変形例に係る気密空間406と、
図5(b)に示す第2の変形例に係る気密空間406とはともに、気密空間406は、バルブ側第1流路402bの出口よりも低温側パルス管290側に存在する。また、バルブ側第1流路402bの出口の流路径D1、第2流路404の出口の流路径D2、およびバルブ側第1流路402bの第2流路404側の出口と第2流路404のバルブ側第1流路402
b側の出口との間の距離D3は、上述の不等式(1)を満たすように調整されている。
【0057】
したがって、第1の変形例に係る気密空間406または第2の変形例に係る気密空間406を設けることで、バルブ側第1流路402bの出口と第2流路404の出口とが対向する部分では、回収方向に向かう流路抵抗の方が、供給方向に向かう流路抵抗よりも小さくなる。これにより、上述したループ経路におけるこの作動ガスのDCフローを生み出すことができる。結果として、パルス管冷凍機200の冷凍性能を向上することができる。
【0058】
上記の説明では、2段式のパルス管冷凍機200を例にして説明した。しかしながら、パルス管冷凍機の段数は2段に限られず、3段以上であってもよい。