(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
一般に、極低温冷凍機においてバルブを駆動するための動力としてモータが用いられる。ここでバルブの開閉を確実なものとするために、モータのトルクが大きい方が好ましい。一般に、トルクの大きなモータは、トルクの小さなモータよりも大型となる。
【0009】
極低温冷凍機は、例えば超伝導を利用する装置等に組み込んで使用される。この場合、冷凍機を組み込む装置の制約等により、冷凍機を無制限に大きくすることはできない。このため、バルブ開閉の動力とするモータも小型することが望まれている。
【0010】
ある実施の形態に係る極低温冷凍機は、高圧の作動ガスと低圧の作動ガスとの流れを切り換えるバルブとして回転摺動面を備えるロータリバルブを用いる。この回転摺動面の一部に凹部を設け、回転摺動面の摩擦を小さくする。これにより、ロータリバルブの回転摺動の際の抵抗を低減し、トルクの小さなモータでも良好に動作せることができる。
【0011】
以下、実施の形態に係る極低温冷凍機で用いられるロータリバルブについてより詳細に説明する。
【0012】
まず、実施の形態の極低温冷凍機の全体構成について説明する。
図1から
図3は、本発明のある実施の形態である極低温冷凍機を説明するための図である。実施の形態では、極低温冷凍機としてギフォード・マクマホン冷凍機(以下、GM冷凍機10という)を例に挙げて説明する。しかしながら、実施の形態に係る極低温冷凍機はGM冷凍機に限られない。本発明はバルブの駆動にモータを用いるタイプの極低温冷凍機であれば適用でき、例えばパルス管冷凍機にも適用できる。
【0013】
実施の形態に係るGM冷凍機10は、圧縮機1、シリンダ2、ハウジング3、およびモータ収容部5等を有している。
【0014】
圧縮機1は、低圧配管1aが接続された吸気側から低圧の作動ガスを回収し、これを圧縮した後に吐出側に接続された高圧配管1bに高圧の作動ガスを供給する。作動ガスとしては、例えばヘリウムガスを用いることができるがこれに限定されるものではない。
【0015】
実施の形態に係るGM冷凍機10は、2段式のGM冷凍機である。2段式のGM冷凍機10では、シリンダ2は高温側シリンダ11と低温側シリンダ12の二つのシリンダを有している。高温側シリンダ11の内部には、高温側ディスプレーサ13が挿入される。また、低温側シリンダ12の内部には、低温側ディスプレーサ14が挿入される。
【0016】
高温側ディスプレーサ13および低温側ディスプレーサ14は相互に連結されており、それぞれ高温側シリンダ11および低温側シリンダ12の内部で、各シリンダの軸方向に往復移動可能な構成とされている。高温側ディスプレーサ13および低温側ディスプレーサ14の内部には、それぞれ高温側内部空間15および低温側内部空間16が形成されている。高温側内部空間15および低温側内部空間16には蓄冷材が充填されており、それぞれ高温側蓄冷器17および低温側蓄冷器18として機能する。
【0017】
上部に位置する高温側ディスプレーサ13は、上方(Z1方向)に向けて延出する駆動軸36に連結される。この駆動軸36は、後述するスコッチヨーク機構32の一部を構成する。
【0018】
また、高温側ディスプレーサ13の高温端側(Z1方向側端部)には、ガス流路L1が形成されている。更に、高温側ディスプレーサ13の低温端側(Z2方向側端部)には、高温側内部空間15と高温側膨張空間21とを連通するガス流路L2が形成されている。
【0019】
高温側シリンダ11の低温側端部(
図1に矢印Z2で示す方向側の端部)には、高温側膨張空間21が形成されている。また、高温側シリンダ11の高温側端部(
図1に矢印Z1で示す方向側の端部)には、上部室23が形成されている。
【0020】
更に、低温側シリンダ12内の低温側端部(
図1に矢印Z2で示す方向側の端部)には、低温側膨張空間22が形成されている。
【0021】
低温側ディスプレーサ14は、図示しない連結機構により高温側ディスプレーサ13の下部に取り付けられている。この低温側ディスプレーサ14の高温側端部(
図1に矢印Z1で示す方向側の端部)には、高温側膨張空間21と低温側内部空間16とを連通するガス流路L3が形成されている。また、低温側ディスプレーサ14の低温側端部(
図1に矢印Z2で示す方向側の端部)には、低温側内部空間16と低温側膨張空間22とを連通するガス流路L4が形成されている。
【0022】
高温側冷却ステージ19は、高温側シリンダ11の外周面で、高温側膨張空間21と対向する位置に配設されている。また低温側冷却ステージ20は、低温側シリンダ12の外周面で低温側膨張空間22と対向する位置に配設されている。
【0023】
上記の高温側ディスプレーサ13および低温側ディスプレーサ14は、スコッチヨーク機構32により高温側シリンダ11および低温側シリンダ12内を図中上下方向(矢印Z1、Z2方向)に移動する。
【0024】
図1に示すように、ハウジング3はロータリバルブ40等を有し、モータ収容部5はモータ31を収容する。
【0025】
モータ31、駆動回転軸31a、およびスコッチヨーク機構32は、駆動装置を構成する。モータ31は回転駆動力を発生し、モータ31に接続された回転軸(以下、「駆動回転軸31a」という。)は、モータ31の回転運動をスコッチヨーク機構32に伝達する。駆動回転軸31aは、軸受60によって支持される。
【0026】
図2は、スコッチヨーク機構32を拡大して示している。スコッチヨーク機構32は、クランク33とスコッチヨーク34等を有している。このスコッチヨーク機構32は、例えばモータ31等の駆動手段により駆動することができる。
【0027】
クランク33は、駆動回転軸31aに固定される。クランク33は、駆動回転軸31aの取り付け位置から偏心した位置にクランクピン33bを設けた構成とされている。従って、クランク33を駆動回転軸31aに取り付けると、駆動回転軸31aに対しクランクピン33bは偏心した状態となる。この意味で、クランクピン33bは、偏心回転体として機能する。なお、駆動回転軸31aは、その長手方向に複数の場所で回転自在に支持される。
【0028】
スコッチヨーク34は、駆動軸36a、駆動軸36b、ヨーク板35、及びころ軸受37等を有している。ハウジング3内には、収容空間が形成されている。この収容空間は、スコッチヨーク34及び後述するロータリバルブ40のロータバルブ42等を収容する気密性を持った気密容器となっている。そこで、以下本明細書においてハウジング3内の収容空間を、「気密容器4」という。気密容器4は、低圧配管1aを介して圧縮機1の吸気口と連通している。そのため、気密容器4は常に低圧に維持される。
【0029】
駆動軸36aは、ヨーク板35から上方(Z1方向)に延出している。この駆動軸36aは、ハウジング3内に設けられた摺動軸受38aによって支持されている。よって駆動軸36aは、図中上下方向(図中矢印Z1、Z2方向)に移動可能な構成となっている。
【0030】
駆動軸36bは、ヨーク板35から下方(Z2方向)に延出している。この駆動軸36bは、ハウジング3内に設けられた摺動軸受38bによって支持されている。よって駆動軸36も、図中上下方向(図中矢印Z1、Z2方向)に移動可能な構成となっている。
【0031】
駆動軸36aおよび駆動軸36bが、それぞれ摺動軸受38aおよび摺動軸受38bによって支持されることにより、スコッチヨーク34はハウジング3内で上下方向(図中矢印Z1、Z2方向)に移動可能な構成となっている。
【0032】
なお、本実施の形態では、極低温冷凍機の構成要素の位置関係を分かりやすく表すために、「軸方向」という用語を使用することがある。軸方向は駆動軸36aおよび駆動軸36bが延在する方向を表し、高温側ディスプレーサ13および低温側ディスプレーサ14が移動する方向とも一致する。便宜上、軸方向に関して膨張空間又は冷却ステージに相対的に近いことを「下」、相対的に遠いことを「上」と呼ぶことがある。つまり、低温側端部から相対的に遠いことを「上」、相対的に近いことを「下」と呼ぶことがある。なお、こうした表現はGM冷凍機10が取り付けられたときの配置とは関係しない。例えば、GM冷凍機10は鉛直方向に膨張空間を上向きにして取り付けられてもよい。
【0033】
ヨーク板35は、横長窓35aが形成されている。この横長窓35aは、駆動軸36aおよび駆動軸36bの延出する方向に対して交差する方向、例えば直交する方向(
図2中、矢印X1、X2方向)に延在している。
【0034】
ころ軸受37は、この横長窓35a内に配設されている。ころ軸受37は、横長窓35a内で転動可能な構成とされている。また、クランクピン33bと係合する孔37aは、ころ軸受37の中心位置に形成されている。横長窓35aは、クランクピン33bおよびころ軸受37の横方向の移動を許容する。横長窓35aは、横方向に延在する上枠部及び下枠部と、上枠部及び下枠部それぞれの横方向端部にて軸方向ないし縦方向に延在し上枠部と下枠部とを結合する第1側枠部及び第2側枠部と、を備える。
【0035】
モータ31が駆動し駆動回転軸31aが回転すると、クランクピン33bは円弧を描くように回転する。これにより、スコッチヨーク34は図中矢印Z1、Z2方向に往復移動する。この際、ころ軸受37は、横長窓35a内を図中矢印X1、X2方向に往復移動する。
【0036】
高温側ディスプレーサ13は、スコッチヨーク34の下部に配設された駆動軸36bに接続されている。よって、スコッチヨーク34が図中矢印Z1、Z2方向に往復移動することにより、高温側ディスプレーサ13及びこれに連結された低温側ディスプレーサ14も高温側シリンダ11及び低温側シリンダ12内で矢印Z1、Z2方向に往復移動する。
【0037】
次に、バルブ機構について説明する。実施の形態に係るGM冷凍機10は、バルブ機構としてロータリバルブ40を用いる。
【0038】
ロータリバルブ40は、低圧の作動ガスの流路である低圧流路と高圧の作動ガスの流路である高圧流路とを切り換える。ここで低圧流路は、圧縮機1の低圧側に接続される。また高圧流路は圧縮機1の高圧側に接続される。ロータリバルブ40は、モータ31によって駆動される。このロータリバルブ40は、圧縮機1の吐出側から吐出された高圧の作動ガスを高温側ディスプレーサ13の上部室23に導く供給用バルブとして機能すると共に、上部室23から作動ガスを圧縮機1の吸気側に導く排気用バルブとして機能する。
【0039】
このロータリバルブ40は、
図1に加えて
図3に示すように、第1部材であるステータバルブ41と、第2部材であるロータバルブ42との、二つの部材を有している。ステータバルブ41は平坦なステータ側回転摺動面45を有し、ロータバルブ42は同じく平坦なロータ側回転摺動面50を有している。そして、このステータ側回転摺動面45とロータ側回転摺動面50が面接触して回転摺動することにより、作動ガスの漏れが防止される。
【0040】
ステータバルブ41は、ハウジング3内に固定ピン43で固定される。この固定ピン43で固定されることにより、ステータバルブ41は回転が規制される。
【0041】
ロータバルブ42は、ロータバルブ軸受62により回転可能に支持されている。ロータバルブ42のロータ側回転摺動面50と反対側に位置する反対側端面52には、クランクピン33bと係合する係合穴(図示せず)が形成されている。クランクピン33bは、ころ軸受37に挿通された際にその先端部がころ軸受37から矢印Y1方向に突出する(
図1参照)。
【0042】
そして、ころ軸受37から突出したクランクピン33bの先端部は、ロータバルブ42に形成された係合穴と係合する。よって、クランクピン33bが回転(偏心回転)することにより、ロータバルブ42はスコッチヨーク機構32と同期して回転する。
【0043】
ステータバルブ41は、高圧ポート44、膨張ポート46、膨張空間接続流路49、および凹部54を有している。高圧ポート44は圧縮機1の高圧配管1bに接続されており、ステータバルブ41の中心部を貫通するよう形成されている。高圧ポート44は、圧縮機1から供給される作動ガスの、ステータ側回転摺動面45側の出口となる。
【0044】
膨張ポート46は、ステータ側回転摺動面45に形成されている。この膨張ポート46は、高圧ポート44を中心とした円弧形状を有している。
【0045】
膨張空間接続流路49は、ステータバルブ41とハウジング3とにわたって形成され、高温側内部空間15および高温側膨張空間21と連通する。膨張空間接続流路49のうち、バルブ側の一端部は、膨張ポート46内に開口し開口部48を形成している。膨張空間接続流路49は、高温側内部空間15を介して高温側膨張空間26と連通する。このため、膨張ポート46は、高温側膨張空間26と圧縮機1とを接続する膨張空間接続流路49の、回転摺動面側の出口とも言える。凹部54は、ステータ側回転摺動面45に設けられ、ステータバルブ41を貫通しない。なお、凹部54の詳細は後述する。
【0046】
膨張空間接続流路49において、ステータバルブ41の側面には吐出口47が開口している。吐出口47は、ハウジング内の膨張空間接続流路49と連通している。また、ハウジング内の膨張空間接続流路49の他端部は、上部室23、ガス流路L1、高温側蓄冷器17等を介して高温側膨張空間21に接続されている。
【0047】
一方、ロータバルブ42は、接続溝51及び低圧ポート53を有している。
【0048】
接続溝51は、ロータ側回転摺動面50にその中心から径方向に延在するよう形成されている。接続溝51はロータバルブ42を貫通しておらず、底面を持つ凹形状である。接続溝51は、膨張ポート46と高圧ポート44との間に作動ガスの流路を形成する溝である。接続溝51はロータバルブ42の回転周期における1周期の間に、一時的に高圧ポート44と膨張ポート46とを接続する。低圧ポート53は、ロータバルブ42のロータ側回転摺動面50から反対側端面52まで貫通し、気密容器4と接続している。この低圧ポート53は、ステータバルブ41の膨張ポート46と同一円周上に位置するよう形成されている。
【0049】
上記した高圧ポート44、接続溝51、膨張ポート46、及び開口部48により供給弁が構成される。また、開口部48、膨張ポート46、及び低圧ポート53により排気弁が構成される。本実施の形態では、接続溝51、膨張ポート46などのバルブの内部に存在する空間をまとめてバルブ内部空間と呼ぶことがある。
【0050】
上記構成とされたGM冷凍機10において、モータ31の回転駆動力が駆動回転軸31aを介してスコッチヨーク機構32に伝達されてスコッチヨーク機構32が駆動されると、スコッチヨーク34はZ1、Z2方向に往復移動する。このスコッチヨーク34の動作により、高温側ディスプレーサ13および低温側ディスプレーサ14は、高温側シリンダ11および低温側シリンダ12内を下死点LPと上死点UPとの間で往復移動する。
【0051】
高温側ディスプレーサ13および低温側ディスプレーサ14が下死点LPに達する前に、排気弁が閉じ、その後、供給弁が開く。即ち、高圧ポート44、接続溝51、膨張ポート46、及び膨張空間接続流路49との間に作動ガス流路が形成される。
【0052】
よって高圧の作動ガスは、圧縮機1から上部室23に充填され始める。その後、高温側ディスプレーサ13および低温側ディスプレーサ14は下死点LPを過ぎて上昇を始め、作動ガスは高温側蓄冷器17および低温側蓄冷器18を上から下に通過し、それぞれ高温側膨張空間21および低温側膨張空間22に充填されてゆく。
【0053】
そして、高温側ディスプレーサ13および低温側ディスプレーサ14が上死点UPに達する際に、供給弁は閉じる。それと同時、もしくはその後、開弁する。即ち、膨張空間接続流路49、膨張ポート46、及び低圧ポート53との間に作動ガス流路が形成される。
【0054】
これにより、高圧の作動ガスは高温側膨張空間21および低温側膨張空間22内で膨脹することによって寒冷を発生させ、高温側冷却ステージ19および低温側冷却ステージ20を冷却する。また、寒冷を発生させた低温の作動ガスは、高温側蓄冷器17および低温側蓄冷器18内の蓄冷材を冷却しながら下から上に流れ、その後に圧縮機1の低圧配管1aに還流する。このように、実施の形態に係るロータリバルブ40は、高温側膨張空間21と、高圧の作動ガスの流路または低圧の作動ガスの流路との接続を切り替える。
【0055】
その後、高温側ディスプレーサ13および低温側ディスプレーサ14が下死点LPに達する前に、排気弁が閉じ、その後、供給弁が開いて1サイクルを終了する。このようにして、作動ガスの圧縮、膨張のサイクルを繰り返すことによって、GM冷凍機10の高温側冷却ステージ19および低温側冷却ステージ20は極低温に冷却される。GM冷凍機10の高温側冷却ステージ19および低温側冷却ステージ20は、それぞれ高温側膨張空間21および低温側膨張空間22内の作動ガスを膨張させることにより発生した寒冷を、高温側シリンダ11および低温側シリンダ12の外部に伝導する。
【0056】
以上説明したように、実施の形態に係るGM冷凍機10においては、モータ31等の駆動装置の駆動力を高温側ディスプレーサ13および低温側ディスプレーサ14の往復移動に変換することで寒冷を発生させる。これにより、低温側冷却ステージ20の温度はおよそ4Kの極低温となる。
【0057】
上述したように、実施の形態に係るロータリバルブ40は、第1部材であるステータバルブ41と、第2部材であるロータバルブ42とが回転摺動する。この回転摺動面に、膨張ポート46、接続溝51、低圧ポート53、高圧ポート44、凹部54が設けられている。
【0058】
図4(a)−(b)は、実施の形態に係るロータリバルブ40の回転摺動面を模式的に示す図である。具体的に、
図4(a)は、ロータ側回転摺動面50を示す図であり、
図4(b)はステータ側回転摺動面45を示す図である。
【0059】
図4(a)−(b)に示すように、凹部54は、ステータ側回転摺動面45のうち、高圧ポート44、低圧ポート53、および膨張ポート46が設けられた領域とは異なる領域に設けられている。凹部54はステータ側回転摺動面45に設けられているため、ロータ側回転摺動面50に設けられた接続溝51と低圧ポート53とも異なる領域に設けられている。
図4(b)に示す例では、凹部54は、ステータ側回転摺動面45に、膨張ポート46とほぼ同心円に設けられた円弧形状の溝である。
【0060】
ロータバルブ42が回転すると、回転周期における1周期の間に、接続溝51は、一時的に高圧ポート44と凹部54とを接続する。この間、凹部54は一時的に高圧の動作ガスで満たされる。しかしながら、凹部54はステータバルブ41を貫通していないため、動作ガスがロータリバルブ40から漏れることはない。
【0061】
同様に、ロータバルブ42が回転すると、回転周期における1周期の間に、低圧ポート53は一時的に凹部54と接続することもある。しかしながら、凹部54は、高圧ポート44と低圧ポート53とのいずれか一方と接続しているときは、他方とは接続せずに遮断するように設計されている。これにより、ロータリバルブ40内において高圧の作動ガスが存在する高圧空間と、低圧の作動ガスが存在する低圧空間とが連通することが防止できる。
【0062】
そして、ロータリバルブ40の回転摺動面に凹部54が設けられているため、ロータ側回転摺動面50とステータ側回転摺動面45との接触面積が小さくなり、両者の間の滑り摩擦が低減する。これにより、ロータリバルブ40を駆動するために必要なトルクが小さくなる。故に、ロータリバルブ40を駆動するためのモータ31の出力トルクも抑制でき、モータ31を小型化することができる。
【0063】
ここで
図1に示すように、ロータリバルブ40を構成するロータバルブ42とステータバルブ41とは、弾性部材55の弾性力によって付勢されている。またロータバルブ42とステータバルブ41とは、GM冷凍機10内の高圧空間と低圧空間との圧力差によっても付勢される。ロータリバルブ40の回転周期の1周期の間に、高圧ポート44が一時的に凹部54と連通すると、凹部54が高圧な作動ガスで満たされる。この間は、凹部54に満たされた高圧な作動ガスの圧力により、ロータバルブ42とステータバルブ41とを付勢する高圧空間と低圧空間との圧力差が一時的に緩和される。これにより、ロータ側回転摺動面50とステータ側回転摺動面45との間の滑り摩擦も一時的に小さくなり、モータ31が出力すべきトルクも小さくなる。
【0064】
実施の形態に係るロータリバルブ40においては、ステータバルブ41は金属で形成されている。一方、ロータバルブ42は樹脂で形成されている。一般に、樹脂は金属よりも柔らかいため、ステータバルブ41とロータバルブ42とが回転摺動すると、ロータバルブ42の方がステータバルブ41よりも早く摩耗する。そこで、凹部54は、金属で形成されるステータバルブ41に設けるのが好ましい。凹部54は部材を貫通しておらず底面を有するため、仮に部材が摩耗すると、回転摺動面が凹部54の底面に到達する可能性もあるからである。金属製の部材に凹部54を設けることで、回転摺動面によって樹脂製の部材が摩耗したとしても、回転摺動面が凹部54の底面に到達することを抑制できる。
【0065】
以上説明したように、実施の形態に係るGM冷凍機10によれば、ロータリバルブ40を構成するステータバルブ41とロータバルブ42との間の滑り摩擦を低減することができる。このため、ロータリバルブ40の駆動に要するトルクが小さくなり、ロータリバルブ40を駆動するモータ31を小型化することができる。
【0066】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示すにすぎない。また、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【0067】
(第1の変形例)
上記の説明では、凹部54と高圧ポート44とが、ロータバルブ42の回転周期における1周期の間に、一時的に高圧ポート44と凹部54とが接続する場合について説明した。これに代えて、凹部54と高圧ポート44とは常に連通するようにしてもよい。
【0068】
図5(a)−(b)は、実施の形態の第1の変形例に係るロータリバルブ40の回転摺動面を模式的に示す図である。具体的に、
図5(a)は、第1の変形例に係るロータバルブ42のロータ側回転摺動面50を示す図であり、
図5(b)は第1の変形例に係るステータバルブ41のステータ側回転摺動面45を示す図である。
【0069】
図5(b)に示すように、ステータバルブ41とロータバルブ42とのうち、ステータバルブ41のステータ側回転摺動面45に、高圧ポート44、膨張ポート46、および凹部54とが設けられている。またロータバルブ42のロータ側回転摺動面50に、低圧ポート53が設けられている。これらの構成は、実施の形態に係るロータリバルブ40と同様である。
【0070】
また、第1の変形例に係る凹部54が、ステータ側回転摺動面45に、膨張ポート46とほぼ同心円状に設けられた円弧形状の溝である点も、実施の形態に係るロータリバルブ40と同様である。しかしながら、第1の変形例に係る凹部54は、その円弧の半径が、実施の形態に係る凹部54の半径よりも短い。このため、ロータバルブ42とステータバルブ41とが回転摺動する際に低圧ポート53が回転摺動面上に描く軌跡は、凹部54と重ならない。言い換えると、凹部54は、ロータリバルブ40の回転周期の1周期の間に低圧ポート53から常に遮断されている。
【0071】
第1の変形例に係るステータ側回転摺動面45には、高圧ポート44と凹部54とを連通する連通路56が設けられている。このため、凹部54は、高圧ポート44と連通し、凹部54には高圧の作動ガスが満たされる。これにより、凹部54に満たされた高圧な作動ガスの圧力は、ロータバルブ42とステータバルブ41とを付勢する高圧空間と低圧空間との圧力差を緩和する。結果として、ロータ側回転摺動面50とステータ側回転摺動面45との間の滑り摩擦が小さくなり、モータ31が出力すべきトルクを小さくすることができる。
【0072】
(第2の変形例)
上記では、ステータバルブ41とロータバルブ42との一方に高圧ポート44、膨張ポート46、および凹部54が設けられ、他方に低圧ポート53と接続溝51とが設けられている場合について説明した。しかしながら、接続溝51は必須の構成ではなく、省略することもできる。また、高圧ポート44、膨張ポート46、凹部54,および低圧ポート53の配置も、上記の配置には限られない。
【0073】
図6(a)−(b)は、実施の形態の第2の変形例に係るロータリバルブ40の回転摺動面を模式的に示す図である。具体的に、
図6(a)は、第2の変形例に係るロータバルブ42のロータ側回転摺動面50を示す図であり、
図6(b)は第2の変形例に係るステータバルブ41のステータ側回転摺動面45を示す図である。
【0074】
図6(a)−(b)に示すように、第2の変形例に係るロータリバルブ40は、接続溝51を有しない。その代わり、ロータ側回転摺動面50に膨張ポート46が設けられており、ステータ側回転摺動面45に高圧ポート44と低圧ポート53とが設けられている。
図6(a)−(b)に示すでは、ロータリバルブ40の回転摺動に伴って膨張ポート46が回転し、高圧ポート44と低圧ポート53とに交互に接続することで、高圧の作動ガスの流路または低圧の作動ガスの流路との接続を切り替えることを実現する。この意味で、膨張ポート46と高圧ポート44とが接続している間は、膨張ポート46と高圧ポートとの間の空間が、上述した接続溝51と同様に機能する。また、膨張ポート46と低圧ポート53が接続している間も、膨張ポート46と低圧ポート53との間の空間が、両者を接続する接続溝として機能するともいえる。
【0075】
図6(b)に示すように、凹部54は、ステータ側回転摺動面45上に、高圧ポート44と低圧ポート53とが設けられた領域とは異なる領域に設けられる。これにより、ステータ側回転摺動面45とロータ側回転摺動面50との接触面積が小さくなり、両者の間の滑り摩擦が低減する。これにより、ロータリバルブ40を駆動するために必要なトルクが小さくなる。故に、ロータリバルブ40を駆動するためのモータ31の出力トルクも抑制でき、モータ31を小型化することができる。
【0076】
(第3の変形例)
図7(a)−(b)は、実施の形態の第3の変形例に係るロータリバルブ40の回転摺動面を模式的に示す図である。具体的に、
図7(a)は、第3の変形例に係るロータバルブ42のロータ側回転摺動面50を示す図であり、
図7(b)は第3の変形例に係るステータバルブ41のステータ側回転摺動面45を示す図である。
【0077】
図7(b)に示しように、第3の変形例に係るロータリバルブ40は、ステータ側回転摺動面45上に、高圧ポート44、膨張ポート46、および低圧ポート53が設けられている。一方、
図7(a)に示すように、ロータ側回転摺動面50上に接続溝51が設けられている。膨張ポート46はステータバルブ41の中心軸上に設けられており、接続溝51はロータバルブ42の中心から径方向外側に伸びる溝である。したがって、ロータバルブ42の回転の位置によらず、接続溝51と膨張ポート46とは接続する。
【0078】
一方、ロータリバルブ40の回転摺動に伴って接続溝51が回転し、高圧ポート44と低圧ポート53と交互に接続する。これにより、膨張ポート46と高圧ポート44または低圧ポート53との接続が交互に切り替わり、高圧の作動ガスの流路または低圧の作動ガスの流路との接続を切り替えが実現される。
【0079】
図7(b)に示すように、凹部54は、ステータ側回転摺動面45上に、高圧ポート44、低圧ポート53、および膨張ポート46が設けられた領域とは異なる領域に設けられる。また、接続溝51はロータ側回転摺動面50に設けられているので、凹部54は接続溝51が設けられた領域とは異なる領域に設けられているともいえる。これにより、ステータ側回転摺動面45とロータ側回転摺動面50との接触面積が小さくなり、両者の間の滑り摩擦が低減する。これにより、ロータリバルブ40を駆動するために必要なトルクが小さくなる。故に、ロータリバルブ40を駆動するためのモータ31の出力トルクも抑制でき、モータ31を小型化することができる。
【0080】
(第4の変形例)
上記では、ロータリバルブ40がGM冷凍機10で用いられることを主に説明したが、GM冷凍機10は例示である。上記のロータリバルブ40は、モータを用いてロータリバルブを駆動する冷凍機であれば、例えばパルス管冷凍機など、GM冷凍機10以外の他の種類の冷凍機に用いることもできる。