【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例を示して説明する。
【0049】
(実施例1)
[アルミナセラミックス接合体の作製]
原料となるアルミナ粉末に、イソプロピルアルコール及び有機バインダーと可塑剤を添加混合し、スプレードライをすることでアルミナ顆粒を得た。この顆粒をCIP成形し、所定の焼成温度で6時間の常圧焼成することで、純度99.5%以上、密度3.90g/cm
3以上、φ300×20mmの円板形状のアルミナセラミックス焼結体を形成した。形成された焼結体に研削する機械加工を施して、平面度が20μm、接合面の表面粗さRaが0.7μmとなるようにした。
【0050】
接合材の主材である純度99.9%、平均粒径0.7μmのアルミナ粉末に対して、バインダーとしてのエチルセルロース、及び可塑剤としてのフタル酸ブチルを添加し、プライミクス株式社製のフィルミックス(型式:56−30型)という薄膜旋回型攪拌機を用いて、混合し、ペーストを作製した。作製されたペースト状の接合材は、アルミナ粉末割合が70質量%であって、チタン化合物はチタニア換算で0.01質量%未満であった。
【0051】
2つの円板状のアルミナセラミックス焼結体を用意し、それぞれの接合面にペースト状の接合材を、スクリーン印刷により、厚さ30μmとなるように均一に塗布した。
【0052】
そして、これらのアルミナセラミックス焼結体の接合面同士をはり合わせた。これを大気中480℃で1時間保持して脱脂した後、ホットプレス焼成炉を用いて、0.1MPaの98%のアルゴン雰囲気中で、接合面に1.47MPaの圧力を加えながら、1550℃で熱処理した。そして、アルミナセラミックス接合体を形成した。
【0053】
[評価]
アルミナセラミックス接合体を切断し、切断断面を鏡面研磨した後、エッチング処理を施し、走査型電子顕微鏡により接合層を観察し、接合層の厚さ(μm)、接合層における気孔の平均径(μm)、気孔の存在割合(%)、及び、2000μm
2の面積中に存在する径が5μmを超える気孔の最大個数(個)を測定した。
【0054】
また、得られた接合体から、接合層が中央に位置するように曲げ試験片を切り出して4点曲げ試験(JIS R1601)により接合強度(MPa)を測定した。また、JIS R1648に規定される水中落下法に準拠して、耐熱衝撃性(℃)を測定した。
【0055】
(実施例2)
接合材におけるアルミナ粉末割合を60質量%としたほかは、実施例1と同一条件で実施例2のアルミナセラミックス接合体を作製した。
【0056】
(実施例3)
接合材の厚さを10μmとしたほかは、実施例1と同一条件で実施例3のアルミナセラミックス接合体を製造した。
【0057】
(実施例4)
熱処理における焼成温度を1500℃としたほかは、実施例1と同一条件で実施例4のアルミナセラミックス接合体を製造した。
【0058】
(実施例5)
熱処理において接合面に加える圧力を0.98MPaとしたほかは、実施例1と同一条件で実施例5のアルミナセラミックス接合体を製造した。
【0059】
(実施例6)
熱処理において接合面に加える圧力を2.94MPaとしたほかは、実施例1と同一条件で実施例6のアルミナセラミックス接合体を製造した。
【0060】
(実施例7)
熱処理において接合面に加える圧力を3.57MPaとしたほかは、実施例1と同一条件で実施例7のアルミナセラミックス接合体を製造した。
【0061】
(実施例8)
熱処理における焼成温度を1600℃としたほかは、実施例1と同一条件で実施例8のアルミナセラミックス接合体を製造した。
【0062】
(実施例9)
接合材の厚さを50μmとしたほかは、実施例1と同一条件で実施例9のアルミナセラミックス接合体を製造した。
【0063】
(実施例10)
接合材におけるアルミナ粉末割合を80質量%としたほかは、実施例1と同一条件で実施例10のアルミナセラミックス接合体を作製した。
【0064】
(比較例1)
接合材におけるアルミナ粉末割合を55質量%としたほかは、実施例1と同一条件で比較例1のアルミナセラミックス接合体を製造した。
【0065】
(比較例2)
接合材の厚さを5μmとしたほかは、実施例1と同一条件で比較例2のアルミナセラミックス接合体を製造した。
【0066】
(比較例3)
熱処理における温度を1475℃としたほかは、実施例1と同一条件で比較例3のアルミナセラミックス接合体を製造した。
【0067】
(比較例4)
熱処理において接合面に加える圧力を0.75MPaとしたほかは、実施例1と同一条件で比較例4のアルミナセラミックス接合体を製造した。
【0068】
(比較例5)
接合材の厚さを55μmとしたほかは、実施例1と同一条件で比較例5のアルミナセラミックス接合体を製造した。
【0069】
(比較例6)
超音波分散機を用いて接合材を作製したほかは、実施例1と同一条件で比較例6のアルミナセラミックス接合体を製造した。
【0070】
(比較例7)
3本ロールミル機を用いて接合材を作製したほかは、実施例1と同一条件で比較例7のアルミナセラミックス接合体を製造した。
【0071】
接合材の混合方法、アルミナ粉末の割合(質量%)及び厚さ(μm)と、熱処理における焼成温度(℃)及び接合面加圧圧力(MPa)とを、表2に示す。表1中、「※」は本実施形態の好適範囲外の値を示す。
【0072】
【表1】
【0073】
接合層の厚さ(μm)、接合層における気孔の平均径(μm)、気孔の存在割合(%)及び2000μm
2の面積中に存在する径が5μmを超える気孔の個数(個)、アルミナセラミックス接合体の接合強度(MPa)及び耐熱衝撃性(℃)を表2に示す。表2中、「※」は本実施形態の好適範囲外の値を示す。なお、表2中、「10>」は10個を超えたことを示す。
【0074】
【表2】
【0075】
表1及び表2の実施例1〜実施例10では、アルミナ粉末を主材とし、薄膜旋回法により、バインダー及び可塑剤を混合してペースト化したものであって、アルミナ粉末割合が60質量%以上、チタン化合物がチタニア換算で0.05質量%未満である接合材を、アルミナセラミックス焼結体の接合面にそれぞれ10μm〜50μmの範囲の厚さで印刷し、アルミナセラミックス焼結体の接合面に0.98MPa〜3.57MPaの圧力を加えると共に1500℃〜1600℃の範囲の温度で加熱した。
【0076】
これにより、接合層の厚さが8μm〜50μmであり、接合層において、気孔の平均径が5μm以下、気孔の存在割合が3%以下、2000μm
2の面積中に存在する径が5μmを超える気孔が2個以下であるアルミナセラミックス接合体が得られた。これらのアルミナセラミックス接合体は、接合強度が250MPa以上、耐熱衝撃性が180℃以上であった。
【0077】
比較例1は、接合材におけるアルミナ粉末割合が60質量%未満の55質量%であって少なかった。そのため、接合材における固形分が少なく、アルミナセラミックス接合体の接合層における気孔の平均径が6μmと大きく、気孔の存在割合が5.0%と高く、さらに、2000μm
2の面積中に存在する径が5μmを超える気孔が3個であって大きな気孔が密集していた。このため、アルミナセラミックス接合体の接合強度は240MPaに低下し、耐熱衝撃性も160℃に低下した。
【0078】
比較例2は、接合材の厚さが10μmより薄い5μmであった。そのため、アルミナセラミックス焼結体の接合面における平面度20μm、表面粗さRa0.7μmを十分に補完できずに、接合層の厚さが5μmと薄く、気孔の存在割合が10%を超えてと高く、さらに、2000μm
2の面積中に存在する径が5μmを超える気孔が10個を超えてと大きな気孔が密集していた。このため、アルミナセラミックス接合体の接合強度は140MPaに低下し、耐熱衝撃性も100℃に低下した。
【0079】
比較例3は、熱処理における焼成温度が1500℃より低い1475℃であった。そのため、接合材とアルミナセラミックス焼結体との溶融不足となり、接合が不十分であり、アルミナセラミックス接合体の接合層の厚さが60μmと厚く、接合層における気孔の平均径が10μmと大きく、気孔の存在割合が5.0%と高く、さらに、2000μm
2の面積中に存在する径が5μmを超える気孔が5個であって大きな気孔が密集していた。このため、アルミナセラミックス接合体の接合強度は180MPaに低下し、耐熱衝撃性も150℃に低下した。
【0080】
比較例4は、熱処理において接合面に加える加圧圧力が0.98MPaより小さい0.75MPaであった。そのため、アルミナセラミックス接合体の接合層が十分に緻密化されずに接合が不十分となり、接合層の厚さが60μmと厚く、接合層における気孔の平均径が10μmと大きく、気孔の存在割合が5.0%と高く、さらに、2000μm
2の面積中に存在する径が5μmを超える気孔が3個であって大きな気孔が密集していた。このため、アルミナセラミックス接合体の接合強度は180MPaに低下し、耐熱衝撃性も150℃に低下した。
【0081】
比較例5は、接合材の厚さが50μmより厚い55μmであった。そのため、アルミナセラミックス接合体の接合層の体積が増大することにより、接合層内の気孔の存在数が増大するために、気孔の存在割合が4.0%と高く、さらに、2000μm
2の面積中に存在する径が5μmを超える気孔が3個であって大きな気孔が密集していた。このため、アルミナセラミックス接合体の接合強度は250MPaと十分であるものの、耐熱衝撃性は170℃に低下した。
【0082】
比較例6は、薄膜旋回型攪拌機ではなく、超音波分散機を用いて接合材を作製した。そのため、接合材においてバインダーを均一に分散させることができず、アルミナセラミックス接合体の接合層における気孔の平均径が10μmと大きく、気孔の存在割合が8.0%と高く、さらに、2000μm
2の面積中に存在する径が5μmを超える気孔が5個であって大きな気孔が密集していた。このため、アルミナセラミックス接合体の接合強度は220MPaに低下し、耐熱衝撃性も150℃に低下した。
【0083】
比較例7は、薄膜旋回型攪拌機ではなく、3本ロールミル機を用いて接合材を作製した。そのため、接合材においてバインダーを均一に分散させることができず、アルミナセラミックス接合体の接合層における気孔の平均径が10μmと大きく、気孔の存在割合が6.0%と高く、さらに、2000μm
2の面積中に存在する径が5μmを超える気孔が4個であって大きな気孔が密集していた。このため、アルミナセラミックス接合体の接合強度は230MPaに低下し、耐熱衝撃性も160℃に低下した。