特許第6305382号(P6305382)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6305382眼の障害のためのコンプスタチンおよびそのアナログ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305382
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】眼の障害のためのコンプスタチンおよびそのアナログ
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/12 20060101AFI20180326BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20180326BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   A61K38/12ZNA
   A61K45/00
   A61P27/02
   A61P43/00 111
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】78
(21)【出願番号】特願2015-181171(P2015-181171)
(22)【出願日】2015年9月14日
(62)【分割の表示】特願2013-77986(P2013-77986)の分割
【原出願日】2006年10月6日
(65)【公開番号】特開2016-26178(P2016-26178A)
(43)【公開日】2016年2月12日
【審査請求日】2015年10月14日
(31)【優先権主張番号】60/725,484
(32)【優先日】2005年10月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/726,447
(32)【優先日】2005年10月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】60/760,974
(32)【優先日】2006年1月19日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513283268
【氏名又は名称】アペリス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APELLIS PHARMACEUTICALS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【弁理士】
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(72)【発明者】
【氏名】パスカル・デシャテレ
(72)【発明者】
【氏名】ポール・オルソン
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・フランソワ
【審査官】 砂原 一公
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−511496(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/026328(WO,A1)
【文献】 特表2003−535581(JP,A)
【文献】 MALLIK BUDDHADEB,JOURNAL OF MEDICINAL CHEMISTRY,2005年 1月13日,V48 N1,P274-286
【文献】 BORA PURAN S,JOURNAL OF IMMUNOLOGY,2005年 1月 1日,V174 N1,P491-497
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量のコンプスタチンアナログを含む、加齢性黄斑変性症(ARMD)を処置するための組成物であって、該コンプスタチンアナログは、i)コンプスタチンの配列に対して4位においてチロシン、トリプロファン、2−ナフチルアラニン(2−NaI)、1−ナフチルアラニン(1−NaI)、2−インダニルグリシン(Igl)、ジヒドロトリプトファン(Dht)、4−ベンゾイル−L−フェニルアラニン、β−3−ベンゾチエニル−L−アラニン、1−メチルトリプトファンまたは5−メチルトリプトファンを有し、(ii)コンプスタチンの配列に対して9位においてAlaまたは2−アミノ酪酸(2−Abu)を有し、(iii)コンプスタチンの配列に対して7位においてトリプトファンまたは5−フルオロトリプトファンを有し、(iv)場合により、コンプスタチンの配列の1位、10位、11位または13位から選択される対応するいずれか1個のアミノ酸が置換されていてもよいことを特徴とする、組成物。
【請求項2】
コンプスタチンの配列中の置換された少なくとも1個のアミノ酸が標準的でないアミノ酸で置換されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該コンプスタチンアナログがコンプスタチンの2位および12位に対応する位置のアミノ酸間の結合を介して環状化される、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
コンプスタチンの配列に対して4位に位置する1−メチルトリプトファンを含む、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
コンプスタチンの配列に対して9位に位置するAlaを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
該配列がコンプスタチンの配列に対してC末端に最大1個、2個、または3個の更なるアミノ酸を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
該ペプチドが、N末端でアセチル化されているか、C末端でアミド化されているか、またはN末端でアセチル化されかつC末端でアミド化されている、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
該組成物が硝子体内に投与される、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
該コンプスタチンアナログの投与最大4週間前までに、有効量の血管新生インヒビターが投与される、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2005年10月8日に出願された仮特許出願第USSN60/725,484号、2005年10月12日に出願された同第USSN60/726,447号、および2006年1月19日に出願された同第USSN60/760,974号に対する優先権および利益を主張する。これらは全て、本明細書中に参考として援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
黄斑(macula)は、視神経に隣接する、眼の網膜における小さな領域(およそ3〜5ミリメートルのサイズ)である。黄斑は、網膜の最も敏感な領域であり、高い視力を可能にする陥凹領域である中心窩を含み、色覚に関与する光受容体である錐体の密度が高い領域である。
【0003】
黄斑変性症は、黄斑の変性変化を特徴とする多くの様々な疾患(これらのすべてが中心視覚の喪失に導く)のことを指す用語である。加齢性黄斑変性症(ARMD)は、先進国の50歳以上の人々に対する機能盲の最大の原因である(Seddon,JM.Epidemiology of age−related macular degeneration.In:Ogden,TEら、eds.Ryan SJ,ed−in−chief.Retina Vol II.3rd ed.St.Louis,MO:Mosby;2001:1039−50)。この疾患は、網膜、網膜色素上皮(RPE)およびその下に存在する脈絡膜(RPEの真下かつ網膜と強膜との間に存在する血管の多い組織)の進行性変性を特徴とする。網膜色素上皮層は、光受容体の健康状態に欠かせないと考えられている。この層に存在する細胞は、視覚的色素(ロドプシン)を再利用する、すなわち、桿体および錐体の再生の一部として毎日、光受容体の先端を貪食し、体液をその膜を通って脈絡膜に輸送する。この再利用は、神経網膜の剥離を予防するのを助けると考えられている。RPEに存在する細胞が正しく機能しなくなると、中心視力が低下し、光受容体が変性し得る。
【0004】
酸化ストレス、自己免疫性成分によると思われる炎症、遺伝的背景(例えば、変異)および環境的または行動的因子(例えば、喫煙および食事)をはじめとした種々の因子が、未だ完全には理解されていない様式でARMDの病因に寄与し得る。根源的な病因とは無関係に、ARMDの臨床上の顕著な特徴は、RPEとブルッフ膜(脈絡膜の血管(脈絡毛細管板)とRPEとを区別する膜)との間の空間に蓄積するリポタンパク質性材料の局在的な沈着物であるドルーゼンの出現である。ドルーゼンは、代表的にはARMDにおいて臨床上の最も初期に見られ、ドルーゼンの存在、位置および数は、この疾患のステージ分けに使用され、また、その進行をモニターするためにも使用される(非特許文献1;“Preferred Practice Pattern:Age−Related Macular Degeneration”,American Academy of Ophthalmology,2003)。ドルーゼンは、代表的にはARMDにおいて臨床上の最も初期に見られる。
【0005】
ARMDは、「非滲出(dry)」型と「滲出(wet)」型(浸出性または新生血管性)との両方に分類されてきた。非滲出性ARMDは、滲出性ARMDよりも一般的であるが、非滲出型は、滲出型に進行し得、かなりの数の症例において2つ同時に発生している。非滲出性ARMDは、代表的には、光受容体細胞が並んでいるRPE層に存在する細胞(しばしば、脈絡膜の毛細血管層に並んでいる細胞)の進行性のアポトーシスを特徴とする。その上に存在する光受容体の萎縮と同時に起こるRPE細胞死が密集した領域(代表的には、最小直径が小さくても175μm)は、地図状萎縮と呼ばれる。この型のARMDを有する患者の中心視覚は、緩徐で進行的に変質する。
【0006】
滲出性ARMDは、RPEおよび黄斑の真下の脈絡膜の血管(脈絡毛細管板)から伸びた異常な血管からの出血および/または体液の漏出を特徴とし、視力が突然失われることに関与し得る。患者が経験する失明の多くは、そのような脈絡膜血管新生(CNV)およびその二次的な合併症に起因すると推測されている。血管腫状増殖の起源が網膜であり、血管腫状増殖が網膜下の空間の後ろ側に伸び、いくつかの場合において最終的には脈絡膜の新しい血管に通じる、新生血管性のARMDのサブタイプが同定された(非特許文献2)。網膜血管腫状増殖(RAP)と呼ばれるARMDの新生血管性の型は、特に重篤であり得る。黄斑ドルーゼンが存在するということは、ARMDの滲出型と非滲出型の両方の発症に対する強力な危険因子である(非特許文献1)。
【0007】
ARMDに対する処置の選択肢は限られており、完全に有効なものはない(非特許文献1およびこの論文中の参考文献)。従って、ARMDの処置ならびに黄斑変性症、脈絡膜血管新生、網膜血管新生、網膜血管腫状増殖および/または血管からの漏出を特徴とする他の眼の疾患および状態の処置に対する新しいアプローチが当該分野で必要とされている。そのような疾患および状態としては、糖尿病性網膜症および未熟児網膜症が挙げられるが、これらに限定されない。眼球の炎症を特徴とする眼の障害の処置に対する新しいアプローチも当該分野で必要とされている。
【非特許文献1】Ambati,J.ら、Surv.Ophthalmol,48(3):257−293,2003
【非特許文献2】Yannuzzi,L.A.ら、Retina,21(5):416−34,2001
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、とりわけ、前述の必要性に取り組むものである。本発明は、眼の障害を処置する方法を提供し、その方法は、(i)眼の障害に対する処置が必要な被験体を提供する工程;および(ii)その被験体にコンプスタチン(compstatin)またはその補体阻害アナログを含む組成物を投与する工程を含む。多岐にわたる眼の障害のいずれかを処置することができる。例えば、黄斑変性症、脈絡膜血管新生、網膜血管新生、眼球の炎症またはこれらの任意の組み合わせを特徴とする障害を処置することができる。
【0009】
本発明は、さらに、(i)コンプスタチンまたはその補体阻害アナログ;および(ii)黄斑変性症、脈絡膜血管新生、網膜血管新生、眼球の炎症またはこれらの任意の組み合わせを特徴とする眼の障害の危険性があるか、またはそれに罹患している被験体の眼に存在する成分に結合する部分を含む組成物を提供する。その成分は、黄斑変性症、眼球の炎症などを有する被験体の眼に見られる沈着物中に存在する、細胞マーカーまたは非細胞性実体、例えば、分子または複合体であり得る。
【0010】
本発明は、さらに、(i)コンプスタチンまたはその補体阻害アナログ;および(ii)血管新生インヒビターを含む組成物を提供する。
【0011】
本発明は、さらに、コンプスタチン分子および/もしくはコンプスタチンアナログの重合体の骨格(backbone)もしくは足場(scaffold)または多量体に結合した、複数のコンプスタチンアナログ分子またはコンプスタチンアナログ部分を含む組成物を提供する。コンプスタチンアナログ部分は、同一であっても異なっていてもよい。その組成物は、例えば、重合体の骨格または足場に結合した、2個、3個、4個またはそれ以上の異なるコンプスタチンアナログを含み得る。
【0012】
本発明は、さらに、(i)コンプスタチンまたはその補体阻害アナログ;および(ii)可溶性ゲル形成材料を含む組成物を提供する。その組成物は、身体に導入された後、例えば、生理学的流体と接触する際にゲルを形成する。1つの実施形態において、コンプスタチンアナログは、重合体の骨格または足場に結合している。1つの実施形態において、上記組成物は、互いに連結した複数のコンプスタチンアナログ分子を含む。前述の組成物のある特定の実施形態において、可溶性ゲル形成材料は、可溶性コラーゲンである。上記組成物は、線維性コラーゲン固体をさらに含み得る。本発明のある特定の実施形態において、可溶性ゲル形成材料を含む上記組成物のいずれかは、さらに、血管新生インヒビターを含む。上記組成物は、インビトロにおいてゲル埋没物中に形成され得、眼または眼の近傍に投与され得る。
【0013】
本発明は、さらに、コンプスタチンまたはその補体阻害アナログを含む、眼球埋没物および重合体の送達ビヒクルを提供する。本発明のいくつかの実施形態において、上記組成物は、さらに、黄斑変性症、脈絡膜血管新生、網膜血管新生またはこれらの任意の組み合わせを特徴とする眼の障害の危険性があるか、またはそれに罹患している被験体の眼に存在する成分に結合する部分を含む。本発明のある特定の実施形態において、前述の組成物のいずれかは、さらに、血管新生インヒビターを含む。
【0014】
本発明は、さらに、コンプスタチンもしくはその補体阻害アナログを含むか、または、コンプスタチンおよび1つ以上のその補体阻害アナログを含むか、またはコンプスタチンの複数の異なる補体阻害アナログを含む、超分子複合体を提供する。いくつかの実施形態において、上記組成物は、コンプスタチン分子(および/またはコンプスタチンアナログ)の重合体の骨格もしくは足場または多量体に結合した複数のコンプスタチン分子(および/またはコンプスタチンアナログ分子)を含む。いくつかの実施形態において、上記組成物は、さらに、可溶性ゲル形成材料を含む。
【0015】
本発明は、さらに、黄斑変性症、脈絡膜血管新生、網膜血管新生、眼球の炎症またはこれらの任意の組み合わせを特徴とする眼の障害を処置する方法を提供し、その方法は、本発明の組成物のいずれかを、眼の障害の危険性があるか、またはそれに罹患している被験体に投与する工程を含む。上記組成物は、上記障害に対する単独療法として投与され得るか、または1つ以上の他の処置が、同時もしくは連続的に施され得る。そのような処置としては、レーザー光凝固、光線力学的療法(例えば、Visudyne(登録商標))または抗血管新生療法が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
本発明の組成物および方法を試験するための方法もまた提供される。
【0017】
本発明の組成物を作製するための方法もまた提供される。
【0018】
本発明の実施形態のいずれかにおいて、眼の障害は、黄斑変性症に関連する状態、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、ブドウ膜炎、角膜炎、強膜炎、網膜色素変性症、あるいは、脈絡膜および/もしくは網膜の血管新生ならびに/または眼球の炎症を特徴とする任意の状態であり得る。ある特定の実施形態において、眼の障害は、黄斑変性症に関連する状態、例えば、ARMDである。ある特定の実施形態において、眼の障害は、糖尿病性網膜症である。
【0019】
網膜血管腫状増殖(RAP)がみとめられる眼の障害が、本発明の組成物および方法によって処置することができる眼の障害の中に含まれる。RAPは、網膜の血管の異常な増殖(網膜血管新生)を含み、新生血管性ARMDのサブタイプの特徴であるが、黄斑変性症に関与するか否かにかかわらず、本発明の組成物および方法を用いて、いずれの原因によるRAPも処置することができる。それゆえ本発明は、網膜血管腫状増殖を特徴とする眼の障害を阻害する方法を提供し、その方法は、(i)眼の障害に対する処置が必要な被験体を提供する工程;および(ii)その被験体にコンプスタチンまたはその補体阻害アナログを含む組成物を投与する工程を含む。上記組成物は、本明細書中に記載される方法のいずれかを用いて投与され得る。いくつかの実施形態において、上記組成物は、硝子体内または眼の後部に近接した位置に送達される。
【0020】
血管新生インヒビターを特徴とする本発明の実施形態のいずれかにおいて、血管新生インヒビターは、当該分野で公知の任意の血管新生インヒビターであり得る。例えば、血管新生インヒビターは、Macugen(登録商標)または別のVEGF核酸リガンド;Lucentis(登録商標)、Avastin(登録商標)または別の抗VEGF抗体;コンブレタスタチン(combretastatin)またはその誘導体もしくはプロドラッグ(例えば、Combretastatin A4 Prodrug(CA4P));VEGF−Trap;EVIZONTM(乳酸スクアラミン);AG−013958(Pfizer,Inc.);JSM6427(Jerini AG)、β2−糖タンパク質1(β2−GP1)および1つ以上のVEGFアイソフォーム(例えば、VEGF165)の発現を阻害するか、またはVEGFレセプター(例えば、VEGFR1)の発現を阻害する低分子干渉RNA(siRNA)からなる群から選択され得るが、必ずしもこれらではない。
【0021】
別途記載されない限り、本発明は、分子生物学、化学、細胞培養、動物の管理、眼科検診および被験体への治療薬の投与などの標準的な方法を使用し、そして当該分野が許容する用語の意味を使用する。本出願は、様々な特許および刊行物を参照する。本出願において言及される科学論文、書籍、特許および他の刊行物のすべての内容が、本明細書中に参考として援用される。さらに、以下の刊行物が、本明細書中に参考として援用される:Current Protocols in Molecular Biology,Current Protocols in Immunology,Current Protocols in Protein ScienceおよびCurrent Protocols in Cell Biology,上記すべてJohn Wiley & Sons,N.Y.,edition as of July 2002;Sambrook,Russell,and Sambrook,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,2001;Kuby Immunology,4th ed.,Goldsby,R.A.,Kindt,T.J.,and Osborne,B.(eds.),W.H.Freeman,2000,Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,10th Ed..McGraw Hill,2001,Katzung,B.(ed.)Basic and Clinical Pharmacology,McGraw−Hill/Appleton & Lange;9th edition(December 2003),Ophthalmic Surgery:Principles and Practice,3rd ed.,W.B.Saunders Company,2002;Albert,DM and Lucarelli,MJ(eds.),Clinical Atlas of Procedures in Ophthalmic Surgery,American Medical Association,2003。なお、当該分野の状況は、本明細書中に援用された参考文献に示されるものよりも進み得ると理解されるだろう。援用される参考文献のいずれかと本明細書との間で矛盾または不一致が生じる場合には、補正によって修正されない限り、代表的には本明細書が支配しなければならず、矛盾または不一致が存在するか否かの判定は、本発明者らの判断の範囲内であり、その判定はどの時点においてもなされ得ることが理解される。標準的なアミノ酸に対して当該分野で許容される省略形が本明細書中で使用される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(定義)
「血管新生」または「血管新生の」とは、新しい血管の形成、成長および/または発生のことをいう。
【0023】
用語「血管新生インヒビター」および「抗血管新生剤」は、血管新生に関連する1つ以上のプロセス(例えば、内皮細胞増殖、内皮細胞移動および毛細管形成が挙げられるがこれらに限定されない)を阻害することができるか、または低減することができる薬剤のことをいうために本明細書中で交換可能に使用される。さらに、そのような薬剤は、血管から液体が滲出するのを阻害し得る。
【0024】
数値に関する用語「およそ」または「約」は、別途述べられないか、または別途文脈から明らかでない限り(そのような数値が、可能性のある値の100%を許容されないほど超える場合を除いて)、一般に、その数値のいずれかの方(超または未満)における5%の範囲内に入る数値を含む。
【0025】
「生体適合性」とは、インビトロにおいて細胞に対して実質的に無毒性である(例えば、培養中の細胞に添加された場合に、20%以下の細胞死が生じる)材料のことをいう。
ある材料が、使用される量および位置においてレシピエントの細胞に対して実質的に無毒性であり、また、レシピエントの身体に対して、著しく有害または不適当な作用(例えば、免疫反応または炎症性反応、容認できない瘢痕組織の形成など)を誘発しないか、または引き起こさない場合に、その材料は、レシピエントに関して生体適合性であると考えられる。
【0026】
「生分解性」とは、ある材料が、例えば、生理学的条件下における加水分解、天然の生物学的プロセス(例えば、細胞内または体内に存在する酵素の作用など)によって、細胞内または被験体の体内で物理的および/または化学的に破壊されることによって、代謝され得、必要に応じて、再利用され得、そして/または排泄され得るか、もしくは他の方法で処分され得る、より小さい化学種を形成することができることを意味する。好ましくは、生分解性化合物は、生体適合性である。
【0027】
「生物学的高分子」は、生体系に見られるタイプの小サブユニットから構成される大分子である。生物学的高分子の例としては、ポリペプチド、核酸および多糖が挙げられる。
代表的には、生物学的高分子は、少なくとも3つのサブユニット(例えば、アミノ酸、ヌクレオシド、単糖類など)を含む。生物学的高分子は、天然に存在するポリペプチド、核酸または多糖であり得るが、必ずしもこれらである必要はない。生物学的高分子は、改変され得る。例えば、生物学的高分子は、非生物学的分子(例えば、合成ポリマーなど)に結合体化され得る。
【0028】
「脈絡膜血管新生」(CNV)とは、脈絡毛細管板から生じる血管の異常な発生、増殖および/または成長のことをいう。その血管は、代表的には、ブルッフ膜、RPE層および/または網膜下腔を通って伸びる。
【0029】
「補体成分」または「補体タンパク質」は、補体系の活性化に関与するか、または1つ以上の補体媒介性活性に関与する分子である。補体古典的経路の成分としては、例えば、C1q、C1r、C1s、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8、C9およびC5b−9複合体が挙げられ、また、それらは、細胞膜傷害複合体(MAC)および前述のもののうち任意の活性なフラグメントまたは酵素的切断産物(例えば、C3a、C3b、C4a、C4b、C5aなど)と呼ばれる。副経路の成分としては、例えば、B因子、D因子、H因子およびI因子ならびにプロパージンが挙げられる。
【0030】
「同時投与」は、2つ以上の薬剤、例えば治療薬に関して、本明細書中で使用されるとき、投与される薬剤が、僅少な量より少なくない状態で、ある時間間隔にわたって体内または身体の作用部位(例えば、眼内)に共に存在するような用量および時間間隔を用いて行われる投与のことである。その時間間隔は、分(例えば、少なくとも1分、1〜30分、30〜60分)、時間(例えば、少なくとも1時間、1〜2時間、2〜6時間、6〜12時間、12〜24時間)、日(例えば、少なくとも1日、1〜2日、2〜4日、4〜7日など)、週(例えば、少なくとも1、2または3週など)であり得る。従って、それらの薬剤は、単一組成物の一部として共に投与され得るが、必ずしもそうである必要はない。さらに、それらの薬剤は、同時(例えば、5分未満または1分未満のうちに)または互いに短時間(例えば、1時間未満、30分未満、10分未満、およそ5分未満の間を空けて)のうちに投与され得るが、必ずしもそうである必要はない。本発明の様々な実施形態によれば、そのような時間間隔内で投与される薬剤は、実質的に同時に投与されると見なされ得る。本発明のある特定の実施形態において、同時に投与される薬剤は、その時間間隔にわたって体内(例えば、血液中および/または作用部位(例えば、網膜))に有効濃度で存在する。同時に投与されるとき、特定の生物学的応答を誘発するために必要とされる薬剤の各々の有効濃度は、各薬剤が単独で投与されるときの有効濃度未満であり得、それによって、その薬剤が単一薬剤として投与された場合に必要とされる用量と比べて、それらの薬剤の1つ以上の用量を減少することができる。複数の薬剤の効果は、相加的または相乗的であり得るが、必ずしもそうである必要はない。薬剤は、複数回投与され得る。
薬剤の僅少な濃度は、例えば、特定の生物学的応答(例えば、所望の生物学的応答)を誘発するために必要とされる濃度のおよそ5%未満であり得る。
【0031】
活性な薬剤の「有効量」とは、所望の生物学的応答を誘発するのに十分な、活性な薬剤の量のことをいう。当業者によって理解され得るように、有効である特定の薬剤の絶対量は、所望の生物学的終点、送達されるべき薬剤、標的組織などの因子に応じて変化し得る。「有効量」が、単一用量で投与されてもよいし、複数回用量の投与によって達成されてもよいことを当業者はさらに理解だろう。例えば、有効量は、以下の1つ以上を達成するのに十分な量であり得る:(i)ドルーゼンの形成を阻害または予防すること;(ii)ドルーゼンの数および/またはサイズの低減(ドルーゼンの後退)を引き起こすこと;(iii)リポフスチン沈着の減少または予防を引き起こすこと;(iv)視力喪失を阻害もしくは予防することまたは視力喪失の速度を遅延させること;(v)脈絡膜血管新生を阻害することまたは脈絡膜血管新生の速度を遅延させること;(vi)脈絡膜血管新生を特徴とする病変のサイズおよび/または数の減少を引き起こすこと;(vii)脈絡膜血管新生を阻害することまたは網膜血管新生の速度を遅延させること;(viii)網膜血管新生を特徴とする病変のサイズおよび/または数の減少を引き起こすこと;(ix)視力および/またはコントラスト感度を改善すること;(x)光受容体またはRPE細胞の萎縮もしくはアポトーシスを阻害もしくは予防することあるいは光受容体またはRPE細胞の萎縮もしくはアポトーシスの速度を低下させること;(xi)非浸出性黄斑変性症から浸出性黄斑変性症への進行を阻害または予防すること;(xii)1つ以上の炎症の徴候、例えば、眼における白血球細胞(例えば、好中球、マクロファージ)などの炎症関連細胞の存在、当該分野で公知の内因性炎症性媒介物(mediator)の存在、1つ以上の症状(例えば、眼の疼痛、赤み、光感受性、かすみ目および飛蚊症など)を減少させること。
【0032】
「発現調節配列」とは、作動可能に連結されたヌクレオチド配列の発現(転写および/または翻訳)を制御するポリヌクレオチド中のヌクレオチド配列のことをいう。
【0033】
「浸出性」黄斑変性症は、それらの用語が、一般に当該分野で理解されているように、本明細書中で「滲出」型黄斑変性症と同義に使用され、すなわち、「滲出性」黄斑変性症とは、黄斑変性症に関連する状態(例えば、新生血管形成を特徴とするARMD)のことをいう。
【0034】
「線維性コラーゲン固体」とは、線維性コラーゲンの乾燥コラーゲン固体内容物のことを意味する。線維性コラーゲンは、そのコラーゲン分子が、相互作用して、側々および端々での会合によってそれら自体が凝集して、安定化したコラーゲン原線維を形成するミクロフィブリルを形成する不溶性コラーゲン材料である。
【0035】
「融合タンパク質」とは、2つ以上の異なるポリペプチドを含むポリペプチドまたはその一部が共に結合して1本のポリペプチド鎖を形成するポリペプチドのことをいう。融合タンパク質をコードする組換えポリヌクレオチドは、第1のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドから終止コドンを除去し、得られる組換えポリヌクレオチドがその2つのポリペプチドを含む単一ポリペプチドをコードするように、第2のポリペプチドをインフレームでコードするポリヌクレオチドを付加することによって作製され得る。
【0036】
「同一性」とは、2つ以上の核酸またはポリペプチドの配列が同一である程度のことをいう。評価の領域、例えば、目的の配列の長さにわたる、目的の配列と第2の配列との間の同一性パーセントは、それらの配列をアラインメントし、同一性を最大にするためにギャップを挿入することを許容して、評価領域内の同一の残基である反対側の残基(ヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を決定し、その領域内に入る目的の配列または第2の配列(どちらか長いほう)の残基の総数で割り、100を掛けることによって、計算され得る。
ギャップとは、残基によって占められない配列の一部のことを意味する。例えば、配列AKL−−−SIG(配列番号1)は、3残基のギャップを含んでいる。特定の同一性パーセントを達成するために必要な同一残基数を計算するとき、分数は、最も近い整数に丸められるべきである。同一性パーセントは、当該分野で公知の種々のコンピュータプログラムを使用することによって計算され得る。例えば、コンピュータプログラム(例えば、BLAST2、BLASTN、BLASTP、Gapped BLASTなど)は、アラインメントを生成し、目的の配列と種々の公的データベースのいずれかに存在する配列との間の同一性パーセントを提供する。Karlin and Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873−5877,1993におけるように改変されたKarlinおよびAltschulのアルゴリズム(Karlin and Altschul,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:22264−2268,1990)は、AltschulらのNBLASTおよびXBLASTプログラム(Altschulら、J.Mol.Biol.215:403−410,1990)に組み込まれている。比較する目的でギャップが挿入されたアラインメントを得るために、Altschulら(Altschulら、Nucleic Acids Res.25:3389−3402,1997)に記載されているようなGapped BLASTが利用される。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを利用するとき、各々のプログラムのデフォルトのパラメータが使用され得る。PAM250行列またはBLOSUM62行列が使用され得る。これらのプログラムについてのウェブサイト(URL www.ncbi.nlm.nih.gov)を参照のこと。特定の実施形態において、目的の配列と第2の配列との同一性パーセントは、デフォルトのパラメータを用いたBLAST2を使用して計算される。
【0037】
用語「単離されている」とは、1)通常、天然に関連する成分の少なくともいくつかから分離されていること;2)人間の手が関与するプロセスによって調製または精製されていること;および/または3)天然に存在しないことを意味する。例えば、その分子を産生する細胞から取り出されているその分子は、「単離されている」。化学合成された分子は、「単離されている」。
【0038】
用語「連結されている」は、2つ以上の部分に関して使用されるとき、それらの部分が、物理的に会合するか、または互い接続することにより、十分に安定である分子構造を形成し、それらの部分は、結合が形成される条件下、好ましくは、その新しい分子構造が使用される条件下、例えば、生理学的条件下において会合したままであることを意味する。
本発明のある特定の好ましい実施形態において、その結合は、共有結合である。他の実施形態において、その結合は、非共有結合である。部分は、直接または間接的に連結され得る。2つの部分が直接連結されるとき、それらは、互いに共有結合されるか、またはそれら2つの部分の間の分子間力がその会合を維持するように十分に近接している。2つの部分が、間接的に連結されるときは、それらは各々、それら2つの部分の間の会合を維持する第3の部分と共有結合または非共有結合で連結する。一般に、2つの部分が、「リンカー」または「結合部分」または「結合の一部」によって連結されているといわれるとき、その2つの連結される部分の間の結合は、間接的であり、代表的には、連結される部分の各々は、リンカーと共有結合する。そのリンカーは、それら2つの部分と反応して、それらの部分(条件に応じて適切に保護されていてもよい)の安定性と調和する条件下、かつ、妥当な収量を得るために十分な量で、妥当な時間内に連結される任意の適当な部分であり得る。
【0039】
「リポソーム」は、水性の区画を囲い込む脂質二重層(または多層)によって形成される人工の微視的球状粒子である。リポソームは、本発明の組成物のいくつかを送達するために使用され得る。
【0040】
「局所投与」または「局所送達」とは、本発明の組成物または薬剤の送達に関連して、脈管系を介した、意図される標的組織または標的部位への組成物または薬剤の輸送に依存しない送達のことをいう。組成物または薬剤は、その意図される標的組織もしくは標的部位またはその近傍(例えば、意図される標的組織または標的部位の近接した位置)に直接送達され得る。例えば、組成物もしくは薬剤の注射もしくは埋没によってか、または組成物もしくは薬剤を含むデバイスの注射もしくは埋没によって、組成物は送達され得る。標的組織または標的部位の近傍における局所投与の後、組成物もしくは薬剤またはその1つ以上の成分は、意図された標的組織または標的部位に拡散し得る。一旦、局所的に送達されると、治療薬の画分(代表的には、投与された用量の少数の画分のみ)が、脈管系に入り、別の位置に輸送され得る(その意図された標的組織または標的部位に戻ることを含む)ことが理解されるだろう。
【0041】
「黄斑変性症に関連する状態」は、黄斑が変性するか、または機能的活性を喪失する多くの障害および状態のいずれかのことをいう。変性または機能的活性の喪失は、例えば、細胞死、細胞増殖の低下、正常な生物学的機能の喪失または前述のものの組み合わせの結果として、生じ得る。黄斑変性症は、黄斑の細胞および/もしくは細胞外マトリックスの構造的完全性の変化、正常な細胞マトリックスおよび/もしくは細胞外マトリックスの構造の変化、ならびに/または黄斑細胞の機能喪失に導き得、そして/またはそれらを現す。それらの細胞は、RPE細胞、光受容体および/または毛細血細管内皮細胞をはじめとした、黄斑または黄斑の近くに正常に存在する任意の細胞タイプであり得る。ARMDは、黄斑変性症に関連する主な状態であるが、多くの他の状態が知られており、それらとしては、ベスト黄斑ジストロフィ(Best macular dystrophy)、ソーズビー眼底ジストロフィ(Sorsby fundus dystrophy)、Mallatia Leventineseおよびドイン蜂巣状網膜ジストロフィ(Doyne honeycomb retinal dystrophy)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0042】
「マーカー」とは、本発明を説明する目的で、特定の罹患状態または生理学的状態(例えば、アポトーシス、癌性、正常の状態)を特徴付けるか、示すか、もしくは同定するか、または、1つ以上の細胞タイプ、組織タイプまたは発生学的起源を特徴付けるか、示すか、もしくは同定する、任意の分子部分(例えば、タンパク質、ペプチド、mRNAまたは他のRNA種、DNA、脂質、炭水化物)のことをいう場合がある。ある特定のマーカーの有無またはある特定のマーカーの量は、患者、器官、組織または細胞の特定の生理学的状態または罹患状態を示し得る。細胞マーカーは、細胞中または細胞上に見られるマーカーである。細胞マーカーは、細胞タイプ特異的であり得るが、必ずしもそうである必要はない。例えば、細胞タイプ特異的マーカーは、一般に、特定の細胞タイプ上もしくはタイプ中または目的の細胞タイプ上もしくはタイプ中のレベルが、他の多くの細胞タイプ上または細胞タイプ中のレベルよりも高いレベルで存在する、タンパク質、ペプチド、mRNA、脂質または炭水化物である。いくつかの場合において、細胞タイプ特異的マーカーは、目的の特定の細胞タイプ上または細胞タイプ中にのみ検出可能なレベルで存在する。
しかしながら、有用なマーカーが、目的の細胞タイプに絶対的に特異的である必要はないことが理解されるであろう。例えば、ある特定のCD分子は、複数の様々なタイプの白血球の細胞上に存在する。一般に、特定の細胞タイプに対する細胞タイプ特異的マーカーは、例えば、複数の(例えば、5〜10個またはそれ以上の)異なる組織または器官由来の細胞をほぼ同じ量で含む混合物からなり得る細胞の参照集団中の細胞タイプよりも少なくとも3倍高いレベルで発現している。より好ましくは、細胞タイプ特異的マーカーは、参照集団におけるその平均発現よりも、少なくとも4〜5倍、5〜10倍または10倍超高いレベルで存在する。好ましくは、細胞タイプ特異的マーカーの検出または測定によって、目的の細胞タイプ(単数または複数)と、他の多くの、ほとんどの、またはすべてのタイプの細胞とを区別することができる。一般に、ほとんどのマーカーの存在および/または存在量は、標準的な技術(例えば、ノーザンブロッティング、インサイチュハイブリダイゼーション、RT−PCR、配列決定、免疫学的方法(例えば、免疫ブロット法、免疫検出または蛍光標識された抗体で染色した後の蛍光検出)、オリゴヌクレオチドもしくはcDNAのマイクロアレイまたは膜アレイ、タンパク質マイクロアレイ解析、質量分析など)を用いて測定され得る。
【0043】
「非浸出性」黄斑変性症は、この用語が、当該分野で一般に理解されているように、本明細書中で「非滲出」型黄斑変性症と同義に使用され、「非滲出性」黄斑変性症は、黄斑変性症に関連する状態、例えば、フルオレセイン血管造影法などの標準的な方法を用いて検出可能である血管新生が生じていないARMDのことをいう。
【0044】
「作動可能に連結されている」または「作動可能に会合されている」とは、2つの核酸配列の一方の発現が、他方の核酸配列によって支配、制御、調節などされているそれら2つの核酸配列間の関係性、または2つのポリペプチドの一方の発現が、他方のポリペプチドによって支配、制御、調節などされているそれら2つのポリペプチド間の関係性のことをいう。例えば、核酸配列の転写は、作動可能に連結されているプロモーター配列によって管理されている;核酸の転写後プロセシングは、作動可能に連結されているプロセシング配列によって管理されている;核酸配列の翻訳は、作動可能に連結されている翻訳制御配列によって管理されている;核酸またはポリペプチドの輸送、安定性または局在性は、作動可能に連結されている輸送配列または局在性配列によって管理されている;そしてポリペプチドの翻訳後プロセシングは、作動可能に連結されているプロセシング配列によって管理されている。好ましくは、第2の核酸配列に作動可能に連結されている核酸配列または第2のポリペプチドに作動可能に連結されているポリペプチドは、そのような配列に直接または間接的に共有結合しているが、任意の効果的な3次元会合が許容可能である。
【0045】
「複数」とは、1つより多いことを意味する。
【0046】
「ポリヌクレオチド」または「オリゴヌクレオチド」とは、ヌクレオチドのポリマーのことをいう。本明細書中で使用されるとき、オリゴヌクレオチドは、代表的には、100ヌクレオチド長未満である。ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドはまた、核酸とも呼ばれ得る。代表的には、ポリヌクレオチドは、少なくとも3ヌクレオチドを含む。ヌクレオチドは、窒素塩基、糖分子およびリン酸基を含む。ヌクレオシドは、糖分子に連結した窒素塩基を含む。ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドにおいて、リン酸基は、隣接ヌクレオシドと共有結合して、ポリマーを形成する。そのポリマーは、DNAもしくはRNAに見られる天然のヌクレオシド(例えば、アデノシン、チミジン、グアノシン、シチジン、ウリジン、デオキシアデノシン、デオキシチミジン、デオキシグアノシンおよびデオキシシチジン)、他のヌクレオシドもしくはヌクレオシドアナログ、化学修飾された塩基および/または生物学的に改変された塩基(例えば、メチル化塩基)、インターカレートされた塩基、改変された糖などを含むヌクレオシドを含み得る。ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドにおけるリン酸基は、代表的には、そのポリマーのヌクレオシド間の骨格を形成すると考えられる。天然に存在する核酸(DNAまたはRNA)において、その骨格の結合は、3’と5’とのホスホジエステル結合を介する。しかしながら、改変された骨格または天然に存在しないヌクレオシド間結合を含むポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド(oligonucletide)もまた、本発明において使用され得る。そのような改変された骨格は、その骨格中にリン原子を有するものおよびその骨格中にリン原子を有しない他のものを含む。改変された結合の例としては、ホスホロチオエート結合および5’−N−ホスホルアミダイト結合が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中に記載されているポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドにおいて使用され得る様々なヌクレオチド、ヌクレオシドおよび骨格構造ならびにそれらを作製するための方法に関するさらなる論考として、Kornberg and Baker,DNA Replication,2nd Ed.(Freeman,San Francisco,1992),Scheit,Nucleotide Analogs(John Wiley,New York,1980)、米国特許公開番号20040092470およびその明細書中の参考文献を参照のこと。代表的には、本発明のポリヌクレオチドは、DNAまたはRNAである。
【0047】
ポリヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチドは、その分子の全長にわたって一様に改変されている必要はない。例えば、様々なヌクレオチドの改変、様々な骨格構造などが、ポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチド中の様々な位置において存在し得る。本明細書中に記載されるポリヌクレオチドのいずれかが、これらの改変を利用し得る。
【0048】
ポリヌクレオチドは、任意のサイズまたは配列であり得、一本鎖または二本鎖であり得る。一本鎖である場合、そのポリヌクレオチドは、コード鎖(センス鎖)または非コード鎖(アンチセンス鎖)であり得る。
【0049】
ポリヌクレオチドは、当該分野で公知の任意の手段によって提供され得る。ある特定の実施形態において、ポリヌクレオチドは、組換え技術を用いて操作される(これらの技術に関する詳細な説明については、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons,Inc.,New York,1999);Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,ed.by Sambrook,Fritsch,and Maniatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989を参照のこと)。ポリヌクレオチドはまた、天然起源から入手され得、通常天然に見られる成分が混入しているものから精製され得る。ポリヌクレオチドは、細胞内またはインビトロのいずれかにおいて酵素的技術を用いて合成され得る。ポリヌクレオチドはまた、研究室内で、例えば、標準的な固相化学を用いて化学的に合成され得る。ポリヌクレオチドは、化学的手段および/または生物学的手段によって修飾され得る。ある特定の好ましい実施形態において、これらの修飾によって、ポリヌクレオチドの安定性が増大する。修飾としては、メチル化、リン酸化、末端のキャッピング(end−capping)などが挙げられる。
【0050】
用語「ポリヌクレオチド配列」または「核酸配列」とは、本明細書中で使用されるとき、核酸材料自体のことをいうことができ、特定の核酸、例えば、DNAまたはRNA分子を生化学的に特徴付ける配列情報(すなわち、5つの塩基の文字A、G、C、TまたはUの中から選択される文字の連続)に限定されない。核酸配列は、別途示されない限り、5’から3’への方向で表される。
【0051】
「ポリペプチド」とは、本明細書中で使用されるとき、アミノ酸のポリマーのことをいい、必要に応じて、1つ以上のアミノ酸アナログを含む。タンパク質は、1つ以上のポリペプチドから構成される分子である。ペプチドは、代表的には、約2〜60アミノ酸長の比較的短いポリペプチドである。用語「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」は、交換可能に使用され得る。本明細書中で使用されるポリペプチドは、タンパク質中に天然に見られるものなどのアミノ酸、タンパク質中に天然には見られないアミノ酸および/またはアミノ酸ではないアミノ酸アナログを含み得る。本明細書中で使用されるとき、アミノ酸の「アナログ」は、アミノ酸と構造的に似ている異なるアミノ酸、または、そのアミノ酸と構造的に似ているアミノ酸以外の化合物であり得る。タンパク質中に通常見られる20個のアミノ酸(「標準的な」アミノ酸)に関する、当該分野で認識されている大多数のアナログが知られている。ポリペプチド中のアミノ酸の1つ以上は、例えば、化学物質(例えば、炭水化物基、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸基、結合体化用リンカー、機能付与用リンカーまたは他の修飾用リンカーなど)の付加によって修飾され得る。ある特定の非限定的で安定なアナログおよび改変物は、WO2004026328に記載されている。ポリペプチドは、例えばN末端でアセチル化され得、そして/または、例えばC末端でアミド化され得る。
【0052】
天然の化学修飾または他の化学修飾(例えば、上記の化学修飾)は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノ末端またはカルボキシル末端をはじめとしたポリペプチド中のいずれの部分においても起き得る。所定のポリペプチドは、多くのタイプの修飾を含み得る。ポリペプチドは、例えば、ユビキチン化の結果として、分枝状であり得、また、分枝の有無にかかわらず環状であり得る。ポリペプチドは、ポリマーまたは重合体マトリックス、デンドリマー、ナノ粒子、マイクロ粒子、リポソームなどと結合体化され得るか、それらによって被包され得るか、またはそれらの中に包埋され得る。
【0053】
ポリペプチドは、例えば、天然起源から精製され得、適当な発現系における(例えば、組換え宿主細胞によるか、またはトランスジェニック動物もしくはトランスジェニック植物における)組換えDNA技術を用いて適当な発現系においてインビトロまたはインビボにおいて産生され得、化学的手段(例えば、従来の固相ペプチド合成法および/もしくは合成ペプチドの化学的連結(例えば、Kent,S.,J Pept Sci.,9(9):574−93,2003を参照のこと)を含む方法または前述のものの任意の組み合わせによって合成され得る。これらの方法は、周知であり、当業者は、本明細書中に記載されるペプチドおよびポリペプチドを合成するための適切な方法を選択し、実行することができる。ポリペプチドは、例えば、米国公開番号20040115774に記載されているように1つ以上の化学的連結部位を含み得る。ある特定の実施形態において、本発明のポリペプチドは、上記明細書中に記載または参照されている方法の1つ以上を用いてポリマーによって修飾される。
【0054】
用語「ポリペプチド配列」または「アミノ酸配列」とは、本明細書中で使用されるとき、ポリペプチド材料自体のことをいうことができ、それら配列は、ポリペプチドを生化学的に特徴付ける配列情報(すなわち、アミノ酸名に対する省略形として使用される文字およびコードの中から選択される文字または3文字のコードの連続)に限定されない。本明細書中に表されるポリペプチド配列は、別途示されない限り、N末端からC末端への方向で表される。
【0055】
「眼の後部」とは、水晶体の後ろの眼の一部のことをいい、硝子体、脈絡膜および網膜(黄斑を含む)を含む。
【0056】
「精製されている」とは、本明細書中で使用されるとき、ある実体または物質が、精製される前にそれらとともに見出されていた1つ以上の他の実体または物質から分離されていることを意味する。実体または物質は、部分的に精製され得るか、実質的に精製され得るか、または純粋であり得る。物質または実体(例えば、核酸またはポリペプチド)は、実質的に他のすべての化合物または溶媒およびその溶媒中の任意のイオン以外の実体から取り出されているとき、すなわち、その物質または実体が、その組成物の乾燥重量の少なくとも約90%、より好ましくは、少なくとも約91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または99%超を構成するとき、純粋であると見なされる。部分的または実質的に精製されている化合物または実体(例えば、核酸またはポリペプチド)は、それらとともに天然に見出される材料、例えば、細胞性の材料(例えば、細胞性タンパク質および/または核酸)の重量に対して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%または少なくとも80%から取り出されていることがある。ある特定の実施形態において、精製されている核酸またはポリペプチドは、組成物中のそれぞれ核酸またはポリペプチドの総乾燥重量に対して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上を構成する。純度を評価するための方法は、当該分野で公知であり、それらとしては、クロマトグラフィによる方法、免疫学的方法、電気泳動的方法などが挙げられる。本明細書中に記載されているポリヌクレオチドまたはポリペプチドのいずれかは、精製されていることがある。
【0057】
「反応性官能基」とは、本明細書中で使用されるとき、オレフィン、アセチレン、アルコール、フェノール、エーテル、オキシド、ハロゲン化物、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、アミド、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、イソチオシアネート、アミン、ヒドラジン、ヒドラゾン、ヒドラジド、ジアゾ、ジアゾニウム、ニトロ、ニトリル、メルカプタン、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、スルフィン酸、アセタール、ケタール、無水物、スルフェート、スルフェン酸イソニトリル、アミジン、イミド、イミデート、ニトロン、ヒドロキシルアミン、オキシム、ヒドロキサム酸チオヒドロキサム酸、アレン、オルトエステル、スルフィット、エナミン、イナミン、尿素、シュードウレア、セミカルバジド、カルボジイミド、カルバメート、イミン、アジド、アゾ化合物、アゾキシ化合物およびニトロソ化合物を含む基のことをいうがこれらに限定されない。反応性官能基はまた、生結合体(bioconjugate)、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、マレイミド、スルフヒドリルなど(例えば、Hermanson,G.,Bioconjugate Techniques,Academic press,San Diego,1996を参照のこと)を調製するためにしばしば使用されるものも含む。これらの官能基の各々を調製する方法は、当該分野で周知であり、特定の目的への適用または特定の目的のための改変は、当業者の能力の範囲内である(例えば、Sandler and Karo,eds.ORGANIC FUNCTIONAL GROUP PREPARATIONS,Academic Press,San Diego,1989を参照のこと)。
【0058】
「組換え宿主細胞」、「宿主細胞」および他のそのような用語は、外来性核酸(代表的には、DNA)(例えば、目的のポリペプチドをコードする核酸の一部が挿入されている発現ベクター)に対するレシピエントとして使用される原核細胞もしくは真核細胞または細胞株のことを示す。これらの用語には、ベクターまたは他の核酸が導入されるもとの細胞の子孫を含む。適切な単細胞宿主細胞としては、ポリヌクレオチド(例えば、真核生物、哺乳動物および/またはウイルスのポリヌクレオチド)を発現する際に日常的に使用されている細胞のいずれかが挙げられ、例えば、E.coliなどの原核生物;および真核生物、例えば、酵母などの真菌(例えば、Pichia pastoris);昆虫細胞(例えば、Sf9)、植物細胞および動物細胞、例えば、哺乳動物細胞(例えば、CHO、R1.1、B−W、L−M、アフリカミドリザル腎臓細胞(例えば、COS−1、COS−7、BSC−1、BSC−40およびBMT−10)および培養ヒト細胞が挙げられる。「宿主細胞」などのような用語はまた、外来性核酸が導入される前の、外来性核酸に対するレシピエントとして使用され得る細胞または細胞株のことをいうためにも使用される。「組換えポリヌクレオチド」は、天然には結合した状態では見られない核酸の一部を含むポリヌクレオチドである。「組換えポリペプチド」は、代表的には、組換えポリペプチドをコードする一部を含む発現ベクターを宿主細胞に導入した後の組換え宿主細胞によって外来性核酸の転写および翻訳によって産生されるポリペプチドである。
【0059】
「網膜血管新生」とは、網膜上または網膜中、例えば、網膜の表面上における血管の異常な発生、増殖および/または成長のことをいう。
【0060】
2つ以上の薬剤の「連続投与」とは、それらの薬剤が、被験体の体内または体内の活性の関連部位において、僅少な濃度よりも高い濃度で共に存在しないように、被験体に2つ以上の薬剤を投与することをいう。この薬剤の投与は、次々に行ってもよいが、必ずしもそうである必要はない。各薬剤は、複数回投与してもよい。
【0061】
「特異的結合」とは、一般に、標的ポリペプチド(または、より一般には、標的分子)と結合分子(例えば、抗体またはリガンド)との間の物理的会合のことをいう。この会合は、代表的には、標的の特定の構造上の特徴(例えば、結合分子によって認識される、抗原決定基、エピトープ、結合ポケットまたは裂溝)の存在に左右される。例えば、ある抗体が、エピトープAに特異的である場合、標識された遊離型Aとそれに結合する結合分子との両方を含む反応物中の、エピトープAを含むポリペプチドの存在または標識されていない遊離型Aの存在は、結合分子に結合する標識されたAの量を減少させる。特異性は、絶対的である必要はないが、一般に、結合が生じる状況のことをいうと理解されるべきである。例えば、多くの抗体が、標的分子中に存在するエピトープに加えて、他のエピトープと交差反応することが当該分野で周知である。そのような交差反応性は、抗体が使用される用途に応じて許容され得る。当業者は、任意の所定の用途(例えば、標的分子の検出、治療的な目的など)において適切に行われるのに十分な程度の特異性を有する抗体またはリガンドを選択する能力を有する。特異性は、さらなる因子の状況(例えば、標的に対する結合分子の親和性 対 他の標的(例えば、競合物)に対する結合分子の親和性)において評価され得ることも理解される。結合分子が、検出を望む標的分子に対して高い親和性を示し、かつ、非標的分子に対して低い親和性を示す場合、その抗体は、許容される試薬である可能性がある。一旦、結合分子の特異性が1つ以上の状況において確立されると、その結合分子は、他の状況、好ましくは、類似の状況において必ずしもその特異性を再評価することなく使用され得る。2つ以上の分子の結合性は、親和性が(平衡解離定数Kdによって測定されるとき)、試験される条件下、例えば、生理学的条件下において、10−3M以下、好ましくは10−4M以下、より好ましくは10−5M以下、例えば、10−6M以下、10−7M以下、10−8M以下または10−9M以下である場合に、特異的であると見なされ得る。
【0062】
「著しい配列相同性」とは、アミノ酸配列に適用されるとき、その配列が、参照配列と比べて、少なくともおよそ20%のアミノ酸が同一であるかまたは保存的に置換されており、好ましくは、少なくともおよそ30%、少なくともおよそ40%、少なくともおよそ50%、少なくともおよそ60%のアミノ酸が同一であるかまたは保存的に置換されており、望ましくは、少なくともおよそ70%のアミノ酸が同一であるかまたは保存的に置換されており、より望ましくは、少なくともおよそ80%のアミノ酸が同一であるかまたは保存的に置換されており、そして最も望ましくは、少なくともおよそ90%のアミノ酸が同一であるか、または保存的に置換されていることを意味する。2つ以上の配列が比較されるとき、それらのいずれかが、参照配列と見なされ得る。同一性パーセントは、FASTAまたはBLASTPアルゴリズムを用い、デフォルトのパラメータを使用して計算され得る。PAM250行列またはBLOSUM62行列が使用され得る。%同一性または保存的に置換された残基の%を計算する目的で、保存的に置換された残基は、それが置換する残基に同一であると見なされる。保存的置換は、Stryer,L,.Biochemistry,3rd ed.,1988に従って定義され得るが、この文献によれば、以下の群(1)脂肪族側鎖:G、A、V、L、I;(2)芳香族側鎖:F、Y、W;(3)硫黄含有側鎖:C、M;(4)脂肪族ヒドロキシル側鎖:S、T;(5)塩基性側鎖:K、R、H;(6)酸性アミノ酸:D、E、N、Q;(7)環状脂肪族側鎖:P(これは、群(1)に入ると考えられる場合もある)に属するアミノ酸は、側鎖の特性(例えば、電荷、疎水性、芳香族性など)に関して類似の特徴を有する。
【0063】
「被験体」とは、本明細書中で使用されるとき、例えば、実験的、診断的および/または治療的な目的で薬剤が送達される個体のことをいう。好ましい被験体は、哺乳動物であり、特に、家畜化された哺乳動物(例えば、イヌ、ネコなど)、非ヒト霊長類またはヒトである。
【0064】
「超分子複合体」とは、互いに物理的に会合した少なくとも2つの実体を含む集合物のことをいい、ここで、1つ以上の実体は、別の実体と共有結合していないが、代わりに、その実体と1つ以上の非共有結合性の相互作用メカニズム(例えば、イオン性の相互作用、水素結合、疎水性相互作用、π−スタッキング、供与結合など)を介することによって会合している。例えば、1つ以上の実体は、それらの実体間の物理的会合を維持するように、別の実体の内部に包括、包埋、封入または被包されていてもよいし、別の実体と絡み合っていてもよいし、別の実体に溶解されていてもよいし、別の実体で飽和されていてもよいし、別の実体に吸着されていてもよいし、別の実体に結合していてもよい。それらの実体は、天然に存在するものであってもよいし、合成されたものであってもよい。それらは、例えば、ポリペプチド、非ポリペプチドポリマー、核酸、脂質、小分子、炭水化物などであり得る。それらの実体の1つ以上は、剛性または可撓性のポリマーの足場であり得、3次元構造(例えば、マイクロ粒子、ナノ粒子、リポソーム、デンドリマーなど)であり得る。超分子複合体は、任意の数の分子および/もしくは他の実体またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0065】
「処置する」とは、本明細書中で使用されるとき、処置を提供すること、すなわち、被験体の医療的または手術的な管理の任意のタイプを提供することをいう。処置は、疾患、障害もしくは状態の進行を後退、軽減、阻害するためか、疾患、障害もしくは状態の可能性を予防または低減するためか、あるいは、疾患、障害もしくは状態の進行の1つ以上の症状もしくは徴候を後退、軽減、阻害または予防するためか、疾患、障害もしくは状態の1つ以上の症状もしくは徴候の可能性を予防または低減するために、提供され得る。「予防」とは、疾患、障害、状態もしくは症状またはそのような徴候が、少なくともいくつかの個体において少なくともある期間にわたって生じないようにさせることをいう。処置には、例えば、ある状態(例えば、黄斑変性症または糖尿病性網膜症)の重症度を後退、軽減、低減するため、および/または、その状態の進行を阻害または予防するため、ならびに/または、その状態の1つ以上の症状もしくは徴候の重症度を後退、軽減、低減するため、および/または、その状態の1つ以上の症状もしくは徴候を阻害するために、その状態を示唆する1つ以上の症状または徴候を発症した後の被験体に薬剤を投与することを含み得る。本発明の組成物は、眼の障害(例えば、浸出性もしくは非浸出性のARMDまたは糖尿病性網膜症)を発症しているか、または一般の集団のメンバーと比べてそのような障害を発症する危険性の高い被験体に投与され得る。本発明の組成物は、予防的に、すなわち、その状態の任意の症状または徴候が現われる前に、投与され得る。代表的には、この場合、被験体は、その状態を発症する危険性がある。
【0066】
「ベクター」は、細胞への核酸分子の移入を媒介(例えば、運搬、輸送など)することができる核酸またはウイルスもしくはその一部(例えば、ウイルスキャプシド)のことをいうために本明細書中で使用される。ベクターが、核酸である場合、運搬される核酸分子は、一般に、ベクター核酸分子に連結、例えば、挿入されている。核酸ベクターは、自己複製を指示する配列(例えば、複製起点)を含み得るか、または核酸の一部もしくは全部を宿主細胞DNAに組み込むことを十分に可能にする配列を含み得る。有用な核酸ベクターとしては、例えば、DNAもしくはRNAのプラスミド、コスミドおよび天然に存在するかもしくは改変されたウイルスゲノムまたはその一部あるいはウイルスキャプシドにパッケージングされ得る核酸(DNAまたはRNA)が挙げられる。プラスミドベクターは、代表的には、複製起点および1つ以上の選択マーカーを含む。プラスミドは、ウイルスゲノム(例えば、ウイルスのプロモーター、エンハンサー、プロセシングシグナルまたはパッケージングシグナルなど)の一部または全部を含み得る。核酸分子を細胞に導入するために使用され得るウイルスまたはその一部(例えば、ウイルスキャプシド)は、ウイルスベクターとよばれる。有用なウイルスベクターとしては、アデノウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルスおよび他のポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスなどが挙げられる。ウイルスベクターは、宿主細胞に導入されるときに、感染性ウイルスを産生するためのウイルスの遺伝情報を十分に含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。すなわち、ウイルスベクターが、複製欠損であり得、また、そのような複製欠損ウイルスベクターが、治療的な使用にとって好ましい場合がある。十分な情報が欠けている場合、その情報は、宿主細胞または細胞に導入される別のベクターによって供給され得るが、必ずしもそうである必要はない。運搬される核酸は、天然に存在するウイルスゲノムもしくは改変ウイルスゲノムまたはその一部に組み込まれ得るか、あるいは別個の核酸分子としてウイルスまたはウイルスキャプシド内に存在し得る。ウイルスゲノムの一部または全部を含むある特定のプラスミドベクター(代表的には、ウイルスキャプシドにパッケージングされ得る核酸の転写を指示するのに十分なウイルスの遺伝情報、ならびに/または宿主細胞ゲノムに組み込まれ得る核酸を生じるのに十分なウイルスの遺伝情報および/もしくは感染性ウイルスを生じるのに十分なウイルスの遺伝情報を含む)も、当該分野において時折ウイルスベクターとよばれることが理解されるだろう。十分な情報が欠けている場合、その情報は、宿主細胞または細胞に導入される別のベクターによって供給され得るが、必ずしもそうである必要はない。
【0067】
発現ベクターは、作動可能に連結されている核酸の転写を指示するのに十分な調節配列、例えば、発現調節配列(例えば、プロモーター)を含むベクターである。発現ベクターは、発現のための十分なシス作用性エレメントを含む;発現のための他のエレメントは、宿主細胞またはインビトロ発現系によって供給され得る。そのようなベクターは、代表的には、適切な位置に配置された制限酵素のための1つ以上の部位を含むことにより、ベクターへの発現されるべき核酸の導入が容易になる。
【0068】
特定のポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「改変体」は、「もとのポリペプチドまたはもとのポリヌクレオチド」と呼ばれることがあるポリペプチドまたは核酸に対して1つ以上の変更(例えば、付加、置換および/または欠失)(これらは、集合的に「変異」と呼ばれることがある)を有する。従って、改変体は、その改変体であるポリペプチドまたはポリヌクレオチドよりも短いか、または長い場合がある。用語「改変体」は、「フラグメント」を包含する。「フラグメント」は、もとのポリペプチドよりも短いポリペプチドの連続した一部である。本発明のある特定の実施形態において、改変体ポリペプチドは、その改変体の長さまたはポリペプチドの長さ(いずれか短いほう)の少なくとも50%、好ましくは、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%またはそれ以上を含む改変体の連続した一部にわたって、もとのポリペプチドに対して著しい配列相同性を有する。本発明のある特定の実施形態において、改変体ポリペプチドは、改変体の長さまたはポリペプチドの長さ(いずれか短いほう)の少なくとも50%、好ましくは、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%またはそれ以上を含む改変体の連続した一部にわたって、もとのポリペプチドに対して実質的な配列相同性を有する。非限定的な実施形態において、改変体は、改変体の90%〜100%を含む改変体の連続した一部にわたって、例えば、改変体の長さまたはポリペプチドの長さ(いずれか短いほう)の100%にわたって、もとの配列に対して少なくとも80%の同一性を有する。別の非限定的な実施形態において、改変体は、改変体の90%〜100%を含む改変体の連続した一部にわたって、例えば、改変体の長さまたはポリペプチドの長さ(いずれか短いほう)の100%にわたって、もとの配列に対して少なくとも80%の同一性を有する。特定の実施形態において、改変体ポリペプチドの配列は、もとの配列に対してN個のアミノ酸の差異を有し、ここで、Nは、1〜10の任意の整数である。他の特定の実施形態において、改変体ポリペプチドの配列は、もとの配列に対してN個のアミノ酸の差異を有し、ここで、Nは、1〜20の任意の整数である。アミノ酸の「差異」とは、アミノ酸の置換、挿入または欠失のことをいう。
【0069】
本発明のある特定の実施形態において、フラグメントまたは改変体は、もとのポリペプチドに対して十分に構造的に類似しており、その3次元構造(実際の構造または予測される構造)が、もとのポリペプチドの構造に重ね合わせるときに、重なる容積が、もとのポリペプチドの構造の総容積の少なくとも70%、好ましくは、少なくとも80%、より好ましくは、少なくとも90%である。フラグメントまたは改変体の部分的または完全な3次元構造は、タンパク質を結晶化することによって測定され得、そのタンパク質の結晶化は、標準的な方法を用いて行われ得る。あるいは、標準的な方法を用いてNMR溶液構造が生成され得る。モデリングプログラム(例えば、MODELER(Sali,A.and Blundell,TL,J.Mol.Biol.,234,779−815,1993))または他の任意のモデリングプログラムを使用して、予測される構造を生成することができる。関連するポリペプチドの構造または予測される構造が利用可能である場合、モデルは、その構造に基づき得る。一連のPROSPECT−PSPPプログラムが使用され得る(Guo,JTら、Nucleic Acids Res.32(ウェブサーバーにて発行):W522−5,2004年7月1日)。
【0070】
好ましくは、改変体またはフラグメントの生物学的機能または活性の1つ、2つ以上、またはすべてが、もとの分子の対応する生物学的機能または活性と実質的に類似している。例えば、改変体またはフラグメントの活性が、もとの分子の活性の少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%、もとの分子の活性のおよそ100%、およそ125%またはおよそ150%までである場合、その改変体またはフラグメントの活性は、もとの分子の活性と実質的に類似であると見なされる。他の非限定的な実施形態において、ある効果をもたらすために必要とされる改変体の量または濃度が、その効果をもたらすために必要とされるもとの分子の量または濃度の.5〜5倍以内である場合、その改変体またはフラグメントの活性は、もとの分子の活性と実質的に類似であると見なされる。
【0071】
本明細書中で使用されるとき、「アルキル」は、約1〜約22個の炭素原子(ならびに、その中の炭素原子の範囲および特定の数の、すべての組み合わせおよび部分組み合わせ(subcombination))を有する、飽和の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭化水素のことをいうが、約1〜約12個または約1〜約7個の炭素原子が、本発明のある特定の実施形態において好ましい。アルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、シクロペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、イソヘキシル、シクロヘキシル、シクロオクチル、アダマンチル、3−メチルペンチル、2,2−ジメチルブチルおよび2,3−ジメチルブチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
本明細書中で使用されるとき、「ハロ」は、F、Cl、BrまたはIのことをいう。
【0073】
本明細書中で使用されるとき、「アリール」は、必要に応じて置換されていて、約5〜約14個の炭素原子(ならびに、その中の炭素原子の範囲および特定の数の、すべての組み合わせおよび部分組み合わせ)を有する単環式または二環式の芳香族の環系のことをいうが、約6〜約10個の炭素が好ましい。例としては、例えば、フェニルおよびナフチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
本明細書中で使用されるとき、「アラルキル」は、アリール置換基を有するアルキルラジカルのことをいい、約6〜約22個の炭素原子(ならびに、その中の炭素原子の範囲および特定の数の、すべての組み合わせおよび部分組み合わせ)を有するが、約6〜約12個の炭素原子が、ある特定の実施形態において好ましい。アラルキル基は、必要に応じて置換され得る。例としては、例えば、ベンジル、ナフチルメチル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、フェニルエチルおよびジフェニルエチルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
本明細書中で使用されるとき、用語「アルコキシ」および「アルコキシル」は、必要に応じて置換されているアルキル−O−基(アルキルは先に定義したとおりである)のことをいう。代表的なアルコキシ基およびアルコキシル基としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシおよびヘプトキシが挙げられる。
【0076】
本明細書中で使用されるとき、「カルボキシ」は、−C(=O)OH基のことをいう。
【0077】
本明細書中で使用されるとき、「アルコキシカルボニル」は、−C(=O)O−アルキル基(アルキルは先に定義したとおりである)のことをいう。
【0078】
本明細書中で使用されるとき、「アロイル」は、−C(=O)−アリール基(アリールは先に定義したとおりである)のことをいう。代表的なアロイル基としては、ベンゾイルおよびナフトイルが挙げられる。
【0079】
代表的には、置換される化学部分としては、水素を置換する1つ以上の置換基が挙げられる。代表的な置換基としては、例えば、ハロ、アルキル、シクロアルキル、アラルキル、アリール、スルフヒドリル、ヒドロキシル(−OH)、アルコキシル、シアノ(−CN)、カルボキシル(−COOH)、−C(=O)O−アルキル、アミノカルボニル(−C(=O)NH)、−N−置換アミノカルボニル(−C(=O)NHR”)、CF、CFCFなどが挙げられる。上述の置換基に関して、各部分R”は、独立して、例えば、H、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアラルキルのいずれかであり得る。
【0080】
本明細書中で使用されるとき、「L−アミノ酸」は、タンパク質中に通常存在し、天然に存在する左旋性のアルファ−アミノ酸のいずれかまたはそのアルファ−アミノ酸のアルキルエステルのことをいう。用語「D−アミノ酸」は、右旋性のアルファ−アミノ酸のことをいう。別途特定されない限り、本明細書中で言及されるすべてのアミノ酸は、L−アミノ酸である。
【0081】
本明細書中で使用されるとき、「芳香族アミノ酸」は、少なくとも1つの芳香族環を含むアミノ酸であり、例えば、アリール基を含む。
【0082】
本明細書中で使用されるとき、「芳香族アミノ酸アナログ」は、少なくとも1つの芳香族環を含むアミノ酸アナログであり、例えば、アリール基を含む。
【0083】
(発明のある特定の実施形態の詳細な説明)
(概要)
本発明は、黄斑変性症、脈絡膜血管新生、網膜血管新生、眼球の炎症または前述のものの任意の組み合わせを特徴とする眼の障害を処置するための組成物および方法を提供する。句「を特徴とする」は、黄斑変性症、CNV、RNVおよび/または眼球の炎症が、上記障害の特徴的な(すなわち、代表的な)特性であることを示すと意図されている。黄斑変性症、CNV、RNVおよび/または眼球の炎症は、上記障害の決定的な特性および/または診断的な特性であり得る。これらの特性の1つ以上を特徴とし、そして本発明の組成物および方法によって処置され得る代表的な障害としては、黄斑変性症に関連する状態、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、増殖性硝子体網膜症、ブドウ膜炎、角膜炎および強膜炎が挙げられるが、これらに限定されない。上で述べたように、黄斑変性症とは、黄斑の変質に起因する中心の視力の喪失を特徴とする種々の変性状態のことをいう。これらの状態のうち最もよくあるものは、「非滲出」型と「滲出」型の両方が存在する加齢性黄斑変性症(ARMD)である。
【0084】
眼球の炎症は、結膜、角膜、上強膜、強膜、眼球血管膜、網膜、脈管構造、視神経および眼窩をはじめとした大多数の眼の構造に影響を及ぼし得る。ブドウ膜炎は、眼のブドウ膜、例えば、ブドウ膜の構造の任意の部分(虹彩、毛様体または脈絡膜を含む)における炎症のことを指す一般用語である。特定のタイプのブドウ膜炎としては、虹彩炎、虹彩毛様体炎、毛様体炎、扁平部炎および脈絡膜炎が挙げられる。ブドウ膜炎は、多くの異なる原因によって生じ得、また、多くの異なる疾患(リウマチ病(例えば、リウマチ病(例えば、強直性脊椎炎および若年性関節リウマチ)、ある特定の感染症(例えば、結核および梅毒)、他の状態(例えば、サルコイドーシス、全身性エリテマトーデス、化学的損傷、外傷、手術など)が挙げられるがこれらに限定されない)に関連する。1つの実施形態において、ブドウ膜炎のタイプは、前部ブドウ膜炎である。別の実施形態において、ブドウ膜炎のタイプは、後部ブドウ膜炎である。角膜炎(Keratis)とは、角膜の炎症のことをいう。角膜炎は、細菌、ウイルスまたは真菌の感染、外傷およびアレルギー性反応を含む多様な原因を有する。例えば、Acanthamoebaによって引き起こされる角膜のアメーバ性感染は、コンタクトレンズ装用者にとっての特定の問題である。強膜炎とは、強膜の炎症のことをいう。ブドウ膜炎、角膜炎および強膜炎ならびにそれらの診断方法は、当該分野で周知である。眼に影響を及ぼす様々な炎症状態の症状としては、眼の疼痛、赤み、光感受性、流涙、かすみ目、飛蚊症が挙げられ得るが、これらに限定されない。種々の局所的な疾患または全身性疾患に関連して生じる様々なタイプの眼球の炎症が周知であり、それらのいくつかは、上に記述した。いくつかの場合において、その原因は、不明なままである場合がある。
【0085】
本発明は、黄斑変性症、脈絡膜血管新生、網膜血管新生、増殖性硝子体網膜症、緑内障、眼球の炎症またはこれらの任意の組み合わせを特徴とする眼の障害を処置する方法を提供し、その方法は、(i)眼の障害に対する処置が必要な被験体を提供する工程;および(ii)コンプスタチンまたはその補体阻害アナログを含む組成物をその被験体に投与する工程を含む。本発明は、さらに、黄斑変性症、脈絡膜血管新生、網膜血管新生、増殖性硝子体網膜症、緑内障またはこれらの任意の組み合わせを特徴とする眼の障害に罹患しているか、またはその危険性のある被験体の眼においてCNV、RNVまたはその両方を阻害する方法を提供し、その方法は、コンプスタチンまたはその補体阻害アナログを含む組成物を、被験体の眼の後部または後部に近接した位置に投与する工程を含む。本発明は、さらに、眼球の炎症を特徴とする眼の障害に罹患しているか、またはその危険性のある被験体の眼におけるCNV、RNVまたはその両方を阻害する方法を提供し、その方法は、コンプスタチンまたはその補体阻害アナログを含む組成物を、被験体の眼の後部または後部に近接した位置に投与する工程を含む。
【0086】
本発明は、補体活性化と関連しているか、または少なくとも部分的に補体活性化によって引き起こされる眼の障害を処置する方法をさらに提供し、その方法は、眼の障害に罹患しているか、またはその危険性のある被験体にコンプスタチンアナログを投与する工程を含む。1つの実施形態において、障害は、ARMDである。1つの実施形態において、障害は、糖尿病性網膜症である。1つの実施形態において、障害は、ブドウ膜炎である。1つの実施形態において、障害は、緑内障である。本発明は、さらに、補体成分をコードする遺伝子における多型またはその遺伝子による連鎖不平衡における多型が、上記障害の危険性の増大に関連することを特徴とする眼の障害を処置する方法を提供し、その方法は、眼の障害に罹患しているか、またはその危険性のある被験体にコンプスタチンアナログを投与する工程を含む。多型は、補体活性の増大をもたらすものであり得る。被験体は、多型に対してホモ接合またはヘテロ接合であってもよいし、多型を示さなくてもよい。被験体は、上記障害を発症するための1つ以上の他の危険因子を有し得る。本発明は、さらに、補体成分をコードする遺伝子における多型またはその遺伝子による連鎖不平衡における多型が、上記障害の危険性の低下に関連することを特徴とする眼の障害を処置する方法を提供し、その方法は、眼の障害に罹患しているか、またはその危険性のある被験体にコンプスタチンアナログを投与する工程を含む。多型は、補体活性の低下をもたらすものであり得る。被験体は、多型に対してホモ接合またはヘテロ接合であってもよいし、多型を示さなくてもよい。被験体は、障害を発症するための1つ以上の危険因子を有し得る。本発明のある特定の実施形態において、障害は、ARMDである。
【0087】
ARMDを生じる事象は、図1の様々なパネルを参照して理解され得る。図1Aおよび1Bは、黄斑を含む網膜を含む眼の前部および後部に存在する構造を示している。図1C〜1Eは、正常な眼の外層(1C)、非滲出性ARMDに罹患している眼の外層(1D)および浸出性(滲出性)ARMDに罹患している眼の外層(1E)を示している。その外顆粒層(ONL)は、桿体光受容体および錐体光受容体の核を含む。各光受容体は、内節(IS)および外節(OS)を含み、その後者は、光に曝露された後に光伝達カスケードを開始する色素ロドプシンを含む。網膜色素上皮層(RPE)は、光受容体の下かつブルッフ膜(RPEと毛細血管のネットワーク(脈絡毛細管板(CC))とを分離する細胞外マトリックスの層)の上に存在する。
【0088】
非滲出性ARMDは、ドルーゼンとして知られる沈着物の存在およびBMからのRPEの分離(RPEの萎縮およびアポトーシスならびに下に存在する脈絡毛細管板および上に存在する光受容体の喪失を伴うことが多く、いくつかの場合において、最終的に癒合して、大きな斑を形成し得る地図状萎縮の範囲を生じる)を特徴とする。浸出性ARMDでは、新しい血管が、ブルッフ膜を通って脈絡毛細管板から成長し、RPEおよび光受容体細胞層にまで伸び得る(脈絡膜血管新生)。これらの血管は、出血し得、また、液体を漏出し得、その結果、RPEおよび/または網膜剥離などの事象に起因して頻繁に突然視力を喪失する。最終的には、線維血管性瘢痕(fibrovascular scar)が形成され得ることにより、回復不能の視力喪失に導かれ得る。新生血管性ARMDのいくつかの型において、血管腫の増殖は、網膜を起源とし、網膜下腔まで後側に伸び、いくつかの場合においては、最終的に新しい脈絡膜の血管に通じる。網膜血管腫状増殖(RAP)と呼ばれる新生血管性ARMDのこの型は、特に重篤であり得る。網膜内の血管腫の増殖は、この型の新生血管性ARMDにおける血管原性プロセスの最初の徴候であることが示唆されている。拡張した網膜血管ならびに前網膜、網膜内および網膜下の、出血ならびに滲出は、そのプロセスが網膜の深い部分および網膜下腔にまで伸びるにつれて血管腫の増殖の包囲を発展させる。
【0089】
本発明は、ARMDにおいて発生する事象またはプロセスの1つ以上を阻害する組成物および方法を提供する。本発明は、ある特定の補体インヒビターが、黄斑変性症および関連状態、糖尿病性網膜症ならびに/またはこれらの障害のいずれかに関連する脈絡膜血管新生などに対する治療薬として特に適しているという発見に一部基づくものである。実施例1に記載されるように、環状ペプチドコンプスタチンのアナログは、動物モデルにおいてCNVの発症を著しく阻害する際に有効であることが示された。すなわち、コンプスタチンアナログは、別途発生していたCNVの少なくともいくつかを予防する際に有効であった。実施例1ではまた、補体活性化の別のインヒビターであるワクシニアウイルス補体制御タンパク質(VCP)もまた、動物モデルにおいてCNVの発症を著しく阻害する(すなわち、VCPが、別途発生していたCNVの少なくともいくつかを予防する際に有効である)ことを示すデータを表している。本発明者らの知識の限りでは、この研究は、補体活性化のインヒビターの投与が、CNVの発症を阻害する際およびCNVの発症を少なくとも部分的に予防する際に有効であるという最初の証明であり、また、これらの薬剤が、眼の障害(例えば、本明細書中に記述される障害)に対する有効な処置法であり得るという最初の証明である。
【0090】
本発明の理解を助けるために、まず、補体系を簡単に概説することにする。さらなる情報は、本明細書中に引用される参考文献に見られる。次節では、コンプスタチンおよびそのアナログ、コンプスタチンおよび/またはそのアナログを含む組成物、使用方法などを説明する。
【0091】
(補体経路)
補体系は、損傷および外来性の実体(例えば、感染性の物質)に対する防御に対する応答をはじめとした多くの生理学的プロセスにおいて重要な役割を果たす。補体系はまた、多くの疾患にも関与していることが知られている(Makrides,SC,Pharm Rev.,50(1):59−87)。補体系は、古典的経路および副経路として知られる2つの主な経路に関与する30個を超える血清タンパク質および細胞性タンパク質を含む(Kuby Immunology,2000)。
【0092】
古典的経路は、通常、抗原とIgMまたはIgG抗体との複合体がC1に結合することによって引き起こされる(が、他のある特定のアクチベーターもまた、この経路を開始し得る)。活性化されたC1は、C4およびC2を切断することにより、C2aおよびC2bに加えてC4aおよびC4bを生じる。C4bとC2aとが結合することにより、C3コンバターゼが形成され、C3コンバターゼは、C3を切断することにより、C3aおよびC3bが形成される。C3bとC3コンバターゼとの結合により、C5コンバターゼが生成され、C5コンバターゼは、C5をC5aおよびC5bに切断する。C3a、C4aおよびC5aは、アナフィラトキシンであり、急性炎症性応答における複数の反応を媒介する。C3aおよびC5aはまた、好中球などの免疫系細胞を誘引する走化性因子である。C3コンバターゼ活性およびC5コンバターゼ活性は、補体制御タンパク質(CCP)ファミリーとも呼ばれる補体活性化の制御因子(RCA)ファミリーの多くの内因性メンバーによって制御され、そのファミリーには、補体レセプタータイプ1(CR1;C3b:C4bレセプター)、補体レセプタータイプ2(CR2)、膜補因子タンパク質(membrane cofactor protein;MCP;CD46)、分解促進因子(decay−accelerating factor;DAF)、H因子(fH)およびC4b結合タンパク質(C4bp)が含まれる。Makrides,1998およびその中の参考文献には、補体系およびその成分について記載されている。RCAタンパク質は、米国特許第6,897,290号にも記載されている。
【0093】
副経路は、微生物表面および様々な複合多糖によって開始される。この経路では、自然発生的に低レベルで存在するC3の切断によって生じるC3bは、例えば、細胞表面上の標的に結合し、B因子と複合体を形成し、後にB因子は、D因子によって切断されてC3コンバターゼを生じる。C3の切断およびC3bの別の分子とC3コンバターゼとの結合により、C5コンバターゼを生じる。この経路のC3コンバターゼおよびC5コンバターゼは、CR1、DAF、MCPおよびfHによって制御される。これらのタンパク質の作用様式は、I因子によるC3bもしくはC4bの分解において補因子として働く能力のことである、分解促進活性(すなわち、コンバターゼを解離する能力)のいずれかまたはその両方を含む。
【0094】
両方の経路において生成されるC5コンバターゼは、C5を切断して、C5aおよびC5bを生成する。次いで、C5bは、C6、C7およびC8と結合してC5b−8を形成し、そのC5b−8は、C9の重合を触媒することにより、C5b−9細胞膜傷害複合体(MAC)が形成される。MACは、それ自体を標的細胞膜に挿入し、細胞溶解を引き起こす。細胞の膜上の少量のMACが、細胞死以外の種々の結果をもたらし得る。
【0095】
第3の補体経路であるレクチン補体経路は、マンノース結合レクチン(MBL)およびMBL関連セリンプロテアーゼ(MASP)が炭水化物に結合することによって開始される。ヒトレクチン経路において、MASP−1およびMASP−2は、C4、C2およびC3のタンパク質分解に関与し、それによって、上記のC3コンバターゼに導く。
【0096】
上で述べたように、補体活性は、補体制御タンパク質(CCP)とよばれる様々な哺乳動物のタンパク質によって制御されている。これらのタンパク質は、リガンド特異性および補体阻害のメカニズムに関して異なるものである(Lisczewski,MK and Atkinson,JP,The Human Complement System in Health and Disease,eds.Volanakis,JE and Frank,MM,Dekker,New York,pp.149−66,1998)。それらのタンパク質は、コンバターゼの正常な分解および/またはI因子に対する補因子としての機能を促進することにより、C3bおよび/またはC4bをより小さいフラグメントに酵素的に切断し得る。CCPは、短いコンセンサスリピート(SCR)、補体制御タンパク質(CCP)モジュールまたはSUSHIドメインとして知られる、複数(代表的には、4〜56個)の相同なモチーフの存在を特徴とする(Reid,KBM and Day,AJ,Immunol Today,10:177−80,1989)。およそ50〜70アミノ酸、代表的には、約60アミノ酸からなるこれらのドメインは、4つのジスルフィド結合されたシステイン(2つのジスルフィド結合)、プロリン、トリプトファンおよび多くの疎水性残基を含む、保存されたモチーフを特徴とする。
(コンプスタチン、コンプスタチンアナログおよびそれらの使用方法)
コンプスタチンは、補体成分C3に結合し、補体活性化を阻害する環状ペプチドである。コンプスタチンは、コンバターゼによってC3がC3aおよびC3bに切断されることを阻害する。C3が、補体活性化の3つすべての経路の中心的な成分であるので、コンプスタチンおよびそのアナログは、3つすべての経路の集中タンパク質(converging protein)の活性化を阻害することができる。任意の理論に拘束する意図はないが、コンプスタチンおよびそのアナログが補体活性化の副経路を阻害する能力は、本明細書中に記載される眼の状態のいくつかにおいて有効であることに著しく寄与し得る。
【0097】
本発明者らは、長期間(例えば、3〜6ヶ月、6〜12ヶ月、1〜2年)にわたる持続性の様式での治療薬の送達が、ARMDなどの慢性眼科疾患の進行を阻害する機会を提供し、そして著しい視力の喪失が生じる前に疾患プロセスの初期において介入を可能にすることを提唱する。本発明は、補体インヒビターおよび特にコンプスタチンアナログが、例えば、既存の治療薬または提唱されている治療薬(例えば、血管新生インヒビターおよび抗炎症性ステロイド)と比較して、この観点および他の観点において独自かつ予期しない利点を有するという認識を包含している。
【0098】
本発明は、さらに、コンプスタチンおよびそのアナログが、他の補体インヒビターと比較して、独自かつ予期しない利点を有するという認識を包含している。コンプスタチンアナログが比較的低分子量(約1.6kD)であることおよびコンプスタチンアナログの様々な他の特性によって、眼球の組織に治療的な濃度を提供するのに適した持続性の送達処方物およびデバイスにコンプスタチンアナログを組み込むことが容易になる。さらに、本発明者らは、コンプスタチンがインビボにおいて血流から分解および/または除去される速度(15分未満の半減期)と比較して、硝子体におけるインビトロでのコンプスタチンアナログ(コンプスタチンC)の半減期が長い(約6.9時間)ことを見出した。本発明者らの計算により、5μg/日程度の量(その量は、本発明によれば、(以下でさらに説明するように)硝子体内埋没技術によって長期間にわたって送達され得る)の治療薬を持続的に硝子体内に送達することによって、滲出性ARMDを有する被験体の硝子体に存在すると予想されるレベルまたはそれより高いレベルのC3活性化を実質的に阻害する可能性が初めて確立された。また、本発明者らの計算により、2μg/日程度の量(その量は、本発明によれば、硝子体内埋没技術によって長期間にわたって送達され得る)の治療薬を持続的に硝子体内に送達することによって、非滲出性ARMDを有する被験体の硝子体に存在すると予想されるレベルまたはそれより高いレベルのC3活性化を実質的に阻害する可能性も初めて確立された。
【0099】
本発明は、被験体の眼において補体活性化を阻害する方法を提供し、その方法は、その被験体の硝子体、網膜またはその両方において補体活性化を検出可能に阻害するのに有効な量のコンプスタチンアナログをその被験体に少なくとも3ヶ月、例えば、3〜6ヶ月、6〜12ヶ月、12〜24ヶ月、24〜36ヶ月などの期間にわたって投与する工程を含む。本発明のある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、1回以上の硝子体内注射によって投与される。本発明のある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、眼球挿入物または他の徐放処方物(例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子)からの放出によって与薬される。コンプスタチンアナログは、処方物の中からの拡散によって放出されてもよいし、処方物が侵食されるにつれて放出されてもよい。この処置は、複数回繰り返され得る。ある特定の実施形態において、この投与は、平均して6〜12ヶ月ごとまたは12〜24ヶ月ごとの間隔で行われる。ある特定の実施形態において、眼球挿入物または他の徐放処方物は、生分解性である。ある特定の実施形態において、被験体は、眼球の障害に罹患している。ある特定の実施形態において、有効濃度は、眼球の障害に罹患している眼の硝子体において10%〜250%というC3の平均濃度である。ある特定の実施形態において、被験体は、眼球の障害の危険性がある。ある特定の実施形態において、被験体は、眼球の障害、例えば、ARMDの高い危険性と関連する1つ以上の遺伝的多型を有する。その遺伝的多型は、補体成分(例えば、補体H因子(CFH)またはB因子(CFB))をコードする遺伝子内に存在し得る。その遺伝的多型は、LOC387715またはPLEKHA1内に存在し得る。前述の実施形態のいずれかにおいて、眼球の障害は、滲出性ARMDまたは非滲出性ARMDであり得る。ARMDの危険性を高める代表的な多型は、CFH(例えば、Y402H−Donoso,Lら、Survey of Ophthalmology,Vol.51,No.2,137−152,2006およびこの論文中の参考文献(これらは、本明細書中において参考として援用される))、toll様レセプター4(TLR4)(D299G−例えば、Zareparsiら、Human Molecular Genetics,vol.14,no.11,pp.1449−1455,2005)をコードする遺伝子内またはLOC387715もしくはPLEKHA1(Donoso,前出)に位置する。Li,M.ら、Nat Genet.38(9):1049−1054,2006およびMaller,J.ら、Nat Genet.,38(9):1055−1059,2006では、ARMDの高い危険性に関連するCFH遺伝子のコード部分および非コード部分におけるさらなる多型が報告されている。いくつかの多型が、ARMDの危険性を低下させることに関連することが理解されるだろう。例えば、ARMDの危険性を低下させることに関連するCFHR1およびCFHR3の欠失を有するハプロタイプについて報告している、Hughesら、Nat Genet.,38(10):1173−7,2006を参照のこと。これらの多型は、ARMDに対して保護的であり得る。さらに、上述の多型のいずれかを含む連鎖不平衡に存在する多型もまた、被験体が、ARMDの危険性が高いか否かを判定する目的および/またはその危険性を定量的に測定する目的に対して有益であり得ることが理解されるだろう。ある特定の実施形態において、副経路が、阻害される。ある特定の実施形態において、古典的経路が、阻害される。ある特定の実施形態において、レクチン経路が、阻害される。ある特定の実施形態において、副経路、古典経路およびレクチン経路のうちの少なくとも2つが、阻害される。コンプスタチンは、米国特許第6,319,897号(これは、本明細書中において参考として援用される)に記載されている。その明細書中に記載されているように、コンプスタチンは、角括弧によって示されている2つのシステイン間のジスルフィド結合を含む配列Ile−[Cys−Val−Val−Gln−Asp−Trp−Gly−His−His−Arg−Cys]−Thr(配列番号8)を有する。コンプスタチンは、より大きなペプチド(米国特許第6,319,897号における配列番号1)のN末端の環状領域であり、そのより大きなペプチドは、補体阻害活性も示す。さらに、コンプスタチンの多くのフラグメントおよび改変体は、補体を阻害し、それらのうちのいくつかは、コンプスタチン自体よりも高い阻害活性を有する。これらのペプチドのいずれかは、本発明の組成物および方法において有用である。例えば、米国特許第6,319,897号における配列番号13、15、20、21および22によって指定されるペプチドは、補体阻害活性を示し、それらは有用である。本発明のある特定の実施形態において、コンプスタチンよりも高い補体阻害活性(例えば、少なくとも5倍高い活性、少なくとも10倍高い活性など)を有するペプチドが、使用される。
【0100】
コンプスタチンよりも高い補体阻害活性を有する種々のコンプスタチンアナログが、合成されている。これらのうちのいくつかは、WO2004/026328(PCT/US2003/029653)、Morikis,D.ら、Biochem Soc Trans.32(Pt1):28−32,2004、Mallik,B.ら、J.Med.Chem.,274−286,2005および/またはKatragadda,M.ら、J.Med.Chem.,49:4616−4622,2006(これらのすべてが、本明細書中において参考として援用される)に記載されている。上記文献中に記載されている補体阻害ペプチドおよび補体阻害ペプチド模倣物のいずれかが、本発明において使用され得る。例えば、WO2004/026328に記載されている配列番号4〜13が、本発明において使用され得る。
【0101】
コンプスタチンおよびそのアナログのいずれかは、例えば、N末端および/またはC末端において、アセチル化またはアミド化され得る。例えば、コンプスタチンおよびそのアナログのいずれかは、N末端においてアセチル化され得、C末端においてアミド化され得る。当該分野で使用されるのと一致して、本明細書中で使用されるとき、「コンプスタチン」およびコンプスタチンの活性と比べて本明細書中において記載されるコンプスタチンアナログの活性とは、C末端でアミド化されたコンプスタチンのことをいう(Mallik,2005,前出)。
【0102】
コンプスタチンまたはその補体阻害アナログのコンカテマーまたは多量体もまた本発明において有用である。
【0103】
コンプスタチンおよび/またはその1つ以上の補体阻害アナログを含む超分子複合体もまた、本発明の1つの局面であり、本発明の方法において有用である。
【0104】
本明細書中で使用されるとき、用語「コンプスタチンアナログ」には、コンプスタチンおよびその任意の補体阻害アナログが含まれる。用語「コンプスタチンアナログ」には、コンプスタチンと、コンプスタチンに基づいて設計されているかまたは同定されており、その補体阻害活性が、例えば、当該分野で認められている任意の補体活性化アッセイ、または実質的に類似のアッセイもしくは等価なアッセイを用いて測定したときに、コンプスタチンの補体阻害活性の少なくとも50%である他の化合物とが包含される。ある特定のコンプスタチンアナログおよび適当なアッセイは、米国特許第6,319,897号、WO2004/026328、Morikis,前出、Mallik,前出および/またはKatragadda 2006,前出に記載されている。上記アッセイは、例えば、副経路媒介性赤血球溶解を測定し得るか、またはELISAアッセイ(実施例4および5を参照のこと)であり得る。他の参考文献のうち、WO2004/026328、Morikis,前出、Mallik,前出およびKatragadda 2006,前出には、コンプスタチンよりも高い活性を有するコンプスタチンアナログおよびその補体活性化を阻害する能力を測定するための方法が記載されている。さらなるコンプスタチンアナログが、本発明の1つの局面である。本発明は、コンプスタチンアナログまたは本明細書中に記載されている組成物のいずれか1つ以上が、本明細書中に記載されている処置方法のいずれかにおいて使用される実施形態を含む。
【0105】
コンプスタチンアナログの活性は、そのIC50(補体活性化を50%阻害する化合物の濃度)として表され得、IC50が低いほど活性が高いことを示すと当該分野で認識されている。本発明における用途のための好ましいコンプスタチンアナログの活性は、コンプスタチンの活性と少なくとも同程度の高さである。補体阻害活性を低下させるか、または無くすことが知られているある特定の改変は、本発明の任意の実施形態から明示的に排除され得ることに注意されたい。コンプスタチンのIC50は、副経路媒介性赤血球溶解アッセイを用いて12μMと測定されている(WO2004/026328)。1つの実施形態において、コンプスタチンアナログのIC50は、コンプスタチンのIC50を超えない。本発明のある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログの活性は、コンプスタチンの活性の2〜99倍である(すなわち、アナログは、コンプスタチンのIC50より2〜99倍低いIC50を有する)。例えば、その活性は、コンプスタチンの活性の10〜50倍またはコンプスタチンの活性の50〜99倍であり得る。本発明のある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログの活性は、コンプスタチンの活性の99〜264倍である。例えば、その活性は、コンプスタチンの活性の100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260または264倍であり得る。ある特定の実施形態において、その活性は、コンプスタチンの活性の264〜300倍、300〜350倍、350〜400倍または400〜500倍である。本発明は、さらに、コンプスタチンの活性の500〜1000倍の活性を有するコンプスタチンアナログを企図する。
【0106】
C3に結合しているコンプスタチンのKdは、等温滴定熱量計を使用して1.3μMと測定されている(Katragaddaら、J.Biol.Chem.,279(53),54987−54995,2004)。種々のコンプスタチンアナログのC3に対する結合親和性は、それらの活性と相関しており、Kdが低いほど、結合親和性が高いことを示すと当該分野で認識されている。ある特定の試験されたアナログについて、結合親和性と活性との線形相関が示された(Katragadda,2004,前出;Katragadda 2006,前出)。本発明のある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、0.1μM〜1.0μM、0.05μmM〜0.1μM、0.025μM〜0.05μM、0.015μM〜0.025μM、0.01μM〜0.015μMまたは0.001μM〜0.01μMというKdでC3に結合する。ある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログのIC50は、約0.2μM〜約0.5μMである。ある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログのIC50は、約0.1μM〜約0.2μMである。ある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログのIC50は、約0.05μM〜約0.1μMである。ある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログのIC50は、約0.001μM〜約0.05μMである。
【0107】
「コンプスタチンに基づいて設定されているかまたは同定されている」化合物としては、(i)コンプスタチンの配列を改変すること(例えば、コンプスタチンの配列の1つ以上のアミノ酸を、異なるアミノ酸もしくはアミノ酸アナログで置換すること、コンプスタチンの配列に1つ以上のアミノ酸もしくはアミノ酸アナログを挿入すること、またはコンプスタチンの配列から1つ以上のアミノ酸を欠失させること);(ii)コンプスタチンの1つ以上のアミノ酸をランダム化し、必要に応じてさらに方法(i)に従って改変したファージディスプレイペプチドライブラリーからの選択;または(iii)コンプスタチンまたは方法(i)もしくは(ii)によって得られたその任意のアナログとC3またはそのフラグメントへの結合について競合する化合物についてスクリーニングすることによって同定すること、によって得られる配列を有するアミノ酸鎖を含む化合物が挙げられるが、これらに限定されない。多くの有用なコンプスタチンアナログは、疎水性クラスター、β−ターンおよびジスルフィド架橋を含む。
【0108】
本発明のある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログの配列は、コンプスタチンの配列中に1、2、3または4個の置換を作製することによって得られる配列を含むか、または本質的にその配列からなる。すなわち、コンプスタチンの配列中の1、2、3または4個のアミノ酸が、異なる標準的なアミノ酸または標準的でないアミノ酸によって置換される。本発明のある特定の実施形態において、4位のアミノ酸が変更される。本発明のある特定の実施形態において、9位のアミノ酸が変更される。本発明のある特定の実施形態において、4位および9位のアミノ酸が変更される。本発明のある特定の実施形態において、4位および9位のアミノ酸のみが変更される。本発明のある特定の実施形態において、4位または9位のアミノ酸が変更されるか、または、ある特定の実施形態において、アミノ酸4と9の両方が変更され、さらに1位、7位、10位、11位および13位に位置するアミノ酸から選択される最大2個のアミノ酸が変更される。本発明のある特定の実施形態において、4位、7および9位のアミノ酸が変更される。本発明のある特定の実施形態において、変更が、化合物の環化される能力を保存する限り、2位、12位のアミノ酸またはその両方が変更される。2位および/または12位におけるそのような変更は、1位、4位、7位、9位、10位、11位および/または13位における変更に加えて行われ得る。必要に応じて、コンプスタチン配列の1つ以上のアミノ酸を置換することによって得られる配列を有するコンプスタチンアナログのいずれかの配列は、さらに、C末端に最大1、2または3個のさらなるアミノ酸を含む。1つの実施形態において、そのさらなるアミノ酸は、Glyである。必要に応じて、コンプスタチン配列の1つ以上のアミノ酸を置換することによって得られる配列を有するコンプスタチンアナログのいずれかの配列は、さらに、C末端に最大5個または最大10個のさらなるアミノ酸を含む。別途述べられないか、または文脈から明らかでない限り、コンプスタチンアナログが、本明細書中に記載される様々な実施形態の特徴または特性のうちの任意の1つ以上を有し得、そして任意の実施形態の特性または特徴が、本明細書中に記載される他の任意の実施形態を追加として特徴付け得ることが理解されるべきである。本発明のある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログの配列は、図2の上部(X4およびX9は、改変可能な側鎖を示す)に示される配列を含むか、または本質的にその配列からなる。
【0109】
コンプスタチン、およびコンプスタチンよりもいくらか高い活性を有するある特定のコンプスタチンアナログは、標準的なアミノ酸のみを含む(「標準的なアミノ酸」は、グリシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、システイン、メチオニン、アルギニン、リシン、プロリン、セリン、トレオニンおよびヒスチジンである)。活性が改善されたある特定のコンプスタチンアナログは、1つ以上の標準的でないアミノ酸を組み込んでいる。有用な標準的でないアミノ酸としては、単独および多重にハロゲン化された(例えば、フッ素化された)アミノ酸、D−アミノ酸、ホモアミノ酸、N−アルキルアミノ酸、デヒドロアミノ酸、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン以外)、オルトアミノ安息香酸、メタアミノ安息香酸またはパラアミノ安息香酸、ホスホアミノ酸、メトキシル化(methoxylated)アミノ酸ならびにα,α−二置換アミノ酸が挙げられる。本発明のある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、本明細書中の他で記載されるコンプスタチンアナログ中の1つ以上のL−アミノ酸を、対応するD−アミノ酸で置換することによって設計される。そのような化合物およびその使用方法は、本発明の1つの局面である。有用で代表的な標準的でないアミノ酸としては、2−ナフチルアラニン(2−NaI)、1−ナフチルアラニン(1−NaI)、2−インダニルグリシンカルボン酸(2Igl)、ジヒドロトリプトファン(dihydrotrpytophan)(Dht)、4−ベンゾイル−L−フェニルアラニン(Bpa)、2−α−アミノ酪酸(2−Abu)、3−α−アミノ酪酸(3−Abu)、4−α−アミノ酪酸(4−Abu)、シクロヘキシルアラニン(Cha)、ホモシクロヘキシルアラニン(hCha)、4−フルオロ−L−トリプトファン(4fW)、5−フルオロ−L−トリプトファン(5fW)、6−フルオロ−L−トリプトファン(6fW)、4−ヒドロキシ−L−トリプトファン(4OH−W)、5−ヒドロキシ−L−トリプトファン(5OH−W)、6−ヒドロキシ−L−トリプトファン(6OH−W)、1−メチル−L−トリプトファン(1MeW)、4−メチル−L−トリプトファン(4MeW)、5−メチル−L−トリプトファン(5MeW)、7−アザ−L−トリプトファン(7aW)、α−メチル−L−トリプトファン(αMeW)、β−メチル−L−トリプトファン(βMeW)、N−メチル−L−トリプトファン(NMeW)、オルニチン(orn)、シトルリン、ノルロイシン、γ−グルタミン酸などが挙げられる。
【0110】
本発明のある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、1つ以上のTrpアナログを(例えば、コンプスタチンの配列に対して4位および/または7位において)含む。代表的なTrpアナログは、上で述べたものである。Beeneら、Biochemistry 41:10262−10269,2002(とりわけ、単独および多重にハロゲン化されたTrpアナログについて記載されている);Babitzke & Yanofsky,J.Biol.Chem.270:12452−12456,1995(とりわけ、メチル化およびハロゲン化されたTrpおよび他のTrpならびにインドールアナログについて記載されている);および米国特許第6,214,790号、同第6,169,057号、同第5,776,970号、同第4,870,097号、同第4,576,750号および同第4,299,838号もまた参照のこと。他のTrpアナログとしては、αまたはβ炭素において、そして必要に応じてインドール環の1つ以上の位置において置換されている(例えば、メチル基によって)改変体が挙げられる。2つ以上の芳香族環を含むアミノ酸(置換されているか、置換されていないか、または別の方法で置換されている、その改変体を含む)が、Trpアナログとして興味深い。
【0111】
ある特定の実施形態において、Trpアナログは、Trpと比べて高い疎水性特性を有する。例えば、インドール環は、1つ以上のアルキル(例えば、メチル)基によって置換され得る。ある特定の実施形態において、Trpアナログは、C3との疎水性相互作用に関与する。そのようなTrpアナログは、コンプスタチンの配列に対して、例えば、4位に位置し得る。ある特定の実施形態において、Trpアナログは、置換されているか、もしくは置換されていない、二環式の芳香族環成分または置換されているか、もしくは置換されていない、2つ以上の単環式の芳香族環成分を含む。
【0112】
ある特定の実施形態において、Trpアナログは、C3と水素結合を形成する傾向がTrpと比べて高いが、疎水性特性はTrpと比べて高くない。Trpアナログは、Trpと比べて高い極性を有し得、そして/またはC3上の水素結合ドナーとの静電気的相互作用に関与する高い能力を有し得る。水素結合形成特性が高いある特定の代表的なTrpアナログは、インドール環上に電気陰性置換基を含む。そのようなTrpアナログは、コンプスタチンの配列に対して、例えば、7位に位置し得る。
【0113】
本発明のある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、1つ以上のAlaアナログ(例えば、コンプスタチンの配列に対して9位におけるもの)、例えば、側鎖中に1つ以上のCH2基を含むことを除いてはAlaと同一であるAlaアナログを含む。
ある特定の実施形態において、Alaアナログは、非分枝状の単一メチルアミノ酸(例えば、2−Abu)である。本発明のある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、1つ以上のTrpアナログ(例えば、コンプスタチンの配列に対して4位および/または7位におけるもの)およびAlaアナログ(例えば、コンプスタチンの配列に対して9位におけるもの)を含む。
【0114】
本発明のある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、(X’aa)n−Gln−Asp−Xaa−Gly−(X”aa)m(配列番号2)という配列を有するペプチドを含む化合物であり、ここで、各X’aaおよび各X”aaは、独立して選択されたアミノ酸またはアミノ酸アナログであり、Xaaは、TrpまたはTrpのアナログであり、n>1かつm>1かつn+mは、5〜21である。上記ペプチドは、Gln−Asp−Xaa−Glyというコア配列を有し、ここで、Xaaは、TrpまたはTrpのアナログ(例えば、Trpと比べてH−結合ドナーと水素結合を形成する傾向が高いが、ある特定の実施形態において、Trpと比べて疎水性特性が高くないTrpのアナログ)である。例えば、上記アナログは、Trpのインドール環が、電気陰性部分、例えば、フッ素などのハロゲンで置換されているものであり得る。1つの実施形態において、Xaaは、5−フルオロトリプトファンである。反対の証拠がない限り、当業者は、このコア配列を含む配列を有し、補体活性化を阻害し、そして/またはC3と結合する任意の天然に存在しないペプチドが、コンプスタチンの配列に基づいて設計されることを認識するだろう。代替の実施形態において、Xaaは、Gln−Asp−Xaa−Glyペプチドがβ−ターンを形成することを可能にするTrpアナログ以外のアミノ酸またはアミノ酸アナログである。
【0115】
本発明のある特定の実施形態において、ペプチドは、X’aa−Gln−Asp−Xaa−Gly(配列番号3)というコア配列を有し、ここで、X’aaおよびXaaは、TrpおよびTrpのアナログから選択される。本発明のある特定の実施形態において、ペプチドは、X’aa−Gln−Asp−Xaa−Gly(配列番号3)というコア配列を有し、ここで、X’aaおよびXaaは、Trp、Trpのアナログおよび少なくとも1つの芳香族環を含む他のアミノ酸またはアミノ酸アナログから選択される。本発明のある特定の実施形態において、コア配列は、ペプチドという状況でβ−ターンを形成する。このβターンは、可撓性であり得、それにより、そのペプチドは、例えば、核磁気共鳴(NMR)を用いて評価されるときに2つ以上の高次構造を想定することが可能となる。ある特定の実施形態において、X’aaは、置換されているか、もしくは置換されていない、二環式の芳香族環成分または置換されているか、もしくは置換されていない、2つ以上の単環式の芳香族環成分を含むTrpのアナログである。本発明のある特定の実施形態において、X’aaは、2−ナフチルアラニン(napthylalanine)、1−ナフチルアラニン、2−インダニルグリシンカルボン酸、ジヒドロトリプトファンおよびベンゾイルフェニルアラニンからなる群から選択される。本発明のある特定の実施形態において、X’aaは、Trpと比べて高い疎水性特性を有するTrpのアナログである。例えば、X’aaは、1−メチルトリプトファンである。本発明のある特定の実施形態において、Xaaは、Trpと比べて水素結合を形成する傾向が高いが、ある特定の実施形態において、Trpと比べて疎水性特性が高くないTrpのアナログである。本発明のある特定の実施形態において、Trpと比べて水素結合を形成する傾向が高いTrpのアナログは、Trpのインドール環上、例えば、5位での改変(例えば、ハロゲン原子による5位のH原子の置換)を含む。例えば、Xaaは、5−フルオロトリプトファンであり得る。
【0116】
本発明のある特定の実施形態において、ペプチドは、X’aa−Gln−Asp−Xaa−Gly−X”aa(配列番号4)というコア配列を有し、ここで、X’aaおよびXaaは、各々独立して、TrpおよびTrpのアナログから選択され、X”aaは、His、Ala、Alaのアナログ、PheおよびTrpから選択される。本発明のある特定の実施形態において、X’aaは、Trpと比べて疎水性特性が高いTrpのアナログ(例えば、1−メチルトリプトファン)またはインドール環上(例えば、1位、4位、5位または6位)のアルキル置換基を有する別のTrpアナログである。ある特定の実施形態において、X’aaは、置換されているか、もしくは置換されていない、二環式の芳香族環成分または置換されているか、もしくは置換されていない、2つ以上の単環式の芳香族環成分を含むTrpのアナログである。本発明のある特定の実施形態において、X’aaは、2−ナフチルアラニン、1−ナフチルアラニン、2−インダニルグリシンカルボン酸、ジヒドロトリプトファンおよびベンゾイルフェニルアラニンからなる群から選択される。本発明のある特定の実施形態において、Xaaは、Trpと比べてC3と水素結合を形成する傾向が高いが、ある特定の実施形態において、Trpと比べて疎水性特性が高くないTrpのアナログである。本発明のある特定の実施形態において、Trpと比べて水素結合を形成する傾向が高いTrpのアナログは、Trpのインドール環上、例えば、5位に改変(例えば、ハロゲン原子による5位のH原子の置換)を含む。例えば、Xaaは、5−フルオロトリプトファンであり得る。ある特定の実施形態において、X”aaは、AlaもしくはAlaのアナログ(例えば、Abu)または別の非分枝状単一メチルアミノ酸である。本発明のある特定の実施形態において、ペプチドは、X’aa−Gln−Asp−Xaa−Gly−X”aa(配列番号4)というコア配列を有し、ここで、X’aaおよびXaaは、各々独立して、Trp、Trpのアナログおよび少なくとも1つの芳香族側鎖を含むアミノ酸またはアミノ酸アナログから選択され、X”aaは、His、Ala、Alaのアナログ、PheおよびTrpから選択される。ある特定の実施形態において、X”aaは、Trpのアナログ、芳香族アミノ酸および芳香族アミノ酸アナログから選択される。
【0117】
本発明のある特定の好ましい実施形態において、ペプチドは、環状である。上記ペプチドは、任意の2つのアミノ酸の間の結合を介して環化され得、その2つのアミノ酸の一方は、(X’aa)であり、他方は、(X”aa)内に位置する。ある特定の実施形態において、ペプチドの環状部は、9〜15アミノ酸長、例えば、10〜12アミノ酸長である。ある特定の実施形態において、ペプチドの環状部は、11アミノ酸長であり、2位と12位のアミノ酸間に結合(例えば、ジスルフィド結合)を有する。例えば、上記ペプチドは、13アミノ酸長であり得、2位と12位のアミノ酸間の結合によって、11アミノ酸長の環状部が生じる。
【0118】
ある特定の実施形態において、ペプチドは、X’aa1−X’aa2−X’aa3−X’aa4−Gln−Asp−Xaa−Gly−X”aa1−X”aa2−X”aa3−X”aa4−X”aa5(配列番号5)という配列を含むか、またはその配列からなる。ある特定の実施形態において、X’aa4およびXaaは、TrpおよびTrpのアナログから選択され、X’aa1、X’aa2、X’aa3、X”aa1、X”aa2、X”aa3、X”aa4およびX”aa5は、独立して、アミノ酸およびアミノ酸アナログの中から選択される。ある特定の実施形態において、X’aa4およびXaaは、芳香族アミノ酸および芳香族アミノ酸アナログから選択される。X’aa1、X’aa2、X’aa3、X”aa1、X”aa2、X”aa3、X”aa4およびX”aa5の任意の1つ以上は、コンプスタチン中の対応する位置のアミノ酸と同一であり得る。1つの実施形態において、X”aa1は、Alaまたは単一メチル非分枝状アミノ酸であり得る。上記ペプチドは、(i)X’aa1、X’aa2またはX’aa3;および(ii)X”aa2、X”aa3、X”aa4またはX”aa5の間の共有結合を介して環化され得る。1つの実施形態において、ペプチドは、X’aa2とX”aa4との間の共有結合を介して環化される。1つの実施形態において、共有結合しているアミノ酸は、各Cysであり、その共有結合は、ジスルフィド(S−S)結合である。他の実施形態において、共有結合は、C−C、C−O、C−SまたはC−N結合である。ある特定の実施形態において、共有結合している残基のうちの一方は、第1級アミンまたは第2級アミンを含む側鎖を有するアミノ酸またはアミノ酸アナログであり、共有結合している他方の残基は、カルボン酸基を含む側鎖を有するアミノ酸またはアミノ酸アナログであり、その共有結合は、アミド結合である。第1級アミンまたは第2級アミンを含む側鎖を有するアミノ酸またはアミノ酸アナログとしては、リシンおよび一般構造NH(CHCH(NH)COOHのジアミノカルボン酸(例えば、2,3−ジアミノプロピオン酸(dapa)、2,4−ジアミノ酪酸(daba)およびオルニチン(orn))(ここで、それぞれ、n=1(dapa)、2(daba)および3(orn)である)が挙げられる。カルボン酸基を含む側鎖を有するアミノ酸の例としては、ジカルボキシルアミノ酸(例えば、グルタミン酸およびアスパラギン酸)が挙げられる。ベータ−ヒドロキシ−L−グルタミン酸などのアナログもまた使用され得る。
【0119】
ある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、配列:
Xaa1−Cys−Val−Xaa2−Gln−Asp−Xaa2−Gly−Xaa3−His−Arg−Cys−Xaa4(配列番号6);を有するペプチドを含む化合物であり、ここで:
Xaa1は、Ile、Val、Leu、B−Ile、B−Val、B−Leu、またはGly−IleもしくはB−Gly−Ileを含むジペプチドであり、Bは、第1の保護部分を表し;
Xaa2およびXaa2は、独立して、TrpおよびTrpのアナログから選択され;Xaa3は、His、AlaまたはAlaのアナログ、Phe、TrpまたはTrpのアナログであり;
Xaa4は、L−Thr、D−Thr、Ile、Val、Gly、Thr−AlaおよびThr−Asnから選択されるジペプチド、またはThr−Ala−Asnを含むトリペプチドであり、ここで、L−Thr、D−Thr、Ile、Val、Gly、AlaまたはAsnのいずれかのカルボキシ末端−OHは、必要に応じて、第2の保護部分Bによって置換されており;そして
その2つのCys残基は、ジスルフィド結合によって結合されている。
【0120】
他の実施形態において、Xaa1は、存在しないか、または任意のアミノ酸もしくはアミノ酸アナログであり、Xaa2、Xaa2、Xaa3およびXaa4は、上で定義されたとおりである。Xaa1が、存在しない場合、N末端のCys残基は、それに結合している保護部分Bを有し得る。
【0121】
別の実施形態において、Xaa4は、任意のアミノ酸またはアミノ酸アナログであり、Xaa1、Xaa2、Xaa2およびXaa3は、上で定義されたとおりである。別の実施形態において、Xaa4は、Thr−AlaおよびThr−Asnからなる群から選択されるジペプチドであり、ここで、カルボキシ末端−OHまたはAlaもしくはAsnは、必要に応じて第2の保護部分Bによって置換されている。
【0122】
配列番号6のコンプスタチンアナログの実施形態のいずれかにおいて、Xaa2は、Trpであり得る。
【0123】
配列番号6のコンプスタチンアナログの実施形態のいずれかにおいて、Xaa2は、置換もしくは非置換の、二環式の芳香族環成分または置換もしくは非置換の、2つ以上の単環式の芳香族環成分を含むTrpのアナログであり得る。例えば、Trpのアナログは、2−ナフチルアラニン(2−NaI)、1−ナフチルアラニン(1−NaI)、2−インダニルグリシンカルボン酸(Ig1)、ジヒドロトリプトファン(Dht)および4−ベンゾイル−L−フェニルアラニンから選択され得る。
【0124】
配列番号6のコンプスタチンアナログの実施形態のいずれかにおいて、Xaa2は、Trpと比べて疎水性特性が高いTrpのアナログであり得る。例えば、上記Trpのアナログは、1−メチルトリプトファン、4−メチルトリプトファン、5−メチルトリプトファンおよび6−メチルトリプトファンから選択され得る。1つの実施形態において、Trpのアナログは、1−メチルトリプトファンである。1つの実施形態において、Xaa2は、1−メチルトリプトファンであり、Xaa2は、Trpであり、Xaa3は、Alaであり、他のアミノ酸は、コンプスタチンのそれと同一である。
【0125】
配列番号6のコンプスタチンアナログの実施形態のいずれかにおいて、Xaa2は、Trpのアナログ(例えば、Trpと比べてC3と水素結合を形成する傾向が高く、ある特定の実施形態において、Trpと比べて疎水性特性が高くないTrpのアナログ)であり得る。ある特定の実施形態において、Trpのアナログは、インドール環上に電気陰性置換基を含む。例えば、上記Trpのアナログは、5−フルオロトリプトファンおよび6−フルオロトリプトファンから選択され得る。
【0126】
本発明のある特定の実施形態において、Xaa2は、Trpであり、Xaa2は、Trpと比べてC3と水素結合を形成する傾向が高く、ある特定の実施形態において、Trpと比べて疎水性特性が高くないTrpのアナログである。配列番号6のコンプスタチンアナログのある特定の実施形態において、Xaa2は、Trpと比べて疎水性特性が高いTrpのアナログ(例えば、1−メチルトリプトファン、4−メチルトリプトファン、5−メチルトリプトファンおよび6−メチルトリプトファンから選択されるTrpのアナログ)であり、Xaa2は、Trpと比べてC3と水素結合を形成する傾向が高く、ある特定の実施形態において、Trpと比べて疎水性特性が高くないTrpのアナログである。例えば、1つの実施形態において、Xaa2は、メチルトリプトファンであり、Xaa2は、5−フルオロトリプトファンである。
【0127】
上述の実施形態のある特定の実施形態において、Xaa3は、Alaである。上述の実施形態のある特定の実施形態において、Xaa3は、単一メチル非分枝状アミノ酸、例えば、Abuである。
【0128】
本発明は、上に記載したような配列番号6のコンプスタチンアナログをさらに提供し、ここで、Xaa2およびXaa2は、独立して、Trp、Trpのアナログおよび少なくとも1つの芳香族環を含む他のアミノ酸またはアミノ酸アナログから選択され、Xaa3は、His、AlaもしくはAlaのアナログ、Phe、Trp、Trpのアナログまたは別の芳香族アミノ酸もしくは芳香族アミノ酸アナログである。
【0129】

本発明のある特定の実施形態において、本明細書中に記載されているコンプスタチンアナログのいずれかのN末端またはC末端に存在する保護部分は、哺乳動物(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類)の血液または硝子体に別途存在する分解に対してペプチドを安定化する任意の部分である。例えば、保護部分Bは、ペプチドのN末端のアミノ酸とその隣接するアミノ酸との間のペプチド結合の切断を阻害するように、ペプチドのN末端の構造を変化させる任意の部分であり得る。保護部分Bは、ペプチドのC末端のアミノ酸とその隣接するアミノ酸との間のペプチド結合の切断を阻害するように、ペプチドのC末端の構造を変化させる任意の部分であり得る。当該分野で公知の適当な任意の保護部分が、使用され得る。本発明のある特定の実施形態において、保護部分Bは、アシル基(すなわち、−OH基の除去後に残存するカルボン酸の一部)を含む。そのアシル基は、代表的には、1〜12個の炭素、例えば、1〜6個の炭素を含む。例えば、本発明のある特定の実施形態において、保護部分Bは、ホルミル、アセチル、プロピオニル(proprionyl)、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリルなどからなる群から選択される。1つの実施形態において、保護部分Bは、アセチル基である。すなわち、Xaa1は、Ac−Ile、Ac−Val、Ac−LeuまたはAc−Gly−Ileである。
【0130】
本発明のある特定の実施形態において、保護部分Bは、第1級アミンまたは第2級アミン(−NHまたは−NHR1(ここで、Rはアルキル基などの有機部分である))である。
【0131】
本発明のある特定の実施形態において、保護部分Bは、生理学的pHにおいてN末端に別途存在し得る負電荷を中和するか、または低下させる任意の部分である。本発明のある特定の実施形態において、保護部分Bは、生理学的pHにおいてC末端に別途存在し得る負電荷を中和するか、または低下させる任意部分である。
【0132】
本発明のある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、それぞれN末端および/またはC末端において、アセチル化またはアミド化される。コンプスタチンアナログは、N末端でアセチル化され得、C末端でアミド化され得、そしてまたはN末端でアセチル化され得、かつC末端でアミド化され得る。本発明のある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、N末端にアセチル基ではなくアルキル基またはアリール基を含む。
【0133】
ある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、配列:
Xaa1−Cys−Val−Xaa2−Gln−Asp−Xaa2−Gly−Xaa3−His−Arg−Cys−Xaa4(配列番号7)を有するペプチドを含む化合物であり;ここで:
Xaa1は、Ile、Val、Leu、Ac−Ile、Ac−Val、Ac−LeuまたはGly−IleもしくはAc−Gly−Ileを含むジペプチドであり;
Xaa2およびXaa2は、独立して、TrpおよびTrpのアナログから選択され;Xaa3は、His、AlaもしくはAlaのアナログ、Phe、TrpまたはTrpのアナログであり;
Xaa4は、L−Thr、D−Thr、Ile、Val、Gly、Thr−AlaおよびThr−Asnから選択されるジペプチド、またはThr−Ala−Asnを含むトリペプチドであり、ここで、L−Thr、D−Thr、Ile、Val、Gly、AlaまたはAsnのいずれかのカルボキシ末端−OHは、必要に応じて−NH2によって置換されており;そして
その2つのCys残基は、ジスルフィド結合によって結合されている。
【0134】
Xaa1、Xaa2、Xaa2、Xaa3およびXaa4は、配列番号6の様々な実施形態について上で記載したとおりである。例えば、ある特定の実施形態において、Xaa2は、Trpである。ある特定の実施形態において、Xaa2は、Trpと比べて疎水性特性が高いTrpのアナログ、例えば、1−メチルトリプトファンである。ある特定の実施形態において、Xaa3は、Alaである。ある特定の実施形態において、Xaa3は、単一メチル非分枝状アミノ酸である。
【0135】
本発明のある特定の実施形態において、Xaa1は、Ileであり、Xaa4は、L−Thrである。
【0136】

本発明のある特定の実施形態において、Xaa1は、Ileであり、Xaa2は、Trpであり、そして、Xaa4は、L−Thrである。
【0137】
本発明は、上に記載されたような配列番号7のコンプスタチンアナログをさらに提供し、ここで、Xaa2およびXaa2は、独立して、Trp、Trpのアナログ、他のアミノ酸または芳香族アミノ酸アナログから選択され、そしてXaa3は、His、AlaもしくはAlaのアナログ、Phe、Trp、Trpのアナログまたは別の芳香族アミノ酸もしくは芳香族アミノ酸アナログである。
【0138】
表1には、本発明において有用なコンプスタチンアナログの非限定的なリストを提供する。そのアナログは、親ペプチドであるコンプスタチン(C末端でアミド化されたもの)に対して指定された位置(1〜13)における特定の改変を示すことによって、左の欄に省略形で記載されている。別途示されない限り、ペプチドは、C末端でアミド化されている。太字は、ある特定の改変を示すために使用されている。コンプスタチン(この場合、C末端でアミド化されたコンプスタチン)と比べた活性は、公開されているデータおよびその明細書(WO2004/02632,Mallik,2005;Katragadda,2006)中に記載されているアッセイに基づくものである。活性を報告している複数の公開文献が調べられる場合、より最近公開された値を使用し、その値が、アッセイ間で異なる場合は調節され得ることが認識されるだろう。また、表1に列挙されるペプチドが、本発明の治療的な組成物および方法において使用されるとき、2つのCys残基間のジスルフィド結合を介して環化されることも理解されるだろう。
【0139】
【表1】
本発明の組成物および方法のある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、配列9〜32から選択される配列を有する。本発明の組成物および方法のある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、配列番号14、21、28、29および32から選択される配列を有する。本発明の組成物および方法のある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、配列番号30および31から選択される配列を有する。
本発明の組成物および方法の1つの実施形態において、コンプスタチンアナログは、配列番号28の配列を有する。本発明の方法の1つの実施形態において、コンプスタチンアナログは、配列番号32の配列を有する。
【0140】
本発明は、さらに、表1に示されるような配列を有するコンプスタチンアナログを提供するが、ここで、Ac基は、上に記載したような別の保護部分Bによって置換されている。本発明は、さらに、表1に示されるような配列を有するコンプスタチンアナログを提供するが、ここで、−NH基は、上に記載したような別の保護部分Bによって置換されている。
【0141】
1つの実施形態において、コンプスタチンアナログは、コンプスタチンが結合するヒトC3のβ鎖の領域と実質的に同じ領域に結合する。1つの実施形態において、コンプスタチンアナログは、コンプスタチンが結合する、分子量が約40kDaのヒトC3のβ鎖のC末端の一部のフラグメントに結合する化合物である(Soulika,A.M.ら、Mol.Immunol.,35:160,1998;Soulika,A.M.ら、Mol.Immunol.43(12):2023−9,2006)。ある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、コンプスタチン−C3構造(例えば、結晶構造またはNMR由来の3D構造)において決定されるとき、コンプスタチンの結合部位に結合する化合物である。ある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、コンプスタチン−C3構造においてコンプスタチンの代わりをし得、コンプスタチンとして実質的に同じC3との分子間の接触を形成し得る化合物である。ある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、ペプチド−C3構造、例えば、結晶構造において、表1に示される配列(例えば、配列番号14、21、28、29または32)を有するペプチドの結合部位に結合する化合物である。ある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、ペプチド−C3構造、例えば、結晶構造において、配列番号30または31を有するペプチドの結合部位に結合する化合物である。ある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、ペプチド−C3構造において配列番号9〜32、例えば、配列番号14、21、28または32のペプチドの代わりをし得、そしてそのペプチドとして実質的に同じC3との分子間の接触を形成し得る化合物である。ある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、ペプチド−C3構造において配列番号30または31のペプチドの代わりをし得、そしてそのペプチドとして実質的に同じC3との分子間の接触を形成し得る化合物である。
【0142】
当業者は、日常的な実験方法を用いて、コンプスタチンアナログが、C3のβ鎖のC末端の一部のフラグメントに結合するか否かを容易に判定することができる。例えば、当業者は、その化合物中に(例えば、その配列のC末端において)光架橋性アミノ酸(例えば、p−ベンゾイル−L−フェニルアラニン(Bpa))を含ませることによってコンプスタチンアナログの光架橋可能なバージョンを合成し得る(Soulika,A.M.ら、前出)。必要に応じて、例えば、ウエスタンブロッティングによって化合物の検出を容易にするために、さらなるアミノ酸、例えば、エピトープタグ(例えば、FLAGタグまたはHAタグ)を含ませることができる。そのコンプスタチンアナログは、フラグメントとともにインキュベートされ、そして架橋が開始される。コンプスタチンアナログとC3フラグメントとが同時に存在することは、結合していることを示唆する。また、表面プラズモン共鳴を使用して、コンプスタチンアナログが、C3上またはそのフラグメント上のコンプスタチン結合部位に結合しているか否かを判定してもよい。当業者は、分子モデリングソフトウェアプログラムを使用して、化合物が、コンプスタチンあるいは、表1中のペプチドのいずれかの配列、例えば、配列番号14、21、28、29もしくは32または他の実施形態では配列番号30もしくは31を有するペプチドが、C3と分子間の接触を形成するのと実質的に同じ接触を形成するか否かを予測することができる。
【0143】
コンプスタチンアナログは、アミノ酸残基の縮合を介した当該分野で公知のペプチド合成の様々な合成方法によって、例えば、従来のペプチド合成方法に従って調製され得、当該分野で公知の方法を用いて、それらをコードする適切な核酸配列からインビトロまたは生細胞における発現によって調製され得る。例えば、ペプチドは、Malik,前出、Katragadda,前出および/またはWO2004026328に記載されているような標準的な固相方法を用いて合成され得る。強力に反応性である部分(例えば、アミノ基およびカルボキシル基、反応性官能基など)は、様々な保護基および当該分野で公知の方法を用いて保護され得、その後、脱保護され得る。例えば、“Protective Groups in Organic Synthesis”,3rd ed.Greene,T.W.and Wuts,P.G.,Eds.,John Wiley & Sons,New York:1999を参照のこと。ペプチドは、標準的なアプローチ(例えば、逆相HPLC)を用いて精製され得る。所望であれば、ジアステレオ異性の(diasteriomeric)ペプチドの分離を、公知の方法(例えば、逆相HPLC)を用いて行ってもよい。所望であれば、調製物は、凍結乾燥され得、そして、その後、適当な溶媒、例えば、水に溶解され得る。得られた溶液のpHは、NaOHなどの塩基を用いて、例えば、生理学的pHに調節され得る。所望であれば、ペプチド調製物は、例えば、質量および/またはジスルフィド結合の形成を確かめるために、質量分析によって特徴付けされ得る。例えば、Mallik,2005およびKatragadda,2006を参照のこと。
【0144】
(コンプスタチン模倣物)
コンプスタチンの構造は、当該分野で公知であり、コンプスタチンよりも高い活性を有する多くのコンプスタチンアナログのNMR構造もまた、公知である(Malik,前出)。構造的な情報は、コンプスタチン模倣物を設計するために使用され得る。
【0145】
1つの実施形態において、コンプスタチン模倣物は、C3またはそのフラグメント(例えば、コンプスタチンが結合するβ鎖の40kDフラグメント)への結合性について、コンプスタチンまたは任意のコンプスタチンアナログ(例えば、表1に示される配列を有するコンプスタチンアナログ)と競合し、そして、コンプスタチンの活性以上の活性を有する任意の化合物である。コンプスタチン模倣物は、ペプチド、核酸または小分子であり得る。ある特定の実施形態において、コンプスタチン模倣物は、コンプスタチン−C3構造、例えば、結晶構造またはNMR実験由来の3−D構造において決定されるコンプスタチンの結合部位に結合する化合物である。ある特定の実施形態において、コンプスタチン模倣物は、コンプスタチン−C3構造においてコンプスタチンの代わりをし得、そしてコンプスタチンとして実質的に同じC3との分子間の接触を形成し得る化合物である。実施形態において、コンプスタチン模倣物は、ペプチド−C3構造において、表1に示される配列、例えば、配列番号14、21、28、29もしくは32、またはある特定の実施形態において、配列番号30もしくは31を有するペプチドの結合部位に結合する化合物である。ある特定の実施形態において、コンプスタチン模倣物は、ペプチド−C3構造において、表1に示される配列、例えば、配列番号14、21、28、29もしくは32、またはある特定の実施形態において、配列番号30もしくは31を有するペプチドの代わりをし得、そしてそのペプチドとして実質的に同じC3との分子間の接触を形成し得る化合物である。ある特定の実施形態において、コンプスタチン模倣物は、非ペプチド骨格を有するが、コンプスタチンの配列に基づいて設計される配列中に配置されている側鎖を有する。
【0146】
当業者は、一旦、短いペプチドの特定の所望の高次構造が確認されたら、その高次構造に適合するペプチドまたはペプチド模倣物を設計するための方法は、周知であることを理解するだろう。例えば、G.R.Marshall(1993),Tetrahedron,49:3547−3558;Hruby and Nikiforovich(1991),in Molecular Conformation and Biological Interactions,P.Balaram & S.Ramasehan,eds.,Indian Acad,of Sci,Bangalore,PP.429−455)、Eguchi M,Kahn M.,Mini Rev Med Chem.,2(5):447−62,2002を参照のこと。特に本発明に関して、ペプチドアナログの設計は、例えば、とりわけ、コンプスタチンおよびそのアナログに対する当該分野で報告されているような官能基の作用または立体的な考察に対するアミノ酸残基の様々な側鎖の寄与を考慮してさらに絞り込まれ得る。
【0147】
ペプチド模倣物が、C3への結合および補体活性化の阻害に必要な特定の骨格高次構造および側鎖官能性を提供する目的で、ペプチドとして等しく十分に働き得ることを当業者は理解するだろう。従って、適切な骨格高次構造を形成するために結合され得る、天然に存在するアミノ酸、アミノ酸誘導体、アミノ酸アナログまたは非アミノ酸分子のいずれかを使用することによって、C3結合性で補体阻害性の化合物を生成することおよびそれを利用することは、本発明の範囲内であると企図される。例示されたペプチドが補体活性化を阻害するのと十分に同じであるように、ほぼ同じ骨格高次構造特性および/または他の官能性を有するペプチドの置換物または誘導物を指し示すために、非ペプチドアナログまたはペプチド成分および非ペプチド成分を含むアナログは、本明細書中で時折「ペプチド模倣物」または「等立体(isosteric)模倣物」とよばれる。より一般には、コンプスタチン模倣物は、骨格が異なっていたとしても、コンプスタチンにおける位置と同様にファルマコフォアを配置し得る任意の化合物である。
【0148】
高親和性ペプチドアナログの開発のためにペプチド模倣物を使用することは、当該分野で周知である。ペプチド内部のアミノ酸残基の回転性の制約と類似の回転性の制約を想定するとき、非アミノ酸部分を含むアナログを解析し得、そしてそれらの高次構造モチーフを、他の公知の技術の中でもラマチャンドランプロット(Hruby & Nikiforovich 1991)を用いて検証し得る。
【0149】
本発明は、C3に結合するコンプスタチン模倣物を同定するために、バーチャルなスクリーニング方法を使用することを包含する。そのような方法は、複数の候補構造を計算的にドッキングし、スコア付けし、そして必要に応じてランク付けする適当なアルゴリズムを使用することを含み得る。1つの実施形態では、誘導適合アルゴリズムを使用する。1つの実施形態において、本発明は、(i)コンプスタチンが結合するC3またはその一部の3次元構造をもたらす工程;(ii)複数の分子構造とC3の構造とを計算的にドッキングする工程;および(iii)コンプスタチンまたはそのアナログが結合する部位と実質的に同じ部位に結合する分子構造を選択する工程を含む方法を提供する。多岐にわたる利用可能なソフトウェアプログラムのいずれかを使用して、バーチャルなスクリーニング方法を行うことができる。柔軟な分子ドッキングにとって有用な代表的なプログラムとしては、DOCK4.0、FlexX1.8、AutoDock3.0、GOLD1.2、ICM2.8およびそのより最近のバージョンが挙げられる。
【0150】
当業者は、さらなるコンプスタチン模倣物を同定し、そして所望の阻害活性を有する模倣物を選択する適当なスクリーニングアッセイを容易に確立することができる。例えば、コンプスタチンまたはそのアナログを標識し(例えば、放射性標識または蛍光標識で)、そして様々な濃度の試験化合物の存在下でC3と接触させ得る。その試験化合物が、C3へのコンプスタチンアナログの結合性を低下させる能力が評価される。C3へのコンプスタチンアナログの結合性を著しく低下させる試験化合物は、コンプスタチン模倣物の候補である。例えば、少なくとも25%もしくは少なくとも50%コンプスタチンアナログ−C3複合体の定常状態の濃度を低下させるか、またはコンプスタチンアナログ−C3複合体の形成の速度を低下させる試験化合物は、コンプスタチン模倣物の候補である。当業者は、このスクリーニングアッセイの多くの変法が使用され得ることを認識するだろう。スクリーニングされる化合物としては、天然の生成物、アプタマーのライブラリー、ファージディスプレイライブラリー、コンビナトリアルケミストリーなどを用いて合成される化合物ライブラリーが挙げられる。本発明は、上に記載したコア配列に基づいて化合物のコンビナトリアルライブラリーを合成すること、およびコンプスタチン模倣物を同定するためにライブラリーをスクリーニングすることを包含する。これらの方法のいずれかを使用して、それまでの試験されたコンプスタチンアナログよりも高い阻害活性を有する新しいコンプスタチンアナログが同定され得る。
【0151】
(併用療法)
本発明は、本明細書中に記載されている網膜の状態および他の眼球の状態の処置に有効な1つ以上の他の薬剤(例えば、1つ以上の他の補体インヒビター、血管新生インヒビターなど)と一緒にコンプスタチンアナログおよびコンプスタチン模倣物を使用することを企図する。適当な補体インヒビターとしては、補体活性化のインヒビター、例えば、ウイルス性補体制御タンパク質(VCCP)(例えば、ワクシニア補体制御タンパク質(VCP)、補体の痘瘡インヒビター(SPICE))、ペプチドなどが挙げられる。本発明は、特に、2004年10月8日出願の米国特許出願番号60/616,983、2005年3月11日出願の米国特許出願番号60/660,752および2005年10月8日出願のVIRAL COMPLEMENT CONTROL PROTEINS FOR EYE DISORDERSと題された米国特許出願に記載されている薬剤のいずれかの使用を企図する。これらの補体インヒビターまたは他の補体インヒビターは、単一組成物の一部としてコンプスタチンまたはその補体阻害アナログと一緒に投与してもよいし、別々に投与してもよい。上記補体インヒビターは、連続的または同時に投与してもよいし、同じ投与経路または異なる投与経路によって投与してもよい。例えば、ある特定の薬剤は、硝子体内により都合良く投与され得、他の薬剤は、眼に近接した位置であるが、眼の外側、眼の後部、例えば、強膜の後ろに、より都合よく投与され得る。
【0152】
1つの実施形態において、本発明は、コンプスタチンアナログおよび血管新生インヒビターを、滲出性ARMDに罹患している被験体または滲出性ARMDを発症する危険性のある被験体に投与する工程を含む方法を提供する。上記コンプスタチンアナログおよび血管新生インヒビターは、いずれの順序で投与されてもよい。1つの実施形態において、血管新生インヒビター(例えば、抗VEGF抗体、アプタマーまたはsiRNA)(例えば、Lucentis、Avastin、Macugen)は、代表的には、滲出性ARMDを処置するために当該分野で使用されている方法および血管新生インヒビターの量を用いて硝子体内注射によって投与される。コンプスタチンアナログは、血管新生インヒビターの投与後の4週間までに、例えば、血管新生インヒビターの投与後の24、48もしくは72時間以内、または血管新生インヒビターの投与後の1、2、3もしくは4週間以内に、例えば、硝子体内注射によって投与される。1つの実施形態において、被験体が、血管新生インヒビターに対して好ましい応答、例えば、網膜の厚さが薄くなること(例えば、光干渉断層撮影法を用いて測定する)または視力の改善を示した後に、コンプスタチンアナログは投与される。1つの実施形態において、コンプスタチンアナログは、眼球の挿入物中、例えば、硝子体内の挿入物中に与薬される。別の実施形態において、コンプスタチンアナログは、マイクロ粒子処方物またはナノ粒子処方物中に与薬される。ある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、100〜10,000μgのコンプスタチンアナログを含む眼球挿入物中またはマイクロ粒子処方物中/ナノ粒子処方物中に与薬される。ある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、100〜1,000μg、例えば、100〜500μgのコンプスタチンアナログを含む眼球挿入物中に与薬される。ある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、0.1〜5μg/日の速度でマイクロ粒子処方物/ナノ粒子処方物の挿入物から放出される。ある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、0.5〜5μg/日の速度でマイクロ粒子処方物/ナノ粒子処方物の挿入物から放出される。ある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、5〜10μg/日の速度でマイクロ粒子処方物/ナノ粒子処方物の挿入物から放出される。ある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログは、10〜20μg/日の速度でマイクロ粒子処方物/ナノ粒子処方物の挿入物から放出される。本発明の1つの局面は、コンプスタチンアナログおよび必要に応じて第2の治療薬(例えば、血管新生インヒビター)を投与するための方法に関する指示を当業者、例えば眼科医に提供することを含む。その指示は、上記治療薬の1つ以上とともに提供されてもよいし、別々に提供されてもよい。
【0153】
(コンプスタチンおよびコンプスタチンアナログの特性の評価)
コンプスタチンまたはそのアナログもしくは模倣物の特性のいずれかを評価するために、任意の適当な方法が使用され得る。多くのインビトロアッセイが使用され得る。例えば、薬剤が補体古典的経路または補体副経路を阻害する能力は、その薬剤の存在下または非存在下で、血清、例えば、ヒト血清、血漿または一連の補体成分による赤血球(例えば、抗体感作または抗体非感作のウサギまたはヒツジ赤血球)の補体媒介性溶血を測定することによって評価され得る。薬剤は、この阻害アッセイにおいて統計学的に有意な程度(p<0.05)に溶血を減少させる場合、補体を阻害する。
【0154】
薬剤がC3などの補体成分の1つ以上に結合する能力は、等温滴定熱量計を用いるか、または液相において行うのに適した他の方法を用いて、評価され得る。別の実施形態において、薬剤が補体成分に結合する能力は、ELISAアッセイを用いて測定される。例えば、マイクロタイタープレートのウェルを上記薬剤でコーティングする。コンプスタチンアナログまたはコンプスタチン模倣物は、それらがプレートに結合するのを容易にするために、官能性を持たされ得る。例えば、上記薬剤は、ビオチン化され得、そしてストレプトアビジンコートされたプレートが使用される。そして補体成分がそのウェルに加えられる。ある時間のインキュベーションの後、そのウェルを洗浄し、結合した補体成分を、目的の補体成分に対する抗体を用いて検出する。他の有用な方法としては、表面プラズモン共鳴、平衡透析などが挙げられる。
【0155】
前述の方法のうちのいくつかの方法は、米国特許第6,319,897号;PCT公開WO2004/026328(PCT/US2003/029653)、Morikis,D.ら、Biochem Soc Trans.32(Pt1):28−32,2004およびMallik,B.ら、J.Med.Chem.,274−286,2005に記載されている。これらの方法もしくはその変法または当該分野で公知の他の方法のいずれかが使用され得る。1つの実施形態において、実施例4または5に記載されるアッセイが使用される。
【0156】
(コンプスタチンならびにコンプスタチンアナログおよびコンプスタチン模倣物の標的化)
本発明は、(i)コンプスタチンまたはその補体阻害アナログ;および(ii)黄斑変性症、脈絡膜血管新生またはその両方を特徴とする網膜の障害、例えば、黄斑変性症に関連する状態、糖尿病性網膜症または未熟児網膜症の危険性のある被験体またはそれに罹患している被験体の眼に存在する成分に結合する結合部分を含む組成物を提供する。その組成物は、前述の障害のいずれかを処置または予防するために使用され得る。好ましくは、上記結合部分と、コンプスタチンまたはコンプスタチンアナログとは、連結されている。
その結合は、本発明の様々な実施形態において共有結合または非共有結合であり得、直接的または間接的であり得る。上記結合部分は、例えば、以下に記載されるような抗体またはリガンドであり得る。本発明のある特定の実施形態によれば、その成分は、細胞マーカーである。本発明の他の実施形態において、その成分は、ドルーゼン構成物である。上記細胞マーカーは、細胞、好ましくは、内皮細胞または網膜色素上皮細胞の表面上または表面に発現している任意のマーカーであり得る。本発明のある特定の実施形態において、上記細胞マーカーは、細胞タイプ特異的マーカーである。
【0157】
一般に、上記成分は、細胞または非細胞性分子実体の表面上または表面に存在する任意の分子であり得る。「細胞または非細胞性分子実体の表面上または表面に」とは、上記成分が、上記部分によって認識され、結合され得るように、細胞外の環境に存在する分子に到達可能であることを意味する。上記成分は、完全に細胞外に存在することがある。上記成分は、細胞膜に挿入されていることがある。本発明のある特定の実施形態において、上記成分は、部分的または完全に膜内に存在し得、この場合、その実体は、到達するためにはその膜に部分的に貫通していなければならない。一般に、上記成分は、細胞の細胞質に存在しない。上記成分の十分な一部が、認識され、結合され得るように、露出されているか、または到達可能の状態である限り、それは、表面上または表面に存在するといわれる。本発明の好ましい実施形態において、上記成分は、細胞マーカー、例えば、細胞タイプ特異的マーカーである。標的が、細胞以外の分子実体である場合、上記成分は、抗体またはリガンドによって認識可能である、その分子の表面上または表面に存在する任意の化学物質であり得る。
【0158】
内皮細胞の表面上または表面に発現していて、コンプスタチンまたはそのアナログを、眼(例えば、脈絡膜の脈管構造)内の内皮細胞に標的化するために使用され得る多くの細胞マーカーは、米国特許出願番号10/923,940に開示されている。止血に関与する分子である組織因子(TF)は、好ましいマーカーである。簡潔には、組織因子は、細胞膜結合性糖タンパク質(MW 46kDa)およびクラス2サイトカインレセプターファミリーのメンバーである。ジスルフィド架橋されていないシステインを含む、親水性細胞外ドメイン、膜貫通疎水性ドメインおよび21残基の細胞質テイルから構成される。血液に曝露されると、血管周囲の細胞結合性TFは、VII因子(FVII)、ビタミンK依存性セリンプロテアーゼに結合する。TFは、加齢性黄斑変性症の浸出(滲出)型および糖尿病性網膜症に関連する病的な脈管構造を含む様々な形状の病的な新生脈管構造の管腔表面を裏打ちする内皮細胞上に発現しているが、代表的には、正常な脈管構造には発現していない(か、またはかなり低いレベルで発現している)ので、TFは、特異的かつ到達可能な標的を提供する。コンプスタチンまたはコンプスタチンアナログとVII因子またはその誘導体とを連結することによって、コンプスタチンまたはコンプスタチンアナログが、TFを発現する細胞、例えば、病的な新生脈管構造における内皮細胞に対して標的化される。インテグリンアルファ(v)ベータ(3)は、別の好ましいマーカーである。
【0159】
多くのマーカーが、網膜色素上皮細胞の表面上または表面に発現している。これらとしては、CD68抗原(Elner SG,Exp Eye Res.1992 Jul;55(1):21−8)、クローディン(Nishiyama Kら、Anat Rec.2002 Jul 1;267(3):196−203、RPE65遺伝子によってコードされるタンパク質(Nicoletti A.ら、Invest Ophthalmol Vis Sci.1998 Mar;39(3):637−44)、CD45およびICAM−1(Limb,GAら、Curr Eye Res.1997 Oct;16(10):985−91)が挙げられるが、これらに限定されない。さらなる例として、Chowers,Iら、Studies on retinal and retinal pigment epithelial gene expression,Novartis Found Symp.2004;255:131−45,145−6,177−8もまた参照のこと。
【0160】
大多数の分子成分が、ドルーゼンにおいて同定されている。そのような成分は、コンプスタチンまたはコンプスタチンアナログが標的化され得る、適当な非細胞性分子実体である。これらの構成要素としては、α1−抗キモトリプシン、α1−抗トリプシン、アルツハイマーアミロイドβペプチド、糖化最終産物、アミロイドP成分、アポリポタンパク質BおよびE、様々なレクチンによって認識される炭水化物部分、コレステロールエステル、クラスタリン、補体因子、クラスター分化抗原、補体レセプター1、X因子、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、ヒト白血球抗原DR、免疫グロブリン軽鎖、主要組織適合遺伝子複合体クラスII抗原、膜補因子タンパク質、過酸化脂質、リン脂質および中性脂質、マトリックスメタロプロテイナーゼ(metalloproeinase)−3の組織インヒビター、トランスサイレチン、ユビキチンならびにビトロネクチン(Zarbin,MA,Arch Ophthalmol.122:598−614,2004)が挙げられる。これらの多くの成分はまた、アテローム性動脈硬化症をはじめとした種々の様々な疾患に関連する沈着物中に見られる。
【0161】
本発明のある特定の好ましい実施形態において、結合部分は、コンプスタチンまたはその補体阻害アナログに連結される。他の実施形態において、結合部分は、コンプスタチンまたはそのアナログが付着している別の分子に結合する一部を含む。適当な結合部分としては、細胞マーカーまたはドルーゼン構成物などの非細胞性分子実体に特異的に結合する抗体および細胞マーカーまたはドルーゼン構成物などの非細胞性分子実体に特異的に結合するリガンドが挙げられる。一般に、結合部分とコンプスタチンまたはその補体阻害アナログとの連結は、共有結合または非共有結合であり得、本発明の様々な実施形態において直接的または間接的であり得る。同様に、ドルーゼン構成物などの非細胞マーカーに結合する部分は、コンプスタチンもしくはその補体阻害アナログまたはコンプスタチンもしくはその補体阻害アナログが付着している別の分子に連結され得る。
【0162】
結合部分が抗体である本発明の実施形態において、その抗体は、結合能力を維持する任意の免疫グロブリンもしくはその誘導体、または免疫グロブリン結合ドメインと相同であるか、もしくは大部分が相同である結合ドメインを有する任意のタンパク質であり得る。
そのようなタンパク質は、天然起源由来であり得るか、または部分的もしくは全体的に合成的に生成され得る(例えば、組換えDNA技術、化学合成などを用いて)。上記抗体は、任意の種、例えば、ヒト、げっ歯類、ウサギ、ヤギ、ニワトリなどの抗体であり得る。
上記抗体は、ヒトのクラス:IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEのいずれかを含む任意の免疫グロブリンクラスのメンバーであり得る。本発明の様々な実施形態において、上記抗体は、抗体のフラグメント(例えば、Fab’、F(ab’)、scFv(一本鎖可変部))もしくは抗原結合部位を保持している他のフラグメントまたは組換え的に生成されたscFvフラグメント(組換え的に生成されたフラグメントを含む)であり得る。例えば、Allen,T.,Nature Reviews Cancer,Vol.2,750−765,2002およびこの論文中の参考文献を参照のこと。一価抗体、二価抗体または多価抗体が使用され得る。上記抗体は、キメラ抗体または「ヒト化」抗体であり得、ここで、その抗体は、例えば、げっ歯類起源の可変ドメインがヒト起源の定常ドメインに融合されているので、げっ歯類抗体の特異性を保持している。ヒト起源のドメインは、ヒトにおいて第一に合成されるという意味では、直接ヒトが起源である必要はないことに注意されたい。その代わりに、「ヒト」ドメインは、ヒト免疫グロブリン遺伝子が組み込まれたゲノムを有するげっ歯類において生成され得る。例えば、Vaughanら、(1998),Nature Biotechnology,16:535−539を参照のこと。上記抗体は、部分的または完全にヒト化され得る。抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得るが、本発明の目的では、モノクローナル抗体が、一般に好ましい。好ましくは、上記抗体は、細胞表面上に存在するその抗体の標的、例えば、細胞タイプ特異的マーカーに特異的に結合する。目的の実質的に任意の分子と特異的に結合する抗体を作製するための方法は、当該分野で公知である。例えば、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体は、天然起源、例えば、その抗体を産生する動物の血液または腹水から(例えば、分子またはその抗原性フラグメントで免役された後に)精製され得るか、または細胞培養物において組換え的に作製され得る。
【0163】
本発明のある特定の実施形態において、Fc部は、炎症促進性効果を有し得るか、または他の望ましくない効果を引き起こし得るので、Fc部を含む抗体ではなくF(ab’)2またはF(ab’)フラグメントを使用することが好ましい。しかしながら、本発明のある特定の実施形態において、Fcドメインを含む抗体を使用することが好ましい。F(ab’)フラグメントは、例えば、固定化ペプシンを用いて抗体を消化し、固定化プロテインAカラムによって精製するImmunopure F(ab’) Preparation Kit(Pierce)を使用することによって生成され得る。消化条件(例えば、温度および消化時間)は、F(ab’)が良好に得られるように当業者によって最適化され得る。消化によって生じるF(ab’)の収量は、標準的なタンパク質ゲル電気泳動によってモニターされ得る。F(ab’)は、抗体のパパイン消化またはF(ab’)におけるS−S結合の還元によって得ることができる。
【0164】
本発明の様々な実施形態において、コンプスタチンまたはその補体阻害アナログが連結する適切な結合部分は、抗原−抗体相互作用以外のメカニズムを介して標的分子(例えば、ポリペプチドまたはその一部(例えば、炭水化物部分))に特異的に結合する任意の分子であり得る。そのような結合部分は、「リガンド」とよばれる。例えば、本発明の様々な実施形態において、リガンドは、ポリペプチド、ペプチド、核酸(例えば、DNAまたはRNA)、炭水化物、脂質もしくはリン脂質または小分子(例えば、天然に存在するものか、または人工的に作製されたものに関係なく、比較的低分子量であり、タンパク質、ポリペプチド、核酸または脂質でない有機化合物、代表的には、約1500g/mol未満の分子量であり、代表的には複数の炭素−炭素結合を有する有機化合物)であり得る。
【0165】
リガンドは、天然に存在し得るか、または合成され得、リガンドは、人間によって創作された構造を有する分子を含む。リガンドの例としては、特定のレセプターに結合する、ホルモン、成長因子または神経伝達物質が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、VII因子は、TFに対するリガンドである。代表的なTF結合部分は、FVII、活性型FVII(FVIIa)、不活性型FVIIa、組織因子に結合する抗体、操作されたポリペプチド、アプタマーおよび組織因子に結合する小分子である。不活性型FVIIまたは不活性型FVIIaは、例えば、インヒビターによる誘導体化によって活性部位において触媒的に不活性化されているFVIIまたはFVIIaの誘導体である。プロテアーゼ活性部位と共有結合を一般に形成する多くの不可逆的セリンプロテアーゼインヒビターは、当該分野で公知である。適当なインヒビターの例としては、ペプチドハロメチルケトン、例えば、ペプチドクロロメチルケトンが挙げられる(Williamsら、J.Biol.Chem.264:7536−7540,1989および米国特許第5,817,788号を参照のこと)。いくつかの実施形態において、FVIIまたはFVIIaの活性は、FVII中の1つ以上のアミノ酸の置換、欠失および/または挿入によって阻害される。一般に、置換、挿入および/または欠失は、触媒部位残基において行われるか、または触媒部位残基に隣接した位置において行われる。ある特定の実施形態において、上記変更は、Ser344、Asp242および/またはHis193の置換または欠失である。上で述べたように、TFは、血液中に通常存在するVII因子に結合する。ゆえに、本発明の1つの実施形態によれば、コンプスタチンアナログは、TF結合部分に連結される。その結合部分は、脈絡膜の新生脈管構造中の内皮細胞上に存在するTFに結合し、それによって、細胞表面におけるコンプスタチンアナログの量を増加させ、そしてさらなる補体活性化を予防する。
【0166】
天然に存在するポリペプチドリガンドのフラグメントまたは改変体の対応物と配列が異なるが、内皮細胞または網膜色素上皮細胞に結合する能力を保持している上記フラグメントまたは改変体もまた使用され得ることが理解されるだろう。本発明のある特定の実施形態において、ポリペプチドリガンドは、その天然に存在する対応物に対して、5個以下のアミノ酸の相違、10個以下のアミノ酸の相違、25個以下のアミノ酸の相違、50個以下のアミノ酸の相違または100個以下のアミノ酸の相違を含む。本発明のある特定の実施形態において、天然に存在するポリペプチドリガンドと、本発明において使用するためのそのフラグメントまたは改変体との間のアミノ酸の相違数は、天然に存在するポリペプチド中のアミノ酸の総数の5%以下、10%以下または25%以下である。
【0167】
本発明のある特定の実施形態において、天然に存在するポリペプチドリガンドのフラグメントまたは改変体は、天然に存在する対応物の長さの少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%または100%を構成するアミノ酸の一部と、少なくとも70%同一、少なくとも80%同一、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一である。例えば、配列の対応する一部に対して、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%またはそれ以上の配列同一性を示す改変体が使用され得、ここで、%同一性は、上に記載したように決定される。上記アミノ酸の一部は、好ましくは、少なくとも20アミノ酸長、より好ましくは少なくとも50アミノ酸長である。あるいは、フラグメントまたは改変体は、天然に存在する対応物に対して、著しい相同性、または、好ましくは、実質的な相同性を示し得る。一般に、天然に存在するポリペプチドリガンドのフラグメントまたは改変体は、その天然に存在する対応物を認識する抗体(例えば、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体)によって認識されるその天然に存在する対応物に対して十分な構造上の類似性を有する。ペプチドリガンドは、ファージディスプレイを用いて同定され得る(Arap Wら、Nature Medicine 8(2):121−7,2002);Zurita AJら、J Control Release,91(l−2):183−6,2003;Pasqualini,R.& Ruoslahti,E.Nature 380,364−366,1996;Pasqualini,R.ら、Trends Mol.Med.8,563−571,2002)。
【0168】
本発明のある特定の実施形態において、上記リガンドは、細胞タイプ特異的マーカーに結合するアプタマーである。一般に、アプタマーは、特定のタンパク質に結合するオリゴヌクレオチド(例えば、DNAまたはRNAまたは)である。アプタマーは、代表的には、SELEXと呼ばれるインビトロ進化プロセスから得られ、そして目的のタンパク質に特異的なアプタマーを得るための方法が、当該分野で公知である。例えば、Brody EN,Gold L.J Biotechnol.2000 Mar;74(1):5−13を参照のこと。
【0169】
小分子もまたリガンドとして使用され得る。そのようなリガンドを同定するための方法が、当該分野で公知である。例えば、タンパク質の凹面(ポケット)に結合する低分子有機化合物を同定するための、コンビナトリアルライブラリーを含む小分子ライブラリーのインビトロスクリーニングおよびコンピュータを利用したスクリーニングによって、目的の多数のタンパク質に対する小分子リガンドを同定することができる(Huang,Z.,Pharm.& Ther.86:201−215,2000)。
【0170】
本発明のある特定の実施形態において、結合部分は、代表的には、キャリアとして使用され、抗体を惹起する目的で抗原に結合体化されるタンパク質または分子ではない。例は、キャリアタンパク質またはキャリア分子(例えば、ウシ血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、ウシガンマグロブリンおよびジフテリアトキシン)である。本発明のある特定の実施形態において、細胞結合部分は、免疫グロブリン分子のFc部ではない。
【0171】
コンプスタチンアナログを結合部分に共有結合または非共有結合するための方法は、当該分野で公知であり、その方法は、米国特許出願番号10/923,940に記載されている。結合体化および架橋するための通常の方法は、URL www.piercenet.comのウェブサイトで入手可能な“Cross−Linking”、Pierce Chemical Technical Libraryに記載されており、そもそもは、1994−95 Pierce Catalogおよびその中に引用されている参考文献、Wong SS,Chemistry of Protein Conjugation and Crosslinking,CRC Press Publishers,Boca Raton,1991;ならびにG.T.Hermanson,前出に記載されている。標的化された治療薬を作製する方法について記載しているAllen,T.M.,Nature Reviews Cancer,2,750−763,2002もまた参照のこと。例えば、本発明のある特定の実施形態によれば、二官能性の架橋試薬を用いて、コンプスタチンアナログを抗体またはリガンドに結合する。一般に、二官能性の架橋試薬は、2つの反応基を含んでおり、それによって、2つの標的基を共有結合する手段を提供する。化学架橋試薬中の反応基は、代表的には、スクシンイミジルエステル、マレイミド、ピリジルジスルフィドおよびヨードアセトアミドをはじめとした様々なクラスに属している。二官能性のキレート剤もまた使用され得る。
【0172】
あるいは、コンプスタチンアナログおよびその部分は、融合タンパク質として作製され得る。従って、本発明は、(i)コンプスタチンアナログを含む第1のドメイン;および(ii)黄斑変性症に関連する状態またはCNVに罹患しているか、またはその危険性のある被験体の眼に存在する細胞マーカーまたは非細胞性分子実体に結合する結合部分を含む第2のドメインを含む融合タンパク質を提供する。第1のドメインは、融合タンパク質のN末端またはC末端に存在し得る。融合タンパク質は、N末端もしくはC末端のいずれかに、または第1ドメインと第2のドメインとの間に1つ以上のさらなるドメインを含み得る。融合タンパク質は、コンプスタチンアナログの配列を有する複数の領域を含み得、例えば、融合タンパク質は、コンプスタチンアナログのコンカテマーを含み得る。必要に応じて、様々なコンプスタチンアナログユニットが、酵素(例えば、プロテアーゼ)または化学物質(例えば、ヒドラジン)に対する切断部位を含み得るスペーサーによって分断される。融合タンパク質をコードする核酸、その核酸を含んでいる発現ベクター、その発現ベクターを含んでいる宿主細胞ならびにゲノム中にその核酸を含んでいるトランスジェニック動物およびトランスジェニック植物もまた提供される。
【0173】
コンプスタチンアナログの標的化バージョンならびに本明細書中に提供される新しいコンプスタチンアナログおよびコンプスタチン模倣物は、黄斑変性症に関連する状態、糖尿病性網膜症、RNV、CNV、眼球の炎症など以外の多くの状態を処置するために使用され得る。そのような処置方法は、本発明の1つの局面である。そのような目的で、結合部分は、眼における部位に結合する必要はない。一般に、結合部分は、補体阻害が所望される体内の任意の部位に補体阻害タンパク質を標的化するように選択される。例えば、その化合物を使用して、アテローム性動脈硬化症、アルツハイマー病、CNS損傷(脊髄損傷を含む)、移植片拒絶または補体活性化が関与する他の任意の疾患(例えば、ある特定の型の糸球体腎炎、ある特定の炎症状態)などを処置することができる。それらを使用して、心筋梗塞または脳卒中における心臓バイパス手術中または虚血/再灌流中の補体活性化を予防することができる。1つの実施形態において、コンプスタチンアナログまたはコンプスタチン模倣物を使用して、慢性疼痛を処置する。動脈硬化巣、器官移植片(例えば、異種移植片、同種移植片など)が標的化され得る。標的化された組成物は、補体を阻害するため、または移植の前に器官を処理するために、例えば、血小板(本発明の目的で細胞と見なされる)または他の血液調製物を処理するためにインビトロにおいても使用され得る。適切な結合部分、例えば、細胞結合部分、または動脈硬化巣、アルツハイマー病のプラーク(例えば、β−アミロイド)などに存在する成分に結合する部分を使用して、コンプスタチンまたはその補体阻害アナログをそのプラークに対して標的化する。移植される器官の表面上のGal(1,3−Gal)エピトープが標的化され得る。
【0174】
(さらなる改変)
必要に応じて結合部分に連結されているコンプスタチンまたはそのアナログは、ポリエチレングリコール(PEG)などの分子の付加、あるいは、化合物を安定化し、その免疫原性を低下させ、体内でのその存在時間を延長し、その溶解性を増大もしくは低減させ、そして/またはその分解に対する抵抗性を増大させる類似の分子の付加によって改変され得る。ペグ化するための方法は、当該分野で周知である(Veronese,F.M.& Harris,Adv.Drug Deliv.Rev.54,453−456,2002;Davis,F.F.,Adv.Drug Deliv.Rev.54,457−458(2002;Hinds,K.D.& Kim,S.W.Adv.Drug Deliv.Rev.54,505−530(2002;Roberts,M.J.,Bentley,M.D.& Harris,J.M.Adv.Drug Deliv.Rev.54,459−476(2002;Wang,Y.S.ら、Adv.Drug Deliv.Rev.54,547−570,2002)。多岐にわたるポリマー(例えば、PEG、およびポリペプチドが都合良く付着され得る誘導体化PEGを含む改変PEG)は、適切な結合体化の手順の詳細を提供しているNektar Advanced Pegylation 2005−2006 Product Catalog,Nektar Therapeutics,San Carlos,CAに記載されている。別の実施形態において、コンプスタチンまたはコンプスタチンアナログは、免疫グロブリンまたはその一部のFcドメインに融合される。従って、いくつかの実施形態において、コンプスタチンまたはその補体阻害アナログは、1つ以上のポリペプチドまたは非ポリペプチド成分を用いて改変され、例えば、コンプスタチンまたはコンプスタチンアナログは、ペグ化されるか、または別の部分に結合体化される。いくつかの実施形態において、上記成分は、免疫グロブリンまたはその一部のFcドメインではない。コンプスタチンおよび/またはコンプスタチンアナログは、多量体または超分子複合体の一部として提供され得、それは、単一の分子種または複数の異なる種(例えば、複数の異なるアナログ)のいずれかを含み得る。
【0175】
本発明は、重合体の骨格または足場に共有結合または非共有結合されている複数のコンプスタチンアナログ部分を含む多価化合物を提供する。それらのコンプスタチンアナログ部分は、同じコンプスタチンアナログであってもよいし、異なるコンプスタチンアナログであってもよい。本発明は、さらに、反応性官能基を含むコンプスタチンアナログまたは反応性官能基を含むリンカーを含むコンプスタチンアナログを提供し、ここで、その反応性官能基は、コンプスタチンアナログが重合体の骨格に結合するのを促進する。そのコンプスタチンアナログは、本明細書中に記載されるコンプスタチンアナログのいずれかであり得る。重合体の骨格への結合の後、コンプスタチンアナログ部分の構造が、本明細書中に記載されるコンプスタチンアナログの構造とわずかに異なることが理解されるだろう。
例えば、アミン(NH)基を含むコンプスタチンアナログ分子(NH−Rと表される)は、カルボン酸(COOH)を含む部分(R−(C=O)OHと表される)と反応することにより、式R−(C==O)−NH−Rを有する結合体を形成し得、ここで、このコンプスタチンアナログ中に存在する水素の1つは、存在しなくなり、新しい共有結合(C−N)が形成される。従って、用語「コンプスタチンアナログ部分」には、本明細書中に記載されるようなコンプスタチンアナログの正確な式を有する分子ならびにコンプスタチンアナログの官能基が、第2の官能基と反応する分子構造(その反応によって、代表的には、その反応および新しい共有結合の形成の前にコンプスタチンアナログ分子中に存在した少なくとも1つの原子または原子群の喪失を伴う)が含まれる。その新しい共有結合は、コンプスタチンアナログから失われる原子の1つに以前付着していた原子と、コンプスタチンアナログが付着するようになる原子との間に形成される。
【0176】
上記コンプスタチンアナログ部分は、同一であり得るか、または異なり得る。本発明のある特定の実施形態において、多価化合物は、単一のコンプスタチンアナログ部分の複数の実物または複製物を含む。本発明の他の実施形態において、多価化合物は、2個以上の(two of more)同一でないコンプスタチンアナログ部分、例えば、3、4、5個またはそれ以上の異なるコンプスタチンアナログ部分、の各々の1つ以上の実物を含む。本発明のある特定の実施形態において、コンプスタチンアナログ部分の数(「n」)は、2〜6である。本発明の他の実施形態において、nは、7〜20である。本発明の他の実施形態において、nは、20〜100である。本発明の他の実施形態において、nは、100〜1,000である。本発明の他の実施形態において、nは、1,000〜10,000である。本発明の他の実施形態において、nは、10,000〜50,000である。本発明の他の実施形態において、nは、50,000〜100,000である。本発明の他の実施形態において、nは、100,000〜1,000,000である。
【0177】
上記コンプスタチンアナログ部分は、重合体の足場に直接付着され得るか、またはコンプスタチンアナログ部分を重合体の足場に接続する連結部分を介して付着され得る。その連結部分は、単一のコンプスタチンアナログ部分および重合体の足場に付着され得る。あるいは、連結部分は、その連結部分が、複数のコンプスタチンアナログ部分を重合体の足場に付着するように、連結部分に結合される複数のコンプスタチンアナログ部分を有し得る。
【0178】
1つの実施形態において、上記コンプスタチンアナログは、第1級アミンまたは第2級アミンを含む側鎖を有するアミノ酸(例えば、Lys残基)を含む。例えば、Lys残基またはLys残基を含む配列が、コンプスタチンアナログのC末端に付加される。1つの実施形態において、Lys残基は、剛性または可撓性のスペーサーによってコンプスタチンアナログの環状部から分断される。そのスペーサーは、例えば、置換されているか、もしくは置換されていない、飽和または不飽和のアルキル鎖であり得る。そのアルキル鎖の長さは、例えば、2〜20個の炭素原子であり得る。他の実施形態において、そのスペーサーは、ペプチドである。そのペプチドスペーサーは、例えば、1〜20アミノ酸長、例えば、4〜20アミノ酸長であり得る。適当なスペーサーは、複数のGly残基、Ser残基またはその両方を含むか、またはそれらからなる。
【0179】
種々の重合体の骨格または足場のいずれかが使用され得る。例えば、その重合体の骨格または足場は、ポリアミド、多糖、ポリ無水物、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸化された(polymethacrylated)、ポリペプチド、ポリエチレンオキシドまたはデンドリマーであり得る。適当な方法および重合体の骨格は、例えば、WO98/46270(PCT/US98/07171)またはWO98/47002(PCT/US98/06963)に記載されている。1つの実施形態において、その重合体の骨格または足場は、複数の反応性官能基(例えば、カルボン酸、無水物またはスクシンイミド基)を含む。その重合体の骨格または足場は、コンプスタチンアナログと反応する。1つの実施形態において、コンプスタチンアナログは、重合体の骨格上の適切な基と反応する多くの様々な反応性官能基(例えば、カルボン酸、無水物またはスクシンイミド基)のいずれかを含む。あるいは、互いに結合して、重合体の骨格または足場を形成し得るモノマー単位は、まずコンプスタチンアナログと反応し、そして生じたモノマーが重合される。
別の実施形態において、短い鎖が、予め重合され、官能性をもたされ、次いで、異なる組成の短鎖の混合物が、より長いポリマーに構築される。薬学的組成物および送達ビヒクルおよび方法。
【0180】
コンプスタチンアナログもしくはコンプスタチン模倣物または上に記載した化合物のいずれかの適当な調製物、例えば、実質的に純粋な調製物を、薬学的に許容可能なキャリア、希釈剤、溶媒などと併せ、適切な薬学的組成物が生成され得る。そのような薬学的組成物は、本発明の1つの局面である。本発明は、さらに、(i)細胞または非細胞性分子実体の表面上または表面に存在する成分に結合する部分に連結されたコンプスタチンアナログ;および(ii)薬学的に許容可能なキャリアまたはビヒクルを含む薬学的に許容可能な組成物を提供する。上記部分は、抗体またはリガンドであり得る。上記成分は、マーカー(例えば、RPEまたは内皮細胞に対する細胞タイプ特異的マーカー)、ドルーゼン構成物などであり得る。
【0181】
本発明のある特定の実施形態において、薬学的組成物は、被験体への投与後に、眼において新生血管形成を検出可能な程度で阻害する。換言すれば、化合物の投与によって、この組成物が存在しないときに予想されるレベルに対して新生血管形成は、測定可能な程度で減少される。本発明のある特定の実施形態において、薬学的組成物は、被験体への投与後に、眼における地図状萎縮および/またはドルーゼン形成の発症または進行を検出可能な程度で阻害する。換言すれば、化合物の投与によって、組成物が存在しないときに予想されるレベルに対して地図状萎縮および/またはドルーゼン形成の発症または進行は、測定可能な程度で減少される。ある特定の実施形態において、組成物は、上記疾患(例えば、ARMDの滲出タイプ)に関連して網膜の厚さが薄くなること(例えば、OCTによって測定される)を阻害する。本発明のある特定の実施形態において、薬学的組成物は、被験体への投与後に眼の視力喪失を検出可能な程度で阻害する。換言すれば、化合物の投与によって、組成物が存在しないときに予想されるレベルに対して視力の喪失は、測定可能な程度で低減される。本発明のある特定の実施形態において、薬学的組成物は、被験体への投与後に、眼における炎症を検出可能な程度で阻害する。換言すれば、化合物の投与によって、組成物が存在しないときに予想されるレベルに対して炎症は、測定可能な程度で減少される。本発明の薬学的組成物が、被験体に投与されるとき、好ましくは、施される処置または予防に対して上記疾患または状態を処置または予防するのに十分な量が一度に投与されると理解されるべきである。有用な薬学的組成物は、上述の有益な効果の1つ以上を提供し得る。
【0182】
コンプスタチンまたはその補体阻害アナログの薬学的に許容可能な誘導体(例えば、プロドラッグ)を含む薬学的に許容可能な組成物は、本発明においてさらに有用であり、この薬学的に許容可能な誘導体とは、レシピエントに投与された時に、発明の化合物またはその阻害的に活性な代謝産物もしくは残基を直接または間接的に提供することができる、本発明の化合物の任意の無毒性の塩、エステル、エステルの塩または他の誘導体のことを意味する。本明細書中で使用されるとき、用語「阻害的に活性な代謝産物またはその残基」とは、代謝産物またはその残基もまた、補体を検出可能な程度で阻害する(例えば、補体活性を阻害する)ことができることを意味する。
【0183】
本発明の様々な実施形態において、有効量の薬学的組成物が、任意の適当な投与経路によって被験体に投与され、その経路としては、静脈内、筋肉内、吸入、カテーテル、眼内、経口的、直腸、皮内、皮膚への塗布、点眼などが挙げられるがこれらに限定されない。
本発明の組成物を使用して、眼の状態を処置するとき、眼への投与または眼の近傍への投与が、好ましいことがあることが理解されるだろう。本発明のある特定の実施形態において、静脈内経路が使用される。例えば、コンプスタチンアナログは、固体埋没物中またはマイクロ粒子処方物もしくはナノ粒子処方物中に与薬され得、それによって、コンプスタチンアナログが血流におけるクリアランスおよび/または分解から保護される。
【0184】
本発明の組成物は、任意の利用可能な経路による送達用に処方され得、その経路としては、非経口、経口、肺への吸入、経鼻、気管支、眼、経皮的(局所的)、経粘膜的、直腸および膣の経路が挙げられるがこれらに限定されない。用語「非経口」には、本明細書中で使用されるとき、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、鞘内、肝臓内、病巣内および頭蓋内への注射または点滴の技術が含まれる。好ましくは、本発明の組成物は、眼への局所的または静脈内のいずれかに投与される。
【0185】
用語「薬学的に許容可能なキャリアまたはビヒクル」とは、一緒に処方される化合物の薬理学的活性を無くさない無毒性のキャリアまたはビヒクルのことをいう。本発明の組成物において使用され得る薬学的に許容可能なキャリアまたはビヒクルとしては、水、生理食塩水などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0186】
本発明の組成物は、所望の処方物に適切な他の成分、例えば、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、塩または電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドケイ酸、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ろう、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂を含み得る。薬学的投与に適合した、溶媒、分散媒、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤ならびに吸収遅延剤などが含まれ得る。補充性の活性な化合物、例えば、処置される疾患もしくは臨床的状態に対して独立して活性な化合物またはある化合物の活性を増大させる化合物もまた、組成物に組み込まれ得る。
【0187】
本発明の化合物の薬学的に許容可能な塩としては、薬学的に許容可能な無機酸および有機酸ならびに無機塩基および有機塩基から誘導される塩が挙げられる。適当な酸塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、ショウノウスルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パルモ酸塩(palmoate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩およびウンデカン酸塩が挙げられる。シュウ酸などの他の酸は、それ自体は薬学的に許容可能でないが、本発明の化合物およびその薬学的に許容可能な酸付加塩を得る際に中間体として有用な塩の調製に使用され得る。
【0188】
適切な塩基から得られる塩としては、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウム塩)、アンモニウム塩およびN(C1−4アルキル)4塩が挙げられる。本発明はまた、本明細書中に開示される化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化も構想する。そのような四級化によって、水溶性もしくは油溶性または水分散性もしくは油分散性の生成物が、得られることがある。
【0189】
薬学的組成物は、意図される投与経路に適合するように処方される。非経口(例えば、静脈内)、筋肉内、皮内または皮下への適用のために使用される溶液または懸濁液は、以下の成分:滅菌された希釈剤(例えば、注射用水、食塩水溶液、ジメチルスルホキシド(DMSO)、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒);抗菌剤(例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン);酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸);緩衝物(例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩および張度を調整するための薬剤(例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース))を含み得る。pHは、酸または塩基(例えば、塩酸または水酸化ナトリウム)を用いて調整され得る。非経口調製物は、ガラスまたはプラスチックから製造された、アンプル、使い捨て注射器または反復用量バイアルに封入され得る。
【0190】
注射可能な使用に適した薬学的組成物としては、代表的には、滅菌された水溶液(水溶性である場合)または水分散液および滅菌された注射可能な溶液または分散液の即時調製のための滅菌された粉末が挙げられる。静脈内投与について、適当なキャリアとしては、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF,Parsippany,NJ)、リン酸緩衝食塩水(PBS)またはリンガー溶液が挙げられる。
【0191】
滅菌された固定油が、溶媒または懸濁溶媒として都合良く使用される。この目的で、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無菌性の固定油が、使用され得る。
脂肪酸(例えば、オレイン酸およびそのグリセリド誘導体)は、天然の薬学的に許容可能な油(例えば、オリーブ油またはひまし油)、特にそれらのポリオキシエチル化バージョンであるとき、注射可能物の調製に有用である。これらの油溶液または油懸濁液はまた、長鎖アルコール希釈剤または分散剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、またはエマルジョンおよび懸濁液を含む薬学的に許容可能な剤形の処方物中に通常使用される類似の分散剤)を含み得る。他の通常使用される界面活性剤(例えば、Tweens、Spans)および薬学的に許容可能な固体、液体または他の剤形の製造に通常使用される、他の乳化剤またはバイオアベイラビリティ賦活薬もまた、処方物の目的で使用され得る。
【0192】
一般に、組成物は、可能であれば滅菌されるべきであり、容易に注射可能であるように流体であるべきである。
【0193】
好ましい薬学的処方物は、製造および貯蔵の条件下で安定であり、微生物(例えば、細菌および真菌)の汚染作用から保護され得る。一般に、関連するキャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適当な混合物を含む、溶媒または分散媒であり得る。適正な流動性は、例えば、レシチンなどの被覆剤の使用によって、分散物の場合には求められる粒径の維持によって、そして界面活性剤の使用によって、維持され得る。
微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成され得る。多くの場合において、組成物中に、等張剤、例えば、糖、多価アルコール(例えば、マンニトール(manitol)、ソルビトール)、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能な組成物の持効性吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に含ませることによってもたらされ得る。経口組成物の持効性吸収は、カプセル化をはじめとした様々な手段によって達成され得る。
【0194】
滅菌された注射可能な溶液は、上で列挙された成分の1つまたは組み合わせとともに適切な溶媒中に必要な量の活性な化合物を組み込むことによって調製され得、必要であれば、その後、濾過滅菌され得る。好ましくは、注射用の溶液は、エンドトキシンを含まない。一般に、分散物は、基本的な分散媒および上で列挙されたものから必要とされる他の成分を含む滅菌されたビヒクルに活性な化合物を組み込むことによって調製される。滅菌された注射可能な溶液を調製するための滅菌された粉末の場合では、調製の好ましい方法は、予め滅菌され濾過されたその溶液から、活性成分+任意のさらなる所望の成分の粉末をもたらす真空乾燥および凍結乾燥である。
【0195】
経口組成物は、一般に、不活性な希釈剤または食用のキャリアを含む。経口の治療的投与の目的で、活性な化合物は、賦形剤とともに組み込まれ得、錠剤、トローチ剤またはカプセル、例えば、ゼラチンカプセルの形態においてで使用され得る。経口組成物はまた、うがい薬として使用するための流体のキャリアを用いて調製され得る。薬学的に適合可能な結合剤および/または補助材料が、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸剤、カプセル、トローチ剤などは、以下の成分または類似の性質の化合物のいずれか:結合剤(例えば、微結晶性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチン);賦形剤(例えば、デンプンまたはラクトース、崩壊剤(例えば、アルギン酸、Primogelまたはトウモロコシデンプン);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはSterotes);滑沢剤(glidant)(例えば、コロイド状二酸化ケイ素);甘味剤(例えば、スクロースまたはサッカリン);または着香剤(例えば、ペパーミント、サリチル酸メチルまたはオレンジ香味料)を含み得る。経口送達用の処方物は、消化管内での安定性を増大させ、そして/または吸収を促進する薬剤を有利に組み込み得る。
【0196】
吸入による投与については、本発明の組成物は、好ましくは、適当な噴霧剤、例えば、二酸化炭素などの気体を含む加圧容器もしくはディスペンサーまたは噴霧器からのエアロゾルスプレーの形態で送達される。液体または乾燥のエアロゾル(例えば、乾燥粉末、大多孔性粒子など)が使用され得る。本発明はまた、点鼻薬を用いた組成物の送達も企図する。
【0197】
局所的適用については、薬学的に許容可能な組成物は、1つ以上のキャリア中に懸濁または溶解されている活性な成分を含む適当な軟膏中に処方され得る。本発明の化合物の局所的投与用のキャリアとしては、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ろうおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、薬学的に許容可能な組成物は、1つ以上の薬学的に許容可能なキャリア中に懸濁または溶解されている活性な成分を含む、適当なローション剤またはクリーム剤中に処方され得る。適当なキャリアとしては、鉱油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2_オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。
【0198】
眼への局所送達については、薬学的に許容可能な組成物は、保存剤(例えば、塩化ベンジルアルコニウム(benzylalkonium chloride))を含んでいるか、または含んでいない、等張性でpH調整されて滅菌された食塩水または水中に処方され得る。あるいは、眼科用の用途については、薬学的に許容可能な組成物は、ワセリンなどの軟膏中に処方され得るか、または点眼剤として処方され得る。
【0199】
眼への局所投与の方法としては、例えば、脈絡膜への注射、経強膜注射または強膜パッチの放置、選択的動脈カテーテル法、点眼または眼軟膏、浸透圧ポンプによる、経網膜注射、結膜下(subconjunctival bulbar)注射、硝子体内注射、脈絡膜上注射、テノン嚢下(subtenon)注射、強膜ポケット(scleral pocket)への注射および強膜切開(scleral cutdown)の注射などを含む眼内投与が挙げられる。上記薬剤はまた、代替的に血管内(例えば、静脈内(IV)または動脈内)に投与され得る。脈絡膜の注射および強膜パッチでは、臨床医は、痛み止めおよび眼筋麻痺剤を含む適切な麻酔を開始した後、眼への局所的なアプローチを使用する。治療的化合物を含む針を被験体の脈絡膜または強膜に向け、滅菌された条件下で挿入する。その針が、適正な位置に来たときに、その化合物を脈絡膜または強膜のいずれかまたはその両方に注入する。これらの方法のいずれかを使用するとき、臨床医は、徐放性または長時間作用性の処方物を選択することができる。従って、この手順は、処置に対する被験体の寛容および応答に応じて、数ヶ月ごとまたは数年ごとに繰り返すだけでよい。
【0200】
黄斑変性症および他の眼内状態の処置のために意図される薬物の眼内投与は、当該分野で周知である。例えば、米国特許第5,632,984号および同第5,770,589号を参照のこと。米国特許第6,378,526号には、網膜を覆う位置での治療的材料または診断的材料の強膜内注射のための方法が提供されており、その方法は、薬剤を眼の後部に送達するための侵襲性が最小となる技術を提供する。
【0201】
本発明のある特定の実施形態において、組成物は、眼の近傍、例えば、眼の後部に近接した位置に送達される。「眼の近傍」とは、眼および眼の付属器が位置している頭蓋内の腔である眼窩内の位置のことをいう。代表的には、組成物は、眼内のそれらが意図される標的の近くに、例えば、眼の後部、または強膜の外表面にすぐ隣接した位置に存在する強膜の一部の近く(強膜の一部の数ミリメートル以内)に、送達され得る。
【0202】
制御放出をもたらすための多くの重合体の送達ビヒクルは、眼球の状況において使用されており、本発明の組成物を投与するために使用され得る。様々なポリマー、例えば、生分解性であり得る生体適合性ポリマーが、使用され得る。例えば、米国特許第6,692,759号には、眼において治療薬の制御放出をもたらすための埋没可能なデバイスを作製するための方法が記載されている。治療薬の眼球の投与のための他の有用なポリマーおよび送達系が、報告されている。活性な薬剤は、ポリマー分解物として放出され得る。薬物送達のために使用されているポリマーとしては、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、ポリ無水物、エチレン酢酸ビニル、ポリグリコール酸、キトサン、ポリオルトエステル、ポリエーテル、ポリ乳酸およびポリ(ベータアミノエステル)が挙げられるが、これらに限定されない。ペプチド、タンパク質(例えば、コラーゲンおよびアルブミン)およびデンドリマー(例えば、PAMAMデンドリマー)もまた使用されている。これらのいずれかが、本発明の様々な実施形態において使用され得る。
【0203】
ポリ(オルトエステル)は、眼へ導入されており、眼球の徐放性の薬物送達に好ましい特性が証明されている(Einmahl,S.,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,43(5),2002)。ポリ乳酸粒子は、そのような粒子の懸濁液の硝子体内注射の後、薬剤を網膜およびRPEに標的化するために使用されている(Bourges,J−Lら、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,44(8),2003)。眼の後部または前部への導入に適した巨視的埋没可能デバイスは、本明細書中において眼球埋没物と呼ばれる(Jaffe,G.,Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.,41(11),2000;Jaffe,G.,Ophthalmology)。本発明は、例えば、ARMDなどの眼の障害を処置するのに有効な量のコンプスタチンアナログを含む眼球埋没物を提供する。そのようなデバイスは、上記薬剤を含む巨視的埋没物であり得るか、または上記薬剤とともに含浸されているか、または上記薬剤を被包している複数のナノ粒子またはマイクロ粒子を含み得る。1つの実施形態において、眼球埋没物は、当該分野で公知の任意の眼球埋没物である。代表的な埋没物およびそれを製造するための方法は、例えば、01/19/06に出願の“Injectable Combination Therapy for Eye Disorders”と題された仮特許出願(米国特許出願番号60/760,974)に記載されている。当該分野で公知の他の埋没物もまた、使用され得る。ある特定の実施形態において、その埋没物は、100〜2000μgのコンプスタチンアナログ、例えば、100〜1000μg、例えば、100〜500μgのコンプスタチンアナログを含む。
【0204】
マイクロ粒子およびナノ粒子を作製するための方法は、当該分野で公知である。一般に、マイクロ粒子は、500ミクロン以下の直径、例えば、50〜500ミクロン、20〜50ミクロン、1〜20ミクロン、1〜10ミクロンの直径を有し、ナノ粒子は、1ミクロン未満の直径を有する。好ましくは、上記デバイスは、硝子体液によって満たされている空間に埋没される。眼球埋没物は、重合体マトリックスを含み得る。本発明はまた、眼の近傍、例えば、眼に近接した位置における導入に適した巨視的埋没可能なデバイスである眼周囲の埋没物も提供する。ある特定の実施形態において、眼周囲の埋没物は、上に記載したものと類似の材料から作製される。
【0205】
コンプスタチンまたはその補体阻害アナログを発現する細胞が、眼に埋没され得る。米国特許第6,436,427号には、生物学的に活性な分子の細胞源を含む生体適合性カプセルを埋没することによって生物学的に活性な分子を眼に送達するための方法が提供されている。
【0206】
本発明の薬学的に許容可能な組成物はまた、経鼻エアロゾルまたは吸入によって投与され得る。そのような組成物は、薬学的処方物の当該分野で周知の技術に従って調製され、そしてベンジルアルコールもしくは他の適当な保存剤、バイオアベイラビリティを高める吸収促進剤、フルオロカーボン、および/あるいは他の従来の可溶化剤または分散剤を使用している食塩水中の溶液として調製され得る。
【0207】
全身投与もまた、経粘膜的手段または経皮的手段によって行われ得る。経粘膜投与または経皮的投与については、透過されるべき障壁に適した浸透剤が、処方物において使用される。そのような浸透剤は、一般に当該分野で公知であり、それらとしては、例えば、経粘膜投与用に、界面活性剤、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、点鼻薬または坐剤を使用することによって、達成され得る。経皮的投与については、活性な化合物は、一般に当該分野で公知であるように、軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲルまたはクリーム剤中に処方される。
【0208】
化合物はまた、坐剤(例えば、従来の坐剤基剤(例えば、カカオバターおよび他のグリセリド)とともに)または直腸送達用の停留浣腸の形態で調製され得る。
【0209】
上に記載した薬剤に加えて、本発明のある特定の実施形態において、活性な化合物は、化合物を身体からの急速な除去から保護するキャリアとともに調製される(例えば、埋没物およびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出処方物)。生分解性で生体適合性のポリマーが、使用され得、それらとしては、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリエーテルおよびポリ乳酸である。そのような処方物を調製するための方法は、当業者には明らかであろう。上記材料のいくつかはまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手できる。リポソーマル(Liposomal)懸濁液もまた、薬学的に許容可能なキャリアとして使用され得る。これらは、当業者に公知の方法に従って、例えば、米国特許第4,522,811号および本明細書中に列挙される他の参考文献に記載されているような方法に従って、調製され得る。標的化されたリポソーム(例えば、抗体標的化リポソーム)およびペグ化されたリポソームを含むリポソームが、報告されている(Hansen CBら、Biochim Biophys Acta.1239(2):133−44,1995;Torchilin VPら、Biochim Biophys Acta,1511(2):397−411,2001;Ishida Tら、FEBS Lett.460(1):129−33,1999)。制御放出処方物、埋没物などの調製のために選択される材料および方法は、その化合物の活性を保持するようにあるべきであることが、当業者に理解されるだろう。例えば、変性および活性の喪失に導き得るポリペプチドの過剰な加熱を避けることが、望ましい場合がある。
【0210】
本発明はまた、フラグメントまたは改変体の発現を指示するのに十分な、発現調節シグナル、例えば、調節エレメント(例えば、プロモーター、ターミネーター、ポリアデニル化シグナルなど)と作動可能に関連してコンプスタチンまたはその補体阻害アナログをコードする核酸が、被験体に導入されるという、遺伝子治療を包含する。その核酸は、コンプスタチンまたはその補体阻害アナログを含む融合タンパク質をコードしてもよい。核酸は、多くの方法のいずれかによって被験体に導入され得る。例えば、核酸治療薬の薬学的調製物は、全身的に、例えば、静脈内注射によって導入され得る。特定の標的細胞におけるポリペプチドの発現は、そのベクターによってもたらされるトランスフェクションの特異性によって生じ得る、すなわち、遺伝子の発現を調節する転写制御配列またはその組み合わせに起因する細胞タイプまたは組織タイプの発現によって生じ得る。あるいは、核酸の最初の送達は、一層限定され得る。例えば、上記ベクターは、眼球投与について上で記載した方法のいずれかを使用して眼に局所的に導入され得る。
【0211】
本発明の核酸治療薬を含む薬学的組成物は、許容可能な希釈剤中に含まれる核酸もしくは遺伝子治療ベクターから本質的になり得るか、あるいは、核酸もしくは遺伝子治療ベクターが、被包されているか、または包埋されている緩効性マトリクスを含み得る。その遺伝子治療ベクターは、プラスミド、ウイルスまたは他のベクターであり得る。あるいは、その薬学的組成物は、治療的な核酸またはポリペプチド(例えば、コンプスタチンまたはその補体阻害アナログ)を産生する1つ以上の細胞を含み得る。好ましくは、そのような細胞は、上記ペプチドを細胞外の空間または血流に分泌する。
【0212】
遺伝子治療プロトコールに使用されているウイルスベクターとしては、レトロウイルス、レンチウイルス、他のRNAウイルス(例えば、ポリオウイルスまたはシンドビスウイルス)、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、SV40、ワクシニアおよび他のDNAウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。複製欠損のマウスレトロウイルスベクターまたはマウスレンチウイルスベクターは、遺伝子導入ベクターとして広く利用されている。遺伝子治療の化学的方法は、融合性脂質ベシクル(例えば、膜融合のためのリポソームまたは他のベシクル)の使用を介したキャリア媒介性遺伝子導入を含む。目的の核酸を有するキャリアは、眼または体液もしくは血流に都合よく導入され得る。そのキャリアを、体内の標的器官または標的組織に部位特異的にすることができる。例えば、細胞または器官に特異的なDNA保持リポソームが、開発され得、そして、外来性核酸が、それらの特異的細胞によって吸収されるリポソームによって運搬され得る。
キャリア媒介性遺伝子導入はまた、リポソームではない脂質ベースの化合物の使用も含み得る。例えば、リポフェクチンおよびサイトフェクチン(cytofectin)は、負に帯電した核酸に結合し、細胞膜を通過して核酸を輸送し得る複合体を形成する、陽イオン含有脂質ベース化合物である。陽イオン性ポリマーは、自発的にDNAなどの核酸に結合し、そしてナノ粒子に凝縮することが知られている。例えば、天然に存在するタンパク質、ペプチドまたはそれらの誘導体が使用されている。合成陽イオン性ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリリジン(PLL)など)もまた、DNAを凝縮することが知られており、有用な送達ビヒクルである。デンドリマーもまた使用され得る。
【0213】
有用なポリマーの多くは、負に帯電したDNAホスフェートとのイオン性相互作用を可能にさせる荷電性のアミノ基と、分解性の領域(例えば、加水分解性のエステル結合)との両方を含む。これらの例としては、ポリ(アルファ−(4−アミノブチル)−L−グリコール酸)、ネットワークポリ(アミノエステル)およびポリ(ベータ−アミノエステル)が挙げられる。これらの複合体薬剤は、分解、例えば、ヌクレアーゼ、血清成分などによる分解からDNAを保護し得、そして細胞の疎水性膜(例えば、細胞質膜、リソソーム膜、エンドソーム膜、核膜)の通過を容易にし得る、一層負に帯電した表面をもたらし得る。ある特定の複合体薬剤は、細胞内の輸送事象(例えば、エンドソームからの漏出、細胞質内での輸送および核への移行)を促進し、核酸から解離し得る。そのような薬剤は、エンドソーム内で「プロトンスポンジ」として作用し得ることが提案されている。
【0214】
代表的には、投与の簡便さのために投薬量単位の形および投薬量が統一された状態で経口組成物または非経口組成物を処方することが好都合である。投薬量単位の形とは、本明細書中で使用されるとき、処置される被験体に対する単位投薬量として適した物理的に分離した単位のことをいう;各単位は、必要な薬学的キャリアと共同して所望の治療的効果をもたらすように計算された活性な化合物の所定の量を含む。
【0215】
そのような化合物の毒性および治療的な効力は、例えば、LD50(その集団の50%に対して致死的な用量)およびED50(その集団の50%において治療的に有効な用量)を測定するために、細胞培養物または実験動物において、標準的な薬学的手順によって決定され得る。毒性と治療的効果との用量比は、治療的な指標であり、それは、LD50/ED50比として表され得る。高い治療的指標を示す化合物が、好ましい。毒性の副作用を示す化合物が使用され得るが、感染していない細胞への潜在的な損傷を最小限にし、それにより、副作用を低減させるために、治療は、そのような化合物を罹患組織の部位に標的化する送達系を設定するようになされなければならない。
【0216】
細胞培養アッセイおよび動物実験から得られるデータは、ヒトにおいて使用するための一連の投薬量を処方する際に使用され得る。そのような化合物の投薬量は、好ましくは、毒性がほとんどないか、またはまったくないED50を含む一連の血液循環濃度内におさめられる。その投薬量は、使用される剤形および利用される投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。本発明の方法において使用される任意の化合物に対して、治療的に有効な用量は、まずは、細胞培養アッセイから見積もられ得る。用量は、細胞培養物において測定されたIC50(すなわち、症状の最大半分の阻害を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度の範囲を達成するように、動物モデルにおいて処方され得る。そのような情報を用いて、ヒトにおける有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィによって測定され得る。
【0217】
薬学的組成物の治療有効量は、代表的には、約0.001〜100mg/kg体重、好ましくは、約0.01〜25mg/kg体重、より好ましくは、約0.1〜20mg/kg体重およびなおもより好ましくは、約1〜10mg/kg体重、2〜9mg/kg体重、3〜8mg/kg体重、4〜7mg/kg体重または5〜6mg/kg体重の範囲である。薬学的組成物は、様々な間隔で、そして必要であれば様々な期間にわたって、例えば、約1〜10週間、2〜8週間、約3〜7週間、約4、5または6週間などにわたって、1日あたり複数回、毎日、1日おき、1週間に1回で投与され得る。ある特定の因子が、被験体を効果的に処置するのに必要な投薬の量およびタイミングに影響を及ぼし得ることを当業者は理解するだろう。それらの因子としては、疾患または障害の重症度、以前の処置、被験体の全身の健康状態および/または年齢ならびに他の疾患の存在が挙げられるがこれらに限定されない。一般に、本発明の組成物による被験体の処置は、単一の処置を含み得るか、または、多くの場合において、一連の処置を含み得る。
【0218】
代表的な用量としては、本発明の化合物のミリグラムまたはマイクログラムの量/被験体またはサンプルの重量の1キログラム(例えば、約1マイクログラム/キログラム〜約500ミリグラム/キログラム、約100マイクログラム/キログラム〜約5ミリグラム/キログラムまたは約1マイクログラム/キログラム〜約50マイクログラム/キログラム)が挙げられる。局所投与(例えば、鼻腔内投与)に対しては、これらよりも一層少ない用量が使用され得る。適切な用量は、薬剤の作用強度に左右され、必要に応じて、例えば、予め選択された所望の応答が達成されるまで用量を増やして投与することによって、特定のレシピエントにあわせて調整され得ることが、さらに理解される。任意の特定の被験体に対する特定の用量レベルは、種々の因子に左右され得ることが理解され、その因子としては、使用される特定の化合物の活性、被験体の年齢、体重、全身の健康状態、性別および食事、投与の時間、投与の経路、排出の速度、任意の薬物の組み合わせならびに表徴の程度または調節されるべき活性が挙げられる。
【0219】
本発明は、本発明の2つ以上の分子種を含む薬学的組成物をさらに提供し、その各々は、非細胞性分子実体上の細胞マーカーに結合する部分を含み、ここで、各分子種内のその結合部分は、異なる細胞マーカーに結合する。本発明は、本発明の1つ以上の分子種および追加の活性剤を含む薬学的組成物をさらに提供する。その追加の活性剤は、黄斑変性症に関連する状態、糖尿病性網膜症またはCNVの処置に有効な薬剤であり得る。本発明のある特定の実施形態において、その追加の活性剤は、血管新生インヒビター、抗炎症性薬剤、抗血管新生ステロイドおよび成長因子からなる群から選択される。血管新生インヒビターは、以下でさらに記載される。上記の追加の活性剤は、必ずしも、黄斑変性症に関連する状態、糖尿病性網膜症またはCNVの処置に特異的に有効でない抗生剤または抗炎症性剤であり得る。
【0220】
(血管新生インヒビター)
本発明のある特定の実施形態では、1つ以上の血管新生インヒビターを使用する。血管新生インヒビターは、その主な作用メカニズムに基づいていくつかの群に分類され得る。
1つの群は、標的細胞(例えば、内皮細胞)を損傷もしくは死滅させるか、または標的細胞の損傷もしくは死滅をもたらす免疫媒介性応答を引き起こす細胞傷害剤を含む。第2の群は、内皮細胞を実質的に損傷または死滅させないが、その代わりにそれらの増殖、遊走、毛細血管形成または血管新生に関連する他のプロセスを阻害する薬剤を含む。これらの群のいずれかまたは両方に入る血管新生インヒビターが使用され得る。
【0221】
血管新生インヒビターとしては、Macugen(登録商標)または別のVEGF核酸リガンド;Lucentis(登録商標)、Avastin(登録商標)または別の抗VEGF抗体;コンブレタスタチンまたはその誘導体もしくはプロドラッグ(例えば、コンブレタスタチンA4プロドラッグ(CA4P);VEGF−Trap;EVIZONTM(乳酸スクアラミン);AG−013958(Pfizer,Inc.);JSM6427(Jerini AG);1つ以上のVEGFアイソフォーム(例えば、VEGF165)の発現を阻害する低分子干渉RNA(siRNA);およびVEGFレセプター(例えば、VEGFR1)の発現を阻害するsiRNAが挙げられるが、これらに限定されない。他の血管新生インヒビターとしては、様々な内因性ペプチドまたは合成ペプチド(例えば、アンジオスタチン、アレステン、カンスタチン(canstatin)、コンブスタチン(combstatin)、エンドスタチン、トロンボスポンジンおよびタムスタチン)が挙げられる。他の抗血管新生分子としては、サリドマイドおよびその抗血管新生誘導体(例えば、iMiD(Bamias A,Dimopoulos MA.Eur J Intern Med.14(8):459−469,2003;Bartlett JB,Dredge K,Dalgleish AG.Nat Rev Cancer.4(4):314−22,2004))が挙げられる。β2−糖タンパク質1(β2−GP1)は、本発明において特定の目的の血管新生インヒビターである。
【0222】
Macugen(Pfizer,Eyetech)は、VEGF165に結合し、それを阻害するVEGF核酸リガンド(アプタマーともよばれる)である(米国特許第6,051,698号)。Lucentis(Genentech)は、血管内皮成長因子A(VEGF−A)に結合し、それを阻害するヒト化抗体フラグメントである(Gaudreault,J.ら、Invest Ophthalmol.Vis.Sci.46,726−733(2005)およびこの論文中の参考文献)。Avastin(Genentech)は、VEGFにも結合する完全長ヒト化抗体である。Cand5(Acuity Pharmaceuticals,Philadelphia,PA)は、VEGFの発現を阻害するように設計された低分子干渉RNA(siRNA)である。sima−027(Sima Therapeutics;Boulder CO)は、VEGFR1として公知であるVEGFレセプターの発現を阻害するように設計され、化学修飾されたsiRNAである。
(コンプスタチンまたはその補体阻害アナログおよびゲル形成材料を含む組成物)
本発明は、ゲル形成材料および治療薬を含む種々の組成物を提供し、ここで、前記治療薬は、黄斑変性症、CNVまたはその両方を特徴とする網膜の障害を処置するために有効である。本発明の様々な実施形態において、治療薬は、コンプスタチンアナログである。
上記組成物は、網膜の障害を処置するために有効な1つ以上のさらなる治療薬を含み得る。適当な薬剤は、本明細書中の他の箇所に記載されている。ある特定の実施形態において、ゲル形成材料は、可溶性であり、例えば、水性の溶媒に可溶性である。
【0223】
本発明は、可溶性コラーゲンを含むゲル形成組成物が、眼の後部への治療薬(例えば、ペプチドまたはペプチド模倣物)の送達に有用であるという認識を包含する。上記コラーゲンは、第一に可溶性であり、低粘度を有するが、適切な条件下、例えば、哺乳動物の被験体への投与時に遭遇する条件下において、ゲルを迅速に形成することができる溶液を形成する。それゆえ、本発明は、眼の障害を処置するためにペプチドまたはペプチド模倣物を眼の後部に送達する系を提供する。その系は、その高分子が、眼の後部、例えば、網膜、RPE、網膜下腔、ブルッフ膜および/または脈絡毛細管板における作用部位に分散し得るように、十分な量で放出されるのを可能にしながら、同時に持続性の送達を提供するのに十分な濃度でそのような分子を局在化させるように設計される。さらに、上記コラーゲンゲルは、分解、例えば、内在性プロテアーゼによる分解からペプチドまたはペプチド模倣物を保護し得る。
【0224】
ペプチドおよびペプチド模倣物(例えば、コンプスタチンおよびそのアナログ)を送達するためにそれらを使用することに加えて、黄斑変性症、CNV、RNV、眼球の炎症または前述のものの任意の組み合わせを特徴とする眼の障害の処置に有用な種々の生物学的高分子が、本発明のコラーゲン組成物を使用して送達され得る。本明細書中に述べられている薬剤のいずれか、例えば、血管新生インヒビター(例えば、Macugen、Lucentisなど)は、単独で、または1つ以上の他の薬剤と組み合わせて送達され得る。
上記コラーゲン組成物はまた、生物学的高分子ではない薬剤を送達するためにも使用され得る。それゆえ、本発明は、(i)黄斑変性症、CNV、RNV、眼球の炎症または前述のものの任意の組み合わせを特徴とする眼の障害の処置に有効な治療薬;および(ii)可溶性ゲル形成材料を含む組成物を提供する。本発明のある特定の実施形態において、上記薬剤は、補体インヒビター、例えば、ウイルスの補体制御タンパク質(VCCP)またはウイルスの補体阻害タンパク質(VCIP)である。上で述べたように、VCCPおよびVCIPは、2005年10月8日出願の、VIRAL COMPLEMENT CONTROL PROTEINS FOR EYE DISORDERSと題された同時係属中の米国特許出願に記載されている。VCCPとしては、ワクシニア補体制御タンパク質(VCP)、補体タンパク質の痘瘡インヒビター(SPICE)ならびにその補体阻害フラグメントおよび改変体、例えば、少なくとも4つの短いコンセンサスリピートを含むフラグメントが挙げられるが、これらに限定されない。上記補体インヒビターは、ポリペプチドまたはペプチドであり得るが、必ずしもそうである必要はない。上記組成物は、体内に導入された後、例えば、生理学的流体と接触したときに、ゲルを形成する。上記組成物はまた、リン酸緩衝食塩水などの流体または適切なイオンを含む他の流体と接触したときにゲルを形成し得る。従って、上記組成物は、それがゲルを形成する適切な位置、例えば、眼の後部に近接した位置に注射され得る。あるいは、例えば、所望の形状の鋳型または空洞に溶液を導入し、そしてゲル形成が適当な塩濃度の存在下で生じることを可能にすることによって、予め成形されたゲル埋没物が作製され得る。その塩は、鋳型または空洞にその溶液が導入される前または後に加えられ得る。その鋳型または空洞は、例えば、溶液が導入され得るくぼんだ空間または凹状の陥没を含む任意の構造であり得る。別の実施形態において、薄膜または膜が、治療薬を含むコラーゲン溶液から形成される。
【0225】
ゲルからの薬剤の放出は、任意のメカニズムによって、例えば、ゲルの崩壊の結果としてのゲルからの薬剤の分散によって、または両方によって生じ得る。本発明の1つの局面は、眼の後部における作用部位において有効であるのに十分な濃度でゲルから薬剤を放出することを可能にしながら、所望の期間にわたって持続性の送達を提供するようにゲル内に薬剤を保持するゲルをもたらす可溶性コラーゲンおよびコラーゲン固体の適当な濃度の選択である。
【0226】
本発明のある特定の実施形態に従って、可溶性コラーゲンおよび治療薬を含む溶液は、任意の適当な方法を使用して、例えば、可溶性コラーゲンを含む溶液に治療薬を加えることによって、溶液中で可溶性コラーゲンと治療薬とを混合することによって調製される。
上記組成物は、哺乳動物被験体の眼の適切な位置または眼の近くの適切な位置に(代表的には、眼の後部の外側の範囲および眼の後部に近接した位置に)局所的に送達される。その溶液は、投与部位または投与部位の近くにおいて迅速にゲルを形成する。その治療薬は、ゲル内に包まれている。その治療薬は、ゲルから分散するか、またはゲル分解物として時間を掛けて放出され、それにより、ゲルと直接物理的に接触しているか、または近くに位置する組織および構造への薬剤の持続的な供給がもたらされる。ある特定の実施形態において、上記溶液は、以下でさらに記載されるように、眼の強膜の後ろに投与される。送達は、以下でさらに記載されるように、注射によって(例えば、30ゲージの針などを用いて)、カテーテルなどによって達成され得る。
【0227】
種々の異なるコラーゲン調製物は、本発明において使用され得るが、ただし、そのコラーゲンは、最初は可溶性であり、適切な条件下でゲルを迅速に形成することができる。適当なコラーゲン調製物およびそれらを製造するための方法は、例えば、米国特許第5,492,135号;同第5,861,486号;同第6,197,934号;同第6,204,365号;およびWO00/47130に記載されているが、本発明は、そのような調製物または方法に限定されない。これらのコラーゲンは、可溶性の形態で調製され、生理学的流体または適当なイオン濃度を有する他の流体に曝露されると迅速にゲルを形成する。本発明によれば、眼または眼近傍へのコラーゲン溶液の注入または別の方法による導入によって、おそらく生理学的流体との接触によって誘導されるゲル形成がもたらされる。しかしながら、本発明は、ゲル形成をもたらすメカニズムによって決して限定されないことに注意されたい。さらに、上で述べたように、上記ゲルは、インビトロにおいて形成され得、そして適切な位置、例えば、眼の後部に近接した位置に埋没され得る。
【0228】
可溶性コラーゲン溶液を調製するのに適した1つの方法は、天然起源からコラーゲンを抽出する工程、そのコラーゲンを酸可溶化する工程、およびその可溶化されたコラーゲンを、キレート剤、例えば、金属キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩二水和物(EDTA)を含む溶液に対してpHを上げながら透析する工程を含む。溶液(例えば、キレート剤を含まない脱イオン水)に対する1つ以上の透析工程もまた、行われ得る。中性pHおよび室温において自発的な原線維形成を起こす標準的なコラーゲン溶液とは異なり、本発明において使用するためのコラーゲン溶液は、長期間の貯蔵の間、溶液中に残存し、そして生理学的流体に曝露されたときには迅速にゲル形成を起こす。いずれの理論にも拘束するつもりはないが、上記キレート剤は、1つ以上の陽イオンの濃度を変化させることにより、pHが上昇する際に、別途生じ得る原線維形成を予防し得る。
上記キレート剤は、コラーゲン溶液に対して他の望ましい効果を有し得、本発明のある特定の実施形態において、そのコラーゲン溶液は、キレート剤、例えば、EDTAを含む。
上記キレート剤は、透析後にコラーゲン溶液中に残存し得るか、またはコラーゲン溶液に加えられ得る。上記キレート剤の濃度は、例えば、約0.02M〜約0.05M、例えば、約0.025M〜約0.035Mの範囲であり得る。他のキレート剤もまた使用され得、それらとしては、米国特許第5,861,486号に記載されているものが挙げられるがこれらに限定されない。
【0229】
ある特定の実施形態において、コラーゲン溶液は、1mg/ml〜100mg/ml、例えば、10mg/ml〜70mg/ml、20mg/ml〜50mg/mlの範囲の可溶性コラーゲンの濃度、例えば、30mg/mlなどを有する。本発明のある特定の実施形態において、コラーゲン溶液のpHは、6.0〜8.0、例えば、6.5〜7.5、例えば、7.0である。
【0230】
本発明のある特定の実施形態において、コラーゲン組成物は、線維性コラーゲン固体を含む線維性成分をさらに含む。例えば、ある特定のコラーゲン組成物は、0.5mg/ml〜30mg/mlの線維性コラーゲン固体または1mg/ml〜20mg/mlの線維性コラーゲン固体、例えば、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、8mg/ml、10mg/mlなどの線維性コラーゲン固体を含む。重量/容積の基準に基づくパーセント線維性コラーゲン固体に関して、ある特定のコラーゲン組成物は、0.05〜3%の線維性コラーゲン固体または.1〜2%の線維性コラーゲン固体、例えば、.2%、.3%、.4%、.5%、.6%、.8%、1%、1.2%などの線維性コラーゲン固体を含む。任意の適当な線維性成分は、本発明のコラーゲン組成物において使用され得る。線維性コラーゲン固体は、種々の方法を用いて調製され得る。
例えば、線維性コラーゲンは、ウシの皮などの動物起源から調製された、再構成コラーゲンであり得る(Frontiers in Matrix Biology,Vol.10,pp.1−58,Methods of Connective Tissue Research,Eds.Robert,Moczar,and Moczar,S.Karger,Basel,1985)。線維性コラーゲンは、米国特許第4,969,912号および同第5,322,802号に記載されているようにヒトまたは動物起源から調製され得る。その線維性コラーゲン固体は、代表的には、約10〜100mg/mlの範囲の濃度で溶液中に懸濁される。線維性コラーゲン固体を含むコラーゲン懸濁液は、可溶性コラーゲンを含む溶液への本治療薬の添加の前または後に、可溶性コラーゲン組成物と混合、例えば、添加される。
【0231】
本発明のいくつかの実施形態において、可溶性コラーゲン調製物は、化学架橋剤を含む。その薬剤は、コラーゲン分子および/または原線維を互いに架橋し得、そして/または治療薬(例えば、コンプスタチンまたはそのアナログ)をコラーゲン分子もしくは原線維に架橋し得る。代表的な架橋剤は、コラーゲンアミン基を互いに架橋するか、または治療薬のアミン基、カルボキシル基、フェノール基、スルホニル基もしくは炭水化物基に架橋する。適当な架橋剤としては、WO00/47130に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。いずれの理論にも拘束するつもりはないが、架橋は、コラーゲンゲルを安定化し得(例えば、その崩壊の速度を低下し得)、そして/またはゲルから治療薬の放出の速度を低下し得る。
【0232】
いずれの理論にも拘束するつもりはないが、線維性コラーゲン固体の存在は、種々の有益な効果のいずれかを有し得る。非限定的な例として、線維性コラーゲン固体は、インビボにおけるコラーゲンゲルの安定性を増大し得、例えば、それらは、ゲルの崩壊の速度を低下し得る。線維性コラーゲン固体は、ゲル中に含まれる治療薬の安定性を増大させ得、そして/あるいは、その薬剤が、分散および/もしくはゲルの崩壊によってゲルから放出される速度を低下し得るか、または調節し得る。
【0233】
コラーゲン調製物は、好ましくは、生理学的流体との接触の後、5分(300秒)以内にゲルを形成する。より好ましくは、コラーゲン調製物は、生理学的流体との接触の後、90秒、2分(120秒)以内、または3分(180秒)以内にゲルを形成する。より短い時間内(例えば、5〜90秒以内)またはより長い時間内(例えば、3〜5分以内)にゲルを形成する調製物もまた、使用され得る。
【0234】
コラーゲンタイプI〜XXVIIIまたはそれらの混合物のいずれかが、本発明において使用され得る。コラーゲンは、上で参照した特許および刊行物に記載されているような天然起源(例えば、ヒト組織または動物組織(例えば、ウシ、ウサギなど))から精製され得る。あるいは、コラーゲンは、組換えDNA技術を用いて製造され得、その場合、その配列は、ヒト起源または動物起源であり得る。例えば、米国特許第5,593,854号および同第5,667,839号を参照のこと。組換えDNA技術を用いて、タンパク質、例えば、コラーゲン鎖などの目的のポリペプチドを作製するための方法は、当該分野で周知である。適当な方法としては、上に記載したものが挙げられる。用語「コラーゲン」には、コラーゲンフラグメントが含まれる。従って、ある特定の実施形態において、可溶性コラーゲンは、コラーゲンフラグメントまたはフラグメントの組み合わせを含むか、またはそれらからなる。ある特定の実施形態において、完全なコラーゲンポリペプチド鎖が使用される。
【0235】
上に記載したものなどのコラーゲン調製物が、特に好ましいが、本発明のある特定の実施形態において、他の種々のゲル形成材料もまた、本発明のゲル形成組成物において使用され得る。ある特定の実施形態において、ゲルは、ヒドロゲルであり、ヒドロゲルとは、かなりの量の水を含むゲルを意味する。好ましくは、上記材料およびそれが形成するゲルは、生体適合性である。ある特定の実施形態において、上記材料およびそれが形成するゲルは、生分解性である。種々の修飾コラーゲンまたは誘導体化コラーゲンもまた、本発明の様々な実施形態において有用である。例えば、米国特許第5,201,764号を参照のこと。例えば、コラーゲンは、1つ以上のアシル化剤(例えば、グルタル酸無水物、コハク酸無水物および無水マレイン酸)、および、メタクリル酸無水物、ベータ−スチレンスルホニルクロリド、エチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体またはポリ(ビニル)スルホン酸からなる群から選択される少なくとも1つの他のアシル化剤でアシル化され得る。
【0236】
他のゲル形成材料としては、ヒアルロン酸およびその修飾型、多糖(例えば、アルギン酸塩およびその修飾型)、自己集合性ペプチドなどが挙げられるが、これらに限定されない。アルギン酸塩およびその修飾型、ヒアルロン酸およびその修飾型、ならびに本発明の様々な実施形態において有用な可溶性ゲル形成材料のさらなる例のさらなる説明については、例えば、米国特許第6,129,761号を参照のこと。その明細書中に記載されているように、他の重合体のヒドロゲル前駆体としては、ポリエチレンオキシド−ポリプロピレングリコールブロック共重合体(例えば、Steinleitnerら、Obstetrics & Gynecology,77:48−52(1991);およびSteinleitnerら、Fertility and Sterility,57:305−308(1992)に記載されているように、水素結合および/または温度変化によって架橋される、PluronicsTMまたはTetronicsTM)が挙げられる。利用され得る他の材料としては、タンパク質(例えば、フィブリンまたはゼラチン)が挙げられる。ポリマー混合物もまた、利用され得る。例えば、混合時に水素結合することによってゲル化する、ポリエチレンオキシドとポリアクリル酸との混合物が、利用され得る。
【0237】
共有結合性の架橋可能なヒドロゲル前駆体もまた、有用である。例えば、キトサンなどの水溶性ポリアミンは、ポリエチレングリコールジイソチオシアネートなどの水溶性ジイソチオシアネートと架橋され得る。このイソチオシアネートは、アミンと反応することにより、化学的に架橋されたゲルを形成する。アミン、例えば、ポリエチレングリコールジアルデヒドとのアルデヒド反応もまた、利用され得る。ヒドロキシル化された水溶性ポリマーもまた、利用され得る。
【0238】
あるいは、ラジカル反応開始剤との接触時にラジカル反応によって架橋される置換基を含むポリマーが利用され得る。例えば、WO93/17669(この開示は、本明細書中において参考として援用される)に開示されているように、光化学的に架橋され得るエチレン的に不飽和な基を含むポリマーが、利用され得る。この実施形態において、少なくとも1つの水溶性領域、生分解性領域および少なくとも2つのフリーラジカル−重合可能領域を含む水可溶性マクロマーが、提供される。そのマクロマーは、例えば、感光性の化学物質およびまたは光によって生成されるフリーラジカルに重合可能領域が曝露されることによって、重合される。これらのマクロマーの例は、PEG−オリゴラクチル−アクリレートであり、ここで、そのアクリレート基は、ラジカル開始系(例えば、エオシン色素)を用いて重合されるか、または紫外線または可視光線への短い曝露によって重合される。
さらに、光化学的に架橋され得るシンナモイル基を含む水溶性ポリマーは、Matsudaら、ASAID Trans.,38:154−157(1992)に開示されているように、利用され得る。
【0239】
一般に、ポリマーは、水溶液(例えば、水、緩衝塩溶液または水性アルコール溶液)に少なくとも部分的に可溶性である。上に記載された他のポリマーを合成するための方法は、当業者に公知である。例えば、Concise Encyclopedia of Polymer Science and Polymeric Amines and Ammonium Salts,E.Goethals,editor(Pergamen Press,Elmsford,N.Y.1980)を参照のこと。ポリ(アクリル酸)などの多くのポリマーは、市販されている。天然に存在するポリマーおよび合成ポリマーは、当該分野で利用可能な化学反応、および例えば、March、“Advanced Organic Chemistry,”4th Edition,1992,Wiley−Interscience Publication,New Yorkに記載されている化学反応を用いて修飾され得る。
【0240】
荷電側鎖基を有する水溶性ポリマーは、反対の電荷のイオン(ポリマーが酸性側鎖基を有する場合は陽イオンまたはポリマーが塩基性側鎖基を有する場合は陰イオン)を含む水溶液とそのポリマーとが反応することによって架橋され得る。ヒドロゲルを形成する酸性側鎖基とのポリマーの架橋用の陽イオンの例は、一価の陽イオン(例えば、ナトリウム)および多価陽イオン(例えば、銅、カルシウム、アルミニウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムおよびスズ)ならびに二官能性、三官能性または四官能性の有機陽イオン(例えば、アルキルアンモニウム塩)である。これら陽イオンの塩の水溶液は、そのポリマーに加えられることにより、軟らかく、非常に膨張したヒドロゲルおよび膜を形成する。陽イオンの濃度が高いほど、または、原子価が高いほど、ポリマーの架橋の程度が高くなる。さらに、ポリマーは、酵素的に架橋され得る(例えば、トロンビンとのフィブリン)。いくつかの実施形態において、自己集合性ペプチド(例えば、米国特許第6,800,481号に記載されているもの)が使用される。これらのペプチドは、一価の陽イオン(例えば、細胞外の流体中に存在するもの)と接触すると、自己集合し、それにより、ヒドロゲル構造が形成される。
【0241】
ゲルが、ポリマー鎖を互いに架橋することによって形成される本発明の実施形態において、組成物は、特定のポリマーに応じて選択される適切な架橋剤を含み得る。あるいは、架橋剤は、ゲル形成材料を含む組成物の投与後に実質的に同じ位置に投与され得る。これらのゲルのいずれかは、例えば、可溶性コラーゲンを含むゲルについて上で記載されたようにインビトロにおいて形成され得、そして、眼または眼の近傍における適切な位置に埋没され得る。
【0242】
本発明のある特定の実施形態において、上記組成物は、その分子自体を含むことの代わりにか、またはその分子自体を含むことに加えて、コンプスタチンまたはその補体阻害アナログを産生し、分泌する細胞を含む。これらの実施形態において、ゲルは、長時間にわたって、その中に細胞を捕捉するように分解に対して抵抗性であり得る。
(ゲル形成材料を含む組成物のための、投与の方法、用量および投薬レジメン)
任意の適当な方法を用いて、本発明のゲル形成組成物を眼の後部または眼の後部の近傍の位置に投与し得る。図1Aおよび1Bに示されるように、眼は、前部および後部に分けることができる。強膜は、薄く、無血管の層の組織であり、後部の周囲および前部の一部の眼の外側を覆っており、そして眼の前側の透明の覆いである角膜に続いている。脈絡膜および網膜は、強膜の上に位置する。視神経は、視覚的経路に沿って網膜から神経インパルスを伝達する。
【0243】
組成物は、眼周囲アプローチによって投与され得る。この眼周囲アプローチとの用語は、眼の外側、すなわち、強膜の外側の領域に組成物を局所的に送達する任意の投与経路のことをいうために使用される。従って、組成物は、眼の外側の領域および眼の後部に近接した位置に送達される。ある特定の実施形態において、眼の後部に近接した位置に投与される組成物は、ゲルの少なくとも1つの縁または表面が、眼の後部の外側を覆う強膜の一部の外表面上の10mm以内の少なくとも1点であるように投与される。好ましくは、ゲルの少なくとも1つの縁または表面は、眼の後部の外側を覆う強膜の一部の外表面上の5mm以内の少なくとも1点である。ある特定の実施形態において、ゲルの少なくとも1つの縁または表面は、眼の後部の外側を覆う強膜の一部の外表面上の1〜2mmの少なくとも1点または眼の後部の外側を覆う強膜の一部の外表面上の1mm以内の少なくとも1点である。
【0244】
球周囲投与は、例えば、眼球後注射、球周囲注射、テノン嚢下注射もしくは結膜下注射を用いて、網膜下注射、脈絡膜上注射、または、前述の技術によって接近される領域のいずれかに向かってカテーテルもしくはカニューレを使用することによって達成され得る。
注射器が、最もよく使用されるが、ポンプまたは他の任意の圧力源もまた使用され得る。

本発明のある特定の好ましい実施形態において、組成物は、眼の外側の強膜に隣接した位置に、例えば、眼球後注射、テノン嚢下注射または結膜下注射によって投与される。ゲルの少なくとも1つの表面が、強膜と直接接触し得る。眼科手術のための局所麻酔の投与に適した方法は、本発明の組成物を送達するために有用である。例えば、Dutton,JJら、“Anesthesia for intraocular surgery”,Surv Ophthalmol.46(2):172−84,2001;Canavan,K.S.ら、“Sub−Tenon’s administration of local anaesthetic:a review of the technique”,British Journal of Anaesthesia,90(6),787−793,2003を参照のこと。Spaeth,前出およびAlbert and Lucarelli,前出もまた参照のこと。これらの標準的な技術に従って送達される組成物は、眼の後部に近接した位置に送達されると考えられる。その組成物は、本発明のある特定の実施形態において、少なくとも部分的に黄斑の下に存在するゲルを形成する。本発明のある特定の実施形態において、その組成物は、強膜自体に、例えば、注射によって投与されるか、またはカテーテルもしくはカニューレを用いて投与される(例えば、米国特許第6,378,526号を参照のこと)。治療薬は、組成物から放出され、放出部位から強膜を横切り、そして眼へ分散し、治療薬が網膜での活性部位に到達する。
あるいは、インビトロにおいて形成されるゲル構造物は、眼または眼の近傍に埋没され得る。
【0245】
可溶性コラーゲンを含む組成物中の治療薬の量および濃度は、多くの因子に応じて変動し得、その因子としては、治療薬の同一性、処置される状態およびその重症度、組成物中の線維性コラーゲンおよび/または化学架橋剤の有無、投与される組成物の総量(その総量自体が、様々な考慮すべき点(例えば、患者の解剖学的形態などに基づいて変動し得る)が挙げられるがこれらに限定されない。ゲルから実際に放出される濃度を、容認できない副作用を引き起こし得る濃度よりも低く維持しながら、眼に送達される薬剤の総量を最大にし得る治療薬の濃度および/または総量を使用することが望ましいことがある。本発明のある特定の実施形態において、薬剤の総量および濃度は、少なくとも4週間、例えば、4〜6週間、6週間以上、8週間以上などの期間にわたって、網膜における薬剤の有効濃度を提供するように選択される。
【0246】
投薬の間隔(すなわち、本発明の組成物の個々の投与間の時間)および各投与で送達される治療薬の用量は、変動し得る。ある特定の実施形態において、組成物は、6週間超空けて、例えば、2、3、4、5または6ヶ月空けて、または任意の中間の週数、例えば、8、10、12、14、16週間などを空けて、送達される。他の実施形態において、組成物は、一層長い時間間隔で、例えば、7、8、9、10、11または12ヶ月空けた時点で送達される。他の実施形態において、その時間間隔は、6週間以下である。当然のことながら、その時間間隔は、変動し得る。例えば、投与の間の時間間隔は、6週間以下と6週間超の間の交互であり得る。ある特定の実施形態において、本発明の組成物の投与間の平均時間間隔は、少なくとも6週間、例えば、2、3、4、5または6ヶ月または任意の中間の週数、例えば、8、10、12、14、16週間などである。本発明のある特定の実施形態において、組成物は、平均少なくとも6週間空けて、少なくとも8週間空けて、少なくとも10週間空けて、少なくとも12週間空けてなどの時間間隔で複数回投与される。代表的には、組成物は、少なくとも2、5、10、20、50回またはそれ以上の回数を投与される。組成物は、黄斑変性症に関連する状態、CNV、RNV、眼球の炎症などに罹患しているか、またはその危険性の被験体にある無期限に投与され得るし、そのように投与されることが多い。
【0247】
ゲル中の治療薬の総量およびその濃度もまた、変動し得る。代表的で非限定的な用量は、処置される各眼について、およそ.1〜100mg/用量、例えば、およそ.5〜50mg/用量、1〜10mg/用量などである。本発明の組成物中の治療薬の代表的で非限定的な濃度は、およそ.1〜100mg治療薬/mlコラーゲン溶液であり、例えば、その濃度は、1〜50mg/ml、1〜10mg/mlなどであり得る。
【0248】
いくつかの実施形態において、ある用量の第1の治療薬(例えば、コンプスタチンまたはその補体阻害アナログ)が、硝子体内に投与され、そして第1の治療薬と同じかまたは異なり得る第2の治療薬を含む本発明の組成物が、眼周囲投与技術を用いて被験体に投与され、この2つの投与は、適度に近い時間内(例えば、互いに最大約6週間以内)で行われる。その硝子体内投与は、網膜での治療薬の最初の高濃度をもたらし得る。次いで、眼周囲投与は、時間を掛けた治療薬の徐放を提供する。
【0249】
(動物モデルおよびヒトにおける治療的潜在性の試験)
黄斑変性症、糖尿病性網膜症、脈絡膜血管新生および/または眼球の炎症のうち1つ以上の特徴を再現することを試みた多くの様々な動物モデルが、当該分野で公知である。コンプスタチンまたはその補体阻害アナログを含む組成物は、自然発症の黄斑変性症および/もしくは脈絡膜血管新生を有するか、または黄斑変性症および/もしくは脈絡膜血管新生が、ある処理によって誘導された、マウス、ラット、イヌ、霊長類などに様々な用量で投与され得る。上記化合物が黄斑変性症の1つ以上の徴候または症状(例えば、CNV、RPEにおけるリポフスチンの蓄積および/またはRPEの真下のドルーゼンの蓄積、光受容体の萎縮または肥大、変化したRPE色素沈着、光受容体の喪失、変化した網膜電図など)を予防または処置する能力が、評価される。目視検査、写真、組織病理学、免疫組織学などが使用され得る。
【0250】
有用なモデルとしては、脈絡膜血管新生がレーザー処理によって誘導される動物(例えば、非ヒト霊長類など)(Bora,P.S.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.100(5):2679−2684,2003;Zacks,DNら、Invest Ophthalmol Vis Sci.243(7):2384−91,2002)が挙げられる。他のモデルとしては、種々の薬剤(例えば、脂質ヒドロペルオキシド(Tamai,K.ら、Exp Eye Res.74(2):301−8,2002)、成長因子を含む小丸剤など)で処理された動物が挙げられる。1つ以上の遺伝子を過剰発現または過小発現するように遺伝的に操作された動物もまた、有用である。非霊長類C3に対するコンプスタチンの親和性が、ヒトC3または非ヒト霊長類C3に対する親和性よりも低いことが報告されているので、霊長類C3を阻害し得る用量は、非霊長類C3を阻害するのに不十分であり得ることが理解されるだろう。しかしながら、C3の量に対してより多い用量が、使用され得る。
【0251】
候補薬剤は、全身的または局所的に投与され得る。その薬剤は、経口的、静脈内、腹腔内、硝子体内、経強膜的または局所的に送達され得る。その薬剤は、硝子体内注射によって、経強膜的に、徐放埋没物などによって送達され得る。眼は、検眼鏡検査、血管造影法、病理組織診断またはそれらの組み合わせによって解析され得る。これらの方法のいずれかを使用して、任意の動物モデルにおける候補薬剤の効力を評価することができる。糖尿病性網膜症に対するモデルもまた存在する。眼球の炎症に対する動物モデルもまた、当該分野で公知である。例えば、実験的アレルギー性ブドウ膜炎は、周知のモデル系である(Singh,VK.ら、Indian J Med Res.,107:53−67,1998)。エンドトキシン誘発ブドウ膜炎は、別の有用なモデルである(Kozhich,A.T.ら、Investigative Ophthalmology and Visual Science,41:1823−1826,2000)。これらの例は、本発明の化合物の効力を評価し得る数少ないモデル系である。
【0252】
動物試験における有望な結果(例えば、ヒト硝子体において補体を効果的に阻害すると予想される用量の投与の容認できる安全性および実行可能性が挙げられるがこれらに限定されない)を示す化合物は、例えば、ARMDまたは糖尿病性網膜症の治療に対する臨床試験についての標準的なプロトコールおよびエンドポイントを用いて、ヒトにおいて試験される。本明細書における目的の眼球の状態の多くの場合において、動物モデルにおける効力を証明することは、本明細書中に記載される化合物が、当業者によって、および/またはヒトにおいて臨床試験を行うために、治療的に有用であるとみなされることを確証するために必ずしも必要ではないことが理解されるだろう。
【0253】
ヒトにおいて滲出性ARMDに対する治療を評価する際に代表的に使用されてきたプロトコールおよびエンドポイントに加えて、本発明は、ARMDの非滲出型から滲出型への進行を阻害する際か、その危険性のある被験体において非滲出性ARMDの発症を阻害する際か、または非滲出性ARMDの軽症な型からより重篤な型への進行を阻害する際に、本発明の組成物の有用性を確証するための試験を企図する。従って、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、ARMDの非滲出タイプと診断されているか、またはARMDを発症する危険性があると判定されている被験体に投与される。本発明の組成物が非滲出型のARMDからタイプのARMDへの進行を阻害する能力または非滲出性ARMDの発症を阻害する能力が、評価される。本発明のある特定の実施形態において、同年齢の一般集団と比較されるとき、ARMDを発症する危険性の高い被験体が、治療のために選択される。本発明のある特定の実施形態において、滲出性ARMDに進行する危険性の高い、非滲出性ARMDに罹患している被験体、例えば、一方の眼においてすでに滲出性ARMDに罹患している患者、すなわち、重篤なARMDに向かう遺伝的傾向を有するか、または任意の他の指標を有する患者が、治療のために選択される。ARMDを発症する危険性を上昇させる多型は、上で述べており、また、より詳細に文献に記載されている。1つの実施形態において、被験体を試験して、CFH、CFB、TLR4またはLOC387715座において多型を有しているか否かを判定する。ARMDに関連することが公知であり、ホモ接合またはヘテロ接合の1つ以上の遺伝的多型である結果として、危険性が高いと判定された被験体が、治療のために選択される。1つの実施形態において、上記被験体は、ARMDの高い危険性(例えば、ARMDを発症する高い危険性、非滲出性から滲出性にARMDが進行する高い危険性、ARMDの重篤な型を発症する高い危険性など)と関連することが公知である1、2、3個またはそれ以上の多型についてヘテロ接合またはホモ接合である。
【0254】
American Academy of Ophthalmologyが開発したガイドライン(American Academy of Ophthalmology,Age Related Macular Degeneration Preferred Practice PatternTM,2003;URL www.aao.org/aao/education/library/ppp/amd_new.cfmにおいてダウンロードして入手可能)に記載されているAge−Related Eye Diseases Study(AREDS)において使用される分類スキームに従って、被験体を、初期、中期または進行型のARMDを有すると分類され得る。
【0255】
1つの実施例において、非滲出タイプのARMDを有する被験体を、2群に分ける。一方の群は、本発明の組成物の単回の硝子体内注射、または、一方の眼の近傍、例えば、眼の後部に近接した位置において本発明の組成物の眼球後注射もしくはテノン嚢下注射を受けるのに対し、他方の群は、無処置であるか、または一方の眼に別の治療薬(例えば、MacugenまたはLucentis)の単回の硝子体内注射を受ける。これらの群を6ヶ月から2年間にわたってモニターすることにより、滲出タイプのARMDに進行する被験体のパーセンテージを決定する。
【0256】
別の実施例では、非滲出タイプのARMDを有する被験体を、2群に分ける。一方の群は、6ヶ月ごとに、本発明の組成物の単回の硝子体内注射、または、一方の眼の近傍、例えば、眼の後部に近接した位置において本発明の組成物の眼球後注射もしくはテノン嚢下注射を受けるのに対し、他方の群は、無処置であるか、または一方の眼に別の治療薬(例えば、MacugenまたはLucentis)の6ヶ月ごとの単回の硝子体内注射を受ける。これらの群を1〜2年間(またはそれ以上)にわたってモニターすることにより、滲出タイプのARMDに進行する被験体のパーセンテージを決定する。別の非限定的な実施例では、非滲出タイプのARMDを有する被験体を2群に分ける。一方の群は、3〜6ヶ月ごとに、本発明の組成物の硝子体内注射、または、一方の眼の近傍、例えば、その眼の後部に近接した位置において本発明の組成物の眼球後注射もしくはテノン嚢下注射を受けるのに対し、他方の群は、無処置であるか、または4〜6週間ごとに、滲出タイプのARMDを処置するために使用される標準的なプロトコールに従ったMacugenもしくはLucentisによる処置、すなわち、硝子体内注射を受ける。これらの群を1〜2年間(またはそれ以上)にわたってモニターすることにより、滲出型のARMDに進行する被験体のパーセンテージを決定する。
【0257】
別の実施例では、少なくとも一方の眼に滲出性ARMDを有する被験体を2群に分ける。一方の群は、試験中の眼にLucentisまたはMacugenの硝子体内注射が施され、引き続いて、その後まもなく(例えば、2週間以内に)本発明の組成物の硝子体内注射が施される。他方の群は、標準的なプロトコールに従って、研究中の眼にLucentisまたはMacugenの硝子体内注射を受ける。これらの群を、時間を掛けて(例えば、6ヶ月から2年間)モニターすることにより、症状の進行、再発、再処置の必要性などを評価する。
【0258】
別の実施例では、本発明の組成物が初期ARMD(AREDS2)から中期ARMD(AREDS3)への進行を阻害する能力を評価する。初期ARMDを有する被験体を2群に分け、その一方の群に、上記の実施例のいずれかに記載されているように本発明の組成物を投与するのに対し、他方の群には、治療しないか、または上に記載されたような代替の治療(例えば、LucentisまたはMacugen)を行う。これらの群をある期間(例えば、上に記載されたような)にわたってモニターすることにより、初期ARMDから中期ARMDに進行する被験体のパーセンテージを決定する。
【0259】
別の実施例では、本発明の組成物が中期ARMD(AREDS3)から進行型ARMD(AREDS4)への進行を阻害する能力を評価する。中期ARMDを有する被験体を2群に分け、その一方の群には、上記の実施例のいずれかに記載されているような本発明の組成物を投与するのに対し、他方の群は、治療しないか、または上に記載されたような代替の治療(例えば、LucentisまたはMacugen)を行う。これらの群をある期間(例えば、上に記載されたような)にわたってモニターすることにより、中期ARMDから進行型ARMDに進行する被験体のパーセンテージを決定する。
【0260】
ARMDの進行をモニターすることに加えて、副作用および合併症の発生率もまた、モニターされ得る。副作用を考慮することは、治療の全体的な成果および危険性/利益比を評価する際に、重要な局面である。例えば、2つの治療が、ARMDの進行の阻害またはARMDの処置に関して同等に効果的である場合、副作用の発生率の低いほうの治療が、代表的には、ほとんどの被験体にとって好ましい。本発明のある特定の実施形態において、本発明の組成物を用いた、黄斑変性症に関連する状態(例えば、任意の原因によるARMDまたはCNVもしくはRNV)の治療は、FDAによって承認されたARMDに対する治療よりもある時間にわたって(例えば、1〜2年間)副作用が少ない。
(被験体の同定および応答の評価)
本発明の方法は、本発明の組成物が投与されるべき被験体を提供する工程を含み得る。
その被験体は、代表的には、黄斑変性症、脈絡膜血管新生、網膜血管新生またはこれらの任意の組み合わせを特徴とする眼の障害の危険性があるか、またはそれに罹患している。
本発明の組成物は、代表的には、そのような状態の発症を処置または予防する目的で、被験体に投与される。従って、被験体は、代表的には、そのような状態の危険性があると同定されるか、またはそのような状態に罹患していると同定されることになる。黄斑変性症および脈絡膜血管新生を診断するための方法ならびに治療に対する応答を評価するための方法は、当該分野で公知である。任意の適当な試験および基準を用いて、黄斑変性症に関連する状態、糖尿病性網膜症または脈絡膜血管新生の危険性がある被験体もしくはそれらに罹患している被験体を同定することおよび/または治療に対する応答を測定することができる。視力は、例えば、Snellenチャート、Bailey−Lovieチャート、十進法(decimal progression)チャート、Freiburg視力検査、最小解像角(MAR)の測定などを用いて測定され得る。変視症(視覚的歪曲)は、Amslerチャートを用いて測定され得る。コントラスト感度は、Pelli−Robsonチャートを用いて測定され得る。診断の研究としては、眼底の標準的な眼科検診、黄斑の生体用実体顕微鏡検査、眼底の静脈内のフルオレセイン血管造影法、眼底の写真、インドシアニングリーンビデオ血管造影法および光干渉断層撮影法が挙げられるが、これらに限定されない。これらの診断の研究の1つ以上において異常を示す被験体(例えば、健常な眼に対して正常とみなされる範囲に入らない被験体)が、本発明に従って処置され得る。上で述べたように、被験体は、Aged−Related Eye Disease Studyにおいて使用される分類スキームに従って、初期、中期または進行型のARMDを有すると分類され得る。その中に記載されるカテゴリーのいずれかに入る被験体が、本発明に従って処置され得る。被験体が、すでにCNVを発症している場合、その被験体は、クラシック(classic)CNV、オカルト(occult)CNVまたはその2つの混合を有し得る。当然のことながら、文献に記載されている変法である、代替の分類スキームもまた、使用され得る。
【0261】
ARMDは、ARMDに罹患している親類を有する個体のARMDの発生率が高いことを示す研究(例えば、双生児研究)に基づいて、そして、多くの補体因子における多型がARMDの高い危険性に関連することを示す最近の多くの研究に基づいて、遺伝的要素を有することが知られている。それゆえ、被験体の近親者(例えば、両親、祖父母、同胞、いとこ、おじ、おば)の1人以上がARMDの診断を受けている場合、その被験体は、ARMDを発症する危険性があると考えられ得る。喫煙する個体および/または高脂肪食を消費する個体もまた、危険性が高い。ARMDの発生率は、年齢とともに増大する。それゆえ、およそ50歳を超える個体、一般に少なくとも60歳または少なくとも70歳の個体は、危険性が高いと考えられ得る。ドルーゼンおよび1つ以上のさらなる危険因子を有する個体は、ARMDを発症する特定の危険性があり得る。複数のドルーゼンを有する個体は(特に、それらのドルーゼンが、大きい場合および不明瞭な境界を有する場合)、特定の危険性があり得る。RPE色素過剰もしくは色素脱失または地図状萎縮を有する個体は、特定の危険性があり得る。本発明のある特定の実施形態において、その被験体は、ARMD発症の高い可能性に関連する1つ以上の遺伝的多型(そのいくつかは上で述べた)を有する。本発明のある特定の実施形態において、処置方法は、被験体が、ARMDの危険性を増大させる遺伝的多型を有する否かを判定する工程を含む。ここで使用される「判定する」とは、適当な試験を行うか、もしくは依頼することによってか、または別のものによって行われたか、もしくは依頼した試験の結果を受け取ることによって、被験体が、ARMDの危険性を増大させる多型を有することを確証することをいい、ここで、その試験は、その被験体が多型を有するか否かを確かめる試験である。有用な遺伝的試験は、必ずしも100%正確である必要があるわけではないことが理解されるだろう。特定の遺伝的変異が、様々なあまり一般的でない黄斑変性症に関連する状態と関連する。糖尿病の診断を受けた被験体は、糖尿病性網膜症を発症する危険性がある。
【0262】
治療に対する応答は、上で述べた方法のいずれかによって評価され得る。視力を回復する際、視力喪失を予防する際、および/あるいは、上に記載した試験などの診断試験によって判断されるARMDまたは脈絡膜血管新生の改善もしくはそれらの進行の遅延をもたらす際の、種々の異なる治療の効力を評価するために数多くの研究が行われている。当業者は、治療の効力を判断する適切な基準を選択することができる。
(治療的な適用)
本発明の組成物は、黄斑変性症に関連する状態(例えば、ARMD)、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、硝子体過形成遺残症候群(persistent hyperplastic vitreous syndrome)、脈絡膜血管新生などを処置するために被験体(例えば、ヒト患者)に投与され得る。その被験体は、浸出性または非浸出性のARMDを有し得る。本発明のある特定の実施形態において、被験体は、浸出性ARMDを有するがRAPを有しないのに対し、他の実施形態において、被験体は、RAPを有する。ある特定の実施形態において、臨床試験において有望な結果を示すプロトコールが、使用される。
【0263】
本発明の組成物および方法についての1つの特に有益な用途は、非浸出性ARMDから浸出性ARMDへの進行を阻害することまたは非浸出性ARMDからより重篤な型への進行を阻害することである。本発明のある特定の実施形態において、本発明の組成物は、初期ARMD(AREDS2)から中期ARMD(AREDS3)または進行型ARMD(AREDS4)への進行を阻害する。本発明のある特定の実施形態において、本発明の組成物は、中期ARMD(AREDS3)から進行型ARMD(AREDS4)への進行を阻害する。本発明の組成物のいずれかは、本発明の様々な実施形態におけるこれらの目的の1つ以上のために使用され得る。AREDSに記載されているようなARMDの様々なステージに対する言及は、限定をまったく意図しない。他の分類スキームが使用され得ることが、認識されるだろう。
【0264】
本発明の組成物の特定の実施形態において、例えば、本発明のゲル形成組成物は、非浸出性ARMDを有する被験体を処置するため、例えば、浸出性ARMDへの進行を予防するか、または阻害するために使用される。ある特定の実施形態において、被験体は、検出可能なCNVを発症しておらず、本発明の組成物は、CNVの発症を予防するか、または遅延させる。例えば、その被験体は、非滲出性ARMDを有し得、そして本発明の組成物は、滲出性ARMDの発症を予防するか、または遅延させる。ある特定の実施形態において、その被験体は、検出可能なCNVを発症しており、本発明の組成物は、CNVの進行の速度を低下させ、そして/または既存のCNVの後退を引き起こす。ある特定の実施形態において、被験体は、検出可能なRNVを発症しておらず、そして、本発明の組成物は、RNVの発症を予防するか、または遅延させる。ある特定の実施形態において、被験体は、検出可能なRNVを発症しており、本発明の組成物は、RNVの進行の速度を低下させ、そして/または既存のRNVの後退を引き起こす。本発明の組成物は、例えば、所定のおよその時間間隔(例えば、およそ4週間ごと、およそ6週間ごと、およそ8、10、12、16、20、24週間ごと、およそ6、8、10または12ヶ月ごとなど)で、ある状態(例えば、CNVまたはRNV(またはその両方))を有するか、または有しない被験体に1回または複数回投与され得る。本発明の方法のいずれかにおいて、本発明の組成物は、正しい医学的判断によって、示される結果を達成するのに有効な量で投与されるべきであることが理解されるだろう。また、その結果が、すべての場合において達成される必要がないことも理解されるべきである。
【0265】
補助的療法が、本発明の組成物および方法を用いた処置と同時にか、処置の前か、または処置の後に、使用され得る。そのような治療法としては、酸化防止剤ビタミンおよび/またはミネラル療法の投与、光線力学的療法(例えば、ベルテポルフィンまたは他の薬剤を用いて)、抗炎症剤の投与、抗血管新生療法(例えば、1つ以上の血管新生インヒビター(例えば、酢酸アネコルタブまたは他の血管新生抑制性(angiostatic)ステロイド);抗VEGF抗体または抗VEGFR抗体、抗体フラグメント、siRNA、アンチセンスRNAもしくはアプタマー;または任意の他の抗血管新生剤(例えば、任意の血管新生促進性(proangiogenic)遺伝子を標的にした、小分子、siRNA、アンチセンスRNAまたはアプタマーが挙げられるがこれらに限定されない)の投与)、成長因子の投与、眼への細胞(例えば、神経幹細胞、RPE幹細胞、RPE細胞)の埋没、レーザー光凝固、放射線治療、温熱療法および手術(例えば、黄斑下手術または黄斑転移術)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のある特定の実施形態において、RPE細胞に対する成長因子、例えば、REF−1/TFPI−2(Tanaka,Yら、Invest Ophthalmol Vis Sci 45(1):245−52,2004)が投与される。
【0266】
光凝固術または手術を用いて、脈絡膜血管新生および/または網膜血管新生にすでに罹患している眼(例えば、糖尿病性網膜症またはARMDを有する被験体の眼)を処置すること、ならびに、他方の眼の視力を保存するため、および/あるいは光凝固術または手術によって処置された眼におけるCNVおよび/もしくはRNVの再発を予防するために、被験体に本発明の組成物を投与することが望ましい場合もある。
【実施例】
【0267】
(実施例1:コンプスタチンアナログの投与によるマウスモデルにおける脈絡膜血管新生の予防)
(材料および方法)
(補体インヒビター)
(Sahu,Aら、J.Immunol.,160,5596−5604,1998)に記載されているように、組換えVCPをPichia pastoris発現系において産生させ、そして精製した。VCPを様々な濃度で生理食塩水に溶解した。
【0268】
コンプスタチンペプチドと比べて4位および9位が変化している、図2に示されるコンプスタチンアナログを化学合成し、生理食塩水に溶解した。
(マウスにおけるCNV誘導)
C57BL/6マウス(The Jackson Laboratory)をケタミン/キシラジン(8:1)の混合物で麻酔し、1%トロピカミド一滴により瞳孔を散大させた。クリプトン赤色レーザー光凝固(スポットサイズ50μm、持続時間0.05秒、250mW)を用いて、コンタクトレンズとして手で持てるサイズのカバーガラスを使用することによって視神経の周囲にレーザースポットを生成する。レーザースポットにおける気泡の形成は、ブルッフ膜の破裂を示唆した。複数のレーザースポットは、各眼において生成された。
(マウスの眼へのVCPまたはコンプスタチンの注射)
予めCNVをレーザー誘導しておいたマウスに、VCPまたはコンプスタチンアナログを含む溶液を硝子体内注射によって投与した。様々な群のマウスに、様々な量のこの分子またはマウスアルブミン(コントロールとして)を注射することにより、VCPの有効性および毒性に対する投薬の効果を判定した。簡潔には、麻酔および瞳孔の散大の後、28ゲージの針を、前房に縁を介して刺入することにより、眼圧を下げた。網膜の可視化を可能にする手術用顕微鏡下で、その縁のすぐ後ろの強膜切開により、32ゲージの(先端が平坦な)針を硝子体腔に刺入した。Hamilton注射器を使用して、VCP、コンプスタチンアナログまたはアルブミンを含む溶液1〜3μlを注射した。
(CNVの発生率およびサイズの決定)
CNV誘導の7日後に、CNVの発生率を決定した。簡潔には、マウスを屠殺する直前にFITC−デキストラン(Sigma−Aldrich)溶液で灌流した。眼を切除し、10%リン酸緩衝ホルマリン中で1時間固定した後、RPE−脈絡膜−強膜の平らな顕微鏡標本を以下のように調製した。角膜および水晶体を除去し、感覚神経の網膜を眼杯(eyecup)から慎重に切り離した。5つの放射状切片は、眼杯の縁から赤道に向かっており;強膜−脈絡膜網膜色素上皮(RPE)複合物を、強膜を下向きにして、Aquamount中でスライドガラス上に平らに載せた。その平らに載せた標本を、抗エラスチン特異的モノクローナル抗体(Sigma−Aldrich)で染色し、次いで、適当な濃度、例えば、1.0mg/ml原液の1/200希釈のCY3結合体化2次抗体(Sigma−Aldrich)で染色した。標本を共焦点顕微鏡(LSM510,Zeiss)下で観察した。顕著な新生血管成長が、緑色に染色され、一方、ブルッフ膜の底部に存在するエラスチンは、レーザースポット内で赤色に染色された。画像を、画像解析ソフトウェアAxio Vision(Zeiss)を用いて解析した。CNVの量を、各写真における緑色蛍光の総表面積を測定することによって決定した。様々な群について平均緑色蛍光面積を得て、群間の比較のためにスチューデントのt検定および複数の群間の比較のためにANOVAを用いて比較した。試験したスポットの数は、以下のとおりであった:無処置コントロール:35スポット);マウスアルブミンコントロール:12スポット;VCP(10μg):26スポット;VCP(30μg):14スポット;コンプスタチンアナログ(30μg):27スポット。種々の異なる補体成分の沈着もまた、免疫学的技術および/またはRT−PCRを用いて測定する。
【0269】
(結果)
CNVの発症に対するVCPまたはコンプスタチンアナログの効果を、レーザー誘導CNVのマウスモデルにおいて試験した。簡潔には、VCP(10μg/眼または30μg/眼)またはコンプスタチン(30μg/眼)をレーザー誘導の24時間後に硝子体に注射した。CNV誘導の数日後に、CNVの発生率を測定した。屠殺する直前に、マウスをFITC−デキストラン(Sigma−Aldrich)溶液で灌流した。眼を切除し、10%リン酸緩衝ホルマリン中で固定した後、RPE−脈絡膜−強膜の平らな標本を調製し、抗エラスチン特異的モノクローナル抗体(Sigma−Aldrich)で染色し、次いで、CY3結合体化2次抗体(Sigma−Aldrich)で染色した。標本を共焦点顕微鏡(LSM510,Zeiss)下で観察した。顕著な新生血管成長が、緑色に染色され、一方、ブルッフ膜の底部に存在するエラスチンは、レーザースポット内で赤色に染色された。同様の結果が、VCPおよびコンプスタチンアナログを用いて得られた。
画像を、画像解析ソフトウェアAxio Vision(Zeiss)を用いて解析した。CNVの量を、各写真における緑色蛍光の総表面積を測定することによって決定した。
様々な群について平均緑色蛍光面積を得て、群間の比較のためにスチューデントのt検定および複数の群間の比較のためにANOVAを用いて比較した。結果を表2および図4のグラフにおいて報告する。表2において、「コンプスタチン」は、図2に示されるコンプスタチンアナログのことを指している。表およびグラフの両方から明らかであるように、無処置またはアルブミン投与と比べて、30μgのVCPまたはコンプスタチンアナログの投与によって、CNVの平均面積の統計的に有意な減少が引き起こされた。コンプスタチンアナログは、μgベースでVCPよりもいくらか有効であるようであったが、その差は、これらのサンプルサイズでは統計的に有意ではなかった。
【0270】
表2:マウスモデルにおけるCNVの発症に対するVCPまたはコンプスタチンアナログの効果
【0271】
【表2】
(実施例2:コンプスタチンアナログの投与によるマウスモデルにおける脈絡膜血管新生の予防)
異なるコンプスタチンアナログを使用して実施例1を繰り返した。0.1〜50μg/眼の範囲の用量を試験した。
【0272】
(実施例3:ゲル形成組成物用のコラーゲン溶液の調製)
(コラーゲン原液の調製)
すべての処方物のためのコラーゲンをブタの真皮から調製する。分割したブタの皮をLampire Biological Laboratories(Pipersville,PA)から得る。分割した皮を試薬アルコールですすぎ、受け取る前に冷凍貯蔵所に置く。分割した真皮の切片を小片(約1cm)に切断し、試薬アルコールに浸漬し、次いで、滅菌水で大規模に洗浄する。洗浄した片を20容積の0.5M HCl中に30分間置き、滅菌水で洗浄し、次いで、20容積の0.5N NaOH中に30分間置く。
この両方の処理は、ウイルス価を最大6対数減少させるのに有効であることが示されている。さらに、この両方の処理は、細菌の容量を最大9対数減少するという著しい殺菌効果を有することが示されている。化学的に殺菌された真皮を滅菌水中で大規模に洗浄し、計量し、そして20容積(v/w)の0.5M酢酸中に置く。それらの片を72時間撹拌し、ブタの粘膜ペプシンを、部分的に腫大した真皮に加える。
【0273】
ペプシンを2%(w/w湿真皮)で加え、48時間撹拌する。ペプシンのさらなるアリコートを1%(w/w湿真皮)で加え、さらに24時間撹拌する。この時点で、真皮は、酢酸に「溶解」されているはずである。濃厚なスラリーをチーズクロスで濾過することによって、小さくて溶解していない片を除去する。濾液を0.5M酢酸で希釈し、名目上50,000ダルトンのカットオフを有する透析チューブを用いて0.5N酢酸に対して透析する。別の透析方法では、Amersham Biotechから入手される限外濾過/膜分離法カートリッジを利用する。この透析プロセスにより、ペプシンおよび分解されたペプシンが除去される。この確保されたコラーゲン含有液体をディファレンシャルNaCl沈殿に供することにより、主にI型コラーゲンが単離される。次いで、およそ5mg/mLの精製されたI型コラーゲンを0.1N酢酸に対して透析することにより、残留塩(名目上約5,000分子量カットオフ)が除去される。続いて、その確保されたコラーゲン溶液を0.45μmおよび0.2μmフィルターで濾過し、滅菌された2リットルのガラス瓶に入れる。コラーゲン濃度は、およそ5mg/mLである。すべての工程を室温で行う。原液は、2〜8℃で保存する。
【0274】
(プロセスのコントロールおよびクオリティののコントロールの試験:最終的なコラーゲン原液を以下の方法によって試験する。)
コラーゲン純度を測定するためのSDS−PAGEによる解析;
残留グリコサミノグリカンの量を測定するためのウロン酸の解析
総コラーゲン濃度を測定するためのヒドロキシプロリンのアッセイ;
相転移の温度を測定するために示差走査熱量測定(純粋で、未変性のテロペプチドが少ないコラーゲンは、約39℃で転移を開始する)
USP法を用いた滅菌
LAL法を用いたエンドトキシン
(ゲル化コラーゲン溶液のインサイチュにおける調製)
固体のNaClを0.8Mになるように加えることによって、精製されたペプシン消化コラーゲンを沈殿させる。得られた沈殿物を3500RPMでの遠心分離で回収し、湿重量を測定し、そして沈殿物を、50,000ダルトンのNMWカットオフを有する透析チューブに入れる。最終的なコラーゲン溶液が30および50mg/mL(3および5%)で生成されるのに十分な沈殿物を加える試みがなされる。そのチューブを、20容積の脱イオン水中の0.035M EDTA,pH 5.0中に置き、振動しながら24時間透析する。この時点で、その透析チューブを、0.035M EDTA,pH5.5の別の20容積に移す。透析を再度24時間行ったあと、そのチューブを0.035M EDTA,pH6.0中に置く。pH7.5の最終的なEDTA溶液における透析までこの順序を続ける。このEDTA透析中のpHの緩上昇によって、中性pHにおいて「可溶性」のままであるコラーゲン調製物がもたらされる。これは、中性pHかつ室温において原線維形成を自発的に起こす標準的なコラーゲン溶液と対照的である。中性pHのEDTA処理コラーゲン溶液は、貯蔵中は溶液のままであり、生理学的流体に曝露されるとゲル化および原線維形成を迅速に起こす。
【0275】
(実施例4:コンプスタチンアナログの補体阻害活性を評価する補体古典的経路の活性化に対するELISAベースアッセイの使用)
(材料:)
・96ウェルELISAプレート(Corning 3590)
・ニワトリOVA(Sigma A5378)
・ポリクローナル抗ニワトリOVA(Abcam ab 1221−100)
・PBS中のBSA1%−Calbiochem #126626 1/30希釈
・Veronal緩衝液+0.5mM MgCl+0.15mM CaCl(VB++
・血清(最終濃度5μg/mlのLipirudinを用いて回収したもの)

・抗ヒトC3 HRP結合体化Ab(Poly to C3−HRP Ab,Cappel 55237)
・Tween−20洗浄緩衝液(PBS中0.05%)
・TMB(ペルオキシダーゼ基質)−BD51−2607KCと51−2606KCとの1:1混合物
・3M HSO
・マイクロプレートリーダー。
【0276】
(プロトコール:)
1.1%ニワトリOVA(PBS中)を50μl/ウェルで加える。
2.室温で2時間インキュベートする。
3.プレートを振盪して、軽くたたくことによって取り出す。
4.200μlの1%BSA/PBSを加えることによってブロッキングする。
5.室温で1時間インキュベートする。
6.プレートを振盪して、軽くたたくことによって取り出す。
7.1%BSA/PBS中のポリクローナル抗ニワトリOVAの1/1000希釈物50μlを加える。
8.室温で1時間インキュベートする。
9.洗浄緩衝液で2回洗浄する。
10.50μlのVB++をウェル#2〜12に加える。
11.100μlの出発化合物の希釈物(VB++中に2×)をウェル1に加える。
12.その化合物をウェル1〜10を以下のように連続希釈する(1:2)。
【0277】
a.開始ウェルから50μlの溶液を取り出す。
【0278】
b.これを次のウェルに加える。
【0279】
c.数回ピペッティングすることによって混合する。
【0280】
d.ウェル#10まで繰り返す。
注意:ウェル#10から50μlを取り出し廃棄すること。
13.50μlの2×血漿希釈物をウェル1〜11に加える。
14.1時間インキュベートする。
15.洗浄緩衝液で2回洗浄する。
16.1%BSA/PBS中のC3−HRP Abの1/1000希釈物50μlを加える。
17.1時間インキュベートする。
18.100μlのTMBをすべてのウェルに加える。
19.30分間インキュベートする。
20.50μlの3M HSOを加える。
21.405nmでプレートを読み出す。
【0281】
(VB++
(処方:)
Barbital 5mM
NaCl 72.5mM
MgCl 0.5mM
CaCl 0.15mM
pH 7.3−7.4。
【0282】
(原液:)
【0283】
【表3】
種々の異なるコンプスタチンアナログを用いて上記アッセイを行う。100%活性化を、化合物が存在しないときに生じる活性化に等しいか、または、等量のコンプスタチンの不活性な改変体が存在するときに生じる活性化に等しいとみなすことによって、パーセント阻害を正規化してもよい。
(実施例5:コンプスタチンアナログの補体阻害活性を評価する補体副経路活性化に対するELISAベースアッセイの使用)
(材料:)
・96ウェルELISAプレート(Corning 3590)
・Salmonella typhosa由来のLPS−Sigma L7136(PBS中40μg/ml)
・PBS中のBSA1%−Calbiochem #126626 1/30希釈物
・Veronal緩衝液+10mM MgCl+10mM EGTA(VB−Mg EGTA)
・血清(最終濃度5μg/mlのLipirudinを用いて回収したもの)
・抗ヒトC3 HRP結合体化Ab(Poli to C3−HRP Ab,Cappel 55237)
・Tween−20洗浄緩衝液(PBS中0.05%)
・TMB(ペルオキシダーゼ基質)−BD51−2607KCと51−2606KCとの1:1混合物
・3M HSO
・マイクロプレートリーダー。
【0284】

(プロトコール:)
22.40μg/ml(PBS中)のLPSを50μl/ウェルで加える。
23.室温で2時間インキュベートする。
24.プレートを振盪して、軽くたたくことによって取り出す。
25.200μlの1%BSA/PBSを加えることによってブロッキングする。
26.室温で1時間インキュベートする。
27.プレートを振盪して、軽くたたくことによって取り出す。
28.ウェル#2〜12に50μlのVB−Mg EGTAを加える。
29.100μlの出発化合物希釈物(VB−Mg EGTA中2×)をウェル1に加える。
30.その化合物をウェル1〜10を以下のように連続希釈する(1:2)。
【0285】
a.開始ウェルから50μlの溶液を取り出す。
【0286】
b.これを次のウェルに加える。
【0287】
c.数回ピペッティングすることによって混合する。
【0288】
d.ウェル#10まで繰り返す。
注意:ウェル#10から50μlを取り出し廃棄すること。
31.50μlの2×血漿希釈物をウェル1〜11に加える。
32.1時間インキュベートする。
33.洗浄緩衝液で2回洗浄する。
34.1%BSA/PBS中のC3−HRP Abの1/1000希釈物50μlを加える。
35.1時間インキュベートする。
36.100μlのTMBをすべてのウェルに加える。
37.10分間インキュベートする。
38.50μlの3M HSOを加える。
39.405nmでプレートを読み出す。
【0289】
種々の異なるコンプスタチンアナログを用いて上記アッセイを行う。100%活性化を、化合物が存在しないときに生じる活性化に等しいか、または、等量のコンプスタチンの不活性な改変体が存在するときに生じる活性化に等しいとみなすことによって、パーセント阻害を正規化してもよい。
【0290】
(等価物および範囲)
当業者は、本明細書中に記載された本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するだろうし、単なる日常的な実験を用いて確かめることができるだろう。本発明の範囲は、上記の説明に限定されると意図されないが、添付の特許請求の範囲に示されるとおりである。本発明は、決して、任意の特定の実施例または任意の特定の実施形態によって達成された特定の結果に左右されるわけでないことが理解されるだろう。請求項において、「a」、「an」および「the」などは、逆のことが示されないか、または文脈から別のことが明らかにでない限り、1以上を意味し得る。ある群の中の1つ以上のメンバーの間に「または」を含む請求項または説明は、逆のことが示されないか、または文脈から別のことが明らかでない限り、その群のメンバーの1つ以上またはすべてが、所定の生成物またはプロセス中に存在するか、それらにおいて使用されるか、または、それらと別途関連がある場合に、満足していると考えられる。本発明は、その群の中のただ1つのメンバーが、所定の生成物もしくはプロセス中に存在するか、所定の生成物もしくはプロセス中において使用されるか、または、所定の生成物もしくはプロセスと別途関連がある、実施形態を含む。例えば、非限定的ではあるが、請求項または説明において、特定の位置における残基が、アミノ酸またはアミノ酸アナログの特定の群から選択され得ることが示される場合に、本発明は、その位置における残基が、列挙されたアミノ酸またはアミノ酸アナログのいずれかである個別の実施形態を含むことが理解される。本発明はまた、その群のメンバーのうちの2つ以上のメンバーまたはすべてのメンバーが、所定の生成物もしくはプロセス中に存在するか、所定の生成物もしくはプロセスにおいて使用されるか、または所定の生成物もしくはプロセスと別途関連がある、実施形態も含む。さらに、本発明は、列挙された請求項のうちの1つ以上に由来する1つ以上の制限、エレメント、節、記述用語などが、別の請求項に導入されている、変形、組み合わせおよび順列のすべてを包含することが理解されるべきである。特に、別の請求項に従属している任意の請求項は、基礎となる同じ請求項に従属する他の任意の請求項に見られる1つ以上のエレメントまたは制限を含むように改変され得る。さらに、請求項が組成物を示している場合、矛盾または不一致が生じることが別途示されないかまたはそれが当業者に明らかでない限り、本明細書中に開示される方法のいずれかに従ってその組成物を投与する方法および本明細書中に開示される目的のいずれかのためにその組成物を使用する方法が含まれること、ならびに、本明細書中に開示される作製方法のいずれかに従ってその組成物を作製する方法が含まれることが理解されるべきである。
【0291】
エレメントが、列挙のように、例えば、Markushグループ形式で記載される場合、それらエレメントの各サブグループもまた開示され、そしてそのグループから任意のエレメントが取り出され得ることが理解されるべきである。簡明さのためだけに、これらの実施形態のいくつかだけが、本明細書中のこのとおりの言葉で特に記載されているが、本発明は、そのような実施形態のすべてを含む。一般に、本発明または本発明の局面が、特定のエレメント、特徴などを含むと言及している場合、本発明のある特定の実施形態または本発明の局面は、そのようなエレメント、特徴などからなるか、または本質的にそれらからなるとも理解されるべきである。
【0292】
本発明のある特定の方法において「提供」工程を含んでいることは、その組成物が眼の障害を処置するために投与されることを示すことを意図している。従って、被験体は、眼の障害を有しているかまたは眼の障害の可能性があり、その組成物は、代表的には、医療専門家または手術専門家、例えば、眼科医(その組成物を投与する人物と同じであっても異なっていてもよい)の正しい推奨に基づいて、その障害を処置するために投与される。
本発明は、提供の工程が明示的に含まれていない実施形態および提供の工程が含まれていない実施形態を含む。本発明はまた、被験体を黄斑変性症、CNV、RNV、増殖性網膜症、糖尿病性網膜症、緑内障、眼球の炎症またはこれらの任意の組み合わせを特徴とする眼の障害の危険性があるかまたはそれに罹患していると同定する工程を含む実施形態を含む。
【0293】
範囲が与えられる場合、終点は含まれる。さらに、別途示されないか、または文脈および当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表される値は、文脈が明らかに他のことを指示していない限り、本発明の様々な実施形態において述べられる範囲内の任意の特定の値または部分範囲をその範囲の下限の単位の10分の1まで採用し得ることが理解されるべきである。
【0294】
さらに、従来技術の範囲内に入る本発明の任意の特定の実施形態は、請求項のいずれか1つ以上から明確に排除され得ることが理解されるべきである。そのような実施形態は、当業者に公知であると思われるので、たとえその排除が、本明細書中で明示的に示されなかったとしても、それらは排除され得る。本発明の組成物の任意の特定の実施形態(例えば、任意の特定の化合物)、任意の投与の方法、任意の眼の障害もしくは状態またはその特徴、あるいは任意の被験体の特徴は、任意の1つ以上の請求項から排除され得る。
【図面の簡単な説明】
【0295】
図1-1】図1A〜1Eは、眼の前部および後部(1Aおよび1B)ならびに眼の外層(1C〜1E)の模式図を示している。図1Cは、正常な眼を示している。図1Dは、非滲出性ARMDに罹患している眼を示している。図1Eは、浸出性ARMDに罹患している眼を示している。ONL=外顆粒層;IS=内節;OS=外節;RPE=網膜色素上皮層;BM=ブルッフ膜;CC=脈絡毛細管板。出典Tezel,T.ら、Trends in Molecular Medicine,10(9),417−420,2004。
図1-2】図1A〜1Eは、眼の前部および後部(1Aおよび1B)ならびに眼の外層(1C〜1E)の模式図を示している。図1Cは、正常な眼を示している。図1Dは、非滲出性ARMDに罹患している眼を示している。図1Eは、浸出性ARMDに罹患している眼を示している。ONL=外顆粒層;IS=内節;OS=外節;RPE=網膜色素上皮層;BM=ブルッフ膜;CC=脈絡毛細管板。出典Tezel,T.ら、Trends in Molecular Medicine,10(9),417−420,2004。
図2図2は、コンプスタチンおよびコンプスタチンに比べて補体阻害活性が高いコンプスタチンアナログ(配列番号14)の概略図を示している。この図は、ヒト補体の阻害に対するコンプスタチンおよびコンプスタチンアナログのIC50も示している。図の上部に示されているペプチド鎖中のアミノ酸4および9は、コンプスタチンについては下の左側およびコンプスタチンアナログについては下の右側に示されているとおりである。従って、ペプチド鎖中の「X4」および「X9」と記された四角は、それぞれコンプスタチン(左)およびコンプスタチンアナログ(右)について図の下部に示されているアミノ酸X4およびX9の側鎖を表している。
図3図3は、コンプスタチンよりも高い阻害性補体阻害活性を有するコンプスタチンアナログ(コンプスタチンC;配列番号28)の概略図を示している(Katragaddaら、49(15)pp 4616−4622,2006)。
図4図4は、処置を受けていないマウスまたはアルブミンの硝子体内注射、ワクシニア補体制御タンパク質(VCP)(10または30μg)の硝子体内注射もしくはコンプスタチンアナログ(30μg)の硝子体内注射を受けたマウスにおける平均CNV面積(単位μm)の比較を示しているグラフである。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]