【文献】
Dakrong Pissuwan et al.,Trends Biotechnol.,2010年 4月,28(4),207-213
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記標識分子がビオチンであるとともに、前記標識に特異的に結合する前記分子がアビジンまたはストレプトアビジンであり、あるいは、前記標識分子がアビジンまたはストレプトアビジンであるとともに、前記標識に特異的に結合する前記分子がビオチンである請求項3に記載のバイオセンサ。
前記第2の認識分子(検出生体分子)が抗体あり、表面プラズモンバンドを有する前記金属ナノ粒子は、前記検出生体分子のFc粒子を認識できる抗Fc抗体により機能化される請求項3に記載のバイオセンサ。
前記認識分子は、抗体、ペプチド、酵素、多糖類、核酸(DNA)、アプタマー、または、ペプチド核酸(PNA)からなる群より選択される請求項1から5のいずれか一項に記載のバイオセンサ。
前記感熱紙は、ガラス、シリコン、セラミック、ポリスチレン、セルロース膜、セルロースナイトレート膜、または、セルロースアセテート膜からなる群より選択される請求項11に記載のバイオセンサ。
前記標識分子がビオチンであるとともに、前記標識に特異的に結合する前記分子がアビジンまたはストレプトアビジンであり、あるいは、前記標識分子がアビジンまたはストレプトアビジンであるとともに、前記標識に特異的に結合する前記分子がビオチンである請求項14に記載の方法。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様は、
a.標的検体を認識できる認識分子(捕捉生体分子)と、
b.ステップa)の認識分子が固定される或いは固定されていると認められる感熱表面を有する担体と、
c.外部光源と、
d.標的検体を認識できる第2の認識分子(検出生体分子)と、
e.表面プラズモンバンドを有する金属ナノ粒子と、
を備える、検体の視覚的な検出のためのバイオセンサであって、
外部光源で照射されるときに金属ナノ粒子から発生する熱により、検体が存在する担体領域の色が変化することによって、検体が視覚的に検出される、バイオセンサに関する。
【0007】
本発明の第1の態様の好ましい実施形態において、検体の視覚的な検出のためのバイオセンサは、
a.感熱表面を有する担体上に固定される、標的検体を認識できる認識分子(捕捉生体分子)と、
b.外部光源と、
c.表面プラズモンバンドを有する金属ナノ粒子の表面に結合される、標的検体を認識できる第2の認識分子(検出生体分子)と、
を備え、
外部光源で照射されるときに金属ナノ粒子から発生する熱により、検体が存在する担体領域の色が変化することによって、検体が視覚的に検出される。
【0008】
本発明の第2の態様は、
a.標的検体を認識できる認識分子(捕捉生体分子)と、
b.感熱表面を有する担体と、
c.外部光源と、
d.任意に標識分子に結合されていてもよい、標的検体を認識できる第2の認識分子(検出生体分子)と、
e.検出生体分子または検出生体分子を改質した標識分子を特異的に認識する生体分子により機能化された、表面プラズモンバンドを有する金属ナノ粒子と、
を備える、検体の視覚的な検出のためのバイオセンサであって、
外部光源で照射されるときに金属ナノ粒子から発生する熱により、検体が存在する担体領域の色が変化することによって、検体が視覚的に検出される、バイオセンサに関する。
【0009】
本発明の第3の態様は、
a.標的検体を認識できる認識分子(捕捉生体分子)と、
b.感熱表面を有する担体と、
c.外部光源と、
d.1または複数のビオチン分子に結合される標的検体を認識できる第2の認識分子(検出生体分子)と、
e.ビオチン分子を特異的に認識する、ストレプトアビジン分子、アビジン分子または同様のものにより機能化された、表面プラズモンバンドを有する金属ナノ粒子と、
を備える、本発明の第2の態様で規定される検体の視覚的な検出のためのバイオセンサであって、
外部光源で照射されるときに金属ナノ粒子から発生する熱により、検体が存在する担体領域の色が変化することによって、検体が視覚的に検出される、バイオセンサに関する。
【0010】
本発明の第4の態様は、
a.標的検体を認識できる認識分子(捕捉生体分子)と、
b.感熱表面を有する担体と、
c.外部光源と、
d.第2の認識分子であって、前記分子が標的検体を認識できる抗体(検出抗体)である、第2の認識分子と、
e.検出抗体に結合する抗Fc抗体により機能化された、表面プラズモンバンドを有する金属ナノ粒子と、
を備える、本発明の第2の態様で規定される検体お視覚的な検出のためのバイオセンサであって、
外部光源で照射されるときに金属ナノ粒子から発生する熱により、検体が存在する担体領域の色が変化することによって、検体が視覚的に検出される、バイオセンサに関する。
【0011】
本発明の態様のうちのいずれかの特定の実施形態において、認識分子(捕捉生体分子および検出生体分子)は、抗体、ペプチド、酵素、多糖類、核酸(DNA、RNA)、アプタマーまたはペプチド核酸(PNA)、好ましくはDNA分子および抗体からなる群より選択される。
【0012】
本発明の態様のうちのいずれかの他の実施形態では、光源がレーザであり、この場合、レーザは、金属ナノ粒子の表面プラズモンバンドの最大の波長に等しい波長を有する。
【0013】
本発明の2つの態様のいずれかの他の実施形態において、金属ナノ粒子は、
a.金ナノ粒子
b.銀ナノ粒子
c.銅ナノ粒子
からなる群より選択される。
【0014】
金属ナノ粒子は三角形金ナノプリズムであることが好ましい。
【0015】
本発明の2つの態様のいずれかの他の実施形態において、担体の表面は、感熱紙またはセルロース膜、セルロースナイトレート膜またはセルロースアセテート膜を備える。好ましくは、感熱紙には、ガラス、シリコン、セラミック、ポリスチレン、セルロース膜、セルロースナイトレート膜またはセルロースアセテート膜からなる群より選択される第2の担体が付着される。
【0016】
本発明の第5の態様は、
a.決定されるべき検体が存在するサンプルを、検体認識分子(捕捉生体分子)がその上に固定された担体に対して加えるステップと、
b.第2の検体認識分子(検出生体分子)により機能化された金属ナノ粒子を用いてステップa)の担体をインキュベートするステップと、
c.任意に、担体が感熱表面を既に備えていない場合には前記表面上に担体を配置するステップと、
d.外部光源を用いてステップb)またはc)の担体に照射するステップと、
を備える検体の視覚的な検出のための本発明の第1の態様に係るバイオセンサの使用に関する。
【0017】
本発明の第6の態様は、
a.決定されるべき検体が存在するサンプルを、検体認識分子(捕捉生体分子)がその上に固定された担体に対して加えるステップと、
b.任意に標識がタグ付けされていてもよい第2の検体認識分子(検出生体分子)を用いてステップa)の担体をインキュベートするステップと、
c.検出生体分子または検出生体分子を改質した標識を特異的に認識する生体分子により機能化された金属ナノ粒子を用いてステップb)の担体をインキュベートするステップと、
d.任意に、担体が感熱表面を既に備えていない場合には前記表面上に担体を配置するステップと、
e.外部光源を用いてステップc)またはd)の担体に照射するステップと、
を備える検体の検出のための、本発明の第2の態様に規定された検体の視覚的な検出のためのバイオセンサの使用に関する。
【0018】
本発明の第6の態様の好ましい実施形態は、
a.決定されるべき検体が存在するサンプルを、検体認識分子(捕捉生体分子)がその上に固定された担体に対して加えるステップと、
b.少なくとも1つのビオチン分子がタグ付けされる第2の検体認識分子(検出生体分子)を用いてステップa)の担体をインキュベートするステップと、
c.ストレプトアビジンにより機能化された金属ナノ粒子を用いてステップb)の担体をインキュベートするステップと、
d.任意に、担体が感熱表面を既に備えていない場合には前記表面上に担体を配置するステップと、
e.外部光源を用いてステップc)またはd)の担体に照射するステップと、
を備える検体の検出のためのバイオセンサの使用に関する。
【0019】
本発明の第6の態様の他の好ましい実施形態は、
a.決定されるべき検体が存在するサンプルを、検体認識分子(捕捉生体分子)がその上に固定された担体に対して加えるステップと、
b.抗体である第2の検体認識分子(検出生体分子)を用いてステップa)の担体をインキュベートするステップと、
c.抗Fc抗体により機能化された金属ナノ粒子を用いてステップb)の担体をインキュベートするステップと、
d.任意に、担体が感熱表面を既に備えていない場合には前記表面上に担体を配置するステップと、
e.外部光源を用いてステップc)またはd)の担体に照射するステップと、
を備える検体の検出のためのバイオセンサの使用に関する。
【0020】
本発明の第7の態様は、
a.決定されるべき検体が存在するサンプルに対して、第2の検体認識分子(検出生体分子)により機能化された金属ナノ粒子を加えるステップと、
b.ナノ粒子に結合される検体をステップa)のサンプルから好ましくは遠心分離プロセスによって抽出するステップと、
c.ステップbの抽出物を、検体認識分子(捕捉生体分子)がその上に固定された担体に対して加えるステップと、
d.任意に、担体が感熱表面を既に備えていない場合には前記表面上に担体を配置するステップと、
e.外部光源を用いてステップc)またはd)の担体に照射するステップと、
を備える検体の検出のための本発明の第1の態様に規定されるバイオセンサの使用に関する。
【0021】
本発明の第8の態様は、添加物、薬剤、病原微生物、食品成分、農薬、毒性化合物の検出のための、あるいは、生物化学的酸素要求量の分析における先の態様または実施形態のいずれかに係るバイオセンサの使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、(i)標的検体を認識できる認識分子(捕捉生体分子)と、(ii)感熱表面を有する担体と、(iii)外部光源と、(iv)標的検体を認識できる第2の認識分子(検出生体分子)と、(v)表面プラズモンバンドを有する金属ナノ粒子とを備えるバイオセンサであって、外部光源で照射されるときに金属ナノ粒子から発生する熱により、検体が存在する担体領域の色が変化することによって、検体が視覚的に検出されることを特徴とするバイオセンサに関する。
【0024】
本発明のバイオセンサは、金属ナノ粒子の光熱変換特性を信号変換システムとして利用する。バイオセンサにおいてこのシステムをタグとして使用する理由は、表面プラズモン吸収帯の存在のためである。これらの吸収帯は、ナノ粒子に衝突する光の周波数が励起を引き起こす粒子伝導帯内の電子の集団振動周波数と共鳴状態にあるときにもたらされる。この現象は、「局在表面プラズモン共鳴」(LSPR)として知られる。共鳴帯のスペクトルにおける位置は、粒子の形状、サイズおよび構造(中空または中実)、ならびに粒子が見出される誘電体媒質に大きく依存する。LSPRは、高いモル吸光係数(〜3×10
11M
−1cm
−1)をもたらし、効率が106個の蛍光プローブ分子に相当するとともに、ナノ粒子付近の局所電場がかなり増大する。
【0025】
金ナノ粒子、銀ナノ粒子、または銅ナノ粒子などの金属ナノ粒子は、この表面プラズモン共鳴効果を有する。レーザなどの適切な周波数を伴う高強度外部光源を用いて照射されると、これらの粒子は、吸収エネルギーの一部を熱の形態で解放することができ、それにより、粒子表面の周囲で局所的な温度増大が引き起こされる。
【0026】
この制御された発熱は、開発されてきた新規な検出システムの基盤である。この発生された熱は、適切に選択された感熱表面にかなりの変化をもたらす。この意味で、本発明の発明者等は、驚くべきことに、検出手段としての外部光源により照射されるときに金属ナノ粒子によってもたらされる、検体が存在する担体領域の色変化を使用して行なわれた実験において、ピコグラム程度の検出限界が得られることを見出した。したがって、本発明の例4は、本発明の視覚検出を使用して検出限界がどのようにして得られたのかを明らかにし、前記限界は、検出手段としての赤外線カメラを使用して行なわれる実験で得られる限界よりも低い程度、したがって、高い感度を有する。この驚くべき結果は、以下の特徴を有するバイオセンサの開発をもたらす。これらの特徴とは、すなわち、(i)高い感度、(ii)バイオセンサが専ら対象の検体だけと相互に作用して同様の特性を有する他の検体と相互に作用しないような高い選択性または特異性、(iii)分析されるべきサンプルに起因して変換システムにノイズ問題が存在しないような高い信頼性、(iv)低い生産コスト、(v)必要に応じて迅速な動作を可能にする短い分析時間、(vi)サンプル前処理が不要となり、時間、材料および試薬の節減がもたらされること、(vii)簡単に取り扱えるため、バイオセンサを使用するために特殊な者が必要とされわけではないこと、(viii)分析をリアルタイムで行なうことができる能力、および(ix)その場で分析を行なうことができるようにするための携帯性である。
【0027】
したがって、本発明の第1の態様は、
a.標的検体を認識できる認識分子(捕捉生体分子)と、
b.ステップa)の認識分子(捕捉生体分子)がその上に固定される感熱表面を有する担体と、
c.外部光源と、
d.標的検体を認識できる第2の認識分子(検出生体分子)と、
e.表面プラズモンバンドを有する金属ナノ粒子と、
を備える、検体の視覚的な検出のためのバイオセンサであって、
外部光源で照射されるときに金属ナノ粒子から発生する熱により、検体が存在する担体領域の色が変化することによって、検体が視覚的に検出される、バイオセンサに関する。
【0028】
本発明の文脈において、視覚的な検出は、赤外線カメラなどの任意のタイプの検出用機器を使用する必要なく肉眼で区別され得る任意の検出として理解されるという事実を強調しなければならない。
【0029】
したがって、本発明の第1の態様の好ましい実施形態において、検体の視覚的な検出のためのバイオセンサは、
a.標的検体を認識できる認識分子(捕捉生体分子)と、
b.ステップa)の認識分子(捕捉生体分子)がその上に固定される感熱表面を有する担体と、
c.外部光源と、
d.標的検体を認識できる第2の認識分子(検出生体分子)と、
e.表面プラズモンバンドを有する金属ナノ粒子と、
を備え、
バイオセンサは、外部光源により照射されるときの金属ナノ粒子の光熱変換を検出できる任意のタイプの機器を備えない。
【0030】
本発明の第1の態様の他の好ましい実施形態において、バイオセンサは、
a.感熱表面を有する担体上に固定される、標的検体を認識できる認識分子(捕捉生体分子)と、
b.外部光源と、
c.表面プラズモンバンドを有する金属ナノ粒子の表面に結合される、標的検体を認識できる第2の認識分子(検出生体分子)と、
を備え、
外部光源で照射されるときに金属ナノ粒子から発生する熱により、検体が存在する担体領域の色が変化することによって、検体が視覚的に検出される。
【0031】
本発明の文脈において、外部光源は、金、銀、銅、または、これらの任意の合金または酸化状態に基づく金属粒子のLSPR帯の励起を引き起こすことできる能力を伴う380nm〜1100nmのエネルギー、好ましくは金赤外線範囲(750〜1100nm)のエネルギーを有する任意の電磁放射線源として理解される。これは、スペクトルの可視範囲で吸収するサンプル中に存在する妨害生体分子(ヘモグロビンなど)によるエネルギー吸収がそのエネルギー範囲で起こらないからである。外部光源は、単色光源または多色光源、好ましくは単色光源であってもよい。
【0032】
本発明の文脈において、表面プラズモンバンドを有する金属ナノ粒子は、金属原子のそれらの任意の酸化状態の任意の単結晶または多結晶のクラスターまたはそれらの任意の合金として理解され、これらは全てが1〜1000nm、好ましくは1〜200nmの幾何学的寸法を有する。本発明の好ましい実施形態では、前記金属原子が貴金属である。本発明の更に好ましい実施形態において、前記金属は、金原子、銀原子または銅原子である。本発明の更に一層好ましい実施形態では、前記金属原子が管状もしくは三角形の、金原子または銀原子である。
【0033】
本発明の文脈において、認識分子または捕捉生体分子は、任意のタイプの化学的な或いは生物学的な相互作用によって特定の検体を特異的に認識できる任意の分子として理解される。
【0034】
本発明の文脈において、第2の認識分子または検出生体分子は、任意のタイプの化学的な或いは生物学的な相互作用によって特定の検体を特異的に認識できる任意の分子として理解される。
【0035】
本発明のバイオセンサにおいて認識要素として使用される分子は、経時的に安定であるとともに、担体上およびナノ粒子の表面上に固定された時点でそれらの構造およびそれらの生物学的活動を保つことに加えて、他の化合物の存在下で特定の検体を認識できる十分に選択的な親和性を有さなければならない。
【0036】
抗体、ペプチド、酵素、タンパク質、多糖類、核酸(DNA)、アプタマーまたはペプチド核酸(PNA)は、開発されたシステムにおいて認識分子として使用され得る。
【0037】
殆どの場合、最も幅広く使用される生体受容体は、核酸、抗体または抗体フラグメントであり、抗体または抗体フラグメントは、診断に役立つ最も多く技術を生じさせてきたものである。その理由は、ほぼ無制限の量の抗体をそれらの対応する抗原に関して異なる選択性と高い親和性とを伴って生み出すための免疫システムの柔軟性にある。今日では、サイズにかかわらずほぼ任意の分子からモノクローナル抗体または抗体フラグメントを得ることができる。一方、抗体により与えられる利点のうちの1つは、これらのタンパク質のそれらの特異性とは無関係な構造的な同質性である。これは、免疫化学的試薬としてのその使用、例えばトランスデューサの表面上に対するその固定または保持に関連する標準化方法を可能にする。構造および抗原認識能力を保つ抗体フラグメント(Fabまたは一本鎖Fvフラグメント)、並びに、組み換え抗体、例えば第2世代モノクローナル抗体または低分子化抗体は、分子生物学的技術を使用することによって認識分子として生成され得る。
【0038】
一方、アプタマーは、それらの小さいサイズおよび低い免疫原性に起因して特定の用途で抗体を置き換えることができる分子である。アプタマーは、それらが抗体と同様の態様で標的分子に結合できるようにする明確な三次元形状を有する一本鎖核酸である。アプタマーは、小分子の最適な特徴(低い免疫原性、高い拡散など)と抗体の最適な特徴(高い特異性および親和性、並びに、化学的安定性)とを組み合わせる。モノクローナル抗体に関する他の利点は、それらが生物学的に発現されるのではなく化学的に合成されるという点である。
【0039】
核酸は、相補的なDNA配列中の一塩基の変化を検出することができる。核酸は、遺伝子配列プロセスや遺伝子発現分析において、および、特定の疾病と関連するDNAの突然変異および変化の検出において使用され得る。これは、既に特定された遺伝子の構造に対応するヌクレオチド配列を合成的に構成できるからである。今日では、その使用がPNA鎖に取って代えられている。これは、PNA鎖がより高い生物学的安定性(様々な酵素による減成に対する安定性)および化学的安定性(pHまたはイオン力の変化に対して耐性がある)を有するからである。また、DNAとは異なり、PNA鎖は、2’−デオキシ−D−リボース単位もリン酸ジエステル結合も含まないため、ハイブリダイゼーション中に静電反発力を低下させる中立構造を有し、それにより、より低い非特異的吸着を有することに加えて、より強力な結合を確立する。
【0040】
センサの認識要素(捕捉生体分子)は、通常は、マトリックス内の物理的な保持(取り込み)によって、イオン相互作用または疎水性相互作用によるマトリックス上の物理的な吸着によって、あるいは、共有結合による結合によって、感熱表面を有する担体上に固定される。
【0041】
この意味で、本発明の文脈では、感熱表面を有する担体は、加熱される際に構造的変化を受けて現像をもたらすことができる任意の表面として理解される。その熱感度に起因して温度増大に晒された後に現像信号を生じさせる感熱紙が感熱表面として使用されることが好ましい。感熱紙は、(それを形成する化学成分にかかわらず)温度増大に晒された後に互いと反応して画像を生じさせることができる色素、感光剤および発色現像液を組み込む熱層を有する任意の紙と見なされる。他の好ましい実施形態では、温度変化などの外部刺激に晒された後に収縮、曲げ、色変化、状態変化、発光などの高分子特性における応答を生じさせる任意のスマートポリマーが感熱表面として使用される。一種の温度感受性高分子としては、PNIPAM、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N−ビニルピペリジン)、または、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)が挙げられる。
【0042】
本発明の1つの実施形態において、システムの感熱表面を有する担体は、セルロースまたはその誘導体(セルロースナイトレート、セルロースアセテートなど)から形成される膜または感熱紙など、分子認識が行なわれる少なくとも1つの感熱担体を備える。
【0043】
本発明の他の実施形態では、システムの感熱表面を有する担体が2つの担体を備える。捕捉生体分子が固定される第1の担体は、セルロースまたはその誘導体(セルロースナイトレート、セルロースアセテートなど)、あるいは、ポリスチレン、セラミック、シリコンまたはガラスなどの他の材料から形成される膜である。温度増大に晒された後に現像信号を生じさせる感熱表面から成る第2の担体が、この第1の担体に付着される。
【0044】
本発明の第2の態様は、
a.標的検体を認識できる認識分子(捕捉生体分子)と、
b.感熱表面を有する担体と、
c.外部光源と、
d.任意に標識分子に結合されていてもよい、標的検体を認識できる第2の認識分子(検出生体分子)と、
e.検出生体分子または検出生体分子を改質した標識を特異的に認識する生体分子により機能化された、表面プラズモンバンドを有する金属ナノ粒子と、
を備える、検体の視覚的な検出のためのバイオセンサであって、
外部光源で照射されるときに金属ナノ粒子から発生する熱により、検体が存在する担体領域の色が変化することによって、検体が視覚的に検出される、バイオセンサに関する。なお、この場合も先と同様に、視覚的な検出は、赤外線カメラなどの任意のタイプの検出用機器を使用する必要なく肉眼で区別され得る任意の検出として理解される。したがって、本発明の第2の態様のバイオセンサは、外部光源により照射されるときの金属ナノ粒子の光熱変換を検出できる任意のタイプの機器を備えない。
【0045】
本発明の文脈において、標識分子は、リガンド−タンパク質型の相互作用における親和性または核酸鎖間のハイブリダイゼーションによる分子認識における親和性によって認識される分子として理解される。第1のケースでは、数ある中でも特に、抗原、ホルモン、ビタミン、ポリヒスチジンタグまたはレクチン領域を用いて検出生体分子が改質されることが理解される。したがって、抗体、アプタマー、受容体、結合タンパク質、二価金属イオンで改質されたトリカルボン酸、または検出生体分子の標識と特異的に相互作用できる糖をそれぞれ用いてNPが機能化されることが理解される。第2のケースでは、自然発生的な核酸(デオキシリボ核酸、すなわち、DNA、リボ核酸、すなわち、RNA)または人工的な核酸(ペプチド核酸、すなわち、PNA、モルホリンなど)またはこれらの両方の組み合わせ(DNA−DNA、PNA−DNA、DNA−PNA、PNA−PNAなど)の相補鎖を用いて検出生体分子および金NPの両方が機能化されることが理解される。
【0046】
本発明の第3の態様は、
a.標的検体を認識できる認識分子(捕捉生体分子)と、
b.感熱表面を有する担体と、
c.外部光源と、
d.1または複数のビオチン分子に結合される標的検体を認識できる第2の認識分子(検出生体分子)と、
e.ビオチン分子を特異的に認識する、ストレプトアビジン分子、アビジン分子、または、同様のものにより機能化される表面プラズモンバンドを有する金属ナノ粒子と、
を備える、本発明の第2の態様で規定される視覚的な検出のためのバイオセンサであって、
外部光源で照射されるときに金属ナノ粒子から発生する熱により、検体が存在する担体領域の色が変化することによって、検体が視覚的に検出される、バイオセンサに関する。
【0047】
本発明の第4の態様は、
a.標的検体を認識できる認識分子(捕捉生体分子)と、
b.感熱表面を有する担体と、
c.外部光源と、
d.標的検体を認識できる第2の認識分子(検出抗体)と、
e.検出抗体に結合する抗Fc抗体または抗lgG抗体により機能化される表面プラズモンバンドを有する金属ナノ粒子と、
を備える、本発明の第2の態様で規定される視覚的な検出のためのバイオセンサであって、
外部光源で照射されるときに金属ナノ粒子から発生する熱により、検体が存在する担体領域の色が変化することによって、検体が視覚的に検出される、バイオセンサに関する。
【0048】
提案された装置は、検体認識が行なわれる担体上に固定される「認識」分子、すなわち、捕捉生体分子(それが抗体、DNAプローブ、PNAプローブなどのタンパク質であるかどうかにかかわらず)と、直接的であろうと或いはリーダータンパク質及び/又は標識を介して間接的であろうと金属ナノ粒子の表面に結合される第2の検出分子、すなわち、検出生体分子(第2の抗体、または、相補的なDNAプローブ)との間の、「サンドイッチ」型認識システムである。担体およびナノ粒子を対応する認識分子により機能化することにより、同じ方策に続いて多くの検体を検出することができる。
【0049】
また、本発明の第2〜第4の態様は、特に、汎用の検出システムに関する。実際に、本発明の第3の態様によれば、ビオチン標識検出生体分子を使用するとともにストレプトアビジンを用いて金属ナノ粒子を機能化することによってこのタンパク質と共役させられる同じナノ粒子をどのようにしてアビジン−ビオチン相互作用に基づいて異なる検体認識のために使用できるのかが検証され、それにより、決定されるべき検体ごとにナノ粒子−検出生体分子共役を作る必要がなくなる。他の例は本発明の第4の態様であり、この態様において、任意の他の抗体のFc領域を認識できる抗Fc抗体により金属ナノ粒子を機能化することに基づく検出システムは、このシステムの検出生体分子が抗体であれば、異なる検体認識のために同じナノ粒子を使用できる。
【0050】
したがって、本発明の装置は、ピコグラム程度の感度限界をもって単一の検査で複数のサンプルを分析できる。
【0051】
本発明の単なる例示的な実施形態において、特定のサンプルにおける検体の検出は、第1のステップにおいて、担体上に、例えばセルロースナイトレート膜上に認識分子(捕捉生体分子)を固定することによって行なうことができる。第2のステップは、抗原−抗体認識が行なわれるのに十分な時間を残して、決定されるべき検体が存在するサンプルを担体に加えることによって行なわれる。最後に、第3のステップにおいて、担体は、第2の認識分子(検出生体分子)により機能化されたナノ粒子を用いてインキュベートされる。分子認識後、担体が既に感熱表面を有していなければ、外部光源、例えば近赤外線放射レーザにより照射されるために、担体が感熱表面上に配置され、それにより、検体が検出される。
【0052】
本発明の第2〜第4の態様の場合、検査は、更なるステップから成る。例えば、本発明の第3の態様で規定される装置を使用する場合には、第3のステップにおいて、認識分子(検出生体分子)、例えばビオチン標識二次抗体の溶液を用いて担体がインキュベートされる。対応する洗浄を行なった後、担体を、過剰なナノ粒子が前記担体から洗い落とされた時点で、最終的に放射レーザを用いて照射するために、ストレプトアビジンにより機能化されたナノ粒子を用いたインキュベーションの第4のステップが行なわれる。
【0053】
サンプルを用いたインキュベーションのステップ後にナノ粒子が抗Fc抗体により機能化された本発明の第4の態様の場合には、検出生体分子としての抗体を用いたインキュベーションの第3のステップが行なわれる。対応する洗浄を行なった後、第4のステップにおいて、担体に前記担体が洗浄された時点で放射レーザを最終的に照射するために、抗Fc抗体により機能化されたナノ粒子が加えられる。
【0054】
本発明のバイオセンサの検出限界を高めることができる可能性は、最初に、機能化されたナノ粒子をサンプル上に直接に加えることによってサンプルで検体認識を行なうことから成る。したがって、抗原−抗体認識が行なわれた時点で、ナノ粒子を伴う検体を遠心分離によって抽出することができる。このステップは、サンプル体積にかかわらず検体を凝縮できるとともに、検体が見出されるサンプルの残りの成分から検体を抽出できる。方法の残りの部分は、前述した方法と同じ方法で行なわれ、検体を伴うナノ粒子が回収されると直ぐに、認識分子が固定された検出表面を用いてナノ粒子がインキュベートされる。
【0055】
したがって、(表面プラズモン共鳴効果において)変換システムとしての表面プラズモンバンドを有する金属ナノ粒子の特性に基づく前述したバイオセンサを用いると、サンプル中で様々な検体を迅速かつ選択的にピコグラム程度の非常に低い濃度で直接に検出することができる。
【0056】
他方で、本発明は、非排他的に視覚的な検体検出方法において有用なバイオセンサにも関連する。具体的には、本発明は、
a.標的検体を認識できる認識分子(捕捉生体分子)と、
b.ステップa)の認識分子が固定される担体と、
c.外部光源と、
d.標的検体を認識できる第2の認識分子(検出生体分子)と、
e.サーモパイルと、
f.表面プラズモンバンドを有する金属ナノ粒子と、
を備える、バイオセンサであって、
検体は、外部光源により照射されるときの金属ナノ粒子の光熱変換をサーモパイルが検出するときに検出される、バイオセンサ(以下、「サーモパイルバイオセンサ1」という)に関する。
【0057】
このタイプのバイオセンサのアセンブリが
図8および例5に示される。
【0058】
本発明の他の好ましい実施形態において、サーモパイルバイオセンサ1は、
a.感熱表面を有する担体上に固定される、標的検体を認識できる認識分子(捕捉生体分子)と、
b.外部光源と、
c.表面プラズモンバンドを有する金属ナノ粒子の表面に結合される、標的検体を認識できる第2の認識分子(検出生体分子)と、
を備える。
【0059】
本発明の他の態様は、
a.標的検体を認識できる認識分子(捕捉生体分子)と、
b.担体と、
c.外部光源と、
d.任意に標識分子に結合される、標的検体を認識できる第2の認識分子(検出生体分子)と、
e.サーモパイルと、
f.検出生体分子を改質した標識または検出生体分子を特異的に認識する生体分子により機能化される表面プラズモンバンドを有する金属ナノ粒子と、
を備える、バイオセンサであって、
検体は、外部光源により照射されるときの金属ナノ粒子の光熱変換をサーモパイルが検出するときに検出される、バイオセンサ(以下、「サーモパイルバイオセンサ2」という)に関する。
【0060】
本発明の更なる態様は、それが規定されてしまったサーモパイルバイオセンサ2であって、
a.標的検体を認識できる認識分子(捕捉生体分子)と、
b.担体と、
c.外部光源と、
d.1または複数のビオチン分子に結合される標的検体を認識できる第2の認識分子(検出生体分子)と、
e.サーモパイルと、
f.ビオチン分子を特異的に認識する、ストレプトアビジン分子、アビジン分子、または、同様のものにより機能化される表面プラズモンバンドを有する金属ナノ粒子と、
を備える、サーモパイルバイオセンサ2に関する。
【0061】
本発明の他の更なる態様は、上に規定されるサーモパイルバイオセンサ2であって、
a.標的検体を認識できる認識分子(捕捉生体分子)と、
b.担体と、
c.外部光源と、
d.標的検体を認識できる第2の認識分子(検出抗体)と、
e.サーモパイルと、
f.検出抗体に結合する、抗Fc抗体または抗lgG抗体により機能化される表面プラズモンバンドを有する金属ナノ粒子と、
を備える、サーモパイルバイオセンサ2に関する。
【0062】
提案された装置は、検体認識が行なわれる担体上に固定される「認識」分子、すなわち、捕捉生体分子(それが抗体、DNAプローブ、PNAプローブなどのタンパク質であるかどうかにかかわらず)と、直接的であろうと或いはリーダータンパク質及び/又は標識を介して間接的であろうと金属ナノ粒子の表面に結合される第2の検出分子、すなわち、検出生体分子(第2の抗体、または、相補的なDNAプローブ)との間の、「サンドイッチ」型認識システムである。担体およびナノ粒子を対応する認識分子により機能化することにより、同じ方策に続いて多くの検体を検出することができる。
【0063】
また、本発明の最後の2つの態様は、特に、汎用の検出システムに関する。実際に、本発明のこれらの態様によれば、ビオチン標識検出生体分子を使用するとともにストレプトアビジンを用いて金属ナノ粒子を機能化することによってこのタンパク質と共役させられる同じナノ粒子をどのようにしてアビジン−ビオチン相互作用に基づいて異なる検体認識のために使用できるのかを検証することができ、それにより、決定されるべき各検体ごとにナノ粒子−検出生体分子共役を作らなければならないことが避けられる。任意の他の抗体のFc領域を認識できる抗Fc抗体により金属ナノ粒子を機能化することに基づく検出システムは、このシステムの検出生体分子が抗体であれば、異なる検体認識のために同じナノ粒子を使用できる。
【0064】
また、本発明は、以下の検体検出方法に関する。
【0065】
(1)検体の検出方法であって、
a.決定されるべき検体が存在するサンプルを、検体認識分子(捕捉生体分子)がその上に固定された担体に対して加えるステップと、
b.第2の検体認識分子(検出生体分子)により機能化された金属ナノ粒子を用いてステップa)の担体をインキュベートするステップと、
c.外部光源を用いてステップb)またはc)の担体に照射するステップと、
d.外部光源により照射されるときの金属ナノ粒子の光熱変換を検出できるサーモパイルを使用することにより検体を検出するステップと、
を備える方法。
【0066】
(2)検体の検出方法であって、
a.決定されるべき検体が存在するサンプルを、検体認識分子(捕捉生体分子)がその上に固定された担体に対して加えるステップと、
b.少なくとも1つの標識分子に結合される第2の検体認識分子(検出生体分子)を用いてステップa)の担体をインキュベートするステップと、
c.標識に特異的に結合する少なくとも1つの分子により機能化される金属ナノ粒子を用いてステップb)の担体をインキュベートするステップと、
d.外部光源を用いてステップb)またはc)の担体に照射するステップと、
d.外部光源により照射されるときの金属ナノ粒子の光熱変換を検出できるサーモパイルを使用することにより検体を検出するステップと、
を備える方法。
【0067】
前述した方法の好ましい実施形態では、標識分子がビオチンであるとともに、標識に特異的に結合する分子がアビジンまたはストレプトアビジンであり、あるいは、標識分子がアビジンまたはストレプトアビジンであるとともに、標識に特異的に結合する分子がビオチンである。
【0068】
(3)検体の検出方法であって、
a.決定されるべき検体が存在するサンプルを、検体認識分子(捕捉生体分子)がその上に固定された担体に対して加えるステップと、
b.検出抗体である第2の検体認識分子(検出生体分子)を用いてステップa)の担体をインキュベートするステップと、
c.抗Fc抗体により機能化される金属ナノ粒子を用いてステップb)の担体をインキュベートするステップと、
d.外部光源を用いてステップb)またはc)の担体に照射するステップと、
e.外部光源により照射されるときの金属ナノ粒子の光熱変換を検出できるサーモパイルを使用することにより検体を検出するステップと、
を備える方法。
【0069】
(4)検体の検出方法であって、
a.決定されるべき検体が存在するサンプルに対して、第2の検体認識分子(検出生体分子)により機能化された金属ナノ粒子を加えるステップと、
b.金属ナノ粒子を伴う検体をステップa)のサンプルから抽出するステップと、
c.ステップbの抽出物を、検体認識分子(捕捉生体分子)がその上に固定された担体に対して加えるステップと、
e.外部光源を用いてステップc)の担体に照射するステップと、
f.外部光源により照射されるときの金属ナノ粒子の光熱変換を検出できるサーモパイルを使用することにより検体を検出するステップと、
を備える方法。
【0070】
本発明のバイオセンサは、何ら制限なく、添加物、薬剤、病原微生物、食品成分、農薬、毒性化合物の検出のために、あるいは、生物化学的酸素要求量の分析において使用できる。本発明のバイオセンサは、任意のタイプの検体の定性的および定量的の両方の検出のために使用できる。
【0071】
以下の例は、本発明を単に例示する役目を果たすにすぎない。
【実施例】
【0072】
例1:金属ナノ粒子の合成
−
金ナノ粒子の合成:金ナノ粒子の合成は、Turkevich et al. “A study of the nucleation and growth processes in the synthesis of colloidal gold”, Discussions of the Faraday Society 1951, 11, 55−75により記載される方法に引き続いて行なわれた。この方法によれば、200mlの0.01%四塩化金酸水溶液が撹拌下で100℃まで加熱され、その後、5mlの1%クエン酸三ナトリウム溶液が還元剤として加えられる。ナノ粒子が形成される時点で、室温に達するまで撹拌することにより赤色溶液が残される。519nmの表面プラズモンバンドを伴う14−16nmの直径を有する球状の金ナノ粒子が得られる。
【0073】
−
三角形金ナノプリズムの合成:三角形金ナノプリズムの合成は、Pelaz et al. “Tailoring the synthesis and heating ability of gold nanoprisms for bioapplications”, Langmuir 2012, 28, 8965−70により記載される方法に引き続いて行なわれた。この方法によれば、100mlの2mM四塩化金酸溶液が120mlの0.5mMNa
2S
2O
3溶液と混合され、9分間にわたって撹拌することによりそれが残され、その後、20−50mlの量の0.5mMNa
2S
2O
3溶液の第2の付加が行なわれる。750−1075nmの表面プラズモンバンドを伴う100−160nmのサイズを有する金ナノトライアングルが得られる。それらを異なる生体分子と共役させる前に、ナノプリズムがポリエチレングリコール(HS−PEG−COOH,5000g/mol)との結合によって不動態化されなければならない。そのため、10mlのナノプリズム溶液がNaOH溶液、pH12中で1mgのPEGを用いて一晩中インキュベートされる。最後に、過剰な試薬を除去するために、これらのナノプリズムが10000rpmで15分間にわたって遠心分離される。
【0074】
−
三角形銀ナノプリズムの合成:合成は、Zhang, Q et al, “A systematic study of the synthesis of silver nanoplates: Is citrate a “Magic” reagent?”, Journal of the American Chemical Society 2011, 133 (46), 18931−18939により記載される方法に引き続いて行なわれた。この方法によれば、24.14mLのミリQ水が、硝酸銀水溶液(0.05M、50μL)、クエン酸三ナトリウム水溶液(75mM、0.5mL)、および、過酸化水素水溶液(30%wt、60μL)に加えられるとともに、室温で積極的に撹拌することにより混合される。最後に、これらのナノプリズムを形成するために水素化ホウ素ナトリウム溶液(NaBH
4、100mM、250μL)が急速に加えられる。約3分後に、コロイド溶液が、小さい銀粒子の形成に起因する暗黄色から、最終的なナノプリズムにより発生される青みがかった色へと変化する。700nmの表面プラズモンバンドを有する70nmの銀ナノトライアングルが得られる。
【0075】
−
銅ナノキューブの合成:合成は、Murphy et al. “Solution−phase synthesis of Cu
2O nanocubes”, Nano Letters 2002, 3 (2), 231−234により記載される方法に引き続いて行なわれた。この方法によれば、0.25mLのCuSO
4水溶液が0.01−0.1Mの可変濃度を有する9mLのCTAB水溶液(セチル−トリメチル臭化アンモニウム)に対して加えられる。次に、0.5mLの0.1Mアスコルビン酸ナトリウム水溶液がCu(II)−CTAB溶液に加えられる。溶液は、55℃で5分間にわたって加熱された。この時間が経過した時点で、0.2mLの0.5M水酸化ナトリウムが加えられ、それにより、溶液中に黄色が即時に出現される。溶液は、10分間にわたって55℃に維持されるとともに、室温のまま冷やされる。30分後、溶液は、使用されるCTABの濃度に応じて、赤褐色、淡黄色、または、暗黄色に変わる。粒子は、15分間にわたって6000rpmで遠心分離された後、水中に再懸濁される。このプロセスは、界面活性剤を除去するために2回繰り返される。この時点で、溶液中のナノキューブは、全ての場合において、赤れんが色を有する。約420nmのサイズを有する銅ナノキューブが、合成で使用されるCTAB界面活性剤の量にしたがってそれらの幾何学的形態の変化を異にして得られる。
【0076】
例2:金属ナノ粒子の機能化
本発明を実現するために、抗体、DNA、または、PNAなどの様々な認識要素と合成される異なるタイプのナノ粒子が機能化された。以下、機能化の幾つかの例について説明する。
【0077】
−
抗体による三角形金ナノプリズムの機能化:機能化は、カルボジイミド化学反応によってナノ粒子の表面上に存在するカルボキシル基に対して抗体を固定することにより行なわれた。最初に、0.5mgのナノ粒子が、最終的に1mlの量の10mM MES、pH6中で、30分間にわたって37℃で、1.5マイクロモルのEDCおよび3.5マイクロモルのスルホNHSを用いて活性化される。5分間にわたる6000rpmの遠心分離によって、過剰な試薬を除去することができ、その後、10mM MES、pH6中で、あるいは、ゲル濾過カラムを使用することにより、粒子が懸濁される。ナノ粒子のカルボキシル基が活性化された時点で、最終的に1mlの量の10mM MES、pH6中で、1時間間にわたって37℃で、ナノ粒子が2.5μgの抗体を用いてインキュベートされる。抗体の結合後、ナノ粒子の表面が50mM750Daアミノ化PEG(α−メトキシ−ω−アミノポリエチレングリコール)によりブロックされる。最後に、ナノ粒子は、5分間にわたる6000rpmでの幾つかの遠心分離サイクルの後に精製される。
【0078】
−
ストレプトアビジンによる三角形金ナノプリズムの機能化:機能化は、カルボジイミド化学反応によってナノ粒子の表面上に存在するカルボキシル基に対してストレプトアビジン分子を固定することにより行なわれた。最初に、0.5mgのナノ粒子が、最終的に1mlの量の10mM MES、pH6中で、30分間にわたって37℃で、1.5マイクロモルのEDC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)および3.5マイクロモルのスルホNHS(スルホ−N−ヒドロキシスクシンイミド)を用いて活性化される。5分間にわたる6000rpmの遠心分離によって、過剰な試薬を除去することができ、その後、10mM MES、pH6中で、あるいは、ゲル濾過カラムを使用することにより、粒子が懸濁される。ナノ粒子のカルボキシル基が活性化された時点で、最終的に1mlの量の10mM MES、pH6中で、1時間間にわたって37℃で、ナノ粒子が1.25μgのストレプトアビジンを用いてインキュベートされる。タンパク質の結合後、ナノ粒子の表面が50mM750Daアミノ化PEG(α−メトキシ−ω−アミノポリエチレングリコール)によりブロックされる。最後に、ナノ粒子は、5分間にわたる6000rpmでの幾つかの遠心分離サイクルの後に精製される。
【0079】
例3:本発明のバイオセンサを使用したサンプル中のCEAマーカーの検出
金ナノプリズムが合成されて特性化された(走査型透過電子顕微鏡法および紫外・可視分光法の両方によって)時点で、金ナノプリズムは、モノクローナル抗CEA抗体、Ab3C6(モノクローナルマウス抗癌胎児性抗原4CA30−3C6、HyTest)を用いて、および、タンパク質ストレプトアビジンも用いて機能化される。ナノプリズム上に固定された分子がそれらの生物学的活動を維持したことを検証するために、対応する生体分子が異なる濃度で(CEAマーカーまたはビオチン共役抗体)ニトロセルロース膜上に固定された。機能化されたナノ粒子を用いてインキュベートした後、感熱表面上に堆積された膜がレーザにより照射された。
【0080】
CEA+抗CEA抗体3C6−ナノプリズム認識が
図2aに示される。抗CEA抗体3C6−ビオチン+ストレプトアビジン−ナノプリズム認識が
図2bに示される。
【0081】
分子認識が行なわれると、金ナノプリズムが膜上に位置され、また、レーザにより照射された後、ナノ粒子により吸収されたエネルギーが熱の形態で解放され、感熱表面上の信号が記録される(
図2aおよび
図2b参照)。何れの場合にも、サンプルにレーザを照射した後に得られる信号は、抗原−抗体認識またはストレプトアビジン−ビオチン認識が行なわれたこと、したがって、ナノプリズム共役生体分子がそれらの活動を維持したことを示した。他方において、認識が行なわれる表面およびナノ粒子の表面の両方は、サンプル0において分かるように、ニトロセルロース膜上に固定されるタンパク質が存在しないときに非特異的相互作用が起こらないように不動態化されてしまっている。
【0082】
センサの認識要素、この場合には抗CEA抗体Ab3C1、モノクローナルマウス抗癌胎児性抗原4CA30−3C6、HyTestは、様々な方法論の後、検出表面上に固定された。認識要素は、共有結合によってガラス表面に結合されるとともに、物理的な吸着によって異なるセルロース膜上およびニトロセルロース膜上に結合された。表面上に抗体が吸着されたニトロセルロース膜を使用して得られた結果が以下に示される。前述した2つの方策が検査された。この場合、抗体により直接に機能化されたナノプリズムが使用されるとともに、抗CEAビオチン共役抗体3C6を加えた後にストレプトアビジンにより機能化されたナノプリズムが使用された。PBS中で希釈された濃度が減少したCEA腫瘍マーカーを伴う異なるサンプルが分析された。実験方法で説明した認識のステップを行なった後、膜が乾燥した時点で、これらの膜は、近赤外線放射レーザ(1000nmの波長を有する)が数秒間にわたって照射されるように感熱表面上、この場合には感熱紙上に堆積された。
【0083】
抗CEA抗体3C1+CEA+抗CEA抗体3C6−ナノプリズム認識が
図3aに示される。抗CEA抗体3C1+CEA+抗CEA抗体3C6−ビオチン+ストレプトアビジン−ナノプリズム認識が
図3bに示される。
【0084】
先の図から分かるように、検体認識が行なわれる時点でナノプリズムに照射することによって生成される感熱表面でもたらされる信号は、抗体3C1−CEA−Ab3C6ビオチン+ストレプトアビジン−金ナノプリズムシステムの場合よりも、抗体3C1−CEA−Ab3C6−ナノプリズムシステムの場合の方が強力である。しかしながら、いずれの場合にも0.5ngCEA/mlの濃度が検出される。他方では、負の対照として、抗CEA抗体3C6により機能化された直径が16nmの球状の金ナノ粒子(使用されるレーザの放射波長で吸収帯を有さない)を使用して同じ実験が行なわれるときに、
図4に示されるように信号が得られないことが検証された(抗CEA抗体3C1+CEA+抗CEA抗体3C6−金ナノ粒子認識が示されるとともに、使用されるレーザの放射波長で吸収帯を有さない直径が16nmの球状の金ナノ粒子が使用された
図4参照)。
【0085】
方法の感度を高めるために、レーザによるサンプルの照射時間および検出表面からの前記レーザの距離などの異なるパラメータを変えることができる。
図5は、レーザと検出表面との間の短い距離にわたって、どの程度少ない照射時間が必要とされるのか、および、どの程度強力な信号が得られるのかを示す。
【0086】
図5は、表面とレーザとの間で異なる照射時間および異なる距離を伴う、抗CEA抗体3Cl+CEA+抗CEA Ab3C6−金ナノプリズム認識を示す。
図5aでは、0.5cmの距離で10秒の照射時間が使用され、
図5bでは、0.1cmの距離で2秒の照射時間が使用される。
【0087】
最後に、血漿サンプル中のCEA腫瘍マーカーを検出して、システム特異性および複合サンプル中の検体の検出限界を検証するために、同じ「サンドイッチ」型実験(Ab3C1+CEA+Ab3C6−金ナノプリズム)が行なわれた。その実験は、PBS緩衝液中に溶解されるCEAの決定のために得られた結果と比較された。
図6から分かるように、何れの場合にも、CEA/mlの10pgの検出限界が得られた。また、対照では、あるいは、CEAを伴わない血漿サンプルでは、ある種の非特異的相互作用が得られなかった。
【0088】
例4.検出手段として赤外線カメラを使用する比較例
例3のために用意された同じサンプルがこの実験のために使用された。センサの認識要素、この場合には抗CEA抗体Ab3C1は、ニトロセルロース膜上に物理的な吸着によって固定された。血漿中で希釈された濃度が減少したCEA腫瘍マーカーを伴う異なるサンプルが分析された。実験方法で説明した抗CEA抗体Ab3C6により機能化されたナノ粒子を用いた認識のステップを行なった後、膜が乾燥した時点で、これらの膜が感熱紙上に堆積された。
【0089】
ナノ粒子に照射するために、1000nmの波長の近赤外線放射レーザが使用された。照射されたナノ粒子により発生される熱を定量化可能な測定値へと変換できる赤外線熱撮像カメラ(IRカメラ)が、レーザにより照射された後にナノ粒子によって発生される熱を検出するためのシステムとして使用された。
【0090】
異なる濃度の血漿CEA抗原を検出するために用意されたサンプルに照射した後、IRカメラを用いて温度増大が検証された。レーザにより数秒間にわたって照射された後、IRカメラは、0.05ngCEA/mlのサンプルに関して2−3℃の温度増大を記録したが、0.01ngCEA/mlのサンプルの場合には信号が得られなかった。これらの同じ検体濃度に関して、信号は、サンプルがレーザにより照射された後の感熱紙の場合に検出された。
【0091】
赤外線カメラを検出手段として使用するときよりも低い検出限界が、感熱紙などの感熱表面上で担体を使用する視覚検出によって得られた。
【0092】
図7は、感熱紙を用いた視覚検出(
図7a)と検出システムとしてのIRカメラ(
図7b)との間で抗CEA抗体3C1+CEA+抗CEA Ab 3C6−金ナノプリズム認識を比較する。
【0093】
例5.サーモパイルを用いた検出の実験
この場合には、レーザにより照射された後にナノ粒子によって発生される熱が、ナノ粒子の周囲の特定の領域でもたらされる温度増大を定量化可能な電気信号へと変換できるサーモパイルを用いて測定された。
【0094】
図8に表わされる構成に関しては、膜において、および、ガラスカバースリップにおいて、濃いサンプルおよび希釈サンプルの両方がレーザによって照射された。直面された第1の問題は、レーザがパイルと直接に衝突する場合に、非常に高いバックグラウンド信号が得られることである(そのため、温度をバックグラウンド信号から区別できるように十分に増大させることが必要であった)。また、応答は、ナノ粒子を伴わない膜またはカバースリップが照射される場合にも得られる(ガラスは、ニトロセルロース膜よりも高い信号を与える)。対照と同様であった応答は、希釈サンプルを用いて得られた。一方、温度増大は、濃いサンプルを用いて完全に測定することができた。この構成では、サンプルがレーザから3−4cm離されたため、サンプルがレーザと直接に接触される場合よりも感度が低くなることが考慮に入れられなければならない。
【0095】
図8のダイアグラム2,3に描かれる構成に関しては、ニトロセルロース膜上に堆積される異なるナノ粒子濃度を用いて較正が試みられた。ダイアグラム2の場合には、サンプルにその位置でレーザを再現可能な態様で照射できないため、結果が得られなかった。実験は、ダイアグラム3に示される構成を用いて行なわれた。
【0096】
140μg/ml、14μg/ml、および、1.4μg/mlのNNの3つの溶液が用意されるとともに、それぞれの溶液の1μlがニトロセルロース膜上に堆積された(140ng、14ng、および、1.4ngのNN→6×10
9、6×10
8、および、6×10
7ナノ粒子)。これらには数秒間にわたってレーザが照射され、また、サンプルを配置する前後でサーモパイルにより読み取りが行なわれた。バックグラウンド信号がサンプル間で回収された。バックグラウンド信号よりも幾分高かった信号が最も希釈された溶液(1.4ngNN)に関して記録され、明確に区別できる信号が14ngサンプルに関して得られ、最も濃いサンプルが非常に高い信号をもたらした。線形範囲に適合する較正のためには、一連の低濃度溶液を使用しなければならない。これは、特定の濃度値の後に、ナノ粒子濃度に関して指数関数的な温度増大が得られるからである。