(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305417
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】自己膨張インプラントを解放するためのカテーテル送達システム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/97 20130101AFI20180326BHJP
A61F 2/966 20130101ALI20180326BHJP
【FI】
A61F2/97
A61F2/966
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-538380(P2015-538380)
(86)(22)【出願日】2013年10月17日
(65)【公表番号】特表2015-536178(P2015-536178A)
(43)【公表日】2015年12月21日
(86)【国際出願番号】EP2013071713
(87)【国際公開番号】WO2014067787
(87)【国際公開日】20140508
【審査請求日】2016年10月13日
(31)【優先権主張番号】2009726
(32)【優先日】2012年10月30日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】510294003
【氏名又は名称】アンジオメト・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・メディツィンテクニク・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100117411
【弁理士】
【氏名又は名称】串田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ドーン,ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,マルティナ
(72)【発明者】
【氏名】フォーゲル,マイケル
【審査官】
芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0229700(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0059448(US,A1)
【文献】
特表2008−543496(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0024137(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/962
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプラントのための経皮的・経管的カテーテル送達システムであって、前記システムが、
近位端、および、前記インプラントを運搬するための遠位端を備えるカテーテルシャフトと、
前記インプラントを配備するときに操作者が握持することができる、前記近位端のところにある細長ハウジングとを備え、
前記シャフトが、前記インプラントを遠位側方向に押圧することができる内側押圧構成要素と、前記インプラントを身体管腔内に前記配備するまで前記インプラントを半径方向に囲む外側シース構成要素とを有し、前記外側シース構成要素が前記インプラントを配備するために前記ハウジングから近位側に引かれることが可能であり、
前記ハウジングが前記押圧構成要素の近位端部分上に設置されて軸方向チャンネルを画定し、
前記ハウジングが、シーススリッタに対して前記外側シースを前記チャンネル内で近位側に移動させるときに前記外側シースを切断することができる、前記チャンネルの長手方向に対して固定されて設置されるシーススリッタを含有し、
前記システムが、
前記ハウジングが前記押圧構成要素上で摺動可能であることと、
前記ハウジングが、前記押圧構成要素上で長手方向において前記押圧構成要素に沿う任意の所望される位置で前記ハウジングを固定するために前記押圧構成要素に対して前記ハウジングをクランプするように作動され得るクランプを含むことと、
前記ハウジングが、前記スリッタの近位側にある前記切断された外側シースのための軸外側方チャンネルを画定し、前記側方チャンネルが、前記切断されたシースが握持されてそれにより引っ張られ得るところのプルアパーチャのところで終端し、前記ハウジングが前記押圧要素に対してクランプされた状態で、前記シースが前記押圧構成要素に対して近位側に引かれることが可能であり、それにより前記インプラントが配備されることとを特徴とする、経皮的・経管的カテーテル送達システム。
【請求項2】
前記スリッタが、前記シースの軸に平行に前記シースを1回切り開くブレードを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記プルアパーチャが、前記インプラントを配備する前に前記ハウジングから取り外され得るキャップによって閉じられる、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記切断されたシースの前記近位端が前記キャップに固定され、したがって、前記キャップが前記ハウジングから取り外されるときにノブとして握持され得るようになり、前記インプラントを配備するために前記切断されたシースを近位側に引っ張るのに使用され得るようになる、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記軸方向チャンネルが雌型ルアーコネクタ要素内で終端する近位端を有する、前記請求項1から4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
前記クランプが、前記押圧構成要素の円筒形の径方向外側表面に対して前記ハウジングをクランプする、前記請求項1から5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
前記クランプが、前記軸方向チャンネルの軸周りでの、前記ハウジング上のカラーの回転移動によって作動され得る、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記クランプが、指圧を用いて前記円筒形表面に摩擦接触するように付勢され得る圧迫可能要素を備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記圧迫可能要素が弾性パッドである、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記クランプが前記ハウジングの前記近位端のところに位置する、請求項6から9までのいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
前記側方チャンネルが、前記ハウジング内の前記軸方向チャンネルの近位側方向と鋭角を成す長手方向軸を有する、前記請求項1から10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
前記ハウジングが「Yアダプタ」の全体の形状を有する、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインプラントのための経皮的・経管的カテーテル送達システム(percutaneous trans−luminal catheter delivery system)に関し、システムが、インプラントを運搬するための遠位端、および、近位端、ならびに、インプラントを配備するときに操作者が握持することができる、近位端のところにある細長ハウジングを備えるカテーテルシャフトを備え、シャフトが、インプラントを遠位側方向に押圧することができる内側押圧構成要素と、インプラントを身体管腔内に前記配備するまでインプラントを半径方向に囲む外側シース構成要素とを有し、外側シース構成要素がインプラントを配備するためにハウジングから近位側に引かれることが可能であり、ハウジングが、押圧構成要素の近位端部分上に設置されてチャンネルを画定し、ハウジングが、チャンネルの長手方向に対して固定されて設置される、シーススリッタに対して外側シースをチャンネル内で近位側に移動させるときに外側シースを切断することができるシーススリッタを含有する。
【背景技術】
【0002】
インプラント、具体的には自己膨張ステントを経管的に送達するためのカテーテル送達システムは特許文献に関して長い歴史を有する。初期の提案は、カテーテルシステムの遠位端のところで径方向に圧縮されるステントを半径方向に囲む単純なシースであり、ステントをそのベッドから解放するためにシースが近位側に引き戻され、これが、カテーテル送達システムを前進させる身体管腔のステント植込み部位または狭窄部位内の、ベッドの遠位端のところで開始されるというものであった。ステントが自己膨張することから、周囲のシースの管腔表面がシースから解放される瞬間まで圧迫されることが認識されよう。したがって、外側に押圧するような自己膨張ステントの全長にわたってシースを近位側に摺動させるのを可能にする送達システムを考案する場合、ステントと周囲のシースとの間の摩擦力を考慮しなければならない。
【0003】
摩擦の問題はステントの長さが増すにつれて深刻になることから、より長いステントを送達することは送達システムの設計者にとって圧力となっている。さらに、カテーテルの遠位端のところでの通過時の直径(passing diameter)をより小さくするようなシステムを考えることも、ステント送達システムの設計者にとっての大きな圧力となっている。身体管腔に沿って前進するようなシステムの直径のための寸法の従来の単位は「フレンチ」であり、これは3分の1ミリメートルである。したがって、1ミリメートルは「3フレンチ」である。例えば7フレンチから6フレンチといったように送達システムの通過時の直径を縮小することが可能になることは大きな前進である。
【0004】
近位側に後退するシースと、その中に閉じ込められる自己膨張ステントとの間の摩擦力の問題に対処するための1つの手法は「ローリングメンブレン(rolling membrane)」シースシステムを採用することであり、ここでは、シースの長さがシースによって囲まれるステントの長さの少なくとも2倍であり、ステントの遠位端を越える遠位側の位置で折り重ねられて二重になる。したがって、シースの長さの径方向外側に折り重ねられて二重となる部分が近位側に後退すると、外側シース部分と内側シース部分との間の「ローリングエッジ(rolling edge)」が近位側に引っ込められ、ステントの長手方向に沿って近位側にロールダウンし、単層周囲シースと同様に、ステントが漸進的に解放される。
【0005】
ステント送達システムの遠位端のところで従来のシステムまたはローリングメンブレンシースシステムのいずれが使用されるかに関わらず、送達システムは、操作者が患者内部の遠位側に位置するステントを配備することを近位端のところで調整するのを可能にするための何らかの形態の配備機構をステント送達システムの近位端のところに設けることを必要とする。通常、ステントは、システムの近位端から遠位端まで延在するプッシュロッドの遠位端のところに設けられる。このプッシュロッドが静止して保持される場合、近位端のところにあるこのような機構を使用者が操作することにより、上述したようにシースシステムが引き戻されてステントが配備される。
【0006】
1つのステント配備機構がUS2007/0244540A1(ここでは「D1」)で開示されている。この機構は遠位側および近位側に繰り返し移動させられるサムスライダを使用することを伴い、漸進的に1回ずつ近位側に移動することによりシースが漸進的に後退する。この配備機構の欠点は、配備機構を1回または数回移動させることのみでステントを配備することができないことである。長いステントの場合、この機構を使用してステントを配備することは大変な作業であり、何度も移動させることが必要となる。しかし、インプラントの遠位端がインプラントを受ける身体内の管腔の壁上の定位置にきても、このデバイスでは、1回の滑らかなストロークでインプラントの残りの長さを配備させるようにシースが素早く後退することができない。
【0007】
D1は、ハンドユニットが物理的に小さいという長所を教示している。D1のシースはロールバックメンブレンではない。ロールバックメンブレンの場合、近位側に引き戻す距離が2倍となる。本発明の目的は、ロールバックメンブレンによって覆われる長いインプラントを配備することができるがサイズが小型である、製造が単純および容易であるハンドユニットを提供することである。
【0008】
CookによるUS−A1−2010/0268243(ここでは「D2」)がステントを配備するためのシステムを開示しており、ここでは、ステントを配備するためにチューブを近位側に後退させるときにカット手段を用いてチューブが切断される。切断されたチューブはスプールによって巻き上げられ得るかまたは単純に手で引っ張られ得る。
【0009】
また、AbbottによるUS−B2−7837725(ここでは「D3」)がステントを送達するためのカテーテルデバイスを開示しており、ここでは、ステントを解放するためにカテーテルの外側管状部材が近位側に後退させられ、管状部材がブレードによって切断されてその近位端から分離され、それにより、この手技で使用されることになる必要とされる長さよりも短い長さまでカテーテルの長さを短縮することができる。ステントを配備する場合、ハンドユニット内のスライダが使用される。したがって、ロールバックメンブレン内に閉じ込められる長いステントを配備するためには、過度に長いハンドユニットが必要となる。
【0010】
DanforthによるUS−A−5687727(ここでは「D4」)が、オーバーザワイヤ(over−the−wire)の血管形成用カテーテルのための近位側アダプタを開示している。このアダプタはガイドワイヤ上でカテーテルを交換するのを容易にする。カテーテルがアダプタを通して近位側に後退させられるときにアダプタがガイドワイヤを掴持してカテーテルを切断することから、その遠位端までカテーテルを切断することによりカテーテルを完全に取り除くことが可能となる。その後、新しいカテーテルが導入されることが可能であり、in situのガイドワイヤに沿って前進させられ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、配備中に操作者に高度な触知フィードバックを提供し、このような配備中に発生する静的摩擦および動的摩擦の力を最適に調整する、任意の長さのインプラントを配備するためのシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によると、上で示した概略形態のカテーテル送達システムが、ハウジングが押圧構成要素上で摺動可能であることと、ハウジングが、押圧構成要素上で長手方向において押圧構成要素に沿う任意の位置でハウジングを固定するために押圧構成要素に対してハウジングをクランプするように作動され得るクランプを含むことと、ハウジングが、スリッタの近位側にある切断された外側シースのための軸外(off-axis)側方チャンネルを画定し、前記側方チャンネルが、切断されたシースが握持されてそれにより引かれることが可能であるところのプルアパーチャのところで終端し、ハウジングが押圧要素に対してクランプされた状態で、シースが押圧構成要素に対して近位側に引かれることが可能であり、それによりインプラントが配備されることと、を特徴とする。
【0013】
本発明を用いることにより、操作者は患者の身体内の所望される位置でインプラントを維持するようにハウジングを保持することができる。ハウジングは経皮的イントロデューサ(percutaneous introducer)に対してその上でフィットするように配置されることが可能であり、この経皮的イントロデューサを通してカテーテルを患者の身体内に入れることができる。したがって、ハウジングは距離を可能な限り最小としながらカテーテルの遠位端から分離されることになる。操作者はこの距離がどのくらいであるかを事前に知る必要はない。単純に、カテーテルがインプラントを移植部位まで運び、操作者がカテーテルのシャフトに沿わせてハウジングを遠位側に前進させることによりハウジングをイントロデューサのところまで運び、ハウジングが前進するときにシースが切断される。
【0014】
ハウジングをこのように配置することにより、操作者がシースを引っ張ることによりインプラントを良好に配備することができるようになる。操作者の手からインプラントまで張力のラインは、カテーテルシャフトが位置するところの身体管腔内の任意の湾曲部と、切断されたシースを引っ張るときに経由させるハウジングの側方チャンネルからハウジングの軸を分離させるためのハウジング内の角度部分とを除いて、直線である。
【0015】
これは、ハウジングがイントロデューサに対してその上にフィットするのではなく、患者の身体の外側のカテーテルの長さの下に曲がる部分によりイントロデューサから分離されてしまうようなデバイスとは状況が異なる。このように下に曲がる部分がいくらかでも存在すると摩擦力が増大してしまい、インプラントを配備することを目的として操作者がシースを後方に引っ張る力が抵抗を受ける。また、このように下に曲がる部分が存在すると、シースの近位端のところのプルバック距離の増分の1対1の関係が悪影響を受け、シースの遠位端のところのプルバック距離の増分の1対1の関係も悪影響を受ける。言い換えると、本発明を用いることにより、操作者は、システムの遠位端のところでのインプラント配備プロセスがどのように進行しているかに関する可能な限り高度な触知フィードバックを受ける。
【0016】
好都合には、スリッタは、シースの壁を長手方向に1回切り開く単一のブレードである。しかし、シースを2回以上切断することが有用となる可能性もあり、特にはシースの反対側を2回切断すること、つまり、切断されるシースを2つの別個のリボンの形態にするためにシースの軸を通るように直径セクションの各端部を1回ずつ切断することが有用となる可能性がある。
【0017】
好適には、ハウジングのプルアパーチャがキャップによって閉じられる。このシステムは、インプラントを配備する前に、フラッシング液を使用してガスバブルを洗い流す必要がある(従来と同様)。それにより、もちろん、ハウジングはフラッシング構成要素を必要とすることになる。これに関しては、ルアーコネクタが一般的である。この場合、キャップがルアーコネクタ要素を組み込むことができ、したがって、軸方向チャンネルの近位端も組み込むことができる。プリングアパーチャ(pulling aperture)を閉じているキャップに対して、切断されたシースの近位端が固定される場合、キャップがプリングノブとして使用され得る。
【0018】
所望される場合に押圧要素の長手方向に沿わせてハウジングを押圧要素に固定するのに必要となるクランプは、好都合にはチャンネルの近位端のところに設けられることが可能であり、好都合にはチャンネルの近位端のところのフラッシングポートに隣接するように設けられ得る。押圧構成要素に対してハウジングをロックするのに操作者にとって使いやすいデバイスは回転可能コレット(rotatable collet)である。
【0019】
ハウジングは好適には近位側部分および遠位側ひずみ解放部分を備え、遠位側ひずみ解放部分は低剛性材料から形成され、ハウジングより高い剛性の近位側部分の遠位側でカテーテルシャフトの長手方向に沿って応力集中を軽減するように機能する。これにより、配備前に患者の中を前進するカテーテルシャフトが損傷することを防止することができる。シャフトが必要以上に下に曲がる場合ではカテーテルシャフトが損傷してしまう可能性がある。
【0020】
概して、ハウジングの構造はいわゆる「Yアダプタ」であり、カテーテル法の当業者には良く知られるような要素である。
【0021】
本発明の目的は、配備作業を容易に実施するのを可能にして改善することができるシステムを操作者に提供することである。このシステムは直感的に使用され、可動部品が最小であり、単純なステップで製造され得る(それにより、完全に滅菌できることの可能性が向上する)。
【0022】
「品質」が「予見可能性」を意味する場合、本発明のシステムは、段階的に変化して直感的に操作される(したがって、高い信頼性を有する)直接的なシステムありながら高いレベルの品質を有するようなシステムを操作者に提供することができる。
【0023】
本発明をより良く理解することができるようにするためにおよび本発明を実施することができる手法をより明確に示すために、次に、単に例として添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図2Aまたは
図2Bのいずれか一方に示されるように、イントロデューサを通って延在して遠位端のところで終端するカテーテルシャフトを備える、本発明の第1の実施形態によるカテーテル送達システムの近位端を示す図である。
【
図2】
図2Aは、インプラントを運搬し、プルバックシースを組み込む、カテーテルシャフトの遠位端を示す図である。
図2Bは、インプラントを運搬し、ローリングメンブレンを組み込む、カテーテルシャフトの遠位端を示す図である。
【
図3】
図4に示されるように、遠位端のところで終端するカテーテルシャフトを備える、本発明の第2の実施形態によるカテーテル送達システムの近位端を示す図である。
【
図4】インプラントを運搬し、ローリングメンブレンを組み込む、カテーテルシャフトの遠位端を示す図である。
【
図5】本発明によるカテーテル送達システムのカテーテルシャフトの押圧構成要素に沿うハウジングの摺動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1が、それぞれ
図2Aおよび
図2Bに描かれるカテーテルシャフト構造12aまたは12bのいずれか一方の遠位端である遠位端のところで終端する、イントロデューサ14を通って遠位側に延在するカテーテルシャフト12を備えるカテーテル送達システム10の第1の実施形態の近位端を示す。シャフト12が、カテーテルシャフトの押圧構成要素である内側シャフト16と、カテーテルシャフトのシース構成要素である外側シース30とを有する。内側シャフト16がガイドワイヤ17に沿って延びる。
図2Aおよび2Bから分かるように、ステント18が内側シャフト16の遠位端上で運搬され、カテーテルの先端部24の近位側かつステントストップ19の遠位側に配置される。
【0026】
図2Aでは、ステント18は、カテーテルの先端部24まで遠位側に延在するプルバックシース20によって半径方向に閉じ込められる。ステント18の近位端のところの重複ゾーン32では、外側シース30がプルバックシース20の外側に接着される。もちろん、別法としてプルバックシース20および外側シース30は一体に形成されてもよい。
【0027】
図2Bでは、ステント18は今度はステントストップ19の直接の近位側の位置で内側シャフト16に固定される一方の端部26を備えるロールバックメンブレン22によって半径方向に閉じ込められ、メンブレンがこの端部26からカテーテルの先端部24まで延在し、この位置のロールバックアニュラス28のところで方向を逆転させてステント18の長手方向にわたって近位側に前進する。この図では、一体構造であることからメンブレン22と外側シース30との間での移動は示されないが、メンブレン22および外側シース30は、
図2Aに示されるプルバックシース20と外側シース30との間での接着と同様に、別個に形成されて接着されもよい。
【0028】
カテーテルシャフト12の近位端のところには、遠位端42を有する細長ハウジング40が設けられ、この遠位端42を通ってカテーテルシャフト12が近位側に延在する。ハウジング40は、2つの主部分と、遠位側ひずみ解放部分40aと、近位側グリップ部分40bとを備える。内側シャフト16が、ハウジング40の長手方向を通って延びるチャンネル内で摺動可能に保持される。ひずみ解放部分40aはグリップ部分40bより低い剛性の材料から形成され、そのような相対的柔軟性により、相対的に高い剛性を有するグリップ部分40bに付随するチャンネルのセクション内のカテーテルシャフト16の部分と、ハウジング40のチャンネルの遠位側にあるカテーテルシャフト16の部分との間の軸がずれることにより、カテーテルシャフト16の長手方向に沿う応力集中を軽減するように機能する。
【0029】
チャンネルの近位端が、内側シャフト16の近位端を受ける、ハウジング40の近位端52のところで接続される雌型ルアーコネクタ要素から形成される近位端キャップ50内で終端する。
【0030】
遠位端42の近位側の、ハウジング40のチャンネルに沿う固定される位置で、ブレード34がハウジング40に設置される。ブレード34は、切断表面が遠位側を向くようにカテーテルシャフト12の軸と平行に延在するように長手方向に位置合わせされ、外側シース30の外側表面を通って延在し、したがって、ブレード34の一部分が外側シース34の径方向内側に突出する。
図1から明確にはならないが、ブレードの径方向最内部分が内側カテーテル上で拘束されたり内側カテーテルを切断したりしないように構成される。
【0031】
ブレード34の遠位側で、外側シース30および内側シャフト16が同軸となり、外側シース30が内側シャフト16を囲む。しかし、ブレード34の近位側では、ブレード34によって切断された外側シース30aが内側シャフト16から分離され、(ブレード34の影響を受けずに)軸外側方チャンネル44の孔を通って近位側に延在し、アパーチャ46を通って外に出てプルノブ48内で終端する。示される実施形態では、軸外側方チャンネル44の孔がハウジング40のチャンネルの近位側方向と約30度の鋭角を形成する。これにより、ハウジング40が良く知られる「Yアダプタ」を形成する。
【0032】
図1に示される実施形態では、ブレード34がハウジング40の円周上の軸外側方チャンネル44と同じ側に配置される。これは、長手方向軸に沿う方向から見て、ブレード40が、最大でも90度未満であるが、軸外側方チャンネル44から円周方向でオフセットされること意味する。軸外側方チャンネル44の孔を基準としたブレード34の角度付き部分によりカッティングの動的特性(cutting dynamics)が影響を受け、内側シャフト16から外側シース30を分離させることが容易となる。
【0033】
ハウジング40の外側表面上には、内側シャフト16上で下方向にクランプされるプッシュボタン54が設けられ、それにより、ハウジング40と内側シャフト16との間での相対的な軸方向の移動が防止される。示される実施形態では、内側シャフト16に接触するプッシュボタン54の部分が高い摩擦係数を有し、それによりスリップすることが最小となる。ブッシュボタン54は、望まれずにクランプするのを防止するために非減衰位置では弾性的に付勢されてよい。径方向内側に押圧されるときにクランプ位置でプッシュボタン54を維持するためのラッチ機構が設けられてよく、これは、ブッシュボタン54を再び径方向内側に押圧するときに解放される。
【0034】
図3が、
図4に示されるように、遠位側に延在して遠位端のところで終端するカテーテルシャフト112を備える、カテーテル送達システム100の第2の実施形態の近位端を示す。この実施形態と前の実施形態との間の大きな差異点のみを以下で考察する。
【0035】
ブレード134が軸外側方チャンネル144の反対側に設けられる。これは、長手方向軸に沿う方向から見て、ブレード140が軸外側方チャンネル144から円周方向に90度を超えてオフセットされることを意味する。好適にはオフセットは180°である。
図4では、このオフセットは180度である。軸外側方チャンネル144の反対側にブレード134を配置することは、内側カテーテル116から外側シース130がより滑らかに切断され、切断された外側シース130が内側カテーテル116からより滑らかに分岐することを意味する。これは、外側シース130が側方チャンネル144に入ることができるようになる前に外側シース130をわずかでも捻じる必要なく、外側シース130aの切断された材料を単純に内側カテーテル116から離して持ち上げることができることによる。
【0036】
ブレード134の近位側の、外側シース130aの切断された部分の近位端が、軸外側方チャンネル144のアパーチャ146に着脱自在に接続されるルアーコネクタから形成されるプルキャップ148内で終端する。
【0037】
ブッシュボタン54ではなく、内側カテーテル116にクランプ力を作用させるクランプ位置と、ハウジング140のチャンネル内で内側カテーテル116を自由に摺動させる非減衰位置との間で移動できるようにするために前後に回転することができる回転可能コレット154であるカラーが設けられる。
【0038】
この場合、
図4に示される送達システム100の遠位端のところでは、ローリングメンブレン122内に重複セクション132が設けられ、ここでは、重複部分132の近位側のメンブレンの一部分が重複部分132の遠位側の一部分の外側に接着される。また、見られるように、内側カテーテル116がステントベッド116aを装備し、その上には、小さい円周を有するステント118が設けられる。これは、ステント118が存在することに関連してカテーテルの厚さが長手方向に沿って変化するのを軽減する働きをする。
【0039】
カテーテル送達システムの動作を示すために、
図5を参照する。送達カテーテルシステム200のハウジング240が初期位置Aおよび配備位置Bの2つの位置で示される。
【0040】
例えば、カテーテルシャフト212をイントロデューサ214を通して患者の管腔の中へと前進させて管腔内の所望されるステント植込み部位まで到達させた後の、位置Aでは、ハウジング240とイントロデューサ214との間にシャフト長さYが存在する。プルキャップ248および近位側エンドキャップ250がハウジング240から解放されることから、クランプ手段254が内側シャフト216に対してクランプされず、それでも、患者の管腔内でカテーテルシャフト212の遠位端がわずかでも移動するのを防止するために近位側エンドキャップ250を保持しており、また、任意選択で、切断箇所近傍で張力を維持することにより、外側シース230が束になるのを防止することを目的としてプルキャップ248を保持しており、この状態で、ハウジング240が、外側シース230によって囲まれる内側シャフト216の長手方向に沿って遠位側に摺動する。ハウジング240内のブレード234が外側シース230上を前進することにより、外側シース230が長手方向に沿って切断されるようになり、内側シャフト216と外側シース230との間の分離箇所がブレード234とともに前進する。この動作中、軸外側方チャンネル244の近位側の切断された外側シース230aの長さが増大する。最終的に、ハウジング240がイントロデューサ214に接触し、イントロデューサ214の内側に密にフィットするかまたは当接接触される。次いで、カテーテル送達システム200が位置Bにきて、配備する準備が整う。この位置でクランプ手段254が起動され、ハウジング240と内側カテーテル216との間での相対的移動が防止され、それによりステント218が望まれずに移動することが防止される。
【0041】
ハウジング240がイントロデューサ214にフィットするように接触している状態では、軸外側方チャンネル244の近位側の外側シース230aの部分のセクションまたはプルキャップ248が解放距離Xだけ引っ張られ、それによりステント218が配備されるようになる。
【0042】
このプロセスの任意の時点で、患者の管腔に対してステント218の位置を任意に調整することは、クランプ手段250を停止させた状態で近位側エンドキャップ250を押すかまたは引っ張ることにより、あるいは、クランプ手段250を起動させた状態でハウジング240を押すかまたは引っ張ることにより、実施され得る。
以上説明したように、本発明は以下の形態を有する。
[形態1]
インプラントのための経皮的・経管的カテーテル送達システムであって、前記システムが、
近位端、および、前記インプラントを運搬するための遠位端を備えるカテーテルシャフトと、
前記インプラントを配備するときに操作者が握持することができる、前記近位端のところにある細長ハウジングとを備え、
前記シャフトが、前記インプラントを遠位側方向に押圧することができる内側押圧構成要素と、前記インプラントを身体管腔内に前記配備するまで前記インプラントを半径方向に囲む外側シース構成要素とを有し、前記外側シース構成要素が前記インプラントを配備するために前記ハウジングから近位側に引かれることが可能であり、
前記ハウジングが前記押圧構成要素の近位端部分上に設置されてチャンネルを画定し、
前記ハウジングが、シーススリッタに対して前記外側シースを前記チャンネル内で近位側に移動させるときに前記外側シースを切断することができる、前記チャンネルの長手方向に対して固定されて設置されるシーススリッタを含有し、
前記システムが、
前記ハウジングが前記押圧構成要素上で摺動可能であることと、
前記ハウジングが、前記押圧構成要素上で長手方向において前記押圧構成要素に沿う任意の所望される位置で前記ハウジングを固定するために前記押圧構成要素に対して前記ハウジングをクランプするように作動され得るクランプを含むことと、
前記ハウジングが、前記スリッタの近位側にある前記切断された外側シースのための軸外側方チャンネルを画定し、前記側方チャンネルが、前記切断されたシースが握持されてそれにより引っ張られ得るところのプルアパーチャのところで終端し、前記ハウジングが前記押圧要素に対してクランプされた状態で、前記シースが前記押圧構成要素に対して近位側に引かれることが可能であり、それにより前記インプラントが配備されることとを特徴とする、経皮的・経管的カテーテル送達システム。
[形態2]
前記スリッタが、前記シースの軸に平行に前記シースを1回切り開くブレードを備える、形態]1に記載のシステム。
[形態3]
前記プルアパーチャが、前記インプラントを配備する前に前記ハウジングから取り外され得るキャップによって閉じられる、形態1または2に記載のシステム。
[形態4]
前記切断されたシースの前記近位端が前記キャップに固定され、したがって、前記キャップが前記ハウジングから取り外されるときにノブとして握持され得るようになり、前記インプラントを配備するために前記切断されたシースを近位側に引っ張るのに使用され得るようになる、形態3に記載のシステム。
[形態5]
前記チャンネルが雌型ルアーコネクタ要素内で終端する近位端を有する、前記形態]1から4のいずれか1項に記載のシステム。
[形態6]
前記ハウジングが、前記押圧構成要素の円筒形の径方向外側表面に対して前記ハウジングをクランプするためのクランプを含む、前記形態1から5のいずれか1項に記載のシステム。
[形態7]
前記クランプが、前記チャンネルの軸周りでの、前記ハウジング上のカラーの回転移動によって作動され得る、形態6に記載のシステム。
[形態8]
前記クランプが、指圧を用いて前記円筒形表面に摩擦接触するように付勢され得る圧迫可能要素を備える、形態6に記載のシステム。
[形態9]
前記圧迫可能要素が弾性パッドである、形態8に記載のシステム。
[形態10]
前記クランプが前記ハウジングの前記近位端のところに位置する、形態6から9までのいずれか1項に記載のシステム。
[形態11]
前記側方チャンネルが、前記ハウジング内の前記チャンネルの近位側方向と鋭角を成す長手方向軸を有する、前記形態1から10のいずれか1項に記載のシステム。
[形態12]
前記ハウジングが「Yアダプタ」の全体の形状を有する、形態11に記載のシステム。
[形態13]
経皮的イントロデューサ要素のところで患者の身体に導入される経皮的・経管的カテーテル送達システムを使用して細長インプラントを配備する方法であって、
前記方法が、
i)前記インプラントを配備するために近位側に引っ張られるシースの近位端を切断するステップと、
ii)配備中に前記インプラントが前記シースにより近位側に移動するのを防止するように、前記インプラントを配備するときに前記インプラントを押圧することに使用され、かつ切断手段を含むハンドユニットを前記イントロデューサ要素のところまで遠位側に前進させるステップと、
iii)その後の、前記インプラントが完全に配備されるまで前記シースを継続して切断しながら、前記インプラントを配備するステップとを含む方法。