(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305422
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】老化関連疾患を克服するためにSHC−1/P66を抑制する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/353 20060101AFI20180326BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20180326BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20180326BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20180326BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20180326BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20180326BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20180326BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20180326BHJP
A61P 39/06 20060101ALI20180326BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
A61K31/353
A23L33/10
A61K36/185
A61P1/16
A61P3/10
A61P9/00
A61P9/10
A61P13/12
A61P39/06
A61P43/00 107
A61P43/00 111
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-544314(P2015-544314)
(86)(22)【出願日】2013年5月14日
(65)【公表番号】特表2016-502532(P2016-502532A)
(43)【公表日】2016年1月28日
(86)【国際出願番号】CN2013075599
(87)【国際公開番号】WO2014101366
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2015年5月29日
【審判番号】不服2017-4438(P2017-4438/J1)
【審判請求日】2017年3月29日
(31)【優先権主張番号】13/727,387
(32)【優先日】2012年12月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】チャン シュフォン
(72)【発明者】
【氏名】マ チョンシン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン クォイ
【合議体】
【審判長】
内藤 伸一
【審判官】
穴吹 智子
【審判官】
山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−97273(JP,A)
【文献】
特開平9−291039(JP,A)
【文献】
特開2004−75972(JP,A)
【文献】
特開2013−241380(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/126178(WO,A1)
【文献】
STUAN Q. et al.,Study progress of proanthocyanidin in medicament,CHINESE JOURNAL OF CLINICAL RATIONAL DRUG USE,2012年,Vol.5, No.2A,p.174−175
【文献】
OKOZAWA, Takako et al.,Persimmon Oligomeric Proanthocyanidins Extend Life Span of Senescence−Accelerated Mice,Journal of Medicinal Food,2009年,Vol.12, No.6,p.1199−1205
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/353
A23L33/10
MEDLINE
CAPLUS
EMBASE
BIOSIS
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SHC−1/p66
の発現低下剤の製造におけるポリマー組成物の使用であって、
前記ポリマー組成物が、式Iを有するモノマー単位および/またはその薬学的に許容される塩、溶媒化合物、もしくはプロドラッグを含み、
【化1】
(式I中、R
1およびR
2の各々は独立してH、アルキル、またはアシルであり;R
3、R
4、R
5、R
6、およびR
7の各々は独立してH、OH、アルコキシル、またはアシルであり;かつR
8はHまたは糖質部分(saccharide moiety)である。)
かつ、重合される前記モノマーの数が2〜30であり、前記ポリマーの平均分子量が600〜10000である、使用。
【請求項2】
前記方法が、前記組成物を非経口、経口、経鼻(nasally)、経直腸(rectally)、局所的(topically)、または口腔内(buccally)投与することを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記組成物が50から1500mg/kg/dayの用量で投与される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記組成物が、栄養剤(nutrient)、栄養補給食品(nutriceutical)、健康食品(health food)またはサプリメント(supplement)の形式である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
栄養剤(nutrient)、栄養補給食品(nutriceutical)、健康食品(health food)またはサプリメント(supplement)の形式で、式Iを有するモノマー単位を含むポリマー組成物を含み、
SHC−1/p66
の発現を低下させるための組成物であって、
【化2】
(式I中、R
1およびR
2の各々は独立してH、アルキル、またはアシルであり;R
3、R
4、R
5、R
6、およびR
7の各々は独立してH、OH、アルコキシル、またはアシルであり;かつR
8はHまたは糖質部分(saccharide moiety)である。)
かつ、栄養剤、栄養補給食品、健康食品またはサプリメントの形式で、重合される前記モノマーの数が2〜30である、組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、老化関連疾患を克服するためにSHC−1/P66を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
20世紀後半における不妊の減少および平均寿命の20年の延長により、世界の人口の年齢の中央値は高まっている(Centers for Disease Control and Prevention, Morbidity and Mortality Weekly Report, February 13, 2003, 52(06): 101-106)。これらの要因は、第二次世界大戦後20年間における多くの国での出生率の上昇(つまり“ベビーブーム”)と組み合わさって、2010〜2030年の間に65歳をこえる年齢の人の数の増加をもたらすだろう。世界的に、2050年までに平均寿命はさらに10年延びることが予測される。高齢者の数の増加は、公的医療制度ならびに医療および社会福祉サービスの需要を高める。慢性疾患は、高齢者に偏って影響を及ぼすものであるが、身体障害の一因となり、クオリティ・オブ・ライフを低下させ、かつ医療および長期介護費を増加させる。
【0003】
老化現象とそれら現象の生化学および神経学的根拠との間の関係を究明するため、研究がなされている。具体的には、いくつかの生物学的経路は、寿命を延長しかつさまざまな老化関連疾患を防ぐものと確定されている(Trinei et al., “P66Shc Signals to Age” Aging (2009) v. 1(6) pages 503-510)。
【0004】
本明細書に記載される方法は、老化現象の生化学および神経学的根拠を対象とする。より詳細には、本明細書に記載される方法は、SHC−1/p66の経路(pathway)、活性酸素種(reactive oxygen species, ROS)の数に対して好ましい効果を示し、これによって酸化ストレス、肝機能および病理、および運動制御(motor control)に好ましい効果を示す。
【0005】
SHC−1/p66および老化
SHC(Src Homology and Collagen)タンパク質ファミリーの66kDアイソフォーム欠損マウスは、p66機能正常(proficient)同腹仔に比べ、30%長く生存したことが報告されている。p66KOマウスは長命であり、かつ表現型的に正常で、繁殖力があり、健常と考えられる(Migliaccio et al., “The p66shc adaptor protein controls oxidative stress response and the life span in mammals. Nature. 1999; 402:309-313; さらにAlam et al., Endocr. Relat Cancer. 2009 March ; 16(1): 1.も参照)。SHCタンパク質は、アダプター分子、つまり活性化した成長因子受容体(RTKs)の下流で巨視的な研究視点の分子複合体(macro- Research Perspective molecular complexes)の会合に関与するシグナル伝達成分として知られている。インスリンのシグナル伝達にSHCsが果たす役割も報告されている(Giorgetti et al. “Involvement of Src homology/collagen (SHC) proteins in signaling through the insulin receptor and the insulin-like-growth-factor-I-receptor.” Eur. J. Biochem. 1994; 223:195-202)。よって、p66KOマウスは、インスリン/IGFシグナル伝達の遺伝的な減衰(genetic attenuation)により寿命が延長された初めての哺乳動物の例のうちの1つである。
【0006】
代わりに、p66と寿命間のつながりは予期せぬ方向に転じ、ハーマンの“フリーラジカル老化説(free radical theory of aging)”(Harman, D., “A biologic clock: the mitochondria?” Journal of the American Geriatrics Society 1972; 20:145-147.)を支持する最も説得力のある主張の1つになっており:実際、p66−欠損マウスおよび細胞は、著しいROSレベルの低下および酸化ストレスへの耐性の増加を示す。
【0007】
p66shcは他のSHCタンパク質のそれとは完全に相違する機能を有する:多くの酸化促進剤およびアポトーシスの刺激に反応して、p66shcは、活性酸素種を直接生成する場所であるミトコンドリアへ移行することが見出された。
【0008】
分子レベルでは、SHCのアイソフォーム、p66
Shc、p52
Shcおよびp46
Shcは、Src相同型(homologous type)2ドメイン(SH2)を含むC末端、リン酸化チロシンへの結合に関与するホスホチロシン結合ドメイン(PTB)、ならびにそのコラーゲンタンパク質とのホモロジーのためにコラーゲン相同(collagen homologous)と称されるグリシンおよびプロリン残基が高度に豊富な領域(CH1)において、同じアミノ酸配列を大部分で共有している(Pelicci, G. et al., “A family of Shc related proteins with conserved PTB, CH1 and SH2 regions. Oncogene. 1996; 13:633-41)。p66Shcの特性は、そのN末端のさらなるCH領域(CH2)である(Pelicci, G. et al., “A novel transforming protein (SHC) with an SH2 domain is implicated in mitogenic signal transduction." Cell. 1992; 70: 93-104.; Migliaccio, E. et al., "Opposite effects on the p52shc/p46shc and p66shc splicing isoforms on the EGF receptor-MAP kinase-fos signaling pathway. EMBO J. 1997; 16: 706-716)。
【0009】
活性酸素種、細胞ストレス、および老化
活性酸素種(ROS)スーパーオキシドおよび過酸化水素は、多くの生理学および病態生理学的過程において重要なシグナル伝達機能を果たす。細胞の老化および生物の寿命は免れられない(Afanas’ev, Igor, Oxidative Medicine and Cellular Longevity, V.3 (2010), Issue 2, pages 77-85)。ROSはアポトーシスの強力な誘発因子であり、かつそれ自身でアポトーシスのプログラムを実行する(Giorgio et al. “Electron Transfer between Cytochrome c and p66Shc Generates Reactive Oxygen Species that Trigger Mitochondrial Apoptosis,” Cell Vol. 122, 221-233, July 29, 2005)。
【0010】
具体的には、SHC−1/p66はROSシグナル伝達によって刺激される。逆に言うと、ROSはSHC−1/p66により生成される。
【0011】
その結果、SHC−1/p66は、糖尿病誘発性酸化ストレスおよびオキシダント依存性(oxidant-dependent)腎傷害の基となる分子機構に関与するとされている(Menini et al., Diabetes 55:1642-1657(2006))。さらに、SHC−1/p66は、高グルコースに関連した内皮機能不全、アテローム発生、糖尿病性腎症、および心筋症のような糖尿病関連疾患に関与するとされている(Francia et al., J. Mol. Med.(2009) 87:885-891、およびBerniakovich et al. JBC Vol. 283 No. 49, pp. 34283-34293, December 5, 2008参照)。
【0012】
老化および肝臓
老化した肝臓は、若い肝臓に比べて増加した細胞変性を示し得る。詳細には、老化した肝細胞は、低下した細胞代謝、ならびにミトコンドリア機能および形態の特定の変化を示し得る(Sastre et al. “Aging of the Liver: Age-Associated Mitrochondrial Damage in Intact Hepatocytes,” Hepatology November. (1996) pp. 1199-1205、およびKoch et al., “Role of the life span determinant P66
shcA in ethanol-induced liver damage,” Laboratory investigation (2008) 88, 750-760)。例えば、糖新生およびケトン生成が低くなり得る一方で、ミトコンドリアのサイズは増大し得る。肝細胞の変性は、風船(ballooning)もしくは“泡沫(foamy)”細胞、または脂肪変性(Steatosis)(脂肪変化、脂肪変性(fatty degeneration)もしくは脂肪変性(adipose degeneration)とも称される)の兆候によって病理学的に検出され得る。
【0013】
腫大した細胞(Ballooned cell)は通常、隣接する肝細胞のサイズの2から3倍であり、かつH&E染色部位上のうっすらと透明な(wispy clear)細胞質によって特徴付けられる。それらは、それらの細胞質および核によって、脂肪細胞様細胞(adipocyte-like cells)と区別され得る;腫大した細胞は中心にそれらの核を有している(それを周囲(peripherally)に有する脂肪細胞様細胞とは違う)。また、腫大した細胞は、(小さい)濃縮した核(pyknotic nuclei)または核崩壊が進行している、つまり崩壊の過程にある核を有する。風船変性(ballooning degeneration)が進行中である細胞の細胞質は、か細い/クモの巣状であり、一方、脂肪細胞様細胞は透明な細胞質または空胞化された細胞質を有する。
【0014】
脂肪変性(Steatosis)は、細胞内における脂質の異常な滞留を表すプロセスである。それは、トリグリセリド脂肪(triglyceride fat)の合成および排出の正常なプロセスの障害を反映するものである。脂肪変性は、オキシラジカルにより引き起こされる肝細胞腫脹に関係があるとされている(Del Monte, “Swelling of hepatocytes injured by oxidant stress suggests pathological changes related to macromolecular crowding” Medical Hypotheses (2005) 64, 818-825)。
【0015】
運動スキルおよび運動障害に対する老化の影響
年齢が上がるにつれ感覚運動の制御および機能は低下する。これら細かい運動(fine motor)の制御、歩行およびバランスの低下は、高齢者が日常生活の活動を行い、かつ彼らの自立を維持する能力に影響を及ぼす(Yankner BA, Lu T, Loerch P. The aging brain. Annu Rev Pathol 2008;3:41-66.; Twohing, J. P. et al., “Age-dependent maintenance of motor control and corticostriatal innervation by death receptor 3.” J. Neurosci. 2010. 30:3782-3792.)。これら運動障害の原因は多因子的であり、中枢神経系の減退、ならびに感覚受容器、筋肉、および末梢神経の変化が所定の役割を果たしている。
【0016】
高齢者の運動機能障害は、中枢および末梢神経系、ならびに筋神経系の機能不全に起因すると思われる(Seidler, R. et al., “Motor control and aging: Links to age-related brain structural, functional, and biochemical effects.” Neuroscience and Biobehavioral Reviews 30 (2010) 721-733)。運動機能障害には、若年成人に比較しての協調運動障害(Seidler, RD et al.,. “Changes in multi-joint performance with age.” Motor Control. 2002;6(1):19-31.)、運動のばらつき(variability of movement)の増加(Contreras-Vidal et al., “Elderly subjects are impaired in spatial coordination in fine motor control,” Acta Psychol (Amst). 1998 Nov;100(1-2):25-35; Darling et al., ”Control of simple arm movements in elderly humans.” Neurobiol Aging, 1989 Mar-Apr;10(2):149-57)、運動の緩慢化(slowing of movement)(Diggles-Buckles V. “Age-related slowing. In: Stelmach GE, Homberg V, editors.” Sensorimotor impairment in the elderly. Norwell, MA: Kluwer Academic; 1993.)、ならびに平衡および歩行困難(Tang PF, Woollacott MH. “Balance control in the elderly.” In: Bronstein AM, Brandt T, Woollacott MH, editors. Clinical disorders of
balance, posture and gait. London: Arnold;1996.)が含まれる。
【0017】
これら障害は、高齢者が日常生活の機能的活動を行う能力にマイナスの影響を与える。転倒は高齢者の怪我および罹患の主な原因であるため、歩行および平衡の問題は特に関心が持たれている:転倒する高齢者の20〜30%が、運動を制限しかつクオリティ・オブ・ライフを低下させる中度から重度の怪我を負う。さまざまなタスク(tasks)において加齢に伴う動作時間の顕著な増加が見られる。加齢に伴い、動作は15〜30%も緩慢となる(cf. Diggles-Buckles, 1993)。この緩慢化は、一部においては、高齢者が動作の速度を犠牲にして動作の正確さを重視するという方策(strategic)であると思われる。より速度の遅い情報処理も、神経ノイズおよびその他のシナプスの変化の増加のために、非特異的、広範囲な形で運動機能に影響を与え得る。
【0018】
さらに、歩行パターンの変化と老化との間に関係性が指摘されている。具体的には、高齢者においては、歩行が縮まると共に減速する(Wolfson, L., et al., (1990) “Gait assessment in the elderly: A gait abnormality rating scale and its relation to falls.” J. Gerontol. 45: M12-19)。この、ヒトにおいて認められている歩行の変化は、齧歯動物における年齢依存の歩行の変化と相関があるとされている(Klapdor, K. et al., (1997) “A low-cost method to analyze footprint patterns.” J. of Neuroscience Methods. 75: 49-54、およびHilber et al., (2001) “Motor skills and motor learning in lurcher mutant mice during aging.” Neuroscience. 102:615-623を参照)。
【発明の概要】
【0019】
本開示は、SHC−1/p66−関連疾患の1つもしくはそれ以上の症状の治療、ROS生成の抑制、または上記治療における薬剤の製造の方法に関する。一実施形態において、本発明は、式Iを有するモノマー単位および/またはその薬学的に許容される塩、溶媒化合物(solvate)、もしくはプロドラッグを含むポリマー組成物(polymeric composition)を、それを必要とする哺乳動物に投与することによりSHC−1/p66関連疾患の1つまたはそれ以上の症状を治療する方法を含む。
【0021】
式I中、R
1およびR
2の各々は独立してH、アルキル、またはアシルであり;R
3、R
4、R
5、R
6、およびR
7の各々は独立してH、OH、アルコキシル、またはアシルであり;かつR
8はHまたは糖質部分(saccharide moiety)である;かつ、重合されるモノマーの数は2〜30であり、ポリマーの平均分子量は600〜10000である。
【0022】
一実施形態において、本発明は、老化、糖尿病、および虚血後の再かん流傷害(reperfusion injuries after ischemia)からなる群より選ばれるSHC−1/p66−関連疾患の1つまたはそれ以上の症状の治療薬の製造におけるポリマー組成物の使用であって、該ポリマー組成物が、式Iを有するモノマー単位および/またはその薬学的に許容される塩、溶媒化合物、もしくはプロドラッグを含む、使用を含む。
【0023】
一実施形態において、当該方法は、SHC−1/p66の発現または活性の影響を受ける疾患の1つまたはそれ以上の症状の治療を対象とする。具体的な実施形態において“SHC−1/p66−関連疾患”とは、SHC−1/p66の発現または活性を低下させることによりそれらの症状が改善されるものである。かかる疾患には老化、糖尿病、および虚血後の再かん流傷害が含まれる。本方法は、細胞変性、肝細胞腫脹、ミトコンドリア機能不全、加齢に伴う運動障害(age-related motor deficits)、および/もしくは歩長の縮小(reduced stride length)のような老化の1つまたはそれ以上の症状;高グルコースに関連した内皮機能不全、アテローム発生、腎症、および/もしくは心筋症のような糖尿病の1つまたはそれ以上の症状;ならびに増加した活性酸素種と細胞死の存在を含む虚血後の再かん流傷害の1つまたはそれ以上の症状を治療するための実施形態を対象とする。
【0024】
一実施形態において、本方法は、BEL−Xおよび/またはその薬学的に許容される塩、溶媒化合物、もしくはプロドラッグを含む組成物の投与を含む。一実施形態において、当該組成物は50から1500mg/kg/dayの用量で投与される。
【0025】
添付の図面を参照にして、 以下に本発明およびその特定の実施形態の詳細な説明を示す。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本実施形態による生薬BEL−Xの処理は高齢マウスの肝臓に対して作用する。
図1A〜Cは、本実施形態による、幼若マウス(2ヶ月、
図1A);未処理老マウス(20ヶ月、
図1B);および1000mg/kg/dayとして経口投与によりBEL−Xで処理した老マウス(20ヶ月、
図1C)のホルマリン固定およびパラフィン包埋肝臓サンプルの切片のヘマトキシリンおよびエオシン染色である。
【
図2】RT−qPCRによるSHC−1/p66発現の検出。グラフに示されるように、本実施形態により、Bel−XはSHC−1/p66の発現を減少させた。
【
図3】本実施形態によるウエスタンブロット法を用いたマウス肝組織中に存在するSHC−1/p66タンパク質の量の検出。
【
図4】本実施形態による細胞中の薬剤BEL−Xの処理後におけるROS産生の検出。ヒト肝細胞がん細胞Huh7をH
2O
2で処理してROS産生を誘発した(
図4Aおよび4C)。これら細胞をH
2O
2誘発後に薬剤BEL−Xで処理した(
図4Bおよび4D)。
図4Aおよび4Cは、顕微鏡により観察された各切片上に存在する細胞の数が似通っていた。存在するそれら細胞のうち、
図4Bは免疫蛍光により観察されたH
2O
2に誘発された大量のROS産生を示しているが、薬剤BEL−Xで処理した細胞はROSの産生がごく少なく、BEL−XがROS産生を低減しかつ細胞を抑えられることが示された(
図4D)。
【
図5】本実施形態による細胞中のROSの減少の検出。ヒト肝がん細胞Huh7、ヒト直腸がん細胞HRT−18およびヒト正常皮膚細胞WS1を含む各種細胞をテストした。特筆すべきことに、テストしたすべての細胞は、BEL−Xで処理されることで、H
2O
2による誘発後のROS発生がかなり少量であった。
【
図6】
図6a〜6cは、本実施形態によるBel−Xを得るための苧麻(Boehmeria nivea (L.) Gaud)からのプロアントシアニジン精製の
13C磁気共鳴分光結果を示している。
【
図7】
図7a〜7bは、本実施形態によるプロアントシアニジンの2つのモノマー間の結合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の詳細な記載では、説明の目的で、開示される実施形態を十分に理解するべく多くの具体的な詳細が記載されている。しかしながら、これら具体的な詳細がなくとも1つまたはそれ以上の実施形態が実施可能であるということは、明らかであろう。他の例においては、図面を簡潔とするために、周知の構造および装置は概略的に示される。
【0028】
本組成物の実施形態は、式Iのモノマー単位(monomeric units)、またはその薬学的に許容される塩、溶媒化合物、もしくはプロドラッグを含む:
【0030】
式中、R
1およびR
2の各々は独立してH、アルキル、またはアシルであり;R
3、R
4、R
5、R
6、およびR
7の各々は独立してH、OH、アルコキシル、またはアシルであり;かつR
8はHまたは糖質部分(saccharide moiety)である。
【0031】
一実施形態において本発明は、栄養剤(nutrient)、栄養補給食品(nutriceutical)、健康食品(health food)またはサプリメント(supplement)の形式で式Iを有するモノマー単位を含有するポリマー組成物を含む組成物を含む。
【0032】
上記式を参照すると、ポリマー化合物中のモノマー単位は1つまたはそれ以上の次の特徴を有し得る:R
1およびR
2は独立してHであり;R
3およびR
7の各々はHであり、R
4、R
5、およびR
6の各々はOHまたはアルコキシルであり、かつR
8はHである。
【0033】
ポリマー化合物において、モノマー単位は、異なるモノマー単位の任意の2つの原子間の結合、例えばC4−C8結合(つまり、1つのモノマー単位のC4炭素と別のモノマー単位のC8炭素との間に形成される結合)、C4−C6結合(つまり、1つのモノマー単位のC4炭素と他のモノマー単位のC6炭素との間に形成される結合)、またはC2−O7(つまり、1つのモノマー単位のC2炭素と他のモノマー単位のO7酸素との間に形成される結合)によって、互いに共有結合し得る。1例では、モノマー単位のすべてがC4−C8結合によって互いに共有結合している。別の例では、モノマー単位のすべてがC4−C6結合によって互いに共有結合している。留意すべきは、環状化合物の原子のナンバリング(numbering)は周知であり、かつ化学命名法においてよく用いられているということである。以下に示されるのは、式(I)のポリマー化合物のコア構造の原子のナンバリングである:
【0035】
一実施形態において、本組成物は、低オリゴマー;ダイマー、トリマー、およびテトラマーを有する式Iの化合物を含む。 他の実施形態では、精製された組成物は、重合度の異なる式Iのモノマー単位の混合物を含む。
【0036】
重合されるモノマー単位の数は2〜30、より好ましくは3〜20とすることができる。平均分子量は600〜10000とするのが好ましい。
【0037】
一実施形態において、(BEL−Xを含む)本組成物は、1個よりも多い式Iのモノマー単位からなる混合物を含有していてよい。一実施形態において、ポリマーはホモポリマーであってよい。一実施形態において、組成物は異なるホモポリマーからなる混合物を含み得る。一実施形態において、ポリマーは、式Iの範囲内にある複数の異なるモノマー化合物を含むヘテロポリマーであってよい。
【0038】
“単離調製物(isolated preparation)”とは天然源または合成混合物から分離された1つまたはそれ以上の上記ポリマー化合物を含む組成物のことをいう。
【0039】
用語“アルキル”は、1−10の炭素原子を含む直鎖または分岐炭化水素のことをいう。アルキル基の例には、限定はされないが、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、およびt−ブチルが含まれる。用語“アシル”は、−C(O)−アルキルまたは−C(O)−アリールラジカル(aryl radical)のことをいう。アシル基の例には、限定はされないが、−C(O)−CH
3および−C(O)−phが含まれる。用語“アルコキシ”は、−O−アルキルラジカル(alkyl radical)のことをいう。アルコキシ基の例には、限定はされないが:−OCH
3および−OCH
2CH
3が含まれる。
【0040】
本明細書で言及されるアルキル(Alkyls)は、置換されていても、または置換されていなくてもよい。置換基の例には、限定はされないが:ハロ、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、ニトロ、メルカプト、アルコキシカルボニル、アミド、カルボキシ、アルカンスルホニル、アルキルカルボニル、カルバミド、カルバミル、カルボキシル、チオウレイド(thioureido)、チオシアナト(thiocyanato)、スルホンアミド、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルオキシ、アリール、ヘテロアリール、シクリル(cyclyl)、ヘテロシクリル(heterocyclyl)が含まれ、このうちアルキル、アルケニル、アルキニル、アルキルオキシ、アリール、ヘテロアリール、シクリル、およびヘテロシクリルは任意で、アルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、メルカプト、シアノ、またはニトロでさらに置換される。
【0041】
用語“糖質部分(saccharide moiety)”は炭水化物ラジカル(carbohydrate radical)のことをいう。それは、単糖(monosaccharide)(例えば、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、リブロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、もしくはタガトース)、二糖(例えば、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、もしくはセロビオース)、オリゴ糖(3−10の単糖を含む)、または多糖(10より多い単糖を含む)のラジカルであり得る。
【0042】
さらに、式Iのモノマーはフラボノイドを含んでいてよい。フラボノイドには、カテキン、エピカテキン、エピアフゼレキン、ガロカテキン、ガロエピカテキン、エピガロカテキン、ガラート類(gallates)、フラボノール類(flavonols)、フラバンジオール類(flavandiols)、ロイコシアニジン類(leucocyanidins)、またはプロシアニジン類(procyanidins)が含まれ得る。一実施形態において、式Iの化合物のモノマーは、フラバン−3−olまたはフラバノン類(flavanones)誘導体を含み得る。特定の例は:3−フラバノール、3,4−フラバノール、カテキン((2R,3S)および(2S,3R))、ならびにエピカテキン((2S,3S)および(2R,3R))をそれぞれ含む。
【0043】
上述のポリマー化合物は:モノマー(monomeric)またはポリマー(polymeric)化合物それら自体、ならびに、必要な場合に、それらの塩類、プロドラッグ、および溶媒化合物を含む。塩は、例えば、アニオンと、ポリマー化合物上の正に帯電した基(positively charged group)(例えばアンモニウムイオン)との間に形成され得る。適したアニオンには:塩化物イオン(chloride)、臭化物イオン(bromide)、ヨウ化物イオン(iodide)、硫酸イオン(sulfate)、硝酸イオン(nitrate)、リン酸イオン(phosphate)、クエン酸イオン(citrate)、メタンスルホン酸イオン(methanesulfonate)、トリフルオロ酢酸イオン(trifluoroacetate)、酢酸イオン(acetate)、コハク酸イオン(succinate)、リンゴ酸イオン(malate)、トシル酸イオン(tosylate)、酒石酸イオン(tartrate)、フマル酸イオン(fumarate)、グルタミン酸イオン(glutamate)、グロクロン酸イオン(glucuronate)、乳酸イオン(lactate)、グルタル酸イオン(glutarate)、およびマレイン酸イオン(maleate)が含まれる。同様に、塩は、カチオンと、ポリマー化合物上の負に帯電した基(negatively charged group)(例えばフェノラートまたはカルボン酸)との間に形成されてもよい。適したカチオンには、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、およびアンモニウムカチオンが含まれる。化合物は、プロドラッグおよび溶媒化合物の形式としてもよい。プロドラッグの例には、エステル類(esters)およびその他の薬学的に許容される誘導体が含まれ、それは、被験体への投与において、活性化合物(active compounds)を提供できるものである。溶媒化合物とは、活性化合物と薬学的に許容される溶媒との間に形成される錯体のことをいう。薬学的に許容される溶媒の例には:水、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸、およびエタノールアミンが含まれる。
【0044】
ポリマー化合物のモノマーは不斉中心を含む。よって、それらはラセミ化合物およびラセミ混合物、単一のエナンチオマー、個々のジアステレオマー、およびジアステレオマー混合物(diastereomeric mixtures)として存在し得る。このような異性体(isomeric forms)が考えられる。一実施形態において、モノマーはC4の位置に(R)または(S)光学異性体を含み得る。
【0045】
本発明の別の態様は、薬学的に許容される担体と上述の単離調製物とを混合することにより得られる医薬組成物を、それを必要とする被験体に投与することによって、SHC−1発現を抑制し、肝細胞腫脹を抑制し、もしくはROS生成を抑制する方法、または老化に関連した運動障害の発生もしくは重症度を低減させる方法に関する。
【0046】
一実施形態において、本発明は、SHC−1発現を抑制するため、肝細胞腫脹を抑制するため、ROS生成を抑制するため、または老化に関連した運動障害の発生もしくは重症度を低減させるための薬剤の製造におけるポリマー組成物の使用を含み、このうちポリマー組成物は、式Iを有するモノマー単位および/またはその薬学的に許容される塩、溶媒化合物、もしくはプロドラッグを含む。
【0047】
SHC−1/p66−関連疾患を治療する方法、または上述した改善/治療/増進(promotion)の中での薬剤の製造における上述の単離調製物の使用もまた、本発明の範囲内にある。
【0048】
あるいは、本組成物は、食品中にて、栄養剤、栄養補給食品、健康食品、またはサプリメントとして投与されてもよい。
【0049】
本発明の多くの実施形態の詳細が以下の説明において記載される。本発明のその他の特徴、目的および利点は、当該記載および特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【0050】
上述した式Iのポリマー化合物は、SHC−1/p66−関連疾患を治療する、およびROS生成を抑制するためにそれを必要とする被験体に投与され得る。
【0051】
ここで述べられる組成物は、植物から抽出される、または人工的手段によって修飾される、もしくは合成されるものであってよい。一実施形態において、当該植物には、マメ科(Leguminosae)、ベンケイソウ科(Crassulaceae)、シクンシ科(Combretaceae)、ガガイモ科(Asclepiadaceae)、バラ科(Rosaceae)、シソ科(Lamiaceae)、タデ科(Polygonaceae)、ツツジ科(Ericaceae)、マツ科(Pinaceae)、ブドウ科(Vitaceae)またはイラクサ科(Urticaceae)に属する植物が含まれていてよく、イラクサ科に属する苧麻(Boehmeria nivea (L.) Gaud)であるのが好ましい。抽出される植物の部分には、根、茎、葉および/または果実部分が含まれ得る。
【0052】
抽出方法は米国特許出願公開第2010/0168221号および米国特許出願公開第2011/0158933号に記載されており、それらの全体の内容が、本明細書により参照として明示的に援用される。抽出物は、任意で、さらに部分的に精製または完全に精製されてもよい。
【0053】
用語“減少(reduce)”または“抑制(inhibit)”には、症状の重症度または発生を低下させることが含まれる。一実施形態において、減少または抑制は、齢をマッチングした(age-matched)未処理対照および/または未処理幼若対照と比較したときのパーセンテージによって測定される。一実施形態では、症状の発生は、齢をマッチングした対照と比較したときに、少なくとも25%、50%、または75%減少し得る。一実施形態では、特定の症状の重症度が少なくとも25%、50%、または75%から99%まで減少し得る。症状の重症度の100%の減少は、その症状がもはや示されないまたは検出できないことを意味し得る。一実施形態において、減少または抑制は、幼若マウスと比べたときの症状の発生または重症度の“倍の(fold)”増加によって測定される。好ましくは、当該倍の増加は、幼若マウスと比べたときの症状の発生または重症度の少なくとも25%である。
【0054】
用語“有意な(significant)”は、一般に統計的に有意な値に適用される。統計的有意性は一般に理解されている方法によって決定され得る。
【0055】
有意な(significant)という用語は、処理および未処理群または異なる齢の群を比較する統計的手法を用いることを意味する。
【0056】
“SHC−1/p66−関連疾患を治療する”とは、SHC−1/p66の発現または活性により影響を受ける疾患の1つまたはそれ以上の症状を治療することを意味し得る。具体的には、“SHC−1/p66−関連疾患”は、SHC−1/p66の発現または活性を低下させることによりそれらの症状が改善される疾患である。かかる疾患には老化、糖尿病、および虚血後の再かん流傷害が含まれる。
【0057】
具体的には、本方法は、細胞変性、肝細胞腫脹、ミトコンドリア機能不全、加齢に伴う運動障害、および/もしくは歩長の縮小のような老化の1つまたはそれ以上の症状;高グルコースに関連した内皮機能不全、アテローム発生、腎症、および/もしくは心筋症のような糖尿病の1つまたはそれ以上の症状;ならびに増加した活性酸素種と細胞死の存在を含む虚血後の再かん流傷害の1つまたはそれ以上の症状を治療することを対象とするものである。
【0058】
用語“加齢に伴う運動障害(Age-Related Motor Deficits)”には、運動活動(motor activity)の速度の低下、歩長の縮小、または運動活動の範囲の縮小が含まれ得る。加齢に伴う運動障害の低減は、加齢に伴う運動障害の発症の遅延、または加齢に伴う運動障害の重症度の低減であり得る。一実施形態では、加齢に伴う運動障害の発症は、ヒトで少なくとも5年、10年、20年、30年、40年、または50年遅延される。一実施形態では、加齢に伴う運動障害の重症度の低減は、未処理の齢をマッチングした群の運動障害の重症度と比べたときの、運動活動の速度および/または運動活動の範囲の少なくとも50%〜100%(各整数値を含む)の改善であり得る。
【0059】
被験体は動物、より詳細には哺乳動物、より具体的にはマウス、ラット、ウサギ、ヤギ、またはヒトであってよい。
【0060】
剤形(Dosage Form)
本発明の方法を実施するため、上述した1つもしくはそれ以上のポリマー化合物を含む組成物、またはそれらの構成成分のモノマーは、非経口、経口(例えばp.o.)、経鼻(nasally)、経直腸(rectally)、局所的(topically)、または口腔内(buccally)投与され得る。本明細書において用いられる用語“非経口(parenteral)”とは、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液嚢内、胸骨内(intrasternal)、髄腔内(intrathecal)、病巣内(intralesional)、または頭蓋内(intracranial)注射、および任意の適した注入法のことをいう。
【0061】
滅菌注射用組成物は、1,3−ブタンジオール中の溶液のような、非毒性の非経口で許容できる希釈剤または溶媒中の溶液または懸濁液であってもよい。使用可能な許容できる賦形剤(vehicles)および溶媒にはマンニトールおよび水がある。加えて、固定油が一般に溶媒または懸濁媒体として使用される(例えば、合成モノまたはジグリセリド)。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は注射剤の調製に使用でき、特にそれらのポリオキシエチレン化された型の、オリーブ油またはヒマシ油のような天然の薬学上許容される油もまた同様にして使用できる。これらの油溶液または懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤もしくは分散剤、カルボキシメチルセルロース、または類似の分散剤を含んでもよい。TweensもしくはSpanのようなその他の一般的に使用される界面活性剤、または薬学上許容される固体、液体、もしくは他の剤形の製造に一般的に使用されるその他の類似する乳化剤もしくはバイオアベイラビリティ増強剤(bioavailability enhancers)もまた、製剤(formulation)の目的で使用できる。
【0062】
経口投与用の組成物は、カプセル、錠剤、乳剤および水性懸濁液、分散液、ならびに溶液を含む経口的に許容される任意の剤形とすることができる。錠剤の場合に、一般的に使用される担体には、ラクトースおよびコーンスターチが含まれる。一般的に、ステアリン酸マグネシウムのような滑剤(Lubricating agents)も添加される。カプセル形態での経口投与では、有用な希釈剤にはラクトースおよび乾燥コーンスターチが含まれる。水性懸濁液または乳剤が経口で投与されるときは、活性成分が乳化剤または懸濁化剤と組み合わせた油相中に懸濁または溶解されていてよい。必要に応じて、特定の甘味剤、風味剤、または着色剤が添加されてもよい。
【0063】
鼻エアロゾルまたは吸入組成物は、医薬製剤の分野でよく知られた技術に従って調製することができる。例えば、かかる組成物は、ベンジルアルコールまたはその他の適した防腐剤、バイオアベイラビリティを高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン(fluorocarbons)、および/または当該分野において知られているその他の可溶化剤もしくは分散剤を用い、生理食塩水中の溶液として調製することができる。1つまたはそれ以上の活性化合物を含む組成物は、直腸投与のための座薬の形式で投与されてもよい。
【0064】
本組成物は、50から1500mg/kg/dayの用量範囲で投与され得る。一実施形態において、本組成物は250から1000mg/kg/dayの用量範囲で投与される。
【0065】
歩長を増大させるために好ましい用量範囲は:50〜1000mg/kg/dayである。
【0066】
肝細胞腫脹を低減するために好ましい用量範囲は:100〜1000mg/kg/dayである。
【0067】
医薬組成物中の担体は、当該組成物の活性成分と相性がよく(compatible)(好ましくは活性成分を安定させることができる)、処理されるべき被験体に有害でないという意味において“許容可能な”ものでなくてはならない。1つまたはそれ以上の可溶化剤が、活性化合物の送達(delivery)のための医薬賦形剤として用いられ得る。その他の担体の例には:コロイド状酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、ラウリル硫酸ナトリウム、およびD&C Yellow #10が含まれる。
【0068】
あるいは、本組成物は、食品中にて、栄養剤、栄養補給食品、健康食品、またはサプリメントとして投与されてもよい。
【0069】
化合物の効果は、in vitroまたはin vivoアッセイによりテストすることができる。例えば、本発明の化合物は、当該化合物を酸化ストレスに関するそれらの生物活性についてテストするin vitroアッセイにより、予備的ににスクリーニングすることができる。この予備スクリーニングにおいて高い有効性を示す化合物を、当該分野でよく知られるin vivo法によってさらに評価して、SHC−1/p66のような老化に関連する遺伝子の発現または転写を減少または抑制するそれらの活性を評価することができる。
【0070】
以下の特定の実施例は、単に例として解釈されるべきであり、いかなる方式においても開示の残りの部分を限定するものではない。さらなる詳細なしに、当業者は本明細書における記載に基づいて本発明を最大限利用できると考えられる。本明細書に引用されている全ての刊行物は、それら全体が本明細書により参照として援用される。
【実施例】
【0071】
実施例1:BEL−Xの製造および特徴
【0072】
プロアントシアニジンを含む苧麻(Boehmeria nivea (L.) Gaud)抽出物の調製
【0073】
手法1
苧麻の根および茎を洗浄し、自然環境中で乾燥した。乾燥した苧麻を5mm厚の薄片にカットし、4℃で保管した。次いで、保管した苧麻を粉砕機で粉砕してから、20メッシュのスクリーンを用いてふるい分けた。そのふるい分けた粉末を取り、95%エタノール中に加え(1:10、w/v)、2時間加熱還流してから (2回行った)、室温まで冷却した。その加熱してから室温まで冷却した抽出液を遠心バッグに入れ遠心分離によりろ過した。そのろ過した溶液を40℃よりも低い温度にて真空エバポレーターで濃縮し、次いで凍結乾燥機で凍結乾燥した。その凍結乾燥した抽出物を、プロアントシアニジンの成分を含有する医薬組成物とした。
【0074】
手法2
手法1において4℃で保管した苧麻を粉砕機で粉砕してから、20メッシュのスクリーンを用いてふるい分けた。そのふるい分けた粉末(20メッシュ未満)を取り、RO水に加え(1:10、w/v)、2時間加熱還流してから(2回行った)、室温まで冷却した。その加熱してから室温まで冷却した抽出液をエタノール水溶液(95〜50%)中に加えて混合した。その抽出液を冷却して沈殿させた後、その上層液を遠心バッグに入れ、遠心分離によりろ過した。ろ過した溶液を40℃よりも低い温度にて真空エバポレーターで濃縮してから、凍結乾燥機で凍結乾燥した。その凍結乾燥した抽出物を、プロアントシアニジンの成分を含有する医薬組成物とした。
【0075】
苧麻抽出物の精製
【0076】
手法1
溶媒抽出−1
プロアントシアニジンを含有する苧麻抽出物をヘキサン(1:10、w/v)に加え、6時間加熱還流して抽出物中の脂質を除去した。この固体抽出物を70%メタノール水溶液および/または0.3%ビタミンC溶液に溶解し、40℃よりも低い温度にて真空エバポレーターで濃縮して溶媒を除去した。次いで、その抽出物をクロロホルム(抽出物:クロロホルム=1:1、v/v)に加え、30分間ボルテックスした(複数回の抽出を行った)。その水層を酢酸エチル(抽出物:酢酸エチル=1:1、v/v)に加え、30分間ボルテックスした(複数回の抽出を行った)。その水層を酢酸エチルに加え(抽出物:酢酸エチル=1:1、v/v)、30分間ボルテックスした(複数回の抽出を行った)。その水層を40℃よりも低い温度にて真空エバポレーターで濃縮した後、凍結乾燥機で凍結乾燥した。
【0077】
手法2
溶媒抽出−2
プロアントシアニジンを含有する苧麻抽出物を水/エタノール溶液に溶解し、40℃よりも低い温度にて真空エバポレーターでエタノールを除去し、ヘキサン(1:10、v/v)に加えた後、30分間ボルテックスして(複数回の抽出を行った)抽出物中の脂質を除去した。その水層を酢酸エチル(水層:酢酸エチル=1:1、v/v)に加え、30分間ボルテックスした(複数回の抽出を行った)。その水層を1−ブタノール(1:1、v/v)に加え、30分間ボルテックスした(複数回の抽出を行った)。その水層を40℃よりも低い温度にて真空エバポレーターで濃縮した後、凍結乾燥機で凍結乾燥した。
【0078】
手法3
ゲル浸透クロマトグラフィー
プロアントシアニジンを含有する部分精製された手法1の苧麻抽出物を、ゲル浸透クロマトグラフィー(直径4cm×長さ45cmのSephadex LH−20)により、極性比率の異なる溶液を用いて溶出することにより分離し、その中の不純物を除去した。その部分精製された物質2.5gを95%エタノール0.5mLに溶解し、ゲル浸透クロマトグラフィーカラムに投入した後、一連の溶媒で連続して溶出した。異なる溶媒で溶出したそれら溶出液を回収した。溶媒はそれぞれ、95%エタノール300ml、95%エタノール/メタノール(1/1、v/v)300ml、メタノール300ml、50%メタノール水溶液300ml50%アセトン水溶液300ml、およびアセトン300mlとした。95%エタノール300mLで溶出した溶出液を除き、その他すべての溶出液を40℃よりも低い温度にて真空エバポレーターで濃縮してから、凍結乾燥機で凍結乾燥した。凍結乾燥した物質を−20℃で保管し、使用に備えた。部分精製および/または精製プロアントシアニジンを含有する凍結乾燥した苧麻抽出物の物理的および化学的な特性を分析した。この凍結乾燥した溶出物質は、部分精製および/または精製プロアントシアニジン成分を含んでいた。
【0079】
13Cおよび
1H核磁気共鳴分光分析
精製されたプロアントシアニジン試料を
13C核磁気共鳴分光測定および
1H核磁気共鳴分光分析測定により検出した。
13C核磁気共鳴分光分析の結果が
図6a〜
図6cに示されており、145.2〜145.7ppmに、二重項−二重項のピークがあるのみで、他のピークは無い。したがって、このモノマーは、シアニジンを有するが、デルフィニジンは有さない、つまりB環が3つのOH基を有しており、これはEGA/MS分析の結果と一致していた。
図6において、R
1=HまたはOHであり、かつR
2=H、OHまたはOCHである。
【0080】
13C核磁気共鳴スペクトルおよび
1H核磁気共鳴スペクトルから、プロアントシアニジンの隣接するモノマー間の結合は、
図7aおよびbに示されるように、主に、C4、C8の炭素−炭素結合、C4、C6の炭素−炭素結合ユニットおよびC2、C7の酸素結合ユニットで起こっていた。
【0081】
実施例2:BEL−Xの作用
【0082】
動物個体群(Animal population):雄および雌C57BL/6系マウスを用いる。(1)未処理の雄マウス(対照)、(2)BEL−Xで処理した9〜20月齢の雄マウス、(3)未処理の雌マウス(対照)、(4)BEL−Xで処理した9〜20月齢の雌マウスを含む4グループである。
【0083】
組成物の調製および用量:上述の手法3からのBEL−Xを蒸留水に溶解し、給餌針(feeding needle)を用い経口投与により1000mg/kg/dayで毎日マウスに与える。
【0084】
マウスを20月齢で犠牲死させる。病理学および生物学的分析のために肝組織および血清を収集する。
【0085】
A.老化した肝臓に対するBel−Xの作用
マウスの犠牲死時に、マウスの体重および肝重量を測定する。その肝臓を回収し、ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋する。肝切片をヘマトキシリンおよびエオシン染色する。固定および染色した肝切片の顕微鏡観察および組織病理学的評価によって肝細胞腫脹を評価する。
【0086】
結果が
図1A、B、およびCに示されている。幼若マウス(2月齢)の肝臓を老マウス(20月齢)と比較することによって示されているように、老マウスの肝臓は肝細胞腫脹を示している(
図1Aを
図1Bと比較)。幼若マウスの肝細胞腫脹を、Bel−Xで処理した老マウスの肝細胞腫脹のレベルと比べると、処理群は肝細胞腫脹が最小限であるまたは無く;幼若マウスの肝臓に類似している(
図1C参照)。このことが、表1における結果でさらに証明される:
【0087】
【表1】
【0088】
具体的に言うと、雄対照 (未処理)マウスでは、12匹の老マウスを評価し、そのうちの9匹が肝細胞腫脹および変性を示している。よって、“肝異常の割合(liver abnormal ratio)”は、評価した全てのマウスの数/肝細胞腫脹を示すマウスの数に基づくパーセンテージである。肝異常の割合が高くなるほど、発見された肝細胞腫脹は多かった。
【0089】
表1は、BEL−X処理により、雄および雌両者のマウス個体群において肝細胞腫脹の発生が50〜75%、有意に減少したことを示している。
【0090】
B.RT qPCRによるSHC−1/p66の検出
リアルタイムRT−PCR:Trizol RNA単離プロトコールとして説明されているように、冷凍したマウスの肝臓から全RNA抽出を行う。cDNA合成は、ランダムプライマーおよびSuperScript IIキットを用いる。目的遺伝子SHC1アイソフォームp66のフォワードプライマー、5’−CGGAATGAGTCTCTGTCATCGCTGGA(配列番号1);リバースプライマー5’−CGCCGCCTCCACTCAGCTTGTT(配列番号2)、および内在性コントロール(internal control)ハウスキーピング遺伝子GAPDHのフォワードプライマー、5’−GAAGGTGAAGGTCGGAGT(配列番号3)、リバースプライマー、5’−GAAGATGGTGATGGGATTTC(配列番号4)の脱塩(salt-free)プライマーを生成する。各種肝組織における目的遺伝子の発現量を検出するため、全cDNA1マイクロリットルをガラス毛管中のリアルタイムPCRマスターミックス(Roche Molecular Biochemicals)9mlに加える。4ステップの実験プロトコール:(i)変性プログラム(95℃で20秒);(ii)増幅および定量化プログラムを、SHC−1/p66について60回またはGAPDHについて40回繰り返す(単一の蛍光測定で、95℃で20秒;SHC−1/p66ついて62℃で20秒またはGAPDHについて60℃で20秒;72℃で20秒;SHC1/p66およびGAPDHについて82℃で20秒、);(iii)融解曲線プログラム(1秒あたり0.1℃の加熱率とし60〜95℃、連続蛍光測定);(iv)40℃まで下げる冷却プログラム、を用いる。
【0091】
RT−PCR産物を、LightCycler Software 3.5(Roche Molecular Biochemicals)を用い、C
T値によって算出する。GADPH遺伝子を対照として用いる。相対的なSHC−1/p66の発現量を、比較C
T法を用いることによって分析する(Schmittgen, T. D. & K.J. Livak. (2008) “Analyzing real-time PCR data by the comparative CT method.” Nature Protocol. 3: 1101-1108.)。
【0092】
結果:
図2に示されるように、BEL−Xで処理していないマウスにおけるSHC−1/p66の発現と比べたときに、BEL−XはSHC−1/p66の発現を有意に低下させている。p66−欠損マウスおよび細胞はROSのレベルの低下および酸化ストレスへの耐性の向上を示すため、SHC−1/p66発現の減少もまた、ROSを低下させ、かつ酸化ストレスを低減させる。
【0093】
C.SHC−1/p66タンパク質に対する老化およびBEL−Xの作用
ウエスタンブロッティング:肝細胞に10倍量のRIPAバッファーを加え、ホモジナイズし、次いで遠心分離により組織残屑を除去し、その溶液を用いSDS−PAGEによりタンパク質を分離した。SDS−PAGE中のタンパク質をPVDF膜(Millipore)上に転写し、それぞれ特異的抗SHC1/p66およびGAPDH抗体と共に培養した。その特異的タンパク質の発現をUVP Biospectrumを用いて検出すると共に分析した。
【0094】
結果:
図3は、SHC−1/p66は幼若マウスよりも老マウスにおいてタンパク質濃度がほぼ2倍高いことを示している。しかし、BEL−Xで処理した老マウスは、その肝臓中のSHC−1/p66タンパク質が有意に少なかった(タンパク質濃度が約64%増加したのみ)。
【0095】
実施例3: 運動スキルの評価
【0096】
動物:雄および雌C57BL/6系マウスを用いる。(1)未処理の雄マウス(対照)、(2)BEL−Xで処理した12〜20月齢の雄マウス、(3)未処理の雌マウス(対照)、(4)BEL−Xで処理した12〜20月齢の雌マウスを含む4グループがある。BEL−Xを蒸留水に溶解し、給餌針(feeding needle)を用い経口投与により250mg/kg/dayで毎日マウスに与えた。
【0097】
運動スキルテスト:齧歯動物の歩行パターン(gait pattern)の年齢に依存する変化が、老齢のヒトの歩行パターン(walking pattern)の変化と比較されている(Wolfson L, Whipple R, Amerman P, Tobin JN. (1990) Gait assessment in the elderly: A gait abnormality rating scale and its relation to falls. J Gerontol. 45:M12-19.)。したがって、修正された歩行テスト法(Gait test method)を用い(Klapdor, K. et al., (1997) A low-cost method to analyze footprint patterns. Journal of Neuroscience methods. 75:49-54; Hilber, P. and J. Caston. (2001) Motor skills and motor learning in lurcher mutant mice during aging. Neuroscience. 102:615-623.)、異なる月齢マウスの歩隔(stride width)を測定した。マウスの足を食品着色料で染色し、足跡を40×10cmの紙で評価した。各マウスにつき歩長(stride length)を少なくとも3回分析した。
【0098】
結果:表2に示されるように、雄および雌のいずれにおいても、老マウスの歩幅(stride)は幼若マウスよりも有意に短かった。しかし、Bel−Xで処理した老マウスの歩長は幼若マウスとほぼ同じであった。よって、250 mg/kg/dayでのBel−Xによる処理は、高齢の被験体がそれらの歩長を保つのに有用であった。
【0099】
【表2】
【0100】
マウスの寿命をヒトと比較すれば、マウスがヒトよりも速く老化することは明らかである。The Jackson Laboratoryからの報告によれば、3〜6ヶ月のマウスは、20〜30歳の年齢のヒトにほぼ相当し、16〜24ヶ月のマウスは56〜69歳の年齢のヒトにほぼ相当する。したがって、 Bel−X処理によって、56〜69歳に、20〜30歳の歩長が与えられていると考えることができる。
【0101】
実施例4:ROS産生に対する処理の効果
【0102】
細胞培養:ヒト肝がん細胞(Huh7)をMEM培地中に維持する。ヒト直腸腺がん細胞(HRT−18)およびヒト皮膚線維芽細胞様細胞(skin fibroblastoid cells)(WS1)をDMEM培地中に維持する。その培地に、1%ペニシリン/ストレプトマイシン混合物および1%非必須アミノ酸、1%GlutaMAX−I、1mMピルビン酸ナトリウム、ならびに10%ウシ胎児血清を補充する。それら細胞を37℃、5%CO
2のインキュベーターで培養する。
【0103】
ROS誘発:細胞を24ウェルプレート中に播種し、24時間培養してから、800mM H
2O
2をその培養培地に1時間加え、細胞中のROS産生を誘発する。
【0104】
BEL−X処理:薬物BEL−XのROSへの作用をテストするため、H
2O
2による誘発後、細胞をBEL−Xで24時間処理した。
【0105】
ROS産生の検出:10mM CM−H2DCFDAを細胞に加え、それら細胞を37℃で45分培養する。蛍光プローブインキュベーション(fluorescent probe incubation)の後、それら細胞をPBSで2回洗浄し、ROS産生を蛍光顕微鏡法により直接観察する、またはROS産生を溶解細胞および分光光度計を用い蛍光強度により測定する。
【0106】
結果:
図4Bを
図4Dと比較することにより示されるように、ROSの生成を誘発するようH
2O
2により誘発されたヒト肝がんHuh−7細胞は、大量のROS産生を示している(
図4B中の緑色蛍光)。しかし、ROSを生成するように誘発されてはいるが、さらにBel−Xで処理されてもいる細胞は、非常に少量のROS産生を示している(
図4D中の緑色蛍光)。
【0107】
さらに、
図5に示されるように、Bel−Xは、3つの細胞のタイプ全て(ヒト肝がん細胞Huh−7、ヒト直腸がん細胞HRT−18およびヒト正常皮膚細胞WS1)において、H
2O
2によるROS生成を有意に低下させた。よって、これら実験を先の評価と対比すると、Bel−Xは、酸化ストレス経路により悪い影響を受けるSHC−1に対し効果を有している。したがって、Bel−Xは、肝臓、結腸または皮膚細胞のようなさまざまなタイプの細胞において、酸化ストレスを低減させる。
【0108】
開示された実施形態にさまざまな改良および変化が加えられ得ることは、当業者には明らかであろう。明細書および実施例は単なる例と見なされることが意図されており、本開示の真の範囲は、以下の特許請求の範囲およびそれらの均等物によって示されるものである。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]