【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記の課題は、独立請求項である請求項1に記載されている装置によって解決される。有利な実施の形態は縦続請求項に記載されている。
【0008】
少なくとも一つの電気的な接続素子を備えている本発明によるガラス板は、
−サブストレートと、
−サブストレートの所定の領域上の導電性の構造体と、
−少なくともクロム、有利には少なくともクロム含有鋼を含む接続素子と、
−接続素子を導電性の構造体の部分領域に電気的に接続させる、はんだ材料の層とを有している。
【0009】
サブストレートは有利には、ガラス、特に有利には平板ガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラスを含んでいる。一つの択一的な有利な実施の形態においては、サブストレートがポリマー、特に有利にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及び/又は、それらの混合物を含んでいる。
【0010】
サブストレートは第1の熱膨張率を有している。接続素子は第2の熱膨張率を有している。本発明の一つの有利な実施の形態においては、第1の熱膨張率と第2の熱膨張率との差は5×10
-6/℃未満である。これによってより良好な固着が得られる。
【0011】
ガラス板には導電性の構造体が被着されている。電気的な接続素子は、はんだ材料を用いて、所定の部分領域において導電性の構造体と電気的に接続されている。はんだ材料は、1mm未満の漏れ幅でしか、接続素子と導電性の構造体との間の間隙から漏れ出ない。
【0012】
一つの有利な実施の形態においては、最大漏れ幅は有利には0.5mm未満、特にほぼ0である。このことは、ガラス板における機械的応力の低減、接続素子の固着及びはんだの節約に関して非常に有利である。
【0013】
最大漏れ幅は、接続素子の外縁と、はんだ材料の層厚が50μmを下回っている、はんだ材料の末端個所との間の距離として規定されている。最大漏れ幅は、はんだプロセスの終了後に、凝固したはんだ材料において測定される。
【0014】
所望の最大漏れ幅は、はんだ材料の体積と、接続素子と導電性の構造体との間の垂直方向の距離とを適切に選択することによって達成され、このことは簡単な実験によって求めることができる。接続素子と導電性の構造体との間の垂直方向の距離を、相応のプロセスツール、例えば、スペーサが組み込まれているツールによって設定することができる。
【0015】
最大漏れ幅が負の値を有していることも考えられる。即ち、最大漏れ幅は、電気的な接続素子及び導電性の構造体によって形成される間隙内にまで後退していることも考えられる。
【0016】
本発明によるガラス板の一つの有利な実施の形態においては、最大漏れ幅が、電気的な接続素子及び導電性の構造体によって形成される間隙において凹状のメニスカスを形成するように後退している。凹状のメニスカスは例えば、はんだプロセスの際にはんだが未だ液体である間に、スペーサと導電性の構造体との間の垂直方向の距離を広げることによって生じる。
【0017】
その利点は、ガラス板において、特に過剰量のはんだ材料が多く存在している危険な領域において、機械的応力が低減されることである。
【0018】
第1の熱膨張率は有利には8×10
-6/℃から9×10
-6/℃である。サブストレートは有利にはガラスであり、有利には0℃から300℃の温度範囲において8.3×10
-6/℃から9×10
-6/℃の熱膨張率を有しているガラスである。
【0019】
第2の熱膨張率は、0℃から300℃の温度範囲において、有利には9×10
-6/℃から13×10
-6/℃、特に有利には10×10
-6/℃から11.5×10
-6/℃である。
【0020】
本発明による導電性の構造体は有利には5μmから40μm、特に有利には5μmから20μm、非常に有利には8μmから15μm、またとりわけ10μmから12μmの層厚を有している。本発明による導電性の構造体は有利には銀、特に有利には銀粒子及びガラスフリットを含んでいる。
【0021】
はんだの本発明による層厚は3.0×10
-4m未満である。
【0022】
はんだ材料は有利には鉛フリーである。つまりはんだ材料は鉛を含んでいない。このことは、電気的な接続素子を備えている本発明によるガラス板の環境適合性に関して特に有利である。鉛フリーのはんだ材料は一般的に鉛含有はんだ材料よりも低い延性を有しているので、接続素子とガラス板との間の機械的応力を余り良好には補償することができない。しかしながら、本発明による接続素子によって危険な機械的応力を回避できることが分かった。本発明によるはんだ材料は、有利にはスズ及びビスマス、インジウム、亜鉛、銅、銀又はそれらの混合物を含む。本発明によるはんだの組成におけるスズの割合は3重量パーセントから99.5重量パーセント、有利には10重量パーセントから95.5重量パーセント、特に有利には15重量パーセントから60重量パーセントである。本発明によるはんだの組成におけるビスマス、インジウム、亜鉛、銅、銀又はそれらの混合物の割合は0.5重量パーセントから97重量パーセント、有利には10重量パーセントから67重量パーセントである。但し、ビスマス、インジウム、亜鉛、銅又は銀の割合は0重量パーセントであることも考えられる。本発明によるはんだの組成はニッケル、ゲルマニウム、アルミニウム又は蛍光体を0重量パーセントから5重量パーセントの割合で含むことができる。本発明によるはんだの組成は非常に有利には、Bi40Sn57Ag3,Sn40Bi57Ag3,Bi59Sn40Ag1,Bi57Sn42Ag1,In97Ag3,Sn95.5Ag3.8Cu0.7,Bi67In33,Bi33In50Sn17,Sn77.2In20Ag2.8,Sn95Ag4Cu1,Sn99Cu1,Sn96.5Ag3.5又はそれらの混合物を含んでいる。
【0023】
本発明による接続素子は、有利には少なくとも50重量パーセントから89.5重量パーセントの鉄、10.5重量パーセントから20重量パーセントのクロム、0重量パーセントから1重量パーセントの炭素、0重量パーセントから5重量パーセントのニッケル、0重量パーセントから2重量パーセントのマンガン、0重量パーセントから2.5重量パーセントのモリブデン、及び/又は、0重量パーセントから1重量パーセントのチタンを含んでいる。接続素子は、付加的に、別の成分の添加物として、バナジウム、アルミニウム、ニオブ及び窒素を含むことができる。
【0024】
本発明による接続素子は、少なくとも66.5重量パーセントから89.5重量パーセントの鉄、10.5重量パーセントから20重量パーセントのクロム、0重量パーセントから1重量パーセントの炭素、0重量パーセントから5重量パーセントのニッケル、0重量パーセントから2重量パーセントのマンガン、0重量パーセントから2.5重量パーセントのモリブデン、0重量パーセントから2重量パーセントのニオブ、及び/又は、0重量パーセントから1重量パーセントのチタンを含むこともできる。接続素子は、付加的に、別の成分の添加物として、バナジウム、アルミニウム及び窒素を含むことができる。
【0025】
一つの別の有利な実施の形態においては、本発明による接続素子は、少なくとも65重量パーセントから89.5重量パーセントの鉄、10.5重量パーセントから20重量パーセントのクロム、0重量パーセントから0.5重量パーセントの炭素、0重量パーセントから2.5重量パーセントのニッケル、0重量パーセントから1重量パーセントのマンガン、0重量パーセントから1重量パーセントのモリブデン、及び/又は、0重量パーセントから1重量パーセントのチタンを含んでいる。接続素子は、付加的に、別の成分の添加物として、バナジウム、アルミニウム、ニオブ及び窒素を含むことができる。
【0026】
本発明による接続素子は、少なくとも73重量パーセントから89.5重量パーセントの鉄、10.5重量パーセントから20重量パーセントのクロム、0重量パーセントから0.5重量パーセントの炭素、0重量パーセントから2.5重量パーセントのニッケル、0重量パーセントから1重量パーセントのマンガン、0重量パーセントから1重量パーセントのモリブデン、0重量パーセントから1重量パーセントのニオブ、及び/又は、0重量パーセントから1重量パーセントのチタンを含むこともできる。接続素子は、付加的に、別の成分の添加物として、バナジウム、アルミニウム及び窒素を含むことができる。
【0027】
一つの別の特に有利な実施の形態においては、本発明による接続素子は、少なくとも75重量パーセントから84重量パーセントの鉄、16重量パーセントから18.5重量パーセントのクロム、0重量パーセントから0.1重量パーセントの炭素、0重量パーセントから1重量パーセントのマンガン、及び/又は、0重量パーセントから1重量パーセントのチタンを含んでいる。接続素子は、付加的に、別の成分の添加物として、バナジウム、アルミニウム、ニオブ及び窒素を含むことができる。
【0028】
本発明による接続素子は、少なくとも78.5重量パーセントから84重量パーセントの鉄、16重量パーセントから18.5重量パーセントのクロム、0重量パーセントから0.1重量パーセントの炭素、0重量パーセントから1重量パーセントのマンガン、0重量パーセントから1重量パーセントのニオブ、及び/又は、0重量パーセントから1重量パーセントのチタンを含むこともできる。接続素子は、付加的に、別の成分の添加物として、バナジウム、アルミニウム及び窒素を含むことができる。
【0029】
本発明による接続素子は有利には、ニッケル、スズ、銅及び/又は銀で被覆されている。本発明による接続素子には、特に有利には固着媒介層、有利にはニッケル及び/又は銅から成る固着媒介層が設けられており、また付加的にはんだ付け可能な層、有利には銀から成る層も設けられている。本発明による接続素子は極めて有利には、0.1μmから0.3μmのニッケル、及び/又は、3μmから20μmの銀で被覆されている。接続素子をニッケルめっき、スズめっき、銅めっき及び/又は銀めっきすることができる。ニッケル及び銀は接続素子の許容電流及び腐食耐性を改善し、またはんだ材料との湿潤性も改善する。
【0030】
本発明による接続素子は有利にはクロム含有鋼を含んでおり、これは10.5重量パーセント以上の割合のクロムを含み、また9×10
-6/℃から13×10
-6/℃の熱膨張率を有している。別の合金構成要素、例えばモリブデン、マンガン又はニオブによって腐食耐性が改善されるか、又は機械的な特性、例えば引っ張り耐性又は冷態成形性が変化する。
【0031】
チタンから成る従来技術による接続素子に対する、クロム含有鋼から成る接続素子の利点ははんだ付け適性が改善されている点にある。この改善されたはんだ付け適性は、22W/mKのチタンの熱伝導率よりも高い25W/mKから30W/mKの熱伝導率によって得られる。熱伝導率が比較的高いことによって、はんだプロセス中に接続素子が一様に加熱され、またそれによって点状の非常に熱い個所(「ホットスポット」)が形成されることが回避される。それらの個所は機械的な応力及びガラス板の将来的な損傷の起因となる。特に鉛フリーはんだ材料を使用する場合に、接続素子のガラス板における固着が改善される。鉛フリーはんだ材料は、鉛含有はんだ材料に比べて延性が低いので、機械的応力を余り良好には補償できない。更にクロム含有鋼は容易に溶接することができる。これによって、導電性の材料、例えば銅を介して、接続素子と搭載電気系統とを溶接によってより良好に接続させることができる。冷態成形性が改善されていることから、接続素子も良好に導電性材料に圧着させることができる。更には、クロム含有鋼はより良好な可用性を有している。
【0032】
クロム含有鋼から成る接続素子の更なる利点は、従来技術による多くの接続素子に比べて剛性が高い点にある。これによって、例えば接続素子に接続されるケーブルにおける引っ張りによる負荷が加えられて、接続素子が容易に変形することはなくなる。その種の変形によって、はんだ材料を介する接続素子と導電性の構造体との間の接続部に負荷が生じる。特に鉛フリーはんだでは、その種の負荷は回避されなければならない。鉛フリーはんだ材料は鉛含有はんだ材料に比べて延性が低いことから負荷を余り良好には補償できず、それによりガラス板が損傷する可能性がある。
【0033】
クロム含有鋼を補償プレートとして、例えば鋼、アルミニウム、チタン、銅から成る接続素子に溶接、圧着又は接着させることもできる。バイメタルとして、ガラスの膨張に相対的な、接続素子の好適な膨張特性を達成することができる。補償プレートは有利には帽子状である。
【0034】
電気的な接続素子は、はんだ材料に向けられている面において、被覆部、銅、亜鉛、スズ、銀、金又は合金若しくはそれらの層、有利には銀を含む層を含んでいる。これによって、はんだ材料が被覆部を超えて広がることが阻止されており、また漏れ幅が制限されている。
【0035】
電気的な接続素子を、少なくとも二つのコンタクト面を備えているブリッジの形態で構成することができるが、しかしながら一つのコンタクト面を備えている接続素子として構成することもできる。
【0036】
接続素子は平面図で見て、例えば有利には1mmから50mmの長さ及び幅、特に有利には3mmから30mmの長さ及び幅、また極めて有利には2mmから5mmの幅且つ12mmから24mmの長さを有している。
【0037】
電気的な接続素子の形状によって、接続素子と導電性の構造体との間の間隙にはんだ貯蔵部を形成することができる。はんだ貯蔵部及び接続素子におけるはんだの湿潤特性は、間隙からのはんだ材料の漏れを阻止する。はんだ貯蔵部は矩形であるか、丸み付けられているか、又は、多角形に形成されている。
【0038】
はんだの熱の分散、従ってはんだプロセスにおけるはんだ材料の分散を、接続素子の形状によって規定することができる。はんだ材料は最も高温の点に向かって流れる。例えば、ブリッジ部は一重又は二重の帽子の形状を有することができ、これによりはんだプロセス中に熱を有利には接続素子において分散させることができる。
【0039】
電気的な接続素子及び導電性の構造体の電気的な接続の際のエネルギの導入は、有利には、パンチ、熱極、ピストンはんだ、有利にはレーザはんだ付け、熱空はんだ付け、誘導はんだ付け、抵抗はんだ付けによって、及び/又は、超音波によって行われる。
【0040】
本発明の上記の課題は、更に、少なくとも一つの接続素子を備えているガラス板の製造方法によって解決され、この製造方法は、
a)はんだ材料を、所定の層厚、体積、形状及び配置構成を有する小型のプレートとして、接続素子のコンタクト面に被着させるステップと、
b)導電性の構造体をサブストレート上に被着させるステップと、
c)接続素子をはんだ材料によって導電性の構造体上に配置するステップと、
d)接続素子を導電性の構造体にはんだ付けするステップとを備えている。
【0041】
はんだ材料は、有利には所定の層厚、体積、形状及び接続素子上の配置構成を有する小型のプレートとして、有利には事前に接続素子に被着される。
【0042】
例えば接続素子を、例えば銅から成る金属薄板、撚り線又は網状体と溶接することができるか、又は圧着することができ、また、搭載電気系統に接続することができる。
【0043】
接続素子は有利には、建物、特に自動車、鉄道、飛行機又は船舶における加熱可能ガラス板、又はアンテナを備えているガラス板に利用される。接続素子はガラス板の導体構造をガラス板の外部に配置されている電気系統と接続するために使用される。電気系統は増幅器、制御ユニット又は電圧源である。
【0044】
本発明の一つの有利な実施の形態は、そのコンタクト面に角を有していない接続素子を備えているガラス板である。この場合、電気的な接続素子はコンタクト面を介して全面が導電性の構造体と接続されている。各コンタクト面は楕円の構造、有利には長円の構造、特に円形の構造を有することができる。択一的に、コンタクト面は角が丸められた凸状の多角形の形状、有利には矩形の形状を有することができる。丸められた角はr>0.5mm、有利にはr>1mmの曲率半径を有している。
【0045】
以下では、添付の図面及び複数の実施例に基づき、本発明を詳細に説明する。