特許第6305449号(P6305449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305449
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】電気的な接続素子を備えているガラス板
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/02 20060101AFI20180326BHJP
   H05K 3/40 20060101ALI20180326BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20180326BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20180326BHJP
   H01R 4/58 20060101ALI20180326BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20180326BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   H01R4/02 Z
   H05K3/40 C
   H05K3/34 501D
   H05K1/18 U
   H01R4/58 A
   H01Q1/32 A
   B60J1/00 B
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-20806(P2016-20806)
(22)【出願日】2016年2月5日
(62)【分割の表示】特願2014-509651(P2014-509651)の分割
【原出願日】2012年4月17日
(65)【公開番号】特開2016-85993(P2016-85993A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2016年2月15日
(31)【優先権主張番号】11165501.5
(32)【優先日】2011年5月10日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】11165506.4
(32)【優先日】2011年5月10日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512212885
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
【氏名又は名称原語表記】Saint−Gobain Glass France
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハラルト コレヴァ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ デーゲン
(72)【発明者】
【氏名】ベアンハート ロイル
(72)【発明者】
【氏名】ミーチャ ラタイチャク
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス シュラープ
(72)【発明者】
【氏名】ローター レスマイスター
【審査官】 前田 仁
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第03/076239(WO,A1)
【文献】 特開昭60−212987(JP,A)
【文献】 特開昭60−208076(JP,A)
【文献】 特表2010−527120(JP,A)
【文献】 特開2008−218399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/02
B60J 1/00
H01Q 1/32
H01R 4/58
H05K 1/18
H05K 3/34
H05K 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の構造体を備えている車両のためのガラス板アセンブリであって、少なくとも一つの電気的な接続素子を備えているガラス板アセンブリにおいて、
8×10−6/℃から9×10−6/℃の第1の熱膨張率を有するサブストレート(1)と、
前記サブストレート(1)の所定の領域上の導電性の構造体(2)と、
少なくともクロム含有鋼を含む接続素子(3)であって、0重量%超かつ1重量%以下のチタンを含む接続素子(3)と、
を有し、
前記接続素子(3)は、9×10−6/℃から13×10−6/℃の第2の熱膨張率を有し、
前記接続素子(3)は、少なくとも50重量%から89.5重量%の鉄、10.5重量%から20重量%のクロム、0重量%から1重量%の炭素、0重量%から5重量%のニッケル、0重量%から2重量%のマンガン、および/または、0重量%から2.5重量%のモリブデンを含み、
前記サブストレート(1)の前記第1の熱膨張率と前記接続素子(3)の前記第2の熱膨張率との差は、5×10−6/℃未満であり、
前記ガラス板アセンブリは、前記接続素子(3)を前記導電性の構造体(2)の部分領域に電気的に接続させるはんだ材料(4)の層、
を有し、
前記はんだ材料(4)は、前記接続素子(3)と前記導電性の構造体(2)との間の間隙から1mm未満の最大漏れ幅を有する、
ガラス板アセンブリ。
【請求項2】
前記サブストレート(1)は、ガラス、ポリマー、および/または、それらの混合物を含んでいる、
請求項1に記載のガラス板アセンブリ。
【請求項3】
前記サブストレート(1)は、平板ガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、または、ソーダ石灰ガラスを含んでいる、
請求項2に記載のガラス板アセンブリ。
【請求項4】
前記サブストレート(1)は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、または、ポリメチルメタクリレートを含んでいる、
請求項2に記載のガラス板アセンブリ。
【請求項5】
前記接続素子(3)は、少なくとも75重量%から84重量%の鉄、16重量%から18.5重量%のクロム、0重量%から0.1重量%の炭素、および/または、0重量%から1重量%のマンガンを含んでいる、
請求項1に記載のガラス板アセンブリ。
【請求項6】
前記導電性の構造体(2)は、銀を含んでいる、
請求項1から5のいずれかに記載のガラス板アセンブリ。
【請求項7】
前記はんだ(4)の層厚は、3.0×10−4m未満である、
請求項1から6のいずれかに記載のガラス板アセンブリ。
【請求項8】
前記はんだ材料(4)は、スズおよびビスマス、インジウム、亜鉛、銅、銀またはそれらの混合物を含んでいる、
請求項1から7のいずれかに記載のガラス板アセンブリ。
【請求項9】
前記はんだ材料(4)の組成におけるスズの割合は、3重量%から99.5重量%であり、ビスマス、インジウム、亜鉛、銅、銀またはそれらの混合物の割合は0.5重量%から97重量%である、
請求項8に記載のガラス板アセンブリ。
【請求項10】
前記接続素子(3)は、ニッケル、スズ、銅および/または銀で被覆されている、
請求項1から9のいずれかに記載のガラス板アセンブリ。
【請求項11】
前記接続素子(3)は、0.1μmから0.3μmのニッケル、および/または、3μmから20μmの銀で被覆されている、
請求項10に記載のガラス板アセンブリ。
【請求項12】
前記接続素子(3)は、少なくとも一つのコンタクト面(8)を介して全面が前記導電性の構造体(2)の部分領域(22)と接続されている、
請求項1から11のいずれかに記載のガラス板アセンブリ。
【請求項13】
前記コンタクト面(8)は、角を有していない、
請求項1から12のいずれかに記載のガラス板アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的な接続素子を備えているガラス板、並びに、その種のガラス板の経済的で環境に優しい製造方法に関する。
【0002】
更に本発明は、加熱導体又はアンテナ導体のような導電性の構造体が設けられている車両用の、電気的な接続素子を備えているガラス板に関する。導電性の構造体は通常の場合、はんだ付けされた電気的な接続素子を介して搭載電気系統に接続されている。使用される複数の材料の熱膨張率が異なることから、製造時又は動作時に機械的応力が発生し、その機械的応力がガラス板に負荷を掛け、それによりガラス板が割れる可能性がある。
【背景技術】
【0003】
鉛含有はんだは高い延性を有しているので、この延性により電気的な接続素子とガラス板との間に生じる機械的応力を可塑性の変形によって補償することができる。もっとも、EU内での使用済み車両に関する指令2000/53/ECにより、鉛含有はんだは、鉛フリーはんだに置き換えられなければならない。この指令はELV(End of life vehicles)指令と略される。その目的は、使い捨てされる電子製品が急増する中で、それらの製品から極めて問題となる構成要素を排除することである。該当する構成要素として、鉛、銀及びカドミウムが挙げられる。このことは特に、ガラス板における電気的な用途への鉛フリーはんだの適用及び相応の代替製品の導入に関する。
【0004】
EP 1 942 703 A2には車両のガラス板における電気的な接続素子が開示されており、そこではガラス板の熱膨張率と電気的な接続素子の熱膨張率との差が5×10-6/℃未満であり、また接続素子が主としてチタンを含有している。十分な機械的安定性及び加工性を実現するために、過剰量のはんだ材料を使用することが提案されている。はんだ材料の過剰分は接続素子と導電性の構造体との間の間隙から漏れ出る。このはんだ材料の過剰分は板ガラス内に高い機械的応力を惹起する。この機械的応力によって最終的にはガラス板が割れる。更に、チタンははんだ付けが難しい。それによって接続素子とガラス板との固着が良好なものでなくなる。更には、導電性の材料、例えば銅を介して、接続素子と搭載電気系統とを溶接によって接続しなければならない。チタンは溶接が難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、ガラス板における危険な機械的応力が回避される、電気的な接続素子を備えているガラス板、並びに、その種のガラス板の経済的で環境に優しい製造方法を提供することである。
【0006】
更に本発明の課題は、より良好な可用性、より良好な加工性、例えばはんだ付け能力、溶接能力及び冷態成形性を有している、従来技術に比べて改善された、接続素子のための材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記の課題は、独立請求項である請求項1に記載されている装置によって解決される。有利な実施の形態は縦続請求項に記載されている。
【0008】
少なくとも一つの電気的な接続素子を備えている本発明によるガラス板は、
−サブストレートと、
−サブストレートの所定の領域上の導電性の構造体と、
−少なくともクロム、有利には少なくともクロム含有鋼を含む接続素子と、
−接続素子を導電性の構造体の部分領域に電気的に接続させる、はんだ材料の層とを有している。
【0009】
サブストレートは有利には、ガラス、特に有利には平板ガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラスを含んでいる。一つの択一的な有利な実施の形態においては、サブストレートがポリマー、特に有利にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及び/又は、それらの混合物を含んでいる。
【0010】
サブストレートは第1の熱膨張率を有している。接続素子は第2の熱膨張率を有している。本発明の一つの有利な実施の形態においては、第1の熱膨張率と第2の熱膨張率との差は5×10-6/℃未満である。これによってより良好な固着が得られる。
【0011】
ガラス板には導電性の構造体が被着されている。電気的な接続素子は、はんだ材料を用いて、所定の部分領域において導電性の構造体と電気的に接続されている。はんだ材料は、1mm未満の漏れ幅でしか、接続素子と導電性の構造体との間の間隙から漏れ出ない。
【0012】
一つの有利な実施の形態においては、最大漏れ幅は有利には0.5mm未満、特にほぼ0である。このことは、ガラス板における機械的応力の低減、接続素子の固着及びはんだの節約に関して非常に有利である。
【0013】
最大漏れ幅は、接続素子の外縁と、はんだ材料の層厚が50μmを下回っている、はんだ材料の末端個所との間の距離として規定されている。最大漏れ幅は、はんだプロセスの終了後に、凝固したはんだ材料において測定される。
【0014】
所望の最大漏れ幅は、はんだ材料の体積と、接続素子と導電性の構造体との間の垂直方向の距離とを適切に選択することによって達成され、このことは簡単な実験によって求めることができる。接続素子と導電性の構造体との間の垂直方向の距離を、相応のプロセスツール、例えば、スペーサが組み込まれているツールによって設定することができる。
【0015】
最大漏れ幅が負の値を有していることも考えられる。即ち、最大漏れ幅は、電気的な接続素子及び導電性の構造体によって形成される間隙内にまで後退していることも考えられる。
【0016】
本発明によるガラス板の一つの有利な実施の形態においては、最大漏れ幅が、電気的な接続素子及び導電性の構造体によって形成される間隙において凹状のメニスカスを形成するように後退している。凹状のメニスカスは例えば、はんだプロセスの際にはんだが未だ液体である間に、スペーサと導電性の構造体との間の垂直方向の距離を広げることによって生じる。
【0017】
その利点は、ガラス板において、特に過剰量のはんだ材料が多く存在している危険な領域において、機械的応力が低減されることである。
【0018】
第1の熱膨張率は有利には8×10-6/℃から9×10-6/℃である。サブストレートは有利にはガラスであり、有利には0℃から300℃の温度範囲において8.3×10-6/℃から9×10-6/℃の熱膨張率を有しているガラスである。
【0019】
第2の熱膨張率は、0℃から300℃の温度範囲において、有利には9×10-6/℃から13×10-6/℃、特に有利には10×10-6/℃から11.5×10-6/℃である。
【0020】
本発明による導電性の構造体は有利には5μmから40μm、特に有利には5μmから20μm、非常に有利には8μmから15μm、またとりわけ10μmから12μmの層厚を有している。本発明による導電性の構造体は有利には銀、特に有利には銀粒子及びガラスフリットを含んでいる。
【0021】
はんだの本発明による層厚は3.0×10-4m未満である。
【0022】
はんだ材料は有利には鉛フリーである。つまりはんだ材料は鉛を含んでいない。このことは、電気的な接続素子を備えている本発明によるガラス板の環境適合性に関して特に有利である。鉛フリーのはんだ材料は一般的に鉛含有はんだ材料よりも低い延性を有しているので、接続素子とガラス板との間の機械的応力を余り良好には補償することができない。しかしながら、本発明による接続素子によって危険な機械的応力を回避できることが分かった。本発明によるはんだ材料は、有利にはスズ及びビスマス、インジウム、亜鉛、銅、銀又はそれらの混合物を含む。本発明によるはんだの組成におけるスズの割合は3重量パーセントから99.5重量パーセント、有利には10重量パーセントから95.5重量パーセント、特に有利には15重量パーセントから60重量パーセントである。本発明によるはんだの組成におけるビスマス、インジウム、亜鉛、銅、銀又はそれらの混合物の割合は0.5重量パーセントから97重量パーセント、有利には10重量パーセントから67重量パーセントである。但し、ビスマス、インジウム、亜鉛、銅又は銀の割合は0重量パーセントであることも考えられる。本発明によるはんだの組成はニッケル、ゲルマニウム、アルミニウム又は蛍光体を0重量パーセントから5重量パーセントの割合で含むことができる。本発明によるはんだの組成は非常に有利には、Bi40Sn57Ag3,Sn40Bi57Ag3,Bi59Sn40Ag1,Bi57Sn42Ag1,In97Ag3,Sn95.5Ag3.8Cu0.7,Bi67In33,Bi33In50Sn17,Sn77.2In20Ag2.8,Sn95Ag4Cu1,Sn99Cu1,Sn96.5Ag3.5又はそれらの混合物を含んでいる。
【0023】
本発明による接続素子は、有利には少なくとも50重量パーセントから89.5重量パーセントの鉄、10.5重量パーセントから20重量パーセントのクロム、0重量パーセントから1重量パーセントの炭素、0重量パーセントから5重量パーセントのニッケル、0重量パーセントから2重量パーセントのマンガン、0重量パーセントから2.5重量パーセントのモリブデン、及び/又は、0重量パーセントから1重量パーセントのチタンを含んでいる。接続素子は、付加的に、別の成分の添加物として、バナジウム、アルミニウム、ニオブ及び窒素を含むことができる。
【0024】
本発明による接続素子は、少なくとも66.5重量パーセントから89.5重量パーセントの鉄、10.5重量パーセントから20重量パーセントのクロム、0重量パーセントから1重量パーセントの炭素、0重量パーセントから5重量パーセントのニッケル、0重量パーセントから2重量パーセントのマンガン、0重量パーセントから2.5重量パーセントのモリブデン、0重量パーセントから2重量パーセントのニオブ、及び/又は、0重量パーセントから1重量パーセントのチタンを含むこともできる。接続素子は、付加的に、別の成分の添加物として、バナジウム、アルミニウム及び窒素を含むことができる。
【0025】
一つの別の有利な実施の形態においては、本発明による接続素子は、少なくとも65重量パーセントから89.5重量パーセントの鉄、10.5重量パーセントから20重量パーセントのクロム、0重量パーセントから0.5重量パーセントの炭素、0重量パーセントから2.5重量パーセントのニッケル、0重量パーセントから1重量パーセントのマンガン、0重量パーセントから1重量パーセントのモリブデン、及び/又は、0重量パーセントから1重量パーセントのチタンを含んでいる。接続素子は、付加的に、別の成分の添加物として、バナジウム、アルミニウム、ニオブ及び窒素を含むことができる。
【0026】
本発明による接続素子は、少なくとも73重量パーセントから89.5重量パーセントの鉄、10.5重量パーセントから20重量パーセントのクロム、0重量パーセントから0.5重量パーセントの炭素、0重量パーセントから2.5重量パーセントのニッケル、0重量パーセントから1重量パーセントのマンガン、0重量パーセントから1重量パーセントのモリブデン、0重量パーセントから1重量パーセントのニオブ、及び/又は、0重量パーセントから1重量パーセントのチタンを含むこともできる。接続素子は、付加的に、別の成分の添加物として、バナジウム、アルミニウム及び窒素を含むことができる。
【0027】
一つの別の特に有利な実施の形態においては、本発明による接続素子は、少なくとも75重量パーセントから84重量パーセントの鉄、16重量パーセントから18.5重量パーセントのクロム、0重量パーセントから0.1重量パーセントの炭素、0重量パーセントから1重量パーセントのマンガン、及び/又は、0重量パーセントから1重量パーセントのチタンを含んでいる。接続素子は、付加的に、別の成分の添加物として、バナジウム、アルミニウム、ニオブ及び窒素を含むことができる。
【0028】
本発明による接続素子は、少なくとも78.5重量パーセントから84重量パーセントの鉄、16重量パーセントから18.5重量パーセントのクロム、0重量パーセントから0.1重量パーセントの炭素、0重量パーセントから1重量パーセントのマンガン、0重量パーセントから1重量パーセントのニオブ、及び/又は、0重量パーセントから1重量パーセントのチタンを含むこともできる。接続素子は、付加的に、別の成分の添加物として、バナジウム、アルミニウム及び窒素を含むことができる。
【0029】
本発明による接続素子は有利には、ニッケル、スズ、銅及び/又は銀で被覆されている。本発明による接続素子には、特に有利には固着媒介層、有利にはニッケル及び/又は銅から成る固着媒介層が設けられており、また付加的にはんだ付け可能な層、有利には銀から成る層も設けられている。本発明による接続素子は極めて有利には、0.1μmから0.3μmのニッケル、及び/又は、3μmから20μmの銀で被覆されている。接続素子をニッケルめっき、スズめっき、銅めっき及び/又は銀めっきすることができる。ニッケル及び銀は接続素子の許容電流及び腐食耐性を改善し、またはんだ材料との湿潤性も改善する。
【0030】
本発明による接続素子は有利にはクロム含有鋼を含んでおり、これは10.5重量パーセント以上の割合のクロムを含み、また9×10-6/℃から13×10-6/℃の熱膨張率を有している。別の合金構成要素、例えばモリブデン、マンガン又はニオブによって腐食耐性が改善されるか、又は機械的な特性、例えば引っ張り耐性又は冷態成形性が変化する。
【0031】
チタンから成る従来技術による接続素子に対する、クロム含有鋼から成る接続素子の利点ははんだ付け適性が改善されている点にある。この改善されたはんだ付け適性は、22W/mKのチタンの熱伝導率よりも高い25W/mKから30W/mKの熱伝導率によって得られる。熱伝導率が比較的高いことによって、はんだプロセス中に接続素子が一様に加熱され、またそれによって点状の非常に熱い個所(「ホットスポット」)が形成されることが回避される。それらの個所は機械的な応力及びガラス板の将来的な損傷の起因となる。特に鉛フリーはんだ材料を使用する場合に、接続素子のガラス板における固着が改善される。鉛フリーはんだ材料は、鉛含有はんだ材料に比べて延性が低いので、機械的応力を余り良好には補償できない。更にクロム含有鋼は容易に溶接することができる。これによって、導電性の材料、例えば銅を介して、接続素子と搭載電気系統とを溶接によってより良好に接続させることができる。冷態成形性が改善されていることから、接続素子も良好に導電性材料に圧着させることができる。更には、クロム含有鋼はより良好な可用性を有している。
【0032】
クロム含有鋼から成る接続素子の更なる利点は、従来技術による多くの接続素子に比べて剛性が高い点にある。これによって、例えば接続素子に接続されるケーブルにおける引っ張りによる負荷が加えられて、接続素子が容易に変形することはなくなる。その種の変形によって、はんだ材料を介する接続素子と導電性の構造体との間の接続部に負荷が生じる。特に鉛フリーはんだでは、その種の負荷は回避されなければならない。鉛フリーはんだ材料は鉛含有はんだ材料に比べて延性が低いことから負荷を余り良好には補償できず、それによりガラス板が損傷する可能性がある。
【0033】
クロム含有鋼を補償プレートとして、例えば鋼、アルミニウム、チタン、銅から成る接続素子に溶接、圧着又は接着させることもできる。バイメタルとして、ガラスの膨張に相対的な、接続素子の好適な膨張特性を達成することができる。補償プレートは有利には帽子状である。
【0034】
電気的な接続素子は、はんだ材料に向けられている面において、被覆部、銅、亜鉛、スズ、銀、金又は合金若しくはそれらの層、有利には銀を含む層を含んでいる。これによって、はんだ材料が被覆部を超えて広がることが阻止されており、また漏れ幅が制限されている。
【0035】
電気的な接続素子を、少なくとも二つのコンタクト面を備えているブリッジの形態で構成することができるが、しかしながら一つのコンタクト面を備えている接続素子として構成することもできる。
【0036】
接続素子は平面図で見て、例えば有利には1mmから50mmの長さ及び幅、特に有利には3mmから30mmの長さ及び幅、また極めて有利には2mmから5mmの幅且つ12mmから24mmの長さを有している。
【0037】
電気的な接続素子の形状によって、接続素子と導電性の構造体との間の間隙にはんだ貯蔵部を形成することができる。はんだ貯蔵部及び接続素子におけるはんだの湿潤特性は、間隙からのはんだ材料の漏れを阻止する。はんだ貯蔵部は矩形であるか、丸み付けられているか、又は、多角形に形成されている。
【0038】
はんだの熱の分散、従ってはんだプロセスにおけるはんだ材料の分散を、接続素子の形状によって規定することができる。はんだ材料は最も高温の点に向かって流れる。例えば、ブリッジ部は一重又は二重の帽子の形状を有することができ、これによりはんだプロセス中に熱を有利には接続素子において分散させることができる。
【0039】
電気的な接続素子及び導電性の構造体の電気的な接続の際のエネルギの導入は、有利には、パンチ、熱極、ピストンはんだ、有利にはレーザはんだ付け、熱空はんだ付け、誘導はんだ付け、抵抗はんだ付けによって、及び/又は、超音波によって行われる。
【0040】
本発明の上記の課題は、更に、少なくとも一つの接続素子を備えているガラス板の製造方法によって解決され、この製造方法は、
a)はんだ材料を、所定の層厚、体積、形状及び配置構成を有する小型のプレートとして、接続素子のコンタクト面に被着させるステップと、
b)導電性の構造体をサブストレート上に被着させるステップと、
c)接続素子をはんだ材料によって導電性の構造体上に配置するステップと、
d)接続素子を導電性の構造体にはんだ付けするステップとを備えている。
【0041】
はんだ材料は、有利には所定の層厚、体積、形状及び接続素子上の配置構成を有する小型のプレートとして、有利には事前に接続素子に被着される。
【0042】
例えば接続素子を、例えば銅から成る金属薄板、撚り線又は網状体と溶接することができるか、又は圧着することができ、また、搭載電気系統に接続することができる。
【0043】
接続素子は有利には、建物、特に自動車、鉄道、飛行機又は船舶における加熱可能ガラス板、又はアンテナを備えているガラス板に利用される。接続素子はガラス板の導体構造をガラス板の外部に配置されている電気系統と接続するために使用される。電気系統は増幅器、制御ユニット又は電圧源である。
【0044】
本発明の一つの有利な実施の形態は、そのコンタクト面に角を有していない接続素子を備えているガラス板である。この場合、電気的な接続素子はコンタクト面を介して全面が導電性の構造体と接続されている。各コンタクト面は楕円の構造、有利には長円の構造、特に円形の構造を有することができる。択一的に、コンタクト面は角が丸められた凸状の多角形の形状、有利には矩形の形状を有することができる。丸められた角はr>0.5mm、有利にはr>1mmの曲率半径を有している。
【0045】
以下では、添付の図面及び複数の実施例に基づき、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明によるガラス板の第1の実施の形態の斜視図を示す。
図1a】本発明によるガラス板の択一的な実施の形態の斜視図を示す。
図2図1によるガラス板の線分A−A’に沿った断面図を示す。
図3】本発明による択一的なガラス板の断面図を示す。
図4】本発明による別の択一的なガラス板の断面図を示す。
図5】本発明による別の択一的なガラス板の断面図を示す。
図6】本発明によるガラス板の択一的な実施の形態の斜視図を示す。
図7図6によるガラス板の線分B−B’に沿った断面図を示す。
図8図1によるガラス板の線分C−C’に沿った断面図を示す。
図9図1aによるガラス板の線分D−D’に沿った断面図を示す。
図9a】本発明による択一的なガラス板の断面図を示す。
図9b】接続素子の択一的な実施の形態の平面図を示す。
図10】楕円状の接続素子を備えている本発明によるガラス板の択一的な実施の形態の平面図を示す。
図11図10によるガラス板の線分E−E’に沿った断面図を示す。
図12】本発明による択一的なガラス板の断面図を示す。
図13】本発明による別の択一的なガラス板の断面図を示す。
図14】接続素子の択一的な実施の形態の平面図を示す。
図15】接続素子の別の択一的な実施の形態の平面図を示す。
図16】接続素子の別の択一的な実施の形態の平面図を示す。
図17図16の接続素子の側面図を示す。
図18】丸天井型の接続素子を備えている、本発明による別の択一的なガラス板の断面図を示す。
図19】接続素子の別の択一的な実施の形態の斜視図を示す。
図20】本発明による方法の詳細なフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1図2及び図8には、本発明による加熱可能なガラス板1における電気的な接続素子3の領域の詳細がそれぞれ示されている。ガラス板1は3mmの厚さであり、熱的にプレストレスが掛けられる、ソーダ石灰ガラスから成る単一ガラス板安全ガラス(single-pane safety glass)である。ガラス板1は150cmの幅及び80cmの高さを有している。ガラス板1には、加熱導体構造体2としての導電性の構造体2がプリントされている。導電性の構造体2は銀粒子及びガラスフリットを含んでいる。ガラス板1の縁部領域において、導電性の構造体2は10mmの幅で広がっており、また電気的な接続素子3のためのコンタクト面を形成している。更にガラス板1の縁部領域にはカバーセリグラフ部が設けられている(図示せず)。電気的な接続素子3と導電性の構造体2との間のコンタクト面8の領域には、電気的な接続素子3と導電性の構造体2との間の持続的で電気的且つ機械的な接続を生じさせるはんだ材料4が設けられている。はんだ材料4は57重量パーセントのビスマス、40重量パーセントのスズ及び3重量パーセントの銀を含んでいる。はんだ材料4は所定の体積及び形状によって、電気的な接続素子3と導電性の構造体2との間に完全に配置されている。はんだ材料4は250μmの厚さを有している。電気的な接続素子3は、EN 10 088−2に準拠する材料番号1.4509の鋼(ThyssenKrupp Nirosta(R) 4509)から成り、この鋼は10.0×10-6/℃の熱膨張率を有している。電気的な接続素子3はブリッジ状に構成されており、且つ、4mmの幅及び24mmの長さを有している。
【0048】
EN 10 088−2に準拠する材料番号1.4509の鋼は良好に冷間成形することができ、また、ガス溶接を除くあらゆる方法によって良好に溶接することができる。鋼は消音装置及び排ガス浄化装置の構成に使用され、また、排ガスシステム内で発生する酷使状況に対する、950℃を超えるスケーリング耐性及び腐食耐性を有していることから、それらへの使用に非常に適している。しかしながら、接続素子3に対して別のクロム含有鋼も使用することができる。択一的な特に適した鋼は、例えばEN 10 088−2に準拠する材料番号1.4016の鋼である。
【0049】
図1a及び図9には、電気的な接続素子3の領域における、本発明による加熱可能なガラス板1の択一的な実施の形態がそれぞれ詳細に示されている。ブリッジ状の接続素子3の領域7はガラス板の表面に対して斜めに成形されている。これによって、毛細管現象の効果に基づき、導電性の構造体2と接続素子の領域7とによって画定される容積において、はんだ材料4の比較的厚い層の形成が達成される。これによって、接続素子の外縁における過剰量のはんだ材料が低減され、このことは有利にはガラス板における機械的応力の低減をもたらす。このことは特に鉛フリーはんだ材料を使用する場合には有利である。鉛フリーはんだ材料は、鉛含有はんだ材料に比べて延性が低いので、機械的応力を余り良好には補償できない。ブリッジ状の接続素子3の高さ適合領域7は必ずしも平坦なセクションとして形成する必要はなく、湾曲していても良い。サブストレート1の表面に対して、領域7のサブストレート側の面の各接平面が成す角度は有利には90°未満、特に有利には2°から75°の間、極めて有利には5°から50°の間である。
【0050】
図1及び図2に示した実施例に続いて、図3には本発明による接続素子3の択一的な実施の形態が示されている。電気的な接続素子3には、はんだ材料4に対向する面において、銀を含む被覆部5が設けられている。これによって、はんだ材料が被覆部5を超えて広がることが阻止され、また漏れ幅bが制限される。一つの別の実施の形態においては、接続素子3と銀を含む層5との間に、固着媒介層、例えばニッケル及び/又は銅から成る層を設けることができる。はんだ材料4の漏れ幅bは1mm以下である。はんだ材料4の配置に起因して、危険な機械的応力がガラス板1において観測されることはない。導電性の構造体2を介する、ガラス板1と電気的な接続素子3との間の接続は持続的に安定している。
【0051】
図1及び図2に示した実施例に続いて、図4には本発明による接続素子3の別の択一的な実施の形態が示されている。電気的な接続素子3は、はんだ材料4と対向する面において、はんだ材料4用のはんだ貯蔵部を形成する、深さ250μmの凹部を有している。間隙からのはんだ材料4の漏れを完全に阻止することができる。ガラス板1における熱応力は危険なものではなく、また導電性の構造体2を介する接続素子3とガラス板1との間の持続的で電気的且つ機械的な接続が提供される。
【0052】
図1及び図2に示した実施例に続いて、図5には本発明による接続素子3の別の代替的な実施の形態が示されている。電気的な接続素子3は縁部領域において上方に向かって折り曲げられている。縁部領域の上方に向かって折り曲げられている部分のガラス板1からの高さは最大で400μmである。これによって、はんだ材料4のための空間が形成される。所定量のはんだ材料4は、電気的な接続素子3と導電性の構造体2との間において凹状のメニスカスを形成している。間隙からのはんだ材料4の漏れを完全に阻止することができる。漏れ幅bはほぼ0であり、メニスカスが形成されることから大部分は0以下である。ガラス板1における熱応力は危険なものではなく、また導電性の構造体2を介する接続素子3とガラス板1との間の持続的で電気的且つ機械的な接続が提供される。
【0053】
図6及び図7には、ブリッジの形態の接続素子3を備えている本発明によるガラス板1の別の実施の形態がそれぞれ詳細に示されている。接続素子3は、8×10-6/℃の熱膨張率を有している、鉄を含有する合金を含んでいる。材料の厚さは2mmである。導電性の構造体2との接続素子3のコンタクト面8の領域には、EN 10 088−2に準拠する材料番号1.4509のクロム含有鋼(ThyssenKrupp Nirosta(R) 4509)を有している、帽子状の補償体6が設けられている。帽子状の補償体6の最大層厚は4mmである。補償体によって、接続素子3の熱膨張率をガラス板1及びはんだ材料4の要求に適合させることができる。帽子状の補償体6によって、はんだ結合部4の形成中の熱の流れが改善される。加熱は特にコンタクト面8の中心において行われる。はんだ材料4の漏れ幅bを更に縮小させることができる。漏れ幅bが1mm未満と短く、また熱膨張率が適合されていることから、ガラス板1における熱応力を更に低減することができる。ガラス板1における熱応力は危険なものではなく、また導電性の構造体2を介する接続素子3とガラス板1との間の持続的で電気的且つ機械的な接続が提供される。
【0054】
図1a及び図9に示した実施例に続いて、図9aには本発明による接続素子3の択一的な実施の形態が示されている。接続素子3の平坦な脚部領域のサブストレート1側とは反対側でコンタクト面8とは逆側の面にはそれぞれコンタクトバンプ12が配置されている。図示されている実施の形態において、コンタクトバンプ12は半球状に成形されており、且つ、2.5×10-4mの高さ及び5×10-4mの幅を有している。コンタクトバンプ12の中心点はほぼ、接続素子3の平坦な脚部領域のサブストレート1側とは反対側の面の幾何学的な中心に配置されている。コンタクトバンプ12はその凸状の表面に基づき、接続素子3と導電性の構造体2との間の有利には改善されたはんだ付けを実現する。はんだ付けのために、平坦に成形されているコンタクト面を有している電極を使用することができる。電極面はコンタクトバンプ12と接触され、電極面とコンタクトバンプ12との間のコンタクト領域ははんだ個所を形成する。はんだ個所の位置は有利には、コンタクトバンプ12の凸状の表面における、サブストレート1の表面までの垂直方向の距離が最大である点によって決定される。はんだ個所の位置は、接続素子3におけるはんだ電極の位置に依存しない。このことは、はんだプロセス中の再現可能な均一な熱分散に関して特に有利である。
【0055】
はんだプロセス中の熱分散は、コンタクトバンプ12の位置、大きさ、配置構成及び幾何学形状によって決定される。択一的な実施の形態においては、コンタクトバンプ12が例えば回転楕円体のセグメントとして、又は直方体として成形されており、その種の直方体のサブストレート側とは反対側の面は凸状に湾曲するように成形されている。コンタクトバンプ12は有利には0.1mmから2mmまでの高さ、特に有利には0.2mmから1mmまでの高さを有している。コンタクトバンプ12の長さ及び幅は有利には0.1mmから5mmの間、非常に有利には0.4mmから3mmの間である。
【0056】
各コンタクト面8にはスペーサ11が配置されている。例えば三つのスペーサ11を各コンタクト面8に配置することができ、断面図においてはそれらの内の一つのスペーサ11が見て取れる。スペーサ11は半球状に成形されており、且つ、2.5×10-4mの高さ及び5×10-4mの幅を有している。択一的な実施の形態においては、スペーサ11を例えば立方体、角錐、又は、回転楕円体のセグメントとして構成することもでき、また有利には0.5×10-4mから10×10-4mの幅と、0.5×10-4mから5×10-4mの高さ、特に有利には1×10-4mから3×10-4mの高さとを有している。スペーサ11によって、はんだ材料4の均一な層の形成が支援される。このことは接続素子3の固着に関して特に有利である。
【0057】
一つの有利な実施の形態においては、コンタクトバンプ12及びスペーサ11を接続素子3とワンピースで形成することができる。コンタクトバンプ12及びスペーサ11を例えば、出発状態においては平坦な表面を有している接続素子3の変形によって、例えば型押し又は深絞りによって、その表面上に形成することができる。接続素子3のコンタクトバンプ12側又はスペーサ11側とは反対側の表面には相応の凹部が形成されると考えられる。
【0058】
コンタクトバンプ12及びスペーサ11によって、はんだ材料4の均一で一様な厚さで均一に溶融された層が達成される。これによって、接続素子3とサブストレート1との間の機械的応力を低減することができる。このことは特に、鉛フリーはんだが使用される場合には非常に有利である。鉛フリーはんだはその延性が鉛含有はんだに比べて低いので、機械的応力を余り良好には補償できない。
【0059】
図1a及び図9に示した実施例に続いて、図9bには本発明による接続素子3の択一的な実施の形態が平面図で示されている。接続素子3はブリッジ状に構成されており、且つ、図9に応じた断面を有している。平坦な部分セクション間の境界部は平面図において実線によって示されている。接続素子3の平坦な脚部領域の下面にはコンタクト面8が配置されている。この平坦な脚部領域は8mmの幅を有しており、また、脚部領域間のブリッジ領域の幅の2倍の幅を有している。驚くべきことに、ブリッジ領域よりも幅広に構成されている脚部領域によってガラス板1における機械的応力が低減されることが分かった。脚部領域の幅は、有利にはブリッジ領域の幅の150パーセントから300パーセントである。
【0060】
図10及び図11には、電気的な接続素子3の領域における、本発明による加熱可能なガラス板1の別の択一的な実施の形態がそれぞれ詳細に示されている。50μmの層厚tを上回っていた、電気的な接続素子3と導電性の構造体2との間の間隙からのはんだ材料4の漏れは、b=0.5mmの最大漏れ幅でしか観測されなかった。接続素子3は、EN 10 088−2に準拠する材料番号1.4509の鋼(ThyssenKrupp Nirosta(R) 4509)から成るものである。電気的な接続素子3は楕円状の底面を有するように構成されている。長軸の長さは12mmであり、短軸の長さは5mmである。接続素子3の材料厚さは0.8mmである。接続素子3及び導電性の構造体2によって設定されるはんだ材料4の配置構成によって、ガラス板1において危険な機械的応力は観測されなかった。導電性の構造体2を介する、ガラス板1と電気的な接続素子3との間の接続は持続的に安定している。
【0061】
図10及び図11に示した実施例に続いて、図12には本発明による接続素子3の択一的な実施の形態が示されている。電気的な接続素子3には、はんだ材料4に対向する面において、銀を含む被覆部5が設けられている。これによって、はんだ材料が被覆部5を超えて広がることが阻止され、また漏れ幅bが制限される。はんだ材料4の漏れ幅bは1mm以下である。はんだ材料4の配置に起因して、危険な機械的応力がガラス板1において観測されることはない。導電性の構造体2を介する、ガラス板1と電気的な接続素子3との間の接続は持続的に安定している。
【0062】
図10及び図11に示した実施例に続いて、図13には、楕円状の底面を有する接続素子3を備えている、本発明によるガラス板1の別の択一的な実施の形態が示されている。接続素子3は、8×10-6/℃の熱膨張率を有している、鉄を含有する合金を含んでいる。材料の厚さは2mmである。導電性の構造体2との接続素子3のコンタクト面8の領域には、EN 10 088−2に準拠する材料番号1.4509のクロム含有鋼(ThyssenKrupp Nirosta(R) 4509)を有している、帽子状の補償体6が一つ設けられている。帽子状の補償体6の最大層厚は4mmである。補償体によって、接続素子3の熱膨張率をガラス板1及びはんだ材料4の要求に適合させることができる。帽子状の補償体6によって、はんだ結合部4の形成中の熱の流れが改善される。加熱は特にコンタクト面8の中心において行われる。はんだ材料4の漏れ幅bを更に縮小させることができる。漏れ幅bが1mm未満と短く、また熱膨張率が適合されていることから、ガラス板1における熱応力を更に低減することができる。ガラス板1における熱応力は危険なものではなく、また導電性の構造体2を介する接続素子3とガラス板1との間の持続的で電気的且つ機械的な接続が提供される。
【0063】
図14には本発明による接続素子3の択一的な実施の形態が平面図で示されている。接続素子3は矩形に構成されており、且つ、5mmの幅及び14mmの長さを有している。矩形の各角は、例えば1mmの曲率半径rを有する円弧が形成されるように丸められている。更に、接続ケーブル18が溶接領域17を介して接続素子3に溶接されている。溶接領域17は3mmの幅及び6mmの長さを有している。接続ケーブル18は、スズめっきされた薄い銅線から成る織物ケーブルである。しかしながら、撚り線ケーブル又はワイヤも接続ケーブル18として使用することができる。択一的に、金属性の心線、コネクタ又は圧着接続部も接続素子3に導電性に接続することができる。特に、接続素子3をワンピース又はマルチピースのクランプ部又は圧着素子として構成することもできる。
【0064】
図15には本発明による接続素子3の別の択一的な実施の形態が平面図で示されている。接続素子は矩形に構成されており、但し、この矩形の二つの短辺側は半円状に構成されている。接続素子は5mmの幅及び14mmの長さを有している。溶接領域17は3mmの幅及び6mmの長さを有している。
【0065】
図16及び図17には、接続ラグ19を備えている本発明による接続素子3の別の択一的な実施の形態が示されている。接続素子3のコンタクト面8は円形に構成されている。円の半径は4mmである。接続ラグ19は溶接領域17を介して接続ケーブル18と接続されている。択一的に、接続ラグ19をタブ型コネクタとして、また、クランプ部又は圧着接続部として構成することもできる。接続ラグ19はこの実施の形態において二つのノッチ20,20’を有している。それらのノッチ20,20’により接続ラグ19の材料が節約される。これによって弾性が生じ、従って、接続ケーブル18を介して更にはんだコンタクトへと作用する力が緩和される。
【0066】
図18には本発明による接続素子3の別の択一的な実施の形態が断面図で示されている。接続素子3は中央に湾曲部23を有している。この湾曲部23の領域においては、はんだ材料4が厚くされている。
【0067】
図19には本発明による接続素子3の択一的な実施の形態が斜視図で示されている。接続素子3はブリッジ状に構成されており、且つ、例えば7mmの長さ及び5mmの幅を有している第1及び第2の平坦な脚部領域を有しており、それらの平坦な脚部領域の下面にはそれぞれコンタクト面8が配置されている。二つの平坦な脚部領域はブリッジ領域を介して相互に接続されており、このブリッジ領域は例えば12mmの長さ及び10mmの幅を有している平坦なセクションを含んでいる。ブリッジ領域の平坦なセクションは製造に起因する凹部10を有している。凹部10はブリッジ領域の平坦なセクションのエッジまで延在しており、そのエッジには高さ適合移行領域7を介して第1の脚部領域に繋がっている。凹部10の形状及び大きさは、第1の脚部領域及び高さ適合移行領域7から成る接続素子3のセクションに対応する。コンタクト面8は矩形の形状であるが、ブリッジ領域10とは反対側の二つの角はそれぞれ面取りされている。この面取りによって、コンタクト面8の周囲側縁に沿った過度に小さい角度、特に90°の角度が回避される。これによってガラス板における機械的応力を低減できることが分かった。
【0068】
接続素子3はブリッジ領域上に配置されているプラグコネクタ9を含んでいる。プラグコネクタ9は、ブリッジ領域の平坦なセクションの、第1の脚部領域側の側縁において、ブリッジ領域の平坦なセクションと接続されている。プラグコネクタ9は規格に応じたタブ型コネクタとして構成されており、図示していない接続ケーブル、例えば搭載電気系統への接続ケーブルの接続部を挿入することができる。
【0069】
本発明による構成の特別な利点は、接続素子3の製造が簡単であるのと同時に、電気的な接触接続部との快適なインタフェース(プラグコネクタ9)が提供されることである。脚部領域、ブリッジ領域及び接続プラグ9はワンピースで構成されている。接続素子3は平坦な出発状態で提供され、その出発状態では第1の脚部領域として、また高さ適合移行領域7として予定されているセクションが凹部10内に配置されている。プラグコネクタ9は出発状態において、ブリッジ領域の平坦なセクションと同じ平面内に配置されている。第1の脚部領域及び高さ適合移行領域7として予定されている領域をブリッジ領域の平坦なセクションから、例えば打抜き、レーザ加工又はウォータージェット加工によって分離させることができるが、接続部は、高さ適合移行領域7とブリッジ領域の平坦なセクションとの間の接続エッジを介して依然として存在している。プラグコネクタ9は、このプラグコネクタ9とブリッジ領域の平坦なセクションとの間の接続線を軸にして図示されている位置へと折り曲げられ、出発状態においては上を向いていた面がブリッジ領域と対向する。第1の脚部領域及び高さ適合移行領域7は、この高さ適合移行領域7とブリッジ領域の平坦なセクションとの間の接続線を軸にして図示されている位置へと曲げられ、続いて、出発状態において上を向いていた面が第1の脚部領域及び高さ適合移行領域7の下面を形成する。第1の脚部領域を曲げることによって凹部10が形成される。第2の脚部領域及び対応する高さ適合移行領域は同様に平坦な出発状態から図示されている位置へと曲げられる。
【0070】
図20には、電気的な接続素子3を備えているガラス板1の本発明による製造方法が詳細に示されている。この図20には、電気的な接続素子3を備えているガラス板の本発明による製造方法に関する一実施例が示されている。第1のステップとして、はんだ材料4を形状及び体積に応じて小分けすることが必要になる。小分けされたはんだ材料4が電気的な接続素子3のコンタクト面8上に配置される。電気的な接続素子3がはんだ材料4を用いて導電性の構造体2の上に配置される。エネルギが注入され、電気的な接続素子3が導電性の構造体2と持続的に接続され、またそれによってガラス板1と持続的に接続される。
【0071】
実施例
ガラス板1(厚さ3mm、幅150cm及び高さ80cm)、加熱導体構造体の形態の導電性の構造体2、図1による電気的な接続素子3、接続素子3のコンタクト面8上の銀層5及びはんだ材料4を備える試験体が作成された。接続素子3の材料厚さは0.8mmであった。接続素子3のコンタクト面8は4mmの幅及び4mmの長さを有していた。はんだ材料4を、所定の層厚、体積及び形状を有している小型のプレートとして、接続素子3のコンタクト面8上に被着させた。そのようにして被着されたはんだ材料4を用いて、接続素子3を導電性の構造体2に取り付けた。接続素子3を200℃の温度及び2秒の処理時間で導電性の構造体2にはんだ付けした。50μmの層厚tを上回っていた、電気的な接続素子3と導電性の構造体2との間の間隙からのはんだ材料4の漏れは、b=0.5mmの最大漏れ幅でしか観測されなかった。電気的な接続素子3、この接続素子3のコンタクト面8上の銀層5及びはんだ材料4の寸法及び組成は表1から見て取れる。接続素子3及び導電性の構造体2によって設定されるはんだ材料4の配置構成によって、ガラス板1において危険な機械的応力は観測されなかった。ガラス板1と電気的な接続素子3との接続部は導電性の構造体2を介して持続的に安定していた。
【0072】
図1aによる接続素子3は、毛細管現象の効果に基づき、サブストレート1との間のより良好な固着を示した。はんだ材料4の配置に起因して、ガラス板1において危険な機械的応力は観測されなかった。ガラス板1と電気的な接続素子3との接続部は導電性の構造体2を介して持続的に安定していた。
【0073】
全ての試験体において、+80℃から−30℃までの温度差では、ガラスサブストレート1は破損せず、またダメージも受けなかったことが観測された。はんだ付けの直後において、接続素子3がはんだ付けされているそれらのガラス板1は急激な温度降下に対して安定していたことが証明された。
【表1】
【0074】
比較例
比較例は実施例と同様に実施された。相異点として、接続素子3に対して別の材料を使用した。接続素子3を100重量パーセントのチタンから構成した。従って、接続素子3は、比較的低い熱伝導率、比較的低い熱膨張率、及び、接続素子3の熱膨張率とサブストレート1の熱膨張率との比較的小さい差を有していた。電気的な接続素子3、この接続素子3のコンタクト面8上の金属層及びはんだ材料4の寸法及び成分は表2から見て取れる。接続素子3を、従来技術の方法に応じて、はんだ材料4を用いて導電性の構造体2にはんだ付けした。50μmの層厚tを上回っていた、電気的な接続素子3と導電性の構造体2との間の間隙からのはんだ材料4の漏れ部では、b=2mmから3mmの平均漏れ幅が得られた。接続素子のための材料の熱伝導率が比較的低いことから、この比較例では、はんだプロセス中の接続素子の均一な加熱は弱かった。
【0075】
+80℃から−30℃へと急激に温度を変化させると、はんだ付け直後にガラスサブストレート1は大きなダメージを受けたことが観測された。
【表2】
【0076】
上記の表1及び表2の差異、本発明による接続素子3の利点は表3から見て取れる。
【表3】
【0077】
ガラスサブストレート1及び本発明による電気的な接続素子3を備えている本発明によるガラス板は急激な温度差に対してより良好に安定していることが分かった。この結果は当業者にとって予期せぬほど驚くべきものであった。
【0078】
以下、親出願(特願2014−509651号)の出願当初の特許請求の範囲である。
[請求項1]
少なくとも一つの電気的な接続素子を備えているガラス板において、
サブストレート(1)と、
前記サブストレート(1)の所定の領域上の導電性の構造体(2)と、
少なくともクロム含有鋼を含む接続素子(3)と、
前記接続素子(3)を前記導電性の構造体(2)の部分領域に電気的に接続させる、はんだ材料(4)の層とを有している、
ことを特徴とするガラス板。
[請求項2]
前記サブストレート(1)はガラス、有利には平板ガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、若しくは、ポリマー、有利にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、及び/又は、それらの混合物を含んでいる、請求項1に記載のガラス板。
[請求項3]
前記サブストレート(1)の熱膨張率と前記接続素子(3)の熱膨張率の差は5×10-6/℃未満である、請求項1又は2に記載のガラス板。
[請求項4]
前記接続素子(3)は、少なくとも50重量パーセントから89.5重量パーセントの鉄、10.5重量パーセントから20重量パーセントのクロム、0重量パーセントから1重量パーセントの炭素、0重量パーセントから5重量パーセントのニッケル、0重量パーセントから2重量パーセントのマンガン、0重量パーセントから2.5重量パーセントのモリブデン、又は、0重量パーセントから1重量パーセントのチタンを含んでいる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガラス板。
[請求項5]
前記接続素子(3)は、少なくとも75重量パーセントから84重量パーセントの鉄、16重量パーセントから18.5重量パーセントのクロム、0重量パーセントから0.1重量パーセントの炭素、0重量パーセントから1重量パーセントのマンガン、又は、0重量パーセントから1重量パーセントのチタンを含んでいる、請求項4に記載のガラス板。
[請求項6]
前記導電性の構造体(2)は銀を含んでいる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のガラス板。
[請求項7]
前記はんだ(4)の層厚は3.0×10-4m未満である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のガラス板。
[請求項8]
前記はんだ材料(4)はスズ及びビスマス、インジウム、亜鉛、銅、銀又はそれらの混合物を含んでいる、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のガラス板。
[請求項9]
前記はんだ材料(4)の組成におけるスズの割合は3重量パーセントから99.5重量パーセントであり、ビスマス、インジウム、亜鉛、銅、銀又はそれらの混合物の割合は0.5重量パーセントから97重量パーセントである、請求項8に記載のガラス板。
[請求項10]
前記接続素子(3)はニッケル、スズ、銅及び/又は銀で被覆されている、請求項1乃至9のいずれか一項に記載のガラス板。
[請求項11]
前記接続素子(3)は0.1μmから0.3μmのニッケル、及び/又は、3μmから20μmの銀で被覆されている、請求項10に記載のガラス板。
[請求項12]
前記接続素子(3)は少なくとも一つのコンタクト面(8)を介して全面が前記導電性の構造体(2)の部分領域(22)と接続されている、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のガラス板。
[請求項13]
前記コンタクト面(8)は角を有していない、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のガラス板。
[請求項14]
少なくとも一つの電気的な接続素子(3)を備えているガラス板の製造方法において、
a)はんだ材料(4)を、所定の層厚、体積、形状及び配置構成を有する小型のプレートとして、前記接続素子(3)の少なくとも一つのコンタクト面(8)に被着させるステップと、
b)導電性の構造体(2)をサブストレート(1)上に被着させるステップと、
c)前記接続素子(3)を前記はんだ材料(4)によって前記導電性の構造体(2)上に配置するステップと、
d)前記接続素子(3)を前記導電性の構造体(2)にはんだ付けするステップと、
を備えている、ことを特徴とする製造方法。
[請求項15]
導電性の構造体、有利には加熱導体及び/又はアンテナ導体を備えている車両のための、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の電気的な接続素子を備えているガラス板の使用。
【符号の説明】
【0079】
1 ガラス板、 2 導電性の構造体、 3 電気的な接続素子、 4 はんだ材料、 5 湿潤層、 6 補償体、 7 電気的な接続素子3の領域、 8 導電性の構造体2との接続素子3のコンタクト面、 9 プラグコネクタ、 10 凹部、 11 スペーサ、 12 コンタクトバンプ、 17 溶接領域、 18 接続ケーブル、 19 接続ラグ、 20,20’ ノッチ、 22 導電性の構造体2の部分領域、 23 湾曲部、 b はんだ材料の最大漏れ幅、 t はんだ材料の境界部の厚さ、 r 曲率半径、 A−A’,B−B’,C−C’,D−D’,E−E’ 線分
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