(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子機器の筐体の公差、筐体に対して基板をネジ止めする台座の公差、基板に発生している反り等は、いずれもそれら単独で、またそれらが積み重なることで、相互に接続されるコネクタにとって正しい姿勢での挿入嵌合を妨げる外乱要因となる。そうした外乱要因は、コネクタの挿入嵌合時に、コネクタが実装されている基板どうしの傾きとして現れる。
【0005】
図13はその一例の模式図であり、相手方コネクタMを実装した基板P2に対して、フローティングコネクタ1を実装した基板P1が、幅方向Xと直交する前後方向Yを回転軸として回転して傾いている状態を示している。フローティングコネクタ1には、こうした基板P1、P2どうしの傾きがあることを前提としつつ、相手方コネクタMとの確実な嵌合接続が要求される。
【0006】
そのためフローティングコネクタ1は、基板側ハウジング2に対して嵌合側ハウジング3が変位することで基板P1の傾きを吸収するフローティング機能を備えており、嵌合側ハウジング3の変位は端子の可動ばね4,5の弾性変形によって行われる。したがって、
図13で示すように嵌合状態で基板P1が傾いていると、嵌合初期の状態で図中右側の可動ばね5が大きく上方に伸ばされて、常に大きな応力が作用する状態となってしまう。よって既存のフローティングコネクタ1では可動ばね4,5の塑性変形が生じたり、疲労耐久性が低下しやすいといった問題を生じることがある。
【0007】
また、従来のフローティングコネクタ1では、嵌合側ハウジング3の幅方向Xの両側に基板側ハウジング2に対する抜止め突起3aが突設されており、基板側ハウジング2には抜止め突起3aが係止する当接受け部2aが形成されている。そして、抜止め突起3aと当接受け部2aとの間には、嵌合側ハウジング3の可動間隙6が形成されている。このため従来のフローティングコネクタ1は、嵌合側ハウジング3と基板側ハウジング2が幅方向Xで大きいという問題がある。
【0008】
以上のような従来技術を背景としてなされた本発明は、基板どうしを接続するコネクタについて、相手方コネクタとの嵌合前から基板どうしが傾いていても、嵌合状態における端子の可動ばねに作用する負荷を抑制できるようにすることを目的とする。また本発明の他の目的は、前記コネクタを幅方向で小型化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明は以下のように構成される。
【0010】
第1の本発明は、基板に実装する基板側ハウジングと接続対象物と嵌合する嵌合側ハウジングとを有するハウジングと、基板側ハウジングに対して嵌合側ハウジングを変位可能に支持する可動ばねを有する複数の端子とを備えるコネクタについて、嵌合側ハウジングが、別体とした複数の分割ハウジングで構成されており、基板側ハウジングは、分割ハウジングを内部に配置する収容室と、収容室の内部で変位する分割ハウジングが当接する当接受け部とを有しており、端子は分割ハウジングごとに配置されており、基板側ハウジングと分割ハウジングの内部で接続対象物と導通接触する接点部を有しており、可動ばねは基板側ハウジングに対して分割ハウジングごとに変位可能に支持することを特徴とする。
【0011】
第2の本発明は、第1の基板に実装する第1のコネクタと、第2の基板に実装する第2のコネクタとを備えるコネクタについて、第1のコネクタは、基板に実装する基板側ハウジングと、別体とした複数の分割ハウジングで構成される嵌合側ハウジングとを有する第1のハウジングと、基板側ハウジングと嵌合側ハウジングの各分割ハウジングとを変位可能に支持するとともに、基板側ハウジングと嵌合側ハウジングの内部で接続対象物と導通接触する接点部を有する複数の第1の端子とを備えており、基板側ハウジングは、分割ハウジングを内部に配置する収容室と、収容室の内部で変位する分割ハウジングが当接する当接受け部とを有しており、第2のコネクタは、分割ハウジングごとに対応する複数の嵌合接続部を有する単一の成形体でなる第2のハウジングを備えることを特徴とする。
【0012】
これらの本発明では、嵌合側ハウジングが、コネクタの幅方向Xで別体とした複数の分割ハウジングで構成されている。したがって従来技術で示すような長尺なハウジングではないため、相手方コネクタとの嵌合前から基板どうしが傾いていても、嵌合状態での分割ハウジングごとの端子の可動ばねの変位量は小さく抑えることができ、可動ばねに常時作用する応力を抑制することができる。
【0013】
また、基板側ハウジングは、分割ハウジングを内部に配置する収容室と、収容室の内部で変位する分割ハウジングが当接する当接受け部とを有している。このため基板側ハウジングの収容室の大きさを空間的制約として、基板どうしが傾いた状態で相手方コネクタと嵌合しても分割ハウジングごとの可動ばねの変位量を小さく抑えることができる。
【0014】
本発明では以上のように可動ばねの変位量を小さく抑えることができるため、基板どうしが傾いた状態で相手方コネクタと嵌合接続していても、可動ばねに常時作用する応力を小さくできる。よって過剰な負荷の作用による可動ばねの塑性変形の発生や疲労耐久性の低下を抑制できる。
【0015】
さらに端子は分割ハウジングごとに配置されており、基板側ハウジングと分割ハウジングの内部で接続対象物と導通接触する接点部を有しており、可動ばねは基板側ハウジングに対して分割ハウジングごとに変位可能に支持する。例えば端子の接点部が分割ハウジングにあるものの基板側ハウジングの外部に位置している比較例のコネクタでは、嵌合前から基板どうしが傾いている場合、嵌合当初の状態では分割ハウジングが傾くことで、接点部の接触位置が、基板どうしが傾いていない場合の接点部の正規の接触位置に対して大きく離れた位置に移動することになり、この状態ではコネクタの幅方向X及び前後方向Yでの可動間隙に大きく入り込むほどに分割ハウジングが傾いてしまうことになる。
しかしながら本発明では、端子の接点部が分割ハウジングと基板側ハウジングの内部に位置しており、先の比較例よりも分割ハウジングの回転中心と接点部の位置が近い。このため、嵌合前から基板どうしが傾いていても、接点部の接触位置は、基板どうしが傾いていない場合の接点部の正規の接触位置からほぼ移動しないので、嵌合当初の状態で前記可動間隙を使い切ることがない。したがって接点部が基板側ハウジングと分割ハウジングの内部にある本発明であれば、基板の傾きを許容しつつ可動間隙を利用したフローティング機能も維持することができる。
【0016】
第2の本発明の第2のコネクタは、分割ハウジングごとに対応する複数の嵌合接続部を有する単一の成形体でなる第2のハウジングを備える。したがって嵌合接続部ごとの挿入嵌合位置や姿勢に応じて分割ハウジングが可動し嵌合接続させることができる。
【0017】
基板側ハウジングは、基板と対向しており分割ハウジングが基板に当接可能とする開口部を有する。
分割ハウジングが開口部を通じて基板に当接することで、分割ハウジングが基板へ近接する方向で可動ばねが過剰に伸長するのを防ぐことができる。
【0018】
基板側ハウジングの収容室は、分割ハウジングの全体を収容する大きさとなっている。また、嵌合側ハウジングは、基板側ハウジングの内部に配置されている。
分割ハウジングの全体が基板側ハウジングの収容室に収まるので、基板どうしが分割ハウジングごとの基板側ハウジングと分割ハウジングが外方に突出せずコネクタ全体を小型化できる。
【0019】
基板側ハウジングが、各分割ハウジング又は基板側ハウジングの少なくとも何れかの回転による傾きを許容する可動間隙を有する。
可動間隙があるため分割ハウジングの可動量を確保することができる。
【0020】
当接受け部は、接続対象物を挿入する基板側ハウジングの嵌合口に設けた内向きの突出部である。
当接受け部が基板側ハウジングに設けた内向きの突出部であることから、従来技術のように基板側ハウジングに嵌合側ハウジングの抜止め突起と係合する当接受け部を外方に突出させるように設ける必要がないため、コネクタ全体を幅方向で小型化することができる。
【0021】
接続対象物が、基板と導通接続する他の基板に実装する他のコネクタである。
これによれば上記の作用効果を有する基板間接続コネクタとして実現できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のコネクタによれば、相手方コネクタとの嵌合前から基板どうしが傾いていても、嵌合状態での各分割ハウジングの可動ばねの変位量と作用する応力を小さくして、塑性変形の発生や疲労耐久性の低下を抑制する。よって耐振動性の向上、コネクタ全体の小型化を達成するフローティング機能を有するコネクタを実現できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のコネクタの一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本明細書、特許請求の範囲、図面では、コネクタ10の長手方向を幅方向Xとし、図中右側を「右」、左側を「左」とする。同様にコネクタ10の短手方向を前後方向Yとし、図中手前側を「前」、後側を「後」とする。コネクタ10の高さ方向を上下方向Zとし、図中平面側を「上」とし、底面側を「下」として説明する。しかしこうした左右、前後、上下の特定は本発明のコネクタの実装方向、使用状態を限定するものではない。
【0025】
コネクタ10は、第1の基板P1に実装する「第1のコネクタ」となるプラグコネクタ11(
図1〜4)と、第2の基板P2に実装する「第2のコネクタ」となるソケットコネクタ12(
図5,6)とで構成される。このうちプラグコネクタ11には可動機構を備える。
【0027】
プラグコネクタ11は、基板側ハウジング21と、「分割ハウジング」としての嵌合側ハウジング22A、22Bと、複数の端子23A、23Bとを備えている。基板側ハウジング21は第1の基板P1に実装される「固定ハウジング」として構成される。嵌合側ハウジング22A、22Bは端子23A、23Bによって基板側ハウジング21に対して変位可能に支持される「可動ハウジング」として構成される。
【0028】
左右の2つの嵌合側ハウジング22Aは信号接続用の端子23Aを保持するハウジングであり、中央の嵌合側ハウジング22Bは電源接続用の端子23Bを保持するハウジングである。信号接続用の嵌合側ハウジング22Aは、多数の信号接続に対応して多数の端子23Aを配列保持する必要があるため幅方向Xで長く形成されている。本実施形態では信号接続と電源接続を行うコネクタ構成であるが、これは本発明の一実施形態であって他のコネクタ構成としても実施できる。
【0029】
基板側ハウジング21は、電気絶縁性の合成樹脂の成形体であり、角筒状の周壁24を有する。周壁24は、幅方向Xに沿う一対の長手側壁25と、前後方向Yに沿う一対の短手側壁26とを有し、多数の端子23A、23Bを配列する多極コネクタ用のハウジングである。周壁24の上部にはソケットコネクタ12を挿入する嵌合口24aが形成されている。周壁24の上面24fはフラットな平坦面として形成されている。周壁24の下部は
図2で示すように第1の基板P1に向けて開放された開口部24bが形成されている。
【0030】
周壁24の内部には3つの収容室24c1、24c2が形成されている(
図3)。左右の収容室24c1は幅の長い信号接続用の嵌合側ハウジング22Aを収容し、中央の収容室24c2は幅の短い電源接続用の嵌合側ハウジング22Bを収容する。周壁24の内部には収容室24c1、24c2どうしを仕切る隔壁がなく、一つの収容空間を形成している。したがって隔壁を設けて嵌合側ハウジング22A、22Bを収容するようなコネクタ構造と比べて、幅方向Xでプラグコネクタ11を小型化できる構造となっている。
【0031】
収容室24c1、24c2の上部、即ち嵌合口24aには、周壁24の上縁から内方に突出する「突出部」としての当接受け部24d1、24d2がそれぞれ形成されている。この当接受け部24d1、24d2は、プラグコネクタ11からソケットコネクタ12を取り外す抜去方向に変位する嵌合側ハウジング22A、22Bが突き当たるストッパーとして機能する。
【0032】
各収容室24c1、24c2には、
図3で示すように、各端子23A、23Bの一端側を保持する端子保持溝24e1、24e2が形成されている。また、左右の収容室24c1と中央の収容室24c2との間には、後述するソケットコネクタ12の柱状突起37を挿入する係合溝24gが形成されている。
【0033】
2つの信号接続用の嵌合側ハウジング22Aは、
図3で示すように周壁27Aと、中央壁28Aと、底壁29A(
図10)とで構成されている。
【0034】
周壁27Aの上端にはソケットコネクタ12の嵌合口27A1と、嵌合口27A1の外方にフランジ状に突出する当接部27A2が形成されている。当接部27A2を除く上端には内方に傾斜する嵌合ガイド面27A3が形成されており、ソケットコネクタ12の挿入嵌合をガイドする。
【0035】
中央壁28Aの前後方向Yにおける各面には、多数の端子保持溝28A1がそれぞれ形成され、信号接続用の端子23Aの他端側が保持される。
【0036】
底壁29Aには、H字形状で下方に向けて突出する薄板状の当接脚部29A1が形成されている。第1の基板P1に向けて変位する嵌合側ハウジング22Aは、当接脚部29A1が第1の基板P1と突き当たることで変位を停止する。
【0037】
電源接続用の嵌合側ハウジング22Bも、長さが全体的に小さく形成されている点を除いて嵌合側ハウジング22Aと略同様の構成である。具体的には周壁27Bと中央壁28Bと底壁29B(
図10)とで形成され、嵌合口27B1、当接部27B2、嵌合ガイド面27B3、端子保持溝28B1、当接脚部29B1が形成されている。
【0038】
信号接続用の端子23Aは、
図4で示すように、嵌合側ハウジング22Aの端子保持溝28A1に保持される平板状の接触部23A1が形成されており、その下端側には固定突起23A2が形成されている。固定突起23A2は嵌合側ハウジング22Aの底壁29Aを貫通する圧入孔29A2(
図9、12)に圧入固定される。端子23Aの他端側には、基板接続部23A3と、基板側ハウジング21の端子保持溝24e1で圧入保持する固定突起23A4が形成されている。端子23Aの固定突起23A2と固定突起23A4との間の部分は可動ばね23A5となっており、これにより嵌合側ハウジング22Aが基板側ハウジング21に対して浮動状態で弾性支持されており三次元方向に変位可能となっている。可動ばね23A5には横片部23A6と縦片部23A7が形成されており、これらは嵌合側ハウジング22Aの外底面と外側面に沿って迂回するようにしてフローティング機能を有するプラグコネクタ11の小型化に寄与している。また、可動ばね23A5には斜片部23A8が形成されており、これによって斜め方向での柔らかい変位を容易にしている。
【0039】
電源接続用の端子23Bも信号接続用の端子23Aと同様の構成とされており、接触部23B1、固定突起23B2、基板接続部23B3、固定突起23B4、可動ばね23B5、横片部23B6、縦片部23B7、斜片部23B8が形成されている。但し、端子23Bは電源接続用であるため全体的に板幅が広く、また可動ばね23B5は平行に伸長する3本の分割ばね片とすることで、端子23Bの両端側では大電流用途に対応する大きな断面積を持たせつつ、可動ばね23B5は柔らかく弾性変位できるようにしている。
【0041】
ソケットコネクタ12は、電気絶縁性の合成樹脂の単一の成形体でなるハウジング30と信号接続用の端子31Aと、電源接続用の端子31Bとを備えており、第2の基板P2に実装される。ハウジング30は、プラグコネクタ11の信号接続用の嵌合側ハウジング22Aに接続する左右の角筒状の嵌合接続部32Aと、電源接続用の嵌合側ハウジング22Bに接続する中央の角筒状の嵌合接続部32Bとを有する。左右の嵌合接続部32Aと中央の嵌合接続部32Bとは十字状に交差する縦壁でなる連結部33で繋がっている。
【0042】
左右の嵌合接続部32Aには、周壁34Aと底壁35A(
図6)が形成されており、周壁34Aの上端面34A1は平坦面となっている。周壁34Aの上部にはプラグコネクタ11の中央壁28Aを挿入する嵌合口34A2が形成されている。周壁34Aの内部は、端子31Aとプラグコネクタ11の端子23Aとが導通接触する嵌合室34A3となっている。嵌合接続部32Aの外側側面には、第2の基板P2に対して固定金具36aを介して固定する固定部36が設けられている。
【0043】
中央の嵌合接続部32Bも左右の嵌合接続部32Aと同様の構成であり、周壁34B、底壁35B(
図6)が形成されており、周壁34Bには、上端面34B1、嵌合口34B2、嵌合室34B3が形成されている。
【0044】
前後方向Yに伸びる連結部33の両端部には「当接部」としての柱状突起37が形成されている。本実施形態では柱状突起37は中央の嵌合接続部32Bの四隅に立設されている。即ち、柱状突起37はソケットコネクタ12の幅方向Xにおける中央領域に配置されている。したがって、後述する誤結防止機能1〜5において、プラグコネクタ11とソケットコネクタ12の小さな傾きや小さな位置ずれでも検知して挿入姿勢を矯正することができる。柱状突起37の上端は、上下方向Zで嵌合接続部32A、32Bの上端面34A1、34B1から突出する位置に形成されている。このように柱状突起37の上端が突出することによっても、前述した小さな傾きや小さな位置ずれによる誤結合の検知を確実にできるようにしている。
【0045】
コネクタ10の動作及び作用効果の説明
【0046】
次に、以上のような本実施形態のコネクタ10の動作及び作用効果を説明する。
【0047】
1.プラグコネクタ11とソケットコネクタ12の嵌合接続〔図7〜12〕
プラグコネクタ11とソケットコネクタ12とを嵌合接続した状態を
図7〜
図12に示す。これによって第1の基板P1と第2の基板P2の基板間接続が達成される。なお、
図7〜
図12は基板P1と基板P2とが傾いておらず相互に位置ずれせずに配置されてコネクタ10により導通接続されている状態である。
図12で示すように、嵌合接続状態では、プラグコネクタ11の嵌合側ハウジング22A、22Bにソケットコネクタ12の嵌合接続部32A、32Bが挿入されており、嵌合側ハウジング22A、22Bの中央壁28A、28Bが嵌合接続部32A、32Bに挿入されている。したがって、嵌合接続部32A、32Bの内部では、プラグコネクタ11の端子23A、23Bの平板状の接触部23A1、23B1に対して、ソケットコネクタ12の端子31A、31Bの片持ちばね片状の接触部31A1、31B1が所定の接触力をもって押圧接触することで導通接続がなされている。
【0048】
そのようなプラグコネクタ11の接触部23A1、23B1は、プラグコネクタ11の嵌合側ハウジング22A、22Bと基板側ハウジング21の内部に位置する。このため端子の接触部が基板側ハウジングの外部にあるような構造をもつ他のコネクタと比べると、嵌合側ハウジング22A、22Bの回転中心と接触部23A1、23B1との位置が近く、嵌合前から基板P1と基板P2が傾いていても、接触部23A1、23B1の接触位置はほぼ移動しない。したがって嵌合当初の傾いた状態で嵌合側ハウジング22A、22Bが可動間隙38を使い切ってしまうほどに変位するようなことはない。よって基板P1と基板P2の傾きを許容しつつ可動間隙38を利用したフローティング機能も維持することができる。
【0049】
2.プラグコネクタ11の嵌合側ハウジング22A、22Bのフローティング機能〔図13、14〕
プラグコネクタ11とソケットコネクタ12によって、相互に傾いている第1の基板P1と第2の基板P2とを導通接続する動作を説明する。基板P2に対して基板P1が傾いていることから、プラグコネクタ11の基板側ハウジング21の収容室24c1、24c2の内部で、嵌合側ハウジング22A、22Bが端子23A、23Bの可動ばね23A5、23B5の弾性変形によって三次元方向に変位することができる。収容室24c1、24c2の内面と嵌合側ハウジング22A、22Bとの間には可動間隙38が形成されており(
図10、12)、嵌合側ハウジング22A、22Bはその可動間隙38の範囲内で変位し、これによって第1の基板P1や第2の基板P2の相対的な傾きをコネクタ10によって吸収することができる。
【0050】
図13は、従来のフローティングコネクタ1のフローティング動作を模式的に示す動作説明図である。第1の基板P1と第2の基板P2は、フローティングコネクタ1が相手方コネクタMと嵌合接続する前から傾いている。このように基板P1、P2どうしが傾いた状態で嵌合側ハウジング3を相手方コネクタMに挿入嵌合させると、第1の基板P1の傾きは可動ばね4,5によって吸収することができる。しかしながら、嵌合側ハウジング3が「分割ハウジング」ではなく単一構造であるため、図中右側の可動ばね5が大きく上方に伸ばされて、嵌合初期の状態で大きな応力が常時作用してしまう。よって既存のフローティングコネクタ1では可動ばね4,5の塑性変形が生じたり、疲労耐久性が低下しやすいといった問題が生じることがある。
【0051】
他方、本実施形態のコネクタ10は、
図14で示すように、第1の基板P1が
図13と同じ角度で嵌合接続前から傾いており、そのままプラグコネクタ11をソケットコネクタ12に嵌合接続させた場合でも、嵌合側ハウジング22A、22Bが分割ハウジングであるため、個々の嵌合側ハウジング22A、22Bにおける端子23A、23Bどうしの変位長を小さく抑えることができる。また、嵌合側ハウジング22A、22Bは、基板側ハウジング21の収容室24c1、24c2の内部で変位するとともに、嵌合側ハウジング22A、22Bの当接部27A2、27B2が基板側ハウジング21の当接受け部24d1、24d2に対して抜去方向で当接することで、個々の嵌合側ハウジング22A、22Bごとにソケットコネクタ12の嵌合接続部32A、32Bの嵌合長さを変えることができる。このようにして第1の基板P1と第2の基板P2どうしが傾いて配置されていても、プラグコネクタ11とソケットコネクタ12の嵌合接続状態における可動ばね23A5、23B5の変位量を小さく抑えることができるので、塑性変形が生じたり、疲労耐久性が低下しやすいといった問題が生じることがない。
【0052】
3.コネクタ10の小型化〔図13、14〕
従来のフローティングコネクタ1は、
図13で示すように嵌合側ハウジング3の基板側端部に外向きに突出する抜止め突起3aを設け、基板側ハウジング2には、抜止め突起3aが係止する当接受け部2aが形成されている。このため従来のフローティングコネクタ1は幅方向Xで嵌合側ハウジング3の長さL1と基板側ハウジング2の長さL2が長くなるという問題がある。
【0053】
また、基板どうしP1、P2が傾いている場合には、嵌合側ハウジング3が幅方向Xで長いため、その変位を許容するためには可動間隙6を大きく設定しなければならず、このこともフローティングコネクタ1全体を大型化する原因となっている。
【0054】
さらに従来のフローティングコネクタ1の抜止め突起3aと当接受け部2aによれば、1つのフローティングコネクタ1に複数の嵌合側ハウジングを備える場合には、それぞれの嵌合側ハウジングに抜止め突起3aと当接受け部2aと可動間隙6とを設ける必要があるため、より一層幅方向Xで大型化してしまうという不都合がある。
【0055】
他方、本実施形態のプラグコネクタ11は、嵌合側ハウジング22A、22Bが抜去方向で変位すると、当接部27A2、27B2が基板側ハウジング21の嵌合口24aに向けて内方に突出する当接受け部24d1、24d2に対して抜去方向で当接して、基板側ハウジング21から脱離しないように抜け止めされる。つまり複数の嵌合側ハウジング22A、22Bを有する分割ハウジングであっても、それぞれの嵌合側ハウジング22A、22Bごとに前述した従来のフローティングコネクタ1のような外向きに突出する抜止め突起3aとその当接受け部2aと可動間隙6は不要であるから、コネクタ全体を幅方向Xで小型化できる利点がある。
【0056】
また、嵌合側ハウジング22A、22Bが分割ハウジングであり、第1の基板P1と第2の基板P2とが傾いていても、ソケットコネクタ12との嵌合状態における第1の基板P1に対する変位量を小さくできる。したがって、従来のフローティングコネクタ1よりも可動間隙36を小さく設定することができるという利点がある。
【0057】
4.誤結合防止機能1:幅方向Xでの位置ずれ嵌合防止機能〔図15、16〕
コネクタ10は、プラグコネクタ11とソケットコネクタ12との挿入嵌合時に、可動ばね23A5、23B5の可動限界を超えるような幅方向Xでの第1の基板P1と第2の基板P2の位置ずれが生じている場合に(
図15)、無理な挿入嵌合を阻止する誤結合防止機能を備える。
【0058】
即ち、
図15、16で示すように、プラグコネクタ11の嵌合側ハウジング22A、22Bを浮動状態で弾性支持する可動ばね23A5、23B5の可動限界を超える位置ずれが生じている場合には、ソケットコネクタ12の「当接部」をなす柱状突起37が、プラグコネクタ11の基板側ハウジング21の周壁24の「当接部」をなす上面24fに対して当接して係合溝24gに挿入することができない。このような誤結合を規制する接触部分CPが生じることで、プラグコネクタ11に対してソケットコネクタ12を無理に挿入して嵌合させる誤結合を確実に防止することができ、端子23A、23Bの可動ばね23A5、23B5を保護することができる。
【0059】
5.誤結合防止機能2:幅方向Xを回転軸とする傾斜嵌合防止機能〔図17、18〕
コネクタ10は、プラグコネクタ11とソケットコネクタ12との挿入嵌合時に、可動ばね23A5、23B5の可動限界を超えるような幅方向Xを回転軸とする第1の基板P1と第2の基板P2の回転による傾斜が生じている場合に(
図17)、無理な挿入嵌合を阻止する誤結合防止機能を備える。
【0060】
図17、18で示すように、プラグコネクタ11の嵌合側ハウジング22A、22Bを浮動状態で弾性支持する可動ばね23A5、23B5の可動限界を超えるほどソケットコネクタ12が傾斜している場合には、ソケットコネクタ12の「当接部」をなす正面側の2つの柱状突起37がプラグコネクタ11の基板側ハウジング21の「当接部」をなす上面24fに対して当接して係合溝24gに挿入することができない。そして当接した勢いでソケットコネクタ12がさらに傾くと、ソケットコネクタ12のハウジング30の「当接部」をなす上端面34A1が基板側ハウジング21の当接受け部24d1、24d2に突き当たり、誤結合を規制する接触部分CP1、CP2が生じる。これによりソケットコネクタ12を無理に挿入する誤結合を確実に防止でき、端子23A、23Bの可動ばね23A5、23B5を保護することができる。
【0061】
6.誤結合防止機能3:前後方向Yでの位置ずれ嵌合防止機能〔図19、20〕
コネクタ10は、プラグコネクタ11とソケットコネクタ12との挿入嵌合時に、可動ばね23A5、23B5の可動限界を超えるような前後方向Yでの第1の基板P1と第2の基板P2の位置ずれが生じている場合に(
図19)、無理な挿入嵌合を阻止する誤結合防止機能を備える。
【0062】
図19、20で示すように、プラグコネクタ11の嵌合側ハウジング22A、22Bを浮動状態で弾性支持する可動ばね23A5、23B5の可動限界を超えるほどソケットコネクタ12が前後方向Yで位置ずれしている場合には、ソケットコネクタ12の「当接部」をなす正面側の2つの柱状突起37がプラグコネクタ11の基板側ハウジング21の上面24fに対して当接して係合溝24gに挿入することができない。また、ソケットコネクタ12のハウジング30の「当接部」をなす上端面34A1が基板側ハウジング21の当接受け部24d1、24d2に突き当たり、誤結合を規制する接触部分CPが生じる。これによりソケットコネクタ12を無理に挿入する誤結合を確実に防止でき、端子23A、23Bの可動ばね23A5、23B5を保護することができる。
【0063】
7.誤結合防止機能4:前後方向Yの回転軸による傾斜嵌合防止機能〔図21〜24〕
コネクタ10は、プラグコネクタ11とソケットコネクタ12との挿入嵌合時に、可動ばね23A5、23B5の可動限界を超えるような前後方向Yを回転軸とする第1の基板P1と第2の基板P2の回転による傾斜が生じている場合に挿入嵌合を阻止する誤結合防止機能を備える。
【0064】
図21、22で示すように、プラグコネクタ11の嵌合側ハウジング22A、22Bを浮動状態で弾性支持する可動ばね23A5、23B5の可動限界を超えるほどソケットコネクタ12が傾斜している場合には、ソケットコネクタ12の「当接部」をなす正面側の2つの柱状突起37がプラグコネクタ11の基板側ハウジング21の「当接部」をなす上面24fに対して当接して係合溝24gに挿入することができない。このような誤結合を規制する接触部分CPが生じることで、ソケットコネクタ12の無理に挿入する誤結合を確実に防止でき、端子23A、23Bの可動ばね23A5、23B5を保護することができる。
【0065】
また、
図23、24で示すように、さらにソケットコネクタ12が傾斜し且つ位置ずれしている場合には、ハウジング30がプラグコネクタ11の嵌合側ハウジング22Aの「当接部」をなす周壁27Aの上端面に接触して誤結合を規制する接触部分CP1が生じるとともに、基板側ハウジング21の「当接部」をなす上面24fに対して接触して誤結合を規制する接触部分CP2が生じる。したがって、このような場合でもソケットコネクタ12の無理な挿入する誤結合を確実に防止でき、端子23A、23Bの可動ばね23A5、23B5を保護することができる。
【0066】
8.誤結合防止機能5:上下方向Zの回転軸による位置ずれ嵌合防止機能〔図25、26〕
コネクタ10は、プラグコネクタ11とソケットコネクタ12との挿入嵌合時に、可動ばね23A5、23B5の可動限界を超えるような上下方向Zを回転軸とする第1の基板P1と第2の基板P2の回転による位置ずれが生じている場合に(
図25)、無理な挿入嵌合を阻止する誤結合防止機能を備える。
【0067】
図25、26で示すように、プラグコネクタ11の嵌合側ハウジング22A、22Bを浮動状態で弾性支持する可動ばね23A5、23B5の可動限界を超えるほどソケットコネクタ12が前後方向Yで位置ずれしている場合には、柱状突起37が係合溝24gに挿入できたとしても、ソケットコネクタ12のハウジング30の「当接部」をなす上端面34A1が、対角線上に位置するプラグコネクタ11の基板側ハウジング21の当接受け部24d1に対して突き当たり、誤結合を規制する接触部分CP1、CP2が生じる。これによりソケットコネクタ12を無理に挿入する誤結合を確実に防止でき、端子23A、23Bを保護することができる。
【0069】
前述の実施形態によるコネクタ10は一例であって発明の要旨の範囲内で改変して実施することが可能である。
例えば、前記実施形態では信号接続用の2つの嵌合側ハウジング22Aを設ける例を示したが、それは1つでもよいし、3つ以上としてもよい。また電源接続用の嵌合側ハウジング22Bを設ける例を示したが、省略してもよいし、2つ以上としてもよい。何れにしても用途や端子の本数を問わず、複数の嵌合側ハウジングを備えるものであればよい。
前記実施形態では、「当接部」として柱状突起37を4本設ける例を示したが、1本以上であればよい。また、ソケットコネクタ12の幅方向Xの中央領域に設ける例を示したが、その他の部位に設けてもよい。