特許第6305488号(P6305488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6305488大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305488
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F01M 1/06 20060101AFI20180326BHJP
   F16C 7/02 20060101ALI20180326BHJP
【FI】
   F01M1/06 B
   F16C7/02
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-198804(P2016-198804)
(22)【出願日】2016年10月7日
(65)【公開番号】特開2017-78419(P2017-78419A)
(43)【公開日】2017年4月27日
【審査請求日】2016年11月2日
(31)【優先権主張番号】PA 2015 70649
(32)【優先日】2015年10月9日
(33)【優先権主張国】DK
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597061332
【氏名又は名称】エムエーエヌ・ディーゼル・アンド・ターボ・フィリアル・アフ・エムエーエヌ・ディーゼル・アンド・ターボ・エスイー・ティスクランド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ペル・ニルソン
【審査官】 尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−336810(JP,A)
【文献】 特開2002−339944(JP,A)
【文献】 特開2003−322138(JP,A)
【文献】 実開昭63−193115(JP,U)
【文献】 実開昭56−127419(JP,U)
【文献】 国際公開第02/075171(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 1/06
F16C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロスヘッドタイプの大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関(1)であって、
− クロスヘッド(6)と、
− 潤滑流体の潤滑供給部(2)と、
− 第1の軸受(14)を介して前記クロスヘッド(6)に接続されるように構成された第1の孔(5)を有する第1の端部(4)と、第2の軸受(15)を介してクランクピン(9)に接続されるように構成された第2の孔(8)を有する第2の端部(7)と、前記第1の孔(5)と前記第2の孔(8)との間のロッド部分(10)と、を備える少なくとも1つのコネクティングロッド(3)であって、前記コネクティングロッド(3)が、軸方向延長線(L)を有し、前記コネクティングロッド(3)が、前記第1の孔(5)及び前記第2の孔(8)の少なくとも一方に前記潤滑流体を供給するように構成された流体チャネル(11)をさらに備える、コネクティングロッド(3)と、
を備える、クロスヘッドタイプの大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関(1)において、
前記コネクティングロッド(3)が、中央部分(13)及び1つ目の第3の孔(12,12A)を備え、前記1つ目の第3の孔(12,12A)が、前記中央部分よりも前記第1の軸受及び前記第2の軸受の一方に近く前記ロッド部分(10)に配置された貫通孔であり、前記1つ目の第3の孔(12,12A)が、少なくとも前記軸方向延長線(L)における前記コネクティングロッド(3)の剛性を変更するように構成されており、前記コネクティングロッドが、2つ目の第3の孔(12,12B)を備え、前記1つ目の第3の孔(12,12A)及び前記2つ目の第3の孔(12,12B)が、前記流体チャネル(11)のそれぞれ反対側に配置されていることを特徴とするクロスヘッドタイプの大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関(1)。
【請求項2】
前記1つ目の第3の孔及び前記2つ目の第3の孔(12)が、前記軸方向延長線(L)と垂直に延在していることを特徴とする請求項1に記載のクロスヘッドタイプの大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関(1)。
【請求項3】
前記流体チャネル(11)が、前記第1の孔(5)から前記第2の孔(8)へ延在していることを特徴とする請求項1又は2に記載のクロスヘッドタイプの大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関(1)。
【請求項4】
クロスヘッドタイプの大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関(1)であって、
− クロスヘッド(6)と、
− 潤滑流体の潤滑供給部(2)と、
− 第1の軸受(14)を介して前記クロスヘッド(6)に接続されるように構成された第1の孔(5)を有する第1の端部(4)と、第2の軸受(15)を介してクランクピン(9)に接続されるように構成された第2の孔(8)を有する第2の端部(7)と、前記第1の孔(5)と前記第2の孔(8)との間のロッド部分(10)と、を備える少なくとも1つのコネクティングロッド(3)であって、前記コネクティングロッド(3)が、軸方向延長線(L)を有し、前記コネクティングロッド(3)が、前記第1の孔(5)及び前記第2の孔(8)の少なくとも一方に前記潤滑流体を供給するように構成された流体チャネル(11)をさらに備える、コネクティングロッド(3)と、
を備える、クロスヘッドタイプの大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関(1)において、
前記コネクティングロッド(3)が、中央部分(13)及び第3の孔(12)を備え、前記第3の孔(12)が、前記中央部分よりも前記第1の軸受及び前記第2の軸受の一方に近く前記ロッド部分(10)に配置された貫通孔であり、前記第3の孔(12)が、少なくとも前記軸方向延長線(L)における前記コネクティングロッド(3)の剛性を変更するように構成されており、前記第3の孔(12)が、前記流体チャネル(11)を横切って延在し、これにより、前記流体チャネル(11)の中間出口(16)及び中間入口(17)を規定し、前記中間出口(16)及び前記中間入口(17)双方が、前記第3の孔(12)に面していることを特徴とするクロスヘッドタイプの大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関(1)。
【請求項5】
前記コネクティングロッド(3)が、前記中間出口(16)及び前記中間入口(17)を流体接続させるために、ボア(19)を有し且つ前記第3の孔(12)内に配置された接続要素(18)をさらに備えていることを特徴とする請求項4に記載のクロスヘッドタイプの大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関(1)。
【請求項6】
前記接続要素(18)が、前記中間入口(17)内に延在するチューブ状部分(20)を備えていることを特徴とする請求項5に記載のクロスヘッドタイプの大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関(1)。
【請求項7】
前記接続要素(18)が、前記ボアの第1のセクション(22)を備える第1の部分(21)と、前記ボアの第2のセクション(24)を備える第2の部分(23)と、を備え、前記第1の部分(21)が、前記第2の部分(23)に対してスライド可能であり、前記ボアの前記第1のセクション(22)及び前記第2のセクション(24)を流体接続することを特徴とする請求項5又は6に記載のクロスヘッドタイプの大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関(1)。
【請求項8】
前記接続要素(18)の前記第1の部分(21)が、部分的に前記接続要素(18)の前記第2の部分(23)内でスライドすることを特徴とする請求項7に記載のクロスヘッドタイプの大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関(1)。
【請求項9】
前記接続要素(18)が、前記軸方向延長線(L)に沿う前記第3の孔(12)の変形を吸収するように構成されていることを特徴とする請求項5から8のいずれか一項に記載のクロスヘッドタイプの大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関(1)。
【請求項10】
前記コネクティングロッド(3)が、前記軸方向延長線(L)に沿って前記第3の孔(12)内に延在する、第1の突出部分(27)及び第2の突出部分(28)を有し、前記第1の突出部分(27)が前記中間出口(16)を形成し、前記第2の突出部分(28)が前記中間入口(17)を形成していることを特徴とする請求項4から9のいずれか一項に記載のクロスヘッドタイプの大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑流体の潤滑供給部と、少なくとも1つのコネクティングロッドと、を備えるクロスヘッドタイプの大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
海洋船舶の大型2ストロークディーゼルエンジンのような、例えば特許文献1から公知の内燃機関では、エンジンコストを減少させるため且つ船舶上により大きな空間、例えばより大きなコンテナを作り出すために、エンジンの重量及び体積を最小化させる試みが、ますます重要になっており、常に発展する領域である。特に、コネクティングロッド、軸受及びエンジンの寿命を短縮させることなく、大型構成要素、例えばコネクティングロッド軸受を最小化させる一方で、それでも軸受に潤滑剤を供給することができ且つ同じ荷重を伝達することが、重点を置く領域になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4515110号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来技術における上記のデメリット及び欠点を完全に又は部分的に克服することである。より具体的に、本目的は、改良されたクロスヘッドタイプの大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関であって、構成要素及びそれら構成要素の接続部により大きな応力を導くことなく、又は軸受もしくは運動学的不安定性にネガティブな影響とエンジンの振動とをもたらすことなく、エンジンの重量及び体積が最小化された、クロスヘッドタイプの大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的、並びに以下の説明から明らかになるであろう多数の他の目的、利点及び特徴は、
クロスヘッドタイプの大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関であって、
− 潤滑流体の潤滑供給部と、
− 第1の軸受を介してクロスヘッドに接続されるように構成された第1の孔を有する第1の端部と、第2の軸受を介してクランクピンに接続されるように構成された第2の孔を有する第2の端部と、第1の孔と第2の孔との間のロッド部分と、を備える少なくとも1つのコネクティングロッドであって、コネクティングロッドが、軸方向延長線を有し、コネクティングロッドが、第1の孔及び第2の孔の少なくとも一方に潤滑流体を供給するように構成された流体チャネルをさらに備える、コネクティングロッドと、
を備え、
コネクティングロッドが、中央部分及び第3の孔を備え、第3の孔が、中央部分よりも第1の軸受及び第2の軸受の一方に近くロッド部分に配置されており、第3の孔が、少なくとも軸方向延長線におけるコネクティングロッドの剛性を変更するように構成されている、クロスヘッドタイプの大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関により、本発明に従う解決法によって達成される。
【0006】
中央部分よりも第1の軸受及び第2の軸受の一方に近くロッド部分に第3の孔を有することによって、剛性は、コネクティングロッドが実質的により薄く且つ第1の孔及び第2の孔が実質的により小さく形成されるように、コネクティングロッドにおいて分配され、これにより、クランクシャフトの全長を縮小させ、従って、大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関全体のサイズを縮小させる。
【0007】
加えて、流体チャネルが、第1の孔から第2の孔へ延在してもよい。
【0008】
さらに、流体チャネルが、第2の孔を通じて第2の孔内の軸受に潤滑流体を供給するように構成されてもよい。
【0009】
さらに、第3の孔が、軸方向延長線と垂直に延在してもよい。
【0010】
中央部分が、第1の孔と第2の孔との間のコネクティングロッドの中間に配置されてもよい。
【0011】
加えて、第3の孔が流体チャネルを横切って延在し、これにより、流体チャネルの中間出口及び中間入口を規定し、中間出口及び中間入口双方が第3の孔に面していてもよい。
【0012】
さらに、コネクティングロッドが、流体チャネルの反対側に追加的な第3の孔を備えてもよい。
【0013】
さらに、追加的な第3の孔が、第1の端部により近くてもよい。
【0014】
また、第3の孔が、第1の端部よりも第2の端部に近くてもよい。
【0015】
さらに、第3の孔が、第2の端部よりも第1の端部に近くてもよい。
【0016】
コネクティングロッドが、中間出口及び中間入口を流体接続させるために、ボアを有し且つ第3の孔内に配置された接続要素をさらに備えていてもよい。
【0017】
さらに、ボアが流体チャネルの一部分を形成してもよい。
【0018】
加えて、接続要素が、中間入口内に延在するチューブ状部分を備えていてもよい。
【0019】
さらに、接続要素が、第1の孔から中間入口内に延在するチューブ状部分であってもよい。
【0020】
さらに、チューブ状部分が、部分的にロッド部分を通って延在してもよい。
【0021】
また、接続要素のチューブ状部分が、中間出口内に延在してもよい。
【0022】
チューブ状部分が、可撓性チューブであってもよい。
【0023】
さらに、接続要素が、ボアの第1のセクションを備える第1の部分と、ボアの第2のセクションを備える第2の部分と、を備え、第1の部分が、第2の部分に対してスライド可能であり、ボアの第1のセクション及び第2のセクションを流体接続してもよい。
【0024】
さらに、接続要素が、軸方向延長線に沿う第3の孔の変形を吸収するように構成されてもよい。
【0025】
また、接続要素の第1の部分が、部分的に接続要素の第2の部分内でスライドしてもよい。
【0026】
さらに、接続要素の第1の部分が、例えば第3の孔の変形中に第2の部分内に延在する雄型部分であってもよい。
【0027】
雄型部分がチューブ状部分であってもよい。
【0028】
また、コネクティングロッドが、雄型部分と第2の部分との間に0.05mm−1.0mmの径方向クリアランス、好ましくは0.05mm−0.5mmの径方向クリアランスを有してもよい。
【0029】
さらに、第1の部分及び第2の部分がロッド部分に留められてもよい。
【0030】
さらに、第1の部分が、ベース部分及びチューブ状部分を備えてもよい。
【0031】
さらに、第2の部分が、ボアの第2のセクションを有するベース部分を備えてもよい。
【0032】
また、第1の部分のチューブ状部分が、部分的に第2の部分のボア内に延在してもよい。
【0033】
さらに、ベース部分が、例えばネジ又はボルトによりロッド部分に留められてもよい。
【0034】
加えて、コネクティングロッドが、軸方向延長線に沿って第3の孔内に延在する、第1の突出部分及び第2の突出部分を有し、第1の突出部分が中間出口を形成し、第2の突出部分が中間入口を形成してもよい。
【0035】
さらに、第3の孔が、略H字状又は略I字状であってもよい。
【0036】
追加的に、流体チャネルが所定の直径を有し、直径が第2の孔において減少してもよい。
【0037】
さらに、軸受リングが第2の孔内に配置されてもよく、流体チャネルの出口が軸受リングに隣接してもよい。
【0038】
また、流体チャネルが、第2の孔に沿って軸方向延長線から所定の周方向距離で配置された2つの出口で終端してもよい。
【0039】
さらに、コネクティングロッドの第1の端部が、ロッド部分に接続されたクロスヘッド部分を備え、これにより第1の孔を形成してもよい。
【0040】
加えて、コネクティングロッドの第2の端部が、ロッド部分に接続されたクランクピン部分を備え、これにより第2の孔を形成してもよい。
【0041】
本発明は、上述した大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関を備える船舶にも関する。
【0042】
本発明及びその多くの利点が、添付の概略的な図を参照して以下でより詳細に説明され、図は、説明のために、非限定的ないくつかの実施形態を示している。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関の部分的な断面図を示す。
図2】コネクティングロッドを斜視図で示す。
図3】コネクティングロッドの一部分の断面図を示す。
図4】別のコネクティングロッドの一部分の断面図を示す。
図5】2つの第3の孔を有するコネクティングロッドを示す。
図6】2つの第3の孔を有する別のコネクティングロッドを示す。
図7】別のコネクティングロッドを示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
全ての図は、極めて概略的であり、且つ必ずしも縮尺通りではなく、それらの図は、本発明を説明するために必要なこれらのパーツのみを示し、他のパーツは省略されるか又は単に示唆される。
【0045】
図1は、潤滑流体の潤滑供給部2と、コネクティングロッド3と、を備えるクロスヘッドタイプの大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関1を示している。コネクティングロッド3は、クロスヘッド6に接続されるように構成された第1の孔5を有する第1の端部4と、クランクピン9に接続されるように構成された第2の孔8を有する第2の端部7と、を備えている。コネクティングロッド3は、第1の端部4と第2の端部7との間にロッド部分10をさらに備えている。コネクティングロッド3は、(図2に示す)中央部分13よりも軸受の1つに近くロッド部分10に配置された第3の孔12を備え、第3の孔は、(図2に示す)軸方向延長線Lにおけるコネクティングロッド3の剛性を変更するように構成されている。
【0046】
第3の孔12を有することによって、コネクティングロッド3は、より小さい堅さを有するか又はより小さい剛性を有し、コネクティングロッド3によってクランクピン9に付与される力は、第3の孔のないコネクティングロッドを開示する従来技術のものよりも大きい第2の孔8の接触面にわたって分配され、そして、コネクティングロッド3は実質的により薄く形成され、第1の孔5及び第2の孔8は実質的により小さく形成され、従ってクランクピン9及びクロスヘッド6内の軸受は、軸受性能を低下させることなく、より小さく形成することもできる。コネクティングロッド3の(図2に示す)厚さtを減少させることによって、(図1に示す)クランクシャフト35は、実質的により短く形成することもでき、これにより、実質的にエンジンの全長を減少させる一方で、運動学的不安定性及びエンジンの振動にポジティブな影響をもたらす。従って、第3の孔12を付与することによって、エンジンの全体積は大幅に減少され、且つより大きなスペースが貨物に与えられる。さらに、コネクティングロッド3及びひいてはエンジンのサイズを縮小することによって、エンジンの総重量も実質的に減少され、これは、船舶の総重量と、上記積載物の輸送に関連するコストと、を減少することをもたらす。
【0047】
1つの構成要素から別の構成要素へ力を伝達するときに、力の伝達で付与される圧力が潤滑剤を力の伝達ポイントから離させるので、十分な潤滑を得ることは極めて困難な場合がある。特に、コネクティングロッドとクランクピンとの間で力を伝達する場合、強い力が、潤滑流体、例えばオイルを伝達ポイントから離すように押し、さらなる潤滑剤の注入が、伝達中にはほとんど不可能になる。最適な油膜圧力、軸受クリアランス、油膜厚さ並びに軸受における応力及びひずみは、大型2ストロークエンジンのためのクランクピン軸受及びクロスヘッド軸受を寸法決めするときのメインの基準として見られる。従って、コネクティングロッドとクランクピン/クロスヘッドとの間の軸受に潤滑流体を供給することができ、これにより、最適な油膜厚さ及び油膜圧力を得るためにこれら接続部での応力を減少させることができることが重要である。
【0048】
より大きい範囲にわたって圧力を分散する場合、油膜、すなわち潤滑流体は、コネクティングロッドとクランクピンとの間の接続部により容易に塗布され、潤滑流体は、同様に大きな表面積にわたって分配され、これにより、第2の孔8において潤滑層を一様にする。
【0049】
図2では、コネクティングロッド3は、第1の孔5と第2の孔8との間のコネクティングロッド3の中間に配置された中央部分13を備えている。コネクティングロッド3は、コネクティングロッド3の軸方向延長線Lに沿って第1の孔5から第2の孔8へ延在する流体チャネル11をさらに備えている。流体チャネル11は、第1の孔5から第2の孔8へ潤滑流体を供給するように構成されている。潤滑流体は、第1の孔5内の第1の軸受14に潤滑流体を供給するためにクロスヘッド6を通じて運ばれる。潤滑流体は、第2の孔8内の第2の軸受15に潤滑流体を供給するために流体チャネル11内を流れる。第3の孔12は、軸方向延長線Lと垂直に延在しており、第3の孔12は、貫通孔である。第3の孔12は、第1の端部4よりも第2の端部7に近い。
【0050】
図3における第3の孔12は、流体チャネル11を横切って延在し、これにより、流体チャネル11の中間出口16及び中間入口17を規定し、中間出口16及び中間入口17双方は、第3の孔12に面している。コネクティングロッド3は、中間出口16及び中間入口17を流体接続するために、ボア19を有し且つ第3の孔12内に配置された接続要素18をさらに備えている。ボア19は、流体チャネル11の一部分を形成している。接続要素18は、チューブ状部分20を備え、チューブ状部分20は、中間入口17内に延在し、且つチューブ状部分20内のボア19を流体チャネル11と流体接続している。コネクティングロッド3がクロスヘッド6からクランクピン9へ力を伝達する場合、第3の孔12の小さな変形が生じ、チューブ状部分20が中間入口17内にスライドし、これにより、この変形を吸収させる。接続要素18は、例えばネジ又はボルト25によりロッド部分10に留められている。接続要素18は、ベース部分26を備え、チューブ状部分20及びボルト25はベース部分26内に延在している。従って、接続要素18は、軸方向延長線Lに沿うコネクティングロッド3の第3の孔12の変形を吸収するように構成されている。
【0051】
図4における接続要素18は、ボア19の第1のセクション22を備える第1の部分21と、ボア19の第2のセクション24を備える第2の部分23と、を備えている。接続要素18の第1の部分21は、接続要素18の第2の部分23に対してスライド可能であり、ボア19の第1のセクション22及び第2のセクション24を流体接続する。第1の部分21は、チューブ状部分20を備えており、チューブ状部分20は、ボア19の第2のセクション24内に延在し且つ第2のセクション24内でスライドしてひいては軸方向延長線Lに沿うコネクティングロッド3の第3の孔12の変形を吸収する雄型部分である。コネクティングロッド3は、チューブ状部分20と第2の部分23との間に0.05mmから1.0mmの径方向クリアランスを有しており、これにより、第3の孔12の変形を吸収する。第1の部分21及び第2の部分23は、例えばネジ又はボルト25によりロッド部分10に留められている。第1の部分21は、ベース部分26Aを備え、チューブ状部分20及びボルト25は、ベース部分26A内に延在している。また、第2の部分23は、ボア19の第2のセクション24を有するベース部分26Bを備えている。
【0052】
図3及び図4におけるコネクティングロッド3は、軸方向延長線Lに沿って第3の孔12内に延在する、第1の突出部分27及び第2の突出部分28を有している。第1の突出部分27は中間出口16を形成し、第2の突出部分28は中間入口17を形成している。従って、第3の孔は、略H字状である。図3では、流体チャネル11は、直径D,Dを有し、直径は、第1の孔5での第1の直径Dから第2の孔8での第2の直径Dへ減少している。軸受リング29が第2の孔8内に配置され、流体チャネル11の出口30が軸受リング29に隣接している。
【0053】
図4では、流体チャネル11は、第2の孔8まで第1の直径Dを有し、第2の孔8では、潤滑流体が、図5に示すように第2の孔8の周囲に沿って周囲チャネル36内に分配され、従って、流体チャネル11は、2つの出口32で終端する。
【0054】
図5では、コネクティングロッド3は、追加的な第3の孔12Bを備えており、追加的な第3の孔12Bは、第2の端部7よりも第1の端部4に近い。接続要素18は、中間入口17内に延在するチューブ状部分20を備え、流体チャネル11は、第2の孔8に沿って軸方向延長線Lから所定の周方向距離に配置された2つの出口32で終端している。
【0055】
図1から図7におけるコネクティングロッド3の第1の端部4は、ロッド部分10に接続されたクロスヘッド部分33を有し、これにより第1の孔5を形成する。同じ方式で、コネクティングロッド3の第2の端部7は、ロッド部分10に接続されたクランクピン部分34を備え、これにより、第2の孔8を形成する。
【0056】
図6におけるコネクティングロッド3は、流体チャネル11のそれぞれ反対側に配置された、最初の第3の孔12,12A及び追加的な第3の孔12,12Bを備え、このため、2つの第3の孔12,12A,12Bは、流体チャネル11の両側に配置されている。従って、ロッド部分10は、クランクピン9に付与される力を一様にするために、第2の孔8の上方でより可撓性を有して形成されている。
【0057】
図7では、チューブ状部分20は、部分的に流体チャネル11内でロッド部分10を通って延在し、従って、チューブ状部分20は、第1の孔5から第3の孔12を通って第2の孔8に延在している。チューブ状部分20と第1の孔5及び/又は第2の孔8との間にはクリアランスが存在してもよい。チューブ状部分20は、中間出口16内及び中間入口17内に延在し、且つ第3の孔12の変形を吸収するために流体チャネル11内でスライドする。チューブ状部分は、別の実施形態では可撓性チューブであってもよい。
【0058】
本発明が、上記において本発明の好ましい実施形態に関連して説明されたが、当業者には、以下の特許請求の範囲によって規定されるように本発明から逸脱することなくいくらかの修正が想起可能であることは明らかである。
【符号の説明】
【0059】
1 大型ターボチャージャー付き2ストローク内燃機関、2 潤滑供給部、3 コネクティングロッド、4 第1の端部、5 第1の孔、6 クロスヘッド、7 第2の端部、8 第2の孔、9 クランクピン、10 ロッド部分、11 流体チャネル、12 第3の孔、13 中央部分、14 第1の軸受、15 第2の軸受、16 中間出口、17 中間入口、18 接続要素、19 ボア、20 チューブ状部分、21 第1の部分、22 第1のセクション、23 第2の部分、24 第2のセクション、27 第1の突出部分、28 第2の突出部分、L 軸方向延長線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7