(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305544
(24)【登録日】2018年3月16日
    
      
        (45)【発行日】2018年4月4日
      
    (54)【発明の名称】CTシステム及びその方法
(51)【国際特許分類】
   G01N  23/046       20180101AFI20180326BHJP        
【FI】
   G01N23/04 320
【請求項の数】15
【全頁数】13
      (21)【出願番号】特願2016-543121(P2016-543121)
(86)(22)【出願日】2014年12月25日
    
      (65)【公表番号】特表2017-501414(P2017-501414A)
(43)【公表日】2017年1月12日
    
      (86)【国際出願番号】CN2014094994
    
      (87)【国際公開番号】WO2015096784
(87)【国際公開日】20150702
    【審査請求日】2016年6月27日
      (31)【優先権主張番号】201310739803.4
(32)【優先日】2013年12月26日
(33)【優先権主張国】CN
    
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】513322718
【氏名又は名称】清華大学
【氏名又は名称原語表記】TSINGHUA  UNIVERSITY
          (73)【特許権者】
【識別番号】506388336
【氏名又は名称】同方威視技術股▲フン▼有限公司
          (74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山  靖彦
          (74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広  信哉
          (74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部  達彦
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】▲張▼  ▲麗▼
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】▲陳▼  志▲強▼
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】黄  清萍
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】金  ▲シン▼
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】▲孫▼  ▲運▼▲達▼
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】沈  ▲楽▼
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】▲趙▼  ▲ジ▼
              
            
        
      
    
      【審査官】
        立澤  正樹
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          国際公開第2004/090576(WO,A1)    
        
        【文献】
          特開2000−235007(JP,A)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N    23/046      
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  被検体を搭載して直線に動く伝送機構と、
  第1の放射線源、第1の検出器および第1のデータ採集装置を含み、前記被検体を走査し、第1のデジタル信号を発生させる第1の走査段と、
  前記被検体の動き方向に沿って前記第1の走査段と予め定められた距離をおいて設けられ、第2の放射線源、第2の検出器および第2のデータ採集装置を含むように配置される第2の走査段と、
  前記第1のデジタル信号に基づいて前記被検体の第1の画質のCT画像を再構成し、前記CT画像を分析するように配置される処理装置と、
  前記処理装置の分析結果に応じて前記第2の走査段の走査パラメーターを調節して、前記第2の走査段から第2のデジタル信号を出力させるように配置される制御装置と、を含み、
  前記処理装置は少なくとも前記第1のデジタル信号及び前記第2のデジタル信号に基づいて前記被検体の第2の画質のCT画像を再構成し、前記第2の画質は第1の画質より高いことを特徴とするCTシステム。
【請求項2】
  第2の走査段が当該物体の対応する部分を走査した際に、前記処理装置の分析結果に応じて前記第2の走査段の走査パラメーターを調節して、前記第2の走査段から前記第2のデジタル信号を出力させることを特徴とする請求項1に記載のCTシステム。
【請求項3】
  第3の放射線源、第3の検出器および第3のデータ採集装置を含む第3の走査段をさらに含み、
  前記制御装置は、前記第1の解像度のCT画像に応じて前記第3の走査段の走査パラメーターを調節して、前記第3の走査段から第3のデジタル信号を出力させるように配置され、前記処理装置は、少なくとも前記第1のデジタル信号、前記第2のデジタル信号及び前記第3のデジタル信号に基づいて前記被検体の第3の画質のCT画像を再構成するように配置され、前記第3の画質は第1の画質より高いことを特徴とする請求項1に記載のCTシステム。
【請求項4】
  第3の走査段が当該物体の対応する部分を走査した際に、前記処理装置の分析結果に応じて前記第3の走査段の走査パラメーターを相応的に調節して、前記第3の走査段から前記第3のデジタル信号を出力させることを特徴とする請求項3に記載のCTシステム。
【請求項5】
  前記第1の走査段、前記第2の走査段及び前記第3の走査段は、間引視角走査モードを採用することを特徴とする請求項3に記載のCTシステム。
【請求項6】
  第1の走査段、前記第2の走査段及び前記第3の走査段は、有限角度走査モードを採用することを特徴とする請求項3に記載のCTシステム。
【請求項7】
  前記第1の放射線源、前記第2の放射線源および前記第3の放射線源は、いずれも複数の源点を含み、被検体の動き方向に垂直する複数の走査平面に設けられ、各走査平面において、源点の分布は、連続又は非連続の一段又は複数段の直線又は円弧線であることを特徴とする請求項3に記載のCTシステム。
【請求項8】
  前記処理装置の分析結果がより高い透過性によって金属物体及びその付近領域をよく視認しようとすることを示す場合、第2の走査段の源点を、より高い電圧によって放射線のエネルギーを向上させるように予め設定することを特徴とする請求項7に記載のCTシステム。
【請求項9】
  前記処理装置の分析結果がより多い細小の物体をよく視認しようとすることを示す場合、第2の走査段の源点を、より多い光源数によって空間解像度を向上させるように予め設定することを特徴とする請求項7に記載のCTシステム。
【請求項10】
  前記処理装置の分析結果が所定時間内に走査を完成しようとすることを示す場合、第2の走査段の源点数を、予め定められた光源数に調節することを特徴とする請求項7に記載のCTシステム。
【請求項11】
  処理装置の分析結果が材料をより正確に識別しようとすることを示す場合、第2の走査段の源点のビーム出射パワースペクトルを調節することを特徴とする請求項7に記載のCTシステム。
【請求項12】
  前記第1の走査段、前記第2の走査段及び前記第3の走査段における源点のビーム強さは、源点が位置する平面の予め定められた光源数に基づいて調整されることを特徴とする請求項7に記載のCTシステム。
【請求項13】
  源点数が多い場合、所定時間内に完成するように、ビーム強さを向上して各源点のビーム出射時間を短縮し、あるいは、アクティブの源点数が少ない場合、大きいビーム強さによって走査データのSN比を向上させることを特徴とする請求項12に記載のCTシステム。
【請求項14】
  CTシステムの方法であって、
  前記CTシステムは、第1の走査段と、被検体の動き方向に沿って前記第1の走査段と予め定められた距離をおいて設けられる第2の走査段と、を含み、
  前記方法は、
  被検体の動く過程において、第1の走査段によって被検体を走査し、第1のデジタル信号を発生させるステップと、
  前記第1のデジタル信号に基づいて前記被検体の第1の画質のCT画像を再構成し、前記CT画像を分析するステップと、
  前記処理装置の分析結果に応じて前記第2の走査段の走査パラメーターを調節して、前記第2の走査段で前記物体を走査し第2のデジタル信号を出力させるステップと、
  少なくとも前記第1のデジタル信号及び前記第2のデジタル信号に基づいて前記被検体の第2の画質のCT画像を再構成するステップと、を含み、
  前記第2の画質は第1の画質より高いことを特徴とするCTシステムの方法。
【請求項15】
  第2の走査段が当該物体の対応する部分を走査した際に、前記処理装置の分析結果に応じて前記第2の走査段の走査パラメーターを調節して、前記第2の走査段から前記第2のデジタル信号を出力させることを特徴とする請求項14に記載のCTシステムの方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本開示の実施例は、放射イメージングのセキュリティ検出分野に関し、特に、マルチソース静止CT荷物物品のセキュリティチェックシステム及びその方法に関する。
 
【背景技術】
【0002】
  CT技術は、物体の重なり合いによる影響を除去できるため、セキュリティチェックにおいて重要な役割を果たしている。伝統的なCTは、スリップリング装置によって、X線装置及び検出器の回転によって、異なる角度における投影データを取得し、再構成方法によって断層画像を取得し、これにより、被検体である荷物物品の内部情報を取得するものである。デュアルエナジー又はマルチエナジーのイメージング技術に合わせて、現在の荷物物品検査機器は、被検体の原子番号及び電子密度を再構成し、物質種類の識別を実現し、爆発物や危険物等の検出に良好な効果を奏している。
【0003】
  ところで、現在のセキュリティチェックCT技術にはいくつかの欠陥がある。まず、走査速度に関する問題がある。速い検査速度は、客流や物流による圧力を緩和できるが、快速走査には、より高い回転数のスリップリングが必要であり、加工精度や信頼度等の問題によって、高速スリップリングは、価格が高く、メンテナンスコストが高く、普及し難しい。そして、誤報及び通報漏れに関する問題がある。CT技術の自動識別及び警報機能は、100%の正確度を実現し難しくて、禁制品の検査には人工的な補助判断が必要であり、荷物をさらに開けて検査する必要もある。一般的には、荷物を開けて検査することは、数分〜十数分がかかり、人力及び時間コストを増加し、セキュリティチェックの効率の向上を厳重に制限してしまう。この課題を軽減するために、現在では、二回走査技術を用いる機器があり、不審荷物に対して二回高精度の走査を行うことによってCT画像の品質を向上させ、荷物を開けて検査する回数を抑制している。しかしながら、このような二回走査の方式には、走査時間がより長く、セキュリティチェックの過程を中断する等の問題がある。
【0004】
  近年、カーボンナノチューブX線管技術は適用されている。伝統的な光源と異なり、高温によって放射線を発生する必要がなく、カーボンナノチューブの先端放電原理によってカソード放射線を発生させ、ターゲットを衝突してX光を発生させる。その長所は、速くオン・オフし、体積を更に小さくすることである。X光源をリング状に配置し、異なる角度から物体を照射すれば、回転なしの「静止CT」を作製し、放射線イメージングの速度を大きく向上させるとともに、スリップリングの構造を省略し、コストを大きく節約することができる。したがって、セキュリティチェックなどの分野に対して十分に重要な意義を持っている。
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
  従来技術における1つ又は複数の課題に対して、CTシステム及びその方法を提出する。
 
【課題を解決するための手段】
【0006】
  本開示の一局面において、被検体を搭載して直線に動く伝送機構と、第1の放射線源、第1の検出器および第1のデータ採集装置を含み、前記被検体を走査し、第1のデジタル信号を発生させるように配置される第1の走査段と、前記被検体の動き方向に沿って前記第1の走査段と予め定められた距離をおいて設けられ、第2の放射線源、第2の検出器および第2のデータ採集装置を含むように配置される第2の走査段と、前記第1のデジタル信号に基づいて前記被検体の第1の画質のCT画像を再構成し、前記CT画像を分析するように配置される処理装置と、前記処理装置の分析結果に基づいて前記第2の走査段の走査パラメーターを調節して、前記第2の走査段から第2のデジタル信号を出力させるように配置される制御装置と、を含み、前記処理装置は少なくとも前記第2のデジタル信号に基づいて前記被検体の第2の画質のCT画像を再構成し、前記第2の画質は第1の画質より高いCTシステムを提供する。
【0007】
  好ましくは、第2の走査段が当該物体の対応する部分を走査した際に、前記処理装置の分析結果に応じて前記第2の走査段の走査パラメーターを調節して、前記第2の走査段から前記第2のデジタル信号を出力させる。
【0008】
  好ましくは、前記のCTシステムは、第3の放射線源、第3の検出器および第3のデータ採集装置を含む第3の走査段をさらに含み、前記制御装置は、前記第1の解像度のCT画像に基づいて前記第3の走査段の走査パラメーターを調節して、前記第3の走査段から第3のデジタル信号を出力させるように配置され、前記処理装置は、少なくとも前記第3のデジタル信号に基づいて前記被検体の第3の画質のCT画像を再構成するように配置され、前記第3の画質は第1の画質より高い。
【0009】
  好ましくは、第3の走査段が当該物体の対応する部分を走査した際に、前記処理装置の分析結果に応じて前記第3の走査段の走査パラメーターを調節して、前記第3の走査段から前記第3のデジタル信号を出力させる。
【0010】
  好ましくは、前記第1の走査段、前記第2の走査段及び前記第3の走査段は、間引視角走査モードを採用する。
【0011】
  好ましくは、第1の走査段、前記第2の走査段及び前記第3の走査段は、有限角度走査モードを採用する。
【0012】
  好ましくは、前記第1の放射線源、前記第2の放射線源および前記第3の放射線源はいずれも複数の源点を含み、被検体の動き方向に垂直する複数の走査平面に設けられ、各走査平面において、源点の分布は、連続又は非連続の一段又は複数段の直線又は円弧線である。
【0013】
  好ましくは、前記処理装置の分析結果がより高い透過性によって金属物体及びその付近領域をよく視認しようとすることを示す場合、第2の走査段の源点を、より高い電圧によって放射線のエネルギーを向上させるように予め設定する。
【0014】
  好ましくは、前記処理装置の分析結果がより多い細小の物体をよく視認しようとすることを示す場合、第2の走査段の源点を、より多い光源数によって空間解像度を向上させるように予め設定する。
【0015】
  好ましくは、前記処理装置の分析結果が所定時間内に走査を完成しようとすることを示す場合、第2の走査段の源点数を、予め定められた光源数に調節する。
【0016】
  好ましくは、処理装置の分析結果が材料をより正確に識別しようとすることを示す場合、第2の走査段の源点のビーム出射パワースペクトルを調節する。
【0017】
  好ましくは、前記第1の走査段、前記第2の走査段及び前記第3の走査段における源点のビーム強さは、源点が位置する平面の予め定められた光源数に基づいて調整される。
【0018】
  好ましくは、源点数が多い場合、所定時間内に完成するように、ビーム強さを向上して各源点のビーム出射時間を短縮し、あるいは、アクティブの源点数が少ない場合、大きいビーム強さによって走査データのSN比を向上させる。
【0019】
  本開示の他局面において、CTシステムの方法であって、前記CTシステムが、第1の走査段と、被検体の動き方向に沿って前記第1の走査段と予め定められた距離をおいて設けられる第2の走査段と、を含み、前記方法が、被検体の動く過程において、第1の走査段によって被検体を走査し、第1のデジタル信号を発生させるステップと、前記第1のデジタル信号に基づいて前記被検体の第1の画質のCT画像を再構成し、前記CT画像を分析するステップと、前記処理装置の分析結果に応じて前記第2の走査段の走査パラメーターを調節して、前記第2の走査段から第2のデジタル信号を出力させるステップと、少なくとも前記第2のデジタル信号に基づいて前記被検体の第2の画質のCT画像を再構成するステップと、を含み、前記第2の画質は第1の画質より高いCTシステムの方法を提出している。
【0020】
  上記実施例の技術案によって、一回の走査過程においてマルチ走査平面、自己適応走査パラメーターによる走査方式を実現し、高精度の走査を実現し、よりよいイメージング品質を取得し、識別の正確度を向上させるとともに、走査過程を速くすることができる。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0021】
  本開示をより良好に理解するために、本開示の実施例を以下の図面から説明する。
【0022】
【
図1】本開示の実施例によるCTシステムの構造概念図である。
 
【
図2】本開示の実施例によるCTシステムの方法のフローチャートである。
 
【
図3A】本開示の一実施例によるCTシステムにおける各走査段に用いられる間引視角走査方式の概念図である。
 
【
図3B】本開示の一実施例によるCTシステムにおける各走査段に用いられる間引視角走査方式の概念図である。
 
【
図3C】本開示の一実施例によるCTシステムにおける各走査段に用いられる間引視角走査方式の概念図である。
 
【
図4A】本開示の一実施例によるCTシステムにおける各走査段に用いられる有限角度走査方式の概念図である。
 
【
図4B】本開示の一実施例によるCTシステムにおける各走査段に用いられる有限角度走査方式の概念図である。
 
【
図4C】本開示の一実施例によるCTシステムにおける各走査段に用いられる有限角度走査方式の概念図である。
 
 
【発明を実施するための形態】
【0023】
  図面には、実施例の全ての部品又は構造が示されていない。全ての図面にわたって同じ符号によって同じ又は類似の部品又は特徴を示している。
 
【0024】
  以下、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。なお、ここで説明した実施例は、例として説明するためのものであり、本発明は、これに限らないと理解すべきである。以下の説明において、本発明に対する透徹した理解をさせるため、大量の特定の細部を描写した。しかし、必ずこれらの特定の細部を採用して本発明を実現することではないことが当業者にとって明らかになっている。その他の実例においては、本発明との混同を避けるために、周知の回路、材料または方法に対する具体的な説明を省略した。
 
【0025】
  本明細書の全体において、言及した「一実施例」、「実施例」、「一示例」または「示例」は、該実施例または示例に結合して描写した特定の特徴、構造または特性が、本発明の少なくとも一実施例に含まれていることを意味する。従って、明細書全体の各箇所に現れた短文「一実施例において」、「実施例において」、「一示例」または「示例」は、必ず同一の実施例または示例を指したものではない。また、何らかの適宜な組み合わせ及び/またはサブ組み合わせによって、特定の特徴、構造または特性を一つまたは複数の実施例または示例に組み合わせることができる。また、当業者は、ここの図面が説明するためのものであり、比例に従って描かれるものではないことを理解すべきである。そして、素子が別の素子に「結合する」又は「接続する」とが、直接に結合し、又は別の素子に別の素子に結合し、又は中間素子があることを理解すべきである。逆に、素子が別の素子に「直接に結合する」又は「直接に接続する」とは、中間素子が存在しないことである。同じ符号は、同じ素子を示す。ここの「及び/又は」という用語が一つ又は複数の関連するアイテムの任意及び全ての組合を含む。
 
【0026】
  従来技術における課題に対して、本開示の実施例は、マルチX線源静止CTシステムを提出している。被検体を伝送機構に搭載して直線に動く過程において、第1の走査段は、前記被検体を走査し、第1のデジタル信号を発生させる。そして、前記第1のデジタル信号に基づいて、前記被検体の第1の画質のCT画像を再構成し、前記CT画像を分析する。次に、分析結果に応じて、前記被検体の動き方向に沿って前記第1の走査段と予め定められた距離をおいて設けられる第2の走査段の走査パラメーターを調節して、前記第2の走査段から第2のデジタル信号を出力させる。その後、少なくとも前記第2のデジタル信号に基づいて、前記被検体の第2の画質のCT画像を再構成する。前記第2の画質は、第1の画質より高い。このような技術案では、分散型X線源によって高速のスリップリングの使用を避け、速度を向上させるとともに、機器製造及びメンテナンスのコストを低減することができる。そして、マルチ走査平面、自己適応走査パラメーターの走査方式は、伝統的なスリップリングCTに行われる高精度の二回走査を一回走査過程に効果的に整合することができ、より良好なイメージング品質を取得し、識別の正確度を向上させるとともに、時間を節約し、人力を節約することができる。本願は、セキュリティチェックCTの走査速度を向上し、禁制品識別の正確度を向上させることに対して積極的な役割を有しており、駅、空港、税関に対して実際な適応意義を持っている。
 
【0027】
  図1は、本開示の実施例によるCTシステムの構造概念図である。
図1に示すように、実施例のマルチソース静止CT荷物物品セキュリティチェックシステムは、複数の走査段(例えば、第1の走査段A、第2の走査段B、第3の走査段C、……)、伝送機構110、制御装置140及び処理装置130を含む。各走査段は、被検体の動き方向に沿って予め定められた距離をおいて設けられ、いずれも放射線源、検出器及び採集装置を含む。ここの放射線源は具体的に複数の分散型X線源点を含む。
 
【0028】
  図面に示す実施例において、伝送機構110は被検体120を搭載して直線に動いている。第1の走査段Aは、第1の放射線源、第1の検出器及び第1のデータ採集装置を含み、前記被検体を走査し、第1のデジタル信号を発生させる。第2の走査段Bは、前記被検体の動き方向に沿って前記第1の走査段と予め定められた距離をおいて設けられ、第2の放射線源、第2の検出器及び第2のデータ採集装置を含む。処理装置130は各走査段に接続され、前記第1のデジタル信号に基づいて、前記被検体の第1の画質のCT画像を再構成し、前記CT画像を分析する。制御装置140は、各走査段及び処理装置130に接続され、前記処理装置130の分析結果に応じて、前記第2の走査段の走査パラメーターを調節して、前記第2の走査段から第2のデジタル信号を出力させ、前記処理装置130は、少なくとも前記第2のデジタル信号(例えば、第2のデジタル信号、又は、第2のデジタル信号及び第1のデジタル信号)に基づいて、前記被検体の第2の画質のCT画像を再構成する。前記第2の画質は、第1の画質より高い。
 
【0029】
  いくつかの実施例によれば、第2の走査段が当該物体の対応する部分を走査した際に、前記処理装置の分析結果に応じて、前記第2の走査段の走査パラメーターを調節して、前記第2の走査段から前記第2のデジタル信号を出力させる。例えば、目標荷物が100個のスライス(断層)を再構成する必要がある場合、第1の走査段が第8番目のスライスを走査した後に、例えば、コンピューターなどの処理装置は、当該スライスを再構成し、当該スライスを分析し、第2番目及びその以降の走査段が物体の当該スライスを走査するために必要な走査パラメーターを推定する。物体の第8番目のスライスが第2番目の走査段を通過する際に、第2の走査段は、直前の分析結果に応じてパラメーターを調節して、走査を行う。物体の異なるスライスが第2の走査段を通過する際に、走査パラメーターは相応的に調節される。
 
【0030】
  類似的には、第3の走査段Cは、第3の放射線源、第3の検出器及び第3のデータ採集装置を含み、前記制御装置140は、前記第1の解像度のCT画像に応じて、前記第3の走査段の走査パラメーターを調節して、前記第3の走査段から第3のデジタル信号を出力させ、前記処理装置は、少なくとも前記第3のデジタル信号(例えば、第3のデジタル信号、又は、第3のデジタル信号、第1のデジタル信号及び第2のデジタル信号の少なくとも1つ)に基づいて、前記被検体の第3の画質のCT画像を再構成する。前記第3の画質は、第1の画質より高い。類似的には、第3の走査段が当該物体の対応する部分を走査した際に、処理装置の分析結果に応じて、第3の走査段の走査パラメーターを調節して、第3の走査段から前記第3のデジタル信号を出力させる。
 
【0031】
  例えば、各多点分散型X光源モジュールに、1つ又は複数の源点があり、源点のエネルギーは設定可能であり、源点のアクティブ順序は設定可能である。システムにおいて、源点は、複数の走査平面(走査平面は通路の前進方向に垂直する)に配置される。各平面において、源点の分布は、連続又は非連続の一段又は複数段の直線又は円弧線であってもよい。源点のエネルギーが設定可能であるため、ビームの出射過程において、異なる源点が異なるパワースペクトルを有し、あるいは、異なる平面にある源点のエネルギーが異なるという複数種の走査方式を実現することができる。源点をグループに分けて設計することができ、例えば、各モジュールの源点を1つのグループとしてもよく、各平面の源点を1つのグループとしてもよい。同じグループ内の源点の電子がターゲットへ当たる順序が調節可能であり、順次ビーム出射、切替ビーム出射を実現でき、異なるグループ内の源点は、同時にアクティブになって走査を行い、走査速度を速くすることができる。
 
【0032】
  各走査段は、完全なアレイX線検出器、読出回路、採集トリガ信号回路及びデータ伝送回路を含む。光源が複数の平面に配置されるため、各平面に対して対応する検出器アレイがある。検出器アレイは、円形又は円弧形状に配列され、検出器の中心列が位置する平面は、光源と同じ平面であってもよく(源点が円周のある区間に集中に配置する場合、円周の残り区間に検出器を配置することができる)、光源が位置する平面と平行してもよい(源点が円周に分散配置する場合、円周に残り区間がない)。光源と源点とが異なる平面にあることによる斜光効果を軽減するために、光源と検出器との前記2つの平面間の距離をできるだけ小さくすべきである。検出器アレイは、単列であってもよく、多列であってもよい。検出器の類型は、シングルエナジー、デュアルエナジー又はパワースペクトル型の検出器であることができる。
 
【0033】
  伝送機構110は、ステージ又は伝送ベルトを含み、制御装置140は、X線装置及び検出器のフレームを制御し、分散型光源のビーム出射方式及び物体の直線平行移動、又は両者の組合を制御することによって、螺旋走査軌跡又は円周走査軌跡又は他の特殊な軌跡の走査を実現することができる。
 
【0034】
  制御装置140は、CTシステムの運行過程における制御を完成し、機械回転、電気的な制御、セキュリティ連動制御を含み、特に、光源のビーム出射エネルギー及びビーム出射順序を制御し、検出器のデータ読出し及びデータ再構成を制御する。
 
【0035】
  図2は、本開示の実施例によるCTシステムの方法のフローチャートを示す。
図2に示すように、ステップS210において、被検体の動く過程において、第1の走査段によって被検体を走査し、第1のデジタル信号を発生させる。例えば、荷物などの被検査対象120は、伝送機構110によって機器に入る際に、機器の第1番目の平面Aの光源及び検出器によって荷物を走査し、走査データを処理装置130に入力して相応的なCT再構成を行う。そして、システムは、当該荷物の走査領域が第1番目の平面を経過する時刻及び位置を記録し、ベルト速度及びコードに基づいて、当該断層が以降の平面を経過する時刻を求めることができる。
 
【0036】
  ステップS220において、前記第1のデジタル信号に基づいて、前記被検体の第1の画質のCT画像を再構成し、前記CT画像を分析する。
 
【0037】
  例えば、処理装置130は、CTの再構成結果に基づいて、高密度の材料が多いか否か(例えば、金属)、パーツ(細小物品)が多いか否か、不審物体があるか否かという荷物の走査領域の全体特性を判断する。
 
【0038】
  ステップS230において、前記処理装置の分析結果に応じて、前記第2の走査段の走査パラメーターを調節して、前記第2の走査段から第2のデジタル信号を出力させる。
 
【0039】
  制御装置140は、分析結果に基づいて、以降の平面の走査パラメーターを予め設定する(光源電圧、電流、アクティブの光源数など)。例えば、より高い透過性によって金属物体及びその付近領域をよく視認しようとする場合、以降の平面の源点について、より高い電圧によって放射線のエネルギーを向上させるようにする一方、より多い細小の物体をよく視認しようとする場合、以降の平面の源点について、より多い光源数によって空間解像度等を向上させるようにする。各源点のビーム強さは、源点の平面に予め設けられるアクティブ光源数に応じて調整されて、所定時間内に走査を完成するようにすることもできる。例えば、源点数が多い場合、ビーム強さを向上させて源点のビーム出射時間を短縮することができ、アクティブ源点数が少ない場合、大きいビーム強さによって走査データのSN比を向上させ、再構成画像のノイズレベルを改善することができる。
 
【0040】
  ステップS240において、少なくとも前記第2のデジタル信号に基づいて、前記被検体の第2の画質のCT画像を再構成する。前記第2の画質は、第1の画質より高い。
 
【0041】
  例えば、被検査対象120の対応する領域が以降の走査平面を通過する際に、制御装置140は、走査平面が当該領域に対して予め設けられる走査パラメーターに従って走査するように制御し、走査データを取得する。
 
【0042】
  いくつかの実施例において、第2の走査段が当該物体の対応する部分を走査した際に、処理装置の分析結果に応じて、第2の走査段の走査パラメーターを調節して、第2の走査段から当該第2のデジタル信号を出力させる。
 
【0043】
  このように、被検査対象120の対応する領域が全ての走査平面を通過した後に、システムは、全ての走査データを統括し、シングルエナジー又はパワースペクトルCT再構成アルグリズムによって、物体を再構成し、最終的な三次元のCT再構成の結果を取得し、禁制品に対して識別、警報を行う。
 
【0044】
  いくつかの実施例において、分散型光源及び検出器は、3つの間隔的なリンングに配置され、
図1に示すように、A平面は第1の走査平面であり、B、C平面は、第2の、第3の走査平面である。各平面における源は、
図3A、
図3B、
図3Cに示すように、間引きに配置されてもよく、
図4A、
図4B及び
図4Cに示すように、有限角度内に密集に配置されてもよい。
 
【0045】
  上記実施例の技術案は、マルチソースX線発生装置によって、異なる角度から荷物物品を照射し、伝統的な荷物CTシステムにおける回転装置を省略し、システムのコストを低減し、検出精度を向上させる。多平面の走査方式は、走査速度をさらに向上させる。分散型光源が柔軟性を有する特徴によって、前処理の結果に応じて光源のエネルギーを調節して、マルチエナジースペクトル放射線検査技術を組み合わせて、例えば、燃えやすい物及び爆発物、麻薬等の危険な不審物品に対して良好な識別効果を有しており、異なる状況におけるセキュリティチェックの需要を適応することができる。
 
【0046】
  当該実施案は、分散型光源の特徴を十分に適応し、新たな制御方式を発見した。光源を複数の走査平面に分散配置することによって、物体の特徴に基づいて光源のパワースペクトル、ビーム強さ及び数量を調節することを可能にする。物体が第1番目の平面を経過する際に、間引き角度再構成又は有限角度再構成方法によって予め再構成する結果を取得することができる。これにより、相応的な分析結論、指標に基づいてその後の2つの平面光源のパワースペクトル、ビーム強さ及び数目を変えることができる。したがって、最適な再構成結果を取得できるとともに、異なるエネルギーにおける再構成結果を取得し、物質の識別を実現することができる。
 
【0047】
  いくつかの実施例において、光源及び検出器が複数の位置に配置される場合、異なる平面におけるデータの同期課題を解決する必要がある。ベルトコードの方式によってX光源のビーム出射を触発し、異なる平面の検出器が物体の同一平面のデータを採集することを保証することができる。いくつかの検出器の平面間の固定位置に基づいて、物体がこれらの平面を経過する際の時間差を確定し、相応的なデータを抽出することもできる。
 
【0048】
  そして、いくつかの実施例において、異なるエネルギーの異なる視角のデータを結合して再構成するために、まず、伝統的なシングルエナジーCT再構成アルグリズムによって全ての角度のデータを再構成し、この結果は正確な幾何構造を有し、当該幾何情報を事前知識として、走査データを源点のビーム出射エネルギーに応じてグループに分けて再構成し、異なるX線エネルギーの再構成結果を取得する。
 
【0049】
  以上、詳細な記載は、ブロック図、フローチャット及び/または例を使用することによって、CTシステム及びその方法に係る数多くの実施例を説明した。このようなブロック図、フローチャット及び/または例が、機能及び/または操作が一つまたは複数含まれた場合には、当業者は、このようなブロック図、フローチャットまたは例における各機能及び/または操作が、各種のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたは実質的なこれらの任意の組み合わせで、個別及び/または共同で実現できると理解すべきである。一つの実施例において、本発明の実施例の前記主題のいつかの部品は、専用集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、またはその他の集積フォーマットで実現できる。しかしながら、当業者は、ここで開示された実施例の一部が、全体または部分的に集積回路で同じく実現することができる。例えば、一台または複数台のコンピュータ上で実行する一つまたは複数のコンピュータプログラム(例えば、一台または複数台のコンピュータシステム上で実行する一つまたは複数のプログラム)によって実現させても良いし、一つまたは複数のプロセッサ上で実行する一つまたは複数のプログラム(例えば、一つまたは複数のマイクロプロセッサ上で実行する一つまたは複数のプログラム)によって実現させても良いし、ファームウェアまたは実質的に上記形態の任意組み合わせによって実現させても良いと理解すべきである。また、当業者は、本開示を元に、回路の設計及び/またはソフトウェアの書き込み及び/またはファームウェアのコーディングの能力を備える。また、当業者には理解されるように、本開示の前記主題のメカニズムは、複数の形態のプログラム製品として配分できると共に、実際に配分の信号載置媒体の具体的な類型が何かであろうか、本開示の前記主題の例示の実施例は何れも適用できる。信号載置媒体の例示は、例えば、ソフトディスク、ハートディスクドライブ、コンパクトディスク(CD)、デジタル汎用ディスク(DVD)、デジタルテープ、コンピュータメモリ等の記録可能な記録型媒体、及び例えば、デジタル及び/またはアナログ通信媒体(例えば、光ファイバ、導波管、有線通信リング、無線通信リングなど)の搬送型媒体を含むが、それらに限らない。
 
【0050】
  以上、本発明の典型的な実施例に基づいて本発明を説明したが、当業者は、使用された用語が、説明するための例であって、本発明を限定する用語ではないと理解すべきである。また、本発明は、精神及び主旨を逸脱しない限り、種々の形態で具体的に実施できるので、上記の実施例は、前述の詳細に限らず、特許請求の範囲によって限定されるものとして、広く解釈できると理解すべきである。特許請求の範囲または等価の範囲内での全ての変化や改良は、特許請求の範囲内に含まれていることを理解すべきである。
 
 
【符号の説明】
【0051】
110  伝送機構
120  被検体
130  処理装置
140  制御装置