特許第6305554号(P6305554)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305554
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】電気化学ガスセンサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20180326BHJP
【FI】
   G01N27/416 311G
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-553343(P2016-553343)
(86)(22)【出願日】2015年2月11日
(65)【公表番号】特表2017-509874(P2017-509874A)
(43)【公表日】2017年4月6日
(86)【国際出願番号】EP2015000292
(87)【国際公開番号】WO2015124276
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2016年10月18日
(31)【優先権主張番号】102014002500.4
(32)【優先日】2014年2月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503432043
【氏名又は名称】ドレーガー セイフティー アクチエンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト アウフ アクチエン
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100165940
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 令子
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ザブリナ ゾマー
(72)【発明者】
【氏名】フランク メット
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−288974(JP,A)
【文献】 特開2005−083956(JP,A)
【文献】 特表2012−510612(JP,A)
【文献】 特開昭61−062855(JP,A)
【文献】 特開2008−258057(JP,A)
【文献】 特開2000−153130(JP,A)
【文献】 特表2012−510613(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102010021975(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(11)と、複数の電極(31、32)、すなわち少なくとも1つの作用電極(31)及び少なくとも1つの対向電極(32)と、液体の電解質(60)と、を備えた電気化学ガスセンサ(10)であって、
複数の前記電極(31、32)のうちの少なくとも1つの電極及び/又は前記ハウジング(11)は、少なくとも部分的に吸収剤組成物から構成されており、
前記吸収剤組成物は、炭酸塩化合物、アルカリ炭酸塩化合物、アルカリ土類金属炭酸塩化合物又はBaCOを吸収剤として含有しており
前記吸収剤組成物は、前記対向電極(32)における反応の際に発生する反応生成物を吸収する、
電気化学ガスセンサ(10)。
【請求項2】
前記対向電極(32)は、前記吸収剤組成物から構成されている、
請求項1に記載の電気化学ガスセンサ(10)
【請求項3】
前記ハウジング(11)は、ガス出口を構成する凹部(24)を有しており、
前記吸収剤組成物は、完全に又は部分的に前記凹部(24)内に配置されている、
請求項1又は2に記載の電気化学ガスセンサ(10)
【請求項4】
前記吸収剤組成物は、少なくとも1つの吸収剤と、少なくとも1つの担体材料と、少なくとも1つの添加物と、を有する、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の電気化学ガスセンサ(10)
【請求項5】
前記吸収剤組成物は、添加物としてカーボンナノチューブを有する、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の電気化学ガスセンサ(10)
【請求項6】
前記吸収剤組成物は、前記電解質において難溶性又は不溶性である吸収剤を含有している、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の電気化学ガスセンサ(10)
【請求項7】
前記吸収剤組成物は、担体材料として、ファイバ状の材料、マイクロファイバ状の材料、グラスファイバ、マイクロファイバ、ナノファイバ、ポリママイクロファイバ及び/又はポリマナノファイバを含んでいる、
請求項1から6までのいずれか1項に記載の電気化学ガスセンサ(10)
【請求項8】
前記吸収剤組成物は、添加物としてテフロン(登録商標)材料を有している、
請求項1から7までのいずれか1項に記載の電気化学ガスセンサ(10)
【請求項9】
前記電解質は、有機溶媒及び支持塩を含有する組成物である、又は、キノイド系を含有する有機溶媒と、有機カチオンを有する支持塩と、を含有する組成物である、
請求項1から8までのいずれか1項に記載の電気化学ガスセンサ(10)
【請求項10】
前記対向電極(32)と前記作用電極(31)との間に、少なくとも1つの分離層(50)が配置されている、又は、親水性の分離層(50)及び/又は電解質がしみ込んだ分離層(50)が配置されている、
請求項1から9までのいずれか1項に記載の電気化学ガスセンサ(10)
【請求項11】
前記電気化学ガスセンサ(10)は、保護電極(34)及び/又は基準電極(33)をさらに有する、
請求項1から10までのいずれか1項に記載の電気化学ガスセンサ(10)
【請求項12】
酸性ガス、及び/又は、酸性ガスを含有するガス混合物を検出するために、又は、HF、HCl及び/又は酢酸を検出するために、請求項1から11までのいずれか1項に記載された電気化学ガスセンサ(10)を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載した電気化学ガスセンサ、特に酸性ガス及び/又は酸性ガスを有するガス混合物を検出するのに使用可能な電気化学ガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学ガスセンサは一般的に公知である。電気化学ガスセンサは一般的に複数の電極を有しており、これらの電極は、電解質液に導電的に接触接続しており、かつこれによってガルバニックな素子(以下では電気化学的な測定セルとも称される)を構成している。据置型に使用されるセンサも、携帯型の装置に使用されるセンサも共に存在する。
【0003】
これらのようなセンサの技術的な使用分野は、例えば、冷却装置の監視についての化学産業から農場にまで広がっている。ここではこれらのセンサは特に、発火性のガス及び/又は有毒ガスのクリティカルな濃度を適時に識別して、対応する危険の前に警告するために使用される。化学産業の多くの分野では、この関連において(半導体産業と同様に)、特に、作業域の安全性を保証するため、いわゆる酸性ガスを検出することに大きな関心が寄せられている。本発明において酸性ガスとは一般的に、水に溶解した際に(弱い)酸を形成するガス、例えばHF及びHClなどのハロゲン水素、硫化水素を形成するガス、又は酢酸を形成するガスのことでもあると理解することができる。
【0004】
この関連において英国特許第2129562号明細書には、フッ化水素(HF)を電気化学的に検出することが開示されている。そこに提案されているセンサのカソードもアノードも共に白金線である。電解質としては臭化カルシウム及び臭素酸カルシウムからなる混合物が使用される。しかしながらこの検出方法は、特に流れ及び温度に依存する。
【0005】
択一的な解決手段は、国際公開第2002/031485号から公知である。ここでは電気化学的に活性な金属酸化物粉末からなる測定電極が提案されている。しかしながらこのような金属酸化物粉末は、別の複数のガスに対して高い交差感度を有することがあり、これによって目標ガスのわずかな濃度をつねに確実に検出できるとは限らないのである。
【0006】
国際公開第1999/001758号にも、特に塩化水素を検出するために使用される電気化学センサが開示されている。このセンサにおいて作用電極は、金からなる電気化学的に活性な表面を有する。しかしながらこの表面は時間と共に溶解し、深刻な場合にはセンサの故障に結び付き得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらを起点として本発明が課題とするのは、従来技術の上記及び別の複数の欠点を克服して、改善された電気化学ガスセンサを提供することである。特に、持続的な負荷において、可能な限りに高い測定感度及び可能な限りに良好な信号安定性を有するガスセンサを提供したい。さらにこのガスセンサを可能限りにコスト的に有利かつ簡単に製造できるようにしたい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により、解決手段として、請求項1に記載した特徴的構成を有する電気化学ガスセンサと、請求項15に記載した、このようなガスセンサの使用方法が提供される。別の複数の実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0009】
特に本発明では、ハウジングと、複数の電極、すなわち少なくとも1つの作用電極及び少なくとも1つの対向電極と、液体の電解質と、を備えた電気化学ガスセンサが提供され、複数の電極のうちの少なくとも1つ及び/又はハウジングは、少なくとも部分的には吸収剤組成物から構成されている。
【0010】
本発明の関連においてハウジングとは一般的に、ガスセンサを外部に対して囲うこのガスセンサの部分のことである。このハウジングは一般的に、外側が周囲空気と接触しており、かつ、内側が電解質及び電極用の収容部を構成している。
【0011】
吸収剤組成物とは、少なくとも1つの吸収剤を有する組成物のことであると理解され、ここでこの吸収剤は、この吸収剤と、対向電極に発生する少なくとも1つの反応生成物とが反応できるように形成されている。したがって本発明において吸収剤組成物は、最も簡単なケースでは1つの吸収剤だけから構成することが可能である。しかしながら吸収剤組成物は有利には、吸収剤の他に、以下で詳しく説明する別の成分を含有する。
【0012】
上記のような電気化学センサにおいて、分析すべきガスは基本的にまず作用電極において拡散する。このガスはここで還元される。この際に発生する反応生成物は、イオンとして対向電極に移動し、この対向電極において再度酸化される(逆反応)。
【0013】
したがって上記のハウジングにおいて、分析すべきガスは、拡散路を辿り、まず周囲空気からこの拡散路を進行するうちに電解質に達する。この拡散路の端部において、対向電極で形成された反応生成物が、ハウジングから再度流れ出す。最も簡単なケースにおいてハウジングは、周囲とのガス交換のための少なくとも1つの開口部と、複数の電極が配置されかつ電解質が充填された反応室とを有する。この場合に分析すべきガスの拡散路は、例えば上記の開口部を通って反応室内に通じている。反応室において、電解質に溶融した分析すべきガスは、正反応が行われる作用電極へと流れる。同時に対向電極では、逆反応中に形成されかつ同様に電解質に溶融したガスが、拡散して開口部に戻り、そこからセンサを出る。ハウジングがガス入口とガス出口とを有することも考えられ、この際には拡散路が、ガス入口から作用電極に通じており、また対向電極からガス出口に通じている。
【0014】
吸収剤を設ける場合には、逆反応の際に形成されるガスを吸収することができる。これによって、このガスが対向電極に集まることも、このガスが周囲に放出されることも共に阻止することができる。
【0015】
上記の吸収剤組成物は特に、対向電極における反応の際に発生する反応生成物を吸収することができる。これにより、例えば、この吸収が行われなければ、対向電極における反応生成物の濃縮によって発生してしまい得る信号の急峻な変化を阻止することができる。ここでは、対向電極において発生した反応生成物が、上で説明した拡散路に沿ってガスセンサ内で移動する場合に、この反応生成物と吸収剤組成物とが接触するように、吸収剤組成物がガスセンサに配置されている。
【0016】
例えば、複数の電極のうちの1つを吸収剤組成物から構成することが考えられる。複数の電極のうちの1つが、1つ以上の吸収剤組成物から構成される1つ以上の部分を有することも考えられる。言い換えると、複数の電極のうちの少なくとも1つが吸収剤組成物を有することが考えられる。
【0017】
特に好適であるのは、吸収剤組成物が、対向電極に接して、又は対向電極内に配置されることである。この際には、例えば、対向電極を吸収剤組成物から構成することが考えられる。これにより、対向電極で発生する反応生成物をこの対向電極において直接捉えることができる。
【0018】
例えば、作用電極における正反応においてまずフッ化物が発生し、このフッ化物が対向電極において反応してHFになることが考えられる。しかしながらガスセンサからのHFの放出は一般的に望ましくない。それはHFが極めて有毒で腐食性を有するからである。さらに放出されたHFがセンサに集まると、このHFは、上で説明したセンサドリフトに結び付き得る。したがって対向電極において形成されるHFと、対向電極の吸収剤組成物に含有される吸収剤とが反応できると有利である。例えば、この反応において上記のHFを、沈殿する固体に変化させることが考えられる。
【0019】
ハウジングの少なくとも一部分を吸収剤組成物から構成することも考えられる。この際に有利には、電解質と接触する吸収剤組成物からハウジングの一部分を構成する。これにより、例えば対向電極において形成されるHFを、又は別の反応生成物も、ガスセンサの周囲に放出される前に電解質から取り出すことができる。したがって例えば、ハウジングが、ガス出口を構成する凹部であって、上記の吸収剤組成物の全体又はその一部分が配置される凹部を有すると好適である。
【0020】
例えば吸収剤組成物を、栓の形態でガス出口に配置することが可能である。この際に吸収剤組成物はフィルタを構成することができ、ガスセンサから流れ出るガスがこのフィルタを必ず通って流れるようにする。吸収剤組成物に含有される吸収剤は、反応生成物と反応し得るため、周囲への放出を効果的に阻止することができる。上記の吸収剤組成物は同時に、電解質が充填されている反応室の外側の囲いを構成することが可能である。
【0021】
複数の電極のうちの1つ又は複数を吸収剤組成物から構成するか、又はハウジングの一部、例えばガス出口を吸収剤組成物から構成することが考えられる。複数の電極のうちの少なくとも1つも、ハウジングの一部も共に吸収剤組成物から構成することも考えられる。さらに、複数の電極のうち1つ又は複数を第1吸収剤組成物から構成するのに対し、ハウジングの一部分を第2吸収剤組成物から構成することが考えられる。
【0022】
吸収剤組成物が、少なくとも1つの吸収剤、少なくとも1つの担体材料及び少なくとも1つの添加物を有すると好適である。上記の吸収剤は有利には、対向電極において発生する少なくとも1つの反応生成物と反応し得る材料又は材料混合物である。それぞれの具体的な組成の選択は、第1には対向電極においてどの反応生成物が予想されるかに依存し、第2にはこの吸収剤組成物を、電極材料として及び/又は例えばガス出口におけるフィルタのようなハウジングの構成部分として使用するか否かに依存し得る。いずれの場合も吸収剤組成物は、吸収剤、担体材料及び添加物からなる材料複合物であってよい。
【0023】
電極材料として吸収剤組成物を使用する場合、この吸収剤組成物は有利には、以下でアクティブ電極材料と称する材料も、以下でパッシブ電極材料と称する材料も共に含有する。ここでアクティブ電極材料とは、電気化学的に活性に作用しかつ各電極で発生する、ガスセンサの電気化学反応に関与する材料のことと理解される。この関連においてパッシブ電極材料とは、本来の意味での電気化学反応に関与しない材料のことであると理解される。本来の意味での電気化学反応とは、分析すべきガスと作用電極との間の反応、ないしは対向電極における逆反応のことと理解される。例えば、吸収剤組成物の添加物は、アクティブ電極材料であってよい。例えばアクティブ電極材料を炭素から構成することが考えられる。しかしながら当然、別の材料、例えば金属、有利には例えば白金、イリジウム又は金のような貴金属をアクティブ電極材料として使用することも可能である。有利な実施形態において、吸収剤組成物は、添加物としてカーボンナノチューブを有する。カーボンナノチューブは、アクティブ電極材料として使用され、かつ、電極の導電性及び反応性を確保する。
【0024】
上記の担体材料及び/又は吸収剤は、パッシブ電極材料であってよい。
【0025】
特に吸収剤組成物を電極材料として使用する場合、さらに好適であるのは、この吸収剤組成物が、電解質において難溶性又は不溶性の吸収剤を含有している場合である。好適であるのは、電解質において吸収剤が難溶性であるか又は特に好適には不溶性である場合である。これにより、吸収剤組成物が、したがって電極材料が次第に溶融してしまうことを阻止することができる。これに対し、発生する反応生成物に対しては、溶解度を最小にすべきであり、これによってこの反応生成物が、完全に不溶性ではなく、有利には容易に溶解しないようにする。これにより、電極表面は、反応生成物の溶解によってわずかな量ではあるが連続して再生することが可能である。この際に緩慢ではあるが連続した吸収材料のこの溶融は、十分に緩慢かつ長い期間にわたって行われるため、ガスセンサの全体寿命に対して電極材料の消費が決定的要因にならず理想である。同時に緩慢ではあるが連続した表面再生により、反応生成物による電極表面へのダメージを阻止することができる。
【0026】
さらに、吸収剤組成物が、炭酸塩化合物、有利にはアルカリ炭酸塩化合物又はアルカリ土類金属炭酸塩化合物、特に有利にはBaCOを吸収剤として含有すると有利である。これは特に、検出すべきガスが、上で定めたような酸性ガスである場合には有利である。例えば、対向電極において形成されるHFは、以下の反応式に対応してBaCOと反応してBaF及びHCOになり得る。この際に、形成されるBaFは固体として沈殿する。すなわち、
2HF+BaCO→BaF↓+HCO
である。
【0027】
この際に沈殿したBaFは確かに対向電極に又は対向電極内に付着するが、その際に対向電極を汚染することはない(すなわち電極の表面にダメージを与え、ひいては別の複数の反応に対してこの表面を密閉することはない)。
【0028】
吸収剤組成物が、担体材料として、ファイバ状の材料、有利にはマイクロファイバ状の材料、特に有利にはグラスファイバ、マイクロファイバ及び/又はナノファイバ、有利にはポリママイクロファイバ及び/又はポリマナノファイバを含むことも有利である。この担体材料上には、吸収剤組成物に含有されている吸収剤を被着することができる。例えば担体材料を吸収剤でコーティングすることが考えられる。しかしながら特に有利であるのは、吸収剤組成物が、粉砕した担体材料及び粉末状の吸収剤ならびに添加物からなる混合物の場合である。この混合物を、例えば、はじめに果肉のようなペースト状の塊として作製し、つぎに所望の形状(例えば電極、フィルタ又はガス出口用の栓として)にすることが可能である。担体材料によって保証されるのは、吸収剤及び各添加物からなる混合物が、一方では有効な複合物を構成することができ、他方では所望の形状にするため、十分に成形できるようになることである。第1実施形態において担体材料はグラスファイバ材料であってよい。担体材料が、ナノファイバもしくはマイクロファイバ、又は、ポリマもしくはポリマ混合物製のナノファイバ及びマイクロファイバからなる複合物であることも考えられ、例えば、電界紡糸又は融解紡糸したナノファイバ、ナノファイバフリース、マイクロファイバもしくはマイクロファイバフリースであることが考えられ、又はナノファイバ及びマイクロファイバからなる粉砕された複合物フリースであることも考えられる。
【0029】
これに対して吸収剤組成物をハウジングの領域の材料だけとして使用しようとする場合、吸収剤組成物が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はPTFE誘導体を添加物として有すると有利になり得る。この添加物は、吸収剤組成物を通したガスの拡散を容易にして、これを改善することが可能である。例えば、PTFE又はPTFE誘導体をPTFEファイバとすることも考えられる。
【0030】
さらに酸性ガス、特にハロゲン水素ガスを検出するために有利であるのは、電解質が、有機溶媒及び支持塩を含有する組成物であり、有利には、キノイド系を含有する有機溶媒と、有機カチオンを有する支持塩とを含有する組成物である場合である。例えば有機溶媒を、アルキレンカーボナート、アルキレンカーボナート混合物、及び/又はブチロラクトンを含有する群から選択し、有利にはプロピレンカーボナート、エチレンカーボナート、又はプロピレンカーボナート及びエチレンカーボナートからなる混合物を含有する群から選択することができる。有機溶媒がスルホランであると特に有利である。
【0031】
上記の支持塩は、例えばイオン液体であってよい。有利にはこの支持塩のアニオンは、ハロゲン化物、カーボナート、スルホナート、ホスファート及び/又はホスホナートを含む群から選択され、有利には、アルキルスルホナート、アルケニルスルホナート、アリールスルホナート、アルキルホスファート、アルケニルホスファート、アリールホスファート、置換アルキルスルホナート、置換アルケニルスルホナート、置換アリールスルホナート、置換アルキルホスファート、置換アルケニルホスファート、置換アリールホスファート、ハロゲン化ホスファート、ハロゲン化スルホナート、ハロゲン化アルキルスルホナート、ハロゲン化アルケニルスルホナート、ハロゲン化アリールスルホナート、ハロゲン化アルキルホスファート、ハロゲン化アルケニルホスファート、ハロゲン化アリールホスファートを含む群から選択されたアニオンであり、特に有利には、フルオロホスファート、アルキルフルオロホスファート、アリールスルホナートを含む群から選択されたアニオンであり、特に極めて有利にはペルフルオロアルキルフルオロホスファート、トルエンスルホネートを含む群から、選択されたアニオンである。
【0032】
ここで有利であるのは、支持塩がカチオンとして金属イオン及びオニウムイオン、又は金属イオン及びオニウムイオンの混合物を含有する場合である。例えば金属イオンは、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンから、有利にはLi、K及び/又はNaから選択可能である。オニウムイオンが、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、グアニジニウムカチオン及び複素環式カチオンから選択され、有利にはアルキルアンモニウムカチオン及び複素環式カチオンから選択され、特に有利にはアルキルアンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン及び/又は置換イミダゾリウムイオンから選択されると好適であり、この置換イミダゾリウムイオンは有利には化学式II
【化1】
に対応する構造を有しており、ただしR1、R2、R3、R4及びR5は、−H、1〜20個のC原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキル、2〜20個のC原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルケニル、1つ以上の二重結合、2〜20個のC原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキニル、1つ以上の三重結合、1〜6個のC原子を有するアルキル基によって置換可能な、飽和、部分不飽和又は完全不飽和の3〜7個のC原子を有するシクロアルキル、飽和、部分不飽和又は完全不飽和のヘテロアリール、ヘテロアリール−C1〜C6−アルキル、又はアリール−C1〜C6−アルキルから互いに依存せずに選択することができ、特に有利にはR2、R4及びR5は、Hであり、R1及びR3はそれぞれ互いに依存しない、1〜20個のC原子を有する直鎖又は分枝鎖のアルキルである。
【0033】
例えば特に考えられるのは、支持塩として、テトラブチルアンモニウムトルエンスルホナート又は1−ヘキシル−3−メチル−イミダゾリウム−トリス(ペンタフルオロエチル)−トリフルオロホスファートを使用することである。特に有利であるのは、電解質が、溶媒、支持塩及び/又は有機媒介物、ペルフルオルアルキルフルオロホスファート−アニオンを有する、イオン液体及びアルキルアンモニウム−トルエンスルホナート、からなる混合物である場合である。
【0034】
さらに上記の有機媒介物が、酸化時にキノイド系又はナフタレン系を形成するポリヒドロキシ化合物であると有利である。例えば上記の有機媒介物を、オルト−ジヒドロキシベンゼン、パラ−ジヒドロキシベンゼン、置換オルト−ジヒドロキシベンゼン、及び置換パラ−ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタリン、置換ジヒドロキシナフタリン、アントラヒドロキノン、置換アントラヒドロキノン、有利には1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,4ジヒドロキシベンゼン、ナフトヒドロキノン、置換1,2−ジヒドロキシベンゼン又は1,4ジヒドロキシベンゼン、置換ヒドロキノン、置換ナフトヒドロキノン、置換アントラヒドロキノン、特に有利には置換ヒドロキノン、置換1,2−ジヒドロキシベンゼン、を含む群から選択することができる。特に有利であるのは、置換アントラキノン、置換1,2−ジヒドロキシベンゼン及び/又は置換1,4−ヒドロキノンの置換基を、スルホニル、tert−ブチル、ヒドロキシ、アルキル、アリール、有利には及び/又はtert−ブチルを含む群から選択する場合である。
【0035】
別の実施形態では、対向電極をロッド状にすることが考えられる。少なくとも部分的に吸収剤組成物からこの対向電極を構成することが可能である。さらに、作用電極が、このロッド状の対向電極をチューブ状に包囲することが考えられる。例えば作用電極を単純に対向電極の周りに巻き付けることができる。作用電極をチューブとして形成して、ロッド状の対向電極にずらすことも考えられる。この際に好適であるのは、対向電極と作用電極との間に少なくとも1つの分離層、有利には親水性の分離層及び/又は電解質をしみ込ませた分離層を配置する場合である。
【0036】
別のすべての考えられ得る実施形態においても、対向電極と作用電極との間に1つ以上の分離層を配置することが考えられる。同様にこの分離層も有利には親水性であり、及び/又はこの分離層にも電解質がしみ込んでいる。
【0037】
いずれの場合もこの分離層は、電解質タンクに液体的に接続されている。例えば、複数の電極が配置されている反応室と、液体の電解質が含まれている電解質タンクとを有するように、上記のガスセンサを形成することが可能である。これにより、分離層を用いて、電解質を電解質タンクから電極に導くことができる。分離層は、有利には反応室を越えて電解質タンクまで延在している。分離層はこれによって吸上作用を有することができ、この吸上作用によって電解質が電極に輸送される。したがって分離層は吸上作用を有し得る。言い換えると、分離層は、電解質タンクと電極との間に電解質供給部を構成できることがわかる。電解質が分離層の吸上作用によって輸送される距離を可能な限りに短く保つため、分離層に電解質チャネルを形成することが考えられる。例えば、分離層によって覆われる電極に対して平行かつこの電極の側方に電解質チャネルを形成することが考えられる。
【0038】
これらのすべての実施例において、ガスセンサがさらに保護電極を有することも考えられる。この際に特に好適であるのは、作用電極と対向電極との間にこの保護電極を配置する場合である。この保護電極は、例えば、対向電極において発生したガスが、逆に作用電極に達することがあり、そこで誤った信号を生じさせることを阻止することができる。この際に目的に適っているのは、対向電極と保護電極との間に、例えばグラスファイバフリースの形態の拡散制限分離層を配置する場合である。
【0039】
ガスセンサはさらに基準電極を有していてよい。例えば、平坦に形成した基準電極を作用電極の側方に、及び/又は、対向電極の側方に配置することができる。
【0040】
本発明によるガスセンサの考えられ得るすべての実施形態は、酸性ガス及び/又は酸性ガスを含有するガス混合物を検出するため、有利にはHF、HCl及び/又は酢酸を検出するために特に好適である。ここでは上記の吸収剤組成物を用いて、対向電極において形成されるHF及び/又はHClが放出され得ることを効果的に阻止することができる。したがって対応するガスセンサを使用することの利点は、特にこのセンサが持続的な燻蒸に対して耐性を有することである。このようなセンサは、測定信号の良好な減衰特性を示し、すなわち燻蒸の終わりにこのセンサは迅速に再びゼロ値を示す。持続的な燻蒸の際の測定信号のドリフトの発生を可能な限りに阻止することができる。さらに本発明によるこのようなガスセンサを使用することの利点は、このセンサから有毒ガス及び/又は腐食性ガスが放出されないことである。
【0041】
別の複数の特徴、詳細及び個別の事項は、以下で説明する複数の図面及び実施例から得られる。これらの実施例は単に例示的なものであり、当業者にとっては、ここに示した説明に基づけば、問題なく別の複数の変形形態及び実施例が得られることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】対向電極が吸収剤組成物からなる本発明のガスセンサの概略構造を示す図である。
図2】吸収剤組成物からなる補助電極を備えた本発明のガスセンサの概略構造を示す図である。
図3】吸収剤組成物がガスセンサのガス出口における栓を構成している本発明によるガスセンサの概略構造を示す図である。
図4】本発明によるガスセンサの別の概略構造を示す図である。
図5】吸収剤組成物からなるロッド状の対向電極に分離層及び作用電極が巻き付けられている、本発明による電極装置の概略構造を示す図である。
図6】本発明によるガスセンサの択一的な概略構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1a〜図1cには、対向電極が吸収剤組成物からなる本発明のガスセンサの概略構造が示されている。ここで図1aには、ガスセンサの概略平面図が示されており、図1bには図1aの線A−Aに沿ったガスセンサの反応室を通る断面が示されており、図1cにはガスセンサの概略側面図が示されている。
【0044】
図2a〜図2cには、吸収剤組成物からなる補助電極を備えた本発明のガスセンサの概略構造が示されている。ここで図2aには、ガスセンサの概略平面図が示されており、図2bには図2aの線A−Aに沿ったガスセンサの反応室を通る断面が示されており、図2cにはガスセンサの概略側面図が示されている。
【0045】
図3a〜図3cには、吸収剤組成物がガスセンサのガス出口における栓を構成している本発明によるガスセンサの概略構造が示されている。ここで図3aには、ガスセンサの概略平面図が示されており、図3bには図3aの線A−Aに沿ったガスセンサの反応室を通る断面が示されており、図3cにはガスセンサの概略側面図が示されている。
【0046】
図4a〜図4cには、本発明によるガスセンサの別の概略構造が示されている。ここで図4aには、ガスセンサの概略平面図が示されており、図4bには図4aの線A−Aに沿ったガスセンサの反応室を通る断面が示されており、図4cにはガスセンサの概略側面図が示されている。
【0047】
図5には、吸収剤組成物からなるロッド状の対向電極に分離層及び作用電極が巻き付けられている、本発明による電極装置の概略構造が示されている。
【0048】
図6a及び図6bには、本発明によるガスセンサの択一的な概略構造が示されている。ここで図6bには、図6aに示したセンサを90°回転させたビューが示されている。
【0049】
図1a〜図1c、図2a〜図2c、図3a〜図3c、図4a〜図4c、図6a及び図6bに示したガスセンサ10は、反応室21を取り囲むハウジング11を有する。ハウジング11には、第1凹部23及び第2凹部24が形成されている。第1凹部23はガス入口であり、このガス入口を通して、分析すべきガスが反応室21に流れ込むことができる。第2凹部24はガス出口であり、このガス出口を通して、対向電極32において発生したガスが反応室21から流れ出すことができる。反応室21には、ガスセンサ10の電極31、32、すなわち作用電極31及び対向電極32が配置されている。作用電極31と対向電極32との間には分離層50が設けられている。分離層50は、親水性である。
【0050】
さらに作用電極31と第1凹部23との間に疎水性膜41が設けられている。対向電極32と、第2凹部24との間には別の疎水性膜43が設けられている。これらの2つの疎水性膜41、43によって阻止されるのは、電解質60が反応室21から流れ出ることであり、またこれらの疎水性膜は同時に、凹部23、24とは反対側にある電極31、32をダスト及び汚れから保護する。これらのダスト又は汚れは、これらの疎水性膜がなければ、凹部23、24を通って反応室21に運び込まれてしまい得るものである。
【0051】
ガスセンサ10は、液体の電解質60が含まれている電解質タンク12をさらに有している。分離層50により、電解質タンク12と反応室21とが接続されていることがわかる。分離層50には、液体の電解質60がしみ込んでいる。これにより、反応室21は、電解質タンク12に液体的に接続されている。分離層50の側方には電解質チャネル51が形成されている。これらの電解質チャネルは、電解質タンク12と反応室21との間の液体接続をサポートするのに使用されている。
【0052】
図2a〜図2c及び図4a〜図4cに示されたガスセンサ10は、基準電極33をさらに有する。基準電極33も分離層50を介して電解質タンク12に接続されていることがわかる。図示した実施例において基準電極33が分離層50によって覆われていることもさらにわかる。しかしながら図示しない変形実施形態では、基準電極33が分離層50に埋め込まれていることも考えられる。いずれの場合であっても基準電極33は、電解質タンク12に液体的に接続されているため、電解質60は、分離層50によって電解質タンク12から基準電極33に導かれる。図2aの平面図において明らかであるのは、基準電極33が、反応室21に配置されている電極31、32、34に対して横方向に隔てられて配置されていることである。しかしながら同時にガスセンサ10のすべての電極は、電解質60によって互いに導電的に接触接続している。
【0053】
図2a〜図2c及び図4a〜図4cに例示的に示されているガスセンサ10は、すでに説明した電極31、32、33に加えて、作用電極31と対向電極32との間に配置された保護電極34を有する。電極31、32、34は、サンドイッチ状に配置されていることがわかる。作用電極31の上には分離層50が配置されている。分離層50が作用電極31を完全に覆っていることがわかる。分離層50の上には保護電極34が配置されている。保護電極34は、膜42によって覆われている。膜42は、特定の変形実施形態において拡散制限膜である。膜42の上方では分離層50の別の層が形成されている。分離層50の上には対向電極32が配置されている。電極31、32、34のこの配置において、保護電極34は、この保護電極34の面積が、作用電極31の面積よりも大きく、かつ、対向電極32の面積よりも大きくなるように形成されている。
【0054】
図4a〜図4cならびに図6a及び図6bに示した実施形態において、ハウジング11は、電解質タンク12及び電極支持体20によって構成されている。観察者側を向いたハウジング11の部分は、図4aに示したビューにおいて、特に電極支持体20の領域が透けて見えるように示されており、これによって、以下に説明するコンポーネントが電極支持体20の内部でどのように配置され得るかを示している。
【0055】
ここでも電解質タンク12に液体の電解質60が含まれている。電極支持体20は、反応室21を有する。反応室21には(図4b及び図6bにおいて識別可能な)第1凹部23を通ってガスが入り、また第2凹部24を通ってガスが出ることができる。第1凹部23は、図示の実施例において電極支持体20の下面に形成されているのに対し、第2凹部24は、電極支持体20の、反対側の上面に形成されている。択一的には第1凹部23を電極支持体20の上面に、また第2凹部24を電極支持体20の下面に形成することも考えられることは明らかである。したがって電極支持体20が少なくとも1つの第1凹部23を有することがわかる。
【0056】
反応室21はここでも、分離層50を介して電解質タンク12に接続されているため、反応室21は、分離層50を介して電解質タンク12に液体的に接続される。電解質60の供給をさらに改善するため、分離層50の側方に電解質チャネル51が形成されている。ただ1つの電解質チャネル51を形成するか又は2つ以上の電解質チャネル51を設けることも当然のことながら考えられる。
【0057】
図4bにおいて、また図4cにおいて、さらに図6bにおいても反応室21が、電極支持体20の第1壁部分25及び第2壁部分26によって区切られていることがわかる。したがって電極支持体20が反応室21を形成している。電極31、32、34は、第1壁部分25と第2壁部分26との間に配置されている。さらに、反応室21は第1及び第2凹部23、24を介して周囲空気に接続されていることがわかる。図4cにおいてさらにわかるのは、電極支持体20が、ガスセンサ10のハウジング11の一部分を構成することである。ハウジング11は、電解質タンク12の壁部と、電極支持体20の壁部とから構成される。分離層50は、これが、電解質タンク12内にある電解質60と直接接触するように、電極支持体20に配置されている。
【0058】
図6a及び図6bに示した択一的な、ガスセンサ10の実施形態においても、分離層50、特に電極支持体20から突出している、分離層50の部分52は、電解質タンク12内にある電解質60と直接接触している。ここでも電極支持体20が、ハウジング11の一部を構成していることがわかる。電極支持体20は固定部分22を有する。この固定部分22により、電極支持体20は、電解質タンク12の収容部13に固定される。電極支持体20は、反応室21が形成されている電極支持体20の部分が、ハウジング11の一部分を構成するように配置されている。電極支持体20は、この領域に内側表面及び外側表面28を有する。内側表面は、反応室21を画定する。外側表面28は、ガスセンサ10の外側のハウジング壁の一部分を構成する。
【0059】
図1a〜図1c及び図2a〜図2cに示した実施例において対向電極32はそれぞれ、吸収剤組成物70からなる。第1変形実施形態において、吸収剤組成物70は、吸収剤としてのBaCOと、担体材料としての粉砕したグラスファイバと、添加物としてのカーボンナノチューブとからなる混合物から構成される。
【0060】
図3a〜図3bに示したガスセンサ10では、ガス出口を構成する凹部24に、栓の形態の吸収剤組成物70が配置されている。ガスセンサ10から流れ出るガスは、凹部24を通り、すなわちガス出口を通り、したがって吸収剤組成物70を通って流れ出すはずである。吸収剤組成物70は、第1変形実施形態において、吸収剤としてのBaCOと、担体材料としてのグラスファイバと、添加物としてのテフロン(登録商標)ファイバとを含む組成物から構成される。第2変形実施形態において吸収剤組成物70は、吸収剤としてのCaCOと、担体材料としてのグラスファイバと、添加物としてのテフロン(登録商標)ファイバとから構成される。択一的には、吸収剤として別のアルカリ金属炭酸塩又はアルカリ土類金属炭酸塩が、吸収剤組成物70に含まれることも考えられる。
【0061】
図示しない実施形態において、ガスセンサ10は、図1a〜図1cについて説明したように構成される。この実施形態では、第1吸収剤組成物からなる対向電極32に加えてさらに、ガス出口を構成する凹部24に、栓の形態の吸収剤組成物70を配置することができる。吸収剤組成物70は、第1変形実施形態において、対向電極32を構成する第1吸収剤組成物と同じ組成を有する。この吸収剤組成物には、吸収剤としてのBaCOと、担体材料としてのグラスファイバと、添加物としてのカーボンナノチューブとが含有されている。第2変形実施形態では、吸収剤組成物70は、対向電極32を構成する吸収剤組成物とは異なる組成を有する。この変形実施形態において、対向電極32を構成する吸収剤組成物には、吸収剤としてのBaCOと、担体材料としてのグラスファイバと、添加物としてのカーボンナノチューブとが含有されている。凹部24すなわちガス出口に配置されている吸収剤組成物70には、吸収剤として、BaCO又は別の変形実施形態においては別のアルカリ金属炭酸塩又はアルカリ土類金属炭酸塩が含まれており、また担体材料としてグラスファイバと、添加物としてテフロン(登録商標)ファイバとが含有されている。
【0062】
図示しない別の実施形態において、ガスセンサ10は、図2a〜図2cに対応して構成されており、ここではガス出口を構成する凹部24に付加的に吸収剤組成物70が配置されている。吸収剤組成物70は、第1変形実施形態において、対向電極32を構成する吸収剤組成物と同じ組成を有する。この吸収剤組成物には、(図1a〜図1cに示した実施形態の変形実施形態についてすでに説明したように)吸収剤としてのBaCOと、担体材料としてのグラスファイバと、添加物としてのカーボンナノチューブとが含有されている。第2変形実施形態において吸収剤組成物70は、対向電極32を構成する吸収剤組成物とは異なる組成を有する。この変形実施形態においても、対向電極32を構成する吸収剤組成物には、吸収剤としてのBaCOと、担体材料としてのグラスファイバと、添加物としてのカーボンナノチューブとが含有されている。凹部24すなわちガス出口に配置されている吸収剤組成物70には、吸収剤として、BaCO又は別の変形実施形態では別のアルカリ金属炭酸塩又はアルカリ土類金属炭酸塩が含まれており、また担体材料としてグラスファイバと、添加物としてテフロン(登録商標)ファイバとが含まれている。
【0063】
図示しないさらに別の実施形態において、ガスセンサ10は、図3a〜図3cに対応して構成されており、ガス出口を構成する凹部24だけに吸収剤組成物70が配置されているのではなく、対向電極32も吸収剤組成物から構成される。この吸収剤組成物70は、第1変形実施形態において、対向電極32を構成する吸収剤組成物と同じ組成を有する。第2変形実施形態において、吸収剤組成物70は、対向電極32を構成する吸収剤組成物とは異なる組成を有する。各吸収剤組成物は、2つの変形実施形態において、すでに説明した組成を有していてよい。
【0064】
図4a〜図4cならびに図6a及び図6bに示した、ガスセンサ10の実施形態においても、対向電極32は、吸収剤組成物から構成される。図示しない第1変形実施形態においても付加的に、ガス出口を構成する凹部24に、栓の形態の吸収剤組成物70が配置されている。ガス出口、すなわち凹部24に配置されている吸収剤組成物70は、対向電極32を構成する吸収剤組成物と同じものである。図示しない第2変形実施形態においても、ガス出口を構成する凹部24に、栓の形態の吸収剤組成物70が付加的に配置されている。しかしながら、ガス出口、すなわち凹部24に配置されている吸収剤組成物70の組成と、対向電極32を構成する吸収剤組成物の組成とは異なっている。
【0065】
作用電極31及び対向電極32の配置構成についての特別な変形実施形態は、図5に示されている。ここでは対向電極32は、吸収剤組成物から形成されており、ロッド状の形態を有する。作用電極31は、チューブの形態で(チューブ状に)形成されており、対向電極32にはめ込まれている。作用電極31と対向電極32との間には分離層50が形成されている。択一的な実施形態では、対向電極32もチューブの形状を有する(これをチューブ状にする)ことが可能である。
【0066】
上で説明した複数の実施例と共に使用可能な電解質の組成の一例は、約60重量パーセントのプロピレンカーボナートと、約40重量パーセントのエチレンカーボナートと、約0.1モルのHMIM FAP(1−ヘキシル−3−メチル−イミダゾリウム−トリス(ペンタフルオロエチル)−トリフルオロホスファート)と、約0.5モルのtert−ブチルヒドロキノンとからなる混合物である。当然のことながらこの組成は変更可能であるため、プロピレンカーボナートと、エチレンカーボナートとの比は、60:40の重量パーセントに限定されることはない。含有されるHMIM FAP及びtert−ブチルヒドロキノンのモル量も変更可能である。
【0067】
複数の請求項、明細書及び複数の図面に記載されたすべての特徴及び利点は、種々の構成上の詳細、空間的な配置構成及び方法のステップを含めて、それ自体で、また極めて異なる複数の組み合わせにおいて、本発明の本質を構成し得るものである。
【符号の説明】
【0068】
A 線
10 ガスセンサ
11 ハウジング
12 電解質タンク
13 収容部
20 電極支持体
21 反応室
22 固定部分
23 凹部
24 凹部
25 壁部分
26 壁部分
27 表面
28 表面
31 作用電極
32 対向電極
33 基準電極
34 保護電極
41 膜
42 膜
43 膜
50 分離層
51 電解質チャネル
52 部分
60 電解質
70 吸収剤組成物
図1a
図1b
図1c
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b
図4c
図5
図6a
図6b