特許第6305576号(P6305576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6305576測定ガス空間内の測定ガスの少なくとも1つの特性を検知するためのセンサ素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6305576
(24)【登録日】2018年3月16日
(45)【発行日】2018年4月4日
(54)【発明の名称】測定ガス空間内の測定ガスの少なくとも1つの特性を検知するためのセンサ素子
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/409 20060101AFI20180326BHJP
【FI】
   G01N27/409 100
【請求項の数】15
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-573825(P2016-573825)
(86)(22)【出願日】2015年5月29日
(65)【公表番号】特表2017-518506(P2017-518506A)
(43)【公表日】2017年7月6日
(86)【国際出願番号】EP2015062005
(87)【国際公開番号】WO2015193084
(87)【国際公開日】20151223
【審査請求日】2017年2月16日
(31)【優先権主張番号】102014211782.8
(32)【優先日】2014年6月18日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェンス シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】フランク シュタングルマイアー
(72)【発明者】
【氏名】ローター ディール
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−061323(JP,A)
【文献】 特開平05−080023(JP,A)
【文献】 特開平05−052800(JP,A)
【文献】 特開昭62−198749(JP,A)
【文献】 特開2002−005878(JP,A)
【文献】 特開2007−114216(JP,A)
【文献】 特開2003−322636(JP,A)
【文献】 特表平06−504366(JP,A)
【文献】 A.Madani et al.,Ionic conductivity of 4 mol% YSZ nanomaterials and (9.5 mol% YSZ)0.98-(Al2O3)0.02 nanocomposites, Sensors and Actuators B,2005年,Vol.109,p.107-111
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/409
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定ガス空間内の測定ガスの少なくとも1つの特性を検知するためのセンサ素子(10)であって、少なくとも1つの固体電解質層(12)と、前記固体電解質層(12)の一方側に配置されて前記固体電解質層(12)と接触する第1の電極(22)と、前記固体電解質層(12)の他方側に配置された第2の電極(26)とを備えたセンサ素子(10)において、
前記第1の電極(22)は、少なくとも部分的にセラミック材料から製造されている少なくとも1つの第1の層(30)と、少なくとも部分的にセラミック材料から製造されている少なくとも1つの第2の層(32)とを備え、
前記第1の層(30)は、前記固体電解質層(12)の反対側にあり、前記第2の層(32)は、前記固体電解質層(12)の側にあり、
前記第1の層(30)のセラミック材料と前記第2の層(32)のセラミック材料とは、イットリウムでドープされた二酸化ジルコニウムを含み、
前記第1の層(30)のセラミック材料は、前記第2の層(32)のセラミック材料よりも高いイットリウムドーピング量を示し、
前記第1の層(30)のセラミック材料は、微細粒であり、前記第2の層(32)のセラミック材料は、微細粒と粗大粒との混合物であり、前記微細粒のセラミック材料は、10.0μm以下の直径、及び、10m2/g乃至50m2/gのBETによる比表面積を有するものであり、前記粗大粒のセラミック材料は、50μm以上の直径、及び、0.1m2/g乃至2.0m2/gのBETによる比表面積を有するものであり、
前記第1の層(30)は、前記第2の層(32)よりも高い気孔率を示す、
センサ素子(10)。
【請求項2】
前記イットリウムでドープされた前記二酸化ジルコニウムは、酸化イットリウムでドープされた二酸化ジルコニウムを含む、請求項1に記載のセンサ素子(10)。
【請求項3】
前記第1の層(30)のセラミック材料は、8.0mol%乃至11.5mol%の酸化イットリウムドーピング量を示し、前記第2の層(32)のセラミック材料は、3.5mol%乃至6.5mol%の酸化イットリウムドーピング量を示す、請求項1又は2に記載のセンサ素子(10)。
【請求項4】
前記第1の層(30)は、10体積%乃至40体積%の気孔率を示し、前記第2の層(32)は、0体積%乃至8体積%の気孔率を示す、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のセンサ素子(10)。
【請求項5】
前記第1の層(30)は、前記第2の層(32)よりも厚い、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のセンサ素子(10)。
【請求項6】
前記第1の層(30)の層厚の、前記第2の層(32)の層厚に対する比率は、1.25乃至50である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のセンサ素子(10)。
【請求項7】
前記第1の層(30)は、5.0μm乃至25.0μmの層厚を示し、前記第2の層(32)は、0.5μm乃至4.0μmの層厚を示す、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のセンサ素子(10)。
【請求項8】
前記第1の層(30)のセラミック材料は、更に、少なくとも1種の白金族元素の材料の割合を含み、前記第2の層(32)のセラミック材料は、更に、単一の白金族元素の材料の割合を含む、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のセンサ素子(10)。
【請求項9】
前記第1の層(30)のセラミック材料の白金族元素の材料は、少なくとも白金及びロジウムを含み、前記第2の層(32)のセラミック材料の白金族元素の材料は、白金を含む、請求項8に記載のセンサ素子(10)。
【請求項10】
前記第2の層(32)のセラミック材料の白金族元素の材料中の白金の割合は、少なくとも99.0質量%である、請求項9に記載のセンサ素子(10)。
【請求項11】
前記第2の層(32)のセラミック材料の白金族元素の材料中の白金の割合は、少なくとも99.5質量%である、請求項9に記載のセンサ素子(10)。
【請求項12】
前記第2の層(32)のセラミック材料の白金族元素の材料中の白金の割合は、少なくとも99.9質量%である、請求項9に記載のセンサ素子(10)。
【請求項13】
前記第1の層(30)のセラミック材料の白金族元素の材料中のロジウムの割合は、1.0質量%乃至5.0質量%である、請求項9乃至12のいずれか一項に記載のセンサ素子(10)。
【請求項14】
前記第1の層(30)のセラミック材料中の前記二酸化ジルコニウムの割合は、2.0質量%乃至8.0質量%であり、前記第2の層(32)のセラミック材料中の前記二酸化ジルコニウムの割合は、10.0質量%乃至18.0質量%である、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のセンサ素子(10)。
【請求項15】
前記センサ素子(10)は、前記測定ガス中のガス成分の割合又は前記測定ガスの温度を検出するためのセンサ素子(10)である、請求項1乃至14のいずれか一項に記載のセンサ素子(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
先行技術からは、測定ガス空間内の測定ガスの少なくとも1つの特性を検知するための多数のセンサ素子及び方法が公知である。その特性は、基本的に、測定ガスの任意の物理的特性及び/又は化学的特性であってよく、1つ又は複数の特性を検知することができる。本発明は、以下、特に、測定ガスのガス成分の割合の定性的検知及び/又は定量的検知に関連して、特に測定ガス中の酸素割合の検知に関連して記載される。この酸素割合は、例えば分圧の形で及び/又は百分率の形で検知されてもよい。しかしながら、これとは別に又はこれに付加的に、例えば温度のような測定ガスの他の特性も検知可能である。
【背景技術】
【0002】
例えばこの種のセンサ素子は、例えばKonrad Reif(編)「Sensoren im Kraftfahrzeug」第1版、2010年、第160−165頁から公知であるようないわゆるラムダセンサとして構成されていてよい。広帯域ラムダセンサ、特に平板型の広帯域ラムダセンサは、例えば排ガス中の酸素濃度を広範囲で測定し、それにより燃焼室内の空燃比を推量することができる。空気過剰率λは、この空燃比を表す。
【0003】
先行技術からは、特に、所定の固体の電解質特性の使用に基づく、即ち、この固体のイオン伝導特性に基づくセラミックセンサ素子が公知である。特に、これらの固体は、セラミック固体電解質、例えば二酸化ジルコニウム(ZrO2)、特にイットリウムで安定化された二酸化ジルコニウム(YSZ)、即ち、酸化イットリウムでドープされた二酸化ジルコニウム、及び、スカンジウムでドープされた二酸化ジルコニウム(ScSZ)であってよく、これらは酸化アルミニウム(Al23)及び/又は酸化ケイ素(SiO2)の少量の添加物を含んでいてよい。
【0004】
通常では、この種のセンサ素子は、少なくとも1つの電極を備える。電極は、いわゆるサーメットから製造され、即ち、金属母材中のセラミック素材からなる複合材料から製造される。従って、電極のセラミック材料は、本来のセラミック材料の他に、金属材料の割合を含む。金属材料は、通常では白金族元素、好ましくは白金である。
【0005】
独国特許出願公開第19833087号明細書(DE 198 33 087 A1)は、少なくとも1つの測定電極を備えた固体電解質を含むガスセンサを記載している。この測定電極は導電性のベース層及び別の層によって製造されていて、この場合、ベース層に隣接する別の層は、多孔質のカバー層の細孔中に電気メッキにより堆積されている。
【0006】
独国特許出願公開第10020082号明細書(DE 100 20 082 A1)は、イオン伝導性固体電解質と、このイオン伝導性固体電解質上に配置された電極とを備えた電気化学的測定センサを記載している。この電極は、少なくとも2つの層を備え、この場合、ガス空間側の第2の層は、固体電解質側の第1の層と比べてより高い電子伝導性を示す。
【0007】
国際公開第2010/072460号(WO 2010/072460 A1)は、セラミックセンサ素子用の構造化された電極を記載している。固体電解質層と電極との間に中間層が配置されている。
【0008】
ラムダセンサについての先行技術から公知のセンサ素子の多数の利点にもかかわらず、これらのセンサ素子はまだ改善の余地がある。例えば、これらの電極は、先に記載された先行技術の場合にセンサ素子の全体の寿命にわたり高性能ではない。この関連において、高性能とは、電極面積当たりの大きな物質転化率(電極容量)、炭化水素の酸化(HC酸化)及び酸素分解(O2分解)に対する高い触媒活性及び良好な低温挙動を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第19833087号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第10020082号明細書
【特許文献3】国際公開第2010/072460号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Konrad Reif(編)「Sensoren im Kraftfahrzeug」第1版、2010年、第160−165頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
発明の開示
従って、公知のセンサ素子の欠点を少なくとも十分に回避し、かつ、特にセンサ素子の全体の寿命にわたって高性能の電極を提供する、測定ガス空間内の測定ガスの少なくとも1つの特性を検知するためのセンサ素子が提案される。この電極は、内側のポンプ電極(IPE)、外側のポンプ電極(APE)、内側の参照ガス電極(IE)及び特に外側の測定ガス電極(AE)であり得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
測定ガス空間内の測定ガスの少なくとも1つの特性を検知するための、特に測定ガス中のガス成分の割合又は測定ガスの温度を検出するための本発明に係るセンサ素子は、少なくとも1つの固体電解質層と、この固体電解質層と接触する少なくとも1つの電極とを含む。この場合、電極は、固体電解質層と直接的に又は間接的に接触してよい。電極は、少なくとも部分的にセラミック材料から製造されている少なくとも1つの第1の層と、少なくとも部分的にセラミック材料から製造されている少なくとも1つの第2の層とを備える。第1の層は、固体電解質層の反対側にある。第2の層は、固体電解質層の側にある。第1の層のセラミック材料と第2の層のセラミック材料とは、イットリウムでドープされた二酸化ジルコニウム、特に酸化イットリウムでドープされた二酸化ジルコニウムを含む。第1の層のセラミック材料は、第2の層のセラミック材料よりも高いイットリウムドーピング量を示す。第1の層は、第2の層よりもより高い気孔率を示す。
【0013】
第1の層のセラミック材料は、8.0mol%乃至11.5mol%の酸化イットリウムドーピング量を示してよい。第2の層のセラミック材料は、3.5mol%乃至6.5mol%、例えば5.5mol%の酸化イットリウムドーピング量を示してよい。第1の層は、10体積%乃至40体積%の気孔率を示してよい。第2の層は、0体積%乃至8体積%の気孔率を示してよい。第1の層は、第2の層よりも厚くてよい。第1の層の層厚の第2の層の層厚に対する比率は、1.25乃至50であってよい。第1の層は、5.0μm乃至25.0μmの層厚を示す。第2の層は、0.5μm乃至4.0μmの層厚を示してよい。第1の層のセラミック材料は、更に、少なくとも1種の白金族元素の材料の割合を含んでいてよい。第2の層のセラミック材料は、更に、単一の白金族元素の材料の割合を含んでいてよい。第1の層のセラミック材料の白金族元素の材料は、少なくとも白金及びロジウムを含んでいてよい。第2の層のセラミック材料の白金族元素の材料は、もっぱら白金を含む。第2の層のセラミック材料の白金族元素の材料中の白金の割合は、少なくとも99.0質量%、好ましくは少なくとも99.5質量%、更に好ましくは99.9質量%であってよい。この場合、特に好ましくは100質量%の値が目標とされる。第1の層のセラミック材料の白金族元素の材料中のロジウムの割合は、1.0質量%乃至5.0質量%であってよい。第1の層のセラミック材料は、微細粒であってよい。第2の層のセラミック材料は、微細粒と粗大粒との混合物であってよい。第1の層のセラミック材料中のイットリウムでドープされた二酸化ジルコニウムの割合は、2.0質量%乃至8.0質量%、好ましくは4.0質量%乃至8.0質量%であってよい。第2の層のセラミック材料中のイットリウムでドープされた二酸化ジルコニウムの割合は、10.0質量%乃至18.0質量%、好ましくは10.0質量%乃至15.0質量%であってよい。
【0014】
固体電解質とは、本発明の範囲内で、電解質特性を示す、即ち、イオン伝導特性を示す物体又は対象物であると解釈される。特に、この固体電解質は、セラミック固体電解質であってよい。この固体電解質は、固体電解質の原材料も含み、かつ、それにより焼結後にはじめて固体電解質になるいわゆる生素地又は素地としての状態を含む。
【0015】
気孔率とは、本発明の範囲内で、中空容積の、材料又は材料混合物の全体積に対する比率であると解釈される。
【0016】
白金族元素の材料とは、白金族元素を示す、即ち、元素の周期表の第5周期及び第6周期のVIII族からX族までの元素の金属を示す材料であると解釈される。この白金族元素の材料は、特にルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金を含む。
【0017】
層とは、本発明の範囲内で、他の対象物の上、下又は間又は上方に配置されていてもよい、所定の高さ又は層厚を示す平面状の広がりでの1つにまとまった材料からなる対象物又は物体であると解釈される。
【0018】
本発明の基本思想は、白金のできる限り少ない使用量を含む排ガスセンサの、性能の良い電極を作り出すことである。白金サーメット電極は、この場合、通常ではスクリーン印刷法でセラミック支持体上に施され、かつ、焼結後に5μm乃至25μmの典型的な層厚を示す。これとは別に、特に、固体電解質と直接結合している第2の電極層も、蒸着法によって、又は、インク技術/スピンコーティング技術によって、即ち、スクリーン印刷法と比べて流動性の、低粘度の懸濁液又は「インク」を用いて、又は、金属蒸気として施すこともできる。この場合、この性能の良さは、電極活性として、特に触媒活性及び電極の単位面積当たりの可能な最大の物質転化率として定義される。この種の電極は、材料組成、構造(即ち、気孔率及び密度)及びサーメットの焼結挙動に関して部分的に対立する要件である2つの課題部分を満たさなければならない。本発明の場合に、電極は少なくとも2つの層から構成され、これらの層はこのそれぞれの課題を考慮して最適化されていることが提案される。このように、例えば、測定ガス空間側の第1の層は、金属表面と測定ガスとの間で最大の物質交換を提供するために、及び、最大の触媒活性を提供するために、ガス空間との接続を実現するという課題を有する。この場合、材料要件は、高い気孔率の形態、ナノスケールの白金の形態、裂け目の多い表面の形態、サーメットの単位体積当たりの三重点又は反応中心の最大の数の形態、及び、巨視的な中空部による構造化の形態、並びに、酸化イットリウムドーピングの高いモル量を示す最大化された酸素イオン伝導性のための微細に分配されたYSZ又はScSZの形態で満たされなければならない。固体電解質層側の第2の層は、固体電解質層との接続の課題を有する。このように、例えば、ネルンストセルと、低い酸化イットリウムドーピング量を示すYSZからなる支持体セラミックとの接続を行わなければならない。この材料要件は、この場合、良好な機械的接続、最適化された素材による結合、機械的な噛み合いによる及び支持体材料と同じ組成を示すYSZの高い割合による付着、場合によって焼結助剤を用いた焼結による付着、並びに、高い密度、低い気孔率、中空部のなさ、電荷キャリア、例えば電子又は酸素イオンについての低い体積抵抗率、及び、良好な低温伝導性である。
【0019】
図面の簡単な記載
本発明の他の任意の詳細及び特徴は、図面において略示的に示されている好ましい実施例の下記の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係るセンサ素子の分解図。
図2】センサ素子の横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態
図1は本発明に係るセンサ素子10の分解図を示す。図1に示されたセンサ素子10は、測定ガスの物理的特性及び/又は化学的特性の検出のために使用することができ、この場合、1つ又は複数の特性を検知することができる。本発明は、以後、特に測定ガスのガス成分の定性的検知及び/又は定量的検知に関連して、特に測定ガス中の酸素割合の検知に関連して記載される。この酸素割合は、例えば分圧の形で及び/又は百分率の形で検知されてもよい。しかしながら、基本的には、別の種類のガス成分、例えば窒素酸化物、炭化水素及び/又は水素を検知可能である。しかしながら、これとは別に又はこれに付加的に、例えば温度のような測定ガスの他の特性も検知可能である。本発明は、特に自動車技術の範囲内で使用可能であるので、測定ガス空間は、特に内燃機関の排ガス系であってよく、かつ、測定ガスは、特に排ガスであってよい。
【0022】
平板型のラムダセンサの例示的な構成要素としてのセンサ素子10は、少なくとも1つの第1の固体電解質層12を備える。固体電解質層12は、特にセラミック固体電解質層12であってよく、例えば二酸化ジルコニウム、特にイットリウムで安定化された二酸化ジルコニウム及び/又はスカンジウムでドープされた二酸化ジルコニウムであってよく、これらは、酸化アルミニウム及び/又は酸化ケイ素の少量の添加物を含んでいてよい。センサ素子10は、例えば更に第2の固体電解質層14を備える。第1の固体電解質層12側の、第2の固体電解質層14の上面16には、例えば2つの絶縁層18の間に埋め込まれた加熱素子20が配置されている。
【0023】
センサ素子10は、更に少なくとも1つの電極22を備える。例えば、センサ素子10は、第1の固体電解質層12の、測定ガス空間側の上面24に配置されている第1の電極22、及び、第2の固体電解質層14側の参照ガス空間28内に配置されている第2の電極26を備える。測定ガス空間側の第1の電極22、第1の電解質層12及び第2の電極26は、例えばいわゆるネルンストセルを形成する。
【0024】
図2は、センサ素子10の横断面図を示す。図2では、第1の固体電解質層12及び第1の電極22をより詳細に認識することができる。第1の電極22は、例えば外側の測定ガス電極である。例示的に、電極22の本発明の構造は、第1の電極22に基づいて記載されている。第2の電極26は同様に構成されていてよいことが明確に強調される。第2の電極26は、例えば内側の測定ガス電極である。第1の電極22は、第1の固体電解質層12と接触する。第1の電極22は、少なくとも部分的にセラミック材料から製造されている第1の層30と、少なくとも部分的にセラミック材料から製造されている第2の層32とを備える。第1の層30は、固体電解質層12の反対側にある。従って、第1の層30は測定ガス空間側にある。第2の層32は、固体電解質層12の側にある。第1の層30のセラミック材料と、第2の層32のセラミック材料とは、イットリウムでドープされた二酸化ジルコニウムを含む。第1の層30のセラミック材料と、第2の層32のセラミック材料とは、例えば酸化イットリウムでドープされた二酸化ジルコニウムを含む。第1の層30のセラミック材料は、この場合、第2の層32のセラミック材料よりも高いイットリウムドーピング量を示す。例えば、第1の層30のセラミック材料は、8.0mol%乃至11.5mol%、例えば9.5mol%の酸化イットリウムドーピング量を示し、それに対して第2の層32のセラミック材料は、3.5mol%乃至6.5mol%、例えば5.5mol%の酸化イットリウムドーピング量を示す。第1の層30のセラミック材料中の酸化イットリウムドーピング量のより高い割合は、電子伝導性及び酸素イオン伝導性の最大化を提供する。それに対して、第2の層32のセラミック材料中の酸化イットリウムドーピング量のより低い割合は、改善された強度挙動及び焼結挙動を提供する。更に、第1の層30は、第2の層32よりもより高い気孔率を示す。例えば、第1の層30は、10体積%乃至40体積%、例えば25体積%の気孔率を示し、それに対して第2の層32は、0体積%乃至8体積%、例えば2体積%の気孔率を示す。第1の層30のより高い気孔率は、ガス交換を最大化するために増大された表面を提供し、それに対して第2の層32のより低い気孔率は、固体電解質層12への改善された接続を生じる高い材料密度を提供する。
【0025】
図2に明確には示されていない場合であっても、第1の層30は、第2の層32よりも厚い。第1の層30の層厚の第2の層32の層厚に対する比率は、1.25乃至50、例えば49である。より詳しくは、第1の層は、5.0μm乃至25.0μm、例えば24.5μmの層厚を示し、それに対して、第2の層は、0.5μm乃至4.0μm、例えば0.5μmの層厚を示す。第1の層30の比較的大きな層厚は、例えば、場合により細孔形成剤の使用下でのスクリーン印刷法により実現することができる。それに対して、より薄い第2の層32は、例えば蒸着、スパッタリング、懸濁被覆などのような薄層堆積法によって施すことができる。
【0026】
第1の層30も、第2の層32も、サーメットから製造されていてよく、即ち、このセラミック材料は、それぞれ本来のセラミック材料と、白金族元素の材料の部分添加物又は割合を含んでいてよい。場合により、第2の層32のセラミック材料は、単一の白金族元素の材料の割合を含む。換言すると、第2の層32のセラミック材料のサーメットの金属割合は、もっぱら白金族元素の単一の元素、例えば白金を含む。それに対して、第1の層30のセラミック材料の白金族元素の材料は、少なくとも白金及びロジウムを含むことができる。第2の層32のセラミック材料の白金族元素の材料中の白金の割合は、少なくとも99.0質量%、好ましくは少なくとも99.5質量%、更に好ましくは99.9質量%であってよい。この場合、100質量%の値が目指される。例えば、第1の層30のセラミック材料の白金族元素の材料中のロジウムの割合は、1.0質量%乃至5.0質量%、例えば3.0質量%であってよい。この場合、微細粒のロジウム粉末の使用が好ましい。より詳しくは、一般に、第1の層30のセラミック材料は微細粒であり、第2の層32のセラミック材料は、微細粒と粗大粒との混合物であるのが好ましい。本発明の範囲内において、「微細粒」及び「粗大粒」の表現は、製造のために使用される粉末の粒径に関し、この場合、ここでは、もう一度、一次粒子と凝集した粒子との間で区別してもよく、また、例えばペースト、懸濁液、インクなどの調製物中で使用したセラミック粉末の比表面積で区別してもよい。本発明の範囲内において、微細粒のセラミック粉末は、0.20μm以下の直径D10、0.20μm乃至0.50μmの直径D50、0.50μm乃至10.0μmの直径D90により、並びに10m2/g乃至50m2/gのBETによる比表面積によって特徴付けることができる。それに対して、粗大粒のセラミック粉末は、50μm乃至200μmの直径D10、200μm乃至500μmの直径D50、500.0μmより大きな直径D90により、及び、0.1m2/g乃至2.0m2/gのBETによる比表面積により特徴付けることができる。
【0027】
焼結時に形成される白金−ロジウム相は、白金粒子が焼結してまとまって、より大きなクリスタリットになることを極めて効果的に妨げ、かつ、それにより寿命にわたる活性表面の低下を極めて効果的に妨げる。蒸発による白金の搬出も妨げられる。それに対して、第2の層32は、ロジウムを添加せずに形成されている、というのも、このことが、白金−ロジウム相のロジウムの高い融点及び酸化範囲により制限された緩慢な焼結並びにそれによる固体電解質層12との劣悪な機械的電気的な接続を低減するためである。本発明の場合においては、場合により、第2の層32中でのロジウムの使用を省くことが提案されるため、第2の層32の固体電解質層12との機械的接続は改善される。
【0028】
更に、場合により、第1の層30のセラミック材料中のイットリウムでドープされた二酸化ジルコニウムの割合は、2.0質量%乃至8.0質量%、好ましくは4.0質量%乃至8.0質量%、例えば6.0質量%であってよく、それに対して、第2の層32のセラミック材料中のイットリウムでドープされた二酸化ジルコニウムの割合は、10.0質量%乃至18.0質量%、好ましくは12.0質量%乃至15.0質量%、例えば14.0質量%であってよい。第1の層30における、イットリウムでドープされた二酸化ジルコニウムの低い割合により、大きな内部表面積を示す多孔質の連続気泡構造が実現される。第2の層32における、イットリウムでドープされた二酸化ジルコニウムの高い割合との関連において粗大粒の白金を使用することにより、固体電解質層12と良好に焼結した緻密な層が実現される。
図1
図2