(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記通電制御手段は、前記複数の発熱素子の一部への通電をオフ状態に切り替える通電終了タイミングと前記複数の発熱素子の他の一部への通電をオフ状態に切り替える通電終了タイミングとが時間的に異なるように前記第1ストローブ信号と前記第2ストローブ信号とを制御することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
前記第1ストローブ信号と前記第2ストローブ信号とは、1印刷ラインの印刷処理に対し、前記複数の発熱素子の一部および他の一部への通電をオン状態とするための通電パルスを複数有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置。
前記第1ストローブ信号と前記第2ストローブ信号とは、1印刷ラインの印刷処理に対し、前記複数の発熱素子の一部および他の一部への通電をオン状態とするための通電パルスを複数有し、前記通電制御手段は、印刷ラインごとに、前記第1ストローブ信号および前記第2ストローブ信号のうち最初にオン状態となる前記通電パルスが属するストローブ信号が異なるように制御することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
以下、本発明を、カード(記録媒体)に文字や画像を印刷記録するとともに、カードに磁気的ないし電気的な情報記録を行う印刷装置に適用した第1の実施の形態について説明する。
【0019】
<システム構成>
図1および
図12に示すように、本実施形態の印刷装置1は印刷システム200の一部を構成している。すなわち、印刷システム200は、大別して、上位装置100(例えば、パーソナルコンピュータ等のホストコンピュータ)と、印刷装置1とで構成されている。
【0020】
印刷装置1は、図示を省略したインターフェースを介して、上位装置100に接続されており、上位装置100から印刷装置1に印刷データや磁気的ないし電気的記録データ等を送信して、記録動作等を指示することが可能である。なお、印刷装置1は、オペパネ部(操作表示部)5を有しており(
図12参照)、上位装置100からの記録動作指示の他、オペパネ部5からの記録動作指示も可能である。
【0021】
上位装置100には、一般に、デジタルカメラやスキャナ等の画像入力装置110、上位装置100に命令やデータを入力するためのキーボードやマウス等の入力装置102、上位装置100によって生成されたデータ等の表示を行なう液晶ディスプレイ等のモニタ101が接続されている。
【0022】
<印刷装置>
図2に示すように、印刷装置1はハウジング2を有しており、ハウジング2には情報記録部Aと画像形成部Bと媒体収容部Cと収容部Dとが備えられる。
【0023】
情報記録部Aは、磁気記録部24と、非接触式IC記録部23と、接触式IC記録部27とで構成される。
【0024】
媒体収容部Cは、複数枚のカードを立位姿勢で整列して収納しており、その先端には分離開口7が設けられて、ピックアップローラ19にて最前列のカードから繰り出し供給するようになっている。
【0025】
繰り出されたカードは、先ず搬入ローラ22にて反転ユニットFに送られる。反転ユニットFはハウジング2に旋回動可能に軸受け支持された回転フレーム80と、このフレームに支持された2つのローラ対20、21にて構成される。そして、ローラ対20、21は回転フレーム80に回転自在に軸支持されている。
【0026】
反転ユニットFが旋回する外周には、磁気記録部24と、非接触式IC記録部23および接触式IC記録部27が配置されている。そして、ローラ対20、21は、これらの情報記録部23、24、27の何れかに向けて搬入する媒体搬入経路65を形成し、これらの記録部にてカードには磁気的若しくは電気的にデータが書き込まれる。
【0027】
画像形成部Bは、カードの表裏面に顔写真、文字データなど画像を形成するもので、媒体搬入経路65の延長上にカードを移送する媒体搬送経路P1が設けられている。また、媒体搬送経路P1にはカードを搬送する搬送ローラ29、30が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
【0028】
画像形成部Bはフィルム状媒体搬送装置を備えて、この搬送装置にて搬送される転写フィルム46に対して、先ずサーマルヘッド40にて画像を印刷する一次転写部と、続いてヒートローラ33にて媒体搬送経路P1にあるカードの表面に転写フィルム46に印刷された画像を印刷する二次転写部とを備えている。
【0029】
画像形成部Bの下流側には収容スタッカ60に印刷後のカードを移送する媒体搬送経路P2が設けられている。媒体搬送経路P2にはカードを搬送する搬送ローラ37、38が配置され、図示しない搬送モータに連結されている。
【0030】
搬送ローラ37と搬送ローラ38の間にはデカール機構36が配置され、搬送ローラ37、38間に保持されたカード中央部を押圧することにより、ヒートローラ33による熱転写により生じたカールを矯正する。このためデカール機構36は図示しないカムなどによる昇降機構にて
図2に示す上下方向に位置移動可能に構成されている。
【0031】
収容部Dは、画像形成部Bから送られたカードを収容スタッカ60に収容するように構成されている。収容スタッカ60は、昇降機構61にて
図2で下方に移動するように構成されている。
【0032】
上記した印刷装置1の全体構成の中で画像形成部Bについて、更に詳しく説明する。
【0033】
転写フィルム46は、モータMr2の駆動にて回転する転写フィルムカセットの巻取ロール47と操出ロール48にそれぞれ巻回されている。フィルム搬送ローラ49は、転写フィルム46を移送する主要な駆動ローラであり、このローラ49の駆動を制御することで転写フィルム46の搬送量および搬送停止位置が決まる。フィルム搬送ローラ49の駆動時にモータMr2も駆動するが、巻取ロール47が繰り出された転写フィルム46を巻き取るためのものであって、転写フィルム46を搬送の主体となって駆動するものではない。
【0034】
フィルム搬送ローラ49の周面には、ピンチローラ32aとピンチローラ32bとが配置されている。ピンチローラ32a、32bは、
図2では示されていないが、フィルム搬送ローラ49に対して進出および退避するよう移動可能に構成されており、図の状態はフィルム搬送ローラ49に進出して圧接することで転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に巻き付けている。これにより、転写フィルム46はフィルム搬送ローラ49の回転数に応じた距離の正確な搬送が行われる。
【0035】
インクリボン41はカセット42に収納され、このカセット42に操出ロール43と巻取ロール44が収容され、巻取ロール44はモータMr1にて駆動する。
【0036】
プラテンローラ45とサーマルヘッド40とは一次転写部を構成しており、プラテンローラ45に対向する位置にサーマルヘッド40が配置されている。サーマルヘッド40は、ヘッドコントロール用IC(
図13参照)により画像データに従って加熱制御されて、昇華型のインクリボン41を用いて転写フィルム46に画像を印刷する。本実施形態のサーマルヘッド40は主走査方向に列設された1344個の発熱素子を有しているが、その詳細については後述する(<サーマルヘッド通電制御回路>参照)。なお、冷却ファン39はサーマルヘッド40を冷やす為のものである。
【0037】
転写フィルム46への印刷が終了したインクリボン41は、剥離コロ25と剥離部材28とで転写フィルム46から引き剥がされる。剥離部材28はカセット42に固設されており、剥離コロ25は印刷時に剥離部材28に移動して両者で転写フィルム46とインクリボン41とを挟持することで剥離が行われる。そして、剥離されたインクリボン41はモータMr1の駆動による巻取ロール44に巻き取られ、転写フィルム46はフィルム搬送ローラ49により、プラテンローラ31とヒートローラ33とを含む二次転写部まで搬送される。
【0038】
二次転写部では、転写フィルム46はカードと共にヒートローラ33およびプラテンローラ31とで挟持されて、転写フィルム46上の画像がカード表面に転写される。なお、ヒートローラ33は、転写フィルム46を介してプラテンローラ31に圧接・離間するように昇降機構(不図示)に取り付けられている。
【0039】
一次転写部の構成をその作用と共に更に詳しく説明する。
図3乃至
図5にて示すように、ピンチローラ32a、32bはピンチローラ支持部材57の上端部と下端部にそれぞれ支持されて、ピンチローラ支持部材57はその中央部を挿通する支持シャフト58に回動自在に支持されている。支持シャフト58は、
図10にて示すごとく、両端部がピンチローラ支持部材57に設けられる長穴76、77に架け渡されると共に、中間部でブラケット50の固定部78にて固定されている。また、長穴76、77は支持シャフト58に対して水平方向および垂直方向に空間を持たせている。よって、後述するフィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32a、32bの調整を可能にしている。
【0040】
そして、支持シャフト58にはバネ部材51(51a、51b)が装着されて、ピンチローラ支持部材57のピンチローラ32a、32bが装着される側の端部は、それぞれバネ部材51と接してそのバネ力によりフィルム搬送ローラ49の方向へ付勢されている。
【0041】
ブラケット50は、カム受81にてカム53のカム作動面と当接しており、駆動モータ54(
図10参照)にて駆動するカム軸82を支点とするカム53の矢印方向への回動に応じてフィルム搬送ローラ49に対して図で左右方向に移動するように構成している。従って、ブラケット50がフィルム搬送ローラ49に向けて進出したとき(
図4および
図5)、ピンチローラ32a、32bはバネ部材51に抗して転写フィルム46を挟んでフィルム搬送ローラ49に圧接し、転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に巻き付ける。
【0042】
このときブラケット50の回動支点となる軸95から遠い位置にあるピンチローラ32bが先ずフィルム搬送ローラ49を圧接し、続いてピンチローラ32aが圧接する。このように、回動支点である軸95をフィルム搬送ローラ49より上方に配置することで、ピンチローラ支持部材57は平行移動ではなく回動しながらフィルム搬送ローラ49と当接することになり、平行移動させるよりも幅方向のスペースが少なくてすむ利点がある。
【0043】
また、ピンチローラ32a、32bがフィルム搬送ローラ49へ圧接したときの圧接力は、バネ部材51により転写フィルム46の幅方向の対して均一となる。その際、ピンチローラ支持部材57の両側に長穴76、77が設けられて支持シャフト58は固定部78で固定されているために、ピンチローラ支持部材を3方向に調整することができ、フィルム搬送ローラ49の回転により転写フィルム46はスキューを起こすことなく正しい姿勢にて搬送される。なお、ここで言う3方向の調整とは、(i)フィルム搬送ローラ49に対してピンチローラ32a、32bの軸方向の圧接力を均一にするために、フィルム搬送ローラ49の軸に対するピンチローラ32a、32bの軸の水平方向の平行度を調整すること、(ii)フィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32aの圧接力とフィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32bの圧接力とを均一にするために、フィルム搬送ローラ49に対するピンチローラ32aとピンチローラ32bとの移動距離を調整すること、および(iii)フィルム進行方向に対してピンチローラ32a、32bの軸が垂直になるように、フィルム搬送ローラ49の軸に対するピンチローラ32a、32bの軸の垂直方向の平行度を調整することである。
【0044】
そして、ブラケット50には、ブラケット50がフィルム搬送ローラ49に向けて進出したとき、転写フィルム46のフィルム搬送ローラ49に巻き付けられていない部分と当接する張力受け部材52を設けている。
【0045】
張力受け部材52は、ピンチローラ32a、32bが転写フィルム46をフィルム搬送ローラ49に圧接した際に生じる転写フィルム46の張力にて、ピンチローラ32a、32bがそれぞれバネ部材51の付勢力に抗してフィルム搬送ローラ49から退避するのを防止するために設けられる。よって、張力受け部材52は、ピンチローラ32a、32bより図で左の位置で転写フィルム46と当接するようブラケット50の回動側端部の先端に取り付けられている。
図2は張力受け部材52が転写フィルム46と当接している状態を示している。
【0046】
これにより、転写フィルム46の弾性から生じる張力は張力受け部材52を通してカム53にて直接受け止めることができる。したがって、この張力にてピンチローラ32a、32bがフィルム搬送ローラ49から退避してピンチローラ32a、23bの圧接力が弱まることが防止されるため、転写フィルム46のフィルム搬送ローラ49への密着した巻き付け状態が維持されて正確な搬送を行うことができる。
【0047】
転写フィルム46の横幅方向に沿って配置されるプラテンローラ45は、
図9に示すごとく、軸71を支点として回動自在な一対のプラテン支持部材72に支持されている。一対のプラテン支持部材72はプラテンローラ45の両端を支持している。プラテン支持部材72はそれぞれ、軸71を共通の回動軸とするブラケット50Aの端部にバネ部材99を介して接続されている。
【0048】
ブラケット50Aは、基板87と、この基板87からのプラテン支持部材72の方向に折り曲げて形成されるカム受支持部85とから成り、カム受支持部85でカム受84を保持している。そして、基板87とカム受支持部85の間には、駆動モータ54にて駆動するカム軸83を支点に回動するカム53Aを配設して、カム作動面とカム受84とが当接するよう構成している。従って、カム53Aの回動によりブラケット50Aがサーマルヘッド40の方向へ進出すると、プラテン支持部材72も移動してプラテンローラ45はサーマルヘッド40に圧接する。
【0049】
このようにブラケット50Aとプラテン支持部材72との間にバネ部材99とカム53Aとを上下に配置することにより、このプラテン移動ユニットはブラケット50Aとプラテン支持部材72との間隔内に収めることができる。また、幅方向はプラテンローラ45の幅内に収めることができ省スペース化が図れる。
【0050】
また、カム受支持部85は、プラテン支持部材72に形成した穿孔部72a、72b(
図9参照)に嵌合させているために、カム受支持部85をプラテン支持部材72の方向に突出して形成しても、ブラケット50Aとプラテン支持部材72との間隔が広がることがなく、その面でも省スペース化が図れる。
【0051】
プラテンローラ45はサーマルヘッド40に圧接したとき、それぞれのプラテン支持部材72に接続されたバネ部材99は、それぞれ転写フィルム46の幅方向への圧接力が均一となるように作用する。よって、転写フィルム46がフィルム搬送ローラ49にて搬送されるときスキューが防止され、転写フィルム46の印刷領域が幅方向にずれることがなくサーマルヘッド40による熱転写を正確に行うことができる。
【0052】
ブラケット50Aの基板87には、剥離コロ25の両端を支持する一対の剥離コロ支持部材88がバネ部材97を介して設けられており、剥離コロ25は、ブラケット50Aがカム53Aの回動にてサーマルヘッド40に対し進出したとき、剥離部材28と当接して両者で挟持している転写フィルム46とインクリボン41とを剥離する。剥離コロ支持部材88もプラテン支持部材72と同様に剥離コロ25の両端にそれぞれ設けられており、剥離部材28に対する幅方向の圧接力が均一となるように構成されている。
【0053】
ブラケット50Aの軸支59側の端部と反対側の端部には、張力受け部材52Aが設けられている。張力受け部材52Aは、プラテンローラ45と剥離コロ25とをサーマルヘッド40と剥離部材28とにそれぞれ圧接する際に生じる転写フィルム46の張力を吸収するように設けられている。バネ部材99とバネ部材97は、転写フィルム46の幅方向への圧接力を均一にするために設けられるが、逆にバネ部材99、97が転写フィルム46の張力に負けて転写フィルム46への圧接力が弱まってしまわないよう、張力受け部材52Aにて転写フィルム46からの張力を受けている。なお、張力受け部材52Aも上述の張力受け部材52と同様にブラケット50Aに固定されているため、転写フィルム46の張力はブラケット50Aを介してカム53Aで受けることになるので、転写フィルム46の張力に負けることはない。これにより、サーマルヘッド40とプラテンローラ45との圧接力および、剥離部材28と剥離コロ25との圧接力が保たれるので、良好な印刷および剥離を行うことができる。また、フィルム搬送ローラ49の駆動時に転写フィルム46の搬送量に誤差を生じることがなく、前記印刷領域の長さ分が正確にサーマルヘッド40に搬送されて精度良く印刷できる。
【0054】
カム53とカム53Aは、ベルト98(
図3参照)が張架されて同一の駆動モータ54にて駆動させている。
【0055】
このような、画像形成部Bが
図6に示す待機ポジションにあるときカム53およびカム53Aは
図3に示す状態にあり、ピンチローラ32a、32bはフィルム搬送ローラ49に圧接しておらず、またプラテンローラ45はサーマルヘッド40に圧接していない。
【0056】
そして、カム53およびカム53Aが連動して回転して
図4に示す状態となると、画像形成部Bは
図7に示す印刷ポジションに移行する。その際、まずピンチローラ32a、32bがフィルム搬送ローラ49に転写フィルム46を巻き付けると共に、張力受け部材52は転写フィルム46と当接する。その後プラテンローラ45がサーマルヘッド40に圧接する。この印刷ポジションでは、プラテンローラ45がサーマルヘッド40に向けて移動して転写フィルム46とインクリボン41を挟み圧接して、剥離ローラ25が剥離部材28と接している。
【0057】
この状態で、フィルム搬送ローラ49の回転により転写フィルム46の搬送が開始されると、同時にインクリボン41もモータMr1の動作により巻取ロール44にて巻き取られて同じ方向に搬送される。この搬送の間、転写フィルム46に設けた位置出し用マークがセンサSeを通過して所定量移動し、転写フィルム46が印刷開始位置に到達した時点で、転写フィルム46の所定領域にサーマルヘッド40による印刷が行われる。特に印刷中は転写フィルム46の張力が大きくなるため、転写フィルム46の張力はフィルム搬送ローラ46からピンチローラ32a、23bを離間させる方向および、剥離部材28とサーマルヘッド40から剥離コロ25とプラテンローラ45とを離間させる方向に働く。しかし、上記したように、転写フィルム46の張力は張力受け部材52、52Aが受けているため、ピンチローラ32a、32bの圧接力が弱くなることがなく、正確なフィルム搬送を行うことができ、サーマルヘッド40とプラテンローラ45との圧接力および、剥離部材28と剥離コロ25との圧接力も弱くなることがないため、正確な印刷および剥離を行うことができる。印刷終了後のインクリボン41は転写フィルム46から引き剥がされて巻取ロール44に巻き取られる。
【0058】
転写フィルム46の搬送による移動量、すなわち印刷が施される前記印刷領域の搬送方向の長さは、フィルム搬送ローラ49に設けたセンサ(不図示)にて検知され、それに応じてフィルム搬送ローラ49の回転が停止し、同時にモータMr2の動作による巻取ロール44による巻き取りも停止する。これにより、サーマルヘッド40による転写フィルム46の前記印刷領域への1色目の印刷が終了する。
【0059】
そして、カム53およびカム53Aが連動して更に回転し
図5に示す状態となると、画像形成部Bは
図8に示す搬送ポジションに移行して、プラテンローラ45はサーマルヘッド40から退避する方向に復帰する。この状態では依然として、ピンチローラ32a、32bはフィルム搬送ローラ49に転写フィルム46を巻き付けて、張力受け部材52は転写フィルム46と接しており、フィルム搬送ローラ49の逆方向の回転により転写フィルム46は初期位置にまで逆搬送される。このときも転写フィルム46の移動量はフィルム搬送ローラ49の回転によって制御されるが、印刷が施された前記印刷領域の搬送方向の長さ分が逆搬送される。なお、インクリボン41は停止しており、次に印刷する色のパネルを初期位置に待機させた状態にある。
【0060】
そして、カム53、53Aによる制御状態は再び
図4に示す状態となって
図7に示す印刷ポジションとなり、プラテンローラ45をサーマルヘッド40に圧接させ、フィルム搬送ローラ49が再び正方向への回転を行って転写フィルム46を前記印刷領域の長さ分移動させると、サーマルヘッド40にて次色による印刷が行われる。
【0061】
こうして、印刷ポジションと搬送ポジションでの動作は全ての色の印刷が終了するまで繰り返される。そして、サーマルヘッド40による印刷(一次転写)が終了すると、転写フィルム46の一次転写された領域をヒートローラ33まで搬送するが、このときカム53および53Aは
図3に示す状態に移動して、転写フィルム46への圧接を解除する。その後の二次転写は巻取ロール47の駆動で転写フィルムを搬送しながらカードへの転写が行われる。
【0062】
このような画像形成部Bは、3通りのユニット90、91、92に分割してそれぞれ一体化される。
【0063】
図9に示す第1のユニット90は、ユニット枠体75にモータ54(
図10参照)の駆動により回転する駆動軸70を装架しており、駆動軸70にフィルム搬送ローラ49を装着している。フィルム搬送ローラ49の下方には、ブラケット50Aと一対のプラテン支持部材72とが配置されており、これら部材はユニット枠体75の両側板に装架される軸71に回動自在に支持されている。
【0064】
図9においては、プラテン支持部材72に形成した穿孔部72a、72bからブラケット50Aの一部である一対のカム受支持部85が表れている。カム受支持部85は、その後方に配置される一対のカム受84を保持する。そして、カム受84の更に後方には、ユニット枠体75を挿通しているカム軸83に装着されるカム53Aが配置されている。カム軸83はユニット枠体75の両側板に装架される。
【0065】
転写フィルム46とインクリボン41の搬送パスを挟みプラテンローラ45と対向する位置にはサーマルヘッド40が配置される。サーマルヘッド40、加熱に関する部材および冷却ファン39は
図11に示すように第3のユニット92に一体化しており、第1のユニット90に対向して配置される。
【0066】
第1のユニット90は、移動可能なブラケット50Aにて、印刷動作により位置を変動するプラテンローラ45と剥離コロ25と張力受け部材52Aとを一括して保持することで、これら部材間の位置調整が不要となる。しかも、カム53の回動にてブラケット50Aを移動させることでこれら部材を所定の位置にまで移動させることができる。また、ブラケット50Aを設けたことで、固定のフィルム搬送ローラ49と同一のユニットに収納でき、転写フィルムを精度良く搬送しなければならないフィルム搬送ローラ49による搬送駆動部分と、プラテンローラ45による転写位置規制部分とが同じユニットに含まれるために両者間の位置調整が不要となる。
【0067】
図10に示す第2のユニット91は、ユニット枠体55にカム53が装着されるカム軸82を挿通させて、カム軸82を駆動モータ54の出力軸に連結している。そして、第2のユニット91は、カム53と当接するようブラケット50をユニット枠体55に移動自在に支持しており、ブラケット50には、ピンチローラ支持部材57を回動自在に支持している支持シャフト58と張力受け部材52とが固設されている。
【0068】
ピンチローラ支持部材57には、支持シャフト58にバネ部材51a、51bが取り付けられていて、その端部をピンチローラ32a、32bを支持しているピンチローラ支持部材57の両端にそれぞれ当接させて、フィルム搬送ローラ49の方向へ付勢している。そして、ピンチローラ支持部材57は、長穴76、77に支持シャフト58を挿入しており、支持シャフト58は中央部でブラケット50に固定支持される。
【0069】
ブラケット50とピンチローラ支持部材57との間には、ピンチローラ支持部材57をブラケット50に向けて付勢するバネ89を設けている。このバネ89によりピンチローラ支持部材57は第1のユニット90のフィルム搬送ローラ49から後退する方向に付勢されるために、転写フィルムカセットを印刷装置1にセットするときに第1のユニット90と第2のユニット91の間に転写フィルム46を容易に通すことができる。
【0070】
第2のユニット91は、印刷動作に応じて位置が変動するピンチローラ32a、32bと張力受け部材52とをブラケット50Aにて保持し、カム53の回動にてブラケット50Aを移動させることでピンチローラ32a、32bと張力受け部材52とを移動させるために、両者間の位置調整やピンチローラ32a、32bとフィルム搬送ローラ49との位置調整が簡略化される。このような第2のユニット91は、転写フィルム46を挟み第1のユニット90に対向して配置される。
【0071】
このようにユニット化することで第1のユニット90、第2のユニット91および第3のユニット92は、転写フィルム46やインクリボン41の各カセットと同様に、それぞれ印刷装置1の本体から引き出すことも可能になる。従って、転写フィルム46やインクリボン41の消耗によるカセットの交換時にこれらユニット90、91、92も必要に応じてユニットを取り出しておけばカセット挿入時の転写フィルム46やインクリボン41を簡単に装置内に装架することができる。
【0072】
上記したように、プラテンローラ45とブラケット50Aとカム53Aとプラテン支持部材72とを一体化した第1のユニット90と、ピンチローラ32a、32bとブラケット50とカム53とバネ部材51とを一体化した第2のユニット91とを組み合わせると共に、サーマルヘッド40が取り付けられた第3のユニット92をプラテンローラ45に対向して配置して組み付けることで、印刷装置の製造時における組み立てやメンテナンス時の調整を容易且つ正確に行うことができる。しかも、一体化したことで装置からの取り外しも容易に行えて、印刷装置としての取扱い性が向上する。
【0073】
次に、印刷装置1の制御および電気系統について説明する。
図12に示すように、印刷装置1は、印刷装置1全体の動作制御を行う制御部120と、商用交流電源から各機構部および制御部等を駆動/作動可能な直流電源に変換する電源部130とを有している。
【0074】
<印刷装置の制御部>
図12に示すように、制御部120は、印刷装置1の全体の制御処理を行うマイクロコンピュータ122(以下、マイコン122と略称する。)を備えている。マイコン122は、中央演算処理装置として高速クロックで作動するCPU、印刷装置1の基本制御動作(プログラムおよびプログラムデータ)が記憶されたROM、CPUのワークエリアとして働くRAMおよびこれらを接続する内部バスで構成されている。
【0075】
マイコン122には外部バスが接続されている。外部バスには、上位装置100との通信を行うための図示を省略したインターフェース、カードに印刷すべき印刷データやカードの磁気ストライプ部や内蔵ICに磁気的ないし電気的に記録すべき記録データ等を一時的に格納するバッファメモリ121が接続されている。
【0076】
また、外部バスには、各種センサからの信号を制御するセンサ制御部123、各モータに駆動パルスや駆動電力を送出するモータドライバ等を制御するアクチュエータ制御部124、サーマルヘッド40を構成する発熱素子への熱エネルギを制御するためのサーマルヘッド通電制御回路125、オペパネ部5を制御するための操作表示制御部126、および、上述した情報記録部Aが接続されている。なお、物理的にはサーマルヘッド通電制御回路125はサーマルヘッド40に配置されている。
【0077】
電源部130は、制御部120、サーマルヘッド40、オペパネ部5および情報記録部Aに作動/駆動電源を供給している。
【0078】
<サーマルヘッド通電制御回路>
次に、
図13を参照して、本実施形態の印刷装置1のサーマルヘッド通電制御回路125について説明する。
【0079】
上述したように、サーマルヘッド40は1344個の発熱素子が主走査方向に列設されて構成されている。1個の発熱素子による1印刷ラインに対する印刷処理が転写フィルム46に形成される画像の1画素(1ドット)を構成する。
図13ではこの発熱素子を抵抗体としてRで表している。本実施形態では、IC1〜IC7に対応して、1344個の発熱素子が192個ずつの7つのブロック(第1ブロック〜第7ブロック)に区分されている。
【0080】
図13に示すように、各発熱素子Rの一端はサーマルヘッド印加電圧Vhead(電源電圧)に接続されており、他端は当該発熱素子Rが属するブロックに対応するICに接続されている。各ICは、例えば、192個のAND回路およびNOT回路を有して構成されている。例えば、第1ブロックに属する各発熱素子Rの他端はAND回路の出力側に接続されたNOT回路の出力側に接続されている(
図14も参照)。
【0081】
各AND回路の一方の入力側はストローブ信号が入力される7つのストローブ信号入力ポートSTB1〜STB7のいずれかに接続されている。例えば、IC1の各AND回路の一方の入力側は第1ストローブ信号STB1入力ポートに接続されており、IC2の各AND回路の一方の入力側は第2ストローブ信号STB2入力ポートに接続されている(
図14も参照)。各AND回路の他方の入力側はシフトレジスタSRに接続されている。この各AND回路の他方の入力側とシフトレジスタSRとはバスで接続されている。なお、第1ストローブ信号STB1入力ポート、第3ストローブ信号STB3入力ポート、第5ストローブ信号STB5入力ポート、および、第7ストローブ信号STB7入力ポートには同じタイミングで後述する第1ストローブ信号が入力され、第2ストローブ信号STB2入力ポート、第4ストローブ信号STB4入力ポート、および、第6ストローブ信号STB6入力ポートには同じタイミングで後述する第2ストローブ信号が入力される。
【0082】
シフトレジスタSRには、マイコン122から印刷ラインデータ信号(DATA)、クロック信号(CLK)および印刷ラインデータ信号を取り込むためのラッチ信号(LATCH)が入力される。なお、サーマルヘッド印加電圧Vheadとサーマルヘッドグランド電圧VGNDとの間には、各発熱素子への通電によるサーマルヘッド印加電圧Vheadの電圧降下を緩和させるための電解キャパシタCaが挿入されている。このような構成で、印刷ラインデータ信号が入力されてSTBがONされた発熱素子Rのみに通電される。
【0083】
<第1、第2ストローブ信号>
次に、各ストローブ信号入力ポートに入力される第1ストローブ信号および第2ストローブ信号について説明する。なお、サーマルヘッド印加電圧Vhead(電源電圧)、第1ストローブ信号および第2ストローブ信号による発熱素子への供給エネルギ(通電電流の積算値)についても併せて説明する。
【0084】
図15に示すように、1印刷ライン目の印刷処理に対し、第1ストローブ信号STB1は時刻t1でオン状態とされ、第2ストローブ信号STB2は時刻t2でオン状態とされる。その後、第1ストローブ信号STB1は時刻t3でオフ状態とされ、第2ストローブ信号STB2は時刻t4で
オフ状態とされる。次いで、2印刷ライン目の印刷処理に対し、第2ストローブ信号STB2は時刻t5でオン状態とされ、第1ストローブ信号STB1は時刻t6でオン状態とされる。その後、第2ストローブ信号STB2は時刻t7でオフ状態とされ、第1ストローブ信号STB1は時刻t8でオン状態とされる。3印刷ライン目以降の奇数印刷ラインの印刷処理に対しては1印刷ライン目の印刷処理と同様に、また、3印刷ライン目以降の偶数印刷ラインの印刷処理に対しては2印刷ライン目の印刷処理と同様に第1ストローブ信号STB1および第2ストローブ信号STB2のオン・オフが制御される。
【0085】
時刻t1で第1ストローブ信号STB1がオン状態とされることで、サーマルヘッド印加電圧Vheadには電圧降下が発生し、サーマルヘッド印加電圧Vheadが元の電圧に戻る前の時刻t2で第2ストローブ信号STB2がオン状態とされる。また、時刻t5で第2ストローブ信号STB2がオン状態とされることで、サーマルヘッド印加電圧Vheadには電圧降下が発生し、サーマルヘッド印加電圧Vheadが元の電圧に戻る前の時刻t6で第1ストローブ信号STB1がオン状態とされる。この結果、第1ストローブ信号STB1による発熱素子への供給エネルギ(通電電流の積算値)と第2ストローブ信号STB2による発熱素子への供給エネルギ(通電電流の積算値)とには差異が生じるが、印刷ラインごとに、第1ストローブ信号STB1および第2ストローブ信号STB2のうち最初にオン状態とされるストローブ信号が異なっている(例えば、1印刷ライン目では第1ストローブ信号STB1、2印刷ライン目では第1ストローブ信号STB2が先にオン状態とされる。)ので、例えば、1印刷ライン目の印刷処理および2印刷ライン目の印刷処理で第1ストローブ信号STB1による発熱素子への供給エネルギ(通電電流の積算値)と、1印刷ライン目の印刷処理および2印刷ライン目の印刷処理で第2ストローブ信号STB2による発熱素子への供給エネルギ(通電電流の積算値)とは同じくなる。
【0086】
従って、
図15に示した第1ストローブ信号STB1と第2ストローブ信号STB2とは、以下の3つの通電条件を満たしている。
(1)
図13に示した奇数番目のブロック(第1、第3、第5、第7ブロック)および偶数番目のブロック(第2、第4、第6ブロック)に属する発熱素子への通電をオン状態とする通電時間が部分的に重複していること(例えば、時刻t2〜時刻t3、時刻t6〜時刻t7)、
(2)
図13に示した奇数番目のブロックに属する発熱素子および偶数番目のブロックに属する発熱素子への通電をオン状態に切り替える通電開始タイミング(時刻t1、t2、t5、t6)と、
図13に示した奇数番目のブロックに属する発熱素子および偶数番目のブロックに属する発熱素子への通電をオフ状態に切り替える通電停止タイミング(時刻t3、t4、t7、t8)が時間的に全て異なっていること、および
(3)
図13に示した奇数番目のブロックと偶数番目のブロックに属する発熱素子とで同じ濃度のデータを複数ラインにわたって印刷する場合に、奇数番目の印刷ライン(例えば、1印刷ライン目)の印刷処理時に
図13に示した奇数番目のブロックに属する発熱素子に流れる通電電流の積算値と偶数番目の印刷ライン(例えば、2印刷ライン目)の印刷処理時に
図13に示した奇数番目のブロックに属する発熱素子に流れる通電電流の積算値との和と、奇数番目の印刷ライン(例えば、1印刷ライン目)の印刷処理時に
図13に示した偶数番目のブロックに属する発熱素子に流れる通電電流の積算値と偶数番目の印刷ライン(例えば、2印刷ライン目)の印刷処理時に
図13に示した奇数番目のブロックに属する発熱素子に流れる通電電流の積算値との和とが同じであること。
【0087】
(動作)
次に、本実施形態の印刷装置1の転写フィルム48への印刷処理動作について、マイコン120のCPU(以下、単にCPUという。)を主体として説明する。なお、印刷装置1の全体動作については既に説明したため、ここではその重複を避け、サーマルヘッド40による1色の印刷処理とストローブ信号の生成について説明するとともに、理解を深めるために
図15に示したタイミングチャートの時刻との関係についても言及する。
【0088】
図16に示すように、CPUは、ステップ202において印刷ラインデータ処理を実行する。この印刷ラインデータ処理では、CPUは、上位装置100から送信された印刷データに基づいて、加熱条件に適合するドットを確認して各印刷ラインデータを作成し、最初の印刷ラインデータをサーマルヘッド40のシフトレジスタSRに出力する。なお、上位装置100側において画像データが色成分(元データはR、G、B)に分解され、印刷装置1でR、G、BからY、M、Cに変換されて印刷データとして用いられ、上位装置100側で設定されたBkデータが印刷装置1でも同じくBkの印刷データとして用いられる。
【0089】
次のステップ204では奇数印刷ラインの印刷か否かを判断し、肯定判断の場合には、次のステップ206において第1ストローブ信号STB1をオン状態とする(例えば、
図15の時刻t1)。次に、ステップ208において第2ストローブ信号STB2をオン状態とする通電開始タイミング(例えば、
図15の時刻t2)か否かを判断し、否定判断のときは待機し、肯定判断のときは次のステップ210において第2ストローブ信号STB2をオン状態とする。
【0090】
次いでステップ212において第1ストローブ信号STB1をオフ状態とする通電終了タイミング(例えば、
図15の時刻t3)か否かを判断し、否定判断のときは待機し、肯定判断のときは次のステップ214において第1ストローブ信号STB1をオフ状態とする。次のステップ216では第2ストローブ信号STB2をオフ状態とする通電終了タイミング(例えば、
図15の時刻t4)か否かを判断し、否定判断のときは待機し、肯定判断のときは次のステップ218において第2ストローブ信号STB2をオフ状態としてステップ234に進む。
【0091】
一方、ステップ204での判断が否定の場合には、偶数印刷ラインの印刷のため、ステップ220において第2ストローブ信号STB2をオン状態とする(例えば、
図15の時刻t5)。次に、ステップ222において第1ストローブ信号STB1をオン状態とする通電開始タイミング(例えば、
図15の時刻t6)か否かを判断し、否定判断のときは待機し、肯定判断のときは次のステップ224において第1ストローブ信号STB1をオン状態とする。
【0092】
次いでステップ226において第2ストローブ信号STB2をオフ状態とする通電終了タイミング(例えば、
図15の時刻t7)か否かを判断し、否定判断のときは待機し、肯定判断のときは次のステップ228において第2ストローブ信号STB2をオフ状態とする。次のステップ230では第1ストローブ信号STB1をオフ状態とする通電終了タイミング(例えば、
図15の時刻t8)か否かを判断し、否定判断のときは待機し、肯定判断のときは次のステップ232において第1ストローブ信号STB1をオフ状態としてステップ234に進む。
【0093】
ステップ234では、印刷完了か否かを判断し、否定判断のときは、ステップ202に戻り次の印刷ラインデータをサーマルヘッド40のシフトレジスタSRに出力し、肯定判断のときは印刷処理を終了する。
【0094】
ところで、
図14は、
図13に示したブロック回路図の一部を模式的に簡素化したものである。
図14のブロック回路図は、第1ブロック〜第7ブロックの発熱素子Rがそれぞれ1つの抵抗体のみで構成されるとともに、IC1〜IC7が1つのAND回路およびNOT回路のみで構成されており、発熱素子R8を加えた点で
図13に示したブロック回路図とは異なっている。
図13に示したブロック回路図では第1〜第7ストローブ信号入力ポートのうち、奇数番目のストローブ信号(STB1、STB3、STB5、STB7)入力ポートには第1ストローブ信号STB1が入力され、偶数番目のストローブ信号(STB2、STB4、STB6)入力ポートには第1ストローブ信号STB2が入力されることから、第1ストローブ信号STB1入力ポートと第2ストローブ信号STB2入力ポートの2つのみで簡素化している。
【0095】
図20(B)は、
図14のブロック回路図により、
図15に示した通電制御を行った場合の、発熱素子R1〜R8による、1印刷ライン〜4印刷ラインまでの印刷状態を模式的に示したものである。画素(ドット)レベルでは濃度ムラが発生しているが、濃淡が均等に入り交じるため、人の目で見た場合には濃度ムラがないように見える。なお、上述した
図20(A)は、
図14のブロック回路図により、
図22に示した通電制御を行った場合の印刷状態を模式的に示したものである。
【0096】
本実施形態の印刷装置1によれば、上述した通電条件(1)により、印刷の高速化を図ることができるとともに、上述した通電条件(3)により、発熱素子の通電時のサーマルヘッド印加電圧Vheadの電圧降下に起因する濃度ムラの発生を低減させることができる。
【0097】
(第2実施形態)
次に、本発明を印刷装置に適用した第2の実施の形態について説明する。第2実施形態は、第1ストローブ信号STB1および第2ストローブ信号STB2が、1印刷ラインの印刷処理に対し、
図13に示した奇数番目のブロックに属する発熱素子および偶数番目のブロックに属する発熱素子への通電をオン状態とするための通電パルスを複数有する形態である。なお、第2実施形態以降の実施形態において、上述した第1実施形態と同一の構成等については説明を省略し、以下、異なる点についてのみ説明する。
【0098】
図17に示すように、1印刷ライン目の印刷処理に対し、第1ストローブ信号STB1は時刻t1でオン状態とされ、第2ストローブ信号STB2は時刻t2でオン状態とされる。第1ストローブ信号STB1は時刻t3でオフ状態とされ、第2ストローブ信号STB2は時刻t4でオン状態とされる。その後、第2ストローブ信号STB2は時刻t5で再度オン状態とされ、第1ストローブ信号STB1も時刻t6で再度オン状態とされる。そして、第2ストローブ信号STB2は時刻t7でオフ状態とされ、第1ストローブ信号は時刻t8でオフ状態とされる。2印刷ライン目以降の印刷ラインの印刷処理に対しても1印刷ライン目の印刷処理と同様に第1ストローブ信号STB1および第2ストローブ信号STB2のオン・オフが制御される。
【0099】
図17のタイミングチャートが
図15に示したタイミングチャートと異なる点は次の2点である。(a)第1ストローブ信号STB1と第2ストローブ信号STB2とが、1印刷ラインの印刷処理に対し、
図13に示した奇数番目のブロックに属する発熱素子および偶数番目のブロックに属する発熱素子への通電をオン状態とするための通電パルスを複数有すること、および、(b)印刷ラインに拘わらず、第1ストローブ信号STB1および第2ストローブ信号STB2のうち最初にオン状態とされるストローブ信号は第1ストローブ信号STB1であること。しかしながら、第1実施形態で説明した3つの通電条件(1)〜(3)を満たしている点では同じである。
【0100】
なお、第2実施形態では、CPUは、第1実施形態に示したフローチャート(
図16)に示した印刷処理とは異なる印刷処理を実行するが、
図16を参照することにより、
図17に示したタイミングチャートでCPUが実行する印刷処理は明らかなため、その説明を省略する。
【0101】
(第3実施形態)
次に、本発明を印刷装置に適用した第3の実施の形態について説明する。第3実施形態は、第1ストローブ信号STB1および第2ストローブ信号STB2が、1印刷ラインの印刷処理に対し、
図13に示した奇数番目のブロックに属する発熱素子および偶数番目のブロックに属する発熱素子への通電をオン状態とするための通電パルスを複数有し、かつ、印刷ラインごとに、第1ストローブ信号STB1および第2ストローブ信号STB2のうち最初にオン状態となる通電パルスが属するストローブ信号が異なる形態であり、階調表現に適した形態である。なお、以下では、1つの印刷ラインの印刷処理に対し、第1ストローブ信号STB1および第2ストローブ信号STB2がそれぞれ3つの通電パルスを有する場合について説明する。
【0102】
図18に示すように、1印刷ライン目の印刷処理に対し、第1ストローブ信号STB1は時刻t1でオン状態とされ、第2ストローブ信号STB2は時刻t2でオン状態とされる。第1ストローブ信号STB1は時刻t3でオフ状態とされ、第2ストローブ信号STB2は時刻t4でオン状態とされる。すなわち、第1ストローブ信号STB1の1つ目の通電パルスは時刻t1でオン状態とされ時刻t3でオフ状態とされ、第2ストローブ信号STB2の1つ目の通電パルスは時刻t2でオン状態とされ時刻t4でオフ状態とされる。これら2つの通電パルスは奇数番目の印刷ラインの奇数番目の通電パルスである。その後、第2ストローブ信号STB2は時刻t5で再度オン状態とされ、第1ストローブ信号STB1も時刻t6で再度オン状態とされ、第2ストローブ信号STB2は時刻t7で再度オフ状態とされ、第1ストローブ信号STB1も時刻t8で再度オフ状態とされる。すなわち、第2ストローブ信号STB2の2つ目の通電パルスは時刻t5でオン状態とされ時刻t7でオフ状態とされ、第1ストローブ信号STB1の2つ目の通電パルスは時刻t6でオン状態とされ時刻t8でオフ状態とされる。これら2つの通電パルスは奇数番目の印刷ラインの偶数番目の通電パルスである。さらに、第1ストローブ信号STB1は時刻t9で三度オン状態とされ、第2ストローブ信号STB2も時刻t10で三度オン状態とされ、第1ストローブ信号STB1は時刻t11で三度オフ状態とされ、第2ストローブ信号STB2も時刻t12で三度オフ状態とされる。すなわち、第1ストローブ信号STB1の3つ目の通電パルスは時刻t9でオン状態とされ時刻t11でオフ状態とされ、第2ストローブ信号STB2の3つ目の通電パルスは時刻t10でオン状態とされ時刻t12でオフ状態とされる。これら2つの通電パルスも奇数番目の印刷ラインの奇数番目の通電パルスに該当する。
【0103】
2印刷ライン目の印刷処理に対し、第2ストローブ信号STB2は時刻t13でオン状態とされ、第1ストローブ信号STB1は時刻t14でオン状態とされる。第2ストローブ信号STB2は時刻t15でオフ状態とされ、第1ストローブ信号STB1は時刻t16でオン状態とされる。すなわち、2印刷ライン目の印刷処理に対し、第2ストローブ信号STB2の1つ目の通電パルスは時刻t13でオン状態とされ時刻t15でオフ状態とされ、第1ストローブ信号STB1の1つ目の通電パルスは時刻t14でオン状態とされ時刻t16でオフ状態とされる。これら2つの通電パルスは偶数番目の印刷ラインの奇数番目の通電パルスである。その後、第1ストローブ信号STB1は時刻t17で再度オン状態とされ、第2ストローブ信号STB2も時刻t18で再度オン状態とされ、第1ストローブ信号STB1は時刻t19で再度オフ状態とされ、第2ストローブ信号STB2も時刻t20で再度オフ状態とされる。すなわち、2印刷ライン目の印刷処理に対し、第1ストローブ信号STB1の2つ目の通電パルスは時刻t17でオン状態とされ時刻t19でオフ状態とされ、第2ストローブ信号STB2の2つ目の通電パルスは時刻t18でオン状態とされ時刻t20でオフ状態とされる。これら2つの通電パルスは偶数番目の印刷ラインの偶数番目の通電パルスである。さらに、第2ストローブ信号STB2は時刻t21で三度オン状態とされ、第1ストローブ信号STB1も時刻t22で三度オン状態とされ、第2ストローブ信号STB2は時刻t23で三度オフ状態とされ、第1ストローブ信号STB1も時刻t24で三度オフ状態とされる。すなわち、2印刷ライン目の印刷処理に対し、第2ストローブ信号STB2の3つ目の通電パルスは時刻t21でオン状態とされ時刻t23でオフ状態とされ、第1ストローブ信号STB1の3つ目の通電パルスは時刻t22でオン状態とされ時刻t24でオフ状態とされる。これら2つの通電パルスも奇数番目の印刷ラインの奇数番目の通電パルスに該当する。3印刷ライン目以降の印刷処理については以上の繰り返しである。
【0104】
図18のタイミングチャートが
図15に示したタイミングチャートと異なる点は、第1ストローブ信号STB1と第2ストローブ信号STB2とが、1印刷ラインの印刷処理に対し、
図13に示した奇数番目のブロックに属する発熱素子および偶数番目のブロックに属する発熱素子への通電をオン状態とするための通電パルスを複数有することであり、
図17に示したタイミングチャートと異なる点は、印刷ラインごとに、第1ストローブ信号STB1および第2ストローブ信号STB2のうち最初にオン状態とされるストローブ信号が異なる点である。
【0105】
次に、第3実施形態の印刷装置1のCPUが実行する印刷処理について説明する。なお、理解を深めるために
図18に示したタイミングチャートの時刻との関係についても言及する。
【0106】
図19に示すように、CPUは、ステップ252において印刷ラインデータ処理を実行する。この印刷ラインデータ処理では、CPUは、
図16のステップ202の処理と同様に、各印刷ラインデータを作成する。そして、階調表現のために印刷ライン内の各ドットに対するパルスデータ作成してサーマルヘッド40のシフトレジスタSRに出力する(ステップ253)。このパルスデータを作成して印刷する工程を256回繰り返すことで、256階調表現をすることができる。なお、1画素(ドット)中に256階調を表現する場合でも、必ずしも通電パルス数を256個とする必要はなく、例えば、最大20個の通電パルス数としてもよい。その場合には、階調に応じて通電パルス数を決定するために階調/パルス数の関係を定めたテーブルを参照したり、数式に当てはめて通電パルス数を算出したりするようにしてもよい。この場合には、例えば、中間程度の階調なら通電パルス数が10(程度)と決定/算出することになる。なお、以下の説明では、
図18に対応して、最初の印刷ラインの通電パルス数が3つの場合について説明する。
【0107】
次のステップ254では、奇数番目の印刷ラインかつ奇数番目の通電パルス、または、偶数番目の印刷ラインかつ偶数番目の通電パルスか否かを判断し、肯定判断の場合には、
図18から明らかなように第1ストローブ信号STB1が第2ストローブ信号STB2より先にオン状態とされるため、次のステップ256において第1ストローブ信号STB1をオン状態とする(例えば、
図18の時刻t1)。なお、奇数番目の印刷ラインかつ奇数番目の通電パルスは
図18の[1]、[3]に、奇数番目の印刷ラインかつ偶数番目の通電パルスは
図18の[2]に、偶数番目の印刷ラインかつ奇数番目の通電パルスは
図18の[1]’、[3]’に、偶数番目の印刷ラインかつ偶数番目の通電パルスは
図18の[2]’にそれぞれ対応する。次に、ステップ258において第2ストローブ信号STB2をオン状態とする通電開始タイミング(例えば、
図18の時刻t2)か否かを判断し、否定判断のときは待機し、肯定判断のときは次のステップ260において第2ストローブ信号STB2をオン状態とする。
【0108】
次いでステップ262において第1ストローブ信号STB1をオフ状態とする通電終了タイミング(例えば、
図18の時刻t3)か否かを判断し、否定判断のときは待機し、肯定判断のときは次のステップ264において第1ストローブ信号STB1をオフ状態とする。次のステップ266では第2ストローブ信号STB2をオフ状態とする通電終了タイミング(例えば、
図18の時刻t4)か否かを判断し、否定判断のときは待機し、肯定判断のときは次のステップ268において第2ストローブ信号STB2をオフ状態としてステップ284に進む。
【0109】
一方、ステップ254での判断が否定の場合には、
図18から明らかなように第2ストローブ信号STB2が第1ストローブ信号STB1より先にオン状態とされるため、ステップ270において第2ストローブ信号STB2をオン状態とする(例えば、
図18の時刻t5)。次に、ステップ272において第1ストローブ信号STB1をオン状態とする通電開始タイミング(例えば、
図18の時刻t6)か否かを判断し、否定判断のときは待機し、肯定判断のときは次のステップ274において第1ストローブ信号STB1をオン状態とする。
【0110】
次いでステップ276において第2ストローブ信号STB2をオフ状態とする通電終了タイミング(例えば、
図18の時刻t7)か否かを判断し、否定判断のときは待機し、肯定判断のときは次のステップ278において第2ストローブ信号STB2をオフ状態とする。次のステップ280では第1ストローブ信号STB1をオフ状態とする通電終了タイミング(例えば、
図18の時刻t8)か否かを判断し、否定判断のときは待機し、肯定判断のときは次のステップ282において第1ストローブ信号STB1をオフ状態としてステップ284に進む。
【0111】
ステップ284では、印刷処理対象ラインの印刷が完了したか否かを判断する。本例では、1印刷ラインに対し通電パルス数が3つあるため、ステップ254〜ステップ282までの処理が3回繰り返される。否定判断のときは、次の通電パルスについての処理を行うためステップ254に戻り、肯定判断のときは、次のステップ286において、印刷完了か否か、すなわち、全印刷ラインの処理が完了したか否かを判断し、否定判断のときは、ステップ252に戻り次の印刷ラインデータをサーマルヘッド40のシフトレジスタSRに出力するとともに、通電パルス数を決定/算出て次の印刷ラインの印刷処理を行い、肯定判断のときは印刷処理を終了する。
【0112】
ところで、
図18に示したタイミングチャートの第1ストローブ信号STB1および第2ストローブ信号STB2は、上述したように、階調表現に適したものである。従って、階調表現のために印刷ラインごとに通電パルス数を意図的に異ならせる場合がある。しかしながら、上述したように印刷ラインごとに同じ通電パルス数の場合には、
図20(B)に示したように、画素(ドット)レベルでは濃度ムラが発生しているが、濃淡が均等に入り交じるため、人の目で見た場合には濃度ムラがないように見える。この点は、
図18に図示した第1ストローブ信号STB1による発熱素子への供給エネルギ(通電電流の積算値)および第2ストローブ信号STB2による発熱素子への供給エネルギ(通電電流の積算値)を参照すれば明らかである。従って、第3実施形態でも、第1実施形態で説明した3つの通電条件(1)〜(3)を基本的に満たしている。
【0113】
図20(C)は、
図14のブロック回路図により、
図18に示した通電制御を行った場合の、発熱素子R1〜R8による、1印刷ライン〜4印刷ラインまでの印刷状態を模式的に示したものである。これを見ると、
図20(B)に比べてさらに細かく濃淡が均等に入り交じるため、人の目で見た場合には濃度ムラがないように見える。
【0114】
なお、上記実施形態では、間接印刷方式の印刷装置1に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限らず、直接印刷方式の印刷装置にも適用可能である。また、記録媒体にカードを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、長尺状、(楕)円形状、多角形状の記録媒体や、フィルム状、紙状の記録媒体や厚手の記録媒体にも適用可能である。
【0115】
また、上記実施形態では、IC1〜IC7に対応させてストローブ入力ポートを7つ設け発熱素子を第1ブロック〜第7ブロックに区分した例を示したが、本発明はこれに制限されず、サーマルヘッド40は第1ストローブ信号STB1と第2ストローブ信号STB2とが入力されるように2つ以上のストローブ入力ポートを備えていればよい。また、ICの数も7個に制限されるものではなく、例えば、1つのICで対応できれば、第1ブロック〜第7ブロックに区分する必要もない。
【0116】
さらに、本発明の範囲ではないが、
図23に示すように、1印刷ライン目の印刷処理に対し、時刻t1で第1ストローブ信号STB1をオン状態とし、時刻t2で第2ストローブ信号STB2をオン状態とし、時刻t3で第1ストローブ信号STB1をオフ状態とし、時刻t4で第2ストローブ信号STB2をオフ状態とし、2印刷ライン目以降についても同様にオン、オフの通電制御を行うようにしてもよい。この参考例では、第1実施形態で示した3つの通電条件のうち(1)、(2)を満たすものの、(3)について、奇数番目の印刷ライン(例えば、1印刷ライン目)の印刷処理時に
図13に示した奇数番目のブロックに属する発熱素子に流れる通電電流の積算値と偶数番目の印刷ライン(例えば、2印刷ライン目)の印刷処理時に
図13に示した奇数番目のブロックに属する発熱素子に流れる通電電流の積算値との和と、奇数番目の印刷ライン(例えば、1印刷ライン目)の印刷処理時に
図13に示した偶数番目のブロックに属する発熱素子に流れる通電電流の積算値と偶数番目の印刷ライン(例えば、2印刷ライン目)の印刷処理時に
図13に示した奇数番目のブロックに属する発熱素子に流れる通電電流の積算値との和とが多少異なっていることから、濃度ムラに若干の遜色を生じるが、人の目で見た場合にはそれ程の濃度ムラがないように見える(
図25参照)。
【0117】
そして、同様に本発明の範囲ではないが、サーマルヘッド通電制御回路を
図24に示すように構成するようにしてもよい。この参考例では、
図14に示したR1〜R8の8つの発熱素子の例を例えば192個まで増加させ、192個を1つのブロックとして1つのICで処理する例である。